(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240326BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240326BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240326BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240326BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240326BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/78 F
H01L21/78 P
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
B24B27/06 M
B24B41/06 L
B24B49/12
B24B55/06
(21)【出願番号】P 2020023126
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 直子
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-161944(JP,A)
【文献】特開2010-087141(JP,A)
【文献】特開2015-109381(JP,A)
【文献】特開2001-319899(JP,A)
【文献】特開2009-200422(JP,A)
【文献】特開2006-024586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
B24B 27/06
B24B 41/06
B24B 49/12
B24B 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する複数の分割予定ラインで区画された領域にそれぞれデバイスが形成された表面を有する被加工物の加工方法であって、
可視光に対して透過性を有するテープを被加工物の表面に貼着する被加工物準備ステップと、
少なくとも一部が透明な保持部材を有した保持テーブルで該テープを介して該被加工物の該表面側を保持する保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該保持部材と該テープとを介して該保持テーブルで保持された該被加工物の該表面を撮像カメラで撮像して該分割予定ラインの位置を検出する分割予定ライン位置検出ステップと、
該分割予定ライン位置検出ステップを実施した後、先端がV形状を有する切削ブレードで該分割予定ラインに沿って該被加工物の裏面
から切削し
、溝の浅い部分の幅が溝の深い部分よりも幅広となる
V字形状の溝形成するハーフカットを実施する第一切削ステップと、
直線状の先端を有する切削ブレードで残存部分を切断し、直線状の溝を形成するフルカットを実施する第二切削ステップと、
該
第二切削ステップを実施した後、
該テープで該被加工物の該表面を保護したまま、該被加工物の該裏面を洗浄液で洗浄する洗浄ステップと、を有する被加工物の加工方法。
【請求項2】
交差する複数の分割予定ラインで区画された領域にそれぞれデバイスが形成された表面を有する被加工物の加工方法であって、
可視光に対して透過性を有するテープを被加工物の表面に貼着する被加工物準備ステップと、
少なくとも一部が透明な保持部材を有した保持テーブルで該テープを介して該被加工物の該表面側を保持する保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該保持部材と該テープとを介して該保持テーブルで保持された該被加工物の該表面を撮像カメラで撮像して該分割予定ラインの位置を検出する分割予定ライン位置検出ステップと、
該分割予定ライン位置検出ステップを実施した後、先端がV形状を有する切削ブレードで該分割予定ラインに沿って該被加工物の裏面
から切削し
、溝の浅い部分の幅が溝の深い部分よりも幅広となる溝
であって、該テープに到達する溝を形成する切削ステップと、
該切削ステップを実施した後、該被加工物の該裏面を洗浄液で洗浄する洗浄ステップと、
該切削ステップを実施した後、
該テープで該被加工物の該表面を保護したまま、該被加工物の該裏面を洗浄液で洗浄する洗浄ステップと、を有する被加工物の加工方法。
【請求項3】
該被加工物準備ステップでは、該被加工物の表面に溝加工を行わない状態において、該テープを該表面に貼着する、
ことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差する複数の分割予定ラインで区画された領域にそれぞれデバイスが形成された表面を有する被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交差する複数の分割予定ラインで区画された領域にそれぞれデバイスが形成された表面を有する半導体ウェーハを被加工物とし、この被加工物を高速回転する切削ブレードで分割予定ラインに沿って切削加工するための切削装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ウェーハユニットを保持する保持手段と、ウェーハを切削する切削手段と、ウェーハを洗浄する洗浄手段とを具備する切削装置が開示されている。この種の切削装置では、切削加工によってウェーハに切削溝を形成した後、洗浄手段にてウェーハが洗浄される。
【0004】
洗浄手段は、スピンナーテーブル機構によりウェーハを保持して高速回転させつつ、ウェーハの上方に位置付けた洗浄液噴射ノズルから洗浄液を噴射するように構成される。このような洗浄方法はスピン洗浄といわれ、切削工程でウェーハに付着した切削屑(異物、コンタミ)の除去が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のスピン洗浄においては、回転する被加工物の上方から洗浄液が供給されるため、洗浄液が切削溝に入り込み難く、切削溝に入り込んだ切削屑が洗い流されないままに残存してしまうことがあった。
【0007】
この切削屑は、後に分割予定ラインに沿ってウェーハが分割されてチップに個片化された後に、そのままチップ側面に付着したまま残存してしまうことになる。そして、この切削屑が例えばピックアップ時に落下しデバイスに付着することでデバイスが損傷し、デバイス不良等の不具合を生じさせてしまうおそれがある。
【0008】
以上に鑑み、本願発明は、切削溝を形成する切削工程と、その後にスピン洗浄を実施する洗浄工程と、を含む加工方法において、切削工程にて生じる切削屑をより確実に洗い流し、切削屑が残存しないようにするための新規な加工方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、
交差する複数の分割予定ラインで区画された領域にそれぞれデバイスが形成された表面を有する被加工物の加工方法であって、
可視光に対して透過性を有するテープを被加工物の表面に貼着する被加工物準備ステップと、
少なくとも一部が透明な保持部材を有した保持テーブルで該テープを介して該被加工物の該表面側を保持する保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該保持部材と該テープとを介して該保持テーブルで保持された該被加工物の該表面を撮像カメラで撮像して該分割予定ラインの位置を検出する分割予定ライン位置検出ステップと、
該分割予定ライン位置検出ステップを実施した後、先端がV形状を有する切削ブレードで該分割予定ラインに沿って該被加工物を切削し溝の浅い部分の幅が溝の深い部分よりも幅広となる溝を形成する切削ステップと、
該切削ステップを実施した後、該被加工物の該裏面を洗浄液で洗浄する洗浄ステップと、を有する被加工物の加工方法とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、溝の浅い部分の幅が溝の深い部分よりも幅広となる溝が形成されるため、洗浄ステップにおいて洗浄液が溝内に進入し易くなり、溝に入り込んだ切削屑を確実に洗い流すことができ、チップの側面や裏面に切削屑が残存してしまうことを防止できる。また、溝内に進入した切削液も切削屑とともに排出されやすい状況を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施に使用される切削装置の一実施形態の斜視図である。
【
図2】支持ボックス及び保持テーブル部分の分解斜視図である。
【
図3】(A)は支持ボックス上に搭載された保持テーブルの斜視図である。(B)は下方撮像機構及びその支持構造の斜視図である。
【
図4】保持テーブルの断面形状等について示す図である。
【
図5】(A)は、下方撮像機構の構成について示す側面概要図である。(B)は、プリズム本体の別実施形態について示す図である。
【
図6】下方撮像機構の構成について示す正面概要図である。
【
図7】(A)は被加工物の一例であるウェーハの表面を表す図である。(B)は被加工物の一例であるウェーハの裏面を表す図である。
【
図8】保持テーブルと下方撮像機構の位置関係について説明する図である。
【
図10】スピンナー洗浄ユニットについて説明する図である。
【
図11】(A)はV字形状の溝を形成する切削ステップについて説明する図である。(B)は切削ステップによりチップに分割された様子について説明する図である。
【
図12】(A)はV字形状の溝を形成する切削ステップについて説明する図である。(B)は直線状の溝を形成するフルカットする様子について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る切削装置2について示す斜視図である。なお、本発明は以下に説明される切削装置の他、レーザーにて被加工物を加工する加工ユニットであって、レーザービームを発生させる発振器とレーザービームを被加工物に集光する集光器とを備えた加工ユニットを有するレーザー加工装置においても適用できる。
【0013】
図1に示すように、切削装置2の基台4には、保持テーブル27が移動機構23(
図3(A))によりX軸方向に往復動可能に配設されている。保持テーブル27の周囲にはウォーターカバー14が配設されており、このウォーターカバー14と基台4にわたり蛇腹16が連結されている。
【0014】
図1に示すように、基台4の前側角部には、後述する被加工物を収容するカセット20を載置するためのカセット載置台21が設けられる。
【0015】
図1に示すように、基台4上には門型形状のコラム24が立設されており、コラム24にはY軸方向に伸長する一対のガイドレール26が固定されている。ガイドレール26に対しY軸移動ブロック28が移動可能に設けられており、ボールねじ30とパルスモータ32とからなるY軸移動機構34によって、Y軸移動ブロック28がガイドレール26に案内されてY軸方向に移動する。
【0016】
図1に示すように、Y軸移動ブロック28にはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール36が固定されている。ガイドレール36に対しZ軸移動ブロック38が移動可能に設けられており、ボールねじ40とパルスモータ42とからなるZ軸移動機構44によって、Z軸移動ブロック38がガイドレール36に案内されてZ軸方向に移動する。
【0017】
図1に示すように、Z軸移動ブロック38には切削ユニット46及び上方撮像機構52が取付けられている。切削ユニット46は、
図9に示すように、図示せぬモータにより回転駆動されるスピンドル48の先端部に切削ブレードB1を着脱可能に装着して構成されている。
【0018】
図1に示すように、基台4上には、スピンナーテーブル56を有するスピンナー洗浄ユニット54が設けられており、切削加工後の被加工物をスピンナーテーブル56で吸引保持してスピンナー洗浄するとともに、スピン乾燥できるようになっている。
【0019】
図2は、保持テーブル27の構成について説明する図である。
保持テーブル27は環状ベース62と、円盤状の保持部材74とを有する。環状ベース62は、嵌合部64と、嵌合部64より大径のベルト巻回部66と、嵌合部64軸方向に貫通する貫通部65と、貫通部65を塞ぐ透明部材68と、を有する。
【0020】
図2に示すように、環状ベース62の上面には、円盤状の保持部材74の枠部74bを載置して固定するための被装着領域70が設けられる。
【0021】
図2に示すように、保持部材74は、円盤状の保持部74aと、その周囲を取り囲む枠部74bを有して構成される。保持部74aは、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等の透明部材にて構成されている。なお、透明部材の「透明」とは、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」ことをいうものであり、後述する外周凸部検出ステップや、分割予定ライン検出ステップの実行を可能とするものであればよく、着色されたものであってもよい。また、保持部材74の一部の必要な範囲にのみ透明領域を構成することとしてもよい。以上のようにして、保持部材74の保持部74aにて、保持テーブル27に透明領域が構成される。
【0022】
図4に示すように、保持部74aの上面は、ウェーハWを保持する保持面74cを形成する。保持面74cにおいて、保持部74aの外周縁に近い箇所には、環状の吸引溝76が同心状に複数設けられており(本実施例では3列)、この吸引溝76にテープTが吸着保持される。吸引溝76は、保持部材74が環状ベース62に取付けられた状態で吸引源89に接続される。
【0023】
図2及び
図4に示すように、環状ベース62の上面には、保持部材74の周囲を取り囲むように、ウェーハユニット8の環状フレームFを下側から支持するフレーム支持部72が4箇所に設けられる。
【0024】
図2及び
図4に示すように、フレーム支持部72は、環状フレームFを支持する支持面を構成する支持ブロック72aと、環状フレームFの下側から吸着保持する吸着部72bと、を有し、吸着部72bは、吸引源89に接続される。
【0025】
図2及び
図4に示すように、保持テーブル27の環状ベース62には、保持部材74の保持部74aとほぼ同径の貫通部65が形成されており、貫通部65の下部が透明部材68(例えば、ガラス)にて閉鎖される。これにより、下側から順に、透明部材68、貫通部65、保持部材74の保持部74aが配置され、これらの部位において光が透過することで、詳しくは後述するように、保持テーブル27の下方からの撮像が可能となる。なお、透明部材68は省略することとしてもよい。
【0026】
図2に示すように、保持部材74を環状ベース62の被装着領域70上に搭載し、環状ベース62から下方に突設される環状の嵌合部64を支持ボックス15の円形開口15aに嵌合させることで、
図3(A)に示すように保持テーブル27が支持ボックス15に回転可能に搭載された状態となる。
【0027】
図3(A)に示すように、支持ボックス15の連結板15bにはモータ17が取付けられており、モータ17の出力軸に連結されたプーリー17aと環状ベース62のベルト巻回部66に渡りベルト29が巻回される。モータ17を駆動すると、ベルト29を介して保持テーブル27が回転される。
【0028】
図3(A)に示すモータ17は、例えばパルスモータから構成され、アライメント遂行時にモータ17を所定パルスで駆動すると、保持テーブル27が所定量回転(θ回転)されて、
図7(A)に示すウェーハWの分割予定ライン(ストリート)13のアライメントを行うことができる。
【0029】
図3(A)に示すように、支持ボックス15は、X軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール31にスライド可能に載置されており、移動機構23によりX軸方向に移動される。移動機構23は、ガイドレール31の間に平行に配置されるボールネジ23aと、パルスモータ23bを有して構成される。
【0030】
図3(A)に示すように、ボールネジ23aは支持ボックス15の下板15eの下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ23bを駆動してボールネジ23aを回転させることで、支持ボックス15がX軸方向に移動する。
【0031】
図3(A)に示すように、支持ボックス15の近傍には、保持テーブル27に保持された半導体ウェーハ等の被加工物を保持部材74の下側から撮像する下方撮像機構82が設けられている。
【0032】
図8に示すように、支持ボックス15は、上板15c、下板15e、及び、連結板15bにて側面視において略コ字をなしており、連結板15bの反対側には、上板15cと下板15eの間の空間に下方撮像機構82の進入を可能とする開口部15gが形成される。
【0033】
図3(A)(B)に示すように、下方撮像機構82は、Y軸移動ブロック83に立設されるコラム96に設けられる。Y軸移動ブロック83は、Y軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール81にスライド可能に載置されており、駆動手段87によりY軸方向に移動される。駆動手段87は、ガイドレール81の間に平行に配置されるボールネジ87aと、パルスモータ87bを有して構成される。
【0034】
図3(A)に示すように、ボールネジ87aはY軸移動ブロック83の下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ87bを駆動してボールネジ87aを回転させることで、Y軸移動ブロック83がY軸方向に移動する。
【0035】
図3(B)に示すように、下方撮像機構82は、プリズム機構Pと、撮像カメラCと、を有して構成される。
【0036】
図5(A)、及び、
図6に示すように、プリズム機構Pは、プリズム本体90と、光源92と、プリズム本体90、及び、光源92を収容する筐体84と、を有して構成される。
【0037】
図5(A)に示すように、プリズム機構Pのプリズム本体90は、側面視において約45度の角度の傾斜をなす反射面90aを有するいわゆる直角プリズム(側面視直角三角形)にて構成される。
【0038】
図5(A)に示すように、筐体84において、反射面90aに対して斜め45度上方の位置、即ち、プリズム本体90に対して上方となる位置には、第一通過口85aが形成されている。反射面90aは第一通過口85aを通じて保持テーブル27に対向する。
【0039】
図5(A)に示すように、筐体84において、反射面90aに対し斜め45度下方の位置、即ち、プリズム本体90に対して側方となる位置には、第二通過口85bが形成されている。
【0040】
以上のようにして、
図5(A)に示すように、第一通過口85aから進入する光H1が、反射面90aで反射して90度屈折し、第二通過口85bから出射される。
【0041】
なお、
図5(A)に示すプリズム本体90のように、反射面90aで光H1を直接反射させる他、
図5(B)に示すプリズム本体90Aのように、プリズム本体90A内に光H1を透過させて反射面90bで光H1を屈折させることとしてもよい。この場合、光路長を長く形成することができ、各部品の干渉を避けるなどの設計が可能となる。
【0042】
図5(A)及び
図6に示すように、筐体84内には、例えばLEDからなる光源92が収容されており、筐体84の上面には、光源92の光を透過させるための光透過口86が形成されている。本実施例では、プリズム本体90を挟んで両側に3個づつ光源92が配置され、各光源92に対応する位置に光透過口86が形成される。
【0043】
図6に示すように、光源92から照射される光H2は、上方に配置される保持テーブル27に保持されたウェーハWの下面に向けて照射され、その反射した光H1がプリズム本体90に入射する。なお、光源92は、照射される光H2が撮像カメラC(
図5(A))の焦点位置を照らすように傾斜して配置され、光H2の光軸が傾斜するように構成される。
【0044】
図5(A)に示すように、撮像カメラCは、鏡筒91と、鏡筒91の一端側に設けられる対物レンズ93と、鏡筒91の他端側に設けられる撮像素子95と、を有して構成される。
【0045】
図5(A)に示すように、鏡筒91は、第二通過口88bに接続されるように設けられ、対物レンズ93がプリズム本体90の反射面90aに対向するように配置される。
【0046】
図5(A)に示すように、対物レンズ93を通過した光H1は撮像素子95にて受光され、図示せぬ画像処理装置により画像データ化される。
【0047】
図3(B)に示すように、下方撮像機構82を構成するプリズム機構Pや撮像カメラCは、支持プレート94により支持され、支持プレート94の基端部はZ軸移動ブロック98に固定されている。Y軸移動ブロック83(
図3(A))に立設されるコラム96には、ボールねじ100及びパルスモータ102から構成されるZ軸移動手段104が設けられ、Z軸移動ブロック98が一対のガイドレール106に沿ってZ軸方向(上下方向)に移動され、これに伴って、下方撮像機構82もZ軸方向(上下方向)に移動される。
【0048】
図10は、ウェーハWを洗浄するためのスピンナー洗浄ユニット54の一部側面断面図である。スピンナー洗浄ユニット54は、スピンナーテーブル機構154と、スピンナーテーブル機構154を包囲するように配設される液体受け機構156を具備している。
【0049】
スピンナーテーブル機構154は、ウェーハWを吸引保持するスピンナーテーブル(保持テーブル)158と、スピンナーテーブル158を支持する支持部材160と、支持部材160を介してスピンナーテーブル158を回転駆動する電動モータ162と、を有して構成される。
【0050】
スピンナーテーブル158にはクランプ144が設けられ、スピンナーテーブル158が回転されるとこれらのクランプ144が遠心力で揺動し、
図7(B)に示す環状のフレームFをクランプして保持する。
【0051】
液体受け機構156は、液体受け容器156aと、支持部材160に装着されたカバー部材156bとを有して構成され、洗浄液などの液体を受けるとともに、図示せぬ排出経路を通じて排液が排出されるように構成される。
【0052】
液体受け容器156aで囲まれる空間内には、洗浄液140を吐出するための洗浄液吐出ノズル170が設けられている。洗浄液吐出ノズル170は、略L字形状のアーム171の先端に形成されており、アーム171の他端は電動モータ172によって揺動されるようになっている。アーム171は、洗浄液供給路173、及び、開閉制御弁174を通じて洗浄液供給源175に接続されている。洗浄液140は、例えば純水である。
【0053】
さらに、液体受け容器156aで囲まれる空間内には、乾燥エアーを噴出するための乾燥エアー噴出ノズル180が設けられている。
【0054】
乾燥エアー噴出ノズル180は、略L字形状のアーム181の先端に形成されており、アーム181の他端は電動モータ182によって揺動されるようになっている。アーム181は、乾燥エアー供給路183、及び、開閉制御弁184を通じて乾燥エアー供給源185に接続されている。
【0055】
以上の構成とするスピンナー洗浄ユニット54において、まずは、洗浄液吐出ノズル170をウェーハWの上方に位置付けるとともに、ウェーハWを所定の速度で回転させ、ウェーハWに向けて洗浄液140を吐出してスピン洗浄が行われる。
【0056】
スピン洗浄を実施した後、乾燥エアー噴出ノズル180をウェーハWの上方に位置付けるとともに、ウェーハWを所定の速度で回転させ、ウェーハWに向けて乾燥エアーを吹き付けることで、スピン乾燥が行われる。
【0057】
次に、以上の装置構成を用いた加工例について説明する。
<被加工物準備ステップ>
可視光に対して透過性を有するテープを被加工物の表面に貼着するステップである。
図7(A)(B)は、被加工物の一例であるウェーハWを示すものである。ウェーハWは、例えば半導体にて構成される基板10の裏面10bに、電極やダイボンド材となる金属膜12が成膜されたものである。
【0058】
図7(A)に示すように、ウェーハWを構成する基板10の表面10aには、デバイス11が格子状に配列され、分割予定ライン13(ストリート)に沿って切削加工が施されることにより、チップに分割されるものである。基板10は、例えば、厚さが100μmのSiCウェーハである。
【0059】
図7(B)は、ウェーハWの裏面側を示すものであり、ウェーハWを構成する基板10の裏面10bに、金属膜12が形成されている。金属膜12の材質や構造、厚み等に特段の制限はないが、例えば、チタンと銅との積層構造や、ニッケルとプラチナと金との積層構造、ニッケルと金との積層構造、銀の単層構造等である。
【0060】
また、
図7(B)に示すように、金属膜12を上側にして露出させるとともに、ウェーハWの表面WaをテープTに貼着し、テープTを介して環状フレームFとウェーハWを一体とするウェーハユニット8が構成される。
【0061】
以上のようなウェーハユニット8を構成することで、表面Waのデバイス11をテープTにて保護しつつ、ウェーハWがハンドリング可能な状態とされる。なお、環状フレームFを用いずに、ウェーハWの表面Waにテープを貼着して保護することとしてもよい。
【0062】
また、
図7(B)において、テープTは透明、即ち、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」特性を有することとし、後述する分割予定ライン検出ステップの実行を可能とするものである。また、テープTは着色されたもであってもよく、伸縮性のある樹脂製のテープにて構成することができる。また、テープTを用いる代わりに、ガラスや樹脂等からなる板状のハードプレートにてウェーハWの表面Waを保護してハンドリングすることとしてもよい。
【0063】
なお、被加工物としては、金属膜12が形成されていないものも対象となる。即ち、本発明は、デバイス11が形成される表面WaをテープTに貼着して保護しつつ、表面Waの分割予定ラインを撮像するアプリケーションについて、幅広く好適に採用し得る。
【0064】
<保持ステップ>
図8に示すように、少なくとも一部が透明な保持部材74を有した保持テーブル27でテープTを介して被加工物(ウェーハW)の表面Wa側を保持するステップである。
【0065】
ウェーハWは、テープTを介して保持テーブル27の保持部材74に吸引保持される。テープTと保持部材74は、上述したように透明にて構成されるものである。
【0066】
<分割予定ライン検出ステップ>
図8に示すように、保持ステップを実施した後、保持部材74とテープTとを介して保持テーブル27で保持された被加工物(ウェーハW)の表面Waを撮像カメラC(
図5(A))で撮像して分割予定ライン13(
図7(A))の位置を検出するステップである。
【0067】
具体的には、
図8に示すように、Y軸移動ブロック83を移動させることで、下方撮像機構82をウェーハWの下方に位置付け、保持テーブル27の保持部材74、テープTを介して、ウェーハWの表面Waを撮像するとともに、撮像画像をもとにウェーハWの分割予定ライン13(
図7(A))が検出される。
【0068】
<切削ステップ>
図11(A)(B)に示すように、分割予定ライン位置検出ステップを実施した後、先端がV形状を有する切削ブレードB1で分割予定ライン13に沿って被加工物(ウェーハW)を切削し、溝の浅い部分の幅が溝の深い部分よりも幅広となる溝M1を形成するステップである。
【0069】
具体的には、
図9に示すように、切削ユニット46の切削ブレードB1の位置を、分割予定ライン検出ステップで検出された分割予定ライン13(
図7(A))の位置に合わせるとともに、切削ユニット46を所定の高さに位置付け、保持テーブル27を加工送り方向(X軸方向)に移動させることで、切削加工が行われる。
【0070】
図9に示すように、一つの分割予定ライン13(
図7(A))について切削加工を行った後、切削ブレードB1をY軸方向にインデックス送りを行って、隣の分割予定ラインについて同様に切削加工を行う。
【0071】
図7(A)において、第一の方向(例えば、X軸方向)に伸びる全ての分割予定ライン13について切削加工を行った後、保持テーブル27(
図9)を90度回転させ、
図7(A)において第二の方向(例えば、Y軸方向)について、同様の切削加工が実施される。
【0072】
以上の切削加工により、
図11(A)(B)に示す例では、溝の浅い部分の幅が溝の深い部分よりも幅広となるV字形状の溝M1が形成され、溝M1がウェーハ10を貫通してテープTまで到達するようにフルカットが行われる。これにより、溝M1の両側にチップ5,5が形成された状態となり、各チップ5,5の側面5aが傾斜面となる。
【0073】
なお、
図12(A)(B)に示すように、第一切削ステップとして、V形状の先端を有する切削ブレードB2で分割予定ライン13に沿って被加工物(ウェーハW)にV字形状の溝M2形成するハーフカットを実施し、第二切削ステップとして、直線状の先端を有する切削ブレードB3で残存部分を切断し、直線状の溝M3を形成するフルカットを実施することとしてもよい。
【0074】
このように段階的に切削を行うステップカットの形態によっても、溝の浅い部分の幅が溝の深い部分よりも幅広となるV字形状の溝M2を構成することができる。なお、この場合、
図1に示す切削装置2の代わりに、2つの切削ブレードを備える切削装置が使用される。
【0075】
<洗浄ステップ>
図13に示すように、切削ステップを実施した後、被加工物(ウェーハW)の裏面Wbに洗浄液140を供給して、被加工物を洗浄するステップである。
【0076】
この洗浄においては、溝M1がV字状の断面をなすため、洗浄液140が溝M1に入り込み易く、溝M1に入り込んだ切削屑を確実に洗い流すことができ、チップ5の側面5aや裏面5bに切削屑が残存してしまうことを防止できる。
【0077】
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、
図8、
図9、
図11、及び、
図13に示すように、
交差する複数の分割予定ライン13で区画された領域にそれぞれデバイス11が形成された表面を有する被加工物(ウェーハW)の加工方法であって、
可視光に対して透過性を有するテープTを被加工物の表面に貼着する被加工物準備ステップと、
少なくとも一部が透明な保持部材74を有した保持テーブル27でテープTを介して被加工物の表面側を保持する保持ステップと、
保持ステップを実施した後、保持部材74とテープTとを介して保持テーブル27で保持された被加工物の表面を撮像カメラCで撮像して分割予定ライン13の位置を検出する分割予定ライン13位置検出ステップと、
分割予定ライン13位置検出ステップを実施した後、先端がV形状を有する切削ブレードB1で分割予定ライン13に沿って被加工物を切削し溝の浅い部分の幅が溝の深い部分よりも幅広となる溝M1を形成する切削ステップと、
切削ステップを実施した後、被加工物の裏面Wbを洗浄液140で洗浄する洗浄ステップと、を有する被加工物の加工方法とするものである。
【0078】
これによれば、
図13に示すように、溝の浅い部分の幅が溝の深い部分よりも幅広となる溝M1が形成されるため、洗浄ステップにおいて洗浄液140が溝内に進入し易くなり、溝M1に入り込んだ切削屑を確実に洗い流すことができ、チップ5の側面5aや裏面5bに切削屑が残存してしまうことを防止できる。また、溝内に進入した切削液も切削屑とともに排出されやすい状況を実現することができる。
【符号の説明】
【0079】
2 切削装置
5 チップ
5a 側面
8 ウェーハユニット
10 基板
10a 表面
10b 裏面
11 デバイス
13 分割予定ライン
27 保持テーブル
46 切削ユニット
74 保持部材
B1 切削ブレード
C 撮像カメラ
F 環状フレーム
M 溝
T テープ
W ウェーハ
Wa 表面
Wb 裏面