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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】正極活物質前駆体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240326BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240326BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240326BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240326BHJP
   C01G 53/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
C01G53/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023506317
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 KR2021010427
(87)【国際公開番号】W WO2022031116
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0098736
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ナ・リ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ス・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ファ・ソク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・リョン・カン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-236826(JP,A)
【文献】特開2010-114088(JP,A)
【文献】特表2020-513658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
C01G 53/00
C01G 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1又は下記化学式2で表される組成を有する正極活物質前駆体であって、
前記正極活物質前駆体の粒子の中心部に形成され、全遷移金属中のM金属のモル比が90モル%以上の第1領域と、
前記第1領域の上部に形成され、全遷移金属中のM金属のモル比が90モル%以上の第2領域と、
前記第2領域の上部に形成され、全遷移金属中のM金属のモル比が90モル%以上の第3領域と、を含む正極活物質前駆体:
[化学式1]
[M ](OH)
[化学式2]
[M ]O・OH
前記[化学式1]及び[化学式2]で、
前記M、M、及びMは、それぞれ独立して、Ni、Co、及びMnからなる群から選択され、前記M、M、及びMが互いに異なり、
前記Mは、B、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上であり、
0<a<1、0<b<1、0<c<1、0≦d<1であり、a+b+c+d=1である。
【請求項2】
前記正極活物質前駆体は、前記第1領域と第2領域の境界面、前記第2領域と第3領域の境界面、及び第3領域の上部のうちの少なくとも一つに形成され、M金属を含む第4領域をさらに含む、請求項1に記載の正極活物質前駆体。
【請求項3】
前記第1領域、第2領域、及び第3領域のうちの少なくとも一つ以上にM金属を含む、請求項1または2に記載の正極活物質前駆体。
【請求項4】
前記[化学式1]及び[化学式2]で、0.5≦a<1、0<b<0.4、0<c<0.4、0≦d<0.1である、請求項1から3のいずれか一項に記載の正極活物質前駆体。
【請求項5】
前記[化学式1]及び[化学式2]で、0.6≦a<1、0<b<0.3、0<c<0.3、0≦d<0.1である、請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質前駆体。
【請求項6】
前記M金属はNiであり、前記M金属はMnであり、前記M金属はCoである、請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質前駆体。
【請求項7】
前記M金属はNiであり、前記M金属はCoであり、前記M金属はMnである、請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質前駆体。
【請求項8】
前記M金属はAlである、請求項1から7のいずれか一項に記載の正極活物質前駆体。
【請求項9】
前記正極活物質前駆体は、(100)結晶面における結晶粒の大きさが30nm以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載の正極活物質前駆体。
【請求項10】
前記正極活物質前駆体は、(001)結晶面における結晶粒の大きさ(C(001))に対する(100)結晶面における結晶粒の大きさ(C(100))の比率C(100)/C(001)が3.5~6.0である、請求項1から9のいずれか一項に記載の正極活物質前駆体。
【請求項11】
金属を全金属中の90モル%以上に含む第1金属溶液、M金属を全金属中の90モル%以上に含む第2金属溶液、及びM金属を全金属中の90モル%以上に含む第3金属溶液をそれぞれ準備する第1段階と、
前記第1金属溶液、アンモニウム陽イオン錯体形成剤、及び塩基性化合物を混合して反応溶液を形成し、沈澱反応によりM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する第2段階と、
前記M金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を含む反応溶液に第2金属溶液を投入し、沈澱反応によりM金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する第3段階と、
前記M金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を含む反応溶液に第3金属溶液を投入し、沈澱反応によりM金属、M金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する第4段階と、を含み、
前記M、M、及びMは、それぞれ独立して、Ni、Co、及びMnからなる群から選択され、前記M、M、及びMが互いに異なる正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項12】
金属を全金属中の90モル%以上に含む第4金属溶液を準備する段階と、
前記第2段階と第3段階との間、前記第3段階と第4段階との間、及び第4段階後のうちの少なくとも一つに前記第4金属溶液を投入して沈澱反応させる段階と、をさらに含み、
前記M金属は、MはB、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上である、請求項11に記載の正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項13】
前記第1金属溶液、第2金属溶液、及び第3金属溶液のうちの少なくとも一つがM金属を全遷移金属中の10モル%以下に含み、
前記M金属は、MはB、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上である、請求項11に記載の正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項14】
前記M金属はNi、M金属はMn、M金属はCoであり、
前記第2段階における反応溶液のpHが11.4~11.8であり、
前記第3段階における反応溶液のpHは11.0以下であり、
前記第4段階における反応溶液のpHは11.0~11.4である、請求項11に記載の正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項15】
前記M金属はNi、M金属はCo、M金属はMnであり、
前記第2段階における反応溶液のpHが11.4~11.8であり、
前記第3段階における反応溶液のpHは11.0~11.4であり、
前記第4段階における反応溶液のpHは11.0以下である、請求項11に記載の正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか一項に記載の正極活物質前駆体とリチウム原料物質の焼成品である正極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年8月6日に出願された韓国特許出願第10-2020-0098736号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な構造の正極活物質前駆体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器及び電気自動車に対する技術開発及び需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加している。二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、かつサイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられており、この中でも作用電圧が高く、容量特性に優れたLiCoOなどのリチウムコバルト複合金属酸化物が主に使用されている。しかし、LiCoOは、脱リチウムによる結晶構造の不安定化のため、熱的特性が非常に劣悪である。また、前記LiCoOは、高価であるため、電気自動車などのような分野の動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
そこで、LiCoOを代替するための材料として、リチウムマンガン系酸化物(LiMnO又はLiMnなど)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePOなど)、又はリチウムニッケル系酸化物(LiNiOなど)などが開発された。この中でも約200mAh/gの高い可逆容量を有して大容量の電池の具現が容易なリチウムニッケル系酸化物が活発に研究されている。しかし、前記LiNiOは、LiCoOに比べて熱安定性が劣っており、充電状態で外部からの圧力などにより内部短絡が生じると、正極活物質そのものが分解され、電池の破裂及び発火をもたらす問題があった。これにより、前記LiNiOの優れた可逆容量は維持しながらも、低い熱安定性を改善するための方法として、Niの一部をCo、Mn、及び/又はAlで置換したリチウム複合遷移金属酸化物が開発された。
【0006】
一方、近年、エネルギー密度の高い二次電池の需要が増加するにつれて、正極活物質の容量増大のために、ニッケル含有率の高い高ニッケルリチウム複合遷移金属酸化物が開発されている。高ニッケルリチウム複合遷移金属酸化物の場合、容量が大きく発現されるという利点があるが、高いニッケルの含量により同一の電圧帯でニッケルの酸化量が多くなって、リチウムイオンの移動量が多くなり、これによる正極活物質の構造安定性が低下することから、長期寿命及び熱的安定性が悪化するという問題がある。
【0007】
したがって、高容量特性を有しながらも、寿命特性、熱的安定性などのような物性に優れた正極活物質の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、優れた容量特性、寿命特性、及び熱的安定性を具現することができる新規な構造の正極活物質前駆体と、その製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面において、本発明は、下記化学式1又は下記化学式2で表される組成を有し、正極活物質前駆体の粒子の中心部に形成され、全遷移金属中のM金属のモル比が90モル%以上の第1領域;前記第1領域の上部に形成され、全遷移金属中のM金属のモル比が90モル%以上の第2領域;及び前記第2領域の上部に形成され、全遷移金属中のM金属のモル比が90モル%以上の第3領域を含む正極活物質前駆体を提供する。
【0010】
[化学式1]
[M ](OH)
[化学式2]
[M ]O・OH
【0011】
前記[化学式1]及び[化学式2]で、前記M、M、及びMは、それぞれ独立して、Ni、Co、及びMnからなる群から選択され、前記M、M、及びMが互いに異なる。例えば、前記M金属はNiであり、M金属はCoであり、M金属はMnであるか、又は前記M金属はNiであり、M金属はMnであり、M金属はCoであってよい。
【0012】
前記Mは、B、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上であってよく、好ましくはAlであってよい。
【0013】
前記a、b、c、dは、正極活物質前駆体内でM、M、M、Mそれぞれのモル比を意味するものであって、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0≦d<1であり、a+b+c+d=1であり、好ましくは0.5≦a<1、0<b<0.4、0<c<0.4、0≦d<0.1であってよく、より好ましくは0.6≦a<1、0<b<0.3、0<c<0.3、0≦d<0.1であってよい。
【0014】
一方、前記正極活物質前駆体は、前記第1領域と第2領域の境界面、前記第2領域と第3領域の境界面、及び第3領域の上部のうちの少なくとも一つに形成され、M金属を含む第4領域をさらに含んでよい。
【0015】
また、前記正極活物質前駆体は、前記第1領域、第2領域、及び第3領域のうちの少なくとも一つ以上にM金属を含むものであってよい。
【0016】
他の側面において、本発明は、M金属を全金属中の90モル%以上に含む第1金属溶液、M金属を全遷移金属中の90モル%以上に含む第2金属溶液、及びM金属を全遷移金属中の90モル%以上に含む第3金属溶液をそれぞれ準備する第1段階;前記第1金属溶液、アンモニウム陽イオン錯体形成剤、及び塩基性化合物を混合して反応溶液を形成し、沈澱反応によりM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する第2段階;前記M金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を含む反応溶液に第2金属溶液を投入し、沈澱反応によりM金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する第3段階;及び前記M金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を含む反応溶液に第3金属溶液を投入し、沈澱反応によりM金属、M金属、及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する第4段階を含む正極活物質前駆体の製造方法を提供する。この際、前記M、M、及びMは、それぞれ独立して、Ni、Co、及びMnからなる群から選択され、前記M、M、及びMは互いに異なる。
【0017】
例えば、前記M金属はNi、M金属はMn、M金属はCoであってよく、この際、前記第2段階における反応溶液のpHが11.4~11.8であり、前記第3段階における反応溶液のpHは11.0以下であり、前記第4段階における反応溶液のpHは11.0~11.4であることが好ましい。
【0018】
又は、前記M金属はNi、M金属はCo、M金属はMnであってよく、この際、前記第2段階における反応溶液のpHが11.4~11.8であり、前記第3段階における反応溶液のpHは11.0~11.4であり、前記第4段階における反応溶液のpHは11.0以下であることが好ましい。
【0019】
一方、前記第1金属溶液、第2金属溶液、及び第3金属溶液のうちの少なくとも一つがM金属を全遷移金属中の10モル%以下に含んでよく、この際、前記M金属は、MはB、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0020】
また、本発明に係る正極活物質の製造方法は、必要に応じて、M金属を全金属中の90モル%以上に含む第4金属溶液を準備する段階、及び前記第2段階と第3段階との間、前記第3段階と第4段階との間、及び第4段階後のうちの少なくとも一つに前記第4金属溶液を投入して沈澱反応させる段階をさらに含んでよい。
【0021】
さらに他の側面において、本発明は、前記本発明に係る正極活物質前駆体とリチウム原料物質の焼成品である正極活物質を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、Ni、Co、Mnのいずれも含む一つの金属溶液を共沈反応させて製造される従来の正極活物質前駆体の製造方法とは異なり、Ni、Co、Mnをそれぞれ含む第1金属溶液、第2金属溶液、及び第3金属溶液を製造した後、前記第1~第3金属溶液を順次投入して沈澱反応を進行することにより、粒子内部でNi、Co及びMnがそれぞれ異なる領域に配置されるようにした。
【0023】
従来にはニッケル、コバルト、マンガンの含量の異なる金属溶液を用いて濃度勾配を有する正極活物質前駆体やコア-シェル構造を有する正極活物質前駆体を製造する方法が知られているが、このような従来の方法の場合、ニッケル、コバルト、マンガンを同時に共沈させて前駆体を製造するので、反応制御が容易ではなかった。これに比べて、本発明は、ニッケル、コバルト、マンガンをそれぞれ含む金属溶液を、時間差を置いて投入して沈澱反応を進行するので、反応制御が容易であり、前駆体の組成を多様に調節することができるので、所望の物性に最適化された正極活物質前駆体を製造することができる。
【0024】
また、本発明の方法により製造された正極活物質前駆体は、配向性に優れ、高容量特性を有しながらも優れた寿命特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る正極活物質前駆体の一具現例を示す図面である。
図2】本発明に係る正極活物質前駆体の他の具現例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられる用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0028】
正極活物質前駆体
先ず、本発明に係る正極活物質前駆体について説明する。
【0029】
図1及び図2には、本発明に係る正極活物質前駆体の多様な具現例が示されている。以下、図面を参照して、本発明に係る正極活物質前駆体について説明する。
【0030】
図1に示されたように、本発明の一具現例による正極活物質前駆体は、前駆体粒子の中心部に形成される第1領域10、前記第1領域の上部に形成される第2領域20、及び前記第2領域の上部に形成される第3領域30を含み、前記第1領域10、第2領域20、及び第3領域30が、それぞれM金属、M金属、及びM金属を主成分として含む。
【0031】
具体的には、本発明に係る正極活物質前駆体は、第1領域10内に含まれる全遷移金属中のM金属のモル比が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、又は100モル%であってよく、前記第2領域20内に含まれる全遷移金属中のM金属のモル比が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、又は100モル%であってよく、前記第3領域30内に含まれる全遷移金属中のM金属のモル比が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、又は100モル%であってよい。
【0032】
この際、前記M、M、及びMは、それぞれ独立して、Ni、Co、及びMnからなる群から選択される金属元素であり、前記M、M、及びMは互いに異なる。
【0033】
好ましくは、前記M金属はNiであってよく、M金属及びM金属は、それぞれ独立して、Mn又はCoであってよい。前駆体粒子の中心部に形成される第1領域に、容量特性に優れたNiが配置され、前記第1領域の上部に形成される第2領域及び第3領域に、Niに比べて安定性に優れたMn又はCoを配置することにより、高容量特性と寿命特性とが全て優れた正極活物質前駆体を得ることができる。
【0034】
例えば、本発明の正極活物質前駆体において、前記M金属はNi、M金属はCo、M金属はMnであってよい。このように、前駆体粒子の表面部に形成される第3領域に、Mnを主成分として含む場合、熱安定性に優れたMnの特性により高温寿命特性がさらに改善する効果を得ることができる。
【0035】
さらに他の例では、前記M金属はNi、M金属はMn、M金属はCoであってよい。このように、前駆体粒子の表面部に形成される第3領域に、Coを主成分として含む場合、出力特性がさらに改善する効果を得ることができる。
【0036】
一方、本発明の正極活物質前駆体は、前記第1領域、第2領域、及び第3領域のうちの少なくとも一つ以上にM金属をさらに含んでよい。
【0037】
この際、前記M金属は、B、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上であってよく、好ましくはAlであってよい。
【0038】
前記M金属は、各領域内に含まれた全金属中の10モル%以下、例えば、0.01モル%~10モル%、0.05モル%~10モル%、又は1モル%~5モル%の含量で含まれてよい。それぞれの領域に存在するM金属の含量が前記範囲を満たすと、容量特性及び寿命特性に悪影響を及ぼすことなく、正極活物質前駆体の構造安定性をさらに改善する効果を得ることができる。
【0039】
図2には、本発明に係る正極活物質前駆体の他の具現例が示されている。図2に示されたように、本発明に係る正極活物質前駆体は、前述した第1領域10、第2領域20、及び第3領域30以外に、M金属を主成分として含む第4領域40をさらに含んでよい。
【0040】
前記M金属は、B、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上であってよく、好ましくはAlであってよい。
【0041】
一方、前記第4領域40の形成位置は特に制限されない。具体的には、前記第4領域40は、図2(a)に示されたように、第1領域10と第2領域20の境界面に形成されてもよく、図2(b)に示されたように、第2領域20と第3領域30の境界面に形成されてもよく、図2(c)に示されたように、第3領域30の上部に形成されてもよい。
【0042】
また、前記第4領域40は、図2(d)~図2(f)に示されたように、複数の領域に形成されてよく、この場合、それぞれの第4領域40に含まれるM金属は、同一であるか異なってよい。具体的には、前記第4領域は、図2(d)に示されたように、第1領域と第2領域の境界面及び第2領域と第3領域の境界面に形成されてよく、図2(e)に示されたように、第2領域と第3領域の境界面及び第3領域の上部に形成されてよく、示されていないが、第1領域と第2領域の境界面及び第3領域の上部に形成されてもよい。また、前記第4領域は、図2(f)に示されたように、第1領域と第2領域の境界面、第2領域と第3領域の境界面、及び第3領域の上部に形成されてもよい。
【0043】
一方、本発明に係る正極活物質前駆体は、前駆体粒子の全組成が、下記化学式1で表される水酸化物又は下記化学式2で表されるオキシ水酸化物であってよい。
【0044】
[化学式1]
[M ](OH)
[化学式2]
[M ]O・OH
【0045】
前記[化学式1]及び[化学式2]において、前記M、M、及びMは、それぞれ独立して、Ni、Co、及びMnからなる群から選択され、前記M、M、及びMが互いに異なる。
【0046】
前記Mは、B、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上であってよく、好ましくはAlであってよい。
【0047】
前記aは、正極活物質前駆体内の全金属中のM金属のモル比を示すものであって、0<a<1、好ましくは0.5≦a<1、より好ましくは0.6≦a<1であってよい。
【0048】
前記bは、正極活物質前駆体内の全金属中のM金属のモル比を示すものであって、0<b<1、好ましくは0<b<0.4、より好ましくは0<b<0.3であってよい。
【0049】
前記cは、正極活物質前駆体内の全金属中のM金属のモル比を示すものであって、0<c<1、好ましくは0<c<0.4、より好ましくは0<c<0.3であってよい。
【0050】
前記dは、正極活物質前駆体内の全金属中のM金属のモル比を示すものであって、0≦d<1、好ましくは0≦d<0.1、より好ましくは0≦d<0.05であってよい。
【0051】
一方、本発明者の研究によれば、本発明のようにニッケル、コバルト、マンガンが、それぞれ前駆体粒子内で互いに異なる領域に主に分布する場合、従来に遷移金属が混在している正極活物質前駆体に比べて、(100)結晶面における結晶成長が優勢となり、(100)結晶面における結晶粒の大きさが増加することと示され、このように、(100)結晶面における結晶粒の大きさが大きくなると、リチウムイオンの移動度が増加する効果を得ることができる。
【0052】
具体的には、本発明に係る正極活物質前駆体は、(100)結晶面における結晶粒の大きさが30nm以上、好ましくは30nm~100nm、より好ましくは30nm~50nmであってよい。また、本発明に係る正極活物質前駆体は、(001)結晶面における結晶粒の大きさ(C(001))に対する(100)結晶面における結晶粒の大きさ(C(100))の比率C(100)/C(001)が3.0~6.0、好ましくは3.5~6.0であってよい。
【0053】
(100)結晶面における結晶粒の大きさ及び(001)結晶面における結晶粒の大きさ(C(001))に対する(100)結晶面における結晶粒の大きさ(C(100))の比率が前記範囲を満たすと、リチウムイオンの移動度が向上し、これにより容量特性及び出力特性の改善効果を得ることができる。
【0054】
正極活物質前駆体の製造方法
次に、本発明に係る正極活物質前駆体の製造方法について説明する。
【0055】
本発明に係る正極活物質前駆体の製造方法は、(1)M金属を含む第1金属溶液、M金属を含む第2金属溶液、及びM金属を含む第3金属溶液をそれぞれ製造する第1段階、(2)前記第1金属溶液、アンモニウム陽イオン錯体形成剤、及び塩基性化合物を混合して反応溶液を形成し、沈澱反応によりM金属を含む水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する第2段階、(3)前記M金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を含む反応溶液に第2金属溶液を投入し、沈澱反応によりM金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を沈澱させる第3段階、及び(4)前記M金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を含む反応溶液に第3金属溶液を投入し、沈澱反応によりM金属、M金属、及びM金属を含む水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する第4段階を含む。
【0056】
この際、前記M、M、及びMは、前述したとおりである。すなわち、前記M、M、及びMは、それぞれ独立して、Ni、Co及びMnからなる群から選択され、前記M、M、及びMは互いに異なる。
【0057】
以下、本発明の各段階について具体的に説明する。
【0058】
(1)第1段階
先ず、M金属を含む第1金属溶液、M金属を含む第2金属溶液、及びM金属を含む第3金属溶液をそれぞれ準備する。
【0059】
この際、前記第1金属溶液は、M金属を第1金属溶液内の全金属中の90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、又は100モル%で含み、M金属及びM金属は含まない。
【0060】
前記第2金属溶液は、M金属を第2金属溶液内の全金属中の90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、又は100モル%で含み、M金属及びM金属は含まない。
【0061】
前記第3金属溶液は、M金属を第3金属溶液内の全金属中の90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、又は100モル%で含み、M金属及びM金属は含まない。
【0062】
前記第1~第3金属溶液は、水のような溶媒にM金属含有原料物質、M金属含有原料物質、及びM金属含有原料物質をそれぞれ溶解させて製造されてよい。
【0063】
この際、前記M金属含有原料物質は、M金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、又は酸化物などであってよく、前記M金属含有原料物質は、M金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、又は酸化物などであってよく、前記M金属含有原料物質は、M金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、又は酸化物などであってよい。
【0064】
前記M金属がNiの場合、M金属含有原料物質は、例えば、NiO、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、ニッケルハロゲン化物又はこれらの組み合わせであってよいが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記M金属又はM金属がMnの場合、M金属含有原料物質又はM金属含有原料物質は、例えば、Mn、MnO、Mn、MnCO、Mn(NO、MnSO・HO、酢酸マンガン、マンガンハロゲン化物又はこれらの組み合わせであってよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記M金属又はM金属がCoの場合、M金属含有原料物質又はM金属含有原料物質は、例えば、CoSO、Co(OCOCH・4HO、Co(NO・6HO、CoSO・7HO又はこれらの組み合わせであってよいが、これに限定されるものではない。
【0067】
一方、必須なものではないが、前記第1金属溶液、第2金属溶液、及び第3金属溶液のうちの少なくとも一つ以上がM金属を含んでよい。
【0068】
この際、前記M金属は、B、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上であってよく、好ましくはAlであってよい。
【0069】
金属をさらに含む金属溶液は、溶媒にM金属含有原料物質をM金属含有原料物質、M金属含有原料物質、又はM金属含有原料物質とともに溶解させることにより製造されてよい。
【0070】
この際、前記M金属含有原料物質は、M金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、又は酸化物などであってよく、前記M金属は、金属溶液内の全金属中の10モル%以下、例えば、0.01モル%~10モル%、0.05モル%~10モル%、又は1モル%~5モル%の含量で含まれてよい。
【0071】
(2)第2段階
第1金属溶液、第2金属溶液、及び第3金属溶液が準備されると、前記第1金属溶液、アンモニウム陽イオン錯体形成剤、及び塩基性化合物を混合して反応溶液を形成し、沈澱反応によりM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する。
【0072】
この際、前記アンモニウム陽イオン錯体形成剤は、NHOH、(NHSO、NHNO、NHCl、CHCOONH、及び(NHCOからなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよく、前記化合物を溶媒に溶解させた溶液形態で反応器内に投入されてよい。この際、前記溶媒としては、水、又は水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水との混合物が使用されてよい。
【0073】
前記塩基性化合物は、NaOH、KOH、及びCa(OH)からなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよく、前記化合物を溶媒に溶解させた溶液形態で反応器内に投入されてよい。この際、溶媒としては、水、又は水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水との混合物が使用されてよい。
【0074】
前記アンモニウム陽イオン錯体形成剤及び塩基性化合物は、反応溶液のpHが所望の範囲になるようにする量で投入される。
【0075】
一方、前記反応溶液のpHは、金属溶液に含まれた主な金属成分の種類により適切な範囲に調節されなければならない。例えば、M金属がNiの場合には、反応溶液のpHは11.4~11.8であることが好ましく、M金属がCoの場合には、反応溶液のpHが11.0~11.4であることが好ましく、M金属がMnの場合には、反応溶液のpHが11.0以下であることが好ましい。金属種類による反応溶液pHが前記範囲を満たさないと、沈澱反応が円滑に行われないので、沈澱原料物質が溶出されるか微分が発生する可能性がある。
【0076】
好ましくは、前記M金属がNiであってよく、この場合、前記アンモニウム陽イオン錯体形成剤及び塩基性化合物は、反応溶液のpHが11.4~11.8になるようにする量で投入されてよい。
【0077】
(3)第3段階
前記第2段階により反応溶液中にM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子が十分に形成されると、第1金属溶液の供給を中断し、M金属を含む第2金属溶液を投入し、沈澱反応を進行させ、M金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する。
【0078】
この際、前記第2金属溶液とともにアンモニウム陽イオン錯体形成剤及び塩基性化合物をさらに投入し、反応溶液のpHを調節することが好ましい。
【0079】
前記反応溶液のpHは、M金属がNiの場合には11.4~11.8、M金属がCoの場合には11.0~11.4、M金属がMnの場合には11.0以下に調節されることが好ましい。
【0080】
例えば、前記M金属はMnであってよく、この場合、前記アンモニウム陽イオン錯体形成剤及び塩基性化合物は、反応溶液のpHが11.0以下になるようにする量で投入されてよい。
【0081】
さらに他の例では、前記M金属はCoであってよく、この場合、前記アンモニウム陽イオン錯体形成剤及び塩基性化合物は、反応溶液のpHが11.0~11.4になるようにする量で投入されてよい。
【0082】
第2金属溶液を投入し、反応溶液のpHを適切に調節すると、第2段階で形成されたM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子の表面にM金属が沈澱されることにより、M金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子が形成される。
【0083】
(4)第4段階
前記第3段階により反応溶液中にM金属及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子が十分に形成されると、第2金属溶液の供給を中断し、第3金属溶液を投入し、沈澱反応を進行させ、M金属、M金属、及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子を形成する。
【0084】
この際、前記第3金属溶液とともにアンモニウム陽イオン錯体形成剤及び塩基性化合物をさらに投入して、反応溶液のpHを調節することが好ましい。
【0085】
前記反応溶液のpHは、M金属がNiの場合には11.4~11.8、M金属がCoの場合には11.0~11.4、M金属がMnの場合には11.0以下に調節されることが好ましい。
【0086】
例えば、前記M金属はMnであってよく、この場合、前記アンモニウム陽イオン錯体形成剤及び塩基性化合物は、反応溶液のpHが11.0以下になるようにする量で投入されてよい。
【0087】
さらに他の例では、前記M金属はCoであってよく、この場合、前記アンモニウム陽イオン錯体形成剤及び塩基性化合物は、反応溶液のpHが11.0~11.4になるようにする量で投入されてよい。
【0088】
第3金属溶液を投入し、反応溶液のpHを適切に調節すると、第3段階で形成されたM金属及びM金属の水酸化物、又はオキシ水酸化物粒子の表面にM金属が沈澱されることにより、M金属、M金属、及びM金属の水酸化物又はオキシ水酸化物粒子が形成される。
【0089】
前記のような方法により、前述した図1に示されたように、M金属、M金属、及びM金属が順次堆積された構造を有する本発明の正極活物質前駆体を製造することができる。
【0090】
(5)その他
一方、必須なものではないが、前記正極活物質前駆体の製造方法は、M金属を含む第4金属溶液を準備する段階、及び前記第4金属溶液を反応溶液に投入して沈澱反応を進行する段階をさらに含んでよい。
【0091】
前記M金属は、B、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Fe、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選択される1種以上であってよく、好ましくはAlであってよい。
【0092】
一方、前記M金属を含む第4金属溶液は、M金属含有原料物質を水などのような溶媒に溶解させて製造されてよく、この際、前記M金属含有原料物質は、M金属を含む酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、又は酸化物などであってよい。例えば、前記M金属含有原料物質は、NaAlO、Al(NOなどであってよいが、これに限定されるものではない。
【0093】
一方、前記第4金属溶液は、M金属を第4金属溶液内の全金属中の90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、又は100モル%で含み、M金属、M金属、及びM金属は含まない。
【0094】
一方、前記第4金属溶液は、前記第2段階と第3段階との間、前記第3段階と第4段階との間、及び第4段階後のうちの少なくとも一つに投入されてよく、前記第4金属溶液投入時に反応溶液のpH調節のために、陽イオン錯体形成剤及び塩基性化合物をともに投入してよい。第4金属溶液投入時に反応溶液のpHは8~11.5に調節されることが好ましい。反応溶液pHが前記範囲を満たさないと、沈澱反応が円滑に行われないので、沈澱原料物質が溶出されるか微分が発生する可能性がある。
【0095】
前記第4金属溶液を反応溶液に投入すると、以前段階で形成された水酸化物粒子又はオキシ水酸化物の表面にM金属が沈澱されることにより、M金属を含む水酸化物粒子又はオキシ水酸化物粒子が形成されるようになる。
【0096】
前記のような第4金属溶液の投入段階をさらに行うと、前述した図2の(d)~(f)に示されたように、第1領域と第2領域の境界面、第2領域と第3領域の境界面、又は第3領域の上部にM金属を含む第4領域が形成された正極活物質前駆体を製造することができる。
【0097】
正極活物質
前記のような方法により製造された本発明の正極活物質をリチウム原料物質と混合した後、焼成して正極活物質を製造することができる。
【0098】
前記リチウム原料物質としては、例えば、リチウム含有炭酸塩(例えば、炭酸リチウムなど)、水和物(例えば、水酸化リチウム水和物(LiOH・HO)など)、水酸化物(例えば、水酸化リチウムなど)、硝酸塩(例えば、硝酸リチウム(LiNO)など)、塩化物(例えば、塩化リチウム(LiCl)など)などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。
【0099】
一方、前記正極活物質前駆体とリチウム原料物質との混合は、固相混合で行われてよく、前記正極活物質前駆体とリチウム原料物質との混合比は、最終的に製造される正極活物質での各成分の原子分率を満たす範囲で決定されてよい。例えば、前記正極活物質前駆体とリチウム原料物質は、遷移金属:Liのモル比が1:0.9~1:1.2、好ましくは1:0.98~1:1.1になるようにする量で混合してよい。前記前駆体及びリチウム原料物質が前記範囲で混合する場合、優れた容量特性を示す正極活物質を製造することができる。
【0100】
前記焼成は、600℃~1000℃、好ましくは700~900℃で行われてよく、焼成時間は5時間~30時間、好ましくは8時間~15時間であってよいが、これに限定されるものではない。
【0101】
次に、本発明に係る正極について説明する。
【0102】
本発明に係る正極は、前述した本発明の正極活物質を含む。具体的には、前記正極は、正極集電体、前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、本発明に係る正極活物質を含む。
【0103】
正極活物質については前述したので、具体的な説明を省略し、以下の残り構成についてのみ具体的に説明する。
【0104】
前記正極集電体は、伝導性が高い金属を含んでよく、正極活物質層が容易に接着するが、電池の電圧範囲で反応性がないものであれば、特に制限されるものではない。前記正極集電体は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてよい。また、前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0105】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに、必要に応じて選択的に導電材及びバインダーを含んでよい。
【0106】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99重量%、より具体的には85~98.5重量%の含量で含まれてよい。前記含量範囲で含まれると、優れた容量特性を示すことができる。
【0107】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく、電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維;炭素ナノチューブなどの導電性チューブ;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてよい。
【0108】
前記バインダーは、正極活物質粒子同士の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethymethaxrylate)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)、及びこれらの水素をLi、Na、又はCaで置換された高分子、又はこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてよい。
【0109】
前記正極は、前記正極活物質を用いる以外は、通常の正極の製造方法により製造され得る。具体的には、前記正極活物質及び必要に応じて選択的に、バインダー、導電材、及び分散剤を溶媒中に溶解又は分散させて製造した正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することにより製造することができる。
【0110】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)、アセトン(acetone)、又は水などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材、バインダー、及び分散剤を溶解又は分散させ、その後、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0111】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0112】
電気化学素子
次に、本発明に係る電気化学素子について説明する。本発明に係る電気化学素子は、前述した本発明の正極を含むものであって、前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシターなどであってよく、より具体的には、リチウム二次電池であってよい。
【0113】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と負極との間に介在される分離膜及び電解質を含み、前記正極は、前述したとおりであるので、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0114】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、分離膜の電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を封止する封止部材を選択的にさらに含んでよい。
【0115】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0116】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こすことなく、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されてよい。また、前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0117】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的に、バインダー及び導電材を含む。
【0118】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が使用されてよい。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金、又はAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープ及び脱ドープ可能な金属酸化物;又はSi-C複合体又はSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が使用されてよい。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などのいずれも使用されてよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状又は繊維状の天然黒鉛、又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)、及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0119】
前記負極活物質は、負極活物質層の総重量に基づいて80重量%~99重量%で含まれてよい。
【0120】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体同士の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の総重量に基づいて0.1重量%~10重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などが挙げられる。
【0121】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であって、負極活物質層の総重量に基づいて10重量%以下、好ましくは5重量%以下で添加されてよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こすことなく、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、炭素ナノチューブ、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されてよい。
【0122】
前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質及び選択的に、バインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極活物質層形成用組成物を塗布して乾燥することにより製造されるか、又は前記負極活物質層形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造され得る。
【0123】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して、低抵抗でありかつ電解液含浸能に優れているものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム又はこれらの2層以上の積層構造体が使用されてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性又は機械的強度の確保のために、セラミック成分又は高分子物質が含まれているコーティングされた分離膜が使用されてもよく、選択的に単層又は多層構造で使用されてよい。
【0124】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0125】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでよい。
【0126】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をするものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)又はテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状又は環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環又はエーテル結合を含んでよい)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;又はスルホラン(sulfolane)類などが使用されてよい。この中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優れて示され得る。
【0127】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的には、前記リチウム塩の陰イオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN及び(CFCFSOからなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよく、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、又はLiB(Cなどが使用されてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0128】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール又は三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。この際、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1重量%~5重量%で含まれてよい。
【0129】
前記のように、本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び寿命特性を安定的に示すので、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0130】
これにより、本発明の他の一具現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0131】
前記電池モジュール又は電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;又は電力貯蔵用システムのうち何れか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられてよい。
【0132】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)型又はコイン(coin)型などになり得る。
【0133】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用され得ると共に、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0134】
前記中大型デバイスの例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、及び電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
以下、具体的な実施例により本発明をより詳しく説明する。
【0136】
実施例1
(1)第1段階
NiSOを蒸留水に投入して、2.4M濃度の第1金属溶液を準備した。
【0137】
CoSOを蒸留水に投入して、2.4M濃度の第2金属溶液を準備した。
【0138】
MnSOを蒸留水に投入して、2.4M濃度の第3金属溶液を準備した。
【0139】
(2)第2段階
反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に組成した。前記反応器に8.0MのNaOH溶液と5.1MのNHOH水溶液とを投入してpH12.0の反応母液を準備し、前記第1金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入して、28.8時間沈澱反応を進行した。この際、反応溶液のpHは、11.6を維持した。
【0140】
(3)第3段階
その後、第1金属溶液の投入を中断し、pHセンサー連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを11.4に調節した後、第2金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.5L/hrの速度でそれぞれ投入して、9.6時間沈澱反応を進行した。
【0141】
(4)第4段階
その後、第2金属溶液の投入を中断し、pHセンサー連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを10.8~11.0範囲に調節した後、第3金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入し、9.6時間沈澱反応を進行して、[Ni0.6Co0.2Mn0.2](OH)組成を有する正極活物質前駆体を製造した。
【0142】
実施例2
(1)第1段階
NiSOを蒸留水に投入して、2.4M濃度の第1金属溶液を準備した。
【0143】
CoSOを蒸留水に投入して、2.4M濃度の第2金属溶液を準備した。
【0144】
MnSOを蒸留水に投入して、2.4M濃度の第3金属溶液を準備した。
【0145】
(2)第2段階
反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に組成した。前記反応器に8.0MのNaOH溶液と5.1MのNHOH水溶液とを投入してpH12.0の反応母液を準備し、前記第1金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入して、43.2時間沈澱反応を進行した。この際、反応pHは、11.6を維持した。
【0146】
(3)第3段階
その後、第1金属溶液の投入を中断し、pHセンサー連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを11.4に調節した後、第2金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入して、2.4時間沈澱反応を進行した。
【0147】
(4)第4段階
その後、第2金属溶液の投入を中断し、pHセンサー連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを10.8~11.0に調節した後、第3金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入し、2.4時間沈澱反応を進行して、[Ni0.9Co0.05Mn0.05](OH)組成を有する正極活物質前駆体を製造した。
【0148】
実施例3
(1)第1段階
NiSOを蒸留水に投入して、2.4M濃度の第1金属溶液を準備した。
【0149】
MnSOを蒸留水に投入して、2.4M濃度の第2金属溶液を準備した。
【0150】
CoSOを蒸留水に投入して、2.4M濃度の第3金属溶液を準備した。
【0151】
(2)第2段階
反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に組成した。前記反応器に8.0MのNaOH溶液と5.1MのNHOH水溶液とを投入してpH12.0の反応母液を準備し、前記第1金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入して、43.2時間沈澱反応を進行した。この際、反応pHは、11.6を維持した。
【0152】
(3)第3段階
その後、第1金属溶液の投入を中断し、pHセンサー連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを10.8~11.0に調節した後、第2金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入して、2.4時間沈澱反応を進行した。
【0153】
(4)第4段階
その後、第2金属溶液の投入を中断し、pHセンサー連動方式でNaOHを投入して反応溶液のpHを11.4に調節した後、第3金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入し、2.4時間沈澱反応を進行して、[Ni0.9Mn0.05Co0.05](OH)組成を有する正極活物質前駆体を製造した。
【0154】
比較例1
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が60:20:20になるようにする量で蒸留水中で混合して、2.4M濃度の金属溶液を準備した。
【0155】
反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に組成した。前記反応器に8.0MのNaOH溶液と5.1MのNHOH水溶液とを投入して反応母液を準備し、前記金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入し、反応溶液のpHを11.5~11.7に維持しながら48時間共沈反応を進行して、[Ni0.6Co0.2Mn0.2](OH)組成を有する正極活物質前駆体を製造した。
【0156】
比較例2
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が90:5:5になるようにする量で蒸留水中で混合して、2.4M濃度の金属溶液を準備した。
【0157】
反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に組成した。前記反応器に8.0MのNaOH溶液と5.1MのNHOH水溶液とを投入して反応母液を準備し、前記金属溶液を3.8L/hrの速度で、NaOH水溶液を2.3L/hr、NHOH水溶液を0.54L/hrの速度でそれぞれ投入し、反応溶液のpHを11.3~11.5で維持しながら48時間共沈反応を進行して、[Ni0.9Co0.05Mn0.05](OH)組成を有する正極活物質前駆体を製造した。
【0158】
実験例1
実施例1~3の正極活物質前駆体の製造時に、第2段階、第3段階、及び第4段階後に反応溶液から正極活物質前駆体粒子をサンプリングした後、ICP分析により正極活物質前駆体粒子内の遷移金属中のニッケル、コバルト、マンガン金属の濃度(mol%)を測定し、その結果を下記[表1]に示した。
【0159】
【表1】
【0160】
前記[表1]に示された各段階別の金属組成の測定により、実施例1~3の正極活物質前駆体の各金属層が、所望の組成に形成されたことが確認できる。
【0161】
実験例2
実施例1及び比較例1により製造された正極活物質前駆体の金属元素分布を確認するために、SEM-EDS分析(S-4800、Hitachi社)を行い、その結果を下記[表2]に示した。
【0162】
この際、前駆体粒子の断面SEM写真で、粒子半径がRの場合、実施例1の第1領域の金属元素分布は、粒子中心での遷移金属の含量を測定したものであり、第2領域の金属元素分布は、粒子中心から0.88R距離にある位置での遷移金属の含量を測定したものであり、第3領域の金属元素分布は、粒子表面での遷移金属の含量を測定したものである。
【0163】
【表2】
【0164】
前記表2により、実施例1の正極活物質前駆体は、Ni、Co、Mnがそれぞれ第1領域、第2領域、及び第3領域に主に配置されたことに対し、比較例1の正極活物質前駆体は、粒子全体でNi、Co、Mnが混合して配置されていることが確認できる。
【0165】
実験例3
X線回折分析機(Rikaku社)を用いて、実施例2、3及び比較例2で製造した正極活物質前駆体粒子のXRDパターンを測定した後、測定されたXRDパターンから(100)面及び(001)面のピーク半価幅を得て、シェラー(Scherrer)式を用いて各結晶面における結晶粒の大きさを計算した。測定結果は下記表3に示した。
【0166】
この際、(100)結晶面のピーク半価幅は、2θ=33.1±0.2°である領域で示されるピークの半価幅であり、(001)結晶面のピーク半価幅は、2θ=19.1±0.2°である領域で示されるピークの半価幅である。
【0167】
【表3】
【0168】
前記[表3]により、実施例2及び3により製造された正極活物質前駆体の場合、比較例2により製造された正極活物質前駆体に比べて、(100)結晶面の粒子成長が優勢に示されることが確認できる。
【0169】
実験例4
実施例1、実施例2、及び比較例1により製造された正極活物質前駆体のそれぞれとLiOH・HOを、Li:遷移金属のモル比が1.05:1になるように混合し、酸素雰囲気下において805℃で13時間焼成して正極活物質を製造した。
【0170】
また、比較例2により製造された正極活物質前駆体とLiOH・HOを、Li:遷移金属のモル比が1.05:1になるように混合し、酸素雰囲気下において765℃で13時間焼成して正極活物質を製造した。
【0171】
前記のような方法により製造されたそれぞれの正極活物質、導電材(カーボンブラック)、及びバインダー(PVdF)を、97.5:1:1.5の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の片面に塗布し、130℃で乾燥した後、圧延して、それぞれの正極を製造した。
【0172】
前記のように製造されたそれぞれの正極と負極との間に分離膜を介在して電極組立体を製造し、これを電池ケースの内部に位置させた後、電池ケースの内部に電解液を注入して2032規格のコインセル型リチウム二次電池を製造した。
【0173】
この際、負極としては、リチウムメタルディスク(Li metal disk)を使用し、電解液としては、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジエチルカーボネートを3:3:4の体積比で混合した有機溶媒に、1MのLiPFを溶解させた電解液を使用した。
【0174】
前記のように製造されたリチウム二次電池のそれぞれに対して、25℃で0.1Cの定電流で4.25VまでCC/CVモード充電(CV 0.05C)を実施した後、3VになるまでCCモード放電を実施して初期充電容量及び放電容量を測定した。測定結果は下記表4に示した。
【0175】
【表4】
【0176】
前記[表4]により、本発明のようにNi、Co、Mnがそれぞれ異なる領域に配置される構造である実施例1及び2の正極活物質前駆体を使用する場合、平均組成が同一であるが、Ni、Co、Mnが混在して配置される比較例1及び2の正極活物質前駆体を使用する場合に比べて、優れた初期容量を具現することが分かる。
【符号の説明】
【0177】
10 第1領域
20 第2領域
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】
図2(f)】