(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】樹脂組成物、膜、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
G10K 11/20 20060101AFI20240326BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240326BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20240326BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240326BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G10K11/20
C08L79/08 C
C08L101/02
C08K3/013
C08K5/54
(21)【出願番号】P 2021509538
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013448
(87)【国際公開番号】W WO2020196664
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019061202
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴耶
(72)【発明者】
【氏名】水之江 沙織
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 将太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅記
(72)【発明者】
【氏名】石田 恭久
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-160934(JP,A)
【文献】特開2015-089903(JP,A)
【文献】特開2003-007451(JP,A)
【文献】特開2011-001400(JP,A)
【文献】特開2010-040743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-5/59
G10K 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重6.0以上の絶縁性フィラーと、極性基を有する樹脂と、を含有する樹脂組成物であって、
前記極性基を有する樹脂がポリアミドイミド樹脂を含み、
前記比重6.0以上の絶縁性フィラーの含有率が、前記樹脂組成物の全固形分に対して50体積%以上である、
超音波反射材として用いられる樹脂組成物。
【請求項2】
前記
ポリアミドイミド樹脂が、重量平均分子量10,000以上の
ポリアミドイミド樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記極性基が、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記極性基を有する樹脂が、
さらにエポキシ樹脂を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記比重6.0以上の絶縁性フィラーの体積平均粒子径が5.0μm以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記比重6.0以上の絶縁性フィラーが酸化ビスマス、酸化セリウム、チタン酸バリウム、及び酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらにカップリング剤を含有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記カップリング剤がシランカップリング剤を含む、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらに溶剤を含有する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を乾燥させてなる膜。
【請求項11】
最大高さRzが10.0μm以下である、請求項10に記載の膜。
【請求項12】
算術平均粗さRaが1.5μm以下である、請求項10又は請求項11に記載の膜。
【請求項13】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなる
、超音波反射材として用いられる硬化物。
【請求項14】
最大高さRzが10.0μm以下である、請求項
13に記載の硬化物。
【請求項15】
算術平均粗さRaが1.5μm以下である、
請求項13又は請求項14に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、膜、及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波反射材は医療用超音波診断装置、自動車の車間距離検知システム、障害物検知、埋設管の腐食チェッカー、コンクリート亀裂探知、イヤホン、スピーカー等の音響材などに使用されており、ノイズ低減、高精細化、システムの簡素化等が望まれている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波信号は、異なる材料の界面で反射されて、送信されてくる信号と相互作用することがある。送信された信号と反射した信号との相互作用によって超音波信号を増幅することが可能となる。この超音波信号の反射は、異なる材料間の、密度と音速の積で表される音響インピーダンスの差によるものである。したがって、例えば高比重(すなわち高密度)の材料を、超音波信号を増幅するための超音波反射材として利用できると考えられる。またこのような高比重の材料は、導通を防ぐために絶縁性を有すること、及び基材との接着性を有することも望まれる。
【0005】
上記事情に鑑み、本開示は、基材との接着性に優れる高比重の絶縁層を形成可能な樹脂組成物、並びにこれを用いた膜、及び硬化物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 比重6.0以上の絶縁性フィラーと、極性基を有する樹脂と、を含有する樹脂組成物であって、前記比重6.0以上の絶縁性フィラーの含有率が、前記樹脂組成物の全固形分に対して50体積%以上である、樹脂組成物。
<2> 前記極性基を有する樹脂が、重量平均分子量10,000以上の樹脂を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記極性基が、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記極性基を有する樹脂が、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリエーテル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5> 前記比重6.0以上の絶縁性フィラーの体積平均粒子径が5.0μm以下である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<6> 前記比重6.0以上の絶縁性フィラーが酸化ビスマス、酸化セリウム、チタン酸バリウム、及び酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、<1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<7> さらにカップリング剤を含有する、<1>~<6>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<8> 前記カップリング剤がシランカップリング剤を含む、<7>に記載の樹脂組成物。
<9> さらに溶剤を含有する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<10> <1>~<9>のいずれか1項に記載の樹脂組成物を乾燥させてなる膜。
<11> 最大高さRzが10.0μm以下である、<10>に記載の膜。
<12> 算術平均粗さRaが1.5μm以下である、<10>又は<11>に記載の膜。
<13> 超音波反射材として用いられる、<10>~<12>のいずれか1項に記載の膜。
<14> <1>~<9>のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
<15> 最大高さRzが10.0μm以下である、<14>に記載の硬化物。
<16> 算術平均粗さRaが1.5μm以下である、<14>又は<15>に記載の硬化物。
<17> 超音波反射材として用いられる、<14>~<16>のいずれか1項に記載の硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基材との接着性に優れる高比重の絶縁層を形成可能な樹脂組成物、並びにこれを用いた膜、及び硬化物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0009】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0010】
≪樹脂組成物≫
本開示の樹脂組成物は、比重6.0以上の絶縁性フィラーと、極性基を有する樹脂と、を含有し、前記比重6.0以上の絶縁性フィラーの含有率は、前記樹脂組成物の全固形分に対して50体積%以上である。
【0011】
樹脂組成物の粘度は、ハンドリング性の観点から、25℃において10Pa・s~300Pa・sであることが好ましく、20Pa・s~250Pa・sであることがより好ましく、30Pa・s~200Pa・sであることがさらに好ましい。樹脂組成物の粘度は、JIS Z 3284-3:2014に準じて、SPPロータを備え付けたE型回転粘度計を用いて、25℃、2.5回転/分(rpm)の回転数で144秒間回転させた時の測定値で、2回測定した平均値として測定される。
【0012】
以下、樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0013】
<絶縁性フィラー>
本開示の樹脂組成物は比重6.0以上の絶縁性フィラーを含有する。当該比重6.0以上の絶縁性フィラーの含有率は、樹脂組成物の全固形分の50体積%以上である。
【0014】
比重6.0以上の絶縁性フィラーとしては、例えば、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化タングステン等の金属酸化物;チタン酸バリウム、焼結酸化ウラン、タングステンカーバイド、タングステン、ジルコニウム、などが挙げられる。なかでも、酸化ビスマス、酸化セリウム、チタン酸バリウム、及び酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。絶縁性フィラーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、耐熱性、比重、300℃まで加熱したときの熱重量減少が1質量%未満であること等の観点から、酸化ビスマスが好ましい。
【0015】
絶縁性フィラーの25℃における体積抵抗率は、1×106Ω・cm以上であることが好ましく、1×108Ω・cm以上であることがより好ましく、1×1010Ω・cm以上であることがさらに好ましい。
【0016】
絶縁性フィラーの比重は6.0以上であればよく、樹脂組成物の用途に応じて適宜調節してよい。例えば、絶縁性フィラーの比重は7.0以上であってもよく、8.0以上であってもよい。絶縁性フィラーの比重の上限は特に制限されない。例えば、絶縁性フィラーの比重の上限は10.0以下であってもよい。 本開示において、フィラーの比重は、JIS K 0061:2001、JIS Z 8807:2012に準じて、測定試料の質量とそれと同体積の大気圧下における純水の質量との比で測定される測定試料の真比重と水の真比重の比を表す。
【0017】
絶縁性フィラーは、安定的に高比重の材料を得る観点から、高温における質量減少率が少ないことが好ましい。例えば、絶縁性フィラーを300℃で1時間加熱したときの質量減少率が1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
絶縁性フィラーの形状は特に制限されず、球状、粉状、針状、繊維状、板状、角状、多面体、鱗片状等であってもよい。絶縁性フィラーの粒子径は特に制限されず、体積平均粒子径は5.0μm以下であることが好ましく、4.0μm以下であることがより好ましく、3.0μm以下であることがさらに好ましく、2.0μm以下であることが特に好ましい。体積平均粒子径の下限値は特に制限されず、0.001μm以上であってもよい。体積平均粒子径はレーザー回折粒度分布測定装置により測定することができ、体積基準の粒度分布において小径側からの積算が50%となるときの粒子径(D50)である。特に、絶縁性フィラーの体積平均粒子径が2.0μm以下であると、樹脂組成物を用いた膜又は硬化物の平坦性が向上するため好ましい。
以上の観点から、絶縁性フィラーの体積平均粒子径は、0.001μm~5.0μmであることが好ましく、0.001μm~4.0μmであることがより好ましく、0.001μm~3.0μmであることがさらに好ましく、0.001μm~2.0μmであることが特に好ましい。
【0019】
樹脂組成物の全固形分中の絶縁性フィラーの含有率は50体積%以上であり、55体積%以上であることが好ましく、60体積%以上であることがさらに好ましい。樹脂組成物の全固形分中の絶縁性フィラーの含有率は50体積%以上であると、膜又は硬化物としたときに十分な比重を得られる傾向にある。絶縁性フィラーの含有率の上限は特に制限されず、樹脂組成物のハンドリング性の観点から、絶縁性フィラーの含有率は80体積%以下であってもよい。
以上の観点から、樹脂組成物中の全固形分中の絶縁性フィラーの含有率は50体積%~80体積%であることが好ましく、55体積%~80体積%であることがより好ましく、60体積%~80体積%であることがさらに好ましい。
樹脂組成物の固形分とは、樹脂組成物から揮発成分を除いた成分を意味する。
【0020】
樹脂組成物の全固形分中の絶縁性フィラーの含有率は、88質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、92質量%以上であることがさらに好ましい。樹脂組成物の全固形分中の絶縁性フィラーの含有率の上限は特に制限されず、99質量%以下であってもよい。
以上の観点から、樹脂組成物の全固形分中の絶縁性フィラーの含有率は、88質量%~99質量%であることが好ましく、90質量%~99質量%であることがより好ましく、92質量%~99質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
樹脂組成物は、比重6.0以上の絶縁性フィラーに加えて、その他のフィラーを含有していても含有していなくてもよい。例えば、樹脂組成物は比重6.0未満の絶縁性フィラーを含有していてもよい。樹脂組成物が比重6.0以上の絶縁性フィラー以外のフィラーを含有する場合、フィラーの全質量に対する比重6.0以上の絶縁性フィラーの含有率は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0022】
樹脂組成物が比重6.0以上の絶縁性フィラー以外のフィラーを含有する場合、樹脂組成物の全固形分中のフィラーの合計含有率は50体積%を超え、55体積%以上であることが好ましく、60体積%以上であることがより好ましく、65体積%以上であることがさらに好ましい。また、この場合の樹脂組成物の全固形分中のフィラーの合計含有率の上限は特に制限されず、90体積%以下であってもよい。
【0023】
樹脂組成物が比重6.0以上の絶縁性フィラー以外のフィラーを含有する場合、樹脂組成物の全固形分中のフィラーの合計含有率は90質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましく、94質量%以上であることがさらに好ましい。また、この場合の樹脂組成物の全固形分中のフィラーの合計含有率の上限は特に制限されず、99質量%以下であってもよい。
【0024】
<樹脂>
本開示の樹脂組成物は極性基を有する樹脂を含有する。本開示の樹脂組成物は、高比重の組成物とするために絶縁性フィラーを50体積%以上含有しているが、絶縁性フィラーを高充填とすると、膜又は硬化物としたときの基材への接着性が十分に得られにくい。そこで本開示の樹脂組成物では極性基を有する樹脂を用いて基材との相互作用を向上させることで、接着性と高比重の両立を可能としている。
【0025】
極性基とは電気陰性度の異なる原子どうしの結合により極性を有する原子団を表す。極性基としては、例えば、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を有する基が挙げられ、より具体的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ホウ素原子、リン原子、ケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む基が挙げられる。なかでも極性基としては窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む基が好ましい。より具体的には、極性基としては、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、チオール基、スルホ基、チオニル基、エステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられ、アミド基、イミド基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、及びウレア結合からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。極性基は樹脂の主鎖に存在していても側鎖に存在していてもよい。
【0026】
極性基を有する樹脂の種類は極性基を有する限り特に制限されず、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、これらの組合せであってもよい。硬化時の硬化収縮が小さい観点からは熱可塑性樹脂が好ましく、さらに製膜後の膜の強度を向上させ、かつ硬化時の硬化収縮を抑制する観点から熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を組み合わせることがより好ましい。
また、樹脂成分は加熱により重合反応を生じうる官能基を有するモノマーの状態であってもすでに重合したポリマーの状態であってもよい。極性基を有する樹脂としては、具体的には、極性基を有するビニル重合系樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、オキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリエーテル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
なかでも、接着性の観点からはポリアミドイミド樹脂が好ましく、耐熱性の観点からはエポキシ樹脂が好ましい。耐熱性及び接着性の両立の観点から、ポリアミドイミド樹脂とエポキシ樹脂とを併用してもよい。樹脂組成物においてポリアミドイミド樹脂とエポキシ樹脂を併用する場合、ポリアミドイミド樹脂とエポキシ樹脂との質量比は特に制限されず、20/80~80/20であってもよく、30/70~70/30であってもよく、40/60~60/40であってもよい。
【0028】
極性基を有する樹脂は、硬化剤を併用して重合されたものであってもよい。例えば、エポキシ樹脂に対して、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤、イミダゾール等の潜在性硬化剤などを併用して重合したものであってもよい。
【0029】
エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂の好ましい具体例としては、上述のエポキシ樹脂において、エーテル基、脂環式エポキシ基等の置換基を有するものが挙げられる。エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂のエポキシ基又はグリシジルオキシ基に由来する酸素原子以外のヘテロ原子を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0031】
好ましいエポキシ樹脂としては、例えば、窒素原子と当該窒素原子に結合する水素原子とを含むエポキシ樹脂が挙げられる。好ましい一態様において、エポキシ樹脂は窒素原子と当該窒素原子に結合する水素原子とを含むヘテロ環構造を有してもよい。このようなヘテロ環構造としては、例えばグリコールウリル構造が挙げられる。
【0032】
樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、樹脂の全量に対するエポキシ樹脂の含有率は、100質量%であってもよく、10質量%~90質量%であってもよく、20質量%~80質量%であってもよく、30質量%~70質量%であってもよく、40質量%~60質量%であってもよい。
【0033】
樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、樹脂組成物の固形分に対するエポキシ樹脂の含有率は0.01質量%~10質量%であってもよく、0.1質量%~9質量%であってもよく、1質量%~8質量%であってもよい。
【0034】
ポリアミドイミド樹脂としては、主鎖中にアミド結合とイミド結合とを有するポリアミドイミド樹脂が好ましい。ポリアミドイミド樹脂の好ましい具体例としては、ポリアルキレンオキサイド構造及びポリシロキサン構造の少なくとも一方を有するポリアミドイミド樹脂が挙げられる。これらのポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂の変形による応力の緩和の観点から好ましい。これらのポリアミドイミド樹脂はそれぞれ例えばポリアルキレンオキサイド変性ジアミン及びポリシロキサン変性ジアミンを用いて合成されるポリアミドイミド樹脂であってもよい。
【0035】
ポリアミドイミド樹脂に含まれてもよいポリアルキレンオキサイド構造の単位構造としては、炭素数1~10のアルキレンオキサイド構造が好ましく、炭素数1~8のアルキレンオキサイド構造がより好ましく、炭素数1~4のアルキレンオキサイド構造がさらに好ましい。なかでも、ポリアルキレンオキサイド構造としてはポリプロピレンオキサイド構造が好ましい。アルキレンオキサイド構造中のアルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。ポリアルキレンオキサイド構造中の単位構造は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
【0036】
ポリアミドイミド樹脂に含まれてもよいポリシロキサン構造としては、ポリシロキサン構造のケイ素原子の一部又は全部に、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基が置換基として結合しているポリシロキサン構造が挙げられる。
炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
炭素数6~18のアリール基は、無置換でも置換基で置換されていてもよい。アリール基が置換基を有する場合の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。炭素数6~18のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、ポリアミドイミド樹脂の好ましい一態様として、ジイミドカルボン酸又はその誘導体由来の構造単位と芳香族ジイソシアネート又は芳香族ジアミン由来の構造単位とを有するポリアミドイミド樹脂が挙げられる。
ジイミドカルボン酸又はその誘導体由来の構造単位と芳香族ジイソシアネート又は芳香族ジアミン由来の構造単位とを有するポリアミドイミド樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート法及び酸クロライド法が挙げられる。
イソシアネート法では、ジイミドカルボン酸と芳香族ジイソシアネートとを用いてポリアミドイミド樹脂を合成する。酸クロライド法では、ジイミドカルボン酸塩化物と芳香族ジアミンとを用いてポリアミドイミド樹脂を合成する。ジイミドカルボン酸と芳香族ジイソシアネートから合成するイソシアネート法が、ポリアミドイミド樹脂の構造の最適化を図りやすく、より好ましい。
【0038】
樹脂組成物がポリアミドイミド樹脂を含む場合、樹脂の全量に対するポリアミドイミド樹脂の含有率は80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。また、樹脂の全量に対するポリアミドイミド樹脂の含有率は、10質量%~90質量%であってもよく、20質量%~80質量%であってもよく、30質量%~70質量%であってもよく、40質量%~60質量%であってもよい。
【0039】
樹脂組成物がポリアミドイミド樹脂を含む場合、樹脂組成物の固形分に対するポリアミドイミド樹脂の含有率は0.01質量%~10質量%であってもよく、0.1質量%~9質量%であってもよく、1質量%~8質量%であってもよい。
【0040】
極性基を有する樹脂の重量平均分子量は特に制限されず、10,000以上であることが好ましく、20, 000以上であってもよく、50, 000以上であってもよい。樹脂の重量平均分子量が10,000以上であると、樹脂組成物を乾燥させて膜を作製したときに、表面の粉付きを抑制できる傾向にある。重量平均分子量の上限は特に制限されず、1,000, 000以下であってもよく、900, 000以下であってもよい。樹脂組成物に含まれる極性基を有する樹脂が膜又は硬化物の形成において重合されるものである場合には、重合された樹脂の重量平均分子量が上記範囲であることが好ましい。
樹脂組成物に複数種の樹脂が含まれる場合には、それぞれの樹脂が独立に上記範囲の重量平均分子量を有することが好ましい。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用し、ポリスチレンを標準物質として測定される。
【0041】
樹脂組成物中の、極性基を有する樹脂の含有率は特に制限されず、接着性及び比重の調整の観点から、樹脂組成物の固形分に対して2質量%~12質量%であることが好ましく、3質量%~10質量%であることがより好ましく、4質量%~9質量%であることがさらに好ましい。
【0042】
樹脂組成物は、極性基を有する樹脂に加えて、極性基を有しない樹脂を含有してもよい。樹脂の全量に対する極性基を有する樹脂の含有率は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0043】
樹脂組成物中の樹脂の合計含有率(すなわち、極性基を有する樹脂及び場合により存在する極性基を有しない樹脂の合計含有率)は、0.01質量%~10質量%であってもよく、0.1質量%~9質量%であってもよく、1質量%~8質量%であってもよい。
【0044】
樹脂組成物が、極性基を有しない樹脂を含有する場合、当該極性基を有しない樹脂の重量平均分子量は特に制限されず、10,000以上であることが好ましく、20, 000以上であってもよく、50, 000以上であってもよい。樹脂の重量平均分子量が10,000以上であると、樹脂組成物を乾燥させて膜を作製したときに、表面の粉付きを抑制できる傾向にある。重量平均分子量の上限は特に制限されず、1,000, 000以下であってもよく、900, 000以下であってもよい。樹脂組成物に含まれる極性基を有しない樹脂が膜又は硬化物の形成において重合されるものである場合には、重合された樹脂の重量平均分子量が上記範囲であることが好ましい。
樹脂組成物に複数種の樹脂が含まれる場合には、それぞれの樹脂が独立に上記範囲の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0045】
樹脂組成物が、重量平均分子量が10,000以上の樹脂と重量平均分子量が10,000未満の樹脂とをいずれも含有する場合、後者の割合は樹脂全体に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物中の樹脂が膜又は硬化物において重合されるものである場合には、樹脂が重合された後の樹脂組成物における重量平均分子量が10,000未満の樹脂の割合が上記範囲であることが好ましい。
【0046】
樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、樹脂組成物はさらに硬化剤を含有していてもよい。例えば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合、硬化剤としては、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤、イミダゾール等の潜在性硬化剤などが挙げられる。
硬化剤の含有量は樹脂組成物の全固形分に対して0.1質量%~50質量%であってもよく、1質量%~30質量%であってもよく、1質量%~20質量%であってもよく、1質量%~10質量%であってもよい。
硬化剤が重付加型の硬化剤である場合、熱硬化性樹脂の官能基の当量数と、当該熱硬化性樹脂の官能基と反応性を有する硬化剤の官能基の当量数の比率(熱硬化性樹脂の官能基の当量数:硬化剤の官能基の当量数)は、1:1~1:3であってもよく、1:1~1:2であってもよい。
【0047】
<カップリング剤>
樹脂組成物はカップリング剤を含有していてもよい。樹脂組成物がカップリング剤を含有すると、膜又は硬化物としたときの基材への接着性がより向上する傾向にある。
【0048】
カップリング剤の種類は特に限定されず、カップリング剤としては、シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。なかでも、ガラス等の基材との接着性の観点からは、シランカップリング剤が好ましい。カップリング剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物基等を有するシランカップリング剤が挙げられる。なかでも、エポキシ基又はアミノ基を有するシランカップリング剤が好ましく、エポキシ基又はアニリノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。特に、樹脂としてポリアミドイミド樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを用いる場合、ポリアミドイミド樹脂及びエポキシ樹脂への相溶性が良好である観点から、エポキシ基又はアミノ基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましく、エポキシ基又はアニリノ基を有するシランカップリング剤を用いることがより好ましい。
【0050】
シランカップリング剤として、具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
樹脂組成物がカップリング剤を含有する場合、樹脂組成物中のカップリング剤の含有率は特に制限されず、樹脂組成物の固形分に対して0.05質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~2.5質量%であることがより好ましい。
【0052】
<溶剤>
樹脂組成物は粘度を調整する観点から溶剤を含有していてもよい。溶剤は、組成物を付与する工程での組成物の乾燥を防ぐ観点から、100℃以上の沸点を有している溶剤であることが好ましく、ボイドの発生を抑制するために300℃以下の沸点を有している溶剤であることがより好ましい。
【0053】
溶剤の種類は特に制限されず、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ニトリル系溶剤を挙げることができる。より具体的には、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ジメチルプロパンアミド、2-(2-ヘキシルオキシエトキシ)エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テルピネオール、ステアリルアルコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコール、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、p-フェニルフェノール、プロピレングリコールフェニルエーテル、クエン酸トリブチル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、パラフィン等が挙げられる。溶剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0054】
溶剤は、粘度、加熱時の工程の短縮化等の観点から、樹脂組成物の全量に対して0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~9質量%であることがより好ましく、1質量%~8質量%であることがさらに好ましい。
【0055】
<その他の添加剤>
樹脂組成物は必要に応じてその他の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、チキソ剤、分散剤等が挙げられる。
【0056】
チキソ剤としては、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アマイド、ヒュームドシリカ等が挙げられる。チキソ剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。チキソ剤の含有率は特に限定されず、樹脂組成物の全固形分に対して0.01質量%~5質量%であってもよく、0.05質量%~3質量%であってもよく、0.1質量%~1質量%であってもよい。
【0057】
分散剤としては、樹脂に相溶性の分散剤が挙げられる。樹脂に相溶性の分散剤を用いることで、フィラーを好適に分散させ、基材への接着性を高めることができる傾向にある。具体的には、分散剤としては、リン酸塩、カルボン酸塩、カルボン酸アミン塩等が挙げられる。分散剤の含有率は、樹脂組成物の全固形分に対して0.01質量%~5質量%であってもよく、0.05質量%~3質量%であってもよい。
【0058】
〔樹脂組成物の用途〕
本開示の樹脂組成物は、乾燥させて膜として用いてもよい。膜は例えば以下の方法で作製することができる。まず、上述の樹脂組成物を基材の表面の少なくとも一部に付与して樹脂組成物層を形成する。その後、樹脂組成物層を乾燥させ、膜を得る。樹脂組成物を基材に付与する方法は特に制限されず、スプレー法、スクリーン印刷法、回転塗布法、スピンコート法、バーコート法等が挙げられる。なかでも本開示の樹脂組成物はスクリーン印刷を用いる用途に好適である。
【0059】
樹脂組成物を付与する基材は特に制限されず、ガラス、金属、樹脂材料、金属蒸着膜、金属酸化物、セラミック、不織布、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維プリプレグ、アラミド繊維プリプレグ、炭素繊維プリプレグ等が挙げられる。なかでも、本開示の樹脂組成物はガラス、金属、金属酸化物、ガラス繊維、アラミド繊維、ガラス繊維プリプレグ等の、表面に極性を有する基材への接着性に優れる。
【0060】
樹脂組成物を乾燥する方法は特に制限されず、ホットプレート、オーブン等の装置を用いて熱処理する方法、自然乾燥する方法などが挙げられる。熱処理することで乾燥を行う場合の条件は、樹脂組成物中の溶剤が十分に揮散する条件であれば特に制限はなく、80℃~150℃で、5分間~120分間程度であってもよい。
【0061】
本開示の樹脂組成物は硬化物として用いてもよい。樹脂組成物を硬化させる方法は特に制限されず、熱処理等により硬化することができる。熱処理による硬化は、箱型乾燥機、熱風式コンベアー型乾燥機、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等を用いて行なうことができる。
【0062】
防汚性、防油性の観点から、膜又は硬化物の最大高さRzは10.0μm以下であることが好ましく、8.0μm以下であることがより好ましく、6.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0063】
また、膜又は硬化物の算術平均粗さRaは、1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることがさらに好ましく、0.6μm以下であることが特に好ましい。
【0064】
膜又は硬化物の算術平均粗さRa及び最大高さRzは、JIS B 0601:2013に基づいて求めた値とする。具体的には、3D顕微鏡(例えば、キーエンス製VR-3200、倍率12倍)を用いて測定される値とする。
【0065】
膜又は硬化物の厚みは特に制限されず、一態様において、10μm~100μmであってもよく、10μm~50μmであってもよい。
【0066】
膜又は硬化物の比重は、4.0以上であることが好ましく、4.5以上であることがより好ましく、5.0以上であることがさらに好ましい。膜又は硬化物の比重の上限は特に制限されず、例えば9.0以下であってもよい。
以上の観点から、膜又は硬化物の比重は4.0~9.0であってもよく、4.5~9.0であってもよく、5.0~9.0であってもよい。
【0067】
膜又は硬化物の体積抵抗率は、1.0×106Ω・cm以上であることが好ましく、1.0×107Ω・cm以上であることがより好ましく、1.0×108Ω・cm以上であることがさらに好ましい。体積抵抗率はJIS C 2139-3-1:2018に準じて、絶縁抵抗計(例えば、アドバンテスト製、8340A)にて絶縁抵抗値を計測し、電極接触面の面積と厚さから体積抵抗率を算出することができる。
膜又は硬化物の、実施例に記載の方法により測定される絶縁破壊電圧は、5MV/m以上であることが好ましく、10MV/m以上であることが好ましく、15MV/m以上であることがさらに好ましい。
【0068】
本開示の樹脂組成物は、特に高比重の絶縁層をスクリーン印刷にて形成することが望ましい用途に好適に用いることができる。また、本開示の樹脂組成物は超音波反射材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0069】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
〔組成物の調製〕
以下の成分を表1に示される配合(質量%)で混合し、樹脂組成物を得た。
【0071】
・樹脂1:ポリアミドイミド樹脂 (KS-9900F(商品名)、日立化成株式会社)
・樹脂2:エポキシ樹脂 (YX8034(商品名)、三菱ケミカル株式会社)
・樹脂3:エポキシ樹脂 (TG-G(商品名)、四国化成工業株式会社)
・硬化剤:イミダゾール
・チキソ剤1:12-ヒドロキシステアリン酸
・チキソ剤2:ヒュームドシリカ(アエロジルR972、日本アエロジル社)
・分散剤:リン酸塩 (BYK-106(商品名)、ビックケミージャパン株式会社)
・カップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573(商品名)、信越化学工業株式会社)
・カップリング剤2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403(商品名)、信越化学工業株式会社)
・フィラー:酸化ビスマス(Bi2O3)(体積平均粒子径2.0μmの球状フィラー、比重8.9)
【0072】
〔膜の形成〕
スクリーン印刷機(LS-150、ニューロング精密工業株式会社)及びスクリーンメッシュ版(WT360-16、ソノコム株式会社)を使用し、スキージ速度10mm/sec、クリアランス1.0mmにて、厚さ1.0mmのソーダガラス板に100mm角の塗膜を作製した。ソーダガラス板に作製した膜はオーブンにて120℃、1時間乾燥し製膜した。
【0073】
〔表面粗さ〕
前記製膜後の膜の算術平均粗さRa及び最大高さRzを、3D顕微鏡(例えば、キーエンス製VR-3200、倍率12倍)を用いてJIS B 0601:2013に基づいて求めた。
【0074】
〔接着性評価〕
前記製膜後の膜をJIS K 5600-5-6:1999に準じて、1mmの間隔でカッターの刃が備え付けられたクロスカッター試験多重刃カッター(オールグッド株式会社)を使用して100mm角の製膜後の膜中央部に幅8mm、長さ8mmで碁盤目状に切り込みを入れた後、テープを接着させ45°の角度でテープを引き剥がした。テープ剥離後の碁盤目状に切り込みを入れた製膜部から剥離した製膜部の面積を顕微鏡で撮影し、剥離部と未剥離部の面積を2値化により画像処理することで剥離部の面積を算出した。剥離面積が製膜部全体の面積に対して40%未満である場合に良好な密着性を有すると判断した。
【0075】
〔絶縁性試験〕
厚さ30μmの銅箔にスクリーン印刷機(LS-150、ニューロング精密工業株式会社)及びスクリーンメッシュ版(WT360-16、ソノコム株式会社)を使用し、スキージ速度10mm/sec、クリアランス1.0mmにて、100mm角の塗膜を作製した。作製した塗膜をオーブンにて120℃、1時間乾燥し製膜した。銅箔面に電極を接続し、製膜面側にΦ20mmの電極を設置し、昇圧速度500V/s、大気下で絶縁破壊試験を行い、絶縁破壊電圧と製膜の厚さから絶縁破壊強度を算出した。
【0076】
〔膜の密度の測定〕
厚さ1.0mmのソーダガラス板にスクリーン印刷機(LS-150、ニューロング精密工業株式会社)及びスクリーンメッシュ版(WT360-16、ソノコム株式会社)を使用し、スキージ速度10mm/sec、クリアランス1.0mmにて、100mm角の塗膜を作製した。作製した塗膜をオーブンにて120℃、1時間乾燥し製膜した。製膜後の膜厚はマイクロメータを使用し、ガラス板の厚さをゼロに合わせた後、5点測定した平均値とした。製膜後の膜厚T0(mm)、製膜前のガラス板の質量W0(g)、製膜後のガラス板の質量W1(g)から式(1)より膜の密度を計算した。
【0077】
〔式(1)〕
密度(g/cm3)={(W1-W0)/(100×100×T0×10-3)}
【0078】
【0079】
日本国特許出願第2019-061202号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。