(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20240326BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240326BHJP
B23Q 7/00 20060101ALI20240326BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20240326BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B41/06 A
B24B7/04 A
B23Q7/00 Z
B23Q7/04 K
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2020128107
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千嶋 一史
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-86693(JP,A)
【文献】特開2017-112255(JP,A)
【文献】特開昭62-124844(JP,A)
【文献】特開2000-208593(JP,A)
【文献】特開2010-177228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 7/04
B23Q 7/00
B23Q 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面に被加工物を保持するチャックテーブルを有する保持手段と、加工水を供給し該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段と、該保持面に保持されている被加工物を該保持面から搬出する搬出手段と、該保持手段と該搬出手段とを相対的に該保持面に平行な方向に移動させる水平移動手段と、制御手段と、を備える加工装置であって、
さらに、該保持面から水とエアとの混合液を噴出させ該保持面から被加工物を離間させる離間手段と、被加工物の下面に向かってエアを噴射する下面エアノズルと、を備え、
該搬出手段は、被加工物の上面を吸引保持する被加工物より小径の搬送パッドと、該搬送パッドからはみ出した被加工物の上面にエアを吹きかけるリングエアノズルと、を備え、
該制御手段は、該搬送パッドに吸引保持され該保持面から離間した被加工物の下面に、該下面エアノズルからエアを噴出させ、該保持手段と該搬出手段とを相対的に水平方向に移動させ該下面を乾燥させると共に、該リングエアノズルからエアを噴出させ該被加工物の上面を乾燥させる加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、被加工物を研削する研削装置等の加工装置は、例えば、チャックテーブルの保持面に被加工物を保持させ、環状の研削砥石を用いて保持面に保持された被加工物の上面を研削している。
さらに、研削装置は、吸引保持する搬送パッドを用いて研削後の被加工物を吸引保持して搬出する搬出手段を備えている。
搬出手段を用いて保持面から被加工物を搬出させる際に、保持面に保持された被加工物を搬送パッドが吸引保持した状態で、保持面から水とエアとの混合液を噴出させ保持面から被加工物を離間させて、搬送パッドを保持面から遠ざける方向に移動させることにより保持面から被加工物を搬出している。
【0003】
このように保持面から混合液を噴出させ被加工物を離間させるため、被加工物の下面が濡れる。また、保持面から被加工物を離間させた後、特許文献1に開示のように、被加工物の下面に洗浄水を供給しブラシなどの洗浄具で洗浄するので被加工物の下面が濡れる。さらに、上記のように被加工物を離間させたり、被加工物の下面を洗浄することによって被加工物の上面に水が舞い上がり上面が濡れる。このように被加工物の下面と上面とが濡れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように被加工物が濡れると、例えば、次工程がレーザー加工のように被加工物を濡らすことのない加工である場合は、被加工物を乾燥させる必要があり、被加工物を乾燥させるために時間がかかるという問題が有る。
したがって、洗浄水等を用いて被加工物を加工する加工装置は、次工程に搬送するために被加工物を乾燥させるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保持面に被加工物を保持するチャックテーブルを有する保持手段と、加工水を供給し該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段と、該保持面に保持されている被加工物を該保持面から搬出する搬出手段と、該保持手段と該搬出手段とを相対的に該保持面に平行な方向に移動させる水平移動手段と、制御手段と、を備える加工装置であって、さらに、該保持面から水とエアとの混合液を噴出させ該保持面から被加工物を離間させる離間手段と、被加工物の下面に向かってエアを噴射する下面エアノズルと、を備え、該搬出手段は、被加工物の上面を吸引保持する被加工物より小径の搬送パッドと、該搬送パッドからはみ出した被加工物の上面にエアを吹きかけるリングエアノズルと、を備え、該制御手段は、該搬送パッドに吸引保持され該保持面から離間した被加工物の下面に、該下面エアノズルからエアを噴出させ、該保持手段と該搬出手段とを相対的に水平方向に移動させ該下面を乾燥させると共に、該リングエアノズルからエアを噴出させ該被加工物の上面を乾燥させる加工装置である。
【発明の効果】
【0007】
搬送パッドの吸引面に被加工物を吸引保持してチャックテーブルの保持面から離間する際に、被加工物の上面と下面とを乾燥させることができる。これにより、被加工物を乾燥させる乾燥ユニットが不要となる。また、被加工物の搬出中に被加工物の上面と下面とを乾燥させるため被加工物を乾燥させる工程を別途要さず、乾燥時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】搬出手段を用いて被加工物を搬出する際の搬出手段及び保持手段の断面図である。
【
図4】第2搬出手段を用いて被加工物を搬出する際の搬出手段及び保持手段の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 加工装置の構成
図1に示す加工装置1は、加工手段3を用いてチャックテーブル20に保持された被加工物14を研削加工する加工装置である。被加工物14は、例えば円板状の半導体ウェーハ等である。以下、加工装置1の構成について説明する。
加工装置1は、
図1に示すようにY軸方向に延設されたベース10と、ベース10の+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
【0010】
コラム11の-Y方向側の側面には、加工手段3を昇降可能に支持する加工送り手段4が配設されている。加工手段3は、例えばZ軸方向の回転軸35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に接続されたマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された研削ホイール34とを備える研削手段である。
【0011】
研削ホイール34は、ホイール基台341とホイール基台341の下面に環状に配列された略直方体状の複数の研削砥石340とを備えている。研削砥石340の下面は、被加工物14に接触する研削面342となっている。
【0012】
スピンドルモータ32を用いてスピンドル30を回転させることにより、スピンドル30に接続されたマウント33及びマウント33の下面に装着された研削ホイール34が一体的に回転することとなる。
【0013】
加工送り手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、回転軸45を軸にしてボールネジ40を回転させるZ軸モータ42と、内部のナットがボールネジ40に螺合して側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結され加工手段3を支持するホルダ44とを備えている。
【0014】
Z軸モータ42によってボールネジ40が駆動されて、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともに、ホルダ44に保持されている加工手段3の研削ホイール34がZ軸方向に移動することとなる。
【0015】
ベース10の上には保持手段2が配設されている。保持手段2は、被加工物14を保持するチャックテーブル20を有している。チャックテーブル20は、円板状の吸引部21と吸引部21を支持する枠体22とを備えている。吸引部21はポーラス部材であり多数の細孔を有している。吸引部21の上面は被加工物14を保持する保持面210であり、枠体22の上面220は保持面210に面一に形成されている。
【0016】
チャックテーブル20は、
図2に示すように基台23に装着されて枠体22の下面221が基台23に支持される。基台23は環状の連結部材29に回転可能な状態で支持されている。連結部材29は複数(
図2においては2つ)の支持柱291に支持されており、支持柱291は支持板290に支持されている。すなわち、チャックテーブル20は支持板290の上に支持柱291、連結部材29及び基台23を介して配設されており、その水平位置が固定されている。
【0017】
チャックテーブル20の下方には、基台23を回転させる回転手段26が配設されている。回転手段26は例えばプーリ機構であり、モータ260によってZ軸方向の軸心を軸に回転可能な駆動軸262と、駆動軸262の上端に連結されている駆動プーリ263と、駆動プーリ263に巻回されて駆動プーリ263の駆動力を従動プーリ265に伝達する伝動ベルト264と、駆動プーリ263とともに伝動ベルト264に巻回されている従動プーリ265と、従動プーリ265に接続されている従動軸266と、従動軸266の下端に連結されたロータリジョイント267と、を備えている。従動軸266は、基台23に連結されている。
【0018】
モータ260を用いて駆動軸262を回転させると、駆動プーリ263が回転するとともに、駆動プーリ263の回転力が伝動ベルト264によって従動プーリ265に伝達されて従動プーリ265が回転することとなる。これにより、従動プーリ265に接続されている従動軸266がZ軸方向の回転軸25を軸にして回転して、従動軸266に連結されている基台23がZ軸方向の回転軸25を軸にして回転する構成となっている。
【0019】
チャックテーブル20の下方には、流路243を通じて吸引部21に接続された吸引源240、エア供給源241、及び水供給源242が配設されている。
流路243は、例えば、枠体22、基台23、従動軸266、及びロータリジョイント267の内部を貫通するように形成されており、ロータリジョイント267の側面からロータリジョイント267の外部に突き出て、吸引路2430、エア流路2431、及び水流路2432に分岐している。
【0020】
吸引源240と吸引部21との間には、吸引バルブ2400及び絞り弁2401が配設されており、吸引源240、吸引バルブ2400、絞り弁2401及び吸引路2430によって吸引機構180が構成されている。吸引源240、吸引バルブ2400が開いている状態で吸引源240を作動させると、吸引源240によって生み出された吸引力が流路243を通じて吸引部21の保持面210に伝達されることとなる。
例えば、被加工物14が保持面210に載置されている状態で、吸引バルブ2400を開いて、吸引源240を作動させることにより、保持面210に被加工物14を吸引保持することができる。
【0021】
また、エア供給源241と吸引部21との間には、エアバルブ2410及び絞り弁2411が配設されており、エア供給源241、エアバルブ2410、絞り弁2411及びエア流路2431によってエア供給機構181が構成されている。エアバルブ2410が開いている状態で、エア供給源241を用いてエアを供給すると、供給されたエアは流路243を通じて吸引部21に伝達され、保持面210に形成されている多数の細孔から保持面210の上方の空間に向かって噴射されることとなる。
【0022】
水供給源242と吸引部21との間には、水バルブ2420及び絞り弁2421が配設されており、水供給源242、水バルブ2420、絞り弁2421及び水流路2342によって水供給機構182が構成されている。水バルブ2420が開いている状態で、水供給源242から水を供給すると、供給された水は流路243を通じて吸引部21に伝達され、保持面210の多数の細孔から噴射することとなる。
【0023】
エア供給機構181と水供給機構182とは、保持面210から被加工物14を離間させる離間手段18を構成している。保持面210に被加工物14が載置されている状態でエア供給機構181のエアバルブ2410が開いている状態でエア供給源241からエアを供給するとともに、水供給機構182の水バルブ2420が開いている状態で水供給源242から水を供給すると、該エアがエア流路2431を通って流路243に供給され、該水が水流路2432を通って流路243に供給される。これにより、流路243で混合されたエアと水との混合液が保持面210から噴出され、混合液によって被加工物14の下面141が-Z方向から付勢されて、被加工物14が保持面210から離間される構成となっている。
【0024】
また、例えば保持面210に被加工物等が載置されていない状態で、エアバルブ2410を開くとともにエア供給源241を作動させて、保持面210の多数の細孔からエアを噴射させることにより、吸引部21の内部や保持面210に付着している研削屑等を除去することができる。また、例えば保持面210に被加工物等が載置されていない状態で、水バルブ2420を開くとともに水供給源242を作動させて、保持面210の多数の細孔から水を噴射させることによって保持面210を洗浄することができる。このとき、エアバルブ2410を開いて水とともにエアを噴射してもよい。
【0025】
図1に示すように、ベース10の-Y方向側には門型コラム12が立設されており、門型コラム12には搬出手段6が支持されている。
【0026】
搬出手段6は、被加工物14の上面140を吸引保持する円形の搬送パッド60を備えている。搬送パッド60は、
図2に示すように被加工物14よりも小径に形成されており、搬送パッド60の内部にはエア流路601が形成されている。エア流路601は、例えば、搬送パッド60の内部に環状に張り巡らされて形成されており、搬送パッド60の下面600において開口して搬送パッド60の外部の空間に接続されている。また、エア流路601は搬送パッド60の外部においてエア供給路6910と吸引路6810とに分岐されている。エア供給路6910はエア供給源690に接続されており、吸引路6810は吸引源680に接続されている。エア供給路6910にはエアバルブ691が配設されており、吸引路6810には吸引バルブ681が配設されている。
【0027】
エアバルブ691が開いている状態でエア供給源690からエアを供給することにより、供給されたエアがエア流路601を通って搬送パッド60の下面600から噴射される。
また、エアバルブ691が閉じており、かつ吸引バルブ681が開いている状態で吸引源680を作動させることにより、生み出された吸引力がエア流路601を通って搬送パッド60の下面600に伝達される。例えば、搬送パッド60の下面600に被加工物14の上面140が接触している状態で、吸引源680によって生み出された吸引力を搬送パッド60の下面600に伝達することにより、搬送パッド60の下面600に被加工物14を吸引保持することができる。ここで、搬送パッド60は被加工物14よりも小径に形成されているため、搬送パッド60を用いて被加工物14を吸引保持する際には、搬送パッド60の外周から被加工物14がはみ出ることとなる。
【0028】
搬出手段6は、搬送パッド60に吸引保持された被加工物14の上面140の搬送パッド60からはみ出した部分1400にエアを吹きかけるリングエアノズル61を備えている。リングエアノズル61は搬送パッド60の外側面に連結されており、その内部にはエア供給路610が形成されている。エア供給路610は、リングエアノズル61の内部に環状に張り巡らされており、その一部がリングエアノズル61をZ軸方向に貫通している。また、エア供給路610はエア供給源63に接続されている。
また、エア供給路610にはエアバルブ62が配設されている。搬送パッド60に被加工物14が吸引保持されており、かつエアバルブ62を開いている状態で、エア供給源63からエアを供給することにより、供給されたエアがエア供給路610を通ってリングエアノズル61の下面611から被加工物14の上面140の搬送パッド60からはみ出した部分1400に噴射される。これにより、被加工物14の上面140を乾燥させることができる。
【0029】
搬送パッド60の上面6000には、3本(
図2には2本が示されている)の支持部材602が固定されている。支持部材602はZ軸方向に延設されており、その上部にはつば部6020が形成されている。支持部材602は、板状の連結部材603に形成された貫通穴6030に貫通しており、つば部6020が連結部材603に支持されている。
連結部材603には軸部604に連結されている。軸部604の上端には水平移動手段66が連結されており、水平移動手段66は昇降手段67に支持されている。また、昇降手段67は
図1に示した門型コラム12に連結されている。すなわち、搬送パッド60は、水平移動手段66及び昇降手段67を介して門型コラム12に支持されている。
なお、軸部604が昇降手段67に連結されていて、昇降手段67を水平移動手段66が支持する構成でもよい。
【0030】
水平移動手段66は、例えば
図1に示すように水平方向に旋回可能なロボットアームであり、水平移動手段66を用いて搬送パッド60を水平方向に旋回移動させることができる。
また、昇降手段67はその内部に図示しないボールネジ機構等と備えており、該ボールネジ機構を作動させることにより、搬送パッド60をZ軸方向に昇降移動させることができる。
【0031】
ベース10の上における門型コラム12の+Y方向側かつチャックテーブル20の-Y方向側には、下面エアノズル8が配設されている。下面エアノズル8は、X軸方向に並べられて配設された複数のエアノズル80を備えている。エアノズル80はエア供給源81に接続されている。エア供給源81からエアを供給することにより、エアノズル80から+Z方向にエアを噴射することができる。
【0032】
エアノズル80の-Y方向側には、X軸方向に延ばされたロールスポンジ82が配設されている。ロールスポンジ82の内部には、
図2に示すようにロールスポンジ82を回転させるモータ83が配設されている。また、ロールスポンジ82の内部には、図示しない洗浄水源に接続された洗浄水ノズル84が配設されている。洗浄水ノズル84は、ロールスポンジ82の内部に洗浄水を供給することができる。
例えば、搬送パッド60に吸引保持された被加工物14がロールスポンジ82の上方に位置づけられている状態で洗浄水ノズル84からロールスポンジ82の内部に洗浄水を供給するとともにモータ83を用いてロールスポンジ82を回転させることにより、被加工物14の下面141を洗浄することができる。
また、ロールスポンジ82の下方には排水口85が設けられている。ロールスポンジ82から飛散された洗浄水は、排水口85から加工装置1の外部へと排出されることとなる。
【0033】
加工装置1は、
図1に示すように制御手段19を備えている。制御手段19は、CPU、メモリ等を備えており、加工装置1を用いた被加工物14の研削加工の際に加工装置1の諸々の制御を行う機能を有している。
【0034】
2 加工装置の動作
(被加工物の研削加工)
加工装置1を用いて被加工物14を研削加工する際の加工装置1の動作について説明する。加工装置1を用いて被加工物14を研削加工する際には、まず、
図1に示したチャックテーブル20の保持面210に被加工物14を載置して保持面210に接続された図示しない吸引源を作動させることにより被加工物14を保持面210に吸引保持する。
【0035】
そして、
図2に示した回転手段26を用いて回転軸25を軸にしてチャックテーブル20を回転させる。これにより、チャックテーブル20の保持面210に保持されている被加工物14が回転軸25を軸にして回転する。また、
図1に示したスピンドルモータ32を用いて回転軸35を軸にして研削砥石340を回転させておく。
【0036】
保持面210に保持された被加工物14が回転しており、かつ研削砥石340が回転している状態で、加工送り手段4を用いて研削砥石340を-Z方向に下降させる。これにより、保持面210に保持されている被加工物14の上面140に研削砥石340の研削面342が接触する。被加工物14の上面140に研削砥石340の研削面342が接触している状態で、さらに研削砥石340を-Z方向に下降させていくことにより被加工物14が研削加工される。ここで、被加工物14の研削加工中には、被加工物14の研削加工により発生する加工屑の除去等を目的として、図示しない加工水供給手段等から研削砥石340と被加工物14とが接触する位置に加工水が供給される。
被加工物14の研削加工の際には、例えばチャックテーブル20の近傍に設けられた図示しないハイトゲージ等を有する厚み測定手段等を用いて被加工物14の厚みを測定し、被加工物14が所定の厚みに研削加工されたら被加工物14の研削加工を終了する。
【0037】
(被加工物の搬出)
被加工物14の研削加工が終了した後、搬出手段6を用いてチャックテーブル20の保持面210に保持されている被加工物14を搬出する。搬出手段6を用いて被加工物14を搬出する際には、まず、水平移動手段66を用いて搬送パッド60を水平方向に移動させることにより、
図2に示すように搬送パッド60を保持面210の上方に位置づけるとともに、昇降手段67を用いて搬送パッド60を-Z方向に下降させて搬送パッド60の下面600を被加工物14に接触させる。
ここで、搬送パッド60は被加工物14よりも小径に形成されており、搬送パッド60の下面600を被加工物14の上面140に接触させると被加工物14が搬送パッド60の外周からはみ出る。
【0038】
そして、搬送パッド60の下面600に被加工物14が接触している状態で、吸引バルブ681を開いて吸引源680を作動させる。これにより、生み出された吸引力が吸引路6810及びエア流路601を通って搬送パッド60の下面600に伝達されて被加工物14の上面140が搬送パッド60の下面600に吸引される。
【0039】
さらに、離間手段18を用いて保持面210から水とエアとの混合液を噴出させて被加工物14を保持面210から離間させる。被加工物14は、保持面210の多数の細孔から染み出した混合液によってその下面141が+Z方向に付勢されて保持面210から離間され、搬送パッド60の下面600に吸引保持される。
【0040】
次に、保持面210から離間されて搬送パッド60の下面600に吸引保持されている被加工物14を水平移動手段66を用いて水平移動させて、ロールスポンジ82の上方に位置づける。そして、モータ83を用いてロールスポンジ82を回転させながら洗浄水ノズル84からロールスポンジ82に洗浄水を供給する。これにより、被加工物14の下面141が流水洗浄される。このとき、例えば被加工物14の下面141にロールスポンジ82を接触させてもよい。
【0041】
被加工物14の下面141を洗浄した後、下面エアノズル8に備える複数のエアノズル80から被加工物14の下面141に向けてエアを噴射するとともに、水平移動手段66を用いて搬送パッド60に保持された被加工物14を水平移動させる。これにより、被加工物14の下面141の全面にエアが供給されて被加工物14の下面141が乾燥される。
【0042】
被加工物14の研削加工の際に供給された加工水が被加工物14の上面140に付着している場合がある。また、被加工物14の下面141の流水洗浄の際に、ロールスポンジ82から飛散された洗浄水が被加工物14の外周面を伝って被加工物14の上面140に付着されるおそれがある。そこで、下面エアノズル8により被加工物14の下面141を乾燥させながら、エアバルブ62を開いてエア供給源63からエアを供給し、リングエアノズル61から被加工物14の上面140にエアを噴射する。これにより、被加工物14の上面140が乾燥される。
なお、下面エアノズル8のみの構成では、洗浄時と同様にエアの流れによって被加工物14の外周面を伝って上面140に洗浄水が付着する。
【0043】
加工装置1においては、被加工物14の搬出中に被加工物14の上面140と下面141とを乾燥させることができ、乾燥時間の短縮を図ることができる。
また、加工装置1は被加工物14を乾燥させる乾燥ユニットを別途備える必要がなく好適である。
【0044】
加工装置1は、
図3に示すようにベース10の内部にチャックテーブル20をY方向に水平移動させる水平移動手段5を備えるものであり、かつ
図1に示した門型コラム12及び門型コラム12に配設された搬出手段6にかえて、
図3に示すようにベース10の-X方向側に配設された第2搬出手段7を備えるものであってもよい。
【0045】
水平移動手段5は、Y軸方向の回転軸55を有するボールネジ50と、ボールネジ50に対して平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50に連結され回転軸55を軸にしてボールネジ50を回動させるY軸モータ52と、底部のナットがボールネジ50に螺合してガイドレール51に沿ってY軸方向に移動する可動板53とを備えている。可動板53の上には複数(
図3においては2本)の支持柱291が立設されており、支持柱291には環状の連結部材29が支持されている。環状の連結部材29は、基台23を回転可能に支持している。基台23にはチャックテーブル20が着脱可能に装着される。
【0046】
Y軸モータ52によりボールネジ50が駆動されてボールネジ50が回転軸55を軸として回転すると、これに伴って可動板53がガイドレール51に案内されてY軸方向に移動する。可動板53がY軸方向に移動することにより可動板53に支持されたチャックテーブル20、下面エアノズル8及びロールスポンジ82がY軸方向に可動板53と一体的に移動する構成となっている。
【0047】
被加工物14の研削加工の際には、例えば、チャックテーブル20の保持面210に被加工物14を保持してから水平移動手段5を用いてチャックテーブル20を加工手段3に対して+Y方向に相対移動させて加工手段3に対して適宜の距離だけ接近させる。これにより、チャックテーブル20に保持された被加工物14が加工手段3の下方に位置づけられる。そして、上記同様に保持面210に保持された被加工物14と、研削砥石340とが回転している状態で、加工送り手段4を用いて研削砥石340を被加工物14に-Z方向に接近させていき、研削砥石340の研削面342を被加工物14の上面140に接触させて被加工物14を研削することができる。
【0048】
この構成では、チャックテーブル20の周囲には、例えばカバー27及びカバー27に伸縮自在に連結された蛇腹28が配設されている。チャックテーブル20がY軸方向に移動すると、カバー27がチャックテーブル20とともにY軸方向に移動して蛇腹28が伸縮することとなる。
【0049】
第2搬出手段7は、搬送パッド60と、搬送パッド60の外側面に連結されたリングエアノズル61と、搬送パッド60をZ軸方向に昇降移動させる昇降手段70とを備えている。搬送パッド60を支持部材602を介して支持する連結部材603にはアーム72が連結されており、アーム72の搬送パッド60に連結されていない側の端部にはZ軸方向に立設された軸部71が連結されている。また、軸部71の下端には昇降手段70が配設されている。
【0050】
昇降手段70は、
図4に示すようにZ軸方向に延設されたボールネジ702と、ボールネジ702をZ軸方向の軸心を軸にして回転させるモータ700と、モータ700の回転量を制御するエンコーダ701と、内部のナットがボールネジ702に螺合してZ軸方向に昇降する可動部703とを備えている。可動部703は、軸部71に連結されている。
モータ700を用いてボールネジ702を回転させると、可動部703がボールネジ702に摺接しながらZ軸方向に昇降移動し、これに伴って可動部703に連結されている軸部71、軸部71に連結されているアーム72及びアーム72に支持されている搬送パッド60が一体的にZ軸方向に昇降移動する構成となっている。
【0051】
第2搬出手段7を用いてチャックテーブル20の保持面210に保持された被加工物14を搬出する際には、水平移動手段5を用いてチャックテーブル20をY軸方向に適宜の距離だけ水平移動させて、チャックテーブル20を搬送パッド60の下方に位置づける。そして、昇降手段70を用いて搬送パッド60を-Z方向に移動させて、保持面210に保持された被加工物14の上面140に接触させ、吸引バルブ681を開いて吸引源680を作動させる。これにより、生み出された吸引力が吸引路6810及びエア流路601を通って搬送パッド60の下面600に伝達されて被加工物14の上面140が搬送パッド60の下面600に吸引される。搬送パッド60の下面600に被加工物14の上面140を吸引させつつ、離間手段18を用いて保持面210から水とエアとの混合液を噴出させることにより、被加工物14を+Z方向に付勢して保持面210から離間させることが可能である。
【0052】
連結部材29の上には、
図4に示すように下面エアノズル8及びロールスポンジ82が配設されている。第2搬出手段7の搬送パッド60に吸引保持されている被加工物14の下面141を洗浄する際には、昇降手段70を用いて搬送パッド60がロールスポンジ82に接触する高さ位置に搬送パッド60を移動させてから、洗浄水ノズル84からロールスポンジ82の内部に洗浄水を供給する。そして、水平移動手段5を用いてロールスポンジ82をY軸方向に移動させることにより、洗浄水を搬送パッド60に保持された被加工物14の下面141の全面に行き渡らせて洗浄することができる。
【0053】
さらに、第2搬出手段7の搬送パッド60に吸引保持されている被加工物14の下面141を乾燥させる際には、下面エアノズル8に備える複数のエアノズル80から被加工物14の下面141に向けてエアを噴射するとともに、水平移動手段5を用いてエアノズル80を水平移動させる。これにより、被加工物14の下面141の全面にエアが供給されて被加工物14の下面141が乾燥される。
また、エアノズル80から被加工物14の下面141にエアを噴射して被加工物14の下面141を乾燥させているときに、エアバルブ62を開いてエア供給源63からエアを供給して、リングエアノズル61から被加工物14の上面140にエアを噴射して被加工物14の上面140を乾燥させることにより、被加工物14の搬出中に被加工物14の上面140と下面141とを乾燥させることができる。
【0054】
なお、
図3の例における水平移動手段5は、チャックテーブル20、下面エアノズル8及びロールスポンジ82をY軸方向に移動させる構成としたが、ターンテーブルの回転によってチャックテーブル20、下面エアノズル8及びロールスポンジ82を水平方向に回転させる構成としてもよい。
なお、研削手段3を水平方向に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1:加工装置 10:ベース 100:内部ベース 11:コラム 12:門型コラム
14:被加工物 140:上面 141:下面
1400:搬送パッドからはみ出た部分 19:制御手段
2:保持手段 20:チャックテーブル 21:吸引部 210:保持面 22:枠体
220:枠体の上面 23:基台 25:回転軸 26:回転手段
260:モータ 262:駆動軸 263:駆動プーリ
264:伝動ベルト 265:従動プーリ 266:従動軸
267:ロータリジョイント 29:連結部材 290:支持板 291:支持柱
243:流路 2400:吸引バルブ 2410:エアバルブ
2420:水バルブ 2430:吸引路 2431:エア流路 2432:水路
28:カバー 29:蛇腹 3:研削手段 30:スピンドル 31:ハウジング
32:スピンドルモータ 33:マウント 34:研削ホイール 340:研削砥石
341:ホイール基台 342:下面 35:回転軸
4:研削送り手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:Z軸モータ
420:エンコーダ 43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸
5:水平移動手段 50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:Y軸モータ
53:可動板 55:回転軸
6:搬出手段 60:搬送パッド 600:下面 601:エア流路
602:支持部材 603:連結部材 6020:つば部 6030:貫通穴
604:軸部 6000:上面
61:リングエアノズル 610:エア供給路 62:エアバルブ 63:エア供給源
66:水平移動手段 67:昇降手段
7:第2搬出手段 70:昇降手段 702:ボールネジ 703:可動部
700:モータ 701:エンコーダ 71:軸部 72:アーム
8:下面エアノズル 80:エアノズル 81:エア供給源 82:ロールスポンジ
83:モータ 84:洗浄水ノズル 85:排水口
18:離間手段 180:吸引機構 181:エア供給機構 182:水供給機構
27:カバー 28:蛇腹