(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】多層フィルム、蓋材及び包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240326BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240326BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 H
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2023563852
(86)(22)【出願日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2023025058
【審査請求日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2022114682
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】クンタラウト カタンユー
(72)【発明者】
【氏名】森谷 貴史
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-102301(JP,A)
【文献】特開2018-167547(JP,A)
【文献】特開2006-257134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/36
B32B 27/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール層(D)と、表面層(A)とを有する多層フィルムであって、
前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対するポリエステル系樹脂の質量比率が、70質量%以上であり、
前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する結晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が10質量%以上であり、
前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する非晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が20質量%以上であり、
前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対するポリオレフィン系樹脂の質量比率が1質量%以上であり
前記シール層(D)が、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル及びポリオレフィン系樹脂のいずれか2種以上を含有し、
前記表面層(A)が、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル及びポリオレフィン系樹脂のいずれか2種以上を含有する
ことを特徴とする多層フィルム。
【請求項2】
前記表面層(A)が、結晶性ポリエステル(a1)、非晶性ポリエステル(a2)及びポリオレフィン系樹脂(a3)を含有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記多層フィルムが、さらに中間層(C)を有する、請求項2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記中間層(C)が、前記シール層(D)と直接積層され、
前記中間層(C)が、結晶性ポリエステル(c1)及び/又は非晶性ポリエステル(c2)を含有し、
前記シール層(D)が、結晶性ポリエステル(d1)及び/又は非晶性ポリエステル(d2)を含有し、
前記シール層(D)に含まれる樹脂成分中の前記結晶性ポリエステル(d1)の質量比率と前記中間層(C)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステル(c1)の質量比率の合計と、
前記シール層(D)に含まれる樹脂成分中の前記非晶性ポリエステル(d2)の質量比率と前記中間層(C)に含まれる樹脂成分中の非晶性ポリエステル(c2)の質量比率の合計との差が60質量%以内である、
請求項3に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記シール層(D)が、ポリオレフィン系樹脂(d3)を含み、
前記シール層(D)に含まれる樹脂成分中の前記ポリオレフィン系樹脂(d3)の質量比率が1~18質量%である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項6】
請求項1~5
のいずれか1項に記載の多層フィルムからなる蓋材。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の多層フィルムの前記シール層(D)とシールする被着体が結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)樹脂を含む開口部を有する容器である、包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医療品等の包装材に使用する多層フィルム、蓋材及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や医療品等の各種樹脂容器の開口部を、多層フィルムを使用した蓋材により密封、封止した容器が用いられている。これら容器の蓋材としては、通常、内容物を容易に取り出せるよう簡易に開封可能であると共に、内容物が容易に漏洩しない好適なシール性が求められている。また、近年では内容物の長期保存や衛生面の観点から高温殺菌処理がなされる用途も多く、これらシール性や易開封性に加え、高温処理後にも好適にシール強度を保持できる高い耐熱性が求められている。
【0003】
このような容器の蓋材に使用されるフィルムとして、出願人は、表面層に結晶性ポリエステル(a1)とプロピレンブロック共重合体を、シール層に結晶性ポリエステル(a1)を使用した易剥離性フィルムを発明した(特許文献1参照)。この易剥離性フィルムは、好適なヒートシール性、易開封性、フィルム加工性を有し、ブロッキングが生じにくく、高いシール強度を有する多層フィルムであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記易剥離性フィルムは、高耐熱性の容器として使用されている結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)に対するシール強度が非常に高く、易剥離しづらく、剥離後に膜残りを生じる可能性があった。また、透明性がやや低く、内容物視認性に劣る場合があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、透明性やフィルム加工性に優れるとともに、結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)容器に使用した際にも良好なシール強度と開封強度を両立し、膜残りせず剥離後の外観が良好な多層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シール層(D) と、表面層(A)とを有する多層フィルムであって、前記多層フィルムを構成する樹脂全体 に対するポリエステル系樹脂の質量比率が、70質量%以上であり、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する結晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が10質量%以上であり、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する非晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が20質量%以上であり、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対するポリオレフィン系樹脂の質量比率が1質量%以上であることを特徴とする多層フィルムにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多層フィルムは、好適なシール性と易開封性とを有することから、各種樹脂容器の開口部を密封、封止する蓋材として好適に適用できる。特に、高温処理可能な結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)容器においても易開封性を確保できることから、高温殺菌処理がなされる食品や医療品等の用途に特に好適に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の多層フィルムは、シール層(D) と、表面層(A)とを有する多層フィルムであって、前記多層フィルムを構成する樹脂全体 に対するポリエステル系樹脂の質量比率が、70質量%以上であり、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する結晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が10質量%以上であり、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する非晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が20質量%以上であり、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対するポリオレフィン系樹脂の質量比率が1質量%以上であることを特徴とする多層フィルムである。
【0010】
[シール層(D)]
本発明の多層フィルムのシール層(D)は、結晶性ポリエステル(d1)、非晶性ポリエステル(d2)及びポリオレフィン系樹脂(d3)のいずれか2種以上を含有することが好ましく、結晶性ポリエステル(d1)、非晶性ポリエステル(d2)及びポリオレフィン系樹脂(d3)を含有することがさらに好ましい。当該シール層(D)を使用することで、耐ブロッキング性を有し、また、開封性に優れ、膜残りせず良好な剥離外観を有する多層フィルムを実現できる。
【0011】
(結晶性ポリエステル(d1))
上記結晶性ポリエステル(d1)は、多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合して製造されるポリエステル樹脂であり、結晶性を有するものである。具体的には、樹脂骨格中の一部に規則的配列構造に由来するラメラ結晶型や球晶型等の結晶構造を有するものである。このような結晶性ポリエステルは、示差走査熱量分析(DSC)において、結晶構造が熱により融解する際に発生する単独又は複数の結晶融解熱に由来する吸熱ピークを有することを特徴とする。
【0012】
本発明において、結晶性ポリエステルや非晶性ポリエステル等のポリエステル樹脂の融点(Tm)は、日本工業規格(JIS K7121)に準ずる方法、すなわち示差走査熱量分析(DSC)法により求められる値であり、具体的には、下記条件の示差走査熱量分析機を用いて測定される値である。
測定装置 ;株式会社日立ハイテク製 DSC-7020
試料:アルミ容器に試料を5mg程度入れ、蓋をする。
測定条件 ;
1.-50℃から280℃まで昇温(10℃/分)
2.280にて5分間保持
3.280℃から25℃まで降温(10℃/分)
4.25℃で5分間保持
5.25℃から280℃まで昇温(10℃/分)
解析 ;5の測定結果において、吸熱ピークが最大となる温度を融点(Tm)とする。
【0013】
上記多価カルボン酸としては、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びトリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸、並びにコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘプタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ダイマー酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
また、必要に応じて、その原料成分に、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等のモノカルボン酸を用いても良い。
【0014】
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルトリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチルペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-イコサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエチレングリコール、及びトリメチロールプロパン等の多価アルコールが挙げられる。
【0015】
上記の多価カルボン酸と多価アルコールとは、任意の組み合わせにより用いられる。具体的には、テレフタル酸/エチレングリコール共重合体、テレフタル酸/1,4ブタンジオール共重合体、テレフタル酸/1,4-ブタンジオール/アジピン酸共重合体、テレフタル酸/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/1,4ブタンジオール共重合体、テレフタル酸/イソフタル酸/1,4ブタンジオール/ポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体、テレフタル酸/イソフタル酸/1,4ブタンジオール共重合体、等が挙げられる。
【0016】
上記結晶性ポリエステル(d1)の融点は100~200℃であることが好ましく、110~180℃であることがより好ましい。当該融点の結晶性ポリエステルを使用することで、押出成形性が良好となる。また、当該結晶性ポリエステル(d1)のガラス転移温度は、40℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることがより好ましい。当該ガラス転移温度の結晶性ポリエステル(d1)を使用することで、ヒートシール性や易開封性が良好となる。このような結晶性ポリエステル(d1)としては、例えば、商品名「バイロン」(東洋紡株式会社)で市販されている樹脂が挙げられる。
【0017】
なお、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、日本工業規格(JIS K7121)に準ずる方法、すなわち示差走査熱量分析(DSC)法により求められる値である。
【0018】
(非晶性ポリエステル(d2))
上記非晶性ポリエステル(d2)は、多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合して製造されるポリエステル樹脂であり、実質的に結晶性を示さないポリエステルである。特に、結晶性ポリエステル(d1)において先に説明した示差走査熱量計による融点測定において、50℃~280℃の温度範囲にて明確な融解ピーク温度を有さないポリエステルであり、具体的にはこの温度範囲において、結晶融解熱量(ΔH)が1J/g以下であるものを意味する。
【0019】
上記多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、ジメチルマレイン酸、シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸、1-シクロへキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロへキセン-1,2-ジカルボン酸、フマル酸、メサコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
また、必要に応じて、その原料成分に、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等のモノカルボン酸を用いても良い。
【0020】
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルトリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチルペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-イコサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエチレングリコール、イソソルビド、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価アルコールが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0021】
上記の多価カルボン酸と多価アルコールとは、任意の組み合わせにより用いられる。具体的には、テレフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール共重合体、テレフタル酸/エチレングリコール/1,4-シクロヘキサンジメタノール/イソソルビド共重合体、テレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール共重合体、テレフタル酸/エチレングリコール/1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合体、テレフタル酸/1,4-シクロヘキサンジメタノール/2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール共重合体等が挙げられる。
【0022】
上記非晶性ポリエステル(d2)のガラス転移温度は、45~130℃であることが好ましく、60~120℃であることがより好ましい。当該ガラス転移温度の非晶性ポリエステル(d2)を使用することで、好適なフィルム加工性、耐熱性を確保できる。このような非晶性ポリエステル(d2)としては、例えば、商品名「ECOZEN」(SKケミカル社)で市販されている樹脂が挙げられる。
【0023】
本発明に使用するシール層(D)中の上記結晶性ポリエステル(d1)及び非晶性ポリエステル(d2)の合計含有量は、70質量%以上であると、好適なヒートシール性や耐熱性を得られる点で好ましい。また、好適なフィルム外観が得られる点で、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。当該含有量の上限は特に制限されるものではないが、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。また、当該結晶性ポリエステル(d1)と当該非晶性ポリエステル(d2)の含有比率としては、1:9~9:1であることが好ましい。
【0024】
本発明に使用するシール層(D)中の上記結晶性ポリエステル(d1)及び非晶性ポリエステル(d2)は、生分解性ポリエステルであってもよい。生分解性ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸系樹脂、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体(PBSA)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ吉草酸の共重合体、3-ヒドロキシ酪酸と4-ヒドロキシ酪酸の共重合体、等のポリヒドロキシアルカノエート類、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、β-プロピオラクトンやγ-バレロラクトン等の開環重合体等の脂肪族ポリエステル化合物、アジピン酸と1.4-ブタンジオ-ルとテレフタル酸のコポリエステル(ポリブチレンアジペートテレフタレート)、琥珀酸とエチレングリコールよりなるポリエステル(ポリエチレンサクシネート)等の脂肪族2塩基酸と脂肪族ジオ-ルよりなるポリエステル等、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルの共重合物、脂肪族ポリエステルとポリアミドの共重合物、ポリビニルアルコール、プルラン、、キトサン、カードラン、澱粉系グリーンプラ、エステル化澱粉、セルロース、酢酸セルロース等の天然系生分解性樹脂が挙げられる。これらの生分解性ポリエステルも、示差走査熱量分析(DSC)において、結晶構造が熱により融解する際に発生する単独又は複数の結晶融解熱に由来する吸熱ピークを有するものを結晶性ポリエステルとして、示差走査熱量計による融点測定において、50℃~280℃の温度範囲にて明確な融解ピーク温度を有さないポリエステルであり、具体的にはこの温度範囲において、結晶融解熱量(ΔH)が1J/g以下であるものを非晶性ポリエステルとして扱う。
【0025】
(ポリオレフィン系樹脂(d3))
本発明のシール層(D)には、ポリオレフィン系樹脂(d3)を含有することが好ましい。当該ポリオレフィン系樹脂(d3)は、相溶しにくい結晶性ポリエステル(d1)と非晶性ポリエステル(d2)中に均一に分散させて、その結果耐ブロッキング性及び剥離外観を良好にする機能を有していると発明者は推測している。
上記ポリオレフィン系樹脂(d3)としては、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等を好ましく使用できる。エチレン系樹脂としては超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン樹脂等を使用できる。また、プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、プロピレン-エチレンブテン-1共重合体等のプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。中でも、プロピレンブロック共重合体が好ましい。
【0026】
上記プロピレンブロック共重合体としては、プロピレンと他のα-オレフィンとを含有する樹脂を使用できる。α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテン等が例示でき、なかでもエチレンが耐熱性や耐衝撃性に優れているため好ましい。プロピレン-エチレンブロック共重合体は、特に限定されないが、例えば第一工程において、プロピレンを主体とした重合体ブロックを重合し、第二工程において、エチレンとプロピレンの共重合体ブロックを重合して得られる。
【0027】
上記プロピレンブロック共重合体は、Tダイ成膜法において冷却ロール40℃で、厚み60μmとなるように成形した時のプロピレンブロック共重合体の曇り度が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。当該曇り度の樹脂を使用することで好適な耐ブロッキング性やフィルム加工性が得られる。
【0028】
上記プロピレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、成形が容易であり、また好適な易開封性を得やすいことから、0.5~10g/10分(230℃、21.18N)であることが好ましく、2~5g/10分であることがより好ましい。
【0029】
上記プロピレンブロック共重合体の融点は、成形が容易であり、また優れた耐熱性を確保しやすいことから、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。
【0030】
本発明のシール層(D)に上記ポリオレフィン系樹脂(d3)を含有させる場合は、その含有量が、シール層(D)に含まれる樹脂成分中の1~18質量%であることが特に好ましい。特に、当該ポリオレフィン系樹脂(d3)として上記プロピレンブロック共重合体を含有させる場合は、その含有量が、シール層(D)に含まれる樹脂成分中の0.5~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、1~18質量%であることがさらに好ましい。当該含有量とすることで、好適な耐ブロッキング性やフィルム加工性が得られ、また、透明性及び剥離後に被着体に樹脂残りや膜残りがなく、好適な剥離外観が得られる点でも好ましい。
【0031】
本発明に使用するシール層(D)に使用する樹脂としては、上記結晶性ポリエステル(d1)と上記非晶性ポリエステル(d2)とポリオレフィン系樹脂(d3)のいずれか2種以上を使用することが好ましく、これら樹脂のみを使用することも好ましいが、これら樹脂以外の包装用フィルムに使用される各種樹脂を使用してもよい。当該他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン系エラストマー、ポリプロピレン系エラストマー、ブテン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等を例示できる。
【0032】
本発明に使用するシール層(D)に使用する樹脂成分として、上記結晶性ポリエステル(d1)と上記非晶性ポリエステル(d2)と上記ポリオレフィン系樹脂(d3)以外の樹脂を使用する場合には、その含有量が当該シール層(D)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明に使用するシール層(D)中には、上記樹脂成分以外に各種添加剤等を適宜併用してもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐電防止剤、防曇剤等、着色剤等を適宜使用できる。これら添加剤を使用する場合には、当該シール層(D)に使用する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは0.01~1質量部程度で使用する。
【0034】
なお、上記添加剤を使用する場合には、好適なヒートシール性を確保しやすいことから、フィラーの含有量、特に無機フィラーの含有量を300ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましく、100ppm以下とすることがさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0035】
本発明に使用するシール層(D)の多層フィルムの総厚に対する厚み比率は、易開封性やフィルム加工性を得やすいことから、多層フィルムの総厚みに対するシール層(D)の厚み比率としては、5~30%の範囲であることが好ましく、10~25%の範囲であることがより好ましい。
【0036】
[表面層(A)]
本発明の多層フィルムの表面層(A)は、結晶性ポリエステル(a1)、非晶性ポリエステル(a2)及びポリオレフィン系樹脂(a3)のいずれか2種以上を含有することが好ましく、結晶性ポリエステル(a1)、非晶性ポリエステル(a2)及びポリオレフィン系樹脂(a3)を含有することがより好ましい。当該表面層(A)を使用することで、耐ブロッキング性やフィルム加工性が良好となる。
【0037】
上記表面層(A)に使用する結晶性ポリエステル(a1)としては、上記シール層(D)の結晶性ポリエステル(d1)と同様のものを使用でき、好ましいものも同様である。
【0038】
上記表面層(A)に使用する非晶性ポリエステル(a2)としては、上記シール層(D)の非晶性ポリエステル(d2)と同様のものを使用でき、好ましいものも同様である。
【0039】
上記表面層(A)に使用するポリオレフィン系樹脂(a3)としては、上記シール層(D)のポリオレフィン系樹脂(d3)と同様のものを使用でき、好ましいものも同様である。特に、ポリオレフィン系樹脂(a3)として、プロピレンブロック共重合体を使用することが好ましい。当該ポリオレフィン系樹脂(a3)を使用することで、フィルムの表面平滑性が低下することによって、耐ブロッキング性が向上し、巻取りロールへのフィルム表面の付着を防ぐことも可能となる。
【0040】
本発明に使用する表面層(A)に含まれる樹脂成分中の上記ポリオレフィン系樹脂(a3)の含有量は、フィルム加工性や透明性を得やすいことから、1~30質量%が好ましく、1~25質量%がより好ましく、3~20質量%がさらに好ましい。
【0041】
本発明に使用する表面層(A)においても、使用する樹脂としては、上記結晶性ポリエステル(a1)と上記非晶性ポリエステル(a2)と上記ポリオレフィン系樹脂(a3)のいずれか2種以上を使用することが好ましく、またこれら樹脂のみを使用することも好ましいが、これら樹脂以外の包装用フィルムに使用される各種樹脂を使用してもよい。当該他の樹脂としては、上記シール層(D)にて例示した各種樹脂を同様に使用できる。これら他の樹脂を使用する場合には、その含有量が表面層(A)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
上記表面層(A)においても上記シール層(D)と同様の各種添加剤等を適宜併用してもよい。これら添加剤を使用する場合には、当該表面層(A)に使用する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは0.01~1質量部程度で使用する。
【0043】
フィラーの含有量、特に無機フィラーの含有量についても、シール層(D)と同様に300ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましく、100ppm以下とすることがさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0044】
表面層(A)の多層フィルムの総厚に対する厚み比率は、好適なフィルム加工性を得やすいことから、10~95%の範囲であることが好ましく、20~90%の範囲であることがより好ましい。
【0045】
(中間層(C))
本発明の多層フィルムにおいては、上記表面層(A)とシール層(D)の間に、当該シール層(D)と直接積層される中間層(C)を有することも好ましい。
当該中間層(C)を設ける場合は、当該中間層が結晶性ポリエステル(c1)及び/又は非晶性ポリエステル(c2)を含有し、前記シール層(D)に含まれる樹脂成分中の前記結晶性ポリエステル(d1)の質量比率と前記中間層(C)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステル(c1)の質量比率との合計と、前記シール層(D)に含まれる樹脂成分中の前記非晶性ポリエステル(d2)の質量比率と前記中間層(C)に含まれる樹脂成分中の非晶性ポリエステル(c2)の質量比率との合計との差が、60質量%以内であることが好ましく、30質量%以内であることがより好ましく、25質量%以内であることがさらに好ましい。
すなわち、当該シール層(D)の結晶性ポリエステル(d1)と非晶性ポリエステル(d2)の構成比率に応じて、当該中間層(C)の結晶性ポリエステル(c1)と非晶性ポリエステル(c2)の構成比率を調整することが好ましい。このような中間層(C)を設けることで、特に安定した易剥離性を確保しやすくなる。
【0046】
上記結晶性ポリエステル(c1)及び非晶性ポリエステル(c2)としては、上記シール層(D)で開示した結晶性ポリエステル(d1)及び非晶性ポリエステル(d2)と同様のものを使用でき、好ましいものも同様である。
【0047】
上記中間層(C)に含まれる樹脂成分中の上記結晶性ポリエステル(c1)及び/又は非晶性ポリエステル(c2)の合計含有量は、70~100質量%とすることが好ましく、80~100質量%とすることがより好ましい。当該結晶性ポリエステル(c1)及び/又は非晶性ポリエステル(c2)の合計含有量を当該範囲とすることで、安定した易開封性を確保しやすく、また、透明性も良好となる。
【0048】
上記中間層(C)には、さらにポリオレフィン系樹脂(c3)を含有してもよい。当該ポリオレフィン系樹脂(c3)としては、上記シール層(D)と同様のものを使用でき、好ましいものも同様である。特に、ポリオレフィン系樹脂(c3)としてプロピレンブロック共重合体を使用することが好ましい。当該ポリオレフィン系樹脂(c3)の含有量は、当該中間層(C)に含まれる樹脂成分中の30質量%未満とすることが好ましく、20質量%未満とすることがより好ましい。
【0049】
上記中間層(C)において、樹脂成分として上記結晶性ポリエステル(c1)と上記非晶性ポリエステル(c2)のみを使用することも好ましいが、さらにポリオレフィン系樹脂(c3)を使用してもよいし、これら樹脂以外の包装用フィルムに使用される各種樹脂を使用してもよい。当該他の樹脂としては、上記シール層(D)にて例示した各種樹脂を同様に使用できる。これら他の樹脂を使用する場合には、その含有量が中間層(C)に含まれる樹脂成分中の20質量%未満であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましく、5質量%未満であることがさらに好ましい。
【0050】
上記中間層(C)においても上記シール層(D)と同様の各種添加剤等を適宜併用してもよい。これら添加剤を使用する場合には、当該中間層(C)に使用する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは0.01~1質量部程度で使用する。
【0051】
上記中間層(C)を設ける場合には、多層フィルムの総厚みに対する当該中間層(C)の厚み比率が、5~80%の範囲であることが好ましく、10~70%の範囲であることがより好ましい。
【0052】
(中間層(B))
本発明の多層フィルムは、上記表面層(A)と中間層(C)とシール層(D)の他に、中間層(B)を設けても良い。当該中間層(B)は、当該表面層(A)と中間層(C)の間に位置する。中間層(B)は二層以上の複数層で構成してもよい。
【0053】
上記中間層(B)は、樹脂成分として結晶性ポリエステル(b1)及び/又は非晶性ポリエステル(b2)を含有することが好ましい。また、当該中間層(B)に含まれる樹脂成分中の当該結晶性ポリエステル(b1)と非晶性ポリエステル(b2)の合計質量比率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。さらに、当該中間層(B)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステル(b1)の質量比率が非晶性ポリエステル(b2)より少ない方が、コストの面から好ましい。
また、当該中間層(B)を複数層構成とする場合には、各層が結晶性ポリエステル(b1)と非晶性ポリエステル(b2)とを含有し、中間層(B)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステル(b1)の含有量が0~50質量%、非晶性ポリエステル(b2)の含有量が50~100質量%の層とすることで、本発明の効果を好適に実現できる。なお、当該中間層(B)を複数層とする場合には、当該配合範囲であれば、各層が同一の配合であっても、異なる配合であってもよい。
【0054】
上記中間層(B)の厚み比率は、20~90%であることが好ましく、40~70%であることがより好ましい。
中間層(B)を複数層とする場合には、中間層(B)の総厚が多層フィルムの総厚みに対して20~90%であることが好ましく、40~70%であることがより好ましい。
【0055】
[多層フィルム]
本発明の多層フィルムは、上記シール層(D)及び表面層(A)を有するフィルムである。また、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する結晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が10質量%以上、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する非晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が20質量%以上、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対するポリオレフィン系樹脂の質量比率が1質量%以上である。なお、結晶性ポリエステル系樹脂とは、結晶性ポリエステル(a1)、結晶性ポリエステル(b1)、結晶性ポリエステル(c1)、結晶性ポリエステル(d1)及びその他の結晶性ポリエステル系樹脂を含み、非晶性ポリエステル系樹脂とは、非晶性ポリエステル(a2)、非晶性ポリエステル(b2)、非晶性ポリエステル(c2)、非晶性ポリエステル(d2)及びその他の非晶性ポリエステル系樹脂を含み、ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン系樹脂(a3)、ポリオレフィン系樹脂(b3)、ポリオレフィン系樹脂(c3)、ポリオレフィン系樹脂(d3)及びその他のポリオレフィン系樹脂を含む。
【0056】
本発明の多層フィルムを構成する樹脂全体に対する上記結晶性ポリエステル系樹脂の質量比率は、10質量%以上であり、20質量%以上であることがより好ましく、20~50質量%以上であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。当該結晶性ポリエステル系樹脂の質量比率がこの範囲であると、高い透明性と良好な剥離外観を両立しやすくなる。
また、当該多層フィルム全体に対する上記非晶性ポリエステル系樹脂の質量比率は、20質量%以上であり、50質量%以上であることがより好ましく、60~80質量%であることがさらに好ましい。当該非晶性ポリエステル系樹脂の質量比率がこの範囲であると、剛性が良好となり、多層フィルムの物性調整が容易になる。
さらに、当該多層フィルムを構成する樹脂全体に対するポリオレフィン系樹脂の質量比率は、1~20質量%であることがより好ましく、2~10質量%であることがさらに好ましい。当該ポリオレフィン系樹脂の質量比率がこの範囲であると、耐ブロッキング性に優れ、剥離外観の良好な多層フィルムを得ることができる。
【0057】
本発明の多層フィルムは、ブロッキング防止のため、上記シール層(D)及び表面層(A)のいずれかに、上記ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、上記シール層(D)及び表面層(A)の両方に上記ポリオレフィン系樹脂を含むことがより好ましい。
【0058】
本発明の多層フィルムの最小の層構成は表面層(A)/シール層(D)の層構成であり、上記中間層(C)を設ける場合には表面層(A)/中間層(C)/シール層(D)の層構成の多層フィルムであり、上記中間層(B)を設ける場合は表面層(A)/中間層(B)/中間層(C)/シール層(D)の層構成の多層フィルムである。また、中間層(B)を複数層構成とする場合には、例えば表面層(A)/中間層(B1)/中間層(B2)/中間層(C)/シール層(D)等の層構成であってもよい。また、その他の層を含んでいてもよい。
本発明の多層フィルムは、当該構成により、好適なヒートシール性や易剥離性を有し、成膜時のブロッキングが生じにくく、高温処理後にも高いシール強度を確保した好適な耐熱性を有する。
【0059】
本発明の多層フィルムは、上記中間層(C)及び/又は中間層(B)を含むことがより好ましい。当該中間層(C)及び/又は中間層(B)を含むことにより、本発明の多層フィルム中のポリオレフィン系樹脂の添加量を調整しやすくなり、透明性を向上させることが可能となる。
【0060】
本発明の多層フィルムは、当該多層フィルムを構成する樹脂全体に対するポリエステル系樹脂の質量比率が、70質量%以上である。当該ポリエステル系樹脂とは、上記結晶性ポリエステル系樹脂、上記非晶性ポリエステル系樹脂、その他のポリエステルを含む。また、当該質量比率は80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。当該質量比率を70質量%以上とすることで、フィルムのリサイクル性が向上する。また、90質量%以上である場合、包材のモノマテリアル化を達成しやすくなり、リサイクル性がさらに向上する。
【0061】
本発明の多層フィルムは、フィルムの厚さが5~100μmのものが好ましく、より好ましくは10~80μm、さらに好ましくは20~60μmである。フィルムの厚さがこの範囲であれば、好適なヒートシール性や耐熱性、フィルム加工性等を得やすくなる。
【0062】
また、各層の厚みは、特に制限されるものではないが、例えば、上記表面層(A)の厚みとしては、1~40μmであることが好ましく、1~30μmであることがより好ましく、3~30μmであることがさらに好ましい。上記シール層(D)の厚みは1~30μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましく、2.5~10μmであることがさらに好ましい。上記中間層(C)を設ける場合には、その厚みは1~30μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましく、3~10μmであることがさらに好ましい。上記中間層(B)を設ける場合には、1~60μmであることが好ましく、2~50μmであることがより好ましく、3~40μmであることがさらに好ましい。
【0063】
なお、中間層(B)を複数層とする場合、例えば表面層(A)/中間層(B1)/中間層(B2)/中間層(C)/シール層(D)等の構成とする場合には、中間層(B1)と中間層(B2)の総厚みが上記中間層(B)の好ましい厚み範囲であることが好ましい。
【0064】
本発明の多層フィルムは、内容物保護の観点から、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムとラミネートした構成で、本発明のシーラントフィルムを厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムに、シール幅1cmで、200℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした試験片を、180°方向に300mm/分の速度で剥離したときのシール強度の最大値が、5~20N/15mmであることが好ましく、6~15N/15mmであることが好ましい。
なお、シール方法については特に限定されず、超音波シール等の方法を用いてもよいが、ヒートシールが特に好ましい。
【0065】
本発明の多層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、表面層(A)、シール層(D)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、中間層(C)を設ける場合には、さらに中間層(C)に用いる樹脂又は樹脂混合物を、中間層(B)を設ける場合には、さらに中間層(B)に用いる樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(D)の順や、(A)/(C)/(D)の順や、(A)/(B)/(C)/(D)の順等で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。
【0066】
本発明の多層フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形も可能となる。
【0067】
さらに、印刷インキとの接着性や、ラミネート用シーラントフィルムとして使用する場合のラミネート適性を向上させるため、前記表面層(A)に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0068】
(ラミネートフィルム)
本発明の多層フィルムは、その他の基材をラミネ-トして使用することもできる。当該その他の基材は、表面層(A)側にラミネートすることが好ましい。当該その他の基材は特に限定されず、普通紙、コート紙といった紙基材や、未延伸フィルム及び延伸フィルムといったプラスチックフィルムでもよいし、不織布等であってもよいが、モノマテリアル化によりリサイクル性を向上させるため、ポリエステル系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0069】
ラミネート方法としては公知の方法を実施でき、接着剤を用いたドライラミネートや、押出ラミネート等が挙げられる。当該ラミネートに用いる接着剤としては、公知の接着剤を使用することができるが、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物との2液硬化型接着剤であることが好ましい。2液硬化型接着剤は、溶剤型又は無溶剤型のいずれの形態であってもよい。
また、当該接着剤の乾燥後の質量は、0.1~10g/m2であることが好ましく、1~6g/m2であることがより好ましく、2~5g/m2であることがさらに好ましいが、モノマテリアル化のため、接着剤は少ない方がより好ましい。
【0070】
[蓋材]
本発明の多層フィルムは、そのまま蓋材として使用してもよいが、表面層(A)上に基材フィルムをラミネートした積層体からなる蓋材とすることも好ましい。基材フィルムとしては、シール性やデッドホールド性を損なわないものであれば特に制限はないが、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、易裂け性二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ナイロン等が挙げられる。これら基材フィルムの中の1種類又は2種類以上を併用しても構わないが、モノマテリアル化の観点から、ラミネートするフィルムは二軸延伸ポリエステル(PET)及び易裂け性二軸延伸ポリエステル(PET)等のポリエステル系樹脂であることが好ましい。接着方法としては、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
【0071】
前記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル-ポリウレ
タン系接着剤、ポリエステル-ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0072】
本発明の蓋材は、開口部を有する容器を、シールにより密着させて密閉するための蓋材として使用するものであるが、この開口部を有する容器として、その最表面層の素材(蓋材をヒートシールする部分)がポリエステル樹脂である容器に好ましく適用できる。特に、ヒートシール部が結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)を主成分とする容器に対しても好適なシール性や耐熱性を実現できることから、結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)容器用の蓋材としても好ましく使用できる。また、紙層とポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層とからなる紙PET容器用の蓋材としても好ましく使用できる。
【0073】
[包装材]
本発明の多層フィルムからなる包装材としては、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、包装容器等が挙げられる。
当該包装袋は、本発明の多層フィルムのシール層同士を重ねてシール、あるいは最外層とシール層とを重ね合わせてシールすることにより形成した包装袋であることが好ましい。また、当該包装袋は、本発明の多層フィルムを用いたラミネートフィルムにより作成することも可能である。
当該包装袋としては、例えば当該多層フィルム2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をシールして袋状にした後、シールをしていない1辺から内容物を充填しシールして密封することで包装袋として用いることができる。さらには自動包装機によりロール状のフィルムを円筒形に端部をシールした後、上下をシールすることにより包装袋を形成することも可能である。
【0074】
また、本発明の多層フィルムは、当該多層フィルムのシール層(D)とシール可能な別のフィルムを重ねてシールすることにより包装袋・容器を形成することも可能である。その際、当該別のフィルムとしては、比較的機械強度の弱いLDPE、EVA等のフィルムを用いることができる。また、LDPE、EVA等のフィルムと、比較的引き裂き性の良い延伸フィルム、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等とを貼り合わせたラミネートフィルムも用いることができる。中でも、モノマテリアル化の観点から、当該別のフィルムがポリエステル系フィルムからなるフィルムであることが好ましい。
【0075】
本発明の多層フィルムを用いた包装材には、初期の引き裂き強度を弱め、開封性を向上するため、シール部にVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔等の任意の引き裂き開始部を形成することが好ましい。
【実施例】
【0076】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。以下、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0077】
(実施例1)
表面層(A)及びシール層(D)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂、樹脂混合物を調整した。これら樹脂、樹脂混合物を押出機に供給して溶融し、溶融した樹脂を、フィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置に供給し、共溶融押出により、フィルムの層構成が、表面層(A)/シール層(D)の2層構成で、各層の厚み比率が80%/20%、総厚みが30μmの多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(3)(a1)(融点165℃、ガラス転移温度-32℃)10部、非晶性ポリエステル(2)(a2)(ガラス転移温度72℃)80部、プロピレンブロック共重合体(2)(a3)(メルトフローレート(以下、MFR)(230℃、21.18N)2.3g/10分、密度0.9g/cm3、融点167℃、フィルム成膜時の曇り度70%)10部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)80部、非晶性ポリエステル(2)(d2)10部、プロピレンブロック共重合体(2)(d3)10部
【0078】
(実施例2)
表面層(A)とシール層(D)に使用する樹脂を下記とした以外は実施例1と同様にして多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(3)(a1)20部、非晶性ポリエステル(2)(a2)80部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)90部、プロピレンブロック共重合体(1)(d3)(MFR(230℃、21.18N)2.0g/10分、密度0.9g/cm3、融点165℃、フィルム成膜時の曇り度52%)10部
【0079】
(実施例3)
表面層に使用する樹脂を下記とした以外は実施例2と同様にして多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(3)(a1)40部、非晶性ポリエステル(2)(a2)60部
【0080】
(実施例4)
表面層(A)、中間層(B)、中間層(C)及びシール層(D)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂、樹脂混合物を調整した。これら樹脂、樹脂混合物を押出機に供給して溶融し、溶融した樹脂を、フィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置に供給し、共溶融押出により、フィルムの層構成が、表面層(A)/中間層(B)/中間層(C)/シール層(D)の4層構成で、各層の厚み比率が20%/50%/10%/20%、総厚みが30μmの多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(3)(a1)10部、非晶性ポリエステル(2)(a2)80部、プロピレンブロック共重合体(1)(a3)10部
中間層(B):結晶性ポリエステル(3)(b1)10部、非晶性ポリエステル(2)(b2)90部
中間層(C):結晶性ポリエステル(3)(c1)10部、非晶性ポリエステル(2)(c2)90部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)90部、非晶性ポリエステル(2)(d2)10部
【0081】
(実施例5)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)80部、非晶性ポリエステル(2)(d2)10部、プロピレンブロック共重合体(1)(d3)10部
【0082】
(実施例6)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)95部、プロピレンブロック共重合体(1)(d3)5部
【0083】
(実施例7)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)90部、プロピレンブロック共重合体(1)(d3)10部
【0084】
(実施例8)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)80部、プロピレンブロック共重合体(1)(d3)20部
【0085】
(実施例9)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)70部、非晶性ポリエステル(2)(d2)10部、プロピレンブロック共重合体(1)(d3)20部
【0086】
(実施例10)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)75部、非晶性ポリエステル(2)(d2)15部、プロピレンブロック共重合体(1)(d3)10部
【0087】
(実施例11)
表面層(A)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(3)(a1)10部、非晶性ポリエステル(2)(a2)80部、プロピレンブロック共重合体(2)(a3)10部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)75部、非晶性ポリエステル(2)(d2)15部、プロピレンブロック共重合体(2)(d3)10部
【0088】
(実施例12)
中間層(C)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
中間層(C):結晶性ポリエステル(3)(c1)100部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)10部、非晶性ポリエステル(2)(d2)90部
【0089】
(実施例13)
中間層(C)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
中間層(C):結晶性ポリエステル(3)(c1)100部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)50部、非晶性ポリエステル(2)(d2)50部
【0090】
(実施例14)
表面層(A)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(3)(a1)10部、非晶性ポリエステル(2)(a2)80部、プロピレンブロック共重合体(2)(a3)10部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(c1)80部、非晶性ポリエステル(2)(d2)10部、プロピレンブロック共重合体(2)(d3)10部
【0091】
(実施例15)
表面層(A)、中間層(B)、中間層(C)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(3)(a1)10部、非晶性ポリエステル(1)(a2)(ガラス転移温度90℃)80部、プロピレンブロック共重合体(2)(a3)10部
中間層(B):結晶性ポリエステル(3)(b1)10部、非晶性ポリエステル(1)(b2)90部
中間層(C):結晶性ポリエステル(3)(c1)10部、非晶性ポリエステル(1)(c2)90部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)80部、非晶性ポリエステル(1)(d2)10部、プロピレンブロック共重合体(2)(d3)10部
【0092】
(実施例16)
表面層(A)、中間層(B)、中間層(C)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(1)(a1)(融点126℃、ガラス転移温度-70℃)10部、非晶性ポリエステル(2)(a2)80部、プロピレンブロック共重合体(2)(a3)10部
中間層(B):結晶性ポリエステル(1)(b1)10部、非晶性ポリエステル(2)(b2)90部
中間層(C):結晶性ポリエステル(1)(c1)10部、非晶性ポリエステル(2)(c2)90部
シール層(D):結晶性ポリエステル(1)(d1)80部、非晶性ポリエステル(2)(d2)10部、プロピレンブロック共重合体(2)(d3)10部
【0093】
(実施例17)
表面層(A)、中間層(B)、中間層(C)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(2)(a1)(融点120℃、ガラス転移温度-35℃)、非晶性ポリエステル(2)(a2)80部、プロピレンブロック共重合体(2)(a3)10部
中間層(B):結晶性ポリエステル(2)(b1)10部、非晶性ポリエステル(2)(b2)90部
中間層(C):結晶性ポリエステル(2)(c1)10部、非晶性ポリエステル(2)(c2)90部
シール層(D):結晶性ポリエステル(2)(d1)80部、非晶性ポリエステル(2)(d2)10部、プロピレンブロック共重合体(2)(d3)10部
【0094】
(比較例1)
表面層(A)、中間層(B)、中間層(C)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(3)(a1)10部、非晶性ポリエステル(2)(a2)90部
中間層(B):結晶性ポリエステル(3)(b1)10部、非晶性ポリエステル(2)(b2)90部
中間層(C):結晶性ポリエステル(3)(c1)10部、非晶性ポリエステル(2)(c2)90部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)90部、非晶性ポリエステル(2)(d2)10部
【0095】
(比較例2)
表面層(A)、中間層(B)、中間層(C)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして多層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(1)(a1)60部、プロピレンブロック共重合体(1)(a3)40部
中間層(B)結晶性ポリエステル(1)(b1)60部、プロピレンブロック共重合体(1)(b3)40部
中間層(C):結晶性ポリエステル(1)(c1)60部、プロピレンブロック共重合体(1)(c3)40部
シール層(D):結晶性ポリエステル(3)(d1)80部、プロピレンブロック共重合体(1)(d3)20部
【0096】
[フィルム加工性の評価]
実施例及び比較例の多層フィルムについて、成膜時におけるフィルム加工性を以下の基準で評価した。
〇:多層フィルムがニップロールを通過する際に当該ロールに貼り付くことなく成膜でき、巻き上がったフィルムにしわの発生もない。
△:ニップロールを通過する際に若干当該ロールへの貼り付きが生じ、巻き上がったフィルムにしわが発生する。
×:多層フィルムがニップロールを通過する際に当該ロールに貼り付いて、フィルムの巻き上げが困難。
【0097】
[耐ブロッキング性の評価]
巻き取ったフィルムの表面層(A)とシール層(D)との貼り付き(ブロッキング)について、以下の基準で評価した。
◎:貼り付かない
〇:若干の貼り付きが生じるが、手で容易に剥がせる
×:貼り付いて剥がせない)
【0098】
[ヘイズの評価]
実施例及び比較例の多層フィルムのヘイズについて、JIS K 7105:1981に基づき、ヘーズメーター(日本電飾工業株式会社製)を用いて測定した。
◎:20%以下
〇:21~30%
△:31~49%
×:50%以上
【0099】
[開封強度の評価]
実施例及び比較例の多層フィルムと、厚みが12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムとを、ドライラミネート接着剤を用いてそれぞれ貼り合わせ、40℃で24時間エージングした後、縦と横が10cm×10cmになるよう切り出してラミネートフィルムを得た。前記で得られたラミネートフィルムと88φの結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)丸型成形容器とを、前記ラミネートフィルムのシール層(D)側の面がカップフランジ側に来るように重ね合わせたのち、カップシーラー(株式会社シンワ機械製カップシーラー)を用いて、220℃に調節された上部ヒートシール金型で、約100kg、1秒の条件でヒートシールした。得られたサンプルをヒートシールされたフランジ部分の外側フィルム部分をプッシュプルゲージ先端で掴み、フランジ水平面から45度の角度で蓋材を引き剥がしたときの最大強度を開封強度とした。
◎:15N以下
○:15~20N
×:20N超
【0100】
[シール強度の評価]
実施例及び比較例の多層フィルムと、厚みが12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムとを、ドライラミネート接着剤を用いてそれぞれ貼り合わせ、40℃で24時間エージングした後、縦と横が10cm×10cmになるよう切り出してラミネートフィルムを得た。前記で得られたラミネートフィルムと88φの結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)丸型成形容器とを、前記ラミネートフィルムのシール層(D)側の面がカップフランジ側に来るように重ね合わせたのち、カップシーラー(シンワ機械製カップシーラー)を用いて、220℃に調節された上部ヒートシール金型で、約100kg、1秒の条件でヒートシールした。得られたサンプルをヒートシールされたフランジ部分の内側フィルム部分を15mm幅で切り出して、プッシュプルゲージ先端で掴み、フランジ水平面から90度の角度で蓋材を引き剥がしたときの最大強度をシール強度とした。以下の基準で評価した。
◎:10N/15mm以上
○:7~9N/15mm
×:7N/15mm未満
【0101】
[剥離外観の評価]
上記開封強度測定に使用した試験片において、剥離後の被着体外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)被着体の剥離部に樹脂残りや膜残りがなかった
△:結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)被着体の剥離部の一部に多層フィルムの凝集破壊による樹脂残りや膜残りが確認された。
×:結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)被着体の剥離部の全箇所において多層フィルムの凝集破壊による樹脂残りや膜残りが確認された
【0102】
【0103】
【0104】
上記表から明らかなとおり、実施例1~17の本発明の多層フィルムは、好適なフィルム加工性、耐ブロッキング性を発揮することができ、透明性に優れ、良好な結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)に対する開封強度とシール強度を両立したものであった。また、膜残りせずに剥離後の外観が良好であった。
特に、中間層を有する実施例4~17の多層フィルムは、ポリオレフィン系樹脂の含有量を調節しやすいため、透明性とその他の特性を好適に維持しやすかった。さらに、結晶性ポリエステル(c1)と結晶性ポリエステル(d1)の合計質量比率と、非晶性ポリエステル(c2)と非晶性ポリエステルd2の合計質量比率の差が小さい実施例4~12及び実施例14~15の多層フィルムは、易剥離性とシール強度と剥離外観を両立しやすかった。
一方、比較例1~2の多層フィルムは、好適なフィルム加工性や易開封性、高いシール強度を兼備できないものであった。
【要約】
本発明は、 シール層(D)と、表面層(A)とを有する多層フィルムであって、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対するポリエステル系樹脂の質量比率が、70質量%以上であり、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する結晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が10質量%以上であり、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対する非晶性ポリエステル系樹脂の質量比率が20質量%以上であり、前記多層フィルムを構成する樹脂全体に対するポリオレフィン系樹脂の質量比率が1質量%以上であることを特徴とする多層フィルムを提供するものである。