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特許7460288カルバモイルオキシム化合物並びに該化合物を含有する重合開始剤及び重合性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】カルバモイルオキシム化合物並びに該化合物を含有する重合開始剤及び重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/60 20060101AFI20240326BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20240326BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20240326BHJP
   C07D 295/215 20060101ALN20240326BHJP
   C07D 211/16 20060101ALN20240326BHJP
   C07D 233/60 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
C07C271/60 CSP
G03F7/038 503
G03F7/031
C07D295/215
C07D211/16
C07D233/60 103
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020535773
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2019030785
(87)【国際公開番号】W WO2020031986
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018148806
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有吉 智幸
(72)【発明者】
【氏名】大槻 竜也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光裕
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0008811(KR,A)
【文献】特表2015-523318(JP,A)
【文献】特表2018-506532(JP,A)
【文献】国際公開第13/141014(WO,A1)
【文献】WALTON,J.C.,Functionalised oximes: emergent precursors for carbon-, nitrogen- and oxygen-centred radicals,Molecules,2016年,Vol.21, No.1,p.63/1-63/23
【文献】角岡正弘 他,光酸・塩基発生剤の開発とその新規フォトポリマー設計における活用,日本写真学会誌,2003年,66巻4号,p.355-366
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
G03F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物。
【化1】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ニトロ基、-OR11、-COOR11、-CO-R11、-SR11、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環を含有する基又は下記式(II)で表される基を表し、
11は、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は炭素原子数2~20の複素環を含有する基で置換される場合があり、
、R、R 及び のうち1つ以上が下記式(II)で表される基であり、R、R、R及びR10のうち1つ以上が下記式(II)で表される基である。
【化2】
式中、R21は、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
は、-NR2223で表される基であり、
22及びR23は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
22とR23が、互いに連結して、窒素原子及び炭素原子からなる環、又は酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる環であり、
21、R22及びR23で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は炭素原子数2~20の複素環を含有する基で置換される場合があり、
nは、0又は1を表し、*は結合手を表す。
【請求項2】
22とR23が、互いに連結して、窒素原子及び炭素原子からなる環を形成している、請求項1に記載のカルバモイルオキシム化合物。
【請求項3】
22とR23が、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である、請求項1に記載のカルバモイルオキシム化合物。
【請求項4】
上記式(I)中のR 、R、R及びR10のうちの少なくとも1つが、水素原子、ニトロ基又は炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である、請求項1に記載のカルバモイルオキシム化合物。
【請求項5】
上記式(I)中のR 、R、R及びR10のうちの少なくとも1つが、ニトロ基又は炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である、請求項1に記載のカルバモイルオキシム化合物。
【請求項6】
上記式(I)中のR、R、R及びRのうちの1つが上記式(II)で表される基であり、且つ、R、R、R及びR10のうちの1つが、ニトロ基又は炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である、請求項に記載のカルバモイルオキシム化合物。
【請求項7】
上記式(I)中のRがニトロ基又は炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である、請求項又はに記載のカルバモイルオキシム化合物。
【請求項8】
上記式(I)中のRが上記式(II)で表される基である、請求項3~7の何れか一項に記載のカルバモイルオキシム化合物。
【請求項9】
請求項1~の何れか一項に記載のカルバモイルオキシム化合物からなる潜在性塩基化合物。
【請求項10】
請求項1~の何れか一項に記載のカルバモイルオキシム化合物を少なくとも1種含む重合開始剤。
【請求項11】
請求項10に記載の重合開始剤(A)及び重合性化合物(B)を含有する重合性組成物。
【請求項12】
上記重合性化合物(B)が、エポキシ樹脂若しくはエチレン性不飽和化合物、又はエポキシ樹脂とフェノール樹脂とを含む混合物、エポキシ樹脂とチオール化合物とを含む混合物、若しくはエチレン性不飽和化合物とチオール化合物とを含む混合物である請求項11に記載の重合性組成物。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の重合性組成物の硬化物。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の重合性組成物にエネルギー線を照射する工程を有する硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性組成物に用いられる重合開始剤等として有用な化合物、重合性化合物に該化合物を含有させてなる重合性組成物、及び該重合性組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感光性樹脂組成物等の重合性組成物は、感光性樹脂等の重合性化合物に光重合開始剤を加えたものであり、エネルギー線(光)照射により重合硬化、又は現像させることができるため、光硬化性インキ、感光性印刷版、各種フォトレジスト、光硬化性接着剤等に用いられている。
【0003】
光重合開始剤は、エネルギー線(光)照射により発生する活性種の違いで、光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤に分けられる。光ラジカル発生剤は、硬化速度が速く、硬化後に活性種が残存しない等の長所がある一方、酸素による硬化阻害が起こるため薄膜の硬化においては酸素を遮断する層等を設けなければならないという短所がある。光酸発生剤は、酸素による阻害を受けないという長所がある一方、活性種の酸が残存することで金属基板を腐食させたり、硬化後の樹脂を変性させたりする等の短所がある。光塩基発生剤は、前記の酸素による硬化阻害及び残存活性種による腐食といった問題を生じにくいため注目されているが、概して光酸発生剤と比較すると低感度(低硬化性)という問題があった。光塩基発生剤は、例えば特許文献1~5等により開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US6551761(B1)
【文献】US2011/233048(A1)
【文献】国際公開WO2010/064632号
【文献】US2015/064623(A1)
【文献】特開2013-163670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光塩基発生剤は、感度(塩基発生能)及び溶剤への溶解性の点で十分なものではない。
従って、本発明の目的は、溶剤への溶解性が高く、満足できる感度(塩基発生能)を有する化合物、該化合物を重合開始剤として含有してなる重合性組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行い、特定の構造を有する化合物が重合開始剤として、高い感度(塩基発生能)を有することを知見した。
【0007】
本発明は、下記式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
【化1】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ニトロ基、-OR11、-COOR11、-CO-R11、-SR11、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環を含有する基又は下記式(II)で表される基を表し、
11は、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は炭素原子数2~20の複素環を含有する基で置換される場合があり、
、R、R、R、R、R、R及びR10のうち一つ以上が下記式(II)で表される基である。
【化2】
式中、R21は、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
は、-NR2223、下記式(a)又は下記式(b)で表される基であり、
22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
22とR23が、互いに連結して、窒素原子及び炭素原子からなる環、又は酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる環であり、
21、R22及びR23で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は炭素原子数2~20の複素環を含有する基で置換される場合があり、
nは、0又は1を表し、*は結合手を表す。
【化3】
式中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39及びR40は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
31とR32、R33とR34、R35とR36、R37とR38及びR39とR40が、互いに連結して、窒素原子及び炭素原子からなる環、又は酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる環を形成する場合があり、
31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39及びR40で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は炭素原子数2~20の複素環を含有する基で置換される場合があり、
*は結合手を表す。
【0009】
また、本発明は、上記式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物を少なくとも1種含む潜在性塩基化合物を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物を少なくとも1種含む重合開始剤を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記重合開始剤(A)及び重合性化合物(B)を含有する重合性組成物、及び、該重合性組成物から得られる硬化物を提供する。
【0012】
また、本発明は、上記重合性組成物にエネルギー線を照射する工程を有する硬化物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカルバモイルオキシム化合物は、重合開始剤として用いた場合、従来の光塩基発生剤よりも効率的に塩基を発生させることができるため、低露光量においても重合性化合物を硬化させることができる。更に本発明のカルバモイルオキシム化合物は、溶剤への溶解性が高く、取り扱いが容易である。
また、本発明の重合性組成物は、低露光量において高い硬化性を示す。
【0014】
以下、本発明について、その好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明のカルバモイルオキシム化合物は、上記式(I)で表されるものである。式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物には、オキシムの二重結合による幾何異性体が存在するが、これらを区別するものではない。
即ち、本明細書において、上記式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物、並びに後述する該化合物の好ましい形態である化合物及び例示化合物は両方の混合物又はどちらか一方を表すものであり、異性体を示した構造に限定するものではない。以下、式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物を単に、「式(I)で表される化合物」又は「本発明の化合物」ともいう。
なお、式(I)中のR~R11、R21~R23及びR31~R40で表される基が、炭素原子を含む基により中断又は置換されている場合、それらの炭素原子数を含めた数が規定の炭素原子数となる。
【0015】
上記式(I)中のR~R11及びR21~R23及びR31~R40で表される炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基としては、無置換のものでは例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル等のアルキル基のほか、これらアルキル基の炭素-炭素一重結合の1つ以上を炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合に変更してなる不飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられる。これらの脂肪族炭化水素基は、基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CS-、-S-、-SO-、-SO-、-NR-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-COO-、-OCO-NR-又は-SiRR’-で置換される場合がある。但し、これら2価の基は隣り合わないものとする。
R及びR’は、水素原子又は脂肪族炭化水素基であり、R及びR’で表される脂肪族炭化水素基としては、例えばR~R11、R21~R23及びR31~R40で表される炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0016】
上記式(I)中のR~R11、R21~R23及びR31~R40で表される炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基としては、無置換のものでは例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル、ピレニル及びビフェニル(以下まとめて「フェニル等」ともいう)、並びに脂肪族炭化水素基により置換されたフェニル等が挙げられ、これらの芳香族炭化水素基中のアルキル基部分又は芳香族環と脂肪族炭化水素基との結合部は、-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CS-、-S-、-SO-、-SO-、-NR-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-COO-、-OCO-NR-又は-SiRR’-で中断されていてもよい。但し、これら中断する2価の基は隣り合わないものとする。
上記フェニル等を置換する脂肪族炭化水素基としては、上記のR~R11、R21~R23及びR31~R40で表される炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0017】
~R11、R21~R23及びR31~R40で表される炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基及びR~R11、R21~R23及びR31~R40で表される炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有している場合、当該置換基を有している上記脂肪族炭化水素基及び上記芳香族炭化水素基としては、上記で説明した無置換体の水素原子がハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は炭素原子数2~20の複素環を含有する基で置換されているものが挙げられる。当該炭素原子数2~20の複素環を含有する基としては、後述するR~R10で表される無置換の炭素原子数2~20の複素環を含有する基の例と同様のものが挙げられる。
【0018】
~R11で表されるハロゲン原子並びにR~R11、R21~R23及びR31~R40で表される基中の水素原子が置換される場合のあるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子が挙げられる。
【0019】
本発明において、「窒素原子及び炭素原子からなる環」とは、環の骨格を形成する原子が窒素原子及び炭素原子のみからなる環を意味する。また、「酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる環」とは、環の骨格を形成する原子が酸素原子、窒素原子及び炭素原子のみからなる環を意味する。
22とR23、R31とR32、R33とR34、R35とR36、R37とR38及びR39とR40が互いに連結して形成する窒素原子及び炭素原子からなる環としては、結合している窒素原子を含めた基として、ピロール環、ピロリジン環、イミダゾール環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、ピラゾール環、ピラゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等(以下まとめて「ピロール環等」ともいう)のほか、これらピロール環等が脂肪族炭化水素基で置換された基が挙げられる。この脂肪族炭化水素基としては、上記のR~R11、R21~R23及びR31~R40で表される炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
これら窒素原子及び炭素原子からなる環における水素原子の1又は2以上は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は炭素原子数2~20の複素環を含有する基により置換されていてもよい。当該炭素原子数2~20の複素環を含有する基としては、後述するR~R10で表される無置換の炭素原子数2~20の複素環を含有する基の例と同様のものが挙げられる。
【0020】
22とR23、R31とR32、R33とR34、R35とR36、R37とR38及びR39とR40が互いに連結して形成する酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる環としては、結合している窒素原子を含めた基として、モルホリン環、オキサゾール環、オキサゾリン環、オキサジアゾール環等(以下まとめて「モルホリン環等」ともいう)のほか、これらモルホリン環等が脂肪族炭化水素基で置換された基も挙げられる。この脂肪族炭化水素基としては、上記のR~R11、R21~R23及びR31~R40で表される炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
これら酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる環等における水素原子の1又は2以上は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は炭素原子数2~20の複素環を含有する基により置換されていてもよい。
上記の炭素原子数2~20の複素環を含有する基としては、後述するR~R10で表される無置換の炭素原子数2~20の複素環を含有する基の例と同様のものが挙げられる。
【0021】
上記式(I)中の、R~R10で表される炭素原子数2~20の複素環を含有する基としては、無置換のものとして、テトラヒドロフラン基、ジオキソラニル基、テトラヒドロピラニル基、モルホリルフラン基、チオフェン基、メチルチオフェン基、ヘキシルチオフェン基、ベンゾチオフェン基、ピロール基、ピロリジン基、イミダゾール基、イミダゾリジン基、イミダゾリン基、ピラゾール基、ピラゾリジン基、ピペリジン基及びピペラジン基、並びに脂肪族炭化水素基で置換されたテトラヒドロフラン基、ジオキソラニル基、テトラヒドロピラニル基、モルホリルフラン基、チオフェン基、メチルチオフェン基、ヘキシルチオフェン基、ベンゾチオフェン基、ピロール基、ピロリジン基、イミダゾール基、イミダゾリジン基、ピラゾール基、ピラゾリジン基、ピペリジン基及びピペラジン基等(以下まとめて「テトラヒドロフラン基等」ともいう)、及び、これらテトラヒドロフラン基等が脂肪族炭化水素基で置換された基が挙げられる。この脂肪族炭化水素基としては、上記のR~R11、R21~R23及びR31~R40で表される炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
これらの複素環を含有する基中のアルキル基部分及び複素環と脂肪族炭化水素基との結合部は、-O-、-COO-、-OCO-、-CO--CS-、-S-、-SO-、-SO-、-NR-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-COO-、-OCO-NR-又は-SiRR’-で中断されていてもよい。但し、これら中断する2価の基は隣り合わないものとする。なお、本明細書において、「炭素原子数2~20の複素環を含有する基」における「2~20」は、「複素環」ではなく「複素環を含有する基」の炭素原子数を規定する。
【0022】
~R10で表される炭素原子数2~20の複素環を含有する基が置換基を有している場合、当該置換基を有している上記複素環を含有する基としては、上記で説明した無置換の複素環を含有する基の水素原子が、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基又は炭素原子数2~20の複素環を含有する基で置換されているものが挙げられる。
【0023】
上記式(I)で表される化合物の中でも、該式(I)中のXが-NR2223を表し、
22及びR23が、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
22が水素原子であり、R23が炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
22とR23が、互いに連結して、窒素原子及び炭素原子からなる環、又は酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる環を形成している化合物は、重合開始剤として用いた場合、感度に優れることから好ましい。
【0024】
特に、上記式(I)中のXが-NR2223を表し、
22とR23が、互いに連結して、窒素原子及び炭素原子からなる環を形成している化合物は、発生する塩基種の反応性が高いため重合開始剤として使用した場合、感度に優れることから好ましい。とりわけ、窒素原子及び炭素原子からなる環が5員環又は6員環であり、環に含まれる窒素原子数が1又は2である化合物が好ましい。
また、上記式(I)中のXが-NR2223を表し、
22とR23が、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である化合物は、溶解性に優れるため好ましい、該炭化水素基は、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましい。
また、上記式(I)中のXが-NR2223を表し、
22が水素原子であり、R23が炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基である化合物は、安定性に優れるため好ましい、該芳香族炭化水素基の炭素原子数は、炭素原子数1~10であることが好ましい。該芳香族炭化水素基がフェニル基であることが好ましい。
【0025】
上記式(I)中のR、R、R、R、R、R、R及びR10のうち2つ以上が上記式(II)で表される基である化合物は、重合開始剤として用いた場合、感度に優れ、得られる硬化物の残膜率が高いことから好ましく、R、R、R、R、R、R、R及びR10のうち2~3つが上記式(II)で表される基である化合物が、特に好ましい。
【0026】
中でも、上記式(I)中のR、R、R及びRの少なくとも1つが上記式(II)で表される基であり、R、R、R及びR10の少なくとも1つが上記式(II)で表される基である化合物が化合物の安定性が高いことから好ましい。とりわけ、上記式(I)中のR又はRが、上記式(II)で表される基である化合物は、化合物の安定性が高く、生産性に優れることから好ましく、上記式(I)中のR及びRが、上記式(II)で表される基である化合物が最も好ましい。
【0027】
上記式(I)中のR、R、R、R、R、R、R及びR10のうち2つ以上が上記式(II)で表される基である場合、当該2以上の上記式(II)で表される基において、2つ以上存在するXは同一であってもよく異なっていてもよい。前記の場合、2つ以上存在するR21は同一であってもよく異なっていてもよい。また2以上の上記式(II)で表される基におけるnは同一であってもよく異なっていてもよい。上記式(I)中のR、R、R、R、R、R、R及びR10のうち2つ以上が上記式(II)で表される基である場合に、それら複数の式(II)で表される基におけるX同士、R21同士及びn同士がそれぞれ同一であると生産性の点で好ましい。
【0028】
更に、上記式(I)中のR、R、R及びRのうち、1つが上記式(II)で表される基であり、且つ、その他の3つがそれぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である化合物は、感度が高い上に製造しやすい点で好ましく、R及びRのうち、1つが上記式(II)で表される基であり、且つ、その他並びにR及びRがそれぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である化合物は、特に好ましい。
同様に、上記式(I)中のR~R10のうち、1つが上記式(II)で表される基であり、且つ、その他が水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である化合物は、感度が高い上に製造しやすい点で好ましい。
【0029】
上記式(I)中のR、R、R及びRのうち、1つが上記式(II)で表される基であり、且つ、R、R、R及びR10のうちの少なくとも1つが、水素原子、ニトロ基又は炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基、好ましくはニトロ基又は炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である化合物、特にR、R、R及びR10のうちの1つがニトロ基又は炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である化合物は、感度が高い上に製造しやすい点で好ましい。該芳香族炭化水素基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよいが、該芳香族炭化水素基はベンゾイル基が好ましい。
【0030】
上記式(I)中のR又はRが、ニトロ基、トリフルオロメチル基又はベンゾイル基である化合物は、感度に優れることから好ましい。
【0031】
及びRで表される基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが、製造上容易である点で好ましい。
【0032】
上記式(I)中のR及びRが、炭素原子数2以上の脂肪族炭化水素基である化合物は、溶剤への溶解性に優れることから好ましく、炭素原子数2~10の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
上記式(I)中のR及びRとしては、脂肪族炭化水素基の中でも、溶剤への溶解性、感度及び透明性に優れることからアルキル基が好ましい。
【0033】
上記式(I)中のR及びRが、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である化合物も、溶剤への溶解性に優れることから好ましい。該脂肪族炭化水素基としては、溶剤への溶解性、感度及び透明性に優れることからアルキル基が好ましい。
【0034】
21が、炭素原子数2以上の脂肪族炭化水素基である化合物は、溶剤への溶解性に優れることから好ましく、感度に優れることから、炭素原子数2~10の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
21としては、脂肪族炭化水素基の中でも、溶剤への溶解性、感度及び透明性に優れることからアルキル基が好ましい。
【0035】
式(II)中のnが0である化合物は、重合開始剤として用いた場合、熱に対する安定性が高いため好ましい。
【0036】
式(II)中のnが1である化合物は、重合開始剤として用いた場合、低露光量で硬化するため好ましい。
【0037】
上記式(I)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物No.1~No.54が挙げられる。但し、本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
【0038】
【化4】
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
【化7】
【0042】
【化8】
【0043】
【化9】
【0044】
【化10】
【0045】


【化10A】
【0046】
上記式(I)で表される本発明のカルバモイルオキシム化合物は、特に限定されないが、n=0の場合、下記反応式1に従って、以下の方法により製造する方法が挙げられる。
即ち、公知であり、市販されているフルオレン化合物と酸クロリドとを塩化アルミニウム等のルイス酸の存在下で反応させることによりケトン化合物Aを得、ケトン化合物Aと塩酸ヒドロキシルアミンとをピリジン等の塩基の存在下に反応させることにより、オキシム化合物Aを得る。続いて、オキシム化合物Aに、クロロギ酸4-ニトロフェニルを反応させ、次いで該当するアミンを反応させることにより、上記式(I)で表されn=0である本発明のカルバモイルオキシム化合物Aを得る。
【0047】
反応式1
【化11】
(式中、R~R12、R21~R23は、上記式(I)と同じである。)
【0048】
n=1の場合は、下記反応式2に従い、公知であり、市販されているフルオレン化合物と酸クロリドとを塩化アルミニウム等のルイス酸の存在下で反応させることによりケトン化合物Bを得、酸性条件下でケトン体Bに亜硝酸イソブチルを反応させてオキシム化合物Bを得る。続いて、オキシム化合物Bに、クロロギ酸4-ニトロフェニルを反応させ、次いで該当するアミンを反応させることにより、上記式(I)で表されn=1である本発明のカルバモイルオキシム化合物Bを得る。
【0049】
反応式2
【化12】
(式中、R1~R12、R21~R23は、上記式(I)と同じである。)
【0050】
なお、ケトン体は、公知のものを使用してもよい。
また上記反応式1及び反応式2は何れもXが-NR2223の場合を示しているが、使用するアミンを変更することで、Xが式(a)又は式(b)で表される基である化合物も製造できる。
上記反応式1及び反応式2は何れもRが式(II)で表される基である場合を示しているが、フルオレンにおいて別の位置に式(II)で表される基を導入する場合には、フルオレン環形成時にケトン基を導入する方法で得られる。
更に、例えば、R、R、R、R、R、R、R及びR10のうち2つ以上が式(II)で表される基である化合物は、カルボニル基が、R、R、R、R、R、R、R及びR10の2つ以上に結合しているジケトン体をケトン体として用いることで上記反応式1及び2と同様の方法にて製造できる。
オキシム化合物Aは、特許4223071号報に記載の方法でも製造できる。
【0051】
本発明の化合物は、感光性樹脂の硬化性に優れる点、エネルギー線に対する感度が高い点から、以下で説明する光塩基発生剤である重合開始剤として好適に用いることができるほか、化学増幅型レジスト等に用いることができる。
【0052】
プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテートへの25℃での溶解性が15%以上である化合物は、本発明の重合性組成物を作製する際に、多くの重合性化合物を選択できることから好ましい。なお、溶解性は後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
【0053】
次に、本発明の潜在性塩基化合物、重合開始剤及び本発明の重合性組成物について説明する。なお、特に説明しない点については、本発明の化合物における説明が適宜適用される。
【0054】
<潜在性塩基化合物>
上記式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物は潜在性塩基化合物である。潜在性塩基化合物とは、紫外線等の光照射又は加熱によって塩基を発生する化合物であって、重合開始剤、塩基触媒、pH調整剤として使用することができる。操作性に優れることから光を照射することによって塩基を発生する光潜在性塩基化合物がより好ましい。
【0055】
<重合開始剤(A)>
本発明の重合開始剤及び本発明の重合性組成物において、重合開始剤(A)は上記式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物を少なくとも1種含んでいるものである。本発明のカルバモイル化合物は、光の照射又は加熱によって効率的に塩基及びラジカルを発生することから、塩基発生剤及びラジカル重合開始剤として有用であり、特に塩基発生剤として有用である。
【0056】
上記塩基発生剤及びラジカル重合開始剤の中でも、操作性に優れることから、光塩基発生剤及び光ラジカル重合開始剤として有用であり、特に光塩基発生剤として有用である。
【0057】
上記重合開始剤中における上記式(I)で表される化合物の含有量は、好ましくは1~100質量%、より好ましくは50~100質量%である。
本発明の重合性組成物において、重合開始剤(A)の含有量は、重合性化合物(B)100質量部に対して、好ましくは1~20質量部、より好ましくは1~10質量部である。重合開始剤(A)の含有量が、1質量部以上であることで、感度不足による硬化不良を防止しやすいため好ましく、20質量部以下とすることで、光照射時又は加熱時の揮発物を抑制できるため好ましい。
【0058】
<重合性化合物(B)>
本発明で用いられる重合性化合物(B)としては、アニオン重合性官能基を有する化合物、塩基が触媒として作用する反応又は塩基が付加する反応により硬化する化合物、及びラジカル重合性化合物が挙げられ、紫外線等のエネルギー線を照射することにより重合して硬化する感光性樹脂又は硬化温度が低温化する硬化樹脂であることが好ましい。上記アニオン重合性官能基とは、紫外線等のエネルギー線によって光塩基発生剤から発生する塩基により重合しうる官能基を意味し、例えば、エポキシ基、エピスルフィド基、環状モノマー(σ-バレロラクトン、ε-カプロラクタム)、マロン酸エステル等が挙げられる。塩基が触媒として作用する反応又は塩基が付加する反応としては、イソシアネートとアルコールによるウレタン結合形成反応、エポキシ樹脂と水酸基を含有する化合物の付加反応、エポキシ樹脂とカルボン酸基を含有する化合物の付加反応、エポキシ樹脂とチオール化合物の付加反応、(メタ)アクリル基のマイケル付加反応、ポリアミック酸の脱水縮合反応、アルコキシシランの加水分解・重縮合反応等が挙げられる。
【0059】
アニオン重合性官能基を有する化合物としては例えば、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、エピスルフィド樹脂、環状アミド(ラクタム系化合物)、環状エステル(ラクトン系化合物)、環状カーボネート系化合物、マロン酸エステル等が挙げられる。塩基が触媒として作用する反応又は塩基が付加する反応により硬化する化合物としては、例えば、ポリアミド樹脂(脱水環化によるポリイミド化反応)、エポキシ・水酸基系(開環付加反応)、エポキシ・カルボン酸系(開環付加反応)、エポキシ・チオール系(開環付加反応)、エポキシ・酸無水物系(開環重縮合)、シアネートエステル(環化反応)、シアネートエステル・エポキシ系(環化反応)、シアネートエステル(環化反応)、シアネートエステル・マレイミド系(架橋共重合)、オキセタン・水酸基系(開環付加反応)、オキセタン・カルボン酸系(開環付加反応)、オキセタン・チオール系(開環付加反応)、オキセタン・酸無水物系(開環重縮合)、エピスルフィド・水酸基系(開環付加反応)、エピスルフィド・カルボン酸系(開環付加反応)、エピスルフィド・チオール系(開環付加反応)、エピスルフィド・酸無水物系(開環重縮合)アクリル・チオール系(マイケル付加反応)、メタクリル・チオール系(マイケル付加反応)、アクリル・アミン系(マイケル付加反応)、メタクリル・アミン系(マイケル付加反応)、カルボン酸・水酸基系(ポリエステル化反応)、カルボン酸・アミン系(ポリアミド化反応)、イソシアネート・水酸基系(ポリウレタン化反応)、アルコキシシラン系(加水分解・重縮合)等が挙げられる。ラジカルにより重合する化合物としては、エチレン性不飽和化合物が挙げられる。反応性が高いことからラジカル重合する化合物を使用することが好ましい。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましい組合せとして、速やかに反応が進行することや接着性が良好であるという点から、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の組合せ、低温硬化性に優れることから、エポキシ樹脂とチオール化合物の組合せ、反応性が高いことからエチレン性不飽和化合物とチオール化合物の組合せが挙げられる。
【0060】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類、及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化アクリロニトリル-ブタジエン共重合物、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの或いは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。
上記エポキシ樹脂の中では、硬化性に優れる点から、グリシジル基を有するものが好ましく、2官能以上のグリシジル基を有するものがより好ましい。
【0061】
上記フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するフェノール樹脂が好ましく、一般に公知のものを用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、重合性不飽和炭化水素基含有フェノール樹脂及び、水酸基含有シリコーン樹脂類が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのフェノール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0062】
上記チオール化合物は特に制限されず、すべてのチオール化合物を包含するが、1分子中に2個以上のチオール基を有するものが好ましい。
チオール化合物の好ましい具体例としては、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン、ペンタエリスリチオール、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、及びトリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネートであり、より好ましくは、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン、ペンタエリスリチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ビス(2-メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、及びペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートが挙げられる。
特に好ましい化合物は、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン、ペンタエリスリチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、及び4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンである。
チオール化合物は1種を単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0063】
上記ポリアミド樹脂としては、酸二無水物としてはエチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3-ビフェニルテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジアミンとしては、(o-,m-若しくはp-)フェニレンジアミン、(3,3’-若しくは4,4’-)ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンゾフェノンノン、(3,3’-若しくは4,4’-)ジアミノジフェニルメタン等を原料とする樹脂が挙げられる。
【0064】
上記ポリウレタン樹脂としては、ジイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオール(多官能アルコール)とを原料とする樹脂等が挙げられる。
また、上記ナイロン樹脂としては、ε-カプロラクタム、ラウリルラクタム等の環状モノマーを原料とした樹脂等が挙げられる。
また、上記ポリエステル樹脂としては、δ-バレロラクトン、β―プロピオラクトン等の環状モノマーを原料とした樹脂等が挙げられる。
【0065】
上記エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等の不飽和脂肪族炭化水素;(メタ)アクリル酸、α―クロルアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、桂皮酸、ソルビン酸、メサコン酸、コハク酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2-(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレート或いは1個のカルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート等の不飽和多塩基酸;(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、下記アクリル化合物No.1~No.4、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリ(エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリ[(メタ)アクリロイルエチル]イソシアヌレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の不飽和一塩基酸及び多価アルコール又は多価フェノールのエステル;(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウム等の不飽和多塩基酸の金属塩;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸-無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、無水メチルハイミック酸等の不飽和多塩基酸の酸無水物;(メタ)アクリルアミド、メチレンビス-(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、α-クロロアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和一塩基酸及び多価アミンのアミド;アクロレイン等の不飽和アルデヒド;(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン、シアン化アリル等の不飽和ニトリル;スチレン、4-メチルスチレン、4-エチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニル安息香酸、ビニルフェノール、ビニルスルホン酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルベンジルグリシジルエーテル等の不飽和芳香族化合物;メチルビニルケトン等の不飽和ケトン;ビニルアミン、アリルアミン、N-ビニルピロリドン、ビニルピペリジン等の不飽和アミン化合物;アリルアルコール、クロチルアルコール等のビニルアルコール;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のビニルエーテル;マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類;インデン、1-メチルインデン等のインデン類;1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン類;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ジビニルスクシナート、ジアリルフタラート、トリアリルホスファート、トリアリルイソシアヌラート、ビニルチオエーテル、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、水酸基含有ビニルモノマー及びポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物、水酸基含有ビニルモノマー及びポリエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0066】
【化12A】
【0067】
【化12B】
【0068】
【化12C】
【0069】
【化12D】
【0070】
上記エチレン性不飽和化合物としては、市販品を用いることもでき、例えば、カヤラッドDPHA、DPEA-12、PEG400DA、THE-330、RP-1040、NPGDA、PET30、R-684(以上、日本化薬製);アロニックスM-215、M-350(以上、東亞合成製);NKエステルA-DPH、A-TMPT、A-DCP、A-HD-N、TMPT、DCP、NPG及びHD-N(以上、新中村化学工業製);SPC-1000、SPC-3000(以上、昭和電工製);等が挙げられる。
【0071】
重合性組成物(B)の含有量は、その使用目的に応じて適した量であればよいが、硬化不良を防ぐため、重合性組成物中の固形分(溶剤以外の全成分)の内、50質量部以上となるように含有させることが好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上が特に好ましい。
【0072】
<添加剤>
本発明の重合性組成物には、任意成分として、無機化合物、色材、潜在性エポキシ硬化剤、連鎖移動剤、増感剤、溶剤等の添加剤を用いることができる。
【0073】
上記無機化合物としては、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、シリカ、アルミナ等の金属酸化物;層状粘土鉱物、ミロリブルー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、コバルト系、マンガン系、ガラス粉末(特にガラスフリット)、マイカ、タルク、カオリン、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、水酸化アルミニウム、白金、金、銀、銅等が挙げられる。これらの無機化合物は、例えば、充填剤、反射防止剤、導電材、安定剤、難燃剤、機械的強度向上剤、特殊波長吸収剤、発インク剤等として用いられる。
【0074】
上記色材としては、顔料、染料、天然色素等が挙げられる。これらの色材は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0075】
上記顔料としては、例えば、ニトロソ化合物;ニトロ化合物;アゾ化合物;ジアゾ化合物;キサンテン化合物;キノリン化合物;アントラキノン化合物;クマリン化合物;フタロシアニン化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;キナクリドン化合物;アンタンスロン化合物;ペリノン化合物;ペリレン化合物;ジケトピロロピロール化合物;チオインジゴ化合物;ジオキサジン化合物;トリフェニルメタン化合物;キノフタロン化合物;ナフタレンテトラカルボン酸;アゾ染料、シアニン染料の金属錯体化合物;レーキ顔料;ファーネス法、チャンネル法又はサーマル法によって得られるカーボンブラック、或いはアセチレンブラック、ケッチェンブラック又はランプブラック等のカーボンブラック;上記カーボンブラックをエポキシ樹脂で調整又は被覆したもの、上記カーボンブラックを予め溶媒中で樹脂で分散処理し、20~200mg/gの樹脂を吸着させたもの、上記カーボンブラックを酸性又はアルカリ性表面処理したもの、平均粒径が8nm以上でDBP吸油量が90ml/100g以下のカーボンブラック、950℃における揮発分中のCO及びCOから算出した全酸素量が、表面積100m当たり9mg以上であるカーボンブラック;黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル、フラーレン;アニリンブラック、ピグメントブラック7、チタンブラック;酸化クロム緑、ミロリブルー、コバルト緑、コバルト青、マンガン系、フェロシアン化物、リン酸塩群青、紺青、ウルトラマリン、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、合成鉄黒、アンバー等の有機又は無機顔料を用いることができる。これらの顔料は単独で、或いは複数を混合して用いることができる。
【0076】
上記顔料としては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185;ピグメントグリ-ン7、10、36;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62、64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、50等が挙げられる。
【0077】
上記染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料スチルベン染料、チアゾール染料、ナフトール染料、キノリン染料、ニトロ染料、インダミン染料、オキサジン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料等の染料等が挙げられ、これらは複数を混合して用いてもよい。
【0078】
上記潜在性エポキシ硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、変性ポリアミン、ヒドラジド類、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール類、グアナミン類、イミダゾール類、ウレア類及びメラミン等が挙げられる。
【0079】
上記連鎖移動剤又は増感剤としては、一般的に硫黄原子含有化合物が用いられる。例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト酪酸、N-(2-メルカプトプロピオニル)グリシン、2-メルカプトニコチン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N-(3-メルカプトプロピオニル)アラニン、2-メルカプトエタンスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸、4-メルカプトブタンスルホン酸、ドデシル(4-メチルチオ)フェニルエーテル、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、1-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、メルカプトフェノール、2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-3-ピリジノール、2-メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)等のメルカプト化合物、該メルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2-ヨードエタノール、2-ヨードエタンスルホン酸、3-ヨードプロパンスルホン酸等のヨード化アルキル化合物、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、下記化合物No.C1、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の脂肪族多官能チオール化合物、昭和電工社製カレンズMT BD1、PE1、NR1等が挙げられる。
【0080】
【化13】
【0081】
上記溶剤としては、通常、前記の各成分(重合開始剤(A)及び重合性化合物(B)等)を溶解又は分散しえる溶剤、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート等のエーテルエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;テレピン油、D-リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤;カルビトール系溶剤;アニリン;トリエチルアミン;ピリジン;酢酸;アセトニトリル;二硫化炭素;N,N-ジメチルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド;N-メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;水等を用いることができ、これらの溶剤は1種で又は2種以上の混合溶剤として使用することができる。
これらの中でも、アルカリ現像性、パターニング性、製膜性、溶解性の点から、ケトン類又はエーテルエステル系溶剤、特に、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(以下、「PGMEA」ともいう。)又はシクロヘキサノンが好ましく用いられる。
本発明の重合性組成物において、溶剤の含有量は、特に制限されず、各成分が均一に分散又は溶解され、また本発明の重合性組成物が各用途に適した液状ないしペースト状を呈する量であればよいが、通常、本発明の重合性組成物中の固形分(溶剤以外の全成分)の量が10~90質量%となる範囲で溶剤を含有させることが好ましい。
【0082】
また、本発明の重合性組成物は、有機重合体を用いることによって、硬化物の特性を改善することもできる。該有機重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート-エチルアクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ウレタン樹脂、ポリカーボネートポリビニルブチラール、セルロースエステル、ポリアクリルアミド、飽和ポリエステル、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記有機重合体を使用する場合、その使用量は、重合性化合物(B)100質量部に対して、好ましくは10~500質量部である。
【0083】
本発明の重合性組成物には、更に、界面活性剤、シランカップリング剤、メラミン化合物等を併用することができる。
【0084】
上記界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素系界面活性剤;高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤;高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤;両性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができ、これらは組合せて用いてもよい。
【0085】
上記シランカップリング剤としては、例えば信越化学社製シランカップリング剤を用いることができ、その中でも、KBE-9007、KBM-502、KBE-403等の、イソシアネート基、メタクリロイル基又はエポキシ基を有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
【0086】
上記メラミン化合物としては、(ポリ)メチロールメラミン、(ポリ)メチロールグリコールウリル、(ポリ)メチロールベンゾグアナミン、(ポリ)メチロールウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CHOH基)の全部又は一部(少なくとも2つ)がアルキルエーテル化された化合物等を挙げることができる。
ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基が挙げられ、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果オリゴマー成分が形成されていてもよい。
具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等を用いることができる。
これらの中でも、溶剤への溶解性、重合性組成物から結晶析出しにくいという点から、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン等のアルキルエーテル化されたメラミンが好ましい。
【0087】
本発明の重合性組成物において、重合開始剤(A)及び重合性化合物(B)以外の任意成分(但し、無機化合物、色材、及び溶剤は除く)の使用量は、その使用目的に応じて適宜選択され特に制限されないが、好ましくは、重合性化合物(B)100質量部に対して合計で50質量部以下とする。
【0088】
本発明の重合性組成物は、エネルギー線を照射して硬化物とすることができる。該硬化物は、用途に応じた適宜な形状として形成される。例えば膜状の硬化物を形成する場合には、本発明の重合性組成物は、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用することができる。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0089】
本発明の重合性組成物を硬化させる際に用いられるエネルギー線の光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストローム~7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができるが、好ましくは、波長300~450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯等が用いられる。
【0090】
更に、露光光源にレーザー光を用いることにより、マスクを用いずに、コンピューター等のデジタル情報から直接画像を形成するレーザー直接描画法が、生産性のみならず、解像性や位置精度等の向上も図れることから有用であり、そのレーザー光としては、340~430nmの波長の光が好適に使用されるが、エキシマーレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー及びYAGレーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いることができる。これらのレーザー光を使用する場合には、好ましくは、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素が加えられる。
【0091】
また、本発明の重合性組成物の硬化には、上記エネルギー線の照射後、加熱することが通常必要であり、40~150℃程度の加熱が硬化率の点で好ましい。
【0092】
本発明の重合性組成物は、光硬化性塗料又はワニス;光硬化性接着剤;金属用コーティング剤;プリント基板;カラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、デジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示素子におけるカラーフィルタ;CCDイメージセンサのカラーフィルタ;プラズマ表示パネル用の電極材料;粉末コーティング;印刷インク;印刷版;接着剤;歯科用組成物;ゲルコート;電子工学用のフォトレジスト;電気メッキレジスト;エッチングレジスト;ドライフィルム;はんだレジスト;種々の表示用途用のカラーフィルタを製造するための或いはプラズマ表示パネル、電気発光表示装置、及びLCDの製造工程においてそれらの構造を形成するためのレジスト;電気及び電子部品を封入するための組成物;ソルダーレジスト;磁気記録材料;微小機械部品;導波路;光スイッチ;メッキ用マスク;エッチングマスク;カラー試験系;ガラス繊維ケーブルコーティング;スクリーン印刷用ステンシル;ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料;ホログラフィ記録用材料;画像記録材料;微細電子回路;脱色材料;画像記録材料のための脱色材料;マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料;印刷配線板用フォトレジスト材料;UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料;プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料又は保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
【0093】
本発明の重合性組成物は、液晶表示パネル用スペーサーを形成する目的及び垂直配向型液晶表示素子用突起を形成する目的で使用することもできる。特に垂直配向型液晶表示素子用の突起とスペーサーを同時に形成するための感光性樹脂組成物として有用である。
【0094】
上記の液晶表示パネル用スペーサーは、(I)本発明の重合性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、(2)該塗膜に所定のパターン形状を有するマスクを介してエネルギー線(光)を照射する工程、(3)露光後のベーク工程、(4)露光後の被膜を現像する工程、(5)現像後の該被膜を加熱する工程により好ましく形成される。
【0095】
色材を添加した本発明の重合性組成物は、カラーフィルタにおけるRGB等の各画素を構成するレジストや、各画素の隔壁を形成するブラックマトリクス用レジストとして好適に用いられる。更に、撥インク剤を添加するブラックマトリクス用レジストの場合、プロファイル角が50°以上であるインクジェット方式カラーフィルタ用隔壁に好ましく用いられる。該撥インク剤としては、フッ素系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有する組成物が好適に用いられる。
【0096】
上記インクジェット方式カラーフィルタ用隔壁に用いた場合、本発明の重合性組成物から形成された隔壁が被転写体上を区画し、区画された被転写体上の凹部にインクジェット法により液滴を付与して画像領域を形成する方法により光学素子が製造される。この際、上記液滴が着色剤を含有し、上記画像領域が着色されていることが好ましく、その場合には、上記の製造方法により作製された光学素子は、基板上に複数の着色領域からなる画素群と該画素群の各着色領域を離隔する隔壁を少なくとも有するものとなる。
【0097】
本発明の重合性組成物は、保護膜又は絶縁膜用組成物としても用いることができる。この場合、紫外線吸収剤、アルキル化変性メラミン及び/又はアクリル変性メラミン、分子中にアルコール性水酸基を含有する1又は2官能の(メタ)アクリレートモノマー及び/又はシリカゾルを含有することができる。
【0098】
上記絶縁膜は、剥離可能な支持基材上に絶縁樹脂層が設けられた積層体における該絶縁樹脂層に用いられ、該積層体は、アルカリ水溶液による現像が可能なものであり、絶縁樹脂層の膜厚が10~100μmであることが好ましい。
【0099】
本発明の重合性組成物は、無機化合物を含有させることで、感光性ペースト組成物として用いることができる。該感光性ペースト組成物は、プラズマディスプレイパネルの隔壁パターン、誘電体パターン、電極パターン及びブラックマトリックスパターン等の焼成物パターンを形成するために用いることができる。
【実施例
【0100】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、以下で得られた化合物の性状は、大気圧下、25℃におけるものである。
【0101】
〔製造例1〕オキシム化合物1の合成
100mL四つ口フラスコに塩化アルミニウム2.40gと、ジクロロエタン(EDC)34.56gを入れ氷浴上-5℃で攪拌した。そこに9,9’-ジヘキシルフルオレン5.02g及びオクタノイルクロリド2.44gをジクロロエタン20g中に溶解させた溶液を滴下して加えた。室温まで昇温後3時間攪拌し、再び氷浴で冷却し、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を20g滴下した。油水分離を行い、有機層を水で3回水洗した。有機層をエバポレータで減圧濃縮し、下記のケトン化合物1を収量6.91gで得た。
【0102】
【化14】
【0103】
100mL四つ口フラスコにケトン化合物1を3.00g、塩酸ヒドロキシルアミン0.50g、ジメチルホルムアミド(DMF)9.30g、ピリジン0.62gの順で加えオイルバス上80℃で5時間加熱攪拌した。室温まで冷却後イオン水50gにあけた。酢酸エチルを加え油水分離を行い、有機層を水で3回水洗した。有機層をエバポレータで減圧濃縮し、下記のオキシム化合物1を収量3.10gで得た。
【0104】
【化15】
【0105】
〔製造例2〕オキシム化合物2の合成
100mL四つ口フラスコにケトン化合物1を2.00g、DMF6.39g、35質量%塩酸0.45gの順で加え、氷浴上5℃で攪拌を行った。そこに亜硝酸イソブチル0.50gを滴下して加えた。室温まで昇温後、6時間攪拌した。その後イオン水50gにあけた。酢酸エチルを加え油水分離を行い、有機層を水で3回水洗した。有機層をエバポレータで減圧濃縮し、下記のオキシム化合物2を収量2.13gで得た。
【0106】
【化16】
【0107】
〔製造例3〕オキシム化合物3の合成
100mL四つ口フラスコに下記ケトン化合物2を3.63g、塩酸ヒドロキシルアミン1.67g、DMF11.78g、ピリジン1.90gの順で加えオイルバス上80℃で5時間加熱攪拌した。室温まで冷却後イオン水50gにあけた。酢酸エチルを加え油水分離を行い、有機層を水で3回水洗した。有機層をエバポレータで減圧濃縮した。残渣にメタノールを加え晶析を行い、下記オキシム化合物3を収量3.13gで得た。
【0108】
【化17】
【0109】
〔製造例4〕オキシム化合物4の合成
100ml四つ口フラスコに、1-(9,9-ジメチル-7-(2-メチルベンゾイル)-9H-フルオレン-2-イル)オクタン-1-オン1.0eq.を加え、ジメチルホルムアミド(理論収量の400重量%)に溶解した。溶液にヒドロキシアンモニウムクロリド1.2eq.及びピリジン1.2eq.を加えた。反応混合物を55℃で9時間加熱攪拌し、イオン交換水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を5質量%塩酸、イオン交換水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、イオン交換水で3回、という順で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤=酢酸エチル:ヘキサン=1:6)により精製し、オキシム化合物4を収率70%で得た。
【0110】
【化17A】
【0111】
〔製造例4〕オキシム化合物5の合成
100ml四つ口フラスコに、3-シクロペンチル-1-(9,9-ジメチル―7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)プロパン-1-オン1.0eq.を加え、ジメチルホルムアミド(理論収量の400重量%)に溶解した。溶液にヒドロキシアンモニウムクロリド1.2eq.及びピリジン1.2eq.を加えた。反応混合物を55℃で7時間加熱攪拌し、イオン交換水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層をイオン交換水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、濃縮した。これにメタノール(理論収量の1700重量%)を加え晶析を行い、オキシム化合物5を淡褐色粉状化合物として収率65%で得た。
【0112】
【化17B】
【0113】
〔実施例1-1〕化合物No.1の合成
100mL四つ口フラスコにオキシム化合物1を1.00gと、アセトニトリル6.00gを入れ室温で攪拌した。そこに1,1’-カルボニルジイミダゾール0.41gをアセトニトリル5g中に分散させた溶液を10分かけて加えた。3時間攪拌後、析出した結晶を除き、ろ液を濃縮した。更に3時間減圧乾燥を行い、白色粉状化合物を収率59%で得た。得られた固体のTG-DTA(融点/℃)、H-NMRを分析し、目的物である化合物No.1であることを確認した。分析結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0114】
〔実施例1-2〕化合物No.2の合成
100mL四つ口フラスコにオキシム化合物2を2.13gと、アセトニトリル29.00gを入れ室温で攪拌した。そこに1,1’-カルボニルジイミダゾール0.86gをアセトニトリル5g中に分散させた溶液を10分かけて加えた。1時間攪拌後、析出した結晶を除き、ろ液を濃縮した。更に4時間減圧乾燥を行い、白色粉状化合物を収率51%で得た。得られた固体のTG-DTA(融点/℃)、H-NMRを分析し、目的物である化合物No.2であることを確認した。分析結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0115】
〔実施例1-3〕化合物No.3の合成
100mL四つ口フラスコに、オキシム化合物3を1.18g、1,1’-カルボニルジイミダゾール1.17g及びテトラヒドロフラン(THF)1.04gを入れ室温で2時間攪拌した。そこにピペリジン0.61gを滴下して加え、オイルバス上60℃で6時間攪拌した。室温まで冷却後、エバポレータで減圧溶媒留去し、残渣にクロロホルムを加え、イオン交換水で5回水洗を行った。有機層を減圧濃縮し、メタノールを加えて晶析を行い、薄黄色粉状物を収率74%で得た。得られた固体のTG-DTA(融点/℃)、H-NMRを分析し、目的物である化合物No.3であることを確認した。分析結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0116】
〔実施例1-4〕化合物No.50の合成
100ml四つ口フラスコに、オキシム化合物4を1.0eq.、ジクロロエタン(理論収量の600重量%)、トリエチルアミン2.0eq.を加え、氷浴上5℃で攪拌を行った。そこにクロロギ酸4-ニトロフェニル1.5eq.をジクロロエタンに溶かしたものを滴下して加えた。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。再び氷浴上5℃まで冷却後、アニリン1.5eq.を滴下して加えた。室温で1時間攪拌し、減圧溶媒留去した。そこに酢酸エチルとイオン交換水を加え、油水分離を行った。更に有機層を1質量%水酸化ナトリウム水溶液で2回、イオン交換水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤=酢酸エチル:トルエン=1:30)により精製し、化合物No.50を淡黄色透明固体として収率56%で得た。得られた化合物のTG-DTA(融点)、H-NMRを分析した。結果を〔表2A〕及び〔表2B〕に示す。化合物No.50の合成の反応式は下記のとおりである。
【0117】
【化17C】
【0118】
〔実施例1-5〕化合物No.51の合成
100ml四つ口フラスコに、オキシム化合物4を1.0eq.、ジクロロエタン(理論収量の600重量%)、トリエチルアミン2.0eq.を加え、氷浴上5℃で攪拌を行った。そこにクロロギ酸4-ニトロフェニル1.5eq.をジクロロエタンに溶かしたものを滴下して加えた。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。再び氷浴上5℃まで冷却後、ピペリジン1.5eq.を滴下して加えた。室温で1時間攪拌し、減圧溶媒留去した。そこに酢酸エチルとイオン交換水を加え、油水分離を行った。更に有機層を1質量%水酸化ナトリウム水溶液で2回、イオン交換水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤=酢酸エチル:トルエン=1:10)により精製し、化合物No.51を淡黄色透明液体として収率67%で得た。得られた化合物のTG-DTA(融点)、H-NMRを分析した。結果を〔表2B〕に示す。化合物No.51の合成の反応式は下記のとおりである。
【0119】
【化17D】
【0120】
〔実施例1-6〕化合物No.52の合成
100ml四つ口フラスコに、オキシム化合物5を1.0eq.、ジクロロエタン(理論収量の600重量%)、トリエチルアミン2.0eq.を加え、氷浴上5℃で攪拌を行った。そこにクロロギ酸4-ニトロフェニル1.5eq.をジクロロエタンに溶かしたものを滴下して加えた。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。再び氷浴上5℃まで冷却後、ジブチルアミン1.5eq.を滴下して加えた。室温で1時間攪拌し、減圧溶媒留去した。そこに酢酸エチルとイオン交換水を加え、油水分離を行った。更に有機層を1質量%水酸化ナトリウム水溶液で2回、イオン交換水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、濃縮した。これにメタノール(理論収量の600重量%)を加え晶析を行い、化合物No.52を淡茶色固体として収率78%で得た。得られた化合物のTG-DTA(融点)、H-NMRを分析した。結果を〔表2A〕及び〔表2B〕に示す。化合物No.52の合成の反応式は下記のとおりである。
【0121】
【化17E】
【0122】
〔実施例1-7〕化合物No.53の合成
100ml四つ口フラスコに、オキシム化合物5を1.0eq.、ジクロロエタン(理論収量の600重量%)、トリエチルアミン2.0eq.を加え、氷浴上5℃で攪拌を行った。そこにクロロギ酸4-ニトロフェニル1.5eq.をジクロロエタンに溶かしたものを滴下して加えた。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。再び氷浴上5℃まで冷却後、3,5-ジメチルピペリジン1.5eq.を滴下して加えた。室温で1時間攪拌し、減圧溶媒留去した。そこに酢酸エチルとイオン交換水を加え、油水分離を行った。更に有機層を、イオン交換水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、濃縮した。これにエタノール(理論収量の7000重量%)を加え晶析を行い、化合物No.53を淡黄色固体として収率79%で得た。得られた化合物のTG-DTA(融点)、H-NMRを分析した。結果を〔表2A〕及び〔表2B〕に示す。化合物No.53の合成の反応式は下記のとおりである。
【0123】
【化17F】
【0124】
〔実施例1-8〕化合物No.54の合成
100ml四つ口フラスコに、オキシム化合物4を1.0eq.、アセトニトリル(理論収量の200重量%)を加え、室温で攪拌を行った。そこに1,1’-カルボニルジイミダゾールを1.1eq.加え、室温で30分間攪拌し、減圧溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤=酢酸エチル:ヘキサン=60:40)により精製し、化合物No.54を淡黄色固体として収率44%で得た。得られた化合物のTG-DTA(融点)、H-NMRを分析した。結果を〔表2A〕及び〔表2B〕に示す。化合物No.54の合成の反応式は下記のとおりである。
【0125】
【化17G】
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表2A】
【0129】
【表2B】
【0130】
〔比較例1-1〕
比較化合物No.1として、下記化合物を用いた。
【化18】
【0131】
〔評価1〕溶剤溶解性試験
上記化合物No.1~No.3及び比較化合物No.1を1.0g測り取り、そこに室温(25℃)で下記〔表3〕に示す各溶剤を加え、完全に溶解したときの溶剤の添加量を測定し、化合物の溶解性を下記計算式により算出した。結果を[表3]に示す。

化合物の各溶剤への溶解性(%)=1.0g/(1.0g+溶剤の添加量g)×100
【0132】
【表3】
【0133】
〔表3〕より、本発明の化合物が比較化合物に比べて各溶媒に対する溶解度が高いことは明らかである。
【0134】
〔実施例2-1~2-3及び比較例2-1〕重合性組成物の調製
〔表4〕に記載の配合を行い、重合性組成物である実施例2-1~2-3及び比較例2-1の重合性組成物を得た。〔表4〕中の各成分の符号は、下記の成分を表す。
A-1 化合物No.1
A-2 化合物No.2
A-3 化合物No.3
A’-1 比較化合物No.1
B-1 EPPN-201
(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量193g/eq.、日本化薬社製)
B-2 TRR-5010G
(クレゾールノボラック型フェノール樹脂、水酸基当量120g/eq.、Mw=8,000、旭有機材工業社製)
C-1 FZ-2122
(ポリエーテル変性ポリシロキサン、東レダウコーニング社製)
D-1 シクロペンタノン (溶剤)
【0135】
【表4】
【0136】
〔評価2〕重合性組成物及び硬化物の評価
上記で得られた実施例2-1~2-3及び比較例2-1の重合性組成物について、線幅感度、硬化物の残膜率の評価を、下記の手順で行った。結果を〔表5〕に併記する。
【0137】
[評価サンプルの作成方法及び評価方法]
実施例2-1~2-3及び比較例2-1の重合性組成物(各組成物の塗布量約2.0cc)をそれぞれ、ガラス基材にスピンコーター(500rpm×2秒→1800rpm×15秒→slope×5秒)で塗膜し、ホットプレート上でプリベイクをした(90℃×120秒)。
その後、トプコン露光機を用い紫外光を分割露光した(60,120mJ/cm、gap:20μm、照度:20.0mW/cm)。
露光後、ホットプレート上でポストベイクを行った(120℃×5分)後、PGMEA(温度:23℃)で現像した:200rpm×10秒→IPA(イソプロピルアルコール)洗浄(200rpm×10秒→乾燥:500rpm×5秒)。
得られたサンプルについて、各露光量におけるマスク開口20μmのパターンの線幅・残膜率を測定した。
【0138】
【表5】
【0139】
〔表5〕のとおり、本発明の重合性組成物は、比較重合性組成物と比較して、大きな線幅(高感度)、高い残膜率(硬化性が高い)を示した。このことから、本発明の化合物が重合開始剤として優れていることは明白である。
【0140】
〔評価3〕光分解性試験(実施例3-1~3-3、比較例3-1)
上記化合物No.1~No.3及び比較化合物No.1を、1.0×10-4mol濃度のアセトニトリル溶液に調製して蓋付き石英セルに入れた。これらのサンプルそれぞれに超高圧水銀ランプを光源とする光を100mJ/cm、500mJ/cm及び1000mJ/cm(365nmにおける積算光量)の条件で照射し、分解性を調べた。分解性の評価には、HPLCを用いて該当化合物に由来する光未照射時のピーク面積と光照射後のピーク面積を測定し、下記の計算式より分解率を計算した。得られた分解率を下記〔表6〕に記載した。

分解率(%)=[(光未照射時のHPLC面積)―(光照射後のHPLC面積)]/
(光未照射時のHPLC面積)×100
【0141】
【表6】
【0142】
〔表6〕の結果から、本発明の化合物が比較化合物に比べて分解率が高く、感度に優れていることは明らかである。