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特許7460250リチウム二次電池用正極活物質及びこの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240326BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240326BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176534
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2021527047の分割
【原出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2023001232
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0143804
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0147928
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ヒョン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・イ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ペ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・シク・シン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヒ・イ
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188428(JP,A)
【文献】特表2018-532236(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105375010(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含むリチウム遷移金属酸化物であり、
前記リチウム遷移金属酸化物のリチウムを除いた遷移金属の全モル数に対するニッケル(Ni)の含量が60モル%以上であり、
前記リチウム遷移金属酸化物がZr、Mg、Ti及びAlからなる群から選択された少なくともいずれか一つのドーピング元素でドーピングされ、
3.0g/cmから3.3g/cmの圧延密度で圧延という操作を行った時に平均粒径(D50)が4から10μmであるという性質を有し、単一粒子の形態を有する正極活物質。
【請求項2】
前記リチウム遷移金属酸化物が下記化学式1で表され、
[化学式1]
Li1+aNiCoMn
前記化学式1において、0≦a≦0.5、0.6≦x<1、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0<w≦0.01、Mは、Zr、Mg、Ti及びAlからなる群から選択された少なくともいずれか一つである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム遷移金属酸化物の結晶子サイズが170nmから220nmである、請求項1または2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記ドーピング元素が前記リチウム遷移金属酸化物の全重量に対して100から4,000ppmで含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
請求項1に記載の正極活物質を製造するための製造方法であって、
ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む遷移金属水酸化物の全モル数に対して、ニッケル(Ni)を60モル%以上含む遷移金属水酸化物前駆体を準備する段階、
Zr、Mg、Ti及びAlからなる群から選択されたドーピング元素原料物質含有水溶液と前記遷移金属水酸化物前駆体を混合して乾燥させ混合物を形成する段階、及び
前記混合物にリチウム原料物質を混合し、810℃以上で焼成し、単一粒子形態のリチウム遷移金属酸化物を製造する段階、を含む、正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記焼成が810℃から880℃で行われる、請求項5に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極。
【請求項8】
請求項7に記載のリチウム二次電池用正極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年11月20日付韓国特許出願第10-2018-0143804号及び2019年11月18日付韓国特許出願第10-2019-0147928号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質、この製造方法、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が常用化されて広く用いられている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられており、この中でも作用電圧が高く、容量特性に優れたLiCoOなどのリチウムコバルト複合金属酸化物が主に用いられている。しかし、LiCoOは、脱リチウムによる結晶構造の不安定化により熱的特性が非常に劣悪であり、高価であるため電気自動車などのような分野の動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
前記LiCoOを代替するための材料として、リチウムマンガン複合金属酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePOなど)またはリチウムニッケル複合金属酸化物(LiNiOなど)などが開発された。この中でも、約200mAh/gの高い可逆容量を有し、大容量の電池具現が容易なリチウムニッケル複合金属酸化物に対する研究開発がより活発に研究されている。しかし、前記LiNiOは、LiCoOと比べて熱安定性が悪く、充電状態で外部からの圧力などによって内部短絡が生じると、正極活物質そのものが分解されて電池の破裂及び発火をもたらすという問題があった。これにより、前記LiNiOの優れた可逆容量は維持しながらも低い熱安定性を改善するための方法として、Niの一部をMnとCoで置換したリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物が開発された。
【0006】
しかし、前記リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の場合、粒子強度及び構造安定性が低く、且つ、容量が低く、特に容量特性を高めるためにニッケルの含量を60モル%以上に高める場合、リチウムニッケルコバルト金属酸化物中のニッケルがNi2+に維持されようとする傾向により、その表面にLiOH及びLiCOなどリチウム副産物が多量生成されるという問題点があった。このように、表面にリチウム副産物の含量が高いリチウムニッケルコバルト金属酸化物を用いる場合、リチウム二次電池に注入された電解液と反応することにより、リチウム二次電池でスウェリング(swelling)現象を引き起こすことができるので、これを含む二次電池は電池性能を十分に発揮することができなかった。
【0007】
したがって、高容量特性を示し、粒子強度及び構造的安定性を改善することにより、寿命特性及び抵抗特性が改善された二次電池を製造することができる正極活物質の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のような問題点を解決するために、本発明の第1技術的課題は、3.0g/cmから3.3g/cmの圧延密度で圧延後の平均粒径(D50)が4から10μmであり、単一粒子の形態を有し、特定のドーピング元素でドーピングされ、高容量特性を有しながらも寿命特性及び抵抗特性が改善された正極活物質を提供することである。
【0009】
本発明の第2技術的課題は、正極活物質の製造時に特定のドーピング元素をドーピングすることにより、従来の高含量ニッケルを含むリチウム遷移金属酸化物を単一粒子の形態で製造するための焼成温度よりも比較的低温で焼成しても、電気化学的特性の劣化なしに3.0g/cmから3.3g/cmの圧延密度で圧延後の平均粒径(D50)が4から10μmであり、単一粒子の形態を有する正極活物質の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の第3技術的課題は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供することである。
【0011】
本発明の第4技術的課題は、前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含むリチウム遷移金属酸化物であり、前記リチウム遷移金属酸化物はリチウムを除いた遷移金属の全モル数に対してニッケル(Ni)の含量が60モル%以上であり、前記リチウム遷移金属酸化物をB、Zr、Mg、Ti、Sr、W及びAlからなる群から選択された少なくともいずれか一つのドーピング元素でドーピングされたものを含み、3.0g/cmから3.3g/cmの圧延密度で圧延後の平均粒径(D50)が4から10μmであり、単一粒子の形態を有する正極活物質を提供する。
【0013】
また、本発明は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む遷移金属水酸化物の全モル数に対して、ニッケル(Ni)を60モル%以上含む遷移金属水酸化物前駆体を準備する段階;B、Zr、Mg、Ti、Sr、W及びAlからなる群から選択されたドーピング元素原料物質含有水溶液と前記遷移金属水酸化物前駆体を混合して乾燥する段階;及び前記混合物にリチウム原料物質を混合し、810℃以上で焼成し、単一粒子形態のリチウム遷移金属酸化物を製造する段階;を含む、正極活物質の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明に係る正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0015】
また、本発明に係る正極を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高含量のニッケルを含む正極活物質の製造時、特定のドーピング元素でドーピングすることにより、従来の単一粒子型正極活物質を製造するための温度よりも比較的低温で焼成しても、3.0g/cmから3.3g/cmの圧延密度で圧延後の平均粒径(D50)が4から10μmであり、単一粒子の形態を有する正極活物質を製造することができる。これにより、高温焼成による正極活物質の電気化学的特性の劣化なしに、寿命特性及び抵抗特性が改善された正極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1で製造した正極活物質のSEMイメージである。
図2】本発明の比較例1で製造した正極活物質のSEMイメージである。
図3】本発明の比較例3で製造した正極活物質のSEMイメージである。
図4】本発明の実施例1~2及び比較例1~4で製造した正極活物質を含むリチウム二次電池の焼成温度別のBドーピングの有無による容量維持率を示したグラフである。
図5】本発明の実施例1~2及び比較例1~4で製造した正極活物質を含むリチウム二次電池のサイクルによる容量維持率を示したグラフである。
図6】本発明の実施例1~3及び比較例1~2で製造した正極活物質を含むリチウム二次電池の焼成温度別のBドーピングの有無による抵抗特性を示したグラフである。
図7】実施例1~2及び比較例3で製造した正極活物質を含むリチウム二次電池の連続充電特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0020】
本明細書の全体において、「粒子」は、マイクロ単位の顆粒を指し、これを拡大して観測すると、数十ナノ単位の結晶形態を有した「グレイン(grain)」に区分することができる。これをさらに拡大すると、原子が一定の方向の格子構造をなす形態の区分された領域を確認することができ、これを「結晶子(crystallite)」といい、XRDで観測する粒子のサイズは、結晶子(crystallite)のサイズに定義される。結晶子サイズ(crystallite size)を測定する方法は、XRDデータのピーク広がり(peak broadening)を用いて結晶子サイズ(crystallite size)を測ることができ、シェラー式(scherrer equation)を介して定量的に計算することができる。
【0021】
本明細書の全体において、平均粒径(D50)は、粒子の粒径分布曲線において体積累積量の50%に該当する粒径と定義し得る。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザー回折法は、一般にサブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性及び高分解性の結果を得ることができる。
【0022】
正極活物質
従来では、リチウム二次電池の容量を高めるために、リチウムを除いた遷移金属の総モル数に対して60モル%以上のニッケルを含む高含量ニッケル含有正極活物質を用いた。しかし、この場合、正極活物質表面にリチウム副産物が過量生成されるに伴い二次電池のスウェリング現象が惹起され、また低い粒子強度により正極活物質の安定性が劣るという問題点があった。これを改善するために高含量ニッケル含有正極活物質を過焼成して単一粒子型正極活物質を製造する場合、安定性は改善されたが、高い焼成温度で焼成することにより、寿命特性及び抵抗特性の劣化などの問題点があった。
【0023】
よって、本発明者等は、ニッケルを高含量で含みながらも、寿命特性及び抵抗特性の劣化が発生しない単一粒子形態の正極活物質を開発するために、絶え間ない研究を繰り返した結果、高含量ニッケル含有リチウム遷移金属酸化物を特定のドーピング元素でドーピングすることにより、従来の高含量ニッケル含有正極活物質を単一粒子型に製造するための焼成温度より低い温度で焼成しても、単一粒子の形態を有しながらも寿命特性及び抵抗特性が改善された正極活物質を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
本発明に係る正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含むリチウム遷移金属酸化物であり、前記リチウム遷移金属酸化物は、リチウムを除いた遷移金属の全モル数に対してニッケル(Ni)の含量が60モル%以上であり、前記リチウム遷移金属酸化物をB、Zr、Mg、Ti、Sr、W及びAlからなる群から選択された少なくともいずれか一つのドーピング元素でドーピングされたものを含み、3.0g/cmから3.3g/cmの圧延密度で圧延後の平均粒径(D50)が4から10μmであり、単一粒子の形態を有するものである。
【0025】
本発明の一実施形態による前記リチウム遷移金属酸化物は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含み、遷移金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは85モル%から90モル%を満たす高含量ニッケル(High‐Ni)を含むNCM系リチウム遷移金属酸化物であってよい。
【0026】
前記のようにリチウムを除いた遷移金属酸化物の全モル数に対して60モル%以上、好ましくは80モル%以上のニッケルを含むリチウム遷移金属酸化物を用いる場合、これを電池への適用時に高含量のニッケル含有による高容量特性を示すことができる。
【0027】
さらに、前記高含量ニッケルを含むリチウム遷移金属酸化物は、B、Zr、Mg、Ti、Sr、W及びAlからなる群から選択された少なくともいずれか一つのドーピング元素、最も好ましくはBでドーピングされたものである。
【0028】
前記高含量ニッケルを含むリチウム遷移金属酸化物をB、Zr、Mg、Ti、Sr、W及びAlからなる群から選択された少なくともいずれか一つのドーピング元素でドーピングする場合、正極活物質の構造安定性が改善され、これを電池への適用時に寿命特性及び抵抗特性を改善することができる。特に、ドーピング元素としてBを含む場合、前記Bにより正極活物質の結晶成長が促進され、正極活物質を製造して解砕した後、3.0から3.3g/cmの圧延密度で圧延しても、4から10μmの平均粒径(D50)を有する正極活物質を製造することができる。さらに、Bの四面体(tetrahedral)結晶構造により、B‐O間の共有結合が遷移金属‐O共有結合よりも強い。これにより、リチウムイオンの挿入/脱離時に構造膨張を抑制し、SEI層(layer)をより安定に形成するようにして、正極活物質表面と電解液との間の副反応を減少させることができる。これにより、正極活物質の比表面積が減少され、粒子強度が改善されて圧延時の粒子割れが抑制され、リチウム副産物の含量が減少されて電解液との副反応を減少させ得るので、これを電池への適用時に寿命特性、安定性及び抵抗特性が改善された電池を提供することができる。
【0029】
例えば、前記ドーピング元素は、前記リチウム遷移金属酸化物の全重量に対して100ppmから4,000ppm、好ましくは500ppmから2,000ppmで含むものであってよい。前記ドーピング元素を前記範囲で含む場合、寿命特性及び抵抗特性がさらに改善され得る。
【0030】
本発明の正極活物質は、凝集された2次粒子の形態ではなく単一粒子(single particle)形態、すなわち1次粒子からなる。本発明において、「1次粒子」は単一粒子の1次構造体を意味し、「2次粒子」は2次粒子を構成する1次粒子に対する意図的な凝集または組立工程なしでも、1次粒子間の物理的または化学的結合により1次粒子同士凝集された凝集体、すなわち2次構造体を意味する。
【0031】
また、本発明の正極活物質は、3.0g/cmから3.3g/cmの圧延密度で圧延後の平均粒径(D50)が4μmから10μm、好ましくは4μmから6μmであってよい。例えば、前記正極活物質は、正極活物質前駆体とリチウム原料物質を混合して焼成する過程で、1次粒子等が凝集された2次粒子形態で存在することになるが、これを解砕して3.0g/cmから3.3g/cmの圧延密度で圧延すると、凝集された形態の正極活物質がグレイン(grain)を中心に割れるようになる。特に、前記正極活物質を特定のドーピング元素、例えば、B、Zr、Mg、Ti、Sr、W及びAlからなる群から選択された少なくともいずれか一つのドーピング元素、最も好ましくはBでドーピングする場合、前記Bドーピング元素をドーピングするによって正極活物質の結晶子サイズが増加することになり、これによって前記正極活物質を圧延した後の平均粒径(D50)が前記範囲を満たすように形成されるものである。すなわち、本発明によれば、前記ドーピング元素をドーピングすることにより、正極活物質の結晶子サイズが増加することになり、この場合、従来の単一粒子を形成するための焼成温度(例えば、900℃以上)より低い温度で焼成しても、容易に単一粒子の形態を有する正極活物質を製造することができ、このように製造した正極活物質の粒子強度が大きくなって圧延時の粒子割れを抑制することができ、圧延密度を向上させることができ、比表面積が減少され、リチウム副産物が減少されて電解液との副反応によるガス発生量を減少させることができる。
【0032】
前記リチウム遷移金属酸化物の結晶子サイズは170nm以上、好ましくは180nmから200nmであるものであってよい。前記リチウム遷移金属酸化物の結晶子サイズが前記範囲を満たす場合、前記リチウム遷移金属酸化物が単一粒子の形態を有するものであってよい。例えば、前記正極活物質の結晶子サイズが200nmを超過する場合、前記正極活物質は単一粒子の形態を示すが、結晶子サイズの上昇によってレート特性が低下し得る。また、前記正極活物質の結晶子サイズが170nm未満である場合、前記リチウム遷移金属酸化物は単一粒子の形態ではなく、1次粒子が凝集された2次粒子の形態であってよい。前記正極活物質が単一粒子の形態を有することにより粒子の強度が増加し、その後、これを含む電池の充放電時に正極活物質のクラック発生が減少して正極活物質の安定性が改善され得る。
【0033】
より具体的に、本発明の一実施形態による前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されるものであってよい。
【0034】
[化学式1]
Li1+aNiCoMn
前記化学式1において、0≦a≦0.5、0.6≦x<1、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0<w≦0.04、Mは、B、Zr、Mg、Ti、Sr、W及びAlからなる群から選択された少なくともいずれか一つ、さらに好ましくは0≦a≦0.5、0.8≦x<1、0<y≦0.2、0<z≦0.2、0<w≦0.01、MはBである。
【0035】
このように単一粒子(single particle)形態であり、ニッケル(Ni)60モル%以上の組成を有する、本発明の特定のドーピング元素でドーピングされた高含量ニッケル(High‐Ni)NCM系正極活物質は、高容量の具現が可能でありながらも、同時に優れた安定性を確保することができる。具体的に、比表面積が減少され、粒子強度が改善されて圧延時の粒子割れが抑制され、リチウム副産物の含量が減少されて電解液との副反応を減少させることができる。また、このような本発明の高含量ニッケル(High‐Ni)NCM系正極活物質は、優れた構造的安定性及び化学的安定性が確保され、セル駆動時のガス発生量を減少させることができ、熱安定性を確保することができる。
【0036】
正極活物質の製造方法
次に、本発明に係る正極活物質の製造方法に対して説明する。
【0037】
具体的に、本発明に係る正極活物質を製造するため、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む遷移金属水酸化物の全モル数に対して、ニッケルを60モル%以上含む遷移金属水酸化物前駆体を準備する段階;B、Zr、Mg、Ti、Sr、W及びAlからなる群から選択されたドーピング元素原料物質含有水溶液と前記遷移金属水酸化物前駆体を混合して乾燥する段階;及び前記混合物にリチウム原料物質を混合し、810℃以上で焼成し、単一粒子形態のリチウム遷移金属酸化物を製造することである。
【0038】
これをより詳しく説明すると、先ず、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む遷移金属水酸化物の全モル数に対して、60モル%以上のニッケルを含む遷移金属前駆体を準備する。
【0039】
前記遷移金属前駆体は、市販の正極活物質用前駆体を購入して用いるか、当該技術分野によく知られた正極活物質用前駆体の製造方法によって製造されてよい。
【0040】
前記前駆体は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液にアンモニウム陽イオン含有錯体形成剤と塩基性化合物を添加して共沈反応させて製造されるものであってよい。
【0041】
前記ニッケル含有原料物質は、例えば、ニッケル含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであってよく、具体的には、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物またはこれらの組み合わせであってよいが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記コバルト含有原料物質は、コバルト含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであってよく、具体的には、Co(OH)、CoOOH、Co(OCOCH・4HO、Co(NO・6HO、CoSO、Co(SO・7HOまたはこれらの組み合わせであってよいが、これに限定されるものではない。
【0043】
前記マンガン含有原料物質は、例えば、マンガン含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの組み合わせであってよく、具体的には、Mn、MnO、Mnなどのようなマンガン酸化物;MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化マンガン、塩化マンガンまたはこれらの組み合わせであってよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記遷移金属溶液は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質を溶媒、具体的には水、または水と均一に混合され得る有機溶媒(例えば、アルコールなど)の混合溶媒に添加して製造されるか、またはニッケル含有原料物質の水溶液、コバルト含有原料物質の水溶液及びマンガン含有原料物質を混合して製造されたものであってよい。
【0045】
前記アンモニウム陽イオン含有錯体形成剤は、例えば、NHOH、(NHSO、NHNO、NHCl、CHCOONH、NHCOまたはこれらの組み合わせであってよいが、これに限定されるものではない。一方、前記アンモニウム陽イオン含有錯体形成剤は、水溶液の形態で使用されてよく、このとき溶媒としては水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的に、アルコールなど)と水の混合物が用いられてよい。
【0046】
前記塩基性化合物は、NaOH、KOHまたはCa(OH)などのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水和物またはこれらの組み合わせであってよい。前記塩基性化合物もまた水溶液の形態で使用されてよく、ここで溶媒としては水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的に、アルコールなど)と水の混合物が使用されてよい。
【0047】
前記塩基性化合物は、反応溶液のpHを調節するために添加されるものであって、金属溶液のpHが11から13になる量で添加されてよい。
【0048】
一方、前記共沈反応は、窒素またはアルゴンなどの非活性雰囲気下で、40℃から70℃の温度で行われてよい。
【0049】
前記のような工程により、ニッケル‐コバルト‐マンガン水酸化物の粒子が生成され、反応溶液内に沈澱される。ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質の濃度を調節し、遷移金属全体の含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である前駆体を製造することができる。沈澱されたニッケル‐コバルト‐マンガン水酸化物粒子を通常の方法により分離させ、乾燥させてニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体を得ることができる。
【0050】
次いで、ドーピング元素原料物質含有水溶液と前記遷移金属水酸化物前駆体を混合して乾燥する。
【0051】
前記ドーピング元素原料物質は、B、Zr、Mg、Ti、Sr、W及びAlからなる群から選択された少なくともいずれか一つのドーピング元素を含む硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ハライド、水酸化物またはオキシ水酸化物などを用いてよく、水などの溶媒に溶解され得るものであれば、特に制限されずに用いられてよい。好ましくは、前記ドーピング元素原料物質は、Bを含む硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ハライド、水酸化物またはオキシ水酸化物などであってよく、さらに好ましくはホウ酸、三酸化ホウ素、炭化ホウ素、三フッ化ホウ素、一フッ化ホウ素からなる群から選択された少なくともいずれか一つを含んでよい。
【0052】
前記のようにドーピング元素原料物質を水溶液に溶解させ、これを前記遷移金属水酸化物前駆体と混合する湿式工程によって前記ドーピング元素をドーピングする場合、正極活物質全体にドーピング元素を均一にドーピングすることができる。例えば、遷移金属水酸化物前駆体に乾式方法を用いてドーピング元素原料物質をドーピングする場合、ドーピング元素が部分的に凝集されてドーピングされ得るため、電池への適用時に寿命特性及び抵抗特性の改善効果が湿式方式に比べて劣ることがある。
【0053】
例えば、前記ドーピング元素原料物質は、水溶液内に0.1Mから0.5M、好ましくは0.2Mから0.4Mの濃度になるように溶解させるものであってよい。例えば、前記範囲を超過する場合、リチウムとドーピング元素が反応する確率が増加して前駆体とリチウムの反応性が減少することができ、この場合、正極活物質の構造完成度が減少され、比容量、効率特性及び寿命特性が減少され得る。
【0054】
例えば、前記正極活物質は、前記リチウム遷移金属酸化物の総重量部に対して、ドーピング元素の含量が100ppmから4,000ppm、好ましくは500ppmから2,000ppmになるようにドーピング元素M原料物質含有水溶液を混合するものであってよい。
【0055】
特に、前記遷移金属水酸化物前駆体をドーピング元素としてBドーピングする場合、前記Bにより正極活物質の製造時に焼成温度を下げても、前記Bにより正極活物質の結晶子の成長が促進され、単一粒子形態の正極活物質を製造することができる。一般に、遷移金属の全モル数に対してNiの含量が60モル%以上である高含量Ni含有遷移金属水酸化物前駆体と、リチウム原料物質(例えば、LiOH・HO)を混合して焼成するとき、リチウムが溶ける時点から遷移金属水酸化物前駆体と反応が始まるが、このとき、前記LiOH・HOの融点は約400℃であるため、400℃以上では遷移金属水酸化物前駆体とリチウムが反応することになる。しかし、前記Bは、Liと約150℃で反応できるため、150℃ではBとLiが反応することになり、450℃以上でLiと遷移金属水酸化物前駆体の反応時、前記Bが触媒剤の役割もまた行うことができる。これによって、Liと遷移金属水酸化物前駆体の反応温度が下がるので、前記Bを適用する場合、従来の高含量ニッケルを含む遷移金属水酸化物前駆体とリチウム原料物質との混合物の焼成温度より低い温度で焼成を行っても、単一粒子形態の正極活物質を製造することができる。これによって、従来では高温焼成により発生していた電気化学的特性の劣化を防止し、寿命特性及び抵抗特性が改善された高含量ニッケルを含む単一粒子形態の正極活物質を製造することができる。
【0056】
前記乾燥は、前記ドーピング元素原料物質を溶解させた水溶液を乾燥するためのであり、電池に化学的変化を誘発することなく前記溶媒を乾燥させ得る方法であれば特に制限されずに用いてよく、例えば、噴霧乾燥法、回転式蒸発器(rotary evaporator)を用いた乾燥法、真空乾燥法または自然乾燥法を用いて行ってよい。
【0057】
次に、前記ドーピング元素原料物質含有水溶液と前記遷移金属水酸化物前駆体を混合した混合物に、リチウム原料物質を混合して810℃以上で焼成し、単一粒子形態の正極活物質を製造することができる。
【0058】
前記リチウム原料物質は、リチウムソースを含む化合物であれば特に制限されずに用いてよく、好ましくは炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム(LiOH)、LiNO、CHCOOLi及びLi(COO)からなる群から選択される少なくとも一つを用いてよい。
【0059】
前記焼成は、酸素雰囲気下、810℃以上、好ましくは810℃から880℃、好ましくは810℃から850℃、さらに好ましくは810℃から830℃で12時間から24時間行うものであってよい。前記のように810℃以上で12から24時間焼成を行うことにより、前記正極活物質が再結晶化されて単一粒子の形態で形成されるものであってよい。例えば、前記810℃未満の温度で焼成工程を行う場合、前記正極活物質の再結晶化が起こらないので、前記正極活物質は1次粒子が凝集された2次粒子形態で形成され、この場合、正極活物質の粒子強度が劣るため、これを適用した二次電池の安定性が低下し得る。また、880℃を超過する温度で焼成工程を行う場合、前記正極活物質は再結晶化されて単一粒子の形態で形成される反面、高含量のNiを含む遷移金属水酸化物前駆体の場合、リチウムと混合して高温焼成を行うことにより、Ni3+→Ni2+に相転移してLiサイト(site)の位置に置換され、これを電池への適用時に容量、寿命及び抵抗特性が劣るようになり得る。
【0060】
次に、リチウム遷移金属酸化物の表面に存在するリチウム副産物を除去するため、前記リチウム複合遷移金属酸化物を水洗する工程をさらに行ってよい。
【0061】
ニッケルを高濃度で含有するリチウム遷移金属酸化物の場合、ニッケル含量が少ないリチウム遷移金属酸化物に比べて構造的に不安定であるため、製造工程で未反応の水酸化リチウムや炭酸リチウムのようなリチウム副産物がさらに多く発生する。正極活物質にリチウム副産物が多量存在する場合、リチウム副産物と電解液が反応してガスの発生及びスウェリング現象が発生し、これによって高温安定性が顕著に低下することになる。したがって、高濃度ニッケルを含むリチウム遷移金属酸化物からリチウム副産物を除去するための水洗工程をさらに行ってよい。
【0062】
前記水洗段階は、例えば、超純水にリチウム遷移金属酸化物を投入し、撹拌させる方法で行われてよい。ここで、前記水洗温度は20℃以下、好ましくは10℃から20℃であってよく、水洗時間は10分から1時間程度であってよい。水洗温度及び水洗時間が前記範囲を満たすとき、リチウム副産物が効果的に除去され得る。
【0063】
正極
次に、本発明に係る正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0064】
具体的に、前記二次電池用正極は、正極集電体、前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、本発明に係る正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0065】
ここで、前記正極活物質は前述したところと同一なので、具体的な説明を省略し、以下では残りの構成に対してのみ具体的に説明する。
【0066】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが用いられてよい。また、前記正極集電体は、通常3から500μmの厚さを有してよく、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で用いられてよい。
【0067】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに、導電材及び必要に応じて選択的にバインダを含んでよい。
【0068】
ここで、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80から99重量%、より具体的には85から98.5重量%の含量で含まれてよい。前記含量範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができる。
【0069】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電気伝導性を有するものであれば、特別な制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1から15重量%で含まれてよい。
【0070】
前記バインダは、正極活物質の粒子間の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を担う。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてよい。前記バインダは、正極活物質層の総重量に対して0.1から15重量%で含まれてよい。
【0071】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除き、通常の正極の製造方法によって製造されてよい。具体的に、前記正極活物質及び選択的に、バインダ及び導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造してよい。
【0072】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に用いられる溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダを溶解または分散させ、その後、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示し得る粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0073】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0074】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的に電池、キャパシタなどであってよく、より具体的にはリチウム二次電池であってよい。
【0075】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と負極との間に介在される分離膜及び電解質を含み、前記正極は前記で説明したところと同一なので、具体的な説明を省略し、以下では残りの構成に対してのみ具体的に説明する。
【0076】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、分離膜の電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含んでよい。
【0077】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0078】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが用いられてよい。また、前記負極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で用いられてよい。
【0079】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダ及び導電材を含む。
【0080】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインタカレーション及びデインタカレーションが可能な化合物が用いられてよい。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などを挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が用いられてよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などがいずれも用いられてよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0081】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量を基準に80重量部から99重量部で含まれてよい。
【0082】
前記バインダは、導電材、活物質及び集電体間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の全重量を基準に0.1重量部から10重量部で添加される。このようなバインダの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン‐ブタジエンゴム、ニトリル‐ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などを挙げることができる。
【0083】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全重量を基準に10重量部以下、好ましくは5重量部以下で添加されてよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてよい。
【0084】
例えば、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極活物質層形成用組成物を塗布し乾燥することで製造されるか、または前記負極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造されてよい。
【0085】
前記負極活物質層は、一例として負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極活物質層形成用組成物を塗布し乾燥するか、または前記負極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造されてもよい。
【0086】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池で分離膜として用いられるものであれば特別な制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が用いられてよく、選択的に単層または多層構造で用いられてよい。
【0087】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0088】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含むことができる。
【0089】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオン等が移動することができる媒質の役割が可能なものであれば、特別な制限なく使用されてよい。具体的に前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate,MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(Rは炭素数2から20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでよい)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが用いられてよい。この中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1から約1:9の体積比で混合して使用するのが電解液の性能に優れて表れ得る。
【0090】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なく用いられてよい。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、又はLiB(Cなどが用いられてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1から2.0Mの範囲内で使用するのがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0091】
前記電解質には、前記電解質の構成成分等の他にも電池の寿命特性の向上、電池容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。ここで、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1から5重量部で含まれてよい。
【0092】
前記のように本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び寿命特性を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle,HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0093】
これによって、本発明の他の一具現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0094】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として用いられてよい。
【0095】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などになり得る。
【0096】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用され得るだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0097】
以下、本発明を具体的に説明するために実施形態を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施形態は、いくつか異なる形態に変形されてよく、本発明の範囲が下記で詳述する実施形態に限定されるものに解釈されてはならない。本発明の実施形態は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0098】
実施例1
硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が90:4:6となるようにする量でイオン交換水中に溶かして2.4Mの遷移金属水溶液を準備した。また、9%濃度のアンモニア水溶液と、25%濃度の水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ準備した。共沈反応器に前記遷移金属水溶液、アンモニア水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を一定速度で投入し、窒素雰囲気下で共沈反応を進めて、遷移金属水酸化物前駆体を合成した。
【0099】
次いで、ホウ酸2.1gを150mLの水に溶かした後、前記ホウ酸水溶液150mLに350gの遷移金属水酸化物前駆体を投入した後、撹拌した。混合された溶液を回転蒸発器(rotary evaporator)で真空乾燥を行い、スラリー状の混合物を100℃で5時間以上乾燥し、遷移金属水酸化物前駆体を製造した。
【0100】
前記で製造した遷移金属水酸化物前駆体と、LiOHをMe(遷移金属):Liが1:1.02となるモル比で混合し、810℃で11時間焼成し、結晶子のサイズが178nmである単一粒子形態の正極活物質(LiNi0.90Co0.04Mn0.060.009)を製造した。
【0101】
実施例2
前記実施例1で製造した遷移金属水酸化物前駆体と、LiOHを混合して焼成するとき、焼成温度を830℃にすることを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含むリチウム二次電池を製造した。
【0102】
実施例3
前記実施例1で製造した正極活物質前駆体の全重量に対して1,000ppmのホウ酸を乾式混合した後、830℃で焼成して正極活物質(LiNi0.89Co0.04Mn0.060.009)を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含むリチウム二次電池を製造した。
【0103】
比較例1
遷移金属水酸化物前駆体の製造時、ホウ素をドーピングしないことを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含むリチウム二次電池を製造した。
【0104】
比較例2
遷移金属水酸化物前駆体の製造時、ホウ素をドーピングしないことを除き、前記実施例2と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含むリチウム二次電池を製造した。
【0105】
比較例3
前記比較例1で製造した遷移金属水酸化物前駆体と、LiOHを1:1.02のモル比で混合し、730℃で11時間焼成し、1次粒子等が凝集された2次粒子形態の正極活物質(LiNi0.90Co0.04Mn0.06)を製造し、これを使用したことを除き、前記比較例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含むリチウム二次電池を製造した。
【0106】
比較例4
前記実施例1で製造した遷移金属水酸化物前駆体と、LiOHを混合して焼成するとき、焼成温度を730℃にすることを除き、前記実施例1と同様の方法を用いて正極活物質及びこれを含むリチウム二次電池を製造した。
【0107】
実験例1:正極活物質の特性の確認
1)SEMイメージ
前記実施例1、比較例1及び3でそれぞれ製造した正極活物質の表面特性を確認するために走査電子顕微鏡を用いてSEMイメージを確認した。図1から図3に示すように、実施例1(図1)及び比較例1(図2)で製造した正極活物質は、単一粒子の形態を有することが確認できた。その反面、比較例3(図3)で製造した正極活物質は、1次粒子が凝集された2次粒子の形態であることが確認できた。
【0108】
2)正極活物質の平均粒径の測定
前記実施例1~3及び比較例1~4でそれぞれ製造したBドーピングされた正極活物質を簡易ミキサー(HMF600、ハンイルミキサー)を用いて4分間解砕し、レーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における粒径による粒子個数累積分布の50%基準での平均粒子直径(D50)を算出し、これを下記表1に示した。また、前記実施例1~3及び比較例1~4で製造したBドーピングされた正極活物質を解砕し、3トンの圧力(3.1~3.2g/cm)を加えて圧縮した後、前述した方法で測定した平均粒径(D50)もまた下記表1に示した。
【0109】
3)正極活物質のペレット密度
実施例1~3及び比較例1~4でそれぞれ製造した正極活物質のペレット密度は、圧延密度測定器(4350、Carver社製)を用いて3.0トンの圧力時の内部体積を測定した。内部体積は、ノギス(Miltutoyo社製)を用いてSus内部の体積を測定し、この結果もまた下記表1に示した。
【0110】
【表1】
【0111】
前記表1に示すように、実施例1~3で製造した正極活物質の場合、結晶子サイズの増加によって圧延後にも平均粒子サイズ(D50)が4~6μmを維持することが確認できた。しかし、比較例1~2で製造した正極活物質は、Bドーピングによる正極活物質粒子の結晶成長が実施例に比べて劣るため、圧延後の粒子サイズが本願発明の範囲未満であることが確認できた。また、比較例3~4で製造した正極活物質は、焼成温度が本願範囲未満で低いため、この場合、Bドーピングの有無に係わりなく3.1~3.2g/cmの圧延密度で圧延時に正極活物質粒子が割れることが確認できた。
【0112】
また、実施例1~3で製造した二次電池の場合、Bをドーピングしても、比較例1~2のようにBドーピングしていない場合と比べたとき、同等水準のペレット密度を示すことが確認できる。また、実施例1~3の正極活物質の場合、1次粒子が凝集された2次粒子の形態である比較例3~4に比べて優れたペレット密度を示すことが確認できる。
【0113】
4)正極活物質の結晶子サイズ
前記実施例1~3及び比較例3で製造した正極活物質をX線回折分析機(Bruker AXS D4-Endeavor XRD)を用いて、結晶子サイズを測定し、その結果を下記表2に示した。
【0114】
【表2】
【0115】
前記表2に示すように、実施例1~3で製造した正極活物質は、170nm以上の結晶子サイズを有する単一粒子の形態であることが確認できた。その反面、比較例3の場合、1次粒子が凝集された2次粒子の形態に製造されることにより、結晶子サイズが本発明に比べて顕著に小さいことが確認できた。
【0116】
実験例2:容量特性の評価
前記実施例1~2及び比較例1~4で製造した正極活物質を用いてリチウム二次電池を製造し、実施例1~2及び比較例1~4の正極活物質を含むリチウム二次電池それぞれに対して容量特性を評価した。
【0117】
具体的に、実施例1~2及び比較例1~4でそれぞれ製造した正極活物質、カーボンブラック導電材及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)バインダを96.5:1.5:2の重量比でN‐メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥後、圧延して正極を製造した。
【0118】
一方、負極としてリチウムメタルを用いた。
【0119】
前記で製造した正極と負極との間に多孔性ポリエチレン分離膜を介在して電極組立体を製造し、これを電池ケース内部に位置させた後、前記ケースの内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。このとき、電解液としてエチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジエチルカーボネート(EC:EMC:DEC)を3:4:3の体積比で混合した有機溶媒に1.0Mのリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を溶解させた電解液を注入し、実施例1~2及び比較例1~4によるリチウム二次電池を製造した。
【0120】
前記で製造した実施例1~2及び比較例1~4によるリチウム二次電池それぞれに対して、常温で0.2Cの定電流で4.25Vまで0.05Cカットオフ(cut off)で充電した。その後、0.2Cの定電流で2.5Vになるまで放電した。前記充電及び放電挙動を1サイクルとし、2回目からは0.5Cの定電流で4.25Vまで0.05Cカットオフ(cut off)で充電及び0.5Cの定電流で2.5Vまで放電することを1サイクルとした。このようなサイクルを30回繰り返して行った後、前記実施例1~2及び比較例1~4による二次電池のサイクルによる容量維持率を測定し、これを下記表3、図4及び図5に示した。
【0121】
【表3】
【0122】
前記表3、図4及び図5に示すように、同一条件で正極活物質を製造し、ただし、Bドーピングの有無のみ異なる実施例1と比較例1、実施例2と比較例2の正極活物質を含むリチウム二次電池の場合、それぞれBドーピングを行った実施例1及び2で製造した二次電池の初期放電容量が、Bドーピングを行っていない比較例1及び2で製造した二次電池の初期放電容量よりも高いことが確認できた。
【0123】
また、比較例3から4で製造した二次電池の場合、初期放電容量には優れるが、構造安定性が劣るため、実施例1~2で製造した二次電池に比べて30サイクル以上で容量維持率が劣ることが確認できた。
【0124】
実験例3:抵抗特性の評価
前記実験例2でそれぞれ製造した実施例1~3及び比較例1~2によるリチウム二次電池それぞれに対して抵抗特性を評価した。
【0125】
具体的に、実施例1~3及び比較例1~2のリチウム二次電池それぞれに対して、常温で0.5Cの定電流で4.25Vまで0.05Cカットオフ(cut off)で充電した。その後、0.5Cの定電流で2.5Vになるまで放電した。このとき、60秒に該当する電圧を記録し、初期電圧との差を印加した電流で割って抵抗を計算した。前記実施例1~3及び比較例1~2による二次電池の初期抵抗を測定し、その結果を下記表4及び図6に示した。
【0126】
【表4】
【0127】
前記表4及び図6に示すように、本願発明による初期抵抗特性の場合、実施例1~3で製造した正極活物質を適用した二次電池が、比較例1~2で製造した正極活物質を適用した二次電池より優れることが確認できた。
【0128】
実験例4:連続充電試験
前記実験例2で製造した実施例1~2及び比較例3によるリチウム二次電池それぞれに対して60℃で4.5Vが維持されるように120時間充電しており、この際に発生する電流の量を測定し、これを図7に示した。
【0129】
図7に示すように、比較例3の場合、実施例1~2に比べて連続充電時に発生する電流がさらに多いことが確認できた。これは、比較例3の場合、正極活物質の安定性が実施例1~2よりも劣るため、正極活物質の表面と電解液との間の副反応による電流の発生量がさらに多いことであった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7