(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240326BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240326BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/53
B23K26/00 P
(21)【出願番号】P 2020028750
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】一宮 佑希
(72)【発明者】
【氏名】築地 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢史
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027974(JP,A)
【文献】特開2015-012015(JP,A)
【文献】特開2017-059843(JP,A)
【文献】特開平10-323778(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030520(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の分割予定ラインが設定されたウエーハの該分割予定ラインに沿って該ウエーハの内部に改質層を形成するウエーハの加工方法であって、
該ウエーハの該表面をチャックテーブルに対面させ、該チャックテーブルで該ウエーハを保持する保持ステップと、
該ウエーハに対して透過性を有する波長の第一のレーザービームの集光点を該ウエーハの内部に位置付けてレーザービーム照射ユニットと、該チャックテーブルと、を該分割予定ラインに沿う方向に相対的に移動させながら該第一のレーザービームを該分割予定ラインに沿って該ウエーハの裏面側から照射し、該ウエーハの内部に該改質層を形成する改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップの後に、該ウエーハの加工閾値を超えない出力であり、かつ、該ウエーハに対して透過性を有する波長の第二のレーザービームの集光点を該ウエーハの内部または該表面に位置付けて該ウエーハの該裏面側から照射する観察用レーザービーム照射ステップと、
該観察用レーザービーム照射ステップで照射された該第二のレーザービームの
該ウエーハの該表面で反射した反射光を撮像ユニットで撮像する撮像ステップと、
該撮像ステップで撮像され
該反射光が写る画像
における該反射光の形状及び位置に基づいて、該ウエーハの加工状態を判定する判定ステップと、を含み、
該観察用レーザービーム照射ステップで該ウエーハに照射される該第二のレーザービームは、該第二のレーザービームの進行方向に垂直な面における断面形状が該改質層を挟んで非対称となるように成形されていることを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
該判定ステップでは、
該撮像ステップで撮像された該画像において、該観察用レーザービーム照射ステップで該ウエーハに照射された該第二のレーザービームの該裏面における被照射領域と同一の形状の領域と重なるように該反射光が写る場合に、該改質層から該ウエーハの該表面側に向かってクラックが伸長していると判定し、
該撮像ステップで撮像された該画像において、該観察用レーザービーム照射ステップで該ウエーハに照射された該第二のレーザービームの該裏面における該被照射領域の形状を反転した形状の領域と重なるように該反射光が写る場合に、該改質層から該ウエーハの該表面側に向かって該クラックが伸長していないと判定することを特徴とする、
請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
表面に複数の分割予定ラインが設定されたウエーハの該分割予定ラインに沿って該ウエーハの内部に改質層を形成するウエーハの加工方法であって、
該ウエーハの該表面をチャックテーブルに対面させ、該チャックテーブルで該ウエーハを保持する保持ステップと、
該ウエーハに対して透過性を有する波長の第一のレーザービームの集光点を該ウエーハの内部に位置付けてレーザービーム照射ユニットと、該チャックテーブルと、を該分割予定ラインに沿う方向に相対的に移動させながら該第一のレーザービームを該分割予定ラインに沿って該ウエーハの裏面側から照射し、該ウエーハの内部に該改質層を形成する改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップの後に、該ウエーハの加工閾値を超えない出力であり、かつ、該ウエーハに対して透過性を有する波長の第二のレーザービームの集光点を該ウエーハの内部または該表面に位置付けて該ウエーハの該裏面側から照射する観察用レーザービーム照射ステップと、
該観察用レーザービーム照射ステップで照射された該第二のレーザービームの
該ウエーハの該表面で反射した反射光を撮像ユニットで撮像する撮像ステップと、
該撮像ステップで撮像され
該反射光が写る画像
における該反射光の形状及び位置に基づいて、該ウエーハの加工状態を判定する判定ステップと、を含み、
該観察用レーザービーム照射ステップで該ウエーハに照射される該第二のレーザービームは、該ウエーハの該裏面に対して垂直でない方向から該ウエーハの内部に進行することを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項4】
該観察用レーザービーム照射ステップでは、該第二のレーザービームは、該集光点を形成するレンズに起因する収差が補正された状態で該ウエーハに入射されることを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該第一のレーザービームと、該第二のレーザービームと、は光源が同一であることを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のウエーハの加工方法。
【請求項6】
該観察用レーザービーム照射ステップは、液浸で行うことを特徴とする、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のウエーハの加工方法。
【請求項7】
該判定ステップでは、予め作成された判定するための基準に基づいて判定が実施されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの裏面側からレーザービームを照射し該レーザービームをウエーハの内部に集光してウエーハを分割する起点となる改質層を形成し、該改質層からウエーハの表面側にクラックを伸長させるウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造工程では、ウエーハの表面に互いに交差する複数の分割予定ラインを設定し、区画された各領域にデバイスを形成し、ウエーハを分割予定ラインに沿って分割する。
【0003】
例えば、ウエーハに対して透過性を有する波長(ウエーハを透過できる波長)のレーザービームをウエーハの裏面側から該ウエーハに照射し、分割予定ラインに沿ってウエーハの内部に集光させる。このとき、レーザービームの集光点の近傍に分割の起点となる改質層が形成される。形成された改質層からウエーハの表面にクラックが伸長すると、ウエーハが分割予定ラインに沿って分割される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
この加工方法では、改質層を形成するとともに該改質層からウエーハの表面に向けてクラックが進行するように、ウエーハの深さ方向における改質層の形成位置やレーザービームの照射条件等の加工条件を適切に設定する必要がある。加工条件等が適切でなければ、形成された改質層からクラックが適切に伸長せず、または、予定していない方向にクラックが伸長する等してウエーハを適切に分割できないため、デバイスチップの歩留まりが低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-86161号公報
【文献】特開2010-68009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、加工条件等が適切であるか否か、すなわち、ウエーハに形成された改質層からウエーハの表面へ向けてクラックが適切に進行しているか否かを確認するには、例えば、ウエーハの表面を顕微鏡等で観察することが考えられる。しかし、裏面側からレーザービームが照射されたウエーハの表面側を観察するには、例えば、ウエーハをレーザー加工装置から取り出し、ウエーハの上下を反転させて顕微鏡等に搬入しなければならない。そのため、クラックの形成状況の確認に工数がかかり問題となっていた。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウエーハが適切に加工されたか否かを容易に確認できるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、表面に複数の分割予定ラインが設定されたウエーハの該分割予定ラインに沿って該ウエーハの内部に改質層を形成するウエーハの加工方法であって、該ウエーハの該表面をチャックテーブルに対面させ、該チャックテーブルで該ウエーハを保持する保持ステップと、該ウエーハに対して透過性を有する波長の第一のレーザービームの集光点を該ウエーハの内部に位置付けてレーザービーム照射ユニットと、該チャックテーブルと、を該分割予定ラインに沿う方向に相対的に移動させながら該第一のレーザービームを該分割予定ラインに沿って該ウエーハの裏面側から照射し、該ウエーハの内部に該改質層を形成する改質層形成ステップと、該改質層形成ステップの後に、該ウエーハの加工閾値を超えない出力であり、かつ、該ウエーハに対して透過性を有する波長の第二のレーザービームの集光点を該ウエーハの内部または該表面に位置付けて該ウエーハの該裏面側から照射する観察用レーザービーム照射ステップと、該観察用レーザービーム照射ステップで照射された該第二のレーザービームの該ウエーハの該表面で反射した反射光を撮像ユニットで撮像する撮像ステップと、該撮像ステップで撮像され該反射光が写る画像における該反射光の形状及び位置に基づいて、該ウエーハの加工状態を判定する判定ステップと、を含み、該観察用レーザービーム照射ステップで該ウエーハに照射される該第二のレーザービームは、該第二のレーザービームの進行方向に垂直な面における断面形状が該改質層を挟んで非対称となるように成形されていることを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0009】
好ましくは、該判定ステップでは、該撮像ステップで撮像された該画像において、該観察用レーザービーム照射ステップで該ウエーハに照射された該第二のレーザービームの該裏面における被照射領域と同一の形状の領域と重なるように該反射光が写る場合に、該改質層から該ウエーハの該表面側に向かってクラックが伸長していると判定し、該撮像ステップで撮像された該画像において、該観察用レーザービーム照射ステップで該ウエーハに照射された該第二のレーザービームの該裏面における該被照射領域の形状を反転した形状の領域と重なるように該反射光が写る場合に、該改質層から該ウエーハの該表面側に向かって該クラックが伸長していないと判定する。
【0010】
また、本発明の他の一態様によると、表面に複数の分割予定ラインが設定されたウエーハの該分割予定ラインに沿って該ウエーハの内部に改質層を形成するウエーハの加工方法であって、該ウエーハの該表面をチャックテーブルに対面させ、該チャックテーブルで該ウエーハを保持する保持ステップと、該ウエーハに対して透過性を有する波長の第一のレーザービームの集光点を該ウエーハの内部に位置付けてレーザービーム照射ユニットと、該チャックテーブルと、を該分割予定ラインに沿う方向に相対的に移動させながら該第一のレーザービームを該分割予定ラインに沿って該ウエーハの裏面側から照射し、該ウエーハの内部に該改質層を形成する改質層形成ステップと、該改質層形成ステップの後に、該ウエーハの加工閾値を超えない出力であり、かつ、該ウエーハに対して透過性を有する波長の第二のレーザービームの集光点を該ウエーハの内部または該表面に位置付けて該ウエーハの該裏面側から照射する観察用レーザービーム照射ステップと、該観察用レーザービーム照射ステップで照射された該第二のレーザービームの該ウエーハの該表面で反射した反射光を撮像ユニットで撮像する撮像ステップと、該撮像ステップで撮像され該反射光が写る画像における該反射光の形状及び位置に基づいて、該ウエーハの加工状態を判定する判定ステップと、を含み、該観察用レーザービーム照射ステップで該ウエーハに照射される該第二のレーザービームは、該ウエーハの該裏面に対して垂直でない方向から該ウエーハの内部に進行することを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0011】
好ましくは、該観察用レーザービーム照射ステップでは、該第二のレーザービームは、該集光点を形成するレンズに起因する収差が補正された状態で該ウエーハに入射される。
【0012】
また、好ましくは、該第一のレーザービームと、該第二のレーザービームと、は光源が同一である。
【0013】
さらに、好ましくは、該観察用レーザービーム照射ステップは、液浸で行う。また、好ましくは、該判定ステップでは、予め作成された判定するための基準に基づいて判定が実施される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様にかかるウエーハの加工方法では、ウエーハの内部に第一のレーザービームを集光させて改質層を形成する改質層形成ステップを実施した後、観察用レーザービーム照射ステップと、撮像ステップと、判定ステップと、を実施する。該観察用レーザービーム照射ステップでウエーハの裏面側に照射され内部を進行する第二のレーザービームは、ウエーハの表面と、改質層から表面側に伸長したクラックと、で反射される。そして、撮像ステップでは、該第二のレーザービームの反射光を撮像する。
【0015】
ここで、観察用レーザービーム照射ステップにおいては、第二のレーザービーム(反射光)は、改質層と表面との間の領域を進行する。ここで、改質層からウエーハの表面に至るクラックが形成されていない場合、第二のレーザービームは該領域をそのまま進行する。その一方で、クラックが形成されている場合、該クラックに進入した空気の層と、ウエーハと、の間に界面が生じ、両側の屈折率の差の大きな該界面で第二のレーザービームが反射される。
【0016】
そのため、撮像ステップで得られる画像に写る該反射光の形状は、クラックの有無により変化する。換言すると、画像に写る反射光の形状からウエーハの内部に形成されるクラックの有無、位置及び形状等のウエーハの加工状態を判定できる。この際、ウエーハをレーザー加工装置のチャックテーブルから移動させる必要がなく、改質層を形成した後に間を置かずに改質層からウエーハの表面に至るクラックが形成されたか否かを判定できる。
【0017】
したがって、本発明の一態様により、ウエーハが適切に加工されたか否かを容易に確認できるウエーハの加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】改質層形成ステップを模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(A)は、内部に改質層が形成されたウエーハを拡大して模式的に示す断面図であり、
図3(B)は、内部に改質層とクラックが形成されたウエーハを拡大して模式的に示す断面図である。
【
図4】観察用レーザービーム照射ステップを模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5(A)は、内部に改質層が形成されたウエーハに照射された第二のレーザービーム及びその反射光を模式的に示す断面図であり、
図5(B)は、内部に改質層とクラックが形成されたウエーハに照射された第二のレーザービーム及びその反射光を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6(A)は、ウエーハの裏面における第二のレーザービームが照射される領域を模式的に示す平面図であり、
図6(B)は、反射光が写る画像において、該反射光が写る領域の一例を模式的に示す平面図であり、
図6(C)は、反射光が写る画像において、該反射光が写る領域の他の一例を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7(A)及び
図7(B)は、ウエーハにクラックが形成されている場合における反射光が写る画像であり、
図7(C)及び
図7(D)は、ウエーハにクラックが形成されていない場合における反射光が写る画像である。
【
図8】
図8(A)、
図8(C)、及び
図8(E)は、反射光が写る画像であり、
図8(B)、
図8(D)、及び
図8(F)は、ウエーハの表面が写る光学顕微鏡写真である。
【
図9】改質層形成ステップ及び観察用レーザービーム照射ステップの変形例を模式的に示す断面図である。
【
図10】ウエーハの裏面に垂直でない進行方向から第二のレーザービームが照射されるウエーハを模式的に示す断面図である。
【
図11】ウエーハの加工方法の各ステップのフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るウエーハの加工方法により改質層が形成されるウエーハについて説明する。
図1は、ウエーハ1を模式的に示す斜視図である。
【0020】
ウエーハ1は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板等である。該ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等である。
【0021】
ウエーハ1の表面1aには、互いに交差する複数の分割予定ライン3が設定される。分割予定ライン3は、ストリートとも呼ばれる。ウエーハ1の表面1aには、分割予定ライン3により区画された各領域に、デバイス5が形成される。該デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large-Scale Integrated circuit)等である。ただし、ウエーハ1はこれに限定されない。ウエーハ1の材質、形状、構造、大きさ等に制限はなく、ウエーハ1にはデバイス5が形成されていなくてもよい。
【0022】
ウエーハ1を分割予定ライン3に沿って分割すると、それぞれデバイス5を搭載する個々のデバイスチップが形成される。ウエーハ1を分割する際は、例えば、分割予定ライン3に沿ってウエーハ1の内部にレーザービームを集光させてウエーハ1の内部に改質層を形成するとともに、該改質層からウエーハ1の表面1aに向かって厚さ方向に沿って伸長するクラックを形成する。
【0023】
このとき、ウエーハ1の加工条件が適切であり、レーザー加工装置の状態も加工に適した状態でなければ、改質層からクラックが伸長せず、または、予定していない方向にクラックが伸長する等してウエーハ1を適切に分割できない。この場合、不良品が発生するためデバイスチップの歩留まりが低下する。
【0024】
次に、本実施形態に係るウエーハ1の加工方法が実施されるレーザー加工装置2について
図2等を用いて説明する。
図2は、レーザー加工装置2を使用してウエーハ1に改質層を形成する様子を模式的に示す断面図である。レーザー加工装置2は、ウエーハ1を保持するチャックテーブル4と、チャックテーブル4に保持されたウエーハ1にレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニット6を備える。
【0025】
チャックテーブル4は、上面側に多孔質部材(不図示)を有する。多孔質部材の上面は、ウエーハ1を保持する保持面4aとなる。チャックテーブル4は、保持面4aに垂直な軸の周りに回転可能である。チャックテーブル4は、多孔質部材に接続された吸引源(不図示)を有する。
【0026】
ウエーハ1をレーザー加工装置2で加工する際には、表面1aを保持面4aに対面させて保持面4a上にウエーハ1を載せ、次に、多孔質部材を通して吸引源により生じた負圧をウエーハ1に作用させる。この場合、ウエーハ1は、裏面1b側が上方に露出した状態でチャックテーブル4に吸引保持される。ウエーハ1は、露出した裏面1b側からレーザービームが照射されてレーザー加工される。
【0027】
ウエーハ1をチャックテーブル4に保持させる際、予め、環状のフレームと、外周が該環状フレームに貼られた粘着テープと、ウエーハ1と、を一体化したフレームユニットを形成してもよい。フレームユニットを形成する際には、該環状フレームの開口中に露出した粘着テープの粘着面にウエーハ1の表面1a側を貼着させる。この場合、チャックテーブル4にフレームユニットを保持させる際には、該粘着テープを介してウエーハ1を保持面4a上に載せる。
【0028】
チャックテーブル4と、レーザービーム照射ユニット6と、は保持面4aに平行な方向に相対的に移動可能である。例えば、チャックテーブル4は、保持面4aに平行な方向に設定された加工送り方向(X軸方向)に移動可能であり、レーザービーム照射ユニット6は、保持面4aに平行かつ該加工送り方向に直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能である。
【0029】
図2には、チャックテーブル4で保持されたウエーハ1にレーザービームを照射できるレーザービーム照射ユニット6の、最も簡易的な構成例が模式的に示されている。レーザービーム照射ユニット6は、レーザーを発振するレーザー発振器8と、ミラー10と、集光レンズ12と、を備える。
【0030】
レーザー発振器8は、ウエーハ1に対して透過性を有する波長(ウエーハ1を透過する波長)の第一のレーザービーム14を出射する機能を有する。例えば、第一のレーザービーム14には、Nd:YAG等を媒体とし発振される波長1099nmのレーザーが用いられる。ただし、レーザー発振器8及び第一のレーザービーム14はこれに限定されず、ウエーハ1の材質等により選択される。
【0031】
ウエーハ1の内部に改質層を形成する際には、例えば、第一のレーザービーム14の出力は2W~3W程度とされる。ただし、第一のレーザービーム14の出力はこれに限定されず、ウエーハ1の内部に改質層を形成できる出力であればよい。レーザー発振器8から出射された第一のレーザービーム14は、ミラー10により所定の方向に反射され、集光レンズ12を経て、チャックテーブル4に保持されたウエーハ1に照射される。
【0032】
集光レンズ12は、チャックテーブル4で保持されたウエーハ1の内部の所定の高さ位置に第一のレーザービーム14を集光させる機能を有する。集光レンズ12は、例えば、高さ方向に沿って移動可能であり、集光点16の高さ位置を変えられる。第一のレーザービーム14の集光点16は、ウエーハ1の内部の所定の高さ位置に位置付けられる。
【0033】
図2に示す通り、レーザービーム照射ユニット6と、チャックテーブル4と、を加工送り方向に沿って相対的に移動させつつ、第一のレーザービーム14をウエーハ1の内部に集光させると、ウエーハ1の内部に改質層7が形成される。ここで、第一のレーザービーム14の照射条件や加工送り速度等の加工条件が適切に設定されていると、
図3(B)に示す通り、改質層7からウエーハ1の表面1aに伸長するクラック9が形成され、ウエーハ1を容易かつ適切に分割できるようになる。
【0034】
しかしながら、該加工条件等が適切でなければ、
図3(A)に示す通り、形成された改質層7からクラック9が適切に伸長せず、または、予定していない方向にクラック9が伸長する等してウエーハ1を適切に分割できないため、デバイスチップの歩留まりが低下する。ここで、加工条件等が適切であるか否か、すなわち、改質層7からウエーハ1の表面1aへ向けてクラック9が適切に進行しているか否かを確認するには、例えば、ウエーハ1の表面1aを顕微鏡等で観察することが考えられる。
【0035】
しかし、裏面1b側から第一のレーザービーム14が照射されたウエーハ1の表面1a側を観察するには、例えば、ウエーハ1をレーザー加工装置2から取り出し、ウエーハ1の上下を反転させて顕微鏡等に搬入しなければならない。そのため、クラック9の有無等の加工状態の確認に工数がかかり問題となっていた。そこで、本実施形態に係るウエーハの加工方法では、レーザー加工装置2においてウエーハ1の加工状態を確認することで、確認の工数を低減する。次に、加工状態の確認に使用される構成について説明する。
【0036】
レーザー加工装置2は、
図4に示す通り、観察用レーザービーム照射ユニット18を備える。観察用レーザービーム照射ユニット18は、改質層7が形成されたウエーハ1に観察用のレーザービームである第二のレーザービーム28を照射する機能を有する。
図4には、チャックテーブル4で保持されたウエーハ1に第二のレーザービーム28を照射できる観察用レーザービーム照射ユニット18の、最も簡易的な構成例が模式的に示されている。
【0037】
観察用レーザービーム照射ユニット18は、レーザー発振器20と、ダイクロイックミラー22と、集光レンズ24と、第二のレーザービーム28の形状を特定の形状に成形するビーム成形ユニット26と、を備える。レーザー発振器20は、ウエーハ1の内部に改質層を形成できる加工閾値を超えない出力の第二のレーザービーム28を出射できる。
【0038】
レーザー発振器20は、例えば、加工閾値を超えない0.2W程度の出力の第二のレーザービーム28を出射する。ただし、第二のレーザービーム28の出力はこれに限定されない。加工閾値はウエーハ1の材質により異なるため、第二のレーザービーム28の出力は加工されるウエーハ1の材質に応じて加工閾値を超えないように適宜決定される。
【0039】
好ましくは、第二のレーザービーム28の出力は、第一のレーザービーム14の出力の10分の1から1000分の1の間で設定される。さらに好ましくは、第二のレーザービーム28の出力は、第一のレーザービーム14の30分の1程度に設定される。
【0040】
ダイクロイックミラー22は、第二のレーザービーム28を所定の方向に反射する機能を有する。また、ダイクロイックミラー22は、後述の通り、第二のレーザービーム28がウエーハ1の表面1a側で反射された後、その反射光32がダイクロイックミラー22に到達する際に該反射光を透過する機能を有する。
【0041】
集光レンズ24は、チャックテーブル4に保持されたウエーハ1の内部または表面1aに第二のレーザービーム28を集光させる機能を有する。集光レンズ24は、例えば、高さ方向に沿って移動可能であり、集光点30の高さ位置を変えられる。
【0042】
なお、観察用レーザービーム照射ユニット18は、ウエーハ1の加工閾値を超える出力の第一のレーザービーム14をチャックテーブル4で保持されたウエーハ1に照射できてもよい。すなわち、観察用レーザービーム照射ユニット18は、
図2で説明したレーザービーム照射ユニット6として機能できてもよい。この場合、レーザービーム照射ユニット6を省略でき、レーザー加工装置2の構成が簡略化される。したがって、第一のレーザービーム14と、第二のレーザービーム28と、は光源が同一でもよい。
【0043】
その一方で、レーザー加工装置2がレーザービーム照射ユニット6と、観察用レーザービーム照射ユニット18と、の両方を有する場合、チャックテーブルをさらにもう一つ備えていると、ウエーハ1を効率的に加工できる。例えば、一つのウエーハ1に第二のレーザービーム28を照射するのと同時に他のウエーハ1に第一のレーザービーム14を照射できる。
【0044】
観察用レーザービーム照射ユニット18が備えるビーム成形ユニット26は、レーザー発振器20から出射された第二のレーザービーム28の形状を特定の形状に成形する機能を有する。ビーム成形ユニット26は、例えば、該特定の形状に対応する形状の透過窓(不図示)と、該透過窓の周囲で該第二のレーザービーム28を遮蔽する遮蔽部(不図示)と、を有する板状の部材である。該透過窓は、ビーム成形ユニット26を貫通するように形成されている。
【0045】
ビーム成形ユニット26は、透過窓の貫通方向が第二のレーザービーム28の進行方向に合致するように向きが調整されつつ観察用レーザービーム照射ユニット18に組み込まれる。第二のレーザービーム28がビーム成形ユニット26に到達するとき、一部が該透過窓を通過し、残りが遮蔽部で遮蔽されて第二のレーザービーム28が特定の形状に成形される。
【0046】
または、観察用レーザービーム照射ユニット18には、ビーム成形ユニット26としてDOE(回折光学素子)が組み込まれてもよい。この場合、該DOEは、第二のレーザービーム28を所定の形状に成形できるように設計されて製造される。さらに、観察用レーザービーム照射ユニット18には、ビーム成形ユニット26としてLCOS(Liquid crystal on silicon)素子を含む空間光変調器が組み込まれていてもよい。
【0047】
本実施形態に係るウエーハの加工方法では、第二のレーザービーム28は、ウエーハ1の裏面1bに照射される際に第二のレーザービーム28の進行方向に垂直な面(例えば裏面1b)における断面形状が改質層7を挟んで非対称となるように成形される。例えば、第二のレーザービーム28の断面形状は、改質層7を境に隔てられる二つの領域の一方側に位置する半円形とされる。
【0048】
第二のレーザービーム28は、裏面1b側からウエーハ1に照射され、ウエーハ1の内部を進行する。そして、ウエーハ1の表面1aに到達した第二のレーザービーム28は、ウエーハ1の表面1aで反射される。その後、第二のレーザービーム28の反射光32は、ウエーハ1の内部を逆方向に進行し、裏面1bからウエーハ1の外部に進行する。
【0049】
第二のレーザービーム28の反射光32は、集光レンズ24を経て平行光に変換され、ダイクロイックミラー22を透過する。そして、ダイクロイックミラー22を透過した反射光32の進路には、該反射光32を撮像する撮像ユニット34が配設されている。撮像ユニット34は、例えば、CMOSセンサ、または、CCDセンサ等のイメージセンサを備える。
【0050】
撮像ユニット34は、反射光32を撮像し、反射光32が写る画像を形成する。後述の通り、ウエーハ1の内部に形成された改質層7から表面1aにクラック9が適切に伸長しているか否かの判定は、撮像ユニット34が反射光32を撮像して形成する画像に基づいて実施される。
【0051】
次に、本実施形態に係るウエーハの加工方法について説明する。該ウエーハの加工方法は、例えば、レーザー加工装置2において実施される。該ウエーハの加工方法では、表面1aに複数の分割予定ライン3が設定されたウエーハ1の該分割予定ライン3に沿って該ウエーハ1の内部に改質層7を形成する。
図11に、該ウエーハの加工方法の各ステップのフローを説明するフローチャートを示す。以下、各ステップについて詳述する。
【0052】
まず、ウエーハ1をレーザー加工装置2に搬入し、ウエーハ1の表面1aをチャックテーブル4に対面させ、チャックテーブル4でウエーハ1を保持する保持ステップS10を実施する。
【0053】
保持ステップS10では、ウエーハ1の裏面1b側を上方に露出させるようにウエーハ1の表面1a側をチャックテーブル4の保持面4aに対面させてチャックテーブル4の上にウエーハ1を載せる。その後、チャックテーブル4の吸引源を作動させてウエーハ1に負圧を作用させると、ウエーハ1がチャックテーブル4に吸引保持される。
図2には、チャックテーブル4に吸引保持されたウエーハ1の断面図が模式的に示されている。
【0054】
なお、保持ステップS10を実施する前に、予めウエーハ1の表面1aに粘着テープ等の保護部材を貼着する保護部材配設ステップを実施してもよい。この場合、保持ステップS10では、該保護部材を介してウエーハ1がチャックテーブル4に保持される。
【0055】
次に、第一のレーザービーム14を分割予定ライン3に沿ってウエーハ1の裏面1b側から照射し、ウエーハ1の内部に改質層7を形成する改質層形成ステップS20を実施する。第一のレーザービーム14は、ウエーハ1に対して透過性を有する波長(ウエーハ1を透過できる波長)のレーザービームである。
図2は、改質層形成ステップS20を模式的に示す断面図である。
【0056】
改質層形成ステップS20では、まず、チャックテーブル4と、レーザービーム照射ユニット6と、を相対的に移動させ、レーザービーム照射ユニット6の下方にウエーハ1の一つの分割予定ライン3の一端を位置付ける。同時に、チャックテーブル4を回転させてウエーハ1の分割予定ライン3を加工送り方向に合わせる。そして、第一のレーザービーム14の集光点16をウエーハ1の内部の所定の高さ位置に位置付ける。
【0057】
その後、チャックテーブル4と、レーザービーム照射ユニット6と、を加工送り方向に相対的に移動させながら第一のレーザービーム14をウエーハ1に照射する。ウエーハ1の加工に適切な条件で第一のレーザービーム14がウエーハ1に照射されると、ウエーハ1の内部に分割予定ライン3に沿った改質層7が形成されるとともに該改質層7からウエーハ1の表面1aに伸長するクラック9(
図3(B)等参照)が形成される。
【0058】
ウエーハ1の一つの分割予定ライン3に沿って改質層7を形成した後、チャックテーブル4と、レーザービーム照射ユニット6と、を割り出し送り方向に移動させ、他の分割予定ライン3に沿って同様にウエーハ1の内部に改質層7を形成する。
【0059】
一つの方向に沿ったすべての分割予定ライン3に沿って改質層7を形成した後、チャックテーブル4を回転させ、同様に他の方向に沿った分割予定ライン3に沿って改質層7を形成する。ウエーハ1のすべての分割予定ライン3に沿って第一のレーザービーム14が照射されると、改質層形成ステップS20が完了する。なお、各分割予定ライン3では、集光点16の高さを変えて第一のレーザービーム14を2回以上照射し、互いに重なる複数の改質層7を形成してもよい。
【0060】
分割予定ライン3に沿って内部に改質層7と、改質層7から伸長するクラック9と、が形成されたウエーハ1を裏面1b側から研削してウエーハ1を薄化し改質層7等を除去すると、ウエーハ1が分割されて個々のデバイスチップが得られる。しかしながら、クラック9がウエーハ1の表面1aに適切に伸長していなければ、ウエーハ1を適切に分割できず、形成されるデバイスチップの品質が基準に満たなくなる場合や、デバイスチップに損傷が生じる場合があり、デバイスチップの歩留まりが低下する。
【0061】
図3(A)は、内部に改質層7が形成されクラック9が形成されていないウエーハ1を拡大して模式的に示す断面図である。また、
図3(B)は、内部に改質層7とともに改質層7から表面1aに達するクラック9が形成されたウエーハ1を拡大して模式的に示す断面図である。
図3(B)に示す通りクラック9が表面1aに達していると、ウエーハ1の表面1aを顕微鏡で観察したときに、クラック9が視認される。その一方で、クラック9が形成されていないと、表面1aにクラック9を視認できない。
【0062】
そこで、ウエーハ1に改質層7を形成した後、クラック9の有無を確認するために、ウエーハ1の表面1a側を顕微鏡で観察することが考えられる。ただし、顕微鏡により表面1aを観察するには、ウエーハ1をチャックテーブル4から搬出し、顕微鏡に移動させなければならない。そこで、本実施形態に係るウエーハの加工方法では、改質層7から表面1aに伸長するクラック9の有無を判定するために、観察用レーザービーム照射ステップS30と、撮像ステップS40と、判定ステップS50と、を実施する。
【0063】
次に、改質層形成ステップS20の後に実施する観察用レーザービーム照射ステップS30について説明する。観察用レーザービーム照射ステップS30では、チャックテーブル4に保持されたウエーハ1に対して観察用レーザービーム照射ユニット18から観察用レーザービームとして第二のレーザービーム28を照射する。第二のレーザービーム28は、ウエーハ1の加工閾値を超えない出力であり、かつ、ウエーハ1に対して透過性を有する波長(ウエーハ1を透過できる波長)のレーザービームである。
【0064】
図4は、観察用レーザービーム照射ステップS30を模式的に示す側面図である。内部に改質層7が形成されたウエーハ1に裏面1b側から第二のレーザービーム28を照射する際、予め集光点30をウエーハ1の内部または表面1aに位置付ける。好ましくは、集光点30は、ウエーハ1の表面1aの改質層7と重なる位置に位置付けられる。
【0065】
レーザー発振器20から出射した第二のレーザービーム28は、ビーム成形ユニット26に到達し、ビーム成形ユニット26で所定の形状に成形される。その後、第二のレーザービーム28は、ダイクロイックミラー22で反射されてチャックテーブル4に向けて進行する。そして、第二のレーザービーム28は、集光レンズ24を透過した後、ウエーハ1の裏面1bに照射されてウエーハ1の内部を進行し、集光点30に集光される。
【0066】
ウエーハ1の内部を進行する第二のレーザービーム28は、ウエーハ1の表面1aで反射される。そして、第二のレーザービーム28の反射光32は、ウエーハ1の内部を進行し、ウエーハ1の裏面1bを経て外部に進行する。その後、反射光32は、集光レンズ24と、ダイクロイックミラー22と、を透過し撮像ユニット34に達する。
【0067】
図6(A)は、ウエーハ1に照射される第二のレーザービーム28の断面形状の一例を模式的に示す平面図である。具体的には、
図6(A)には、ウエーハ1の裏面1bのうち第二のレーザービーム28が照射される領域40が示されており、領域40にはハッチングが付されている。さらに、説明の便宜のため、
図6(A)には、分割予定ライン3に沿ってウエーハ1の内部に形成された改質層7の平面位置を模式的に示す破線と、集光点30の平面位置を模式的に示す点と、が表示されている。
【0068】
図6(A)に示す通り、第二のレーザービーム28の断面形状は、例えば、半円形状である。
図6(A)に示される通り、第二のレーザービーム28は、進行方向に垂直な面に(例えば、ウエーハ1の裏面1b)おける断面形状が改質層7を挟んで非対称となるように予めビーム成形ユニット26により成形されている。
【0069】
ここで、ウエーハ1の表面1aに位置付けられた集光点30で反射された第二のレーザービーム28の反射光32の経路について詳述する。
図5(A)は、改質層7からウエーハ1の表面1aに伸長するクラック9が形成されていない場合における第二のレーザービーム28及び反射光32の進行経路を模式的に示す断面図である。
図5(B)は、改質層7から伸長するクラック9が形成されている場合における第二のレーザービーム28及び反射光32の経路を模式的に示す断面図である。
【0070】
なお、
図5(A)に示す断面図及び
図5(B)に示す断面図は、クラック9の有無が反射光32に与える影響について説明するための図面である。
図5(A)に示す断面図及び
図5(B)に示す断面図では、説明の便宜のため、ウエーハ1、改質層7、分割予定ライン3、クラック9等の相対的な位置関係、及び第二のレーザービーム28、反射光32が進行する角度等の特徴が強調されている。
【0071】
図5(A)及び
図5(B)に示される通り、ウエーハ1の裏面1b側に照射された第二のレーザービーム28は集光点30に集光される。そして、第二のレーザービーム28は、ウエーハ1の表面1aで反射され、反射光32がウエーハ1の内部を進行してウエーハ1の裏面1bに達する。
【0072】
改質層7からウエーハ1の表面1aに達するクラック9がウエーハ1の内部に形成されていなければ、第二のレーザービーム28は、改質層7の下方の領域を通過して進行する。
図5(A)に示される通り、第二のレーザービーム28(入射光)と、反射光32と、は改質層7を挟んで反転された状態となる。
【0073】
これに対して、改質層7からウエーハ1の表面1aに達するクラック9がウエーハ1の内部に形成されている場合、第二のレーザービーム28は、改質層7の下方でクラック9に達し、クラック9による影響を受ける。
【0074】
クラック9がウエーハ1の表面1aに達している場合、クラック9により僅かにウエーハ1が分断されるため、クラック9に進入する空気の層と、ウエーハ1と、の間に界面が形成される。そのため、表面1aで第二のレーザービーム28が反射されるのと同様に、クラック9に到達した第二のレーザービーム28は該クラック9で反射される。
【0075】
この場合、
図5(B)に示される通り、反射光32は、第二のレーザービーム28(入射光)が透過してきたウエーハ1の内部の領域と同様の領域を逆行してウエーハ1の表面1aに達する。
【0076】
本実施形態に係るウエーハの加工方法では、次に、観察用レーザービーム照射ステップS30でウエーハ1に照射された第二のレーザービーム28の反射光32を撮像ユニット34で撮像する撮像ステップS40を実施する。撮像ステップS40では、反射光32が撮像され、該反射光32が写る画像が形成される。
【0077】
図6(C)は、改質層7から表面1aに至るクラック9が形成されていない場合に、撮像ユニット34で撮像され形成される画像38において反射光32が写る領域42bを模式的に示す平面図である。クラック9が形成されていない場合、
図5(A)に示される通り、第二のレーザービーム28(入射光)と、反射光32と、は改質層7を挟んで反転された状態となる。
【0078】
そのため、画像38に写る第二のレーザービーム28の反射光32の形状は、第二のレーザービーム28の断面形状を反転したような形状となる。第二のレーザービーム28の断面形状が半円形状である場合、
図6(C)に示す通り、反射光32が写る領域42bは、該半円形状を反転させた形状となる。
【0079】
また、
図6(B)は、改質層7から表面1aにクラック9が伸長している場合に、撮像ユニット34で撮像され形成される画像36において反射光32が写る領域42aを模式的に示す平面図である。改質層7から表面1aにクラック9が伸長している場合、
図5(B)に示される通り、第二のレーザービーム28(入射光)と、反射光32と、の経路が重なる。そのため、第二のレーザービーム28の断面形状が半円形状である場合、
図6(B)に示す通り、反射光32が写る領域42aは、該半円形状と同様の形状となる。
【0080】
このように、撮像ステップS40で反射光32が撮像されて形成された画像36,38に写る反射光32の形状等は、クラック9の有無により変化する。そのため、画像36,38に基づくと、ウエーハ1の内部で改質層7から表面1aに至るクラック9が形成されているか否かを判定できる。
【0081】
本実施形態に係るウエーハの加工方法では、撮像ステップS40で撮像された画像36,38に基づいて、ウエーハ1の加工状態を判定する判定ステップS50を実施する。ここで、加工状態とは、例えば、第一のレーザービーム14を照射することにより加工されたウエーハ1の状態をいい、加工の結果を含む。例えば、改質層7から表面1aに至るクラック9の有無をいう。
【0082】
判定ステップS50で実施される判定の詳細について説明する。判定ステップS50では、撮像ステップS40で撮像された画像36,38に写る第二のレーザービーム28の反射光32の形状がウエーハ1に照射された第二のレーザービーム28(入射光)の断面形状が反映された形状であるか否かが判定される。端的にいえば、反射光32が入射光の断面形状と同様の形状であるか否かが判定される(S51)。ここで、第二のレーザービーム28の断面形状とは、例えば、第二のレーザービーム28のウエーハ1の裏面1bにおける被照射領域の形状をいう。
【0083】
その結果、
図6(B)に示す通り、反射光32が入射光の断面形状と同様の形状であることが確認される場合、改質層7からウエーハ1の表面1a側に向かってクラック9が伸長していると判定する(S52)。より詳細には、撮像された画像において、第二のレーザービーム28の裏面1bにおける被照射領域(
図6(A)の領域40)と同一の形状の領域42aと重なるように反射光32が写る場合に、改質層7からウエーハ1の表面1a側に向かってクラックが伸長していると判定する。
【0084】
その一方で、
図6(C)に示す通り、反射光32が入射光の断面形状を反転させた形状であることが確認される場合、改質層7からウエーハ1の表面1a側に向かってクラック9が伸長していないと判定する(S53)。詳細には、撮像された該画像において、第二のレーザービーム28の裏面1bにおける被照射領域(
図6(A)の領域40)を反転した形状の領域42bと重なるように反射光32が写る場合に、改質層7からウエーハ1の表面1a側に向かってクラック9が伸長していないと判定する。
【0085】
判定ステップS50において、改質層7から表面1aにクラック9が伸長していないと判定される場合、改質層形成ステップS20で実施されたレーザー加工が適切に実施されなかったと判断できる。この場合、改質層形成ステップS20でウエーハ1に第一のレーザービーム14を照射してウエーハ1を加工する加工条件が適切ではないか、レーザービーム照射ユニット6を含むレーザー加工装置2に何らかの異常があることが考えられる。
【0086】
判定ステップS50において、表面1aに伸長するクラック9が形成されていると判定される場合、その後、例えば、ウエーハ1を裏面1b側から研削して薄化し、ウエーハ1を分割して個々のデバイスチップを製造する。クラック9が適切に形成されていれば、ウエーハ1は適切に分割される。
【0087】
図7(A)及び
図7(B)は、ウエーハ1にクラック9が形成されている場合に撮像ユニット34で撮像される画像の一例を示す写真である。また、
図7(C)及び
図7(D)は、ウエーハ1にクラック9が形成されていない場合に撮像ユニット34で撮像される画像の一例を示す写真である。
【0088】
各写真には、第二のレーザービーム28がウエーハ1の表面1aで反射された反射光32が白色で写っている。そして、ウエーハ1にクラック9が形成されているか否かにより画像における反射光32の写る形状及び位置が変化するため、各写真に写る反射光32の形状及び位置がクラック9の有無の判定の基準となりうることが理解される。
【0089】
なお、各写真から理解される通り、反射光32が写る領域において反射光32が均一な強度で写るとは限らない。すなわち、
図6(B)に示す領域42aの全域において、または、
図6(C)に示す領域42bの全域において均一に反射光32が分布するとは限らない。光学的な現象等に起因する様々な要因により、反射光32が縞状にまたはスポット状に画像に写るが、反射光32が画像に不均一に写る場合においてもクラック9の有無の判定は十分に可能である。
【0090】
なお、ウエーハ1の内部にクラック9が形成されているか否かを判定するのみならず、クラック9の品質の評価が望まれる場合がある。本実施形態に係るウエーハの加工方法では、反射光32が写る画像からクラック9の品質が評価されてもよい。
【0091】
例えば、クラック9に蛇行が生じており、クラック9で形成される第二のレーザービームの反射面に微小の凹凸が存在すると、反射光32が写る画像が不鮮明となる場合がある。また、画像において反射光32が写ることが予定される領域の外部に一部の反射光32が写る場合がある。
【0092】
さらに、例えば、改質層7から伸長するクラック9が短く、クラック9が表面1aに到達していない場合、改質層7と表面1aの間にクラック9の非形成領域が残る場合がある。この場合、第二のレーザービーム28の一部が該非形成領域を抜けるとともに、他の一部がクラック9に反射される。すなわち、撮像ユニット34で撮像される画像には、ウエーハ1にクラック9が形成される場合に反射光32が写る領域と、クラック9が形成されない場合に反射光32が写る領域と、の両方に反射光32が写る場合がある。
【0093】
撮像ステップS40で得られる画像のさらなる例をウエーハ1の表面1a側を写した光学顕微鏡写真とともに示す。
図8(A)は、ウエーハ1の改質層7から表面1aにクラック9が形成されていない場合に撮像される反射光32が写る画像であり、
図8(B)は、同ウエーハ1の表面1a側を写した光学顕微鏡写真である。
【0094】
図8(C)は、ウエーハ1の改質層7から表面1aに不十分な質のクラック9が形成されている場合に撮像される反射光32が写る画像であり、
図8(D)は、同ウエーハ1の表面1a側を写した光学顕微鏡写真である。さらに、
図8(E)は、ウエーハ1の改質層7から表面1aに十分な質のクラック9が形成されている場合に撮像される反射光32が写る画像であり、
図8(F)は、同ウエーハ1の表面1a側を写した光学顕微鏡写真である。
【0095】
図8(F)に示す写真には、横方向に走る極めて細い線が確認できる。蛇行が少ない十分な質のクラック9がウエーハ1に形成されている場合、表面1aを光学顕微鏡で観察すると、このように極めて細い線としてクラック9が見られる。この場合に、観察用レーザービーム照射ステップS30及び撮像ステップS40を実施することで得られる画像が
図8(E)に示されている。
【0096】
これに対して、
図8(B)に示す写真には、横方向に走る線が確認できない。すなわち、表面1aに表出するクラック9がウエーハ1に形成されていないことが理解される。この場合に、観察用レーザービーム照射ステップS30及び撮像ステップS40を実施することで得られる画像が
図8(A)に示されている。
図8(A)に示される画像と、
図8(E)に示される画像と、では、反射光32が写る領域の形状及び位置が互いに反転していることが理解される。
【0097】
そして、
図8(D)に示す写真には、横方向に走る線が確認できる。
図8(D)に示す写真に写る線は、
図8(F)に写る極めて細い線よりも太い。蛇行が生じた質の低いクラック9がウエーハ1に形成されている場合、表面1aを光学顕微鏡で観察すると、このように比較的太い線としてクラック9が見られる。
【0098】
この場合に観察用レーザービーム照射ステップS30及び撮像ステップS40を実施することで得られる画像が
図8(C)に示されている。
図8(C)に示す画像では、
図8(A)に示す画像において反射光32が写る領域と、
図8(E)に示す画像において反射光32が写る領域と、の両方に反射光32が写る。
【0099】
すなわち、
図8(C)に示す画像が撮像された際、第二のレーザービーム28の一部が改質層7と表面1aの間の領域を通過しているとともに、第二のレーザービーム28の他の一部がクラック9で反射されていると考えられる。そのため、クラック9の質が不十分であることを判定できる。このように、本実施形態に係るウエーハの加工方法では、撮像ステップS40を実施することで得られる画像から、ウエーハ1の内部に形成されたクラック9の質が評価されてもよい。
【0100】
なお、撮像ステップS40で得られる画像に写る反射光32の形状及び位置は、これに限定されない。例えば、第二のレーザービーム28の集光位置や、撮像ユニット34の配設位置次第では、ウエーハ1にクラック9が形成されていない場合に、画像に写る反射光32が入射光の断面形状を反転させた形状とはならないことも考えられる。例えば、クラック9が形成されている場合に、画像に写る反射光32が入射光の断面形状を反転させた形状となることもある。
【0101】
クラック9の有無が画像に写る反射光32の位置や形状に与える影響は、系毎に異なる。そこで、改質層7から表面1aに伸びたクラック9の有無を撮像ステップS40で取得された画像から判定しようとする場合に、事前に該影響について検証されることが望ましい。
【0102】
例えば、予め該クラック9が形成されているウエーハ1と、該クラック9が形成されていないウエーハ1と、を準備し、第二のレーザービーム28をそれぞれのウエーハ1に照射し、同様に反射光32を撮像して画像を得る。そして、クラック9の有無が画像に与える影響を評価して、画像からクラック9の有無を判定するための基準を作成することが望ましい。
【0103】
以下、画像36,38に写る反射光32の形状及び位置が第二のレーザービーム28の断面形状をそのまま反映したものであるか、反転して反映したものであるか、を基準として判定が実施される場合を例に説明を続ける。しかしながら、判定の方法及び基準等はこれに限定されない。
【0104】
ここで、改質層形成ステップS20を実施する際に第一のレーザービーム14が集光される集光点16のウエーハ1の内部における高さ位置がクラック9の形成の成否に与える影響について調査した実験について説明する。
【0105】
該実験では、ウエーハ1として厚さ775μmのSiウエーハを準備し、レーザー加工装置2でレーザー加工を実施した。このとき、ウエーハ1の裏面1b側を上方に露出させた状態でウエーハ1をチャックテーブル4で保持し、第一のレーザービーム14をウエーハ1に照射してウエーハ1の内部に改質層7を形成した。本実験では、集光点16の表面1aからの距離が異なる複数の加工条件で第一のレーザービーム14を各Siウエーハに照射し、それぞれ改質層7の形成深さの異なる複数のウエーハ1を作成した。
【0106】
そして、各ウエーハ1に第二のレーザービーム28を照射して反射光32を撮像し、形成された画像からクラック9の有無を判定した。次に、各ウエーハ1を顕微鏡に運び、ウエーハ1の表面1a側を観察してクラック9の有無を確認した。そして、改質層7の表面1aからの深さD(高さ)と、画像からのクラック9の有無の判定結果と、顕微鏡によるクラック9の有無の確認結果と、の関係を表1に示す。
【0107】
【0108】
表1に示す通り、本実験では、改質層7の表面1aからの深さDを52μmから102μmまでの12通りに設定し、各ウエーハ1に改質層7を形成した。そして、第二のレーザービーム28をウエーハ1に照射し反射光32を撮像して画像を形成した。
【0109】
例えば、
図7(A)は、改質層7の表面1aからの深さDが81μmであるときに形成された画像であり、
図7(B)は、該深さDが86μmであるときに形成された画像である。また、
図7(C)は、該深さDが90μmであるときに形成された画像であり、
図7(D)は、該深さDが94μmであるときに形成された画像である。
【0110】
改質層7の表面1aからの深さDが86μm以下の8つのウエーハ1では、画像に写る反射光32の形状が第二のレーザービーム28の断面形状と同様であった。その一方で、改質層7の表面1aからの深さDが90μm以上の4つのウエーハ1では、画像に写る反射光32の形状が第二のレーザービーム28の断面形状を反転した形状となった。すなわち、改質層7の深さDが86μm以下であるとき、改質層7から表面1aに至るクラック9が形成されることが示唆される。
【0111】
そして、本実験では、ウエーハ1をレーザー加工装置2から搬出し、顕微鏡で各ウエーハ1の表面1aを観察し、クラック9の有無を確認した。そして、表1に示す通り改質層7の深さDが86μm以下の8つのウエーハ1でクラック9が形成されていることが確認され、改質層7の深さDが90μm以上の4つのウエーハ1でクラック9が形成されていないことが確認された。
【0112】
本実験では、改質層7の高さが該改質層7から表面1aに至るクラック9の形成の成否に影響があることが確認された。そして、本実験では、反射光32が写る画像によるクラック9の有無の判定の結果が顕微鏡によるクラック9の有無の確認結果と完全に対応しており、本実施形態に係るウエーハの加工方法によりウエーハ1の加工状態を確認できることが確認された。
【0113】
以上に説明する通り、本実施形態に係るウエーハの加工方法では、ウエーハ1をレーザー加工装置2のチャックテーブル4から移動させることなく、その場でクラック9の有無を容易に判定できる。すなわち、ウエーハ1の加工状態を容易に確認できる。
【0114】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、
図2では、レーザービーム照射ユニット6の最も簡易的な構成について説明した。また、
図4では、観察用レーザービーム照射ユニット18の最も簡易的な構成について説明した。そして、第一のレーザービーム14の光源と、第二のレーザービーム28の光源と、が異なる場合を中心に説明した。しかしながら、本実施形態に係るウエーハの加工方法はこれに限定されない。
【0115】
例えば、本発明の一態様に係るウエーハの加工方法における改質層形成ステップS20及び観察用レーザービーム照射ステップS30では、他の態様のレーザービーム照射ユニットが使用されてもよい。
【0116】
次に、レーザー加工装置2の変形例であるレーザー加工装置48について説明する。
図9は、レーザー加工装置48が搭載する変形例に係るレーザービーム照射ユニット52を模式的に示す側面図である。レーザー加工装置48は、上方に露出する保持面50aを備えるチャックテーブル50と、レーザービーム照射ユニット52と、を備える。チャックテーブル50は、レーザー加工装置2のチャックテーブル4と同様に構成される。
【0117】
レーザービーム照射ユニット52は、ウエーハ1を透過する波長のレーザービームをウエーハ1に照射する機能を有する。そして、レーザービーム照射ユニット52は、ウエーハ1に加工閾値を超える出力で第一のレーザービーム66を照射できるとともに、ウエーハ1に加工閾値を超えない出力で第二のレーザービーム68を照射できる。すなわち、レーザービーム照射ユニット52は、改質層形成ステップS20及び観察用レーザービーム照射ステップS30に使用できる。
【0118】
図9に示す通りレーザービーム照射ユニット52は、レーザー発振器54と、偏光板56と、空間光変調器58と、4fレンズユニット60と、ダイクロイックミラー62と、集光レンズ64と、を備える。レーザー発振器54と、ダイクロイックミラー62と、集光レンズ64と、は上述のレーザービーム照射ユニット6及び観察用レーザービーム照射ユニット18の対応する構成と同様である。また、レーザー加工装置48は、レーザービーム照射ユニット52の近傍に、撮像ユニット34と同様に構成される撮像ユニット72を備える。
【0119】
偏光板56は、空間光変調器58に入射するレーザービームの偏光方向を調整するために使用される。また、空間光変調器58は、例えば、LCOS素子である。空間光変調器58として機能するLCOS素子にレーザービームを照射すると、該レーザービームが液晶により位相変調されつつ反射され、波面形状を制御できる。すなわち、空間光変調器58を使用すると、入射されるレーザービームを所定の断面形状に成形できる。
【0120】
空間光変調器58と、ダイクロイックミラー62と、の間に設けられた4fレンズユニット60は、一対のレンズを有している。そして、一対のレンズは、互いに所定の距離だけ離間されている。また、それぞれのレンズと、空間光変調器58またはダイクロイックミラー62と、の間の距離も調整されている。すなわち、4fレンズユニット60の一対のレンズは、両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、空間光変調器58の反射面で反射されたレーザービームの像が集光レンズ64の入射面に結像される。
【0121】
改質層形成ステップS20では、レーザービーム照射ユニット52により、第一のレーザービーム66の集光点をウエーハ1の内部の所定の高さ位置に位置付け、該第一のレーザービーム66をウエーハ1の裏面1b側に照射する。これにより分割予定ライン3に沿った改質層7をウエーハ1の内部に形成する。このとき、空間光変調器58では、入射された第一のレーザービーム66を特定の形状には成形しない。または、改質層7の形成に適した形状に成形する。
【0122】
観察用レーザービーム照射ステップS30では、レーザービーム照射ユニット52により、第二のレーザービーム68の集光点をウエーハ1の表面1aまたは内部に位置付け、該第二のレーザービーム68をウエーハ1の裏面1b側に照射する。このとき、空間光変調器58は、第二のレーザービーム68がウエーハ1の裏面1bに照射されるときに進行方向に垂直な面における断面形状が改質層7を挟んで非対称となるように該第二のレーザービーム68を成形する。
【0123】
その後、第二のレーザービーム68は、ウエーハ1の内部を進行して表面1aで反射される。そして、反射光70はウエーハ1の裏面1bからウエーハ1の外部に進行し、ダイクロイックミラー62を透過して撮像ユニット72に到達する。撮像ユニット72は、反射光70を撮像して画像を作成する。
【0124】
このように、レーザービーム照射ユニット52を使用すると、第一のレーザービーム66及び第二のレーザービーム68を共通の光源で発生できるため、レーザー加工装置48は、構成が簡略化されたものとなる。
【0125】
さらに、上記の実施形態では、第二のレーザービーム28の断面形状が改質層7を挟んで非対称であり、第二のレーザービーム28がウエーハ1の裏面1bの法線方向から照射される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0126】
図10は、観察用レーザービーム照射ステップS30において、第二のレーザービーム44の進行方向がウエーハ1の裏面1bに垂直でない場合を模式的に示す断面図である。
図10に示す通り、改質層7から表面1aに至るクラック9が形成されていない場合、第二のレーザービーム44(反射光46)は改質層7と表面1aの間の領域を進行する。その一方で、改質層7から表面1aに伸びたクラック9が存在する場合に、第二のレーザービーム44(反射光46)は該クラック9により反射される。
【0127】
このように、第二のレーザービーム44の断面形状が非対称形であるか否かに関わらず、反射光46が写る画像からクラック9の有無を判定できる場合もある。この場合、観察用レーザービーム照射ステップS30でウエーハ1に照射される第二のレーザービーム44を、ウエーハ1の裏面1bに対して垂直でない方向からウエーハ1の内部に進行させる。そして、この場合においても、クラック9の有無により反射光32が写る画像に変化が生じる。そのため、反射光32が写る画像からクラック9の有無を判定できる。
【0128】
ところで、ウエーハ1に照射される第二のレーザービーム28は、球面収差の影響により集光点16に精密に集光されず、結果として撮像ステップS40で得られる画像に反射光32が鮮明に写らない場合がある。そこで、集光レンズ24に球面収差の影響を緩和する補正環が装着されてもよい。そして、この場合、例えば、ウエーハ1の厚さや材質に応じた適切な性能の補正環が選択され使用される。
【0129】
または、観察用レーザービーム照射ユニット18にLCOS素子等の空間光変調器が使用される場合、球面収差が補正された第二のレーザービーム28を形成してウエーハ1の裏面1bに照射してもよい。
【0130】
さらに、観察用レーザービーム照射ステップS30は、液浸で実施されてもよい。この場合について
図4に示す観察用レーザービーム照射ステップS30で説明すると、集光レンズ24と、ウエーハ1の裏面1bと、の間の空間を液体で満たす。該液体には、例えば、イマージョンオイルと呼ばれる液体、グリセリン、または、純水を使用できる。
【0131】
観察用レーザービーム照射ステップS30を液浸で実施する場合、対物レンズとして機能する集光レンズ24の開口数を大きくできる。そのため、撮像ユニット34で撮像される反射光32が写る画像の解像度を高めることができ、改質層7から伸長するクラック9について、より詳細に解析できる。
【0132】
また、上記実施形態では、デバイス5が表面1a側に形成されたウエーハ1に裏面1b側から第一のレーザービーム14及び第二のレーザービーム28を照射する場合について主に説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、第一のレーザービーム14及び第二のレーザービーム28をウエーハ1の表面1a側に照射してもよい。また、デバイス5が形成されていないウエーハ1をレーザー加工してウエーハ1の内部に改質層7を形成してもよい。
【0133】
さらに、上記実施形態では、第二のレーザービーム28の断面形状が半円形状である場合を例に説明したが、該断面形状はこれに限定されない。例えば、該断面形状は三角形や四角形、その他の多角形でもよい。すなわち、改質層7を挟んでパワーの分布が非対称であればよい。例えば、該断面形状が半円の半分の形状であると、反射光32が写る画像からクラック9の伸長方向に関する情報が得られる場合がある。
【0134】
上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0135】
1 ウエーハ
1a 表面
1b 裏面
3 分割予定ライン
5 デバイス
7 改質層
9 クラック
2,48 レーザー加工装置
4,50 チャックテーブル
4a,50a 保持面
6,52 レーザービーム照射ユニット
8,20,54 レーザー発振器
10 ミラー
22,62 ダイクロイックミラー
12,24,64 集光レンズ
14,66 第一のレーザービーム
16,30 集光点
18 観察用レーザービーム照射ユニット
26 ビーム成形ユニット
28,68 第二のレーザービーム
32,70 反射光
34,72 撮像ユニット
36,38 画像
40 領域
42a,42b 領域
56 偏光板
58 空間光変調器
60 4fレンズユニット