(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】被覆材、管状成型体、管状成型体の製造方法、および、被覆方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240326BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20240326BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20240326BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20240326BHJP
B28B 21/30 20060101ALI20240326BHJP
B28C 7/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/28
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
C04B18/14 Z
B28B21/30
B28C7/04
(21)【出願番号】P 2019204139
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390025999
【氏名又は名称】中川ヒューム管工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
(72)【発明者】
【氏名】宮薗 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】人見 隆
(72)【発明者】
【氏名】村崎 裕一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝男
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-035054(JP,B1)
【文献】特開2005-289657(JP,A)
【文献】特開2009-161377(JP,A)
【文献】特開2005-035877(JP,A)
【文献】特開2019-059662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B103/00-111/94
B28B 21/00-23/22
B28C 1/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート組成物と水とが混練されて形成される混練物が遠心成型されてなる管状の混練物の内面を被覆する被覆材であって、
セメント、高炉スラグ微粉末、無機微粉末、および、細骨材を含む粉体材料と、前記混練物を遠心成型した際に管状の混練物の内側に染み出るノロと
、から構成され、
前記ノロ100質量部に対して、粉体材料が280質量部以上580質量部以下
であり、
前記無機微粉末は、フライアッシュ、石灰石微粉末、および、シリカフュームからなる群から選択される少なくとも一つであり、
セメントは、ポルトランドセメント、超速硬セメント、および、アルミナセメントからなる群から選択される少なくとも一つであ
り、
前記粉体材料は、セメントを18質量%以上36質量%以下、高炉スラグ微粉末を12質量%以上30質量%以下、無機質微粉末を2質量%以上5質量%以下、細骨材を0質量%を超え50質量%以下含む、被覆材。
【請求項2】
前記細骨材は、該細骨材全体に対して高炉スラグ細骨材を50質量%以上100質量%以下含む請求項
1に記載の被覆材。
【請求項3】
コンクリート組成物と水とが混練されて形成される混練物が遠心成型されて形成される管状の混練物の内面が、請求項1
又は2に記載の被覆材で被覆されて形成される管状成型体。
【請求項4】
請求項
3に記載の管状成型体の製造方法であって、
前記混練物を遠心成型して管状の混練物を形成する遠心成型工程と、
前記粉体材料を前記管状の混練物の内側に供給することで、前記被覆材を作製する被覆材作製工程と、
該被覆材で前記管状の混練物の内面を被覆する被覆工程と
を備える管状成型体の製造方法。
【請求項5】
コンクリート組成物と水とが混練されて形成される混練物が遠心成型されて形成される管状の混練物の内面を被覆する被覆方法であって、
セメント、高炉スラグ微粉末、無機微粉末、および、細骨材を含む粉体材料を前記管状の混練物の内側に供給することで、請求項1
又は2に記載の被覆材を作製する被覆材作製工程と、
該被覆材で前記管状の混練物の内面を被覆する被覆工程と
を備える被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心成型によって形成される管状の混練物の内面を被覆する被覆材、および、該被覆材で管状の混練物の内面が被覆されてなる管状成型体に関する。また、該管状成型体の製造方法、および、管状の混練物の内面を被覆する被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セメントと細骨材と粗骨材とを含むコンクリート組成物を水と混練して混練物を形成し、該混練物を遠心成型用の型枠に供給して遠心力で締め固めること(以下、遠心成型とも記す)で、管状成型体が製造されている。
このような管状成型体の用途としては、内側に水を流通させるための導水管(例えば、下水道を形成するヒューム管など)が挙げられる。斯かる導水管では、内側を流通する水の水質によって、内側に硫化水素が発生し、該硫化水素に起因して導水管の内面に硫酸が生成される場合がある。このように、導水管の内面に硫酸が生成すると、導水管が腐食されて耐久性が著しく低下する虞がある。
【0003】
そこで、導水管の耐硫酸性を向上させる方法として、種々の方法が提案されている。例えば、前記コンクリート組成物のセメントに代えて熱硬化性樹脂を結合材として用いたレジンコンクリート管で導水管を形成する方法(特許文献1参照)や、導水管の内面を樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリウレア樹脂、ビニルエステル樹脂など)で覆う方法(特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願平3-20906号公報
【文献】特開2007-289945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レジンコンクリート管は、周囲の温度に依存して、強度や体積が大きく変化することに加え、クリープ変形も大きいことから、周囲の環境によっては、導水管として使用することが好ましくない場合がある。また、導水管の内面を樹脂で覆う方法では、製造工程が長くなるため容易に製造を行うことができない。加えて、使用期間によっては樹脂の剥離が生じる虞があるため、長期間継続して使用することは好ましくない。
以上のことから、前記混練物が管状に遠心成型されて形成される管状成型体において良好な耐硫酸性が要求されている。
【0006】
また、前記混練物が管状に遠心成型されると、管状の混練物の内側にノロ(セメント、水などからなるスラリー状の物質)が染み出てくる。斯かるノロは、一般に中和、脱水などの処理を施した後に埋め立て廃棄処分などされている。しかし、ノロの処理には多くの費用が必要となるのに加え、近年では埋め立て処分地の確保難といった問題も生じてきている。このため、ノロの処理量を低減することも要求されている。
【0007】
そこで、本発明は、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができると共に、ノロの処分量を低減することができる被覆材を提供することを課題とする。
また、耐硫酸性を有し、ノロの処分量を低減することができる管状成型体を提供することを課題とする。
また、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができると共に、ノロの処分量を低減することができる管状成型体の製造方法、および、被覆方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る被覆材は、コンクリート組成物と水とが混練されて形成される混練物が遠心成型されてなる管状の混練物の内面を被覆する被覆材であって、セメント、高炉スラグ、無機微粉末、および、細骨材を含む粉体材料と、前記混練物を遠心成型した際に管状の混練物の内側に染み出るノロとが混合されて形成される。
【0009】
斯かる構成によれば、セメント、高炉スラグ、無機微粉末、および、細骨材を含む粉体材料と、前記混練物を遠心成型した際に管状の混練物の内側に染み出るノロとが混合されて被覆材が形成される。そして、該被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。具体的には、斯かる被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで管状成型体の内側には、被覆材の層が形成される。そして、管状成型体の内面(被覆材で形成された内面)に硫酸が生成した際に、該硫酸と被覆材とが反応し、被覆材の層の表面側に析出物の層が形成される。これにより、管状成型体が硫酸によって腐食されるのが前記析出物の層によって抑制されるため、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
また、被覆材の構成として、遠心成型によって生じるノロを用いることができるため、ノロの処分量を低減することができる。
【0010】
前記粉体材料は、セメントを18質量%以上36質量%以下、高炉スラグを12質量%以上30質量%以下、無機質微粉末を2質量%以上5質量%以下、細骨材を0質量%を超え50質量%以下含むことが好ましい。
【0011】
斯かる構成によれば、粉体材料は、セメント、高炉スラグ、無機質微粉末、および、細骨材のそれぞれを上記の範囲で含むことで、より良好な耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
【0012】
前記細骨材は、該細骨材全体に対して高炉スラグ細骨材を50質量%以上100質量%以下含むことが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、細骨材は、高炉スラグ細骨材を上記の範囲で含むことで、より良好な耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
【0014】
前記ノロ100質量部に対して、粉体材料が280質量部以上580質量部以下混合されて形成されることが好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、ノロ100質量部に対して、粉体材料が上記の範囲で混合されて被覆材が形成されることで、より良好な耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
【0016】
前記無機微粉末は、フライアッシュ、石灰石微粉末、および、シリカフュームからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0017】
本発明に係る管状成型体は、コンクリート組成物と水とが混練されて形成される混練物が遠心成型されて形成される管状の混練物の内面が、上記の被覆材で被覆されて形成される。
【0018】
斯かる構成によれば、コンクリート組成物と水とが混練されて形成される混練物が遠心成型されて形成される管状の混練物の内面が、上記の被覆材で被覆されて形成されることで、硫酸による腐食を抑制することができる。具体的には、被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで管状成型体の内側には、被覆材の層が形成される。そして、管状成型体の内面(被覆材で形成された内面)に硫酸が生成した際に、該硫酸と被覆材とが反応し、被覆材の層の表面側に析出物の層が形成される。これにより、管状成型体が硫酸によって腐食されるのを前記析出物の層によって抑制することができる。
また、被覆材の構成として、遠心成型によって生じるノロを用いることができるため、ノロの処分量を低減することができる。
【0019】
本発明に係る管状成型体の製造方法は、上記の管状成型体の製造方法であって、前記混練物を遠心成型して管状の混練物を形成する遠心成型工程と、前記粉体材料を前記管状の混練物の内側に供給することで、前記被覆材を形成する被覆材形成工程と、該被覆材で前記管状の混練物の内面を被覆する被覆工程とを備える。
【0020】
斯かる構成によれば、前記粉体材料を前記管状の混練物の内側に供給することで、前記被覆材を形成する被覆材形成工程と、該被覆材で前記管状の混練物の内面を被覆する被覆工程とを備えることで、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。具体的には、被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで管状成型体の内側には、被覆材の層が形成される。そして、管状成型体の内面(被覆材で形成された内面)に硫酸が生成した際に、該硫酸と被覆材とが反応し、被覆材の層の表面側に析出物の層が形成される。これにより、管状成型体が硫酸によって腐食されるのが前記析出物の層によって抑制されるため、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
また、被覆材の構成として、遠心成型によって生じるノロを用いることができるため、ノロの処分量を低減することができる。
【0021】
本発明に係る被覆方法は、コンクリート組成物と水とが混練されて形成される混練物が遠心成型されて形成される管状の混練物の内面を被覆する被覆方法であって、セメント、高炉スラグ、無機微粉末、および、細骨材を含む粉体材料を前記管状の混練物の内側に供給することで、上記の被覆材を形成する被覆材形成工程と、該被覆材で前記管状の混練物の内面を被覆する被覆工程とを備える。
【0022】
斯かる構成によれば、前記粉体材料を前記管状の混練物の内側に供給することで、前記被覆材を形成する被覆材形成工程と、該被覆材で前記管状の混練物の内面を被覆する被覆工程とを備えることで、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。具体的には、被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで管状成型体の内側には、被覆材の層が形成される。そして、管状成型体の内面(被覆材で形成された内面)に硫酸が生成した際に、該硫酸と被覆材とが反応し、被覆材の層の表面側に析出物の層が形成される。これにより、管状成型体が硫酸によって腐食されるのが前記析出物の層によって抑制されるため、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
また、被覆材の構成として、遠心成型によって生じるノロを用いることができるため、ノロの処分量を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができると共に、ノロの処分量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(a)は、本発明の管状成型体の製造方法の一実施形態において、遠心成型用の型枠で管状の混練物の外側部分を形成した状態を示す概略図、(b)は、同実施形態において、管状の混練物の内側にノロが溜まった状態を示す概略図。
【
図2】(a)は、同実施形態において、管状の混練物の内側に被覆材が溜まった状態を示す概略図、(b)は、同実施形態において、管状の混練物の内側が被覆材で覆われた状態を示す概略図。
【
図3】(a)は、本発明の管状成型体の製造方法の他の実施形態において、管状の混練物の内側にノロの層が形成された状態を示す概略図、(b)は、同実施形態において、管状の混練物の内側が被覆材で覆われた状態を示す概略図。
【
図4】(a)は、実施例における付着強度の試験用の供試体を示した図、(b)は、実施例における硫酸浸漬試験用の供試体を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
本発明に係る被覆材は、コンクリート組成物と水とが混練されて形成される混練物が遠心成型されてなる管状の混練物の内面を被覆するものである。また、被覆材は、セメント、高炉スラグ、無機微粉末、および、細骨材を含む粉体材料と、前記混練物を遠心成型した際に管状の混練物の内側に染み出るノロとが混合されて形成される。
【0027】
前記粉体材料を構成するセメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ポルトランドセメント、超速硬セメント、および、アルミナセメントなどが挙げられる。ポルトランドセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、および、白色ポルトランドセメントなどが挙げられる。特には、前記セメントとして、普通ポルトランドセメントを用いることが好ましい。
【0028】
前記粉体材料の全体に対するセメントの割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、18質量%以上36質量%以下であることが好ましく、18質量%以上27質量%以下であることがより好ましい。また、被覆材の全体に対するセメントの割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、300kg/m3以上620kg/m3以下であることが好ましく、300kg/m3以上500kg/m3以下であることがより好ましい。
【0029】
前記粉体材料を構成する高炉スラグとしては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に規定されるものが挙げられる。具体的には、斯かる高炉スラグとしては、高炉スラグ微粉末3000、高炉スラグ微粉末4000、高炉スラグ微粉末6000、および、高炉スラグ微粉末8000が挙げられる。
【0030】
前記粉体材料の全体に対する高炉スラグの割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、12質量%以上30質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。また、被覆材の全体に対する高炉スラグの割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、210kg/m3以上510kg/m3以下であることが好ましく、250kg/m3以上510kg/m3以下であることがより好ましい。また、粉体材料を構成するセメント100質量部に対して高炉スラグは、特に限定されるものではなく、例えば、39質量部以上150質量部以下であることが好ましく、42質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。
【0031】
前記粉体材料を構成する無機微粉末としては、特に限定されるものではなく、例えば、MgOの含有量が5.0質量%以下であることが好ましい。5.0質量%以下であることで、遠心成型で形成される管状の混練物の内面を被覆材で被覆した際に、該被覆材の層が膨張するのを抑制することができる。また、無機微粉末の比表面積としては、特に限定されるものではなく、例えば、ブレーン値で3000cm2/g以上であることが好ましく、BET法で10m2/g以上であることが好ましい。これにより、管状の混練物の内面を被覆材で被覆した際に、該被覆材の層が緻密なものとなるため、耐硫酸性をより向上させることができる。
【0032】
前記粉体材料の全体に対する無機質微粉末の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、2質量%以上5質量%以下であることが好ましい。また、被覆材の全体に対する無機質微粉末の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、40kg/m3以上130kg/m3以下であることが好ましい。また、粉体材料を構成するセメント100質量部に対して無機微粉末は、特に限定されるものではなく、例えば、5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0033】
前記無機微粉末は、フライアッシュ、石灰石微粉末、および、シリカフュームからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0034】
フライアッシュとしては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるものなどが挙げられる。具体的には、汎用的に入手できる観点からは、フライアッシュとしては、フライアッシュI種、フライアッシュII種が好ましい。
【0035】
石灰石微粉末としては、特に限定されるものではなく、例えば、比表面積が3500cm2/g以上4500cm2/g以下であるものなどが挙げられる。比表面積とは、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に規定される方法で測定されるものである。また、石灰石微粉末中の炭酸カルシウムの含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、70質量%以上90質量%以下であることが好ましく、71質量%以上89質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
シリカフュームとしては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 6207「コンクリート用シリカフューム」に規定されるものなどが挙げられる。
【0037】
前記粉体材料を構成する細骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」に規定するものが挙げられる。特には、細骨材は、該細骨材全体に対して高炉スラグ細骨材を50質量%以上100質量%以下含むものであることが好ましい。また、高炉スラグ細骨材としては、JIS A 5011「コンクリート用スラグ骨材」に規定されるものが挙げられる。なお、細骨材のサイズは、JIS A 1102に規定された骨材のふるい分け試験方法によって測定されるもので、JIS Z 8801-1の試験用ふるい目を表したものである。
【0038】
前記粉体材料の全体に対する細骨材の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、0質量%を超え50質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。また、被覆材の全体に対する細骨材の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、950kg/m3以下であることが好ましく、670kg/m3以上950kg/m3以下であることがより好ましい。また、粉体材料を構成するセメント100質量部に対して細骨材は、特に限定されるものではなく、例えば、100質量部以上250質量部以下であることが好ましく、130質量部以上250質量部以下であることがより好ましい。
【0039】
前記被覆材を構成するノロは、遠心成型によって前記混練物が管状に締め固められることで、管状の混練物の内側に染み出たものである。このため、ノロには、粉体材料を構成する上記の各材料の一部と水分とが含まれる。また、ノロは、pHが12以上13以下であってもよく、微粉量が3質量%以上27質量%以下であってもよい。なお、微粉量とは、ノロの質量に対するノロから水分を蒸発させた際の質量の割合である。
【0040】
そして、被覆材におけるノロと粉体材料との割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、ノロ100質量部に対して、粉体材料が280質量部以上580質量部以下であることが好ましく、300質量部以上530質量部以下であることがより好ましい。
【0041】
本発明に係る被覆材は、上記の各材料に加えて他の材料を含んでもよく、例えば、減水剤、遅延剤、及び、分散剤などから選択される一つ以上が含まれてもよい。
【0042】
遠心成型で管状に形成される混練物を構成するコンクリート組成物は、セメント、細骨材、および、粗骨材を含む。
【0043】
前記コンクリート組成物を構成するセメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ポルトランドセメント、超速硬セメント、および、アルミナセメントなどが挙げられる。ポルトランドセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、および、白色ポルトランドセメントなどが挙げられる。
【0044】
前記コンクリート組成物の全体に対するセメントの割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、300kg/m3以上600kg/m3以下であることが好ましく、350kg/m3以上540kg/m3以下であることがより好ましい。
【0045】
前記コンクリート組成物を構成する細骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」に規定するものが挙げられる。
【0046】
前記コンクリート組成物の全体に対する細骨材の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、700kg/m3以上1000kg/m3以下であることが好ましく、750kg/m3以上900kg/m3以下であることがより好ましい。
【0047】
前記コンクリート組成物を構成する粗骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」に規定するものが挙げられる。
【0048】
前記コンクリート組成物の全体に対する粗骨材の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、850kg/m3以上1150kg/m3以下であることが好ましく、900kg/m3以上1100kg/m3以下であることがより好ましい。
【0049】
前記コンクリート組成物は、上記の各材料に加えて他の材料を含んでもよく、例えば、減水剤、遅延剤、及び、分散剤などから選択される一つ以上が含まれてもよい。
【0050】
前記混練物を構成する水としては、特に限定されるものではなく、例えば、上水道水などが挙げられる。結合材に対する水の割合(W/B)としては、特に限定されるものではなく、例えば、25%以上55%以下であることが好ましく、30%以上50%以下であることがより好ましい。
【0051】
次に、本発明に係る管状成型体の製造方法の一実施形態について説明する。該管状成型体の製造方法は、上記のように構成される被覆材によって内面が形成された管状成型体を製造するものである。
【0052】
具体的には、該管状成型体の製造方法は、前記混練物を遠心成型して管状の混練物を形成する遠心成型工程と、前記粉体材料を前記管状の混練物の内側に供給することで、前記被覆材を形成する被覆材形成工程と、該被覆材で前記管状の混練物の内面を被覆する被覆工程とを備える。
【0053】
本実施形態では、前記遠心成型工程は、前記混練物を一回または複数回に分けて遠心成型する。
具体的には、前記遠心成型工程では、
図1(a)に示すように、遠心成型用の筒状の型枠X内に、管状成型体内に埋設される鉄筋(図示せず)を配置した状態で、該型枠Xを回転させつつ型枠Xの内側に前記混練物を供給する。そして、低速(遠心力4~8G、時間:5分~7分)、中速(遠心力10~25G、時間:3分~5分)、高速(遠心力30~55G、時間:4分~6分)の順で回転速度を変更して遠心成型する(第一遠心工程)。これにより、管状の混練物の外側部分1aが形成される。
次に、
図1(b)に示すように、型枠Xを回転させつつ前記外側部分1aの内側に前記混練物を供給する。そして、低速(遠心力4~8G、時間:5分~7分)、中速(遠心力10~25G、時間:3分~5分)、高速(遠心力30~55G、時間:4分~6分)の順で回転速度を変更して遠心成型する(第二遠心工程)。これにより、管状の混練物1bが形成される。
そして、遠心成型工程を行った後、型枠Xの回転を停止すると、
図1(b)に示すように、管状の混練物1bから染み出たノロ1cが管状の混練物1bの内側に溜まった状態になる。
【0054】
本実施形態では、前記被覆材形成工程は、管状の混練物1bの内側に溜まったノロ1cと前記粉体材料とを混合する。
具体的には、被覆材形成工程では、管状の混練物1bの内側に溜まったノロ1cに前記粉体材料を散布することでノロ1cと粉体材料とを混合する。これにより、
図2(a)に示すように、管状の混練物1b内に溜まった状態で被覆材1dが作製される。
【0055】
本実施形態では、被覆工程は、被覆材形成工程で被覆材1dを形成した後に行われる。
具体的には、前記被覆工程では、管状の混練物1bの内側に溜まった状態の被覆材1dを管状の混練物の内面に押し広げることで、管状の混練物1bの内面を被覆材1dで被覆する。これにより、
図2(b)に示すように、被覆材1dで形成された内面1d1を備える管状成型体1が形成される。そして、管状成型体1の内側には、被覆材1dの層が形成される。被覆材1dを押し広げる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、型枠Xを回転させつつ棒状の部材(所謂、仕上げ棒など)や板状の部材(例えば、ヘラなど)などで被覆材1dを管状の混練物1bの内面に押し広げる方法が挙げられる。なお、押し広げられた被覆材1dを刷毛などを用いて表面を均すことが好ましい。
【0056】
上記のように製造される管状成型体のサイズとしては、特に限定されるものではない。例えば、管状成型体の内径としては、200mm以上900mm以下であることが好ましく、400mm以上800mm以下であることがより好ましい。また、管状成型体の外径としては、300mm以上1000mm以下であることが好ましく、500mm以上1000mm以下であることがより好ましい。また、管状成型体の長さとしては、300mm以上であることが好ましく、2000mm以上3000mm以下であることがより好ましく、2000mm以上2500mm以下であることが特に好ましい。
【0057】
また、上記のように製造される管状成型体は、蒸気養生した後、型枠から取り出されることが好ましい。蒸気養生では、型枠と共に管状成型体を常温の環境に2時間以上配置する工程(前養生工程)と、該前養生工程後、型枠と共に管状成型体が配置された環境の温度を30℃/時以下の速度で昇温する工程(昇温工程)と、該昇温工程後、型枠と共に管状成型体が配置された環境の温度が65±10℃となった状態で2時間以上保持する工程(温度保持工程)と、該温度保持工程後、型枠と共に管状成型体が配置された環境の温度を降温する工程(降温工程)とが行われることが好ましい。
また、蒸気養生後、型枠から取り出された管状成型体は、所定の材齢(28日)まで気中養生されることが好ましい。
【0058】
以上のように、本発明に係る被覆材、管状成型体、管状成型体の製造方法、および、被覆方法によれば、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができると共に、ノロの処分量を低減することができる。
【0059】
即ち、セメント、高炉スラグ、無機微粉末、および、細骨材を含む粉体材料と、前記混練物を遠心成型した際に管状の混練物の内側に染み出るノロとが混合されて被覆材が形成される。そして、該被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。具体的には、斯かる被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで管状成型体の内側には、被覆材の層が形成される。そして、管状成型体の内面(被覆材で形成された内面)に硫酸が生成した際に、該硫酸と被覆材とが反応し、被覆材の層の表面側に析出物の層が形成される。これにより、管状成型体が硫酸によって腐食されるのが前記析出物の層によって抑制されるため、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
また、被覆材の構成として、遠心成型によって生じるノロを用いることができるため、ノロの処分量を低減することができる。
【0060】
また、粉体材料は、セメント、高炉スラグ、無機質微粉末、および、細骨材のそれぞれを上記の範囲で含むことで、より良好な耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
【0061】
また、細骨材は、高炉スラグ細骨材を上記の範囲で含むことで、より良好な耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
【0062】
また、ノロ100質量部に対して、粉体材料が上記の範囲で混合されて被覆材が形成されることで、より良好な耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
【0063】
また、コンクリート組成物と水とが混練されて形成される混練物が遠心成型されて形成される管状の混練物の内面が、上記の被覆材で被覆されて形成されることで、硫酸による腐食を抑制することができる。具体的には、被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで管状成型体の内側には、被覆材の層が形成される。そして、管状成型体の内面(被覆材で形成された内面)に硫酸が生成した際に、該硫酸と被覆材とが反応し、被覆材の層の表面側に析出物の層が形成される。これにより、管状成型体が硫酸によって腐食されるのを前記析出物の層によって抑制することができる。
また、被覆材の構成として、遠心成型によって生じるノロを用いることができるため、ノロの処分量を低減することができる。
【0064】
また、前記粉体材料を前記管状の混練物の内側に供給することで、前記被覆材を形成する被覆材形成工程と、該被覆材で前記管状の混練物の内面を被覆する被覆工程とを備えることで、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。具体的には、被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで管状成型体の内側には、被覆材の層が形成される。そして、管状成型体の内面(被覆材で形成された内面)に硫酸が生成した際に、該硫酸と被覆材とが反応し、被覆材の層の表面側に析出物の層が形成される。これにより、管状成型体が硫酸によって腐食されるのが前記析出物の層によって抑制されるため、耐硫酸性を有する管状成型体を形成することができる。
また、被覆材の構成として、遠心成型によって生じるノロを用いることができるため、ノロの処分量を低減することができる。
【0065】
なお、本発明に係る被覆材、管状成型体、管状成型体の製造方法、および、被覆方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記及び下記の複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよい(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい)ことは勿論である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、遠心成型工程は、遠心成型用の筒状の型枠Xに、前記混練物を複数回(具体的には、2回)に分けて供給しているが、これに限定されるものではなく、例えば、該型枠Xに、前記混練物を一度に供給して管状の混練物1bを形成してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、遠心成型工程は、型枠Xの内側に鉄筋が配置された状態で行われているが、これに限定されるものではなく、例えば、鉄筋を配置しない状態で遠心成型工程を行ってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、被覆材形成工程は、管状の混練物1bの内側に溜まったノロ1cと前記粉体材料とを接触させるように構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図3(a)に示すように、型枠Xを回転させて、管状の混練物1bの内面にノロ1cの層が形成された状態で、管状の混練物の内側に前記粉体材料を供給することでノロ1cと前記粉体材料とを混合するように構成してもよい。これにより、
図3(b)に示すように、管状の混練物1bの内面を被覆した状態で被覆材1dが形成される。斯かる場合には、被覆材1dの形成と同時に、管状の混練物1bの内面が被覆材1dで被覆される。つまり、被覆材形成工程を行うと同時に被覆工程が行われることになる。これにより、管状成型体1が形成される。
【実施例】
【0069】
以下、実施例、および、比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
<粉体材料用の材料>
・セメント:普通ポルトランドセメント(略号:NC,住友大阪セメント社製)
・高炉スラグ:高炉スラグ微粉末4000(略号:GGBFS,日鉄住金スラグ製品社製、MgOの含有量:5.9質量%、比表面積(ブレーン値):4450cm2/g)
・フライアッシュ:碧南火力発電所品(略号:FA,テクノ中部社製、MgOの含有量:1.25質量%、比表面積(ブレーン値):3340cm2/g)
・石灰石微粉末:タンカル#325(略号:LSP,吉澤石灰工業社製、MgOの含有量:4.75質量%、比表面積(ブレーン値):5330cm2/g)
・シリカフューム:EFACO(略号:SF,巴工業社製、MgOの含有量:0.58質量%、比表面積(BET法):15m2/g)
・細骨材1:珪砂(JFEミネラル社製)
・細骨材2:高炉スラグ細骨材(略号:BFS,日鉄住金スラグ製品社製)
【0071】
<混練物用の材料>
・セメント:普通ポルトランドセメント(略号:NC,住友大阪セメント社製)
・練混ぜ水:上水道水(略号:Wtap)
・細骨材:陸砂(略号:S,掛川市上内田地内上内田産)
・粗骨材:硬質砂岩砕石(略号:G,茨城県西茨城郡岩瀬町富谷産)
・混和剤:減水材(略号:AD,GCPケミカルズ社製)
【0072】
1.実施例1~39、比較例1~11、参考例1,2
<遠心成型による管状成型体の作製>
上記の混練物用の材料の内、セメント、細骨材、および、粗骨材を、下記表1に示す配合で、パン型ミキサーを用いて15秒間空練りした後、混和剤を含む練混ぜ水を加えて2分間練混ぜて混練物を形成した。
そして、該混練物を遠心成型用の型枠内で遠心成型し、管状の混練物を形成した。具体的には、混練物をφ200×300mmの中空型枠(遠心成型用の型枠)に供給し、低速(5G)2分間、中速(15G)2分間、高速(44G)7分間の順で遠心成型を行い、管状の混練物を形成した(遠心成型工程)。
遠心成形によって管状の混練物の内側に溜まったノロは、管状の混練物の内側から排出して質量を測定した後、管状の混練物の内側に戻した。ノロの質量は、下記表3に示す。
次に、上記の粉体材料用の材料を、下記表2に記載の配合で混合して粉体材料を得た。そして、型枠を低速で回転させつつ、下記表3,4に記載の散布量で、前記粉体材料を管状の混練物の内側に散布し、ノロと粉体材料とを混合して被覆材を作製した(被覆材作製工程)。そして、被覆材を仕上げ棒で押し広げて均し、刷毛で仕上げることで、管状の混練物の内面が被覆材で被覆されてなる管状成型体を作製した(被覆工程)。
【0073】
また、得られた管状成型体を蒸気養生した。該蒸気養生では、得られた管状成型体を常温で2時間保持した(前養生工程)。また、該前養生工程後、管状成型体が配置された環境の温度を30℃/時以下の速度で昇温し(昇温工程)、管状成型体が配置された環境の温度が65±10℃となった状態で2時間以上保持した(温度保持工程)。また、該温度保持工程後、管状成型体が配置された環境の温度を降温した(降温工程)。
蒸気養生を行ったコンクリート成形体は、材齢1日で脱型を行い、材齢28日まで気中養生を行った。
【0074】
<被覆材の付着強度の測定>
上記の養生後の管状成型体を湿式コンクリートカッターで切断し、
図4(a)に示す供試体を作製した。
そして、該供試体の内面(管状成型体の内周面の一部)に、建研式接着力試験器用の治具(寸法40×40mm)を取り付け、供試体の内面(管状成型体の内周面の一部)を形成する被覆材の層の付着強度を測定した。付着強度が1.3N/mm
2以上のものを〇、付着強度が1.3N/mm
2未満のものを×として評価した。被覆材の付着強度、および、その評価については、下記表5に示す。
【0075】
<硫酸浸漬試験>
上記の養生後の管状成型体を湿式コンクリートカッターで切断し、
図4(b)に示す供試体を作製した。
そして、該供試体の内面(管状成型体の内周面の一部)以外の5面をアクリロイル変性アクリル樹脂系接着剤でコーティングした。そして、斯かる供試体に対して、硫酸浸漬試験を行い、質量変化率を得た。具体的には、「下水道コンクリート構造物の腐食抑制技術および防食技術マニュアル(発行:一般財団法人 下水道事業支援センター)」に従い、硫酸浸漬試験を行った。試験の概要としては、以下の通りである。まず初めに、供試体の質量を測定する。次に、斯かる供試体を5%硫酸水溶液に28日間浸漬する。その後、供試体の質量を再度測定する。そして、浸漬前の質量に対する浸漬後の質量の割合(質量変化率)を算出した。質量変化率が±2%以内であるものを◎、質量変化率が±2%を超え±3%以下であるものを〇、質量変化率が±3%を超えるものを×として評価した。質量変化率、および、その評価については、下記表5に示す。
【0076】
2.比較例12
上記の遠心成型工程で生じたノロを管状の混練物内から除去し、ノロに代えてノロと同量の水道水を用いて被覆材を形成したこと以外は、実施例1と同一条件で管状成型体を作製し、同一条件で被覆材の付着強度の測定および硫酸浸漬試験を行った。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
<まとめ>
表5を見ると、各参考例は、各実施例よりも、被覆材の付着強度が低く、質量変化率が高いことが認められる。つまり、各参考例では、管状の混練物の内面が被覆材で被覆されなかった。一方、各実施例は、各参考例よりも、被覆材の付着強度が高く、質量変化率が低いことが認められる。つまり、各実施例の管状成形体では、管状の混練物の内面が被覆材で被覆されて形成された被覆材の層を内側に備えている。
以上のことから、本発明のように、ノロと粉体材料とが混合されて形成される被覆材で、遠心成型で形成される管状の混練物の内面を被覆することで、耐硫酸性を有する管状成型体を得ることができると共に、ノロの処分量を低減することができる。
【0083】
また、各実施例と各比較例とを比較すると、各実施例の方が耐硫酸性の評価が良好であることが認められる。つまり、本発明のように、セメント、高炉スラグ、無機微粉末、および、細骨材を含む粉体材料と、ノロを混合して被覆材を形成し、該被覆材で管状の混練物の内面を被覆することで、優れた耐硫酸性を有する管状成型体を得ることができる。
【0084】
また、実施例5~7、実施例9~11、および、実施例35~39と、他の実施例とを比較すると、実施例5~7、実施例9~11、および、実施例35~39の方が耐硫酸性の評価が良好であることが認められる。つまり、高炉スラグ細骨材を50質量%以上含む細骨材を使用し、ノロに対する粉体材料の割合(L/NW)を289以上かつ578以下とすることで、より優れた耐硫酸性を有する管状成型体を得ることができる。
【0085】
また、実施例23~34と、実施例35~39とを比較すると、実施例35~39の方が耐硫酸性の評価が良好であることが認められる。つまり、無機質微粉末としてシリカフュームを使用し、高炉スラグと併用することで、より優れた耐硫酸性を有する管状成型体を得ることができる。
【0086】
また、実施例1と比較例12とを比較すると、実施例1の方が被覆材の付着強度が高いことが認められる。つまり、被覆材を形成する際にノロを用いることで、被覆材の層を管状成型体の内面に良好に保持することができるため、良好な耐硫酸性を比較的長期間維持することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…管状成型体、1a…外側部分、1b…管状の混練物、1c…ノロ、1d…被覆材、X…型枠