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  • 特許-光源付き照明体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】光源付き照明体
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240326BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240326BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240326BHJP
【FI】
F21S2/00 432
F21S2/00 670
G02B5/02 B
F21Y115:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021574018
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002424
(87)【国際公開番号】W WO2021153496
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2020014744
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 洋平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 博之
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-75352(JP,A)
【文献】特開2006-294343(JP,A)
【文献】国際公開第2011/104765(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
G02B 5/02
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス及び粒子から構成される粒子分散体と、光発生装置とを含み、
前記光発生装置により前記粒子分散体の端面に光が照射される、光源付き照明体であって、
前記粒子分散体は以下の(1a)~(4a)を満たす、光源付き照明体。
(1a)前記光発生装置から光を通す方向の長さが20mm以上である。
(2a)前記マトリックスと前記粒子の屈折率差が0.1以上である。
(3a)前記粒子の平均粒子径が10~50nm、半値幅が10~30nm、粒子密度が150~400個/μmである。
(4a)前記光発生装置から光を通す方向の下記方法により求められる主波長Dwの200mmあたりの変化量が10nm以上である。
(方法)前記粒子分散体のJIS Z 8701:1999規定の透過率を、前記粒子分散体の1mmあたりの透過率の変化量に置き換えて、JIS Z 8701:1999規定の標準C光源における主波長Dwを求める。
【請求項2】
前記光発生装置から光を通す方向に対して垂直な方向において、JIS K 7136:2000年に準拠して測定される前記粒子分散体のHaze値が1%以上30%以下である、請求項1に記載の光源付き照明体。
【請求項3】
前記粒子分散体の厚さ10mmにおける、JIS R 3106:2019年に準拠して測定される可視光透過率Tvが67%以上91%以下である、請求項1または2に記載の光源付き照明体。
【請求項4】
前記粒子分散体が分相ガラスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の光源付き照明体。
【請求項5】
前記分相ガラスがバイノーダル型分相ガラスである、請求項4に記載の光源付き照明体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源付き照明体に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光源を備えるガラス板として、例えば、特許文献1に記載の車両用ガラスや特許文献2に記載の照明ガラス等が知られている。これらは、ガラス板と、ガラス板の端面に配置され、ガラス板の端面に光を照射する光源と、ガラス板の一方の主面側に設けられた光散乱膜又は構造体とを有する。
【0003】
ガラス板の端面に入射された光は、ガラス板の内部を伝搬し、光散乱膜又は構造体により他方の主面に導かれる。これらにより、例えば、インテリアとして特定の装飾要素や色調を照らし出して仮想的な空間を演出すること、又は車両のウィンドウにメーター機能を映し出すことなどができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第2015/0298601号明細書
【文献】日本国特表2015-525429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2においては、ガラス板などの透明基材に散乱体を設けることにより、光照射している際の十分な光散乱性を実現している。一方で、意匠性の観点から、照明体から発する光の色分布が均一ではなくグラデーションを呈することが求められることがある。
【0006】
したがって、本発明は、光照射時に照明体から発する光の色分布がグラデーションを呈する照明体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.マトリックス及び粒子から構成される粒子分散体と、光発生装置とを含み、
前記光発生装置により前記粒子分散体の端面に光が照射される、光源付き照明体であって、
前記粒子分散体は以下の(1a)~(4a)を満たす、光源付き照明体。
(1a)前記光発生装置から光を通す方向の長さが20mm以上である。
(2a)前記マトリックスと前記粒子の屈折率差が0.1以上である。
(3a)前記粒子の平均粒子径が10~50nm、半値幅が10~30nm、粒子密度が150~400個/μmである。
(4a)前記光発生装置から光を通す方向の下記方法により求められる主波長Dwの200mmあたりの変化量が10nm以上である。
(方法)前記粒子分散体のJIS Z 8701:1999規定の透過率を、前記粒子分散体の1mmあたりの透過率の変化量に置き換えて、JIS Z 8701:1999規定の標準C光源における主波長Dwを求める。
2.前記光発生装置から光を通す方向に対して垂直な方向において、JIS K 7136:2000年に準拠して測定される前記粒子分散体のHaze値が1%以上30%以下である、前記1に記載の光源付き照明体。
3.前記粒子分散体の厚さ10mmにおける、JIS R 3106:2019年に準拠して測定される可視光透過率Tvが67%以上91%以下である、前記1または2に記載の光源付き照明体。
4.前記粒子分散体が分相ガラスである、前記1~3のいずれか1に記載の光源付き照明体。
5.前記分相ガラスがバイノーダル型分相ガラスである、前記4に記載の光源付き照明体。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光源付き照明体によれば、照明体として、マトリックス及び粒子から構成され、該マトリックスと該粒子の屈折率差並びに該粒子の平均粒子径、粒子分布(半値幅)及び粒子密度が特定範囲である粒子分散体を含むことにより、光発生装置から光照射時に粒子分散体から発する光の色分布がグラデーションを呈する。その結果、車載用ガラスや住宅用ガラス、インテリア等に適用した際に、光照射時の意匠性付与に優れた照明体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る光源付き照明体の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本実施形態に係る光源付き照明体1は、図1に示すように、マトリックス11及び粒子12から構成される粒子分散体10と、光発生装置20と、から構成される。
【0012】
<粒子分散体>
粒子分散体10は所定の厚さを有し、厚み方向(板厚方向)の端面10aと長さ方向の主面10bを有している。粒子分散体10は、光発生装置20から光を通す方向(図1において矢印dで表される方向)の長さが20mm以上であり、好ましくは50mm以上であり、より好ましくは100mm以上であり、さらに好ましくは200mm以上である。前記長さが20mm以上であることにより、光の色分布がグラデーションを呈しやすい。前記長さの上限は特に制限されないが、典型的には2000mm以下であることが好ましい。
【0013】
粒子分散体10は照明体として機能し、光発生装置20から粒子分散体10の端面10aに光が照射されると、当該光が粒子分散体10内を導光して粒子12によって散乱する。光がその波長に比べて十分に小さな粒子(例えば波長の1/10)に当たると、その散乱光は波長の影響を受け、レイリー散乱という現象が発生する。レイリー散乱の散乱係数は波長の4乗に反比例するため、短波長(青い)光ほど散乱されやすくなる。本実施形態に係る光源付き照明体1によれば、このレイリー散乱を利用して、光発生装置20から光照射した際に粒子分散体10から発する光の色分布がグラデーションを呈し、優れた意匠性を示すものである。
【0014】
本実施形態に係る光源付き照明体1において、前記光の色分布がグラデーションを呈することは、以下に示す通り、光照射時に粒子分散体10から発する光の主波長Dwの変化量により確認できる。
【0015】
一実施形態において、光発生装置から光を通す方向の下記の方法により求められる主波長Dwの200mmあたりの変化量が10nm以上であり、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは50nm以上であり、さらに好ましくは100nm以上である。前記主波長Dwの変化量が10nm以上であることにより、優れた意匠性を示す光の色分布のグラデーションが得られる。
(方法)前記粒子分散体のJIS Z 8701:1999規定の透過率を、前記粒子分散体の1mmあたりの透過率の変化量に置き換えて、JIS Z 8701:1999規定の標準C光源における主波長Dwを求める。
【0016】
前記粒子分散体のJIS Z 8701:1999規定の透過率の、前記粒子分散体の1mmあたりの透過率の変化量への置き換えに際し、板厚方向の厚さtmmの粒子分散体の透過率を測定し、光発生装置から光を通す方向の、粒子分散体の端からXmmの位置におけるΔTを下記式により算出する。ここで、透過率とは分光透過率をさす。透過率は分光光度計により測定する。
【0017】
【数1】
【0018】
前記式における定義は、以下の通りである。
ΔT :光発生装置から光を通す方向の、粒子分散体の1mmあたりの透過率の変化量
x+1 :光発生装置から光を通す方向の、粒子分散体の端から(X+1)mmの位置における透過率
:光発生装置から光を通す方向の、粒子分散体の端からXmmの位置における透過率
T :板厚方向の厚さtmmの粒子分散体の透過率
R :板厚方向の厚さtmmの粒子分散体の反射率
【0019】
上記したように、透過率の変化量から主波長Dwを求め、主波長Dwの変化量により前記光の色分布がグラデーションを呈することを確認できる理由としては、次の通りである。例えば、光発生装置から粒子分散体に光を通す方向(図1において矢印dで表される方向)において、粒子分散体の端からXmmの位置における透過率から(X+1)mmの位置における透過率を引くと、透過率の変化量(ΔT)が算出される。当該透過率の変化量は、Xmmから(X+1)mmに位置が変化したことに伴い変化した色の光(例えば、青色の光)の量に該当し、散乱により外部に放出された光に相当する。したがって、当該変化量をxy色座標に導入して主波長Dwを求め、主波長Dwの変化量を評価することにより光照射時に粒子分散体から発する光の色分布の変化を確認できる。
【0020】
本実施形態に係る光源付き照明体1は、光発生装置20から光を通す方向に対して垂直な方向において、JIS K 7136:2000年に準拠して測定される粒子分散体10のHaze値が30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。Haze値が30%以下であることにより、透明感が得られる。また、Haze値が1%以上であることが好ましく、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上である。Haze値が1%以上であることにより、白濁した存在感が得られる。
【0021】
粒子分散体10の板厚方向の厚さは、1~200mmが好ましい。粒子分散体10の厚さが1mm以上であれば、強度が強くなりやすい。粒子分散体10の厚さは2mm以上がより好ましく、2.5mm以上がさらに好ましい。また、粒子分散体10の厚さが200mm以下であれば、軽量となりやすい。粒子分散体10の厚さは150mm以下がより好ましく、100mm以下がさらに好ましい。
【0022】
<<マトリックス>>
マトリックス11としては、例えば、ガラス及び樹脂が挙げられる。ガラスは特に限定されず、例えば、フロート法又はフュージョン法により平板形状に成形されたガラス、前記平板形状のガラス板を重力成形又はプレス成形などにより湾曲形状に成形した曲げガラス、ガラス融液を型に流し込むことにより成形されたガラス、ガラスカレットを用いて集積することにより得られたガラスが挙げられる。また、ガラスは、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス等から用途に応じて適宜選択できる。
【0023】
ガラスがソーダライムガラスである場合、グリーンガラスであってもよく、クリアガラスであってもよい。さらには、ガラス表面に圧縮応力層を有し、ガラス内部に引張応力層を有する強化ガラスであってもよい。強化ガラスとしては、化学強化ガラス、風冷強化ガラス(物理強化ガラス)のいずれをも用いることができる。
【0024】
樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、透明ポリイミド等が挙げられ、中でもフッ素樹脂又はシリコーン樹脂が高耐久性を有するためより好ましい。
【0025】
マトリックス11の屈折率と粒子12の屈折率との差(屈折率差)は、光を十分に散乱させる観点から0.1以上であり、0.12以上が好ましく、0.15以上がより好ましい。また、屈折率の差の上限は特に限定されないが、粒子分散体10の光透過性の観点から2.0以下が好ましい。
【0026】
<<粒子>>
粒子12としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の微粒子、ガラスの微粒子、ポーラスシリカ、中空シリカ等の微粒子、アクリル系、アクリル-スチレン系、メラミン系等の有機微粒子等が挙げられる。また、例えば、マイカ又はシリカ等が酸化チタン等の上記微粒子でコーティングされている粒子が挙げられる。
【0027】
粒子12は、光照射時に光の色分布のグラデーションを呈する点から、平均粒子径が50nm以下であり、30m以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。一方、光照射時に十分な光分散性を得る点から、平均粒子径は10nm以上であり、好ましくは12nm以上であり、より好ましくは15nm以上である。
【0028】
なお、本明細書において平均粒子径とは、粒子12をSEM(scanning electron microscope、走査型電子顕微鏡)により観察し、少なくとも10個以上の粒子の粒子径(直径)を測定し、平均を算出することにより測定できる。また、粒子分散体10として後述する分相ガラスを用いる場合、粒子12である分散相の平均粒子径とは、バイノーダル状態の場合の一方の相が球状の場合はその直径をいう。
【0029】
粒子12は、光照射時に光の色分布のグラデーションを鮮明にする点から、粒子分散体10における粒子分布(半値幅)が30nm以下であり、25nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。また、光照射時に十分な光分散性を得る点から、半値幅は10nm以上であり、12nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましい。
【0030】
粒子分散体10における粒子12の密度(粒子密度)は、光照射時に光の色分布のグラデーションを呈する点から150個/μm以上であり、180個/μm以上が好ましく、200個/μm以上がより好ましい。また、粒子分散体10のHaze値を低く保つ点から粒子密度は400個/μm以下であり、300個/μm以下が好ましく、250個/μm以下がより好ましい。
【0031】
粒子分散体10は、光照射時に光が長距離を伝搬できる必要がある点から、厚さ10mmにおける可視光透過率Tv(即ち板厚10mm換算でのTv)が、67%以上であることが好ましく、また70%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは75%以上、よりさらに好ましくは80%以上である。上限は特に制限されないが、光照射時に十分な光分散性を得る点から91%以下であることが好ましく、より好ましくは88%以下、さらに好ましくは85%以下である。可視光透過率TvはJIS R 3106:2019年に準拠して測定する。
【0032】
粒子分散体10は、マトリックス11及び粒子12を含み、光を散乱させられれば特に限定されず、ゾルゲル膜やガラスペーストといった態様であってもよい。
【0033】
粒子分散体10として、分相ガラスを用いてもよい。ガラスの分相とは、単一相のガラスが、二つ以上のガラス相に分かれることをいう。ガラスを分相させる方法としては、例えば、ガラスを成形後に熱処理する方法または、ガラスを成形前に分相温度以上で保持する方法が挙げられる。
【0034】
ガラスを分相するために成形後に熱処理する条件としては、典型的には、熱処理温度はガラス転移点より50℃以上高いことが好ましく、100℃以上高いことがより好ましい。また、ガラスを変形しにくくする点から、熱処理温度はガラス転移点より400℃高い温度以下であることが好ましく、ガラス転移点より300℃高い温度以下であることがより好ましい。ガラスを熱処理する時間は、粒径を制御するためには0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。量産性の観点からは36時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下がさらに好ましい。ガラスを成形前に分相温度以上で保持する方法としては、ガラスを分相開始温度以上に保持してから分相開始温度以下で保持して分相させる方法が好ましい。
【0035】
ガラスが分相しているか否かは、SEMにより判断できる。ガラスが分相している場合、SEMで観察すると、2つ以上の相に分かれていることが観察できる。
【0036】
分相ガラスとしては、バイノーダル状態であるバイノーダル型分相ガラスとスピノーダル状態であるスピノーダル型分相ガラスが挙げられる。バイノーダル状態とは、核生成-成長機構による分相であり、一般的には球状である。また、スピノーダル状態とは、分相が、ある程度規則性を持った、3次元で相互かつ連続的に絡み合った状態である。粒子分散体10としては、バイノーダル型分相ガラスが特に好ましい。バイノーダル型分相ガラスを粒子分散体10として用いることにより、バイノーダル型分相ガラスの分散相が粒子12として機能し得る。
【0037】
粒子分散体10を構成するマトリックス11及び粒子12の特性により、光照射時の光の色分布のグラデーションを調整できる。具体的には、例えば、粒子分散体10を構成するマトリックス11の種類;粒子12の種類、粒子径、半値幅、密度等を適宜調整する。
【0038】
<<光発生装置>>
本実施形態に係る光源付き照明体1は、照明体である粒子分散体10と、光発生装置20とを含み、光発生装置20により粒子分散体10の端面に光が照射されるものである。光発生装置20は、粒子分散体10の端面に光を照射できるものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0039】
光発生装置20(光源)としては、例えば、複数の発光素子と、これらを搭載する長尺の可撓性基板とを備える装置が挙げられる。発光素子としては、例えば、発光ダイオード素子と、これを囲い、光を所定方向に導く反射面を備えたケースとから構成されるものが挙げられる。
【0040】
可撓性基板としては、例えば、ポリイミド等の樹脂をベースとするフレキシブル基板やガラスエポキシ基板等のリジッド基板(剛性基板)が挙げられる。また、例えば、光源と光ファイバーとを含む装置も挙げられ、この場合には、光ファイバーの一端に光源が配置される。
【0041】
このような光発生装置20により、粒子分散体10の端面に光が照射されることが好ましい。また、光発生装置20と粒子分散体10の端面との間に隙間が存在していてもよいが、光を効率的に入射させる観点から、光発生装置20と粒子分散体10の端面とが接触しており、隙間が存在しない方が好ましい。この場合において、光発生装置20と粒子分散体10の端面とが接着剤等により固定されることが、前述した光入射の効率性に加えて光発生装置20と粒子分散体10の端面を保護できることからより好ましい。
【0042】
この際に用いる接着剤は、光発生装置20から粒子分散体10への光の入射を容易にすることから、その屈折率が粒子分散体10の屈折率より低いことが好ましい。このような接着剤として、例えば、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤又はアクリル系接着剤が好ましい。
【実施例
【0043】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0044】
光源付き照明体1の種々の試験体を作製し、評価した。例1及び2は実施例であり、例3及び4は比較例である。
【0045】
〔試験体作製〕
<照明体>
(例1、例2及び例3)
幅50mm×板厚方向の厚さ30mm×長さ200mmのバイノーダル型分相ガラスからなるガラス板を照明体である粒子分散体10として用いた。
【0046】
(例4)
幅50mm×板厚方向の厚さ30mm×長さ200mmの分散相がないガラスからなるガラス板を照明体として用いた。
【0047】
<光発生装置>
光発生装置として、LED球が8mm間隔で配列されたテープLED(色温度:4000K、Ra98)を用いた。出力はDC 12V、1.5Aである。
【0048】
上記の材料を用いて、光源付き照明体1の試験体を作製し、下記評価方法により評価した。
【0049】
<評価方法>
上記の例1~4で作製した試験体の特性を以下の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0050】
(平均粒子径、粒子密度、半値幅)
例1~3について、ガラス板を常温割断後、試料の表面及び断面を機械研磨した後、白金(表面:約5nm、断面:約2nm)を施し、FIB(集束イオンビーム)加工に供して断面を得た。このようにして得られた断面をSEM-EDX(株式会社日立ハイテク製SU8230)により観察及び分析した。
【0051】
SEM-EDXによる観察及び分析条件は以下とした。
(観察)加速電圧:1.5kv、プローブ電流:Normal、エミッション電流:10μA、検出器条件:SE(U、LA100)、WD:2mm、導電コートなし
(分析)加速電圧:6.0kv、プローブ電流:High、エミッション電流:10μA、検出器条件:SE(U、LA100)、WD:10.5mm、Cコート:約15nm
【0052】
SEM-EDXの観察画面から粒子12の密度(粒子密度)、半値幅を計測した。「粒子密度」とは、粒子分散体10中の粒子12の濃度を意味する。合わせて、その観察画面の10個以上の粒子12の粒子径測定後、その平均値を算出することで平均粒子径を評価した。例1及び2については、観察画面内の分相粒子が円形であると仮定した場合の粒子径を画像解析ソフト(三谷商事株式会社製WinROOF)の分離図形編集機能により測定後、そのような測定を同じ観察画面内の10個以上の分相粒子に対して行い、その平均値を算出することで、分相粒子の平均粒子径を評価した。
【0053】
(屈折率)
屈折率は、JIS K7142:2014に準じて、アッベ屈折計(島津製作所社製、製品名:KPR-2000)を用いて以下の条件で測定したものである。
<測定条件>
・He光源
・波長:587.6nm
【0054】
(主波長Dw)
粒子分散体のJIS Z 8701:1999規定の透過率を、粒子分散体10の1mmあたりの透過率の変化量に置き換えて、JIS Z 8701:1999規定の標準C光源における主波長Dwを求めた。透過率の測定は、分光光度計(Perkin Elmer社製、Lamda950)を用いた。表1における「端から20mmのDw」は、粒子分散体10の端面から20mmの位置におけるDwをさす。また、表1における「ΔDw」は、「端から220mmのDw」と「端から20mmのDw」との差をさす。
【0055】
(可視光透過率Tv)
可視光透過率については、JIS R 3106:2019年に準拠して、分光光度計(Perkin Elmer社製、Lambda950)を用いて測定した。表1におけるTvは厚さ10mm換算の値である。
【0056】
(Haze値)
得られた厚さ30mmの照明体に対し、ヘイズメーター(村上色彩研究所社製、HM-65W)を用いて、JIS K 7136:2000年に準拠してHaze値の測定を行った。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、実施例である例1及び例2の試験体は、粒子分散体に含まれる粒子の平均粒子径が10~50nm、半値幅が10~30nm、粒子密度が150~400個/μmであり、光発生装置から光を通す方向の主波長Dwの200mmあたりの変化量が10nm以上であるため、光照射した際に粒子分散体から発する光がグラデーションに見えた。
【0059】
比較例である例3の試験体は、粒子分散体に含まれる粒子の平均粒子径が50nm超、半値幅が30nm超、粒子密度が150個/μm未満であるため、光照射した際に粒子分散体から発する光がグラデーションを呈さず、均一に見えた。
【0060】
比較例である例4の試験体は、照明体として本発明で規定する粒子分散体を用いず、光発生装置から光を通す方向の主波長Dwの200mmあたりの変化量が10nm未満であるため、光照射した際に粒子分散体から発する光がグラデーションを呈さず、均一に見えた。
【0061】
以上より、照明体として用いる粒子分散体の構成を好適なものに調整し、光発生装置から光を通す方向の主波長Dwの200mmあたりの変化量を10nm以上とすることにより、光照射した際に粒子分散体から発する光がグラデーションに見えた。
【0062】
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2020年1月31日出願の日本特許出願(特願2020-014744)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る光源付き照明体は、光照射していない際の高い透明性と、光照射している際の光の色分布のグラデーションによる意匠性とを両立することから、光未照射時の審美性にも光照射時の意匠性にも優れる。そのため、車両用のパターンドガラスやウェルカムライト、デジタルサイネージ、ドアや窓の装飾等、幅広い用途に非常に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 光源付き照明体
10 粒子分散体
11 マトリックス
12 粒子
20 光発生装置
図1