(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】アクリル酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/44 20060101AFI20240326BHJP
C07C 57/07 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C07C51/44
C07C57/07
(21)【出願番号】P 2022566430
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2021015165
(87)【国際公開番号】W WO2022119123
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0167638
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒェビン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミ・キュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウンキョ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・シン
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-189510(JP,A)
【文献】特開平11-322658(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119185(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/020039(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/156061(WO,A1)
【文献】米国特許第04729978(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103524330(CN,A)
【文献】国際公開第2018/216699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ原料の反応生成物に第1吸収剤を添加および冷却し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を分離する第1ステップ;
前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を蒸留し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第2高沸点物質を分離する第2ステップ;
前記アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質に第2吸収剤を添加および冷却し、第1非圧縮性物質とアセトアルデヒド(ACHO)を含む第3低沸点物質を分離する第3ステップ;ならびに
前記アクリル酸(AA)を含む第2高沸点物質を精製してアクリル酸を生産する第4ステップ;
を含む、アクリル酸の製造方法。
【請求項2】
前記第1吸収剤は、前記アクリル酸(AA)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)に対して沸点差が20℃以上、およびアセトアルデヒド(ACHO)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)に対して沸点差が50℃以上の物質を含む、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項3】
前記第2吸収剤は、前記アセトアルデヒド(ACHO)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)よりも高沸点物質であり、沸点差が20℃以上の物質を含む、請求項1又は2に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項4】
前記第1ステップは冷却塔を介して分離するステップを含み、
前記冷却塔の冷却温度は10℃以上150℃以下であり、前記冷却塔の内部圧力は0.5bar以上5.0bar以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項5】
前記第1ステップの前記第1低沸点物質に含まれるアクリル酸(AA)が、前記バイオ原料の反応生成物中のアクリル酸100重量部に対して1重量部以下で含まれるように、第1吸収剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項6】
前記第3ステップは吸収塔を介して分離するステップを含み、
前記吸収塔の温度は0℃以上100℃以下であり、前記吸収塔の内部圧力は0.1bar以上10.0bar以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項7】
前記第3ステップの前記第1非圧縮性物質に含まれるアセトアルデヒド(ACHO)が、前記バイオ原料の反応生成物中のアセトアルデヒド100重量部に対して1重量部以下で含まれるように、第2吸収剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項8】
前記アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質およびアセトアルデヒド(ACHO)を含む第3低沸点物質を分離
塔に導入し、
前記分離塔において、前記第2低沸点物質および前記第3低沸点物質に含まれるアセトアルデヒドと
第3低沸点物質に含まれる前記第2吸収剤
とを分離するステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項9】
前記分離塔の温度は10℃以上200℃以下であり、前記分離塔の内部圧力は0.3bar以上10.0bar以下である、請求項8に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項10】
前記第2吸収剤の温度は-5℃以上20℃以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項11】
前記
分離するステップにおいて分離されたアセトアルデヒドの純度は95%以上であり、前記バイオ原料の反応生成物を基準として回収率が95%以上である、請求項8から10のいずれか一項に記載のアクリル酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月03日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0167638号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【0002】
本出願は、アクリル酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、アクリル酸は、プロピレンの酸化脱水素反応により製造され、アクリル酸は、高吸水性樹脂、塗料、接着剤などの原料になるものであり、その需要が増加している。特に高吸水性樹脂は、オムツなどの衛生用品として用いられている。
【0004】
これまで化学品の多くは、石炭や石油などの化石原料から誘導される原料を用いて製造されてきた。しかし、近年、地球温暖化の防止および環境保護の観点から、炭素源としてリサイクル可能な生物由来の資源を従来の化石原料の代替として用いることが注目されている。例えば、トウモロコシや小麦などのデンプン系バイオマス、サトウキビなどの糖質系バイオマス、および菜種の絞りかすや稲わらなどのセルロース系バイオマスなどといったバイオマス資源を原料として用いる方法の開発が試みられている。
【0005】
すなわち、近年、伝統的な石油化学ベースの製造方法から脱して環境に優しい原料をベースにした化学品を製造することで、持続可能性を得るとともに環境保護の観点から優れた特徴を有する研究が進まれている傾向である。
【0006】
乳酸から他の化学品を製造する反応の形式の一つとして、乳酸を含む原料を蒸発させ、気体状態で触媒と接触させて生成物を得る気相反応が挙げられる。例えば、乳酸を用いてアクリル酸を製造する技術として固体触媒を用いる気相脱水方法が知られており、乳酸の脱水反応は主に気相反応として研究が進行中にある。
【0007】
乳酸は、水がない状況で触媒がなくても液相にてエステル化反応が起こって重合をする物質であり、乳酸が濃縮されて高濃度になるほど、乳酸オリゴマーとして反応する。乳酸がオリゴマー化すると脱水がおこり、水が無い状態で乳酸が濃縮されると、乳酸のオリゴマー化反応が起こる。乳酸オリゴマーがアクリル酸の製造のための反応器に導入される場合、反応器内でファウリングが発生し、反応収率が低くなるため、アクリル酸の製造のために乳酸オリゴマーの含量を低減させる方法が研究中にある。
【0008】
上記のような問題に加え、プロピレンの酸化反応のような伝統的な石油化学と比べ、バイオ原料の反応は、低いアクリル酸の選択度を示すため、工程を開発するにおいて経済性の向上が必要である。
【0009】
特に、バイオ原料ベースのアクリル酸の製造時、アクリル酸の製造とともに、低沸点を有する副産物である、一酸化炭素、二酸化炭素、アセトアルデヒドなどの副産物が共に生成され、アクリル酸の選択度が低くなるところ、バイオ原料をベースにしたアクリル酸の製造時、低沸点副産物などの副産物とアクリル酸を円滑に分離し、また、低沸点副産物自体の純度を高めて製品化できる工程に関する研究が進行中にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願は、アクリル酸の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願の一実施態様は、バイオ原料の反応生成物に第1吸収剤を添加および冷却し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を分離する第1ステップ;前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を蒸留し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第2高沸点物質を分離する第2ステップ;前記アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質に第2吸収剤を添加および冷却し、第1非圧縮性物質とアセトアルデヒド(ACHO)を含む第3低沸点物質を分離する第3ステップ;および前記アクリル酸(AA)を含む第2高沸点物質を精製してアクリル酸を生産する第4ステップ;を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本出願の一実施態様によるアクリル酸の製造方法の場合、バイオ原料の反応生成物に第1吸収剤を添加および冷却し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を分離する第1ステップおよび前記第2ステップを含むことで、最終的に高純度、高収率のアクリル酸を製造できるという特徴を有することになる。
【0014】
特に、乳酸の脱水反応は高温(330℃~400℃)で起こるため、バイオ原料の反応生成物にはアセトアルデヒドが副産物として生成されるものであって、本発明に係るアクリル酸の製造方法の場合、上記のように高純度、高収率のアクリル酸を製造するとともに、上記の第3ステップを工程上含むことで、副産物として生成されるアセトアルデヒドを同様に高純度および高収率の製品に製品化することができるため、アクリル酸とアセトアルデヒドをいずれも得ることができるものであり、バイオ工程の経済性が向上できるという特徴を有することになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本出願の一実施態様によるアクリル酸の製造方法を示す概略図である。
【
図2】本出願の比較例1によるアクリル酸の製造方法を示す概略図である。
【
図3】本出願の比較例1によるアクリル酸の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0017】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0018】
本明細書において、「p~q」は、「p以上q以下」の範囲を意味する。
【0019】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本出願の一実施態様は、バイオ原料の反応生成物に第1吸収剤を添加および冷却し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を分離する第1ステップ;前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を蒸留し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第2高沸点物質を分離する第2ステップ;前記アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質に第2吸収剤を添加および冷却し、第1非圧縮性物質とアセトアルデヒド(ACHO)を含む第3低沸点物質を分離する第3ステップ;および前記アクリル酸(AA)を含む第2高沸点物質を精製してアクリル酸を生産する第4ステップを含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0021】
本出願の一実施態様によるアクリル酸の製造方法の場合、バイオ原料の反応生成物に第1吸収剤を添加および冷却し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を分離する第1ステップおよび前記第2ステップを含むことで、最終的に高純度、高収率のアクリル酸を製造できるという特徴を有することになる。
【0022】
特に、乳酸の脱水反応は高温(330℃~400℃)で起こるため、バイオ原料の反応生成物にはアセトアルデヒドが副産物として生成されるものであって、本発明に係るアクリル酸の製造方法の場合、上記のように高純度、高収率のアクリル酸を製造するとともに、上記の第3ステップを工程上含むことで、副産物として生成されるアセトアルデヒドを同様に高純度および高収率の製品に製品化することができるため、アクリル酸とアセトアルデヒドをいずれも得ることができるものであり、バイオ工程の経済性が向上できるという特徴を有することになる。
【0023】
すなわち、本発明は、プロピレンの酸化反応によりアクリル酸を生成する既存の石油化学工程の代わりに、バイオ原料をベースにしてアクリル酸を生産する工程を含むものであり、本出願に係るアクリル酸の製造方法は、前記第1ステップおよび第2ステップを共に含んで高純度のアクリル酸を得ることができ、さらには、前記第3ステップをさらに含んで高純度のアセトアルデヒドも得ることができるため、副産物として捨てられる物質も製品化してバイオ工程の経済性を向上させることを本発明の主な特徴とする。
【0024】
本出願の一実施態様において、バイオ原料の反応生成物に第1吸収剤を添加および冷却し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を分離する第1ステップを提供する。
【0025】
前記第1ステップに含まれるバイオ原料の反応は乳酸の脱水反応を含んでもよく、アクリル酸を生産するためのバイオ原料の反応であれば制限なく含まれてもよい。
【0026】
本出願の一実施態様において、前記バイオ原料は、気相の乳酸であってもよい。
【0027】
本出願の一実施態様において、前記気相とは、気化した状態、すなわち、液体を気化して気体となった状態を意味し得る。
【0028】
本出願において、前記乳酸は、Lactic acidであって、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メチル基、水素の4原子団が結合した不斉炭素原子を有する有機化合物であり、D-乳酸およびL-乳酸をいずれも含み、単独の乳酸単量体を意味し得る。
【0029】
本出願において、前記乳酸オリゴマーは、乳酸が互いに反応して二量体、三量体などを形成した物質を意味し、前記乳酸オリゴマーは、乳酸の二量体~100量体を意味し得る。
【0030】
乳酸は、水がない状況でも、触媒なしに液相にてエステル化反応により重合をする物質であり、乳酸の重合反応により形成された物質をひっくるめて乳酸オリゴマーと表現することができる。すなわち、単独の乳酸単量体を除き、乳酸の重合反応により形成された全ての物質を乳酸オリゴマーと定義することができる。
【0031】
本出願の一実施態様において、前記気相の乳酸は、水;および乳酸原料を含み、前記乳酸原料は、乳酸;および乳酸オリゴマーを含み、前記気相の乳酸100重量部に対して、前記乳酸原料を10重量部以上100重量部以下で含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0032】
他の一実施態様において、前記気相の乳酸100重量部に対して、前記乳酸原料は、10重量部以上100重量部以下、好ましくは30重量部以上100重量部以下、より好ましくは60重量部以上100重量部以下であってもよい。
【0033】
前記気相の乳酸は、アクリル酸を生産する前の最終的な気化した状態の乳酸水溶液であり、前記気相の乳酸中の乳酸原料の含量が前記範囲を満たすことで、乳酸原料自体の投入物量が好適であり、水の含量を適正範囲に調節することで、本出願に係るアクリル酸の製造方法の経済性に優れるという特徴を有することになる。
【0034】
本出願の一実施態様において、前記気相の乳酸中の乳酸:乳酸オリゴマーの割合が100:0~80:20である、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0035】
他の一実施態様において、前記気相の乳酸中の乳酸:乳酸オリゴマーの割合が100:0~80:20、好ましくは100:0~90:10、より好ましくは100:0~95:5の範囲を満たしてもよい。
【0036】
すなわち、本発明に係るアクリル酸の製造方法は、伝統的な石油化学ベースの製造方法から脱して環境に優しいバイオ原料である乳酸をベースにしたアクリル酸を製造することで、持続可能性を得るとともに環境保護の観点から優れた特徴を有することができる。前記気相の乳酸は本出願に係る第1ステップのバイオ原料に該当するものであり、最終的なアクリル酸の製造方法のための反応器内のファウリングの発生を減らすことができ、反応収率が向上できるという特徴を有することになる。
【0037】
本出願の一実施態様において、前記バイオ原料の反応生成物は、アクリル酸、アセトアルデヒド、一酸化炭素、二酸化炭素、水、水素、乳酸単量体、酢酸、2,3-ペンタジオン(2,3-PD)、およびプロピオン酸(PA)を含んでもよい。
【0038】
特に、石油化学ベースのプロピレン酸化反応の場合、反応温度250℃~270℃で起こるものであって、アセトアルデヒドが生成されないが、本出願に係るバイオ原料の反応中の気相乳酸の脱水反応の場合、高温(330℃~400℃)で起こるため、アクリル酸の製造方法中にアセトアルデヒドが副産物として生成され、この際、副産物として生成されるアセトアルデヒドも製品化することが本発明の主な目的である。
【0039】
本出願の一実施態様において、前記第1ステップは冷却塔を介して分離するステップを含み、前記冷却塔の冷却温度は10℃以上150℃以下であり、前記冷却塔の内部圧力は0.5bar以上5.0bar以下である、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0040】
他の一実施態様において、前記冷却塔の内部圧力は0.5bar以上5.0bar以下、好ましくは1.0bar以上4.0bar以下、より好ましくは2.0bar以上3.5bar以下であってもよく、具体的には3.0barを満たしてもよい。
【0041】
他の一実施態様において、前記冷却塔の内部温度は10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上であってもよく、200℃以下、好ましくは150℃以下であってもよい。
【0042】
上記のように第1ステップ上における冷却塔の内部温度および圧力が前記範囲を満たすことで、冷却塔の上部に排出される第1低沸点物質に含まれるアクリル酸の含量を最小化することができ、すなわち、前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質に該当するバイオ原料の反応生成物中のアクリル酸が全て前記冷却塔の下部に排出され、アクリル酸の収率および純度が向上できるという特徴を有することになる。
【0043】
すなわち、前記第1ステップは、アクリル酸を生産する工程において、冷却により、アクリル酸を含む第1高沸点物質とその他の低沸点副産物を分離するステップであってもよい。
【0044】
本出願の一実施態様において、前記第1ステップの前記第1低沸点物質に含まれるアクリル酸(AA)が、前記バイオ原料の反応生成物中のアクリル酸100重量部に対して1重量部以下で含まれるように、第1吸収剤を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0045】
本発明に係る前記第1ステップは、前述したように冷却塔の温度および圧力範囲の調節とともに、前記第1吸収剤の含量を調節することで、前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質に該当するバイオ原料の反応生成物中のアクリル酸が全て前記冷却塔の下部に排出できるようにすることができる。
【0046】
具体的に、本出願の一実施態様において、前記第1ステップの前記第1低沸点物質に含まれるアクリル酸(AA)は、前記バイオ原料の反応生成物中のアクリル酸100重量部に対して1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.01重量部以下であってもよく、0重量部以上、好ましくは0.005重量部以上であってもよい。
【0047】
すなわち、前記第1ステップの前記第1低沸点物質に含まれるアクリル酸(AA)の場合、得られることなく捨てられる量であって、上記のように第1吸収剤の量を調節して第1低沸点物質に含まれるアクリル酸(AA)の重量を上記のように調節することで、経済的に優れたアクリル酸の製造方法を提供することができる。
【0048】
本出願の一実施態様において、前記冷却塔の冷却温度が10℃以上50℃以下である場合、前記第1ステップのバイオ原料の反応生成物100重量部に対して、前記第1吸収剤を1重量部以上20重量部以下で含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0049】
他の一実施態様において、前記第1ステップのバイオ原料の反応生成物100重量部に対して、前記第1吸収剤は、1重量部以上20重量部以下、好ましくは2重量部以上15重量部以下、より好ましくは3重量部以上10重量部以下であってもよい。
【0050】
本出願の一実施態様において、前記冷却塔の冷却温度が50℃以上80℃以下である場合、前記第1ステップのバイオ原料の反応生成物100重量部に対して、前記第1吸収剤を35重量部以上50重量部以下で含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0051】
他の一実施態様において、前記第1ステップのバイオ原料の反応生成物100重量部に対して、前記第1吸収剤は、35重量部以上50重量部以下、好ましくは37重量部以上45重量部以下、より好ましくは40重量部以上45重量部以下であってもよい。
【0052】
本出願のアクリル酸の製造方法において、上記のように第1ステップの進行時、冷却塔の熱量を調節し、第1吸収剤を前記含量範囲で含むものであり、特に前記範囲で含むことで、アクリル酸および水などを含む第1高沸点物質を全て前記吸収塔の下部に排出されるように調節し、最終的に生産されるアクリル酸の収率および純度を高めるとともに、副産物として生産されるアセトアルデヒドも高純度で生産できるという特徴を有することになる。
【0053】
図1は、本出願に係るアクリル酸の製造方法の概略図であり、具体的に、バイオ原料の反応生成物Aが冷却塔Bに投入され、第1吸収剤1を含んで沸点に応じた分離工程が起こることを確認することができる。この際、下部にアクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質4と、上部にアセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質3に分離することを確認することができる。
【0054】
本出願の一実施態様において、前記第1吸収剤は、前記アクリル酸(AA)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)に対して沸点差が20℃以上、およびアセトアルデヒド(ACHO)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)に対して沸点差が50℃以上の物質を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0055】
本出願において、前記標準沸点(NBP、Normal Boiling point)は、沸騰点の同意語として、外部圧力が1気圧(760mmHg)である際の液体の沸点を意味し得る。通常、物質の沸点といえば標準沸点を意味し、例えば、水の標準沸点は100℃で表すことができる。液体表面から蒸発が起こるだけでなく、液体内部から気化が起こって気泡が発生し始める温度を意味し、液体から気体に物質の状態変化が起こる温度を意味し得る。
【0056】
他の一実施態様において、前記第1吸収剤は、前記アクリル酸(AA)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)に対して沸点差が20℃以上40℃以下、およびアセトアルデヒド(ACHO)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)に対して沸点差が50℃以上80℃以下の物質であってもよい。
【0057】
本出願の一実施態様において、前記アクリル酸の標準沸点は141℃であり、前記アセトアルデヒドの標準沸点は20℃である。
【0058】
本出願の一実施態様において、前記第1吸収剤は、前記アクリル酸(AA)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)に対して沸点差が20℃以上40℃以下、アセトアルデヒド(ACHO)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)に対して沸点差が50℃以上80℃以下、および前記アセトアルデヒドよりも沸点が高い物質であってもよい。
【0059】
本出願の一実施態様において、前記第1吸収剤は、前記条件を満たすのであれば制限なく用いられてもよく、具体的に、本出願の一実施態様において、前記第1吸収剤は、水を含んでもよい。
【0060】
本出願の一実施態様において、前記第1吸収剤は、10℃以上100℃以下の温度範囲を満たしてもよい。
【0061】
他の一実施態様において、前記第1吸収剤は、10℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上100℃以下、最も好ましくは30℃以上100℃以下の温度範囲を満たしてもよい。
【0062】
上記のように第1吸収剤の温度範囲が前記範囲を満たすものであり、前記範囲を満たすことで、第1ステップの冷却塔に含まれる際に、冷却塔の内部温度範囲と類似範囲に調節され、冷却塔の内部容量を減らして経済性が向上できるという特徴を有することになる。
【0063】
本出願の一実施態様において、前記バイオ原料の反応生成物に含まれたアクリル酸100重量部に対して、前記第1高沸点物質に含まれるアクリル酸を95重量部以上で含んでもよい。
【0064】
他の一実施態様において、前記バイオ原料の反応生成物に含まれたアクリル酸100重量部に対して、前記第1高沸点物質に含まれるアクリル酸は、95重量部以上、好ましくは97重量部以上、より好ましくは99重量部以上であってもよく、100重量部以下であってもよい。
【0065】
本出願の一実施態様において、前記バイオ原料の反応生成物に含まれたアセトアルデヒド100重量部に対して、前記第1低沸点物質に含まれるアセトアルデヒドを90重量部以上で含んでもよい。
【0066】
他の一実施態様において、前記バイオ原料の反応生成物に含まれたアセトアルデヒド100重量部に対して、前記第1低沸点物質に含まれるアセトアルデヒドは、90重量部以上、好ましくは93重量部以上、より好ましくは95重量部以上であってもよく、100重量部であってもよい。
【0067】
本出願の一実施態様において、前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を蒸留し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第2高沸点物質を分離する第2ステップを提供する。
【0068】
本出願の一実施態様において、前記第2ステップは、前記第1ステップにおいて冷却塔の下部に排出される、アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を再度蒸留するステップであり、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第2高沸点物質を分離する工程に該当する。
【0069】
すなわち、上記のような第2ステップの工程により、第1ステップにおいて冷却塔の下部に排出され得るアセトアルデヒドを追加的に分離して高収率および高純度のアクリル酸を得ることができるとともに、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質を得、後述する第3ステップの分離工程を経て高収率および高純度のアセトアルデヒドを得ることができるという特徴を有することになる。
【0070】
本出願の一実施態様において、前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質は、水;アクリル酸;およびアセトアルデヒドを含んでもよい。
【0071】
本出願の一実施態様において、前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質に含まれたアクリル酸100重量部に対して、前記第2高沸点物質に含まれるアクリル酸は、95重量部以上であってもよい。
【0072】
他の一実施態様において、前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質に含まれたアクリル酸100重量部に対して、前記第2高沸点物質に含まれるアクリル酸は、95重量部以上、好ましくは97重量部以上、より好ましくは99重量部以上であってもよく、100重量部以下、好ましくは99.99重量部以下であってもよい。
【0073】
上記のように本発明に係るアクリル酸の製造方法の場合、第1ステップにおいて吸収剤を添加および冷却する工程、および第2ステップにおいてアルデヒドを再度分離するステップを経て、最終的に生成される第2高沸点物質に含まれるアクリル酸の収率を高く形成できることを特徴とする。
【0074】
本出願の一実施態様において、前記第2高沸点物質が精製され、最終的なアクリル酸を得ることができる。
【0075】
本出願の一実施態様において、前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質に含まれたアセトアルデヒド100重量部に対して、前記第2低沸点物質に含まれるアセトアルデヒドは、95重量部以上であってもよい。
【0076】
他の一実施態様において、前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質に含まれたアセトアルデヒド100重量部に対して、前記第2低沸点物質に含まれるアセトアルデヒドは、95重量部以上、好ましくは96重量部以上、より好ましくは97重量部以上であってもよく、100重量部以下、好ましくは99.99重量部以下であってもよい。
【0077】
上記のように、高収率のアクリル酸を得ることができるとともに、前記アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質に含まれたアセトアルデヒドを再び分離し、後述する工程を経て、アセトアルデヒドも製品化できるという特徴を有することになる。
【0078】
図1は、本出願に係るアクリル酸の製造方法の概略図であり、前記第2ステップは、具体的に、アクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質4を蒸留塔Eを介して分離し、アクリル酸(AA)を含む第2高沸点物質5を得、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質6を後述する工程に供給することを確認することができる。
【0079】
本出願の一実施態様において、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質に第2吸収剤を添加および冷却し、第1非圧縮性物質とアセトアルデヒド(ACHO)を含む第3低沸点物質を分離する第3ステップを提供する。
【0080】
本出願のアクリル酸の製造方法において、前記第3ステップは、前記第1ステップにおいて冷却塔の上部に排出される第1低沸点物質に第2吸収剤を添加および冷却する工程であり、このような工程により、アクリル酸の製造方法上、副産物として生成されるアセトアルデヒドも製品化できるという特徴を有することになる。すなわち、本願発明の特徴と見ることができる高純度のアクリル酸を得るとともに高純度のアセトアルデヒドも製品化するステップであって、本発明の主な特徴となることができる。
【0081】
本出願の一実施態様において、前記第3ステップは吸収塔を介して分離するステップを含み、前記吸収塔の温度は0℃以上100℃以下であり、前記吸収塔の内部圧力は0.1bar以上10.0bar以下である、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0082】
他の一実施態様において、前記第3ステップの吸収塔の内部圧力は0.1bar以上10.0bar以下、好ましくは1.0bar以上8.0bar以下、より好ましくは1.5bar以上5.0bar以下であってもよく、具体的には2.5barを満たしてもよい。
【0083】
他の一実施態様において、前記第3ステップの吸収塔の内部温度は0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であってもよく、100℃以下、好ましくは80℃以下であってもよい。
【0084】
上記のように第3ステップ上における吸収塔の内部温度および圧力が前記範囲を満たすことで、吸収塔の上部に排出される第1低沸点物質に含まれるアセトアルデヒドを高収率および高純度で製品化することができ、特に前記第1低沸点物質に含まれる第1非圧縮性物質との分離工程が円滑に行われることができるため、アクリル酸を得るとともにアセトアルデヒドを高収率および高純度で得ることができるという特徴を有することになる。
【0085】
本出願の一実施態様において、前記第3ステップの前記第1非圧縮性物質に含まれるアセトアルデヒド(ACHO)が、前記バイオ原料の反応生成物中のアセトアルデヒド100重量部に対して1重量部以下で含まれるように、第2吸収剤を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0086】
本発明に係る前記第3ステップは、前記第2吸収剤の含量を調節することで、前記アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質に該当するバイオ原料の反応生成物中のアセトアルデヒドが全て前記吸収塔の下部に排出できるようにすることを特徴とする。
【0087】
具体的に、本出願の一実施態様において、前記第3ステップの前記第1非圧縮性物質に含まれるアセトアルデヒド(ACHO)は、前記バイオ原料の反応生成物中のアセトアルデヒド100重量部に対して2重量部以下、好ましくは1.0重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下であってもよく、0重量部以上、好ましくは0.005重量部以上であってもよい。
【0088】
すなわち、本出願に係るアクリル酸の製造方法の場合、他の一つの特徴として、副産物として生成されるアセトアルデヒドを製品化するものであり、上記のように第2吸収剤の量を調節することで、アセトアルデヒドの損失分を最小化できるという特徴を有することになる。
【0089】
本出願のアクリル酸の製造方法において、上記のように第3ステップの進行時、第2吸収剤を前記含量範囲で含むものであり、特に前記範囲で含むことで、アセトアルデヒドおよび非圧縮性物質などを含む第1低沸点物質において、前記第3ステップの吸収塔の下部にアセトアルデヒドを含む第3低沸点物質のみを排出するように調節し、最終的に生産されるアセトアルデヒドの収率および純度が向上できるという特徴を有することになる。
【0090】
本出願の一実施態様において、前記第2吸収剤は、前記アセトアルデヒド(ACHO)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)よりも高沸点物質であり、沸点差が20℃以上の物質を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0091】
他の一実施態様において、前記第2吸収剤は、前記アセトアルデヒド(ACHO)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)よりも高沸点物質であり、沸点差が20℃以上100℃以下の物質を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0092】
他の一実施態様において、前記第2吸収剤は、前記アセトアルデヒド(ACHO)の標準沸点(NBP、Normal Boiling point)よりも高沸点物質であり、沸点差が20℃以上100℃以下、好ましくは沸点差が30℃以上90℃以下、より好ましくは沸点差が50℃以上80℃以下の物質を含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0093】
他の一実施態様において、前記第2吸収剤は、前記アセトアルデヒドの沸点よりも高沸点物質であってもよい。
【0094】
本出願の一実施態様において、前記第2吸収剤は、水およびアクリル酸からなる群より選択される1以上を含んでもよい。
【0095】
本出願の一実施態様において、前記第2吸収剤は、-5℃以上20℃以下の温度範囲を満たしてもよい。
【0096】
他の一実施態様において、前記第2吸収剤は、-5℃以上20℃以下、好ましくは5℃以上15℃以下、最も好ましくは5℃以上10℃以下の温度範囲を満たしてもよい。
【0097】
上記のように第2吸収剤の温度範囲が前記範囲を満たすものであり、前記範囲を満たすことで、第3ステップの吸収塔に含まれる際に、吸収塔の内部温度範囲と類似範囲に調節され、吸収塔の内部容量を減らして経済性が向上できるという特徴を有することになる。
【0098】
本出願の一実施態様において、前記第1低沸点物質に含まれたアセトアルデヒド100重量部に対して、前記第3低沸点物質に含まれるアセトアルデヒドを95重量部以上で含んでもよい。
【0099】
他の一実施態様において、前記第1低沸点物質に含まれたアセトアルデヒド100重量部に対して、前記第3低沸点物質に含まれるアセトアルデヒドは、95重量部以上、好ましくは96重量部以上、より好ましくは97重量部以上であってもよく、100重量部以下、好ましくは99.9重量部以下であってもよい。
【0100】
本出願の一実施態様において、前記第1非圧縮性物質は、一酸化炭素、二酸化炭素、および不活性ガスを含んでもよい。
【0101】
図1から本出願の第3ステップを確認することができ、具体的に、第1低沸点物質3を吸収塔Cに供給した後、第2吸収剤2を供給し、不活性ガスを含む第1非圧縮性物質9と第3低沸点物質8を分離する工程を確認することができる。
【0102】
本出願の一実施態様において、前記アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質およびアセトアルデヒド(ACHO)を含む第3低沸点物質を分離し、アセトアルデヒドと前記第2吸収剤を分離するステップをさらに含む、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0103】
本出願の一実施態様において、前記ステップは分離塔を介して分離するステップを含み、前記分離塔の温度は10℃以上200℃以下であり、前記分離塔の内部圧力は0.3bar以上10.0bar以下である、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0104】
本出願の一実施態様において、前記ステップは、第3-1ステップで表すことができる。
【0105】
すなわち、前記第3-1ステップの工程は、アセトアルデヒドを製品化するために第2吸収剤を分離し、純粋なアセトアルデヒドを得る工程に該当する。
【0106】
他の一実施態様において、前記ステップの分離塔の内部圧力は0.3bar以上10.0bar以下、好ましくは1.0bar以上8.0bar以下、より好ましくは2.0bar以上5.0bar以下であってもよく、具体的には3.0barを満たしてもよい。
【0107】
他の一実施態様において、前記ステップの分離塔の内部温度は10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上であってもよく、200℃以下、好ましくは150℃以下であってもよい。
【0108】
上記のように分離塔の内部温度および圧力が前記範囲を満たすことで、第3ステップの吸収塔の下部に排出される第3低沸点物質に含まれるアセトアルデヒドを高収率および高純度で製品化することができ、特に前記第3低沸点物質に含まれる第2吸収剤との分離工程が円滑に行われることができるため、アクリル酸を得るとともにアセトアルデヒドを高収率および高純度で得ることができるという特徴を有することになる。
【0109】
すなわち、前記第2ステップにより前記蒸留塔の上部に排出される前記アセトアルデヒド(ACHO)を含む第2低沸点物質と、前記第3ステップにより前記吸収塔の下部に排出される第3低沸点物質とを合わせて最終的なアセトアルデヒドを得るものであり、本出願の一実施態様によるアクリル酸の製造方法は、工程上失われるアクリル酸およびアセトアルデヒドを最小化できるという特徴を有することになる。
【0110】
追加的に、上記のようにアセトアルデヒドと前記第2吸収剤を分離した後、前記第2吸収剤は再び液相の流れにより前記第3ステップに共に含まれることができるため、第2吸収剤の使用量も最小化できるという特徴を有することになる。
【0111】
本出願の一実施態様において、前記アセトアルデヒドと前記第2吸収剤を分離した後、前記第2吸収剤を冷媒で冷却するステップをさらに含んでもよい。
【0112】
すなわち、本出願の一実施態様において、前記第3ステップで含まれる第2吸収剤の場合、外部から供給する第2吸収剤、および上記のような液相の流れにより再使用される第2吸収剤を含んでもよく、冷媒で冷却するステップを含み、前記第2吸収剤の温度は-5℃以上20℃以下である、アクリル酸の製造方法を提供することができる。
【0113】
上記のように第2吸収剤の温度が前記範囲を満たすことで、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質中のアセトアルデヒドを99wt%以上吸収するように調整できるという特徴を有することになる。
【0114】
本出願の一実施態様において、前記アセトアルデヒドの純度は95%以上であり、前記バイオ原料の反応生成物を基準として回収率が95%以上である、アクリル酸の製造方法を提供する。
【0115】
他の一実施態様において、前記アセトアルデヒドの純度は100%以下、99.99%以下であってもよい。
【0116】
すなわち、本願発明に係るアクリル酸の製造方法において、バイオ原料の反応生成物に第1吸収剤を添加および冷却し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を分離する第1ステップおよび前記第2ステップを含むことで、最終的に高純度、高収率のアクリル酸を製造できるとともに、上記の第3ステップおよび分離塔を介した分離工程を工程上含むことで、副産物として生成されるアセトアルデヒドを同様に高純度および高収率の製品に製品化することができるため、アクリル酸とアセトアルデヒドをいずれも得ることができるものであり、バイオ工程の経済性が向上できるという特徴を有することになる。
【0117】
本発明の製造方法は、特にアクリル酸の合成に有用であり、具体的に、本発明により得られた乳酸を含む蒸気組成物を脱水触媒と接触させてアクリル酸を製造することができる。生成された反応ガスは、冷却や捕集液との接触により捕集・液化し、抽出、蒸留、結晶化などの精製工程を経て高純度のアクリル酸を得ることができる。生成されたアクリル酸は、吸水性樹脂、塗料や粘着剤などの原料として広く用いられる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0119】
<製造例>
下記の実施例および比較例は、アスペンテック社のアスペンプラスでシミュレーションされた。
【0120】
実施例1
実施例1の運転工程を
図1から確認することができ、
図1に示すように、各ステップ別に含まれる流量および流量中に含まれる主要組成の重量比(wt%)は下記表1~表4のとおりである。
【0121】
【0122】
前記第1ステップの冷却塔の冷却温度は約95℃~130℃であり、冷却塔の内部圧力は3.0barにして運転した。また、前記第1ステップで含まれる第1吸収剤の標準沸点は100℃であった。
【0123】
【0124】
前記第2ステップの蒸留塔の温度は約40℃~130℃であり、蒸留塔の内部圧力は2.5barにして運転した。
【0125】
【0126】
前記第3ステップの吸収塔の温度は約12℃~61℃であり、吸収塔の内部圧力は2.5barにして運転した。また、前記第3ステップで含まれる第2吸収剤の標準沸点は100℃であった。
【0127】
【0128】
前記第3-1ステップの分離塔の温度は約40℃~133℃であり、分離塔の内部圧力は3.0barにして運転した。
【0129】
実施例2
実施例2の運転工程を
図1から確認することができ、
図1に示すように、各ステップ別に含まれる流量および流量中に含まれる主要組成の重量比(wt%)は下記表5~表8のとおりである。
【0130】
特に、実施例2は、実施例1とは異なり、冷却塔の冷却熱量を減らし、第1吸収剤の使用量を増やしたものであり、これにより、冷却塔の上部に排出される水の含量が高くなり、吸収塔で用いられる第2吸収剤の使用量も増やした工程に該当する。
【0131】
【0132】
前記第1ステップの冷却塔の冷却温度は約110℃~130℃であり、冷却塔の内部圧力は3.0barにして運転した。
【0133】
【0134】
前記第2ステップの蒸留塔の温度は約40℃~128℃であり、蒸留塔の内部圧力は2.5barにして運転した。
【0135】
【0136】
前記第3ステップの吸収塔の温度は約11℃~72℃であり、吸収塔の内部圧力は2.5barにして運転した。
【0137】
【0138】
前記第3-1ステップの分離塔の温度は約40℃~133℃であり、分離塔の内部圧力は3.0barにして運転した。
【0139】
実施例3
実施例3の運転工程を
図1から確認することができ、
図1に示すように、各ステップ別に含まれる流量および流量中に含まれる主要組成の重量比(wt%)は下記表9~表12のとおりである。
【0140】
【0141】
前記第1ステップの冷却塔の冷却温度は約92℃~121℃であり、冷却塔の内部圧力は2.5barにして運転した。
【0142】
【0143】
前記第2ステップの蒸留塔の温度は約56℃~121℃であり、蒸留塔の内部圧力は2.5barにして運転した。
【0144】
【0145】
前記第3ステップの吸収塔の温度は約8℃~58℃であり、吸収塔の内部圧力は2.0barにして運転した。
【0146】
【0147】
前記第3-1ステップの分離塔の温度は約40℃~133℃であり、分離塔の内部圧力は3.0barにして運転した。
【0148】
比較例1
前記実施例1の製造方法と比較した際に、比較例1は、第2吸収剤を含まないことを除いては、前記実施例1と同様の方法で工程を行った。具体的に、
図2から分かるように、第2吸収剤を含まないACHOの回収率は12.7wt%であって、ACHOの製品化が難しいことを確認することができた。また、追加的に第2吸収剤を用いることなく前記実施例1のレベルにACHOを得るために、3回の冷却工程(C-1、C-2、C-3)を行う場合、ACHOの回収率が約98.1wt%を満たすことができ、この際、-45℃程度のレベルに冷却可能なシステムが必要であることを確認することができた。
【0149】
具体的な流量および組成情報は下記表13のとおりである。
【0150】
【0151】
前記実施例1~3および比較例1により、最初投入したバイオ原料の反応生成物Aに対して、第2高沸点物質5とアセトアルデヒド7にそれぞれ含まれた酢酸およびアセトアルデヒドの流量(kg/hr)情報は下記表14のとおりである。
【0152】
【0153】
前記表14の実施例1~3から分かるように、本出願の一実施態様によるアクリル酸の製造方法の場合、バイオ原料の反応生成物に第1吸収剤を添加および冷却し、アセトアルデヒド(ACHO)を含む第1低沸点物質とアクリル酸(AA)を含む第1高沸点物質を分離する第1ステップおよび前記第2ステップを含むことで、最終的に高純度、高収率のアクリル酸を製造できるという特徴を有することになる。
【0154】
特に、乳酸の脱水反応は高温(330℃~400℃)で起こるため、バイオ原料の反応生成物にはアセトアルデヒドが副産物として生成されるものであって、本発明に係るアクリル酸の製造方法の場合、上記のように高純度、高収率のアクリル酸を製造するとともに、上記の第3ステップを工程上含む(第2吸収剤)ことで、副産物として生成されるアセトアルデヒドを同様に高純度および高収率の製品に製品化することができるため、アクリル酸とアセトアルデヒドをいずれも得ることができるものであり、バイオ工程の経済性が向上できるという特徴を有することを確認することができた。
【0155】
前記表14の比較例1から分かるように、比較例1の場合、第2吸収剤を用いない場合であり、酢酸は効率的に得ることができるが、アセトアルデヒド回収量が122kg/hrであって、初期原料と対比して12.7wt%しか回収されず、副産物として生成されるアセトアルデヒドを製品化できないことを確認することができ、追加的に第2吸収剤を用いない場合、
図3のように3回の冷却工程を追加的に経てこそ、アセトアルデヒドを製品化可能な程度に回収できることが分かった。すなわち、第2吸収剤を用いない場合、冷却工程を3回以上追加してこそ、製品化をすることができるため、追加の工程および費用が発生することを確認することができた。
【符号の説明】
【0156】
A ・・・バイオ原料の反応生成物
B ・・・冷却塔
C ・・・吸収塔
C-1、C-2、C-3 ・・・追加の冷却工程
D ・・・分離塔
E ・・・蒸留塔
1 ・・・第1吸収剤
2 ・・・第2吸収剤
3 ・・・第1低沸点物質
4 ・・・第1高沸点物質
5 ・・・第2高沸点物質
6 ・・・第2低沸点物質
7 ・・・アセトアルデヒド
8 ・・・第3低沸点物質
9 ・・・第1非圧縮性物質