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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240326BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240326BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20240326BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B23K26/53
B24B1/00 Z
B24B7/04 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018221014
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020088187
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陸 ▲听▼
(72)【発明者】
【氏名】ザック パワーズ
(72)【発明者】
【氏名】エリック アイゼンバーグ
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】松永 稔
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208359(WO,A1)
【文献】特開2009-131942(JP,A)
【文献】特開2016-157903(JP,A)
【文献】特開2010-010392(JP,A)
【文献】特開2014-236034(JP,A)
【文献】特開2017-055089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に面取り部を有したウェーハの裏面を研削して所定の仕上げ厚みを有するウェーハに加工する加工方法であって、
ウェーハの外周縁から所定距離内側の位置で該外周縁に沿ってウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射して、少なくともウェーハの表面から仕上げ厚みに至る深さの環状改質領域を形成する環状改質領域形成ステップと、
ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームをウェーハの外周部に照射して、少なくともウェーハの表面から仕上げ厚みに至る深さの改質領域をウェーハの該外周部に放射状に複数形成する外周部改質領域形成ステップと、
該環状改質領域形成ステップと該外周部改質領域形成ステップとを実施した後、ウェーハの裏面を研削し該仕上げ厚みへと薄化する裏面研削ステップと、を備え、
該環状改質領域は、表面からの厚み方向の長さが該仕上げ厚みよりも長く形成され、
該放射状に複数形成する改質領域は、表面からの厚み方向の長さが該仕上げ厚みと等しく形成され、
該裏面研削ステップでは、該環状改質領域と複数の該改質領域とを起点にウェーハの該外周部がウェーハから除去されつつ研削が進行し、該外周部が分断された後、該放射状に複数形成する改質領域によって該外周部が分割される、ウェーハの加工方法。
【請求項2】
前記裏面研削ステップを実施した後、前記裏面を研磨する研磨ステップを更に備える、請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に面取り部を有したウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの裏面を研削して薄化した際にウェーハの外周の面取り部に所謂シャープエッジが形成され、シャープエッジに欠けが生じてウェーハが損傷するおそれがある。これを防止するために、研削前に切削ブレードで面取り部を除去する所謂エッジトリミング(例えば、特許文献1参照)が広く採用されている。
【0003】
しかし、通常のダイシングで使用される例えば幅20μm程度の切削ブレードに比べて、エッジトリミングでは幅1mm程度の厚いブレードを使用する上、直線状ではなく環状にウェーハを切削するため切削負荷が通常のダイシングよりも大きくかかり、チッピングと呼ばれる欠けやクラックがウェーハの外周縁に形成された切削溝の縁に発生しやすい。そして、クラックがデバイスに達するとデバイスを損傷してしまうため問題となる。一方、チッピングやクラックを抑えるために低速でエッジトリミングを行うと生産性が悪くなる。
【0004】
そこで、レーザビームをウェーハに照射しウェーハを内周部と外周部とに分割し、外周部を除去してからウェーハを研削する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-173961号公報
【文献】特開2006-108532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記方法では、ウェーハの外周部を除去する工程が増えることで、生産性が落ちるという問題がある。
よって、外周に面取り部を有したウェーハを加工する場合には、ウェーハの外周部を除去する工程を増やすことなくウェーハの破損を防止するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、外周に面取り部を有したウェーハの裏面を研削して所定の仕上げ厚みを有するウェーハに加工する加工方法であって、ウェーハの外周縁から所定距離内側の位置で該外周縁に沿ってウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射して、少なくともウェーハの表面から仕上げ厚みに至る深さの環状改質領域を形成する環状改質領域形成ステップと、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームをウェーハの外周部に照射して、少なくともウェーハの表面から仕上げ厚みに至る深さの改質領域をウェーハの該外周部に放射状に複数形成する外周部改質領域形成ステップと、該環状改質領域形成ステップと該外周部改質領域形成ステップとを実施した後、ウェーハの裏面を研削し該仕上げ厚みへと薄化する裏面研削ステップと、を備え、該環状改質領域は、表面からの厚み方向の長さが該仕上げ厚みよりも長く形成され、該放射状に複数形成する改質領域は、表面からの厚み方向の長さが該仕上げ厚みと等しく形成され、
該裏面研削ステップでは、該環状改質領域と複数の該改質領域とを起点にウェーハの該外周部がウェーハから除去されつつ研削が進行し、該外周部が分断された後、該放射状に複数形成する改質領域によって該外周部が分割される、ウェーハの加工方法である。
【0008】
前記裏面研削ステップを実施した後、前記裏面を研磨する研磨ステップを更に備えると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るウェーハの加工方法においては、ウェーハの裏面研削前に、環状改質領域と外周部改質領域とをウェーハに形成する。そして、研削中にウェーハの外周部がウェーハの内周部から環状改質領域によって環状に分断されるためウェーハのエッジに生じる欠けやクラックによってウェーハのデバイスが形成されている内周部が破損してしまうことを防止できる。更に分断された外周部が放射状に延びる複数の外周部改質領域によって細かく分割されるため、研削中に除去することが可能となる。
【0010】
裏面研削ステップを実施した後、裏面を研磨する研磨ステップを更に備えることで、ウェーハの抗折強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ウェーハの一例を示す断面図である。
図2】環状改質領域形成ステップを説明するための断面図である。
図3】ウェーハに形成された環状の改質領域を拡大して示す断面図である。
図4】外周部改質領域形成ステップを説明するための断面図である。
図5】ウェーハの外周部に放射状に形成された改質領域を拡大して示す断面図である。
図6】外周部全周にわたって放射状に改質領域が形成されたウェーハを示す平面図である。
図7】ウェーハの裏面の研削を開始している状態を説明する断面図である。
図8】裏面研削ステップにおいて、環状改質領域と複数の改質領域とを起点にウェーハの外周部がウェーハから除去されつつ研削が進行している状態を説明する断面図である。
図9】ウェーハの裏面を研磨している状態を説明する断面図である。
図10】環状改質領域と複数の改質領域とが形成され表面にキャリアウェーハが接着されたウェーハの裏面を研削している状態を説明する断面図である。
図11】環状改質領域と複数の改質領域とが形成され表面にキャリアウェーハが接着されたウェーハの裏面を研磨している状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るウェーハの加工方法を実施する場合の各ステップについて説明する。
【0013】
(1)環状改質領域形成ステップ
図1に示すウェーハWは、例えば、シリコンを母材とする外形が円形の半導体ウェーハであり、その表面Waには、デバイス領域Wa1と、デバイス領域Wa1を囲繞する外周余剰領域Wa2とが設けられている。デバイス領域Wa1は、直交差する複数の分割予定ラインSで格子状に区画されており、格子状に区画された各領域にはIC等のデバイスDがそれぞれ形成されている。図1において下方を向いているウェーハWの裏面Wbは、後に研削される被研削面となる。ウェーハWは外周縁が面取り加工されており断面が略円弧状の面取り部Wdが形成されている。
なお、ウェーハWはシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよい。
【0014】
環状改質領域形成ステップでは、ウェーハWの外周縁である面取り部Wdから所定距離内側の位置で外周縁に沿ってウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射して、少なくともウェーハWの表面Waから仕上げ厚みに至る深さの環状改質領域を形成する。具体的には、ウェーハWは、例えば図2に示すレーザ加工装置1に搬送される。レーザ加工装置1は、ウェーハWを吸引保持する保持テーブル10と、保持テーブル10に保持されたウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射可能なレーザビーム照射手段11とを少なくとも備えている。
なお、ウェーハWはレーザ加工装置1に搬送される前に、その表面Waに保護テープTが貼着されデバイスDが保護された状態になる。
【0015】
保持テーブル10は、Z軸方向の軸心周りに回転可能であるとともに、図示しない移動手段によって加工送り方向であるX軸方向及び割り出し送り方向であるY軸方向に往復移動可能となっている。保持テーブル10は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材からなりウェーハWを保持する平坦な保持面10aを備えている。そして保持面10aに連通する図示しない吸引源が生み出す吸引力が保持面10aに伝達されることで、保持テーブル10は保持面10a上でウェーハWを吸引保持できる。
【0016】
レーザビーム照射手段11は、YAG等のレーザビーム発振器119から発振されたレーザビームを、伝送光学系を介して集光器111の内部の集光レンズ111aに入光させることで、保持テーブル10で保持されたウェーハWにレーザビームを集光して照射できる。レーザビームの集光点の高さ位置は、図示しない集光点位置調整手段によりZ軸方向に調整可能となっている。
【0017】
レーザ加工装置1は、ウェーハWの外周縁の座標位置及びウェーハWの中心の座標位置を認識するアライメント手段14を備えている。アライメント手段14は、図示しない光照射手段と、ウェーハWからの反射光を捕らえる光学系及び光学系で結像された被写体像を光電変換して画像情報を出力する撮像素子等で構成されたカメラ140とを備えている。
【0018】
図2に示すように、表面Waに貼着された保護テープTを下側に向けて保持テーブル10の保持面10a上にウェーハWが載置され、保持テーブル10によりウェーハWが吸引保持される。保持テーブル10の回転中心とウェーハWの中心とは略合致する。
【0019】
図示しない移動手段が保持テーブル10をアライメント手段14の下方まで移動させ、エッジアライメントが実施される。即ち、保持テーブル10が回転し、保持テーブル10に保持されたウェーハWの外周縁がカメラ140で複数箇所撮像される。そして、撮像画像から例えば外周縁の離間した3点の座標が検出され、該3点の座標に基づく幾何学的演算処理により、保持テーブル10上で吸引保持されたウェーハWの正確な中心座標が求められる。
【0020】
そして、ウェーハWの該中心座標の情報及び予め認識されているウェーハWのサイズの情報を基にして、保持テーブル10が水平方向に移動されて、外周余剰領域Wa2で且つウェーハWの外周縁から所定距離内側の所定位置Y1が集光器111の直下に位置するように、保持テーブル10が所定位置に位置付けられる。
【0021】
次いで、集光レンズ111aによって集光されるレーザビームの集光点位置を、ウェーハWの内部の所定の高さ位置、即ち、例えば、図2に示すウェーハWの仕上げ厚みL1に至る深さとなる高さ位置Z2よりも少しだけ上方の高さ位置に位置付ける。仕上げ厚みL1は、デバイスDの上面の高さ位置Z1から高さ位置Z2までの厚みである。そして、レーザビーム発振器119からウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを所定の繰り返し周波数でパルス発振させ、レーザビームを保持テーブル10で保持されたウェーハWの内部に集光し照射する。
なお、レーザビームの出力は、例えば、ウェーハWに形成される改質層から上下にクラックが発生する条件に設定される。
【0022】
レーザビーム発振器119で発振したレーザビームをウェーハWの内部に集光して照射すると、ウェーハWには、集光点位置から上下方向に向かって図3に示す改質層M1が伸びるように形成される。また、改質層M1からクラックCが発生するようにレーザビームの出力を設定しておくことで、改質層M1から上下方向に微細なクラックCが同時に形成されていく。即ち、改質層M1とクラックCとを含む改質領域MがウェーハWに形成されていく。図3に示す例においては、形成された改質領域MのクラックCは、ウェーハWの表面Waまでその下端が到達している。
【0023】
レーザビームをウェーハWの外周縁に沿って照射しつつ、図2に示す保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度回転させることで、少なくともウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さ、即ち、高さ位置Z2に至る環状改質領域MがウェーハWに形成される。なお、本実施形態のように、改質層M1をウェーハWの仕上げ厚みL1中の領域に形成せずに、クラックCのみをウェーハWの表面Waまで到達させることで、後の研削によって改質層M1をウェーハWに残さず除去できるので好ましい。
【0024】
環状改質領域形成ステップは本実施形態に限定されるものではない。例えば、図2に示すウェーハWの仕上げ厚みL1が厚い場合等においては、レーザビームの集光点位置を、高さ位置Z2よりも下方の高さ位置(より表面Wa側の高さ位置)に位置付ける。そして、レーザビームをウェーハWの外周縁に沿って照射しつつ、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度回転させる毎に、ウェーハWの厚み方向(Z軸方向)で集光点位置を上側又は下側に所定間隔ずらしつつ、レーザビームを複数パスウェーハWに照射する。そして、1段目の改質層M1とクラックCとからなる環状の改質領域M、2段目の環状の改質領域M、3段目の環状の改質領域M、及び、4段目の環状の改質領域Mを形成する。
【0025】
その結果、改質層M1とクラックCとからなる4段の環状の改質領域Mによって、少なくともウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さ、即ち、高さ位置Z2に至る環状改質領域MがウェーハWに形成される。この場合には、環状改質領域Mは、各段のクラックCがつながっている。また、改質層M1がウェーハWの表面Waに露出していてもよい。なお、レーザビームの出力を下げて改質層M1から上下にクラックCが発生しないように加工条件を設定し、各段のクラックCではなく各段の改質層M1自体をウェーハWの厚み方向につなげて環状改質領域Mを形成してもよいが、各段のクラックCをつなげる方が少ないパスのレーザビーム照射で、少なくともウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さ、即ち、高さ位置Z2に至る環状改質領域Mを形成できる為効率的である。
【0026】
なお、円環状の改質領域Mの形成において、保持テーブル10をZ軸方向の軸心周りに360度回転させる毎に厚み方向(Z軸方向)に集光点位置を上側又は下側に所定間隔ずらしつつレーザビームを複数パス照射するのではなく、図2に示すレーザビーム発振器119から発振されたレーザビームをビームスプリッター等によって分岐させて複数の光路のレーザビームとし、複数光路のレーザビームの各集光点をウェーハWの厚み方向の異なる位置に位置付ける。そして、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度1回転させることで、複数の集光点においてウェーハWの内部を同時に改質して、少なくともウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さ、即ち、高さ位置Z2に至る環状改質領域Mを形成してもよい。
【0027】
環状改質領域形成ステップのさらなる別例としては、例えば、図2に示す集光レンズ111aの上方又は下方に別途のレンズをさらに配設したり、集光レンズ111aを例えば球面収差を有する集光レンズとしたりすることで、パルスレーザビームの集光点をウェーハWの厚み方向に延在するように位置付け可能とする。そして、ウェーハWの厚み方向に集光点を線状に延在させた状態で、レーザビーム発振器119からウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを所定の繰り返し周波数でパルス発振させ、レーザビームをウェーハWの内部に集光し照射する。
なお、光軸方向に収差が生じた状態でウェーハWにレーザビームを照射できればよく、よって、所定の拡がり角を持っているパルスレーザビームをレーザビーム発振器119から発振し、集光レンズ111aで集光するようにしてもよい。
【0028】
レーザビームの上記照射によって、ウェーハWの内部には、ウェーハWの厚み方向(Z軸方向)に伸長した細孔または図示しないクラックと、細孔又はクラックを囲繞しウェーハWの厚み方向に伸長した変質領域が形成される。即ち、細孔又はクラックと変質領域とからなる改質領域(所謂、シールドトンネル)がウェーハWに形成されていく。
そして、レーザビームをウェーハWの外周縁に沿って照射しつつ、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度回転させることで、少なくともウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さ、即ち、高さ位置Z2に至る環状改質領域(環状のシールドトンネル)を形成してもよい。
【0029】
(2)外周部改質領域形成ステップ
例えば図3、4に示す環状改質領域MをウェーハWに形成した後、ウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームをウェーハWの外周部に照射して、少なくともウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さの改質領域をウェーハWの外周部に放射状に複数形成する。なお、外周部改質領域形成ステップは、環状改質領域形成ステップを実施する前に行ってもよい。
【0030】
外周部改質領域形成ステップでは、まず、図4に示すように、集光レンズ111aにより集光されるレーザビームの集光点位置が、例えばウェーハWの仕上げ厚みL1内の所定の高さ位置に位置付けられる。そして、レーザビーム発振器119がウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを発振し、レーザビームをウェーハWに集光し照射する。また、ウェーハWが-X方向に所定の加工送り速度で送られ、レーザビームがウェーハWの外周縁から環状改質領域Mに向かって照射されていくことで、ウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さ、即ち、高さ位置Z2に至る改質領域Nが形成される。改質領域Nは図示しないクラックと改質層とを備えているものであってもよいし、改質層のみからなるものであってもよいし、シールドトンネルであってもよい。
【0031】
例えば、図5に示すウェーハWの仕上げ厚みL1が70μmである場合には、改質領域NのZ軸方向における長さは仕上げ厚みL1と同一の長さとなる70μmである。一方、環状改質領域MのZ軸方向における長さは、仕上げ厚みL1(70μm)にさらに20μmを加えた90μmである。
【0032】
例えば、図5に示すように、改質領域NがウェーハWの外周縁から環状改質領域Mに達する所定の位置までウェーハWが往方向である-X方向に進行すると、レーザビームの照射を停止するととも保持テーブル10が所定の角度(例えば、数度)だけZ軸方向の軸心周りに回転する。なお、改質領域NがウェーハWの外周縁から環状改質領域Mに達しておらず、環状改質領域Mの手前で止まっていてもよい。
【0033】
次いで、図4に示すウェーハWが復方向である+X方向へ加工送りされ、レーザビーム照射により改質領域Nが環状改質領域MからウェーハWの外周縁に達するまで形成される。順次同様のレーザビーム照射を保持テーブル10を所定の角度回転させつつ行うことで、図6に示すように、少なくともウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さの改質領域NをウェーハWの外周部の凡そ全周にわたって放射状に複数形成することができる。
なお、同一のラインに対して往方向復方向で集光点位置を上側又は下側に所定間隔ずらしつつ、レーザビームを複数パスウェーハWに照射して複数段の改質領域を形成することで、図4に示すウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さ、即ち、高さ位置Z2に至る改質領域Nを形成してもよい。
【0034】
(3)裏面研削ステップ
環状改質領域形成ステップと外周部改質領域形成ステップとを実施した後、ウェーハWの裏面Wbを研削し仕上げ厚みL1へと薄化する。即ち、環状改質領域M及び改質領域Nが形成されたウェーハWは、図7に示す研削装置7のチャックテーブル75に搬送され、裏面Wbを上側に向けてチャックテーブル75の保持面75a上で吸引保持される。
【0035】
図7に示す研削装置7のウェーハWを研削する研削手段71は、軸方向がZ軸方向である回転軸710と、回転軸710の下端に接続された円板状のマウント713と、マウント713の下面に着脱可能に接続された研削ホイール714とを備える。研削ホイール714は、ホイール基台714bと、ホイール基台714bの底面に環状に配設された略直方体形状の複数の研削砥石714aとを備える。
【0036】
まず、チャックテーブル75が+Y方向へ移動して、研削砥石714aの回転中心がウェーハWの回転中心に対して所定距離だけ水平方向にずれ、研削砥石714aの回転軌跡がウェーハWの回転中心を通るように、チャックテーブル75が位置付けられる。次いで、回転軸710が回転するのに伴って、研削ホイール714がZ軸方向の軸心周りに回転する。また、研削手段71が-Z方向へと送られ、研削砥石714aがウェーハWの裏面Wbに当接することで研削加工が行われる。研削中は、チャックテーブル75が回転するのに伴ってウェーハWも回転するので、研削砥石714aがウェーハWの裏面Wbの全面の研削加工を行う。また、研削砥石714aとウェーハWの裏面Wbとの接触箇所に対して研削水が供給され、研削水による接触箇所の冷却及び研削屑の洗浄除去が行われる。
【0037】
研削加工中において、研削砥石714aからウェーハWに対して-Z方向の研削圧力が加わっている。そして、図8に示すように裏面Wbが研削されていくと、環状改質領域Mに沿って研削圧力に対する研削応力が生じ、環状改質領域Mを起点にウェーハWが円形の内周部W1と円環状の外周部とに分割される。そして、研削を続行して、環状改質領域Mの改質層M1を除去しつつウェーハWを仕上げ厚みL1になるまで研削した後、研削手段71を+Z方向へと移動させてウェーハWから離間させる。
【0038】
また、上記裏面研削加工中においては、ウェーハWの外周部に放射状に複数形成された改質領域Nに沿って研削圧力に対する研削応力が生じ、ウェーハWの円形の内周部W1から分離した円環状の外周部は改質領域Nを起点に図8に示す細かな端材W2(例えば、平面視略台形状の端材)に分割される。さらに、チャックテーブル75は回転しているため、遠心力によってチャックテーブル75上から除去される。
【0039】
上記のように本発明に係るウェーハの加工方法においては、ウェーハWの裏面Wb研削前に、環状改質領域Mと外周部の放射状の改質領域NとをウェーハWに形成する。そして、研削中にウェーハWの外周部がウェーハの内周部W1から環状改質領域Mによって環状に分断されるためウェーハWのエッジに生じる欠けやクラックによってウェーハWのデバイスDが形成されている内周部W1が破損してしまうことを防止できる。更に分断された外周部が放射状に延びる複数の改質領域Nによって細かく分割されるため、研削中に除去することが可能となる。
【0040】
(4)研磨ステップ
例えば、本実施形態においては裏面研削ステップを実施した後、ウェーハWの裏面Wbを研磨する。即ち、ウェーハWの内周部W1は、図9に示す研磨装置8のチャックテーブル85に搬送され、裏面Wbを上側に向けてチャックテーブル85の保持面85a上で吸引保持される。
【0041】
研磨装置8の研磨手段80は、例えば、軸方向が鉛直方向(Z軸方向)であるスピンドル800と、スピンドル800の下端に固定された円形板状のマウント801と、マウント801の下面に着脱可能に取り付けられた円形状の研磨パッド802とから構成されている。研磨パッド802は、例えば、フェルト等の不織布からなり、中央部分にスラリが通液される貫通孔が貫通形成されており、その下面がウェーハWを研磨する研磨面となっている。研磨パッド802の直径は、ウェーハWの直径よりも大きく設定されている。
【0042】
例えば、スピンドル800の内部には、Z軸方向に延びるスラリ流路が形成されており、このスラリ流路にスラリ供給手段が連通している。スラリは、スラリ流路の下端の開口から研磨パッド802に向かって下方に噴出し、研磨パッド802の研磨面とウェーハWとの接触部位に到達する。研磨加工において使用されるスラリは、例えば、遊離砥粒としてSiO2、Al2O3、CeO2、SiC、ZiO2、TiO等を含む溶液である。
なお、研磨ステップにおいては、スラリを用いる化学的機械的研磨法、所謂CMP(Chemical Mechanical Polishing)ではなく、スラリを使用しないドライ研磨を行ってもよい。
【0043】
まず、チャックテーブル85が+Y方向へ移動して、研磨パッド802とチャックテーブル85に保持されたウェーハWとの位置合わせがなされる。位置合わせは、例えば、研磨パッド802の研磨面がウェーハWの裏面Wb全体を覆うようになされる。
【0044】
研磨パッド802とウェーハWとの位置合わせが行われた後、研磨パッド802が回転する。また、研磨手段80が-Z方向へと送られ、図9に示すように回転する研磨パッド802の研磨面がウェーハWに当接することで研磨加工が行われる。研磨加工中は、チャックテーブル85が回転するのに伴って、チャックテーブル85上に保持されたウェーハWも回転するので、研磨パッド802がウェーハWの裏面Wbの全面の研磨加工を行う。
【0045】
研磨加工中において、回転するウェーハWの裏面Wbと研磨パッド802の研磨面との間にスラリが供給されることで、スラリによる化学的作用と研磨パッド802の回転による機械的作用とが相まって、ウェーハWの裏面Wbから加工歪みが除去されるように研磨が進行していき、ウェーハWの抗折強度が高められる。所定時間ウェーハWを研磨した後、研磨手段80を+Z方向へと移動させてウェーハWから離間させる。
【0046】
本発明に係るウェーハの加工方法は本実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されているレーザ加工装置1、研削装置7、及び研磨装置8の各構成についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0047】
例えば、先に説明した環状改質領域形成ステップと外周部改質領域形成ステップとを実施した図10に示すウェーハWに対して、裏面研削ステップを実施する前に、その表面Waから保護テープTを剥離し、さらに、ウェーハWと略同径のキャリアウェーハT2(サポートウェーハT2)を接着剤T1で表面Waに接着する。キャリアウェーハT2は、例えばウェーハWに用いられる材料と同様の材料で構成されたウェーハを用いてもよい。このようにウェーハWを別のキャリアウェーハT2に貼り合わせて貼り合わせウェーハを形成し、該貼り合わせウェーハを一体として扱い加工をすることで、薄いウェーハWのハンドリング性が向上し、また、加工時のウェーハWの反りや破損が防止できる。
なお、環状改質領域形成ステップと外周部改質領域形成ステップとを実施する前に、ウェーハWの表面WaにキャリアウェーハT2を接着させてもよい。また、原子拡散接合法、表面活性化常温接合法、又はウェーハWの加熱を伴う接合法等によって、ウェーハWの表面Waに接着剤を使用せずにキャリアウェーハT2を直接接合してもよい。また、キャリアウェーハT2の代わりにガラス、サファイア、又は金属板等からなるキャリアプレートを用いてもよい。
【0048】
キャリアウェーハT2が接着されたウェーハWは、図10に示す研削装置7のチャックテーブル75に搬送され、裏面Wbを上側に向けてチャックテーブル75の保持面75a上で吸引保持される。次いで、研削砥石714aの回転軌跡がウェーハWの回転中心を通るように、チャックテーブル75が位置付けられる。研削手段71が-Z方向へと送られ、回転する研削砥石714aがウェーハWの裏面Wbに当接することで研削加工が行われる。研削中は、チャックテーブル75が回転するのに伴ってウェーハWも回転するので、研削砥石714aがウェーハWの裏面Wbの全面の研削加工を行う。
【0049】
研削加工中においては、研削砥石714aからウェーハWに対して-Z方向の研削圧力が加わっている。そして、環状改質領域Mに沿って研削圧力に対する研削応力が生じ、環状改質領域Mを起点にウェーハWが円形の内周部W1(図11参照)と円環状の外周部とに分割される。そして、環状改質領域Mの改質層M1を除去しつつウェーハWを仕上げ厚みL1になるまで研削する。
【0050】
また、上記裏面研削加工中においては、ウェーハWの外周部に放射状に複数形成された改質領域Nに沿って研削圧力に対する研削応力が生じ、ウェーハWが円形の内周部W1から分離した円環状の外周部は改質領域Nを起点に細かな端材に分割されて除去される。
【0051】
次いで、ウェーハWの内周部W1は、図11に示す研磨装置8のチャックテーブル85に搬送され、裏面Wbを上側に向けてチャックテーブル85の保持面85a上で吸引保持される。ウェーハWはキャリアウェーハT2によって支持されているため、薄化された後の搬送時において撓んで割れてしまうことが防がれる。
【0052】
例えば、研磨パッド802の研磨面がウェーハWの裏面Wb全体を覆うように、研磨パッド802とウェーハWとの位置合わせが行われた後、研磨手段80が-Z方向へと送られ、図11に示すように回転する研磨パッド802の研磨面がウェーハWに当接することで研磨加工が行われる。研磨加工中は、スラリが研磨パッド802とウェーハWとの接触部位に供給されつつ、回転する研磨パッド802が回転するウェーハWの裏面Wbの全面の研磨加工を行う。そして、所定時間ウェーハWを研磨した後、研磨手段80を+Z方向へと移動させてウェーハWから離間させる。
【符号の説明】
【0053】
W:ウェーハ Wa:ウェーハの表面 Wa1:デバイス領域 Wa2:外周余剰領域 D:デバイス S:分割予定ライン
Wb:ウェーハの裏面 Wd:面取り部 T:保護テープ
1:レーザ加工装置 10:保持テーブル 10a:保持面
11:レーザビーム照射手段 111:集光器 111a:集光レンズ 119:レーザビーム発振器 14:アライメント手段 140:カメラ
M:環状改質領域 M1:改質層 C:クラック N:外周部に形成された放射状の改質領域
7:研削装置 75:チャックテーブル 75a:保持面
71:研削手段 710:回転軸 713:マウント 714:研削ホイール
8:研磨装置 85:チャックテーブル 85a:保持面
80:研磨手段 スピンドル:800 801:マウント 802:研磨パッド
T2:キャリアウェーハ
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