(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】シリコンカーバイド半導体素子
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240326BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20240326BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240326BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20240326BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20240326BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240326BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240326BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20240326BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20240326BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652S
H01L29/86 301F
H01L29/78 652M
H01L29/78 652J
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/86 301D
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L29/91 K
H01L29/78 655A
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L29/48 F
H01L29/48 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019087288
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】10 2018 110 943.1
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シーミーニエック, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】アイヒンガー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バスラー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベルクナー, ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】エルペルト, ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】エステベ, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘル, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】キュック, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】レーンデルツ, カスパー
(72)【発明者】
【氏名】ペーテルス, デトハルト
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ, ハンス-ヨアヒム
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/105611(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033216(WO,A1)
【文献】特開2015-226060(JP,A)
【文献】特開2014-157896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/872
H01L 29/12
H01L 29/861
H01L 29/739
H01L 21/8234
H01L 29/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面(101)からSiC半導体本体(100)内に延在するゲート構造体(150)と、
少なくとも前記ゲート構造体(150)の第1側壁(151)に接する、前記SiC半導体本体(100)内の本体領域(120)と、
前記本体領域(120)の導電性タイプの第1と第2の遮蔽領域(161、162)とを具備し、第1と第2の前記遮蔽領域(161、162)が前記本体領域(120)の少なくとも2倍高くドープされ、
さらに、第1と第2の前記遮蔽領域(161、162)の間に、負荷電極(310)とのショットキー接触(SC)を形成するダイオード領域(140)を具備し、
第1と第2の前記遮蔽領域(161、162)が前記ダイオード領域(140)とは反対の側でそれぞれ接触構造体(316)に接し、前記接触構造体(316)が前記第1表面(101)から前記SiC半導体本体(100)内に延在している、
半導体素子。
【請求項2】
前記ダイオード領域(140)が、前記第1遮蔽領域(161)および前記第2遮蔽領域(162)とのpn接合(pn0)を形成していることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
第1および/または第2の前記遮蔽領域(161、162)の下縁と前記第1表面(101)の間隔(v3)が、前記ゲート構造体(150)の垂直方向寸法(v1)よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記第1表面(101)と前記本体領域(120)との間にソース領域(110)をさらに具備し、このソース領域(110)が少なくとも前記ゲート構造体(150)の第1側壁(151)に接していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記第1遮蔽領域(161)が前記ダイオード領域(140)とは反対の側で前記本体領域(120)に接し、前記第2遮蔽領域(162)が他の本体領域(120)に接していることを特徴とする請求項4に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記第1遮蔽領域(161)が前記ゲート構造体(150)の第2側壁(152)に接し、前記第2遮蔽領域(162)が他の本体領域(120)に接していることを特徴とする請求項4に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記第1遮蔽領域(161)内でドーパント濃度が局所的な最大値を有し、この局所的な最大値が前記ゲート構造体(150)と、前記第1表面(101)とは反対側の、前記SiC半導体本体(100)の第2表面(102)との間に存在することを特徴とする請求項6に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記第1側壁(151)が前記SiC半導体本体(100)の第1主格子面に対して平行に延び、および/または前記第1主格子面に対して大きくとも2°だけ傾斜していることを特徴とする請求項6または7に記載の半導体素子。
【請求項9】
多数の前記ゲート構造体(150)を具備し、前記SiC半導体本体(100)が隣接する2つの前記ゲート構造体(150)の間に第1メサ(181)を有し、前記第1メサ(181)がダイオード領域(140)を有しておらず、前記SiC半導体本体がさらに、隣接する2つの前記ゲート構造体(150)の間に第2メサ(182)を有し、前記第2メサ(182)内にダイオード領域(140)が形成され、前記第1遮蔽領域(161)が前記ダイオード領域(140)に接し、前記第2遮蔽領域(162)が前記ダイオード領域(140)と本体領域(120)とに接していることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項10】
複数の第1メサ(181)および第2メサ(182)を具備し、前記第1メサ(181)が間に形成されている隣接するゲート構造体(150)が互いに第1ピッチ(pt1)をおいて形成され、前記第2メサ(182)が間に形成されている隣接するゲート構造体(150)が互いに第2ピッチ(pt2)をおいて形成され、前記第1ピッチ(pt1)が前記第2ピッチ(pt2)の少なくとも40%、大きくとも60%であることを特徴とする請求項9に記載の半導体素子。
【請求項11】
2つの隣接する前記第2メサ(182)の間に、少なくとも3つの前記第1メサ(181)が形成されていることを特徴とする請求項9または10に記載の半導体素子。
【請求項12】
前記負荷電極(310)が主層(315)を有し、かつこの主層(315)と前記第1表面(101)との間に第1部分層(311)を有し、前記第1部分層(311)の少なくとも1つの区間が前記ダイオード領域(140)に接していることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項13】
前記負荷電極(310)が第2部分層(312)を備え、この第2部分層が少なくとも前記ソース領域(110)および/または第1と第2の前記遮蔽領域(161、162)の少なくとも一方に接していることを特徴とする請求項4を引用する請求項12に記載の半導体素子。
【請求項14】
前記負荷電極(310)がショットキー接触構造体(319)を備え、このショットキー接触構造体が前記負荷電極(310)から前記ゲート構造体(150)を分離する中間誘電体層(210)内の開口を通って、前記ダイオード領域(140)の方へ垂直方向に延在していることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項15】
前記ショットキー接触構造体(319)が前記ダイオード領域(140)、前記第1遮蔽領域(161)および前記第2遮蔽領域(162)に直接接していることを特徴とする請求項14に記載の半導体素子。
【請求項16】
前記ダイオード領域(140)が下側部分領域(148)と、この下側部分領域(148)と前記第1表面(101)との間にある上側部分領域(142)とを有し、前記下側部分領域(148)の第2平均幅(w2)が前記上側部分領域(142)の第1平均幅(w1)の少なくとも120%であることを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項17】
SiC半導体本体(100)内の第1導電性タイプのダイオード領域(140)を具備し、前記ダイオード領域(140)がそれぞれ負荷電極(310)とのショットキー接触(SC)を形成し、
少なくとも1つのゲート構造体(150)がそれぞれ隣接する2つのダイオード領域(140)の間で水平な第1方向(191)に沿って形成され、
少なくとも1つのゲート構造体(150)が第1表面(101)から前記SiC半導体本体(100)内に延在し、
前記ゲート構造体(150)の少なくとも1つの第1側壁(151)が、前記負荷電極(310)に電気的に接続された、第2導電性タイプの本体領域(120)に接していて、
前記SiC半導体本体(100)が、隣接する2つの前記ゲート構造体(150)の間に第1メサ(181)を有し、前記第1メサ(181)が前記ダイオード領域(140)を有しておらず、前記SiC半導体本体が、隣接する2つの前記ゲート構造体(150)の間に第2メサ(182)を有し、前記第2メサ(182)内に前記ダイオード領域(140)が形成され、
前記ダイオード領域(140)が下側部分領域(148)と、この下側部分領域(148)と前記第1表面(101)との間にある上側部分領域(142)とを有し、前記下側部分領域(148)の第2平均幅(w2)が前記上側部分領域(142)の第1平均幅(w1)の少なくとも120%である
半導体素子。
【請求項18】
前記負荷電極(310)がショットキー接触構造体(319)を備え、このショットキー接触構造体(319)が前記負荷電極(310)から前記ゲート構造体(150)を分離する中間誘電体層(210)内の開口を通って、前記SiC半導体本体(100)内の前記ダイオード領域(140)のうちの一つの方へ垂直方向に延在していることを特徴とする請求項17に記載の半導体素子。
【請求項19】
隣接する2つの前記ダイオード領域(140)の間に、少なくとも3つのゲート構造体(150)が形成されていることを特徴とする請求項17または18に記載の半導体素子。
【請求項20】
第1表面(101)からSiC半導体本体(100)内に延在するゲート構造体(150)を具備し、前記SiC半導体本体(100)内に、第1導電性タイプのドリフトゾーン(131)が形成され、
さらに、前記SiC半導体本体(100)内において前記ゲート構造体(150)の間に配置された第1メサ(181)と第2メサ(182)とを具備し、
さらに、前記SiC半導体本体(100)の第1と第2の前記メサ(181、182)内に配置された第2導電性タイプの本体領域(120)を具備し、前記本体領域(120)がそれぞれ、1つの前記ゲート構造体(150)の第1側壁(151)に接し、
さらに、1つの前記ゲート構造体(150)の第2側壁(152)に接する、第2導電性タイプの第1遮蔽領域(161)と、
前記第2メサ(182)内の本体領域(120)に接する、第2導電性タイプの第2遮蔽領域(162)と、
前記ドリフトゾーン(131)の導電性タイプのダイオード領域(140)とを具備し、前記ダイオード領域(140)が第1と第2の前記遮蔽領域(161、162)の間に負荷電極(310)とのショットキー接触(SC)を形成している、
半導体素子。
【請求項21】
前記第1側壁(151)が前記SiC半導体本体(100)内の(11-20)格子平面に対して平行に延在しているかまたは前記(11-20)格子平面に対して2°以下だけ傾いていることを特徴とする請求項20に記載の半導体素子。
【請求項22】
隣接する2つの第2メサ(182)の間毎に、少なくとも3つの第1メサ(181)が形成されていることを特徴とする請求項20または21に記載の半導体素子。
【請求項23】
前記ドリフトゾーン(131)内の平均ドーパント濃度よりも高い平均ドーパント濃度を前記ダイオード領域(140)内に有することを特徴とする請求項20~22のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項24】
補助トレンチ構造体(190)をさらに具備し、この補助トレンチ構造体が前記ダイオード領域(140)と前記第2遮蔽領域(162)との間で、前記第1表面(101)から前記第2メサ(182)内に延在していることを特徴とする請求項20~23のいずれか一項に記載の半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC(シリコンカーバイド)半導体素子、例えば低い作動抵抗と高い電圧耐性を有する半導体スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタ構造体とドリフトゾーンを有する半導体素子において、ドリフトゾーンと電界効果型トランジスタ構造体の本体領域との間のpn接合は、真性本体ダイオードを形成する。順方向での本体ダイオードの動作時に、バイポーラ電荷担体流れは本体領域とドリフトゾーンによって生じる。例えば使用電圧、順方向電圧および電流負荷能力のような本体ダイオードの電気的特性は、ドーピングと、半導体/金属接合のドープされた領域の寸法とから生じる。この半導体/金属接合自体は得ようとするトランジスタ特性に影響を与えないように定められる。
【0003】
例えばなだれ頑丈性、破壊強度および/または作動抵抗のような一般的に得ようとする特性は、SiC素子によって改善される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形は、ゲート構造体を有する半導体素子に関する。このゲート構造体は第1表面からSiC半導体本体内に延在している。SiC半導体本体内の本体領域はゲート構造体の第1側壁に接している。半導体素子は本体領域の導電性タイプの第1と第2の遮蔽領域を備えている。この場合、第1と第2の遮蔽領域は本体領域の少なくとも2倍の高さにドープされている。ダイオード領域は第1遮蔽領域と第2遮蔽領域の間に、負荷電極とのショットキー接触を形成している。
【0005】
本開示の他の実施形は半導体素子に関する。この半導体素子はSiC半導体本体内に、第1導電性タイプのダイオード領域を有する。ダイオード領域はそれぞれ、負荷電極とのショットキー接触を形成している。隣接する2つのダイオード領域の間には、少なくとも1つのゲート構造体が水平な第1方向に沿って形成されている。少なくとも1つのゲート構造体は第1表面からSiC半導体本体内に延在している。ゲート構造体の少なくとも1つの側壁は、負荷電極に電気的に連結された、第2導電性タイプの本体領域に接している。
【0006】
本開示の他の実施形はゲート構造体を有する半導体素子に関する。この場合、ゲート構造体は第1表面からSiC半導体本体内に延在している。SiC半導体本体内には、第1導電性タイプのドリフトゾーンが形成されている。SiC半導体本体の第1と第2のメサがゲート構造体の間に配置され、第2導電性タイプの本体領域を含んでいる。本体領域はそれぞれ、ゲート構造体の第1側壁に接している。第2メサ内で、第2導電性タイプの第1遮蔽領域がそれぞれゲート構造体の第2側壁に接し、第2導電性タイプの第2遮蔽領域が本体領域に接している。ドリフトゾーンの導電性タイプのダイオード領域はそれぞれ、第1と第2の遮蔽領域の間に、負荷電極とのショットキー接触を形成している。
【0007】
開示対象の他の特徴および利点は、当業者であれば、次の詳細な説明を読み、図面を観察することによっておよび特許請求の範囲から推定される。
【0008】
添付の図は、シリコンカーバイド半導体素子の実施の形態のより深い理解をもたらし、本開示に含まれ、そして本開示の一部を形成する。図は単に実施の形態を具体的に示し、記載と共に実施の形態の原理を説明するために役立つ。従って、ここに記載したシリコンカーバイド半導体素子は、実施の形態の説明によってこの実施の形態に限定されることはない。他の実施の形態と意図した効果は、はっきりと説明されていなくても、次の詳細な説明の理解と、次に説明する実施の形態の組合せとから明らかである。図に示した要素と構造体は必ずしも互いに縮尺どおりに示されていない。同じ参照符号は、同一のまたは互いに対応する要素および構造体を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ショットキー接触と2つの遮蔽領域を有する、実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図2A】トランジスタセルの間に形成されたショットキー接触と遮蔽領域を有する、実施の形態に係る半導体素子の水平断面図である。
【
図2B】トランジスタセルの間に形成されたショットキー接触と遮蔽領域を有する、実施の形態に係る半導体素子の垂直断面図である。
【
図3】片側にチャネルを有するトランジスタセルを備えた、実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図4A】ショットキー接触と、片側にチャネルを有するトランジスタセルとを備えた、他の実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図4B】ショットキー接触と、片側にチャネルを有するトランジスタセルとを備えた、他の実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図4C】ショットキー接触と、片側にチャネルを有するトランジスタセルとを備えた、他の実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図4D】ショットキー接触と、片側にチャネルを有するトランジスタセルとを備えた、他の実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図4E】ショットキー接触と、片側にチャネルを有するトランジスタセルとを備えた、他の実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図5A】ショットキー接触と、両側にチャネルを有するトランジスタセルとを備えた、実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図5B】ショットキー接触と、両側にチャネルを有するトランジスタセルとを備えた、実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図6】両側のチャネルと深い接触構造体を有するトランジスタセルを備えた、実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図7】遮蔽領域と本体領域の間にダイオード領域を有する、実施の形態に係るSiC半導体素子の垂直断面図である。
【
図8A】下方に広がるショットキー接触用ダイオード領域を有する、実施の形態に係るSiC半導体素子を製造するための方法を示すためのシリコンカーバイド基板の垂直断面図である。
【
図8B】下方に広がるショットキー接触用ダイオード領域を有する、実施の形態に係るSiC半導体素子を製造するための方法を示すためのシリコンカーバイド基板の垂直断面図である。
【
図8C】下方に広がるショットキー接触用ダイオード領域を有する、実施の形態に係るSiC半導体素子を製造するための方法を示すためのシリコンカーバイド基板の垂直断面図である。
【
図9A】他の実施の形態に係るSiC半導体素子を製造するための方法を示すための、下方に広がるショットキー接触用ダイオード領域を有するシリコンカーバイド基板の垂直断面図である。
【
図9B】他の実施の形態に係るSiC半導体素子を製造するための方法を示すための、下方に広がるショットキー接触用ダイオード領域を有するシリコンカーバイド基板の垂直断面図である。
【
図9C】他の実施の形態に係るSiC半導体素子を製造するための方法を示すための、下方に広がるショットキー接触用ダイオード領域を有するシリコンカーバイド基板の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次の詳細な説明では、添付図を参照する。添付図は本開示の一部を成し、そして図には、具体的に説明するために、SiC半導体装置の特別な実施の形態が示してある。他の実施の形態が存在することは自明である。特許請求の範囲による定義から逸脱せずに、実施の形態の構造的および/または論理的な変更を行うことができることは、同様に自明である。従って、実施の形態の説明は非限定的である。特に、文脈からその他の意味が明らかでない限り、次に説明する実施の形態の特徴を、他の実施の形態の特徴と組合せることができる。
【0011】
語句「有する」、「含有する」、「含む」、「備える」および類似の語句は、オープンタームであり、特定の構造体、要素または特徴の存在を示すがしかし、付加的な要素または特徴の存在を排除しない。不定冠詞と定冠詞は、脈略からその他の意味が明瞭でない場合には、複数と単数の両方を含む。
【0012】
表現「電気的に接続されている」は電気的に接続される要素間の低インピーダンス接続、例えば当該要素間の直接接触または金属および/または高ドープ半導体を介しての接続を表す。表現「電気的に結合されている」は、その「電気的に結合されている」要素間に、電流を通過させるために適した1個または複数の要素が存在し得ることを含んでおり、この要素は例えば、第1状態では低インピーダンスの接続を生成し、第2状態では高インピーダンスの滅結合を生成するように制御可能である要素である。
【0013】
図は、ドーピングタイプ「n」または「p」の隣の符号「-」または「+」によって、相対的なドーピング濃度を表す。例えば、「n-」は「n」ドーピング領域のドーピング濃度よりも低いドーピング濃度を表し一方、「n+」ドーピング領域では、ドーピング濃度は「n」ドーピング領域よりも高い。相対的なドーピング濃度が同じであるドーピング領域は、必ずしも同じ絶対的ドーピング濃度を有する必要はない。例えば、異なる2つの「n」ドーピング領域は、同じドーピング濃度または異なる絶対的ドーピング濃度を有することができる。用語「ドーパント濃度」は、脈略からその他の意味が明らかでない場合には、正味ドーパント濃度を示す。
【0014】
物理量に関して、値範囲が限界値または第2限界値の記載によって定義されると、前置詞「から」と「まで」または「少ない」と「多い」はそれぞれ限界値を一緒に含んでいる。従って、記載方法「から...まで」は「少なくとも...から...多くても...まで」であると理解される。同様に、記載方法「少ない...」(「多い...」)は「多くても...」(「少なくとも...」)であると理解される。
【0015】
化合物または合金からなる層または構造体の主成分は元素によって形成され、この元素の原子は化合物または合金に含まれる。例えばニッケルとシリコンがニッケルシリコン層の主成分であり、銅とアルミニウムが銅アルミニウム合金の主成分である。物質混合物からなる層または構造体の主成分は、互いに所定の比で物質構造体内に存在する元素である。例えばコスパッタリングによって堆積した層の主成分は、コスパッタリングのために使用されるターゲットに含まれる元素である。層または構造体は主成分のほかに、製造に起因する不純物を有していてもよい。
【0016】
本開示の実施の形態はゲート構造体を有する半導体素子に関する。このゲート構造体は第1表面からSiC半導体本体内に延在している。SiC半導体本体内の本体領域はゲート構造体の第1側壁に接している。半導体素子は本体領域の導電性タイプの第1と第2の遮蔽領域を備えている。この場合、第1と第2の遮蔽領域は本体領域の少なくとも2倍の高さにドープされている。ダイオード領域は第1遮蔽領域と第2遮蔽領域の間に、負荷電極とのショットキー接触を形成している。
【0017】
幾つかの実施の形態では、第1遮蔽領域と第2遮蔽領域は、例えば異なる垂直方向寸法および/または異なる横方向寸法のような異なる寸法を有することができる。他の実施の形態では、第1と第2の遮蔽領域は製造許容誤差の範囲内で同じ横方向寸法および垂直方向寸法を有することができる。
【0018】
一般的に、第1遮蔽領域と第2遮蔽領域は、異なるドーパント濃度および/または異なる横方向および/または垂直方向ドーパント濃度変化を有することができる。しかし、第1遮蔽領域と第2遮蔽領域は製造許容誤差の範囲内で同じドーパント濃度および/または横方向および/または垂直方向ドーパント濃度変化を有することもできる。
【0019】
ゲート構造体はゲート電極を有することができ、かつトランジスタセルの一部であってもよい。この場合、ゲート電極と本地領域の間の電圧差は本体領域内の反転チャネルを制御する。反転チャネルはゲート構造体に沿って蓄積される本体領域の小数電荷担体によって形成される。ショットキー接触は本体ダイオードに対して電気的に並列である。この本体ダイオードは、ドリフト構造体と、本体領域および/または遮蔽領域との間のpn接合とによって形成される。ショットキー接触の低い使用電圧の結果、半導体素子の逆方向バイアス状態でおよび反転チャンネルがオフのときに、逆方向電流の大部分がショットキー接触を経て流れる。本体ダイオードを通るバイポーラ電流と、このようなバイポーラ電流によって引き起こされるSiC結晶の劣化は十分に回避可能である。
【0020】
外部のショットキーダイオードが半導体素子に対して電気的に並列に接続されている場合には、ラインインダクタンスがショットキーダイオードの作動を遅らせ、それによって切換え過程の際にバイポーラ劣化の開始にとって十分である、本体ダイオードを流れるバイポーラ電流を短時間調節することができるが一方、反転チャネルがオフの場合には、固有のショットキー接触が本体ダイオードの前に確実に作動する。
【0021】
比較的高くドープされた遮蔽領域は、ショットキー接触で有効な電界、ひいては前方にバイアスされた状態でショットキー接触を通って流れる漏洩電流を低減することができる。そのために、第1と第2の遮蔽領域はそれぞれ、ダイオード領域に直接接し、ダイオード領域とのpn接合を形成することができる。
【0022】
第1および/または第2の遮蔽領域の下縁と第1表面との間隔は、ゲート構造体の垂直方向寸法よりも大きくすることができる。それによって、遮蔽領域の遮蔽作用は本体領域によって達成可能な遮蔽作用よりも大きい。この本体領域は遮蔽領域よりも弱くドープすることが可能である。
【0023】
第1表面と本体領域の間において、ソース領域が少なくともゲート構造体の第1側壁に接することができる。それによって、ゲート構造体内に形成されたゲート電極の適切な制御時に、少なくともゲート構造体の第1側壁に沿って反転チャネルを形成することができる。
【0024】
電気的に並列に接続された多数の同じようなトランジスタセルを備えた半導体素子は、多数のゲート構造体と本体領域を有する。各本体領域はそれぞれ、ゲート構造体の第1側壁に接することができる。第1遮蔽領域はダイオード領域とは反対の側で1つの本体領域に接することができ、第2遮蔽領域はダイオード領域とは反対の側で他の本体領域に接することができる。従って、本体領域は遮蔽領域を介して、オーム接合、特に低オーム接合を越えて、半導体素子の前側の第1負荷電極に接続可能である。
【0025】
第1と第2の遮蔽領域はそれぞれ、ダイオード領域とは反対の側で各々1つの接触構造体に接することができる。この接触構造体は第1表面からSiC構造体内に延在し、遮蔽領域と本体領域の低オーム結合を可能にする。
【0026】
第1遮蔽領域はそれぞれ、ゲート構造体の第2側壁に接し、ゲート構造体を遮蔽するために寄与することができる。
【0027】
第1遮蔽領域は遮蔽作用を改善するために、ゲート構造体と、SiC半導体本体の第1表面とは反対側の第2表面との間の第1部分区間内に、局所的な最大ドーパントを有することができる。
【0028】
ゲート構造体の第1側壁は第1主格子面に対して平行に延び、および/またはSiC半導体本体内の第1主格子面に対して高々2°だけ傾けることができる。従って、(0001)格子面が一般的には4°の角度ずれα(英語でoff-axis angle)だけSiC半導体本体の前側または後側の表面に対して傾いているSiC半導体本体内で、トランジスタセルの反転チャネルを、高い電荷担体可動性を有する格子平面内に形成することができる。
【0029】
電気的に並列に接続された多数の同じようなトランジスタセルを有する半導体素子は、同じく多数のゲート構造体を備えている。隣接するゲート構造体の間において、SiC半導体本体は一方ではダイオード領域を有していない第1メサを形成し、他方ではダイオード領域を有する第2メサを形成している。第1メサ内には、トランジスタセルの本体領域を形成することができる。第1遮蔽領域はダイオード領域にのみ接し、第2遮蔽領域はダイオード領域と本体領域に接している。
【0030】
第1負荷電極は第1部分層と主層を備えることができる。第1部分層の少なくとも1つの第1区間はダイオード領域に接し、主層は第1部分層に接している。第1部分層は低いバリア高さ(英語でbarrier height)と低い使用電圧(閾値電圧)を有するショットキー接触と、SiC半導体本体内にpおよびnドープされた領域を有する低オーム接触とを可能にする。
【0031】
代替的にまたは追加して、第1負荷電極は構造化された部分層を備えることができる。この部分層がソース領域および/または遮蔽層の少なくとも1つに接するので、ショットキー接触の特性と、ドープされた領域のオーム接触を滅結合することができる。
【0032】
第1表面と第1負荷電極の間に、中間誘電体層を形成することができる。この中間誘電体層はゲート構造体から第1負荷電極を分離する。第1負荷電極はショットキー接触構造体を備えることができる。このショットキー接触構造体は垂直方向においてダイオード領域にわたってかつ中間誘電体層内の開口を通って、第1負荷電極から少なくともダイオード領域まで延在している。従って、ショットキー接触は直接およびわずかな寄生インダクタンスで接続されている。
【0033】
ショットキー接触構造体はそれぞれ直接ダイオード領域とそれぞれ2つの遮蔽領域に接触することができ、それによってダイオード領域はそれぞれ1つのpn接合を形成する。
【0034】
ダイオード領域は下側部分領域を有し、下側部分領域と第1表面の間に上側部分領域を有する。下側部分領域の第2平均幅は上側部分領域の第1平均幅よりも大きい。下側部分領域の第2平均幅は例えば、上側部分領域の第1平均幅の少なくとも120%(または少なくとも130%または少なくとも150%または少なくとも180%)である。その際、下側部分領域の垂直方向寸法は少なくとも50nmまたは少なくとも100nmである。ドリフトゾーンの方へのダイオード領域の拡張は、電圧を間接的に高めることを可能にする。この電圧から、逆方向電流が益々本体ダイオードを通って流れる。従って、逆方向電流が高い電流強さまで専らユニポーラ電流としてショットキー接触SCを経て運び去られるので、バイポーラ劣化を強く抑制することができる。
【0035】
図1は、半導体素子500を示す。この半導体素子は例えばIGFET(絶縁ゲートを有する電界効果トランジスタ)、例えばMOSFET(金属酸化膜半導体FET)である。略語MOSFETは金属ゲート電極を有するFETと、半導体ゲート電極を有するFETの双方を代表している。半導体素子500はIGBT(絶縁ゲートを有するバイポーラトランジスタ)またはMCD(MOS制御ダイオード)であってもよい。
【0036】
半導体素子500は、シリコンカーバイドで形成されたSiC半導体本体100を基礎としている。SiC半導体本体100は例えばシリコンカーバイド結晶を備えているかまたはシリコンカーバイド結晶からなっている。この場合、シリコンカーバイド結晶は主成分であるシリコンおよび炭素のほかに、ドープ原子および/または不純物、例えば水素原子および/または酸素原子を備えていてもよい。シリコンカーバイド結晶のポリタイプは例えば2H、6H、15Rまたは4Hである。
【0037】
SiC半導体本体100の前側の第1表面101は平らであるかまたはリブ付きである。平らな第1表面101上の垂線104またはリブ付き第1表面101の中心面上の垂線104は、垂直方向を定義している。平らな第1表面101またはリブ付き第1表面101の中心面に対して平行な方向は、水平方向および横方向である。
【0038】
半導体素子500はゲート構造体150を有するトランジスタセルTCを備えている。このゲート構造体はSiC半導体本体100の前側の第1表面101からSiC半導体本体100内に延在している。ゲート構造体150内には導電性のゲート電極155が形成されている。このゲート電極はSiC半導体本体100によって電気的に絶縁されている。ゲート構造体150の第1側壁151には、SiC半導体本体100内に形成された本体領域120が接している。ゲート誘電体159は少なくとも本体領域120をゲート電極155から分離している。
【0039】
本体領域120はドリフト構造体130と共に第1pn接合pn1を形成し、ソース領域110と共に第2pn接合pn2を形成している。ソース領域110は本体領域120と第1表面101の間に形成されている。本体領域120はソース領域110をドリフト構造体130から分離している。ドリフト構造体130は本体領域120と第1表面101とは反対側のSiC半導体本体100の第2表面102の間に形成されている。
【0040】
本体領域120とソース領域110は第1負荷電極310によって電気的に接続可能である。第1負荷電極310は半導体素子500のソース端子Sを形成するかまたはソース端子Sに電気的に接続または連結することができる。
【0041】
ドリフト構造体130は少なくとも1つのドリフトゾーン131を含んでいる。遮断時に、SiC半導体本体100内で効果的な電界は大部分がドリフトゾーン131内で弱まる。ドリフトゾーン131のドーピングと垂直方向寸法は、半導体素子500の普通の遮断可能性に合わせて設計されている。ドリフトゾーン131内の平均ドーピングは普通の遮断可能性に依存し、400V、特に1200Vと10kVの間の普通の遮断電圧にとって5×1015cm-3から5×1016cm-3までの範囲内にある。ドリフトゾーン131の垂直方向寸法は、400V、特に1200Vの普通の破壊電圧(英語でbreakdown voltage)と約1×1016cm-3の平均ドーピングを有する半導体素子500にとって、3μmから13μmまでの範囲内にある。
【0042】
ドリフト構造体130は、第2表面102に直接接する、強くドープされたベース領域139を有することができる。ベース領域139はドリフトゾーン131に直接接していてもよい。その代わりに、ドリフト構造体130はドリフトゾーン131と強くドープされたベース領域139の間に、ドリフトゾーン131の導電タイプのドープされた他の領域を有していてもよい。この場合、ドープされた他の領域の最大ドーパント濃度は、ドリフトゾーン131の最大ドーパント濃度よりも高く、そしてベース領域139の最大ドーパント濃度よりも低くてもよい。代替的にまたは追加して、ドリフト構造体130が第1表面101とドリフト領域131の間に、ドリフトゾーン131の導電タイプのドープされた他の領域、例えば電流分配領域および/またはドリフトゾーン131の導電タイプのバリア領域を有していてもよい。電流分配領域はドリフトゾーン131よりも強くドープされ、そしてオン状態でドリフトゾーン131の通過のために電荷担体流れを横方向に広げる。バリア領域は、本体領域120または本体領域120の導電タイプのドープされた他の領域のエミッタ効率に影響を与え、例えば低下させる。
【0043】
ドリフト構造体130は第2負荷電極320に電気的に接続されている。この第2負荷電極320は半導体素子500のドレイン端子Dを形成してもよいし、またドレイン端子Dに電気的に接続または結合してもよい。
【0044】
ゲート電極155と本体領域120の間には、ゲート不導体159が形成されている。このゲート誘電体はゲート電極155と本体領域120を分離している。ゲート誘電体159はゲート電極155をSiC半導体本体100の他の領域に対しても絶縁することができる。実施の形態に従って、ゲート誘電体159はゲート電極155をSiC半導体本体100から完全に絶縁することできる。他の実施の形態に従って、ゲート構造体150は他の絶縁構造体を備えることができる。この他の絶縁構造体はゲート誘電体159よりも大きな層厚を有することができ、ゲート誘電体159とは異なる物質的な組成を有することができ、および/または少なくとも他の絶縁材料を有することができる。
【0045】
SiC半導体本体100内には、少なくとも1個の第1遮蔽領域161と第2遮蔽領域162が形成されている。この遮蔽領域はそれぞれ、本体領域120の導電タイプである。第1と第2の遮蔽領域161、162内の最大ドーパント濃度は本体領域120の少なくとも2倍である。
【0046】
第1と第2の遮蔽領域161、162の間には、ダイオード領域140が形成されている。このダイオード領域は両遮蔽領域161、162に直接接し、両遮蔽領域161、162と共にそれぞれ垂直なpn型接合pn0を形成することができる。その際、第1遮蔽領域161はゲート構造体150寄りのダイオード領域140の側にあり、第2遮蔽領域162はゲート構造体150とは反対のダイオード領域140の側にある。第1遮蔽領域161の最大幅は第2遮蔽領域162の最大幅にほぼ等しい、すなわち製作誤差の範囲内で等しい。第1遮蔽領域161の最大垂直寸法は第2遮蔽領域162の最大垂直寸法にほぼ等しい。第1と第2の遮蔽領域161、162は実質的に同じ横方向および垂直方向ドーパント濃度変化を有することができる。
【0047】
ダイオード領域140は第1負荷電極310と共にショットキー接触SCを形成する。このショットキー接触SCは第1と第2の遮蔽領域161、162の間に形成されている。ダイオード領域140はドリフト構造体130、例えばドリフトゾーン131に直接接触している。ダイオード領域140内のドーパント濃度はドリフト領域131内のドーパント濃度に一致していてもよいし、またドリフト領域131内のドーパント濃度よりも高くてもよい。実施の形態に従って、ダイオード領域140内の平均ドーパント濃度はドリフト領域131内の平均ドーパント濃度の少なくとも2倍である。ショットキー接触SCは第1表面101に沿っておよび/またはトレンチ内に形成可能である。このトレンチは第1表面101からSiC半導体本体100内に延在している。
【0048】
次の説明は、n型チャネルトランジスタセルTCを有する半導体素子に関する。p型チャネルトランジスタセルを有する半導体素子にも同じことが当てはまる。ゲート電極155の十分に高い電圧はトランジスタセルTCをオンにする。本体領域120内でゲート不導体159に沿って、反転チャネルが電界効果によって形成される。この反転チャネルは電子のために、ソース領域110からドリフト構造体130への貫通経路を形成し、かつ負荷電流の本体領域120の通過を可能にする。
【0049】
ゲート電極155の電圧が閾値電圧よりも低下すると、トランジスタセルTCをオフにし、半導体素子500を遮断する。第1と第2の遮蔽領域161、162の電位が第1負荷電極310の電位に一致するので、第1と第2の遮蔽領域161、162は、ショットキー接触SCを、第2負荷電極320の電位に対して遮蔽する。第1と第2の遮蔽領域161、162はさらに、遮蔽領域161、162とドリフト構造体130の間の水平なpn型接合pn3の範囲内の電圧破壊を停止する。
【0050】
半導体素子500の逆方向バイアス状態では、第1pn型接合pn1が流れ方向に電極に接続されているので、第1pn型接合pn1を介しての電圧降下が第1pn型接合pn1によって形成された本体ダイオードの使用電圧を上回る限り、逆方向電流が第1pn型接合pn1と本体領域120を経て、第2負荷電極320と第1負荷電極310の間を流れることができる。
【0051】
第1pn型接合pn1を通る電流は、正孔と電子からなる双極の電荷担体流である。pn型接合の近くにおいておよび高いドーパント濃度変化を有する領域内において、正孔と電子の再結合が強まることになる。その際自由になるエネルギは、SiC結晶を益々損傷する結晶学的な欠陥の増大を促進する。例えば、格子平面の間のずれ(基礎面転位、BPD)はスタックエラー(スタッキング故障、SF)に変化し得る。このスタックエラーは4Hポリタイプのシリコンカーバイド内でとりわけ<0001>格子平面に沿って、ひいてはほとんどが主電流流れ方向に対して横方向にドリフト構造体130内を進み、第2負荷電極320と第1負荷電極310の間の電流の流れを妨害する。
【0052】
ショットキー接触SCが第1pn型接合pn1よりも低いバリア高さと低い流れ電圧を有するので、本体ダイオードの前にショットキー接触SCが動作する。従って、半導体素子500において逆方向バイパスされた状態でおよびトランジスタセルTCの反転チャネルのオフ時に、先ず電流の大部分がショットキー接触SCを通って流れる。本体ダイオードの使用電圧は例えば、25°Cのときに少なくとも2.7Vである。オンのトランジスタセルTCを通る電流の流れはユニポーラであり、1つのタイプの電荷担体だけからなっている。従って、トランジスタセルTCのオン状態でも、ドリフト構造体130内に目立った再結合が生じることがない。反転チャネルのオン時にもオフ時にも、スタックエラーの目立った増大をもたらし得る程度に、電荷担体の再結合を生じることになる。
【0053】
ショットキー接触SCを通る電流が増大するにつれて、ショットキー接触SCを介しての電圧降下は増大する。半導体素子500の動作時に、絶対最大定格(absolute maximum rating)内で、ショットキー接触SCを介しての電圧降下が内在の本体ダイオードの使用電圧よりも常に小さくなるように、ショットキー接触SCの特性を定めることができる。
【0054】
例えばブリッジ切換えまたは逆方向伝導状態のための低電圧DC/DCコンバータの整流ステップのような普通の用途では、ドランジスタチャナルが通常のごとく適切なゲート電圧をかけることによって開放されるので、比較的に短い時間だけ、電流が第1pn型接合pn1を経て流れる。しかし、ブリッジ切換え時に、同時にオンにしたローサイドとハイサイドのスイッチを介しての短絡を生じることを回避するために、ある程度の最小待ち時間(むだ時間、dead time)の後で初めて、トランジスタチャネルがオンにされる。従って、長いむだ時間または高いスイッチング周波数を有する用途では、第1pn型接合pn1を介しての短時間の電流の流れはスイッチング損失に大いに寄与する。
【0055】
第1pn型接合pn1によって形成されたバイポーラダイオードの使用電圧と比較して低いショットキー接触SCの使用電圧と、その低い順方向電圧とにより、半導体素子500内では、逆方向電流は大部分がショットキー接触SCを経て流れ、そこで少ない損失を発生する。さらに、ショットキー接触SCを通る電流の流れは、バイポーラ劣化に寄与しないユニポーラ電荷担体流れである。
【0056】
比較的強くドープされた第1と第2の遮蔽領域161、162は、高い電界に対してショットキー接触SCを遮蔽し、それによってショットキー接触SCを通る漏洩電流を低減する。第1と第2の遮蔽領域161、162はさらに、ショットキー接触SCのサージ電流挙動(英語でsurge current capability)を改善する。
【0057】
実施の形態では、第1表面101と、第1および第2の遮蔽領域161、162の下縁との間隔v3は、ゲート構造体150の垂直寸法v1よりも大きく、ひいては第1表面101と本体領域120の下縁との間隔よりも大きい。第1と第2の遮蔽領域161、162の比較的に大きな垂直方向寸法と、第1と第2の遮蔽領域161、162の下縁とショットキー接触SCとの間の大きな間隔は、遮蔽作用を改善することできる。
【0058】
実施の形態では、第1遮蔽領域161がゲート構造体150の第2側壁152に接していてもよいので、第1遮蔽領域161の遮蔽作用はショットキー接触SCとゲート構造体150の下縁の両方に及ぶ。
【0059】
図2Aと
図2Bは、複数のゲート構造体150を有する半導体素子500を示す。このゲート構造体は水平な第1方向191に対して直角に水平な縦方向寸法を有する。ゲート構造体150は真っ直ぐな帯状体として形成可能である。ゲート構造体150の一部は互いに同じ第1の中心-中心-間隔(英語でpitch)pt1で配置可能である。第1ピッチpt1をおいて隣接するそれぞれ2つのゲート構造体150の間のSiC半導体本体100の区間は、帯状の第1メサ181を形成することができる。このメサ内には、トランジスタセルTCの本体領域120を形成することができる。半導体素子500のオン状態で、本体領域120には反転チャネルが形成される。
【0060】
第2ピッチpt2内で隣接するそれぞれ2つのゲート構造体150の間のSiC半導体本体100の区間は、帯状の第2メサ182を形成することができる。このメサ内にはそれぞれ、1つの帯状ダイオード領域140または平行に延在する複数の帯状ダイオード領域を形成することができる。ダイオード領域140はそれぞれ、第2ピッチpt2内に配置された隣接する2つのゲート電極150の間に、第1負荷電極310と共にショットキー接触SCを形成している。
【0061】
第2ピッチpt2内に配置された隣接する2つのゲート電極150の間にはさらに、第1と第2の遮蔽領域161、162と、ダイオード領域140と共にそれぞれ垂直pn接合pn0を形成する他の遮蔽領域とを形成することができる。第2ピッチpt2は第1ピッチpt1よりも大きくてもよい。たとえば第1ピッチpt1は例えば第2ピッチpt2の少なくとも40%、精々60%である。
【0062】
実施の形態では、第2ピッチpt2は第1ピッチpt1の整数の多数倍である。それによって、ショットキー接触SCの配置は、個々のゲート構造体150、ソース領域110および本体領域120を簡単に覆い隠すことによって規則的なパターンで生じ得る。pt2がpt1の2倍よりも大きいと、水平な第1方向に沿って、1つよりも多いダイオード領域140を第2メサ182内に形成することができる。
【0063】
隣接するダイオード領域140の間の第3ピッチpt3は同様に、第1ピッチpt1の整数の多数倍とすることができる。例えばpt3≧3×pt1であるので、隣接するダイオード領域140の間には、少なくとも3つのゲート構造体150が形成されている。第3ピッチpt3はSiC半導体本体100にわたって変化させることができ、例えばSiC半導体本体100の中央の方へ増大または減少させてもよい。
【0064】
例えばトランジスタセルフィールド内において、第1表面101に対するダイオード領域140の面積割合は少なくとも15%、精々50%とすることができるので、半導体素子500にとって許容される最大逆方向電流の場合にも、ショットキー接触SCを介しての電圧降下が確実に本体ダイオードの使用電圧以下にとどまる。
【0065】
トランジスタセルTCは片側に反転チャネルを有するものでも両側に反転チャネルを有するものでもよい。図示した実施の形態では、本体範囲120がゲート構造体150の第1側壁と、反対側の第2側壁に直接接している。
【0066】
図3では、半導体素子500は4Hポリタイプのシリコンカーバイド結晶を有するSiC半導体本体100に基づいている。<0001>格子方向は垂線104に対して2°~8°の角度偏差αだけ傾斜していてもよい。<11-20>格子方向は第1表面101に対して角度偏差αだけ傾斜し、横断面に対して平行に延びている。<1-100>格子方向は横断面に対しておよび水平な第1方向191に対して直角に延びている。ゲート構造体150の第1側壁151は高い電荷担体可動性を有する(11-20)格子平面に対して平行に延在し、および/または(11-20)格子平面の方向から最大で2°だけ逸れている。第1側壁151とは反対側の第2側壁152は(11-20)格子平面の方向から角度偏差αの2倍だけ逸れていてもよく、および/または(11-20)格子平面の方向から角度偏差αの2倍の最大で2°だけ逸れていてもよい。
【0067】
格子構造体150の間のSiC半導体本体100の区間は、第1メサ181と第2メサ182を形成している。第1メサ181内と第2メサ182内には、本体領域120を形成することができる。この本体領域はそれぞれ、隣接する第1ゲート構造体150の第1側壁151に接している。さらに、第1メサ181はそれぞれ、他の遮蔽領域165を備えていてもよい。この遮蔽領域は隣接する第2ゲート構造体150の第2側壁に接している。本体領域120は例えば同じ第1メサ181内で、他の遮蔽領域165によって、隣接する第2ゲート構造体150から離隔してもよい。
【0068】
第2メサ182内にはそれぞれ、第1遮蔽領域161と第2遮蔽領域162が形成されている。第1遮蔽領域161は隣接する第2ゲート構造体150の第2側壁152に接している。第2遮蔽領域162は隣接する第1ゲート構造体150から離隔可能である。例えば第2遮蔽領域162は本体領域120と、同じ第2メサ182内のソース領域110とに接していてもよい。
【0069】
第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165はほぼ同じ最大幅および/または同じ最大垂直方向寸法および/またはほとんど同じ横方向および垂直方向ドーパント濃度推移を有することができる。
【0070】
第1遮蔽領域161と第2遮蔽領域162の間に、ダイオード領域140を形成してもよい。このダイオード領域140は、第1および第2の遮蔽領域161、162とのpn型接合pn0と、第1負荷電極310とのショットキー接触SCを形成することできる。
【0071】
図4Aに示す実施の形態では、ダイオード領域140の両側の2つのゲート構造体150の間の第2ピッチpt2が、第1メサ181の両側の第1ピッチpt1の2倍の大きさである。第1メサ181内にはそれぞれトランジスタセルTCが形成されている。
【0072】
中間誘電体層210はゲート構造体150内のゲート電極155から第1負荷電極310を分離している。第1負荷電極310はショットキー接触構造体319を含んでいてもよい。このショットキー接触構造体は中間誘電体層210を通って垂直方向に負荷電極310からダイオード領域140へ直接延在している。ショットキー接触構造体319は第1と第2の遮蔽領域161、162に直接接し、かつ第1と第2の遮蔽領域161、162とのオーム接合を形成していてもよい。
【0073】
図4Bでは、ダイオード領域140がドリフト領域131よりも少なくとも2倍高くドープされている。本体領域120とドリフト領域131の間に電流分配領域137を形成してもよい。この電流分配領域はゲート構造体150の第1側壁151に直接接し、そして半導体素子500のオン状態で負荷電流をドリフト領域131の方へ横方向に広げる。電流分配領域137はドリフト領域131よりも高いドーパント濃度を有する。
【0074】
電流分配領域137はそれぞれ、接する1つの遮蔽領域161、162、165から他の遮蔽領域161、162、165へ延在している。電流分配領域137の下縁と第1表面101の間隔は、遮蔽領域161、162、165の下縁と第1表面101の間隔よりも小さいかまたは等しいかまたは大きい。
【0075】
実施の形態では、ダイオード領域140と電流分配領域137が同じドーパント濃度と同じ垂直方向ドーパント濃度変化を有する。例えばダイオード領域140と電流分配領域137は同じ製造プロセスから生じ、例えばnドープのエピタキシから生じるかまたは同じ注入プロセスでのドープ原子の注入によって生じる。
【0076】
第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165はそれぞれ、部分領域169を備えることができる。この部分領域は第1表面101に対して、ゲート構造体150の下縁よりも大きな間隔を有する。部分領域169内において、第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165内の垂直方向ドーパント濃度変化はそれぞれ、局所的な最大値を有していてもよい。第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165内の垂直方向ドーパント濃度変化は、第1表面101とゲート構造体150の下縁との間の区間内に、絶対的または包括的な最大値を有することができる。
【0077】
第1負荷電極310は第1部分層311を有していてもよい。この第1部分層は第1および第2メサ181、182の範囲内で、第1表面101に直接接することができる。第1部分層311は、一方ではショットキー接触SCのための適切な仕事関数と、他方ではシリコンカーバイド内のpドープ領域およびnドープ領域との確実な低オーム接触とを形成する材料を有するかまたはこのような材料からなっていてもよい。第1部分層311は例えばニッケルアルミニウム(NiAl)および/またはドープされた多結晶シリコンを有するかまたはNiAl、ドープされた多結晶シリコンまたはこの両方からなっている。第1負荷電極310はさらに、例えば銅、アルミニウム、アルミニウムと銅の合金、アルミニウムとシリコンの合金またはアルミニウム、銅およびシリコンの合金からなる主層315を有することができる。
【0078】
図4Cにおいて、第1負荷電極310は構造化された第2部分層312を備えている。この第2部分層は第1メサ181の範囲内で第1表面101に直接接し、そして第2メサ182の範囲内において第1と第2遮蔽領域161、162およびソース領域110の範囲内で選択的に、第1表面101に接し、ダイオード領域140の少なくとも1つの区間にわたって接していない。第2部分層312はシリコンカーバイド内のpドープ領域およびnドープ領域との確実なオーム接触、特に低オーム接触を形成する材料を有するかまたはこのような材料からなっていてもよい。第2部分層312は例えばNiAlを有するかまたはNiAlからなっている。
【0079】
第1部分層311はダイオード領域140の範囲内において第1表面101に直接接し、そうでないときには第2部分層312によって第1表面101から離隔されている。第1部分層311はシリコンカーバイドに対して適切な仕事関数を有する材料、例えば元素の遷移金属または遷移窒化金属、例えばTi、TiNまたはMoNを有するかまたはこれらからなっている。第2部分層312が第1部分層311の堆積の前に、堆積、活性化および構造化可能であるので、第1部分層311の形成は第2部分層312によって影響を受けない。
【0080】
SiC半導体本体100の第1表面101は、
図4A~
図4Cに示すように、第1と第2のメサ181、182の範囲内では平らで平面である。他の実施の形態では、他のトレンチ構造体を設けることができる。この他のトレンチ構造体は、第1および/または第2メサ181、182の範囲内のゲート構造体150に追加して、SiC半導体本体100内に延在している。他のトレンチ構造体はゲート電極155に直接連結された導電性構造体を備えていない。他のトレンチ構造体は例えば導電性構造体を備えていないかまたは次のような導電性構造体だけを備えている。すなわち、他の電気的な端子なしに(フローティング状態で)、第1負荷電極310、半導体素子の補助部分および/または半導体素子の内部のネットワークノードに接続されている導電性構造体だけを備えている。
【0081】
図4Dでは、ダイオード領域140と第2遮蔽領域162の間において、補助トレンチ構造体190が第1表面101から第2メサ182内に延在している。この補助トレンチ構造体190は導電性補助材料195と補助誘電体199を備えることができる。この場合、補助不導体199はSiC半導体本体100から補助材料195を分離する。
【0082】
補助トレンチ構造体190はゲート構造体150と同じ寸法を有するかまたは少なくとも1つの寸法、例えば深さ、水平方向幅または水平方向長さがゲート構造体150と異なっている。補助誘電体199はゲート不導体159と同じ材料または同じ複数の材料、同じ構造的な構成および同じ層厚を有するかまたは少なくとも1つの構造的特徴が誘電体159と異なっている。補助材料195はゲート電極155と同じ1つまたは複数の材料を有していてもよい。
【0083】
補助材料195はゲート電極155から電気的に分離可能である。補助材料195は例えば、電気的な端子なしにまたは第1負荷電極310に電気的に接続されている。
図4Dの半導体素子500は、ショットキー接触を有していない類似の素子から出発して、ソース領域110と本体領域120のための注入マスクと、ゲート電極155と補助材料195を接触させるためのエッチングマスクを少しだけ変更して形成することができる。
【0084】
図4Eは半導体素子500を示す。この半導体素子は、ゲート構造体150と、ドリフトゾーン131、電流分配領域137、第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165を有するドリフト構造体130と、
図4A~
図4Cに関連して上述したようなトランジスタセルTCを備えている。第1遮蔽領域161と第2遮蔽領域162の間のダイオード領域140は、ドリフトゾーン131よりも少なくとも2倍だけ強くドープされている。ダイオード領域140の下側区間は第1表面101に対して、電流分配領域137と同じ距離を有し、かつ電流分配領域137と似たあるいは同じ垂直方向ドーパント濃度変化を有する。電流分配領域137の下縁と第1表面101の間隔は、第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165の下縁と第1表面101の間隔よりも小さいかまたは等しいかまたは大きい。
【0085】
第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165はそれぞれ、部分領域169と、この部分領域169と第1表面101の間の主領域167とを有する。部分領域169内において、第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165内の垂直方向ドーパント濃度変化はそれぞれ、局所的な最大値を有することができる。
【0086】
他の遮蔽領域165の部分領域169は横方向においてそれぞれ、他の遮蔽領域165の主領域167の外縁を越えて突出している。しかし、他の遮蔽領域165の部分領域169を、製作許容誤差の範囲内で横方向において他の遮蔽領域165の主領域167の外縁と面一にすることもできる。
【0087】
第1遮蔽領域161の部分領域169は、第1遮蔽領域161の主領域167とダイオード領域140の間の横方向エッジから後退させることができる。第2遮蔽領域162の部分領域169は、第2遮蔽領域162の主領域167の横方向エッジからダイオード領域140へ後退させることができる。しかし、第1遮蔽領域161の部分領域169および/または第2遮蔽領域162の部分領域を、製作許容誤差の範囲内で、横方向において第1遮蔽領域161または第2遮蔽領域162の主領域167の外縁と面一にすることもできる。
【0088】
第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165とそれに接するドープされた領域、例えばダイオード領域140の間の移行部の図示は、図において強く簡略化されている。移行部は実際には、平面に沿っても延在していないし、正確に直角にも延在していない。移行部はむしろ波形(英語で「wavy」)であり、角張っていると呼ばれる折り返し部は実際には湾曲している。このような波形の延在具合は、上述の製作許容誤差をもたらしうる。
【0089】
ダイオード領域140は下側の部分領域148と、上側の部分領域142を有する。上側の部分領域142は第1表面101から下側部分領域148まで延在可能である。ダイオード領域140の上側部分領域142は横方向において隣接する第1と第2の2つの遮蔽領域161、162の主領域167の間に形成され、第1中央幅w1を有する。下側部分領域148は隣接する第1と第2の2つの遮蔽領域161、162の部分領域169の間に形成され、第2中央幅w2を有する。この第2中央幅w2は第1中央幅w1の少なくとも120%である。幾つかの実施の形態では、第1中央幅w1と第2中央幅w2は同じである。下側部分領域148の垂直方向寸法v4は少なくとも50nm、例えば少なくとも100nmである。
【0090】
第1と第2の遮蔽領域161、162と、ドリフト構造体130の区間、特に低くドープされたドリフトゾーン131との間のpn接合pn3の水平区間の横方向幅は、非常に狭められている。第1と第2の遮蔽領域161、162の下縁とショットキー接触SCとの間のpn接合の大部分は、ドリフトゾーン131よりも高くドープされたダイオード領域140に対するpn接合である。
【0091】
第1と第2の遮蔽領域161、162とダイオード領域140との間のpn接合に沿ったダイオード領域140の高い導電性により、ショットキー接触SCを通る所定の電流に関して、pn接合に沿った電圧降下が小さくなる。それによって、或る電圧から本体ダイオードが逆方向電流を運ぶが、この電圧がずれることがある。逆方向電流はより高い電流強さまで、専らまたはほとんど専らユニポーラ電流としてショットキー接触SCを経て運び去ることができる。それによって、バイポーラの劣化メカニズムを十分に抑制することができる。
【0092】
下側部分領域148の横方向寸法は、例えば第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165の部分領域169を形成するための注入マスクの開口の幅の変化によって調節可能である。第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165の主領域167を形成するための注入マスク内の他の変化によって、第1中央幅w1を狭めることができるので、上側部分領域142内で、ショットキー接触SCに対する第1と第2の遮蔽領域161、162の遮蔽作用をさらに改善することできる。その際、ショットキー接触SCの両側の2つのゲート構造体150の間の第2ピッチpt2は変わらない。第1表面101に沿った接触範囲の面積、ひいては第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165およびソース領域110に対する接触抵抗は、そのままである。
【0093】
図5Aは、SiC半導体本体100内に第1導電性タイプのダイオード領域140を有する半導体素子500に関する。このダイオード領域140はそれぞれ、負荷電極310と共にショットキー接触SCを形成する。水平な第1方向に沿って、それぞれ隣接する2つのダイオード領域140の間に、少なくとも1つのゲート構造体150を形成することができる。ゲート構造体150は第1表面101からSiC半導体本体100内に延在している。ゲート構造体150の少なくとも1つの第1側壁151は、負荷電極310に電気的に接続された、第2導電性タイプの本体領域120に接している。
【0094】
ゲート構造体150はほぼV字状の垂直方向横断面を有するトレンチ内に形成可能である。ゲート電極155はゲート構造体150の側壁と底に沿ってほぼ同じ層厚に形成可能である。側壁151、152は、同じかまたはほぼ同じである高い電荷担体可動性を有する格子平面に対して平行に形成可能である。
【0095】
ゲート構造体150の間のSiC半導体本体100の区間は第1メサ181と第2メサ182を形成している。第1メサ181はそれぞれ本体領域120を取り囲んでいる。この本体領域は隣接する第1ゲート構造体150の第2側壁152から、隣接する第2ゲート構造体150の第1側壁151まで延在することができる。第1メサ181はそれぞれ、隣接する両ゲート構造体150に沿ってソース領域110を有する。ソース領域110の間において、本体領域120は強くドープされた本体接触領域129を有することができる。この本体接触領域は第1表面101から本体領域120内へ延在することができる。第1メサ181はそれぞれ2つのトランジスタセルTCを含むことができる。
【0096】
第2メサ182は同様にそれぞれ2つのトランジスタセルTCを含むことができる。このトランジスタセルはそれぞれ隣接する両ゲート構造体150の1つに接している。両トランジスタセルTCの間において、ショットキー接触SCが負荷電極310とダイオード領域140の間に形成されている。横方向において、ダイオード領域140はそれぞれ本体領域120の1つおよび/または本体接触領域129の1つに接することができる。
【0097】
ショットキー接触SCの両側の2つのゲート構造体150間の第2ピッチpt2は、第1メサ181の両側の隣接する2つのゲート構造体間の第1ピッチpt1の整数倍とすることができる。
【0098】
図5Bに従い、ショットキー接触SCの両側で、深い第1と第2の遮蔽領域161、162は第1表面101からSiC半導体本体100内へ延在することができる。この場合、第1と第2の遮蔽領域161、162の下縁と第1表面101との垂直方向間隔v3は、SiC半導体本体100内のゲート構造体150の垂直方向寸法v1よりも大きくすることできる。
【0099】
図6に従い、ゲート構造体150の第1と第2の側壁151、152は、第1表面101に対して垂直に延在していてもよい。第1メサ181内にはそれぞれ2つのトランジスタセルTCが形成されている。この場合、トレンチ接触316は第1負荷電極310から第1と第2のメサ181、182内に延在している。
【0100】
ゲート構造体150、トレンチ接触316および第1と第2のメサ181、182は、帯構造体であってもよい。代替的に、ゲート構造体150および/またはトレンチ接触316はそれぞれ格子を形成することができる。代替的に、第1と第2のメサ181、182は格子状に形成されたメサの区間を形成することができる。
【0101】
トレンチ接触316の垂直方向寸法は、SiC半導体本体100内のゲート構造体150の垂直方向寸法v1にほぼ一致していてもよい。
【0102】
第1と第2と場合によって設けられる他の遮蔽領域161、162、165は、トレンチ接触316の下方で、強くドープされた遮蔽接触領域168を有することができる。この遮蔽接触領域はトレンチ接触316と各遮蔽領域161、162、165の主区間の間に形成可能である。第1と第2と場合によって設けられる他の遮蔽領域161、162、165の横方向寸法は、トレンチ接触316の横方向寸法よりも大きくてもよい。遮蔽領域161、162、165はトレンチ接触316の側壁に沿って、ソース領域110まで延在することできる。この場合、遮蔽領域は本体領域120によって、隣接するゲート構造体150から離隔されたままである。
【0103】
第2メサ182内にはそれぞれ2つのトレンチ接触316を、その間にあるダイオード領域140の両側に形成することができる。この場合、第1と第2の遮蔽領域161、162はトレンチ接触316に沿って第1表面101まで延在することでき、ダイオード領域140との垂直方向pn型接合pn0を形成する。
【0104】
図7の実施の形態では、ダイオード領域140がそれぞれ、遮蔽領域160と本体領域120の間で第1表面101から電流分配領域137まで延在している。
【0105】
図8A~
図8Cは、
図4Eに示した半導体素子500を製造するための方法を示す。その際、
図4Eの半導体素子500のSiC半導体本体100は、シリコンカーバイド基板、例えばSiCウェハまたはエピタキシャル層の一部を形成し、SiC半導体本体100の第1表面101はシリコンカーバイド基板の前側の主面に相当する。
【0106】
SiC半導体本体100の第1表面101上に第1マスク材料が堆積され、写真印刷法によって構造化される。この場合、第1マスク層から、第1開口415を有する注入マスク410が生じる。第1注入マスク410の開口415を通って、大きな注入エネルギがアクセプタ原子に注入される。
【0107】
図8Aは第1注入マスク410と、注入されたアクセプタ原子によって形成された部分領域169を示す。この部分領域は第1マスク開口415の下方にあり、第1表面101に対して間隔をおいて形成される。
【0108】
第1注入マスク410が取り外される。第2マスク層が堆積され、写真印刷法によって構造化される。第2マスク層から第2注入マスク420が生じる。第2注入マスク420の開口425を通って、他のアクセプタ原子が注入される。この場合、最大注入エネルギは、部分領域169の形成時の最小注入エネルギよりも少ない。
【0109】
図8Bは第2注入マスク420と、注入されたアクセプタ原子によって形成された主領域167を示す。この主領域は第2開口425の下方で、第1表面101と部分領域169の間に形成されている。主領域167の間のSiC半導体本体100の範囲への他の注入は、ソース領域110、本体領域120、電流分配領域137およびダイオード領域140を形成する。他の注入は部分領域169および/または主領域167の形成の前または後で行うことができる。ゲートトレンチが形成される。この場合、ゲートトレンチの第1側壁には、ソース領域110、本体領域120および電流分配領域137が形成され、そして第1側壁とは反対側の第2側壁には、主領域167と部分領域169が形成されている。
【0110】
図8Cは、ダイオード領域140と、
図4Eに基づいて上述したような第1、第2および他の遮蔽領域161、162、165とを有するSiC半導体素子500の区間を示す。
【0111】
図9A~
図9Cは、部分領域169を形成するための注入マスクが主領域167を形成するための注入マスクから生じる方法を示す。
【0112】
図9Aは第1表面101上の第3注入マスク430を示す。第3注入マスク430の開口435を通って、アクセプタ原子がSiC半導体本体100に注入される。
【0113】
図9Aは、注入されたアクセプタ原子によって形成された、第1、第2および他の遮蔽領域の主領域167を示す。ダイオード領域140の上方の第3注入マスク430の区間に選択的にスペーサ431を形成することにより、第4注入マスク440が形成される。第4注入マスク内の開口445を通って、注入エネルギがアクセプタ原子に注入される。この注入エネルギは主領域167を形成するための最大注入エネルギよりも大きい。
【0114】
図9Bは、注入されたアクセプタ原子によって形成された部分領域169を示す。この部分領域は一部が主領域167よりも狭い横方向幅を有する。
【0115】
図9Cは、ゲート構造体150、ソース領域110、本体領域120および電流分配領域137を形成した後のSiC半導体本体100を示す。
【符号の説明】
【0116】
100 SiC半導体本体
101 表面
120 本体領域
140 ダイオード領域
150 ゲート構造体
151 側壁
161、162 第1と第2の遮蔽領域
310 負荷電極
SC ショットキー接触