(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】耐熱樹脂組成物およびこれを用いた自動車用のスポイラー
(51)【国際特許分類】
C08L 51/04 20060101AFI20240326BHJP
B62D 37/02 20060101ALI20240326BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240326BHJP
C08F 212/10 20060101ALN20240326BHJP
C08F 257/02 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
C08L51/04
B62D37/02 A
B62D37/02 C
C08L25/12
C08F212/10
C08F257/02
(21)【出願番号】P 2020526597
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 KR2018015678
(87)【国際公開番号】W WO2019117587
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-05-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】10-2017-0169106
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン・チョル・リュ
(72)【発明者】
【氏名】デ・サン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・リョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジン・オ・ナム
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】大畑 通隆
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-521997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08F210/00-283/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含む第1のグラフト共重合体と、
芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含み、ガラス転移温度が115℃以上である第2の共重合体と、
芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含む第3の共重合体とを含み、
前記第2の共重合体は直鎖状であり、前記第3の共重合体は分岐状であり、分岐度が5~7であ
り、
前記第3の共重合体は、前記芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を60:40~90:10の重量比で含み、絶対分子量が500,000~700,000g/molであり、多分散指数が3.0~5.0である、耐熱樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1の共重合体は、
全重量に対して、
前記共役ジエン系重合体40~75重量%と、
前記芳香族ビニル系単量体由来単位18~43重量%と、
前記ビニルシアン系単量体由来単位7~17重量%とを含む、請求項
1に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項3】
前記共役ジエン系重合体の平均粒径が0.1~0.5μmである、請求項1
又は2に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項4】
前記第1の共重合体は、グラフト率が30~60%である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1の共重合体は、シェルの重量平均分子量が50,000~200,000g/molである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2の共重合体は、ガラス転移温度が115℃~150℃である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項7】
前記第2の共重合体は、前記芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を60:40~90:10の重量比で含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項8】
前記第2の共重合体は、重量平均分子量が80,000~150,000g/molである、請求項1~
7のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項9】
前記耐熱樹脂組成物は、
全重量に対して、
前記第1の共重合体20~55重量%と、
前記第2の共重合体30~75重量%と、
前記第3の共重合体2~20重量%とを含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項10】
芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含み、ガラス転移温度が106℃以下であり、直鎖状である第4の共重合体をさらに含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項11】
前記第4の共重合体は、ガラス転移温度が102~106℃である、請求項1
0に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項12】
前記第4の共重合体は、前記芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を50:50~90:10の重量比で含む、請求項1
0又は1
1に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項13】
前記第4の共重合体は、重量平均分子量が80,000~250,000g/molである、請求項1
0~1
2のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項14】
前記第4の共重合体は、耐熱樹脂組成物の全重量に対して、30重量%以下で含む、請求項1
0~1
3のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1から1
4のいずれか一項に記載の耐熱樹脂組成物を用いた自動車用のスポイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月11日付けの韓国特許出願第10‐2017‐0169106号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、耐熱樹脂組成物およびこれを用いた自動車用のスポイラーに関し、より詳細には、分岐状共重合体を含む耐熱樹脂組成物およびこれを用いた自動車用のスポイラーに関する。
【背景技術】
【0003】
スポイラーは、製品が非常に大きく、自動車用として使用するため、一般的に、ABS共重合体を含む耐熱樹脂組成物を用いて、ブロー成形(blow molding)工程で生産される。
【0004】
一方、自動車スポイラーの製造方法は、押出工程で製造されたペレット状の耐熱樹脂組成物を溶融するステップと、溶融した耐熱樹脂組成物に油圧を加えてパリソン(parison)を製造するステップと、パリソンを金型の中でブロー成形し、成形品を製造するステップと、成形品をトリミング(trimming)するステップと、トリミングした成形品を研磨(sanding)するステップと、研磨した成形品を塗布し、スポイラーを製造するステップとを含む。
【0005】
自動車用のスポイラーは、製品が非常に大きいため、ブロー成形のためのパリソンの製造時に、パリソンの重量が3~8kgと非常に重い。そのため、耐熱樹脂組成物の構成要素の重量平均分子量が低いと、溶融張力(melt strength)が弱くてパリソンの製造時に自重によってパリソンが垂れ下がるという問題が生じる。これを改善するために、重量平均分子量が大きい共重合体を耐熱樹脂組成物に含ませると、パリソンの垂れ下がり現象は減少するが、溶融粘度が高くて、パリソンを製造するために過剰な圧力が加えられなければならない。しかし、過剰な圧力によって溶融破壊(melt fracture)現象が生じ、結果、製品の表面にクランプ形状が生じるという不良が現れる。かかるパリソンの表面不良は、ブロー成形を行った成形品にもそのまま現れ、最終の生産品であるスポイラーの表面不良を引き起こす。
【0006】
したがって、スポイラーの作製のためのパリソンの製造時に、溶融破壊を防止するために、アキュムレータ(accumulator)の下端に位置したダイを通過する時には、溶融された耐熱樹脂組成物の流動性が高いこと、すなわち、比較的高いせん断速度では圧縮用のメルトインデックスを有することが有利であり、ダイ通過の後、パリソンの自重による垂れ下がりを防止するためには、流動性が低いこと、すなわち、低いせん断速度では伸長モード用のフローインデックスを有することが有利である。
【0007】
しかし、溶融破壊と溶融張力は、トレードオフ(trade‐off)関係にあるため、工程範囲(process window)が非常に狭く、優れた品質のスポイラーを製造することが非常に難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ブロー成形の際、表面不良とパリソンの垂れ下がり現象が発生しない耐熱樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含む第1の共重合体と、芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含み、ガラス転移温度が115℃以上である第2の共重合体と、芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含む第3の共重合体とを含み、前記第2の共重合体は直鎖状であり、前記第3の共重合体は分岐状であり、分岐度が2~8である耐熱樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐熱樹脂組成物は、ブロー成形の際、溶融破壊による表面不良とパリソンの垂れ下がり現象が発生しないことから、自動車スポイラー用の素材としてより好適であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】角振動数によるパリソン粘度を測定した図である。
【
図2】時間によるパリソンの伸長粘度を測定した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関する理解に資するため、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0014】
本発明において、分岐度、絶対分子量および多分散指数は、Malvern社製のViscotek TDA 305機器を用いて測定し、計算した。
【0015】
Malvern社製のViscotek TDA(Triple/trtra detector array)は、屈折率検出器(Refractive Index detector)、光散乱検出器(Light scattering detector)、固有粘度検出器(Intrinsic viscosity detector)を同時に有している機器であり、column:PL olexis x2 +Cを使用して、溶出液(THF:テトラヒドロフラン)、流量(flow rate):1.0mL/min、温度:40℃、注入量(injection):100μgの測定条件で測定し、先ず、屈折率データと光散乱データを用いて、絶対分子量を求めた後、屈折率データと固有粘度データを用いて、三官能性分岐モデル(trifunctional branch model)を適用し、分岐度を計算した。
【0016】
本発明において、重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)により標準PS(ポリスチレンスタンダード;standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0017】
本発明において、グラフト率は、第1の共重合体であるグラフト共重合体の一定量を溶媒に投入し、振動装置を用いて溶解し、遠心分離機で遠心分離し、乾燥して不溶分を取得した後、下記の式を用いて算出することができる。
【0018】
詳細には、第1の共重合体であるグラフト共重合体の一定量をアセトンに投入し、振動装置(商品名:SI‐600R、製造社:Lab.companion)で24時間振動させて遊離されたグラフト共重合体を溶解し、遠心分離機で14,000rpmで1時間遠心分離し、真空乾燥器(商品名:DRV320DB、製造社:ADVANTEC)で140℃、2時間乾燥して不溶分を取得した後、下記の式を用いて算出することができる。
【0019】
グラフト率(%)
=[(グラフトされたシェルの重量)/投入された共役ジエン系重合体(ゴム)の重量]×100
=[{(グラフトされた共重合体の遠心分離後の不溶分の重量)-(投入された共役ジエン系重合体(ゴム)の重量)}/投入された共役ジエン系重合体(ゴム)の重量]×100
投入された共役ジエン系重合体(ゴム)の重量=ラテックスを乾燥したグラフト共重合体の重量×共役ジエン系重合体(ゴム)の分率
【0020】
本発明において、第1の共重合体のシェルの重量平均分子量は、共役ジエン系重合体にグラフトされた芳香族ビニル系単量体由来単位と、ビニルシアン系単量体由来単位とを含む共重合体の重量平均分子量を意味し得る。
【0021】
本発明において、第1の共重合体のシェルの重量平均分子量は、グラフト率測定方法で取得した不溶分を1重量%の濃度でテトラヒドロフラン(THF)溶液に溶解した後、1μmのフィルタを通して濾過した後、ゲル浸透クロマトグラフィにより標準PS(ポリスチレンスタンダード;standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0022】
本発明において、共役ジエン系重合体の平均粒径は、粒子の粒径分布曲線において、Nicomp 380粒度分析装置を使用して、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering:DLS)で測定し、散乱強度粒子径の50%に相当する粒径として定義することができる。
【0023】
1.耐熱樹脂組成物
本発明の一実施形態による耐熱樹脂組成物は、1)共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含む第1の共重合体と、2)芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含み、ガラス転移温度が115℃以上である第2の共重合体と、3)芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含む第3の共重合体とを含み、前記第2の共重合体は直鎖状であり、前記第3の共重合体は分岐状であり、分岐度が2~8である。
【0024】
本発明の他の実施形態による耐熱樹脂組成物は、4)芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含み、ガラス転移温度が106℃以下であり、直鎖状である第4の共重合体をさらに含んでもよい。
【0025】
以下、本発明の一実施形態による耐熱樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。
【0026】
1)第1の共重合体
第1の共重合体は、グラフト共重合体であり、共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含む。
【0027】
前記第1の共重合体は、耐熱樹脂組成物に、優れた衝撃強度を付与することができる。
【0028】
前記共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体が重合されて製造された共役ジエン系重合体に芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体がグラフト重合されることで変性された共役ジエン系重合体を含むことができる。
【0029】
前記共役ジエン系単量体は、1,3‐ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、1,3‐ブタジエンが好ましい。
【0030】
前記共役ジエン系重合体の平均粒径は、0.1~0.5μm、0.2~0.4μmまたは0.25~0.35μmであってもよく、このうち、0.25~0.35μmであることが好ましい。上述の範囲を満たすと、第1の共重合体の衝撃強度をより改善することができる。
【0031】
前記共役ジエン系重合体は、前記第1の共重合体の全重量に対して、40~75重量%、45~70重量%または50~65重量%含まれ得、このうち、50~65重量%含まれることが経済的な面で好ましい。上述の範囲を満たすと、第1の共重合体の 耐化学性、剛性、耐衝撃性、加工性および表面光沢をより改善することができる。
【0032】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位は、スチレン、α‐メチルスチレン、α‐エチルスチレンおよびp‐メチルスチレンからなる群から選択される1種以上の由来単位であってもよく、このうちスチレン由来単位が好ましい。
【0033】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位は、前記第1の共重合体の全重量に対して、18~43重量%、22~40重量%または25~36重量%含まれ得、このうち、25~36重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと耐熱樹脂組成物の耐化学性、剛性、耐衝撃性、加工性および表面光沢をより改善することができる。
【0034】
前記ビニルシアン系単量体由来単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルおよびα‐クロロアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上の由来単位であってもよく、このうち、アクリロニトリルの由来単位が好ましい。
【0035】
前記ビニルシアン系単量体由来単位は、前記第1の共重合体の全重量に対して、7~17重量%、8~15重量%または10~14重量%含まれ得、このうち、10~14重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、耐熱樹脂組成物の耐化学性、剛性、耐衝撃性、加工性および表面光沢をより改善することができる。
【0036】
前記第1の共重合体は、グラフト率が30~60%、35~55%,または40~50%であってもよく、このうち、40~50%であることが好ましい。上述の範囲を満たすと、第3の共重合体の熱安定性と衝撃強度とのバランスを取ることができる。
【0037】
前記第1の共重合体は、シェルの重量平均分子量が50,000~200,000g/mol、70,000~150,000g/mol、80,000~120,000g/molまたは90,000~110,000g/molであってもよく、このうち、90,000~110,000g/molであることが好ましい。上述の範囲を満たすと、トレードオフ関係のパリソンの垂れ下がり(sagging)現象とパリソンの溶融破壊現象とを適切に調節し、パリソンの垂れ下がり現象および溶融破壊による表面不良を最小化することができる。
【0038】
前記第1の共重合体は、懸濁重合、乳化重合および塊状重合からなる群から選択される1種以上の方法で製造され得、このうち、乳化重合で製造されることが好ましい。
【0039】
前記第1の共重合体は、耐熱樹脂組成物の全重量に対して、20~55重量%、25~50重量%または30~45重量%含まれ得、このうち、30~40重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、耐熱樹脂組成物の衝撃強度をより改善することができる。
【0040】
2)第2の共重合体
第2の共重合体は、芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含み、ガラス転移温度が115℃以上である直鎖状共重合体である。
【0041】
前記第2の共重合体は、耐熱樹脂組成物に耐熱性を付与することができ、自動車スポイラーの製造のためにブロー成形の際、パリソンの垂れ下がり現象とパリソンの溶融破壊現象を最小化することができる。
【0042】
前記第2の共重合体は、ガラス転移温度が115℃~150℃、または120℃~130℃であってもよい。上述の範囲を満たすと、耐熱樹脂組成物の耐熱性をより向上させることができ、押出の際、容易に溶融混合および押出可能である。第2の共重合体のガラス転移温度が115℃未満の場合には、耐熱樹脂組成物の耐熱性が低下する。
【0043】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位は、アルキルスチレン系単量体由来単位であってもよく、前記アルキルスチレン系単量体由来単位は、α‐メチルスチレン、α‐エチルスチレンおよびp‐メチルスチレンからなる群から選択される1種以上の由来単位であってもよく、このうち、α‐メチルスチレン由来単位が好ましい。
【0044】
前記ビニルシアン系単量体由来単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルおよびα‐クロロアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上の由来単位であってもよく、このうち、アクリロニトリル由来単位が好ましい。
【0045】
前記第2の共重合体は、前記芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を60:40~90:10、65:35~85:15または70:30~80:20の重量比で含むことができ、このうち、70:30~80:20の重量比で含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、耐熱性をより改善することができ、ブロー成形の際、パリソンの溶融破壊現象を防止することができる。
【0046】
前記第2の共重合体は重量平均分子量が80,000~150,000g/mol、85,000~130,000g/molまたは90,000~110,000g/molであってもよく、このうち、90,000~110,000g/molが好ましい。上述の範囲を満たすと、耐熱性をより改善することができ、ブロー成形の際、パリソンの溶融破壊現象を防止することができる。
【0047】
前記第2の共重合体は、直鎖状のα‐メチルスチレン/アクリロニトリル共重合体であってもよい。
【0048】
前記第2の共重合体は、懸濁重合、乳化重合および塊状重合からなる群から選択される1種以上の方法で製造され得、このうち、塊状重合または乳化重合で製造されることが好ましい。
【0049】
前記第2の共重合体は、耐熱樹脂組成物の全重量に対して、30~75重量%、35~70重量%または40~65重量%含まれ得、このうち、40~65重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、耐熱度をより改善することができ、ブロー成形の際、パリソンの溶融破壊現象を防止することができる。
【0050】
3)第3の共重合体
第3の共重合体は、芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含む分岐状共重合体であり、分岐度が2~8である。
【0051】
前記第3の共重合体は、低いせん断速度では粘度が高く、高いせん断速度では粘度が低い特性を有する高淡化(high thinning)特性を有することができる。かかる高淡化特性により、ブロー成形の際、パリソンの溶融破壊現象によるパリソンの表面不良率を最小化することができ、パリソンの溶融張力低下によるパリソンの垂れ下がり現象を防止することができる。
【0052】
より詳細に説明すると、第3の共重合体を含む耐熱樹脂組成物を用いて自動車用のスポイラーの製造の際、ブロー成形装置のアキュムレータで加圧し、パリソンがアキュムレータの下端のダイから抜け出るときに、パリソンの粘度が低くなる。粘度が低いほど、パリソンの流れ方向と重力方向の力が弱く作用するため、製造されたパリソンに対する溶融破壊現象を最小化することができる。また、ダイを通過したパリソンは、歪み硬化(strain hardening)現象が比較的長期間続くことがあるため、溶融張力の低下を最小化することができる。これにより、ダイを通過したパリソンが金型に供給され、金型が閉じるまでパリソンの垂れ下がり現象が生じ得ない。
【0053】
前記第3の共重合体は、分岐度が2~8であり、5~7であることが好ましい。
【0054】
上述の範囲を満たすと、低いせん断速度では粘度が高く、高いせん断速度では粘度が低い特性を有する高淡化特性がより強化し、自動車用のスポイラーの製造時に、パリソンの溶融破壊現象を最小化することでパリソンの表面不良率を最小化することができ、パリソンの溶融張力の低下によるパリソンの垂れ下がり現象を防止することができる。上述の範囲を超える場合には、低いせん断速度では粘度が低く、高いせん断速度では粘度が高くて、自動車スポイラーを製造するためのブロー成形には好適でない。上述の範囲未満の場合には、パリソンの垂れ下がり現象が生じる。
【0055】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位は、スチレン、α‐メチルスチレン、α‐エチルスチレンおよびp‐メチルスチレンからなる群から選択される1種以上の由来単位であってもよく、このうち、スチレン由来単位が好ましい。
【0056】
前記ビニルシアン系単量体由来単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルおよびα‐クロロアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上の由来単位であってもよく、このうち、アクリロニトリル由来単位が好ましい。
【0057】
前記第3の共重合体は、前記芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を60:40~90:10、65:35~85:15または72:28~77:23の重量比で含むことができ、このうち、72:28~77:23の重量比で含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、第1の共重合体との物性バランスに優れ、加工性が容易であるという利点がある。
【0058】
前記第3の共重合体は、絶対分子量が、500,000~700,000g/mol、550,000~650,000g/molまたは600,000~650,000g/molであってもよく、このうち、600,000~650,000g/molであることが好ましい。上述の範囲を満たすと、パリソンの製造時に溶融破壊を防止し、且つパリソンの垂れ下がり現象を防止するという利点がある。
【0059】
前記第3の共重合体は、多分散指数が3.0~5.0または3.5~4.5であってもよく、このうち、3.5~4.5が好ましい。上述の範囲を満たすと、第3の共重合体がより均一な物性を実現することができ、これを含む耐熱樹脂組成物もより均一な物性を実現することができる。
【0060】
前記第3の共重合体は、懸濁重合、乳化重合および塊状重合からなる群から選択される1種以上の方法で製造され得、このうち、懸濁重合で製造されることが好ましい。
【0061】
前記第3の共重合体は、耐熱樹脂組成物の全重量に対して、2~20重量%または3~18重量%、このうち、3~18重量%含まれることが好ましい。
【0062】
上述の範囲を満たすと、ブロー成形の際、溶融張力を高めることができ、これにより、パリソンの垂れ下がり現象を防止することができる。また、製造コストの過剰な上昇を防止することができる。
【0063】
4)第4の共重合体
第4の共重合体は、芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を含み、ガラス転移温度が106℃以下であり、直鎖状である。
【0064】
前記第4の共重合体のガラス転移温度は、ビニルシアン系単量体由来単位の含量または重量平均分子量によって変動され得る。
【0065】
前記第4の共重合体は、耐熱樹脂組成物の物性のバランス、すなわち、機械的特性、流動性および耐熱性のバランスを取るために含まれ得る。
【0066】
前記第4の共重合体は、ガラス転移温度が102~106℃または103~106℃であってもよく、このうち、103~106℃が好ましい。上述の範囲を満たすと、耐熱樹脂組成物に耐熱性を付与するというよりは、耐熱樹脂組成物の物性のバランスを取ることができる。
【0067】
前記第4の共重合体は、前記芳香族ビニル系単量体由来単位およびビニルシアン系単量体由来単位を50:50~90:10、60:40~85:15または66:34~80:20の重量比で含むことができ、このうち、66:34~80:20重量比で含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、前記第4の共重合体が耐熱樹脂組成物の物性のバランスをより良好に取ることができる。
【0068】
前記第4の共重合体は、重量平均分子量が80,000~250,000g/mol、110,000~210,000g/molまたは140,000~170,000g/molであり、このうち、140,000~170,000g/molが好ましい。上述の範囲を満たすと、第4の共重合体が、耐熱樹脂組成物の物性のバランスをより良好に取ることができる。
【0069】
前記第4の共重合体は、懸濁重合、乳化重合および塊状重合からなる群から選択される1種以上の方法で製造され得、このうち、塊状重合で製造されることが好ましい。
【0070】
前記第4の共重合体は、耐熱樹脂組成物の全重量に対して、30重量%以下、好ましくは2~27重量%含まれ得る。上述の範囲を満たすと、耐熱樹脂組成物の物性のバランスをより良好に取ることができる。
【0071】
本発明の一実施形態による耐熱樹脂組成物は、滑剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに含まれ得る。
【0072】
2.自動車用のスポイラー
本発明の一実施形態による自動車用のスポイラーは、本発明の耐熱樹脂組成物を用いて製造され得る。
【0073】
具体的には、前記自動車スポイラーは、押出工程で製造されたペレット状の耐熱樹脂組成物を溶融するステップと、溶融した耐熱樹脂組成物に油圧を加えてパリソン(parison)を製造するステップと、パリソンを金型内でブロー成形し、成形品を製造するステップと、成形品をトリミング(trimming)するステップと、トリミングした成形品を研磨(sanding)するステップと、研磨した成形品を塗布し、スポイラーを製造するステップとを含む製造方法により製造され得る。
【0074】
本発明の一実施形態による耐熱樹脂組成物を用いることで、パリソンを製造するステップにおいて、溶融破壊による表面不良が最小化される、又は発生し得ない。また、成形品を製造するステップにおいて、溶融張力が低下して発生するパリソンの垂れ下がり現象が生じ得ない。
【0075】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現され得、ここで説明する実施例に限定されない。
【実施例】
【0076】
<耐熱樹脂組成物の製造>
実施例1~実施例4、比較例1~比較例4
下記の表1に記載の構成要素と、滑剤としてN’N‐エチレンビス‐ステアルアミド(商品名:EBA、製造社:松原産業)0.5重量部とポリエチレンワックス(商品名:LC102N、製造社:Lion Chemicals)0.2重量部、酸化防止剤としてオクタデシル‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:Songnox 1076、製造社:松原産業)0.2重量部と2,4‐ジ‐t‐ブチルフェノールジヒドロゲンホスファイトサイクリックネオペンタンテトライルエステル(商品名:PEP‐24、製造社:ADEKA)0.2重量部を混合し、耐熱樹脂組成物を製造した。耐熱樹脂組成物を二軸押出機で260℃で混練し、ペレット状の耐熱樹脂組成物を製造した。
【0077】
【0078】
(1)第1の共重合体
商品名:DP280、製造社:LG化学、ブタジエン共重合体:60重量%、ブタジエン共重合体の平均粒径:0.3μm
【0079】
(2)第2の共重合体
1.高分子耐熱SAN共重合体
商品名:PW635、製造社:LG化学、重量平均分子量:175,000g/mol、アクリロニトリル由来単位:26重量%、α‐メチルスチレン由来単位:74重量%、ガラス転移温度:127℃
【0080】
2.低分子耐熱SAN共重合体
商品名:99UH、製造社:LG化学、重量平均分子量:100,000g/mol、アクリロニトリル由来単位:30重量%、α‐メチルスチレン由来単位:70重量%、ガラス転移温度:123℃
【0081】
(3)第3の共重合体
商品名:EMI‐230B、製造社:Fine‐Blend、分岐度:5~7、多分散指数:4.2、絶対分子量:630,000g/mol、アクリロニトリル由来単位:25重量%、スチレン由来単位:75重量%
【0082】
(4)直鎖状一般SAN共重合体
商品名:97HC、製造社:LG化学、重量平均分子量:153,000g/mol、多分散指数:1.9、アクリロニトリル由来単位:25重量%、スチレン由来単位:75重量%、ガラス転移温度:105℃
【0083】
(5)高分岐状SAN共重合体
商品名:EMI‐330B、製造社:Fine‐Blend、分岐度:9~10、多分散指数:4.1、重量平均分子量:630,000g/mol、アクリロニトリル由来単位:28重量%、スチレン由来単位:72重量%
【0084】
実験例1
実施例1~実施例4、比較例1~比較例4のペレット状の耐熱樹脂組成物を射出して試験片を製造し、下記のような方法で物性を評価し、その結果を表2に記載した。
【0085】
(6)アイゾッド(Izod)衝撃強度(kg・cm/cm):ASTM D 256に準じて、厚さ3.2mmの試験片にノッチ(notch)を設けて測定した。
【0086】
(7)メルトインデックス(melt index、g/10min):ASTM D 1238に準じて、220℃、10kgの条件で測定した。
【0087】
(8)熱変形温度(℃):ASTM D 648に準じて、厚さ6.4mmの試験片を用いて測定した。
【0088】
【0089】
表2を参照すると、実施例1~実施例4、比較例1~比較例4の試験片の場合、耐熱SAN共重合体の含量が増加すると、熱変形温度が高くなることを確認することができた。
【0090】
実施例1と比較例3の試験片を比較すると、分岐状SAN共重合体を含む場合、衝撃強度は多少低下するが、メルトインデックスが低くなることを確認することができた。
【0091】
実施例1と実施例3の試験片を比較すると、分岐状SAN共重合体の含量が低くなる場合、メルトインデックスが高くなることを確認することができた。実施例1、実施例3および比較例3の試験片の物性評価の結果から、分岐状SAN共重合体が、耐熱樹脂組成物のメルトインデックスに影響を及ぼすことを確認することができた。
【0092】
実施例1と比較例4の試験片を比較すると、分岐度が高くなると、メルトインデックスが高くなることを確認することができた。
【0093】
実施例2と実施例4の試験片を比較すると、耐熱SAN共重合体の含量が減少すると、熱変形温度が低くなるだけでなく、メルトインデックスが高くなり、衝撃強度が低下することを確認することができた。
【0094】
<スポイラーの製造>
実施例5~実施例8、比較例5~比較例8
ブロー成形装置(商品名:YELBT、製造社:YOUNG IL工業)の押出機シリンダの温度を195℃に設定し、アキュムレータの内部温度を200℃に設定し、アキュムレータ末端のダイ温度を225℃に設定し、パリソンを作製するためのアキュムレータの油圧を185kg/cm2に設定した。
【0095】
先ず、下記表3に記載のペレット状の耐熱樹脂組成物を溶融した。溶融した耐熱樹脂組成物をブロー成形装置のアキュムレータに投入し、アキュムレータの中で溶融した耐熱樹脂組成物に油圧を加えてパリソンを製造した。この際、アキュムレータのダイから出るパリソンの表面温度は215℃であり、重量は約5,400gであった。前記パリソンを金型の中でブロー成形した後、成形品を製造した。成形品を加工してスポイラーを製造し、その重量を測定したところ、平均2,370gであった。
【0096】
【0097】
実験例2
実施例、比較例の自動車スポイラーのブロー成形時の成形性を評価し、その結果を下記表4に記載した。
【0098】
(9)溶融破壊現象による表面不良:スポイラーの製造過程中にパリソンの一部を切断し、表面を肉眼で観察した。
【0099】
◎:なし、△:弱く現れる、×:強く現れる
【0100】
(10)パリソンの垂れ下がり現象:スポイラーの製造過程中にパリソンがアキュムレータからほぼすべて出て、ブロー成形のための金型が閉じる前にパリソンが垂れ下がる現象を肉眼で観察した。
【0101】
◎:なし、△:弱く現れる、×:強く現れる
【0102】
【0103】
表4を参照すると、実施例5~実施例8の自動車スポイラーの場合、溶融破壊現象による表面不良が全く発生しておらず、パリソンの垂れ下がり現象も現れなかった。
【0104】
しかし、分岐状SAN共重合体を含んでいない耐熱樹脂組成物を用いた比較例5~比較例7の自動車スポイラーの場合、表面不良が現れるか、パリソンの垂れ下がり現象が発生した。
【0105】
しかし、高分岐状SAN共重合体を含む比較例8の場合、表面不良は弱く現れているが、パリソンの垂れ下がり現象が発生した。
【0106】
実験例3
アキュムレータのダイから出るときのパリソンを一定量採取して、角振動数(Angular frequency)に対する粘度を測定し、これを
図1に示した。角振動数が0rad/sのときに、粘度が高いと、パリソンの垂れ下がり現象が防止され、角振動数(Angular frequency)が10
2~10
3rad/sのときに、粘度が低いと、溶融破壊現象が防止されることを示す。
【0107】
(11)角振動数による粘度変化の測定方法:TA instruments社製のARES‐G2 Rheometerを用いて測定した。
【0108】
図1を参照すると、実施例5および実施例8は、角振動数が0rad/sに近付くときに、粘度は高くなり、角振動数(Angular frequency)が10
2~10
3rad/sのときに、粘度が低くなる特性を有する。かかる結果から、ブロー成形の際、パリソンの溶融破壊現象および垂れ下がり現象が防止されることを予測することができた。
【0109】
比較例5の場合、角振動数が0rad/sに近付くときに、実施例8に比べ、粘度が低く、10
2~10
3rad/sのときに、粘度が高かった。これにより、ブロー成形の際、溶融破壊(melt fracture)現象およびパリソンの垂れ下がり現象が発生するということを予測することができた。一方、
図1では、実施例8に比べ、粘度が著しく高く又は低く示されていないが、y軸の単位の間隔が狭すぎるためであって、実際には著しい差を示す。
【0110】
比較例6の場合、角振動数が0rad/sに近付くときに、粘度が低く、102~103rad/sのときに、粘度が高かった。これにより、ブロー成形の際、溶融破壊現象およびパリソンの垂れ下がり現象が発生するということを予測することができた。
【0111】
比較例8の場合、角振動数が0rad/sに近付くときに、粘度が低く、10
2~10
3rad/sのときに、粘度が高かった。これにより、ブロー成形の際、溶融破壊現象およびパリソンの垂れ下がり現象が発生するということを予測することができた。一方、
図1では、角振動数が10
2~10
3rad/sのときに、実施例8に比べ、粘度が著しく高く示されていないが、y軸の単位の間隔が狭すぎるためであって、実際には著しい差を示す。
【0112】
実験例4
アキュムレータのダイから出るときの実施例および比較例のパリソンを一定量採取して、時間による伸長粘度を測定し、これを
図2に示した。時間が経過するに伴い、伸長粘度の勾配が低くなるか、伸長粘度自体が低くなるということは、パリソンが垂れ下がって高分子の鎖が互いに抜けるということを意味する。
【0113】
(12)時間による伸長粘度変化の測定方法:TA instruments社製のARES‐G2 Rheometerを用いて測定した。
【0114】
図2を参照すると、実施例5および実施例8の場合、伸長強度が10秒までは高くなり続けるため、歪み硬化(strain hardening)現象が発生し、これにより、パリソンの垂れ下がり現象が発生しないということを予測することができた。
【0115】
比較例5の場合、実施例5および実施例8よりは、粘度上昇曲線の勾配が低く、10秒で伸長粘度が降下し、パリソンの垂れ下がり現象が弱く発生するということを予測することができた。
【0116】
比較例6の場合、粘度上昇曲線の勾配が著しく低く、パリソンの垂れ下がり現象が強く発生するということを予測することができた。
【0117】
比較例8の場合、実施例5および実施例8よりは、粘度上昇曲線の勾配が低く、10秒で伸長粘度が降下し、パリソンの垂れ下がり現象が発生するということを予測することができた。