(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20240326BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240326BHJP
C23C 16/30 20060101ALI20240326BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 B
C23C16/30
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022048484
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 政哉
(72)【発明者】
【氏名】紺野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】池谷 謙
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-027227(JP,A)
【文献】特開2006-024666(JP,A)
【文献】特開2021-088735(JP,A)
【文献】特開2021-002556(JP,A)
【文献】特開2011-134781(JP,A)
【文献】特開2014-192484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
H01L 21/31
C23C 16/30
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)処理容器内に収容された基板に対して第1処理ガスを供給し、基板上に、所定の組成を有する第1膜を形成する工程と、
(b)前記処理容器内に収容された基板に対して第2処理ガスを供給するサイクルを
実行し、基板上に、前記第1膜とは組成の異なる第2膜を形成する工程と、
を有し、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜が付着している第2の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクル
を所定のm回行い、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第1膜が付着している第1の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクル
を前記m回とは異なるm±回行うか、
又は前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜を形成するプリコート工程を行ってから前記サイクル
を前記m回行う
基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記サイクルを前記m回行うことは、前記サイクルの実行回数を前記m回に設定する通常設定工程に基づいて実行され、
前記サイクルを前記m±回行うことは、前記サイクルの実行回数を前記m±回に設定する例外設定工程に基づいて実行される。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
所定の基板に対して前記(a)を行った後、前記所定の基板に対して前記(b)を続けて行う場合は、前記例外設定工程を行ってから前記サイクルの実行を開始する。
【請求項4】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
所定の基板に対して前記(b)を行った後、前記所定の基板に対して前記(b)を続けて行う場合は、前記通常設定工程を行ってから前記サイクルの実行を開始する。
【請求項5】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
所定の基板に対して前記(a)を行った後、前記所定の基板とは異なる基板に対して前記(b)を行う場合は、前記プリコート工程、および、前記通常設定工程を行ってから前記サイクルの実行を開始する。
【請求項6】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
所定の基板に対して前記(b)を行った後、前記所定の基板とは異なる基板に対して前記(b)を行う場合は、前記通常設定工程を行ってから前記サイクルの実行を開始する。
【請求項7】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記処理容器内の部材の表面にクリーニング後の清浄面が露出している第3の状態で前記(b)を行う場合は、前記プリコート工程、および、前記通常設定工程を行ってから前記サイクルの実行を開始する。
【請求項8】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記プリコート工程では、前記処理容器内に基板が存在しない状態で、前記処理容器内へ前記第2処理ガスを供給する前記サイクルを実行する。
【請求項9】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記(a)では、前記第1膜として、第1元素および第2元素を含む膜を形成し、
前記(b)では、前記第2膜として、前記第1元素、前記第2元素、および、第3元素を含む膜を形成し、
前記第1の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルを前記m回よりも少ないm-回行う。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理方法であって、
前記(a)では、前記第1膜としてシリコン窒化膜を形成し、
前記(b)では、前記第2膜としてシリコン炭窒化膜を形成する。
【請求項11】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第1の状態で前記(b)を行う場合、前記サイクルを前記m回とは異なるm±回行う。
【請求項12】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第1の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルを前記m回よりも多いm+回行う。
【請求項13】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記例外設定工程では、前記サイクルの実行回数を、前記m回よりも多いm+回に設定する。
【請求項14】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記処理容器内の部材の表面にクリーニング後の清浄面が露出している第3の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルの実行回数を前記m回よりも多いm+回行う。
【請求項15】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記処理容器内の部材の表面にクリーニング後の清浄面が露出している第3の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルの実行回数を前記m回よりも多いm+回に設定する前記例外設定工程を行ってから前記サイクルの実行を開始する。
【請求項16】
(a)処理容器内に収容された基板に対して第1処理ガスを供給し、基板上に、所定の組成を有する第1膜を形成する工程と、
(b)前記処理容器内に収容された基板に対して第2処理ガスを供給するサイクルを
実行し、基板上に、前記第1膜とは組成の異なる第2膜を形成する工程と、
を有し、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜が付着している第2の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクル
を所定のm回行い、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第1膜が付着している第1の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクル
を前記m回とは異なるm±回行うか、
又は前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜を形成するプリコート工程を行ってから前記サイクル
を前記m回行う
半導体装置の製造方法。
【請求項17】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内へ第1処理ガスおよび第2処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
(a)前記処理容器内に収容された基板に対して前記第1処理ガスを供給し、基板上に、所定の組成を有する第1膜を形成する処理と、
(b)前記処理容器内に収容された基板に対して前記第2処理ガスを供給するサイクルを
実行し、基板上に、前記第1膜とは組成の異なる第2膜を形成する処理と、を含み、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜が付着している第2の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクル
を所定のm回行い、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第1膜が付着している第1の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクル
を前記m回とは異なるm±回行うか、又は前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜を形成するプリコート工程を行ってから前記サイクル
を前記m回行うように、前記処理ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項18】
(a)処理容器内に収容された基板に対して第1処理ガスを供給し、基板上に、所定の組成を有する第1膜を形成する手順と、
(b)前記処理容器内に収容された基板に対して第2処理ガスを供給するサイクルを
実行し、基板上に、前記第1膜とは組成の異なる第2膜を形成する手順と、
を有し、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜が付着している第2の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクル
を所定のm回行い、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第1膜が付着している第1の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクル
を前記m回とは異なるm±回行うか、又は前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜を形成するプリコート手順を行ってから前記サイクル
を前記m回行う手順を
、
コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、処理容器内に収容された基板上に種々の組成を有する膜を形成する基板処理工程が行われる場合がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上に形成される膜の厚さの制御性を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)処理容器内に収容された基板に対して第1処理ガスを供給し、基板上に、所定の組成を有する第1膜を形成する工程と、
(b)前記処理容器内に収容された基板に対して第2処理ガスを供給するサイクルを繰り返し、基板上に、前記第1膜とは組成の異なる第2膜を形成する工程と、
を有し、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜が付着している第2の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルの繰り返しを所定のm回行い、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第1膜が付着している第1の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルの繰り返しを前記m回とは異なるm±回行うか、前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜を形成するプリコート工程サイクルの繰り返しをm回行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成される膜の厚さの制御性を高める技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】本開示の一態様における第1膜形成でのガス供給シーケンスを示すフロー図である。
【
図5】本開示の一態様における第2膜形成でのガス供給シーケンスを示すフロー図である。
【
図6】本開示の一態様における第2膜形成で行う制御動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、
図1~
図6を用いて説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1供給部、第2供給部としてのノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bを、それぞれ第1ノズル、第2ノズルとも称する。ノズル249a,249bは、それぞれ、石英またはSiC等の耐熱性材料である非金属材料により構成されている。ノズル249a,249bには、第1配管、第2配管としてのガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。ノズル249a,249bは、互いに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232c,232dが接続されている。ガス供給管232c,232dには、ガス流の上流側から順に、MFC241c,241d、バルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232eが接続されている。ガス供給管232eには、ガス流の上流側から順に、MFC241e、バルブ243eが設けられている。ガス供給管232a~232eは、例えばSUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、それぞれが、平面視においてウエハ200の中心に向かって開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、処理ガス(第1処理ガス、第2処理ガス)として、原料(原料ガス)が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0015】
ガス供給管232bからは、処理ガス(第1処理ガス、第2処理ガス)として、窒化剤である窒素(N)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。N含有ガスは、N源として作用する。
【0016】
ガス供給管232cからは、処理ガス(第1処理ガス、第2処理ガス)として、窒素(N)及び炭素(C)含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。N及びC含有ガスは、N源およびC源として作用する。
【0017】
ガス供給管232d,232eからは、不活性ガスが、それぞれ、MFC241d,241e、バルブ243d,243e、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0018】
主に、ガス供給管232a~232c、MFC241a~232c、バルブ243a~232cにより、処理ガス供給系(第1処理ガス供給系、第2処理ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232d,232e、MFC241d,241e、バルブ243d,243eにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0019】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243eやMFC241a~241e等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232eのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232e内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243eの開閉動作やMFC241a~241eによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232e等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0020】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231は、例えばSUS等の金属材料により構成されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0021】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、例えばSUS等の金属材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送系(搬送機構)として構成されている。
【0022】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0023】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0024】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0025】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0026】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、制御プログラム、プロセスレシピ等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0027】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241e、バルブ243a~243e、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0028】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241eによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243eの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0029】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0030】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、処理容器内に収容された基板としてのウエハ200に対して第1処理ガスを供給し、ウエハ200上に、所定の組成を有する第1膜を形成する工程(以下、第1膜形成とも称する)が行われる場合がある。また、処理容器内に収容されたウエハ200に対して第2処理ガスを供給するサイクルを繰り返し、ウエハ200上に、第1膜とは組成の異なる第2膜を形成する工程(以下、第2膜形成とも称する)が行われる場合もある。また、処理容器内にウエハ200が存在しない状態で、処理容器内の部材の最表面に所定の組成を有する膜を形成する処理(プリコート)が行われる場合もある。
【0031】
以下、第1膜形成、第2膜形成、および、プリコートの具体的内容について説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ121により制御される。
【0032】
なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0033】
《第1膜形成》
まず、第1膜形成の処理手順、処理条件について、
図4を用いて説明する。以下では、一例として、処理容器内にウエハ200が搬入されていない状態で第1膜形成処理を新たに開始する場合について説明する。
【0034】
本態様では、第1膜形成処理にて、例えば、第1処理ガスとして、原料と、窒化剤と、を供給し、ウエハ200上に、所定の組成を有する第1膜を形成することができる。
【0035】
本態様における第1膜形成処理では、
図4に示す処理シーケンスのように、
処理容器内に収容されたウエハ200に対して原料を供給するステップA1と、
処理容器内に収容されたウエハ200に対して窒化剤を供給するステップA2と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上に、所定の組成を有する第1膜を形成する。
【0036】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の態様や変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0037】
(原料→窒化剤)×n
【0038】
(ウエハチャージ)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。ウエハ200は、製品ウエハやダミーウエハを含む。
【0039】
(ボートロード)
その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0040】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0041】
(ガス供給サイクル)
その後、ステップA1,A2を順次実行する。
【0042】
〔ステップA1〕
ステップA1では、処理室201内のウエハ200に対して原料(原料ガス)を供給する。
【0043】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料を流す。原料は、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して原料が供給される(原料供給)。このとき、バルブ243d,243eを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0044】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:550~800℃、好ましくは550~650℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは67~931Pa
原料供給流量:0.01~2slm、好ましくは0.1~1slm
原料供給時間:1~20秒、好ましくは1~10秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。
【0045】
なお、本明細書における「550~800℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「550~800℃」とは「550℃以上800℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0046】
上述の処理条件下でウエハ200に対して原料として、例えば、クロロシラン系ガスを供給することにより、下地としてのウエハ200の最表面上に、Clを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、ウエハ200の最表面への、クロロシラン系ガスの分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積等により形成される。Clを含むSi含有層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSiの堆積層であってもよい。本明細書では、Clを含むSi含有層を、単に、Si含有層とも称する。なお、上述の処理条件下では、ウエハ200の最表面上へのクロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着が支配的に(優先的に)生じ、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積は僅かに生じるか、あるいは、殆ど生じないこととなる。すなわち、上述の処理条件下では、Si含有層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)を圧倒的に多く含むこととなり、Clを含むSiの堆積層を僅かに含むか、もしくは、殆ど含まないこととなる。
【0047】
Si含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料の供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ243d,243eを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0048】
パージにおける処理条件としては、
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):1~20slm
不活性ガス供給時間:1~20秒、好ましくは1~10秒
が例示される。他の処理条件は、本ステップにて原料を供給する際における処理条件と同様な処理条件とする。
【0049】
原料としては、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)を含むシラン系ガスを用いることができる。シラン系ガスとしては、例えば、ハロゲン及びSiを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、Cl及びSiを含む上述のクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0050】
原料としては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:4CS)ガス、ヘキサクロロジシランガス(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。原料としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0051】
原料としては、クロロシラン系ガスの他、例えば、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。原料としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0052】
原料としては、これらの他、例えば、アミノ基及びSiを含むガス、すなわち、アミノシラン系ガスを用いることもできる。アミノ基とは、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンから水素(H)を除去した1価の官能基のことであり、-NH2,-NHR,-NR2のように表すことができる。なお、Rはアルキル基を示し、-NR2の2つのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
原料としては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH3[N(C3H7)2]、略称:DIPAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。原料としては、これらのうち1以上を用いることができる。
これらの点は、後述するステップB1,C1においても同様である。
【0054】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス、クリプトン(Kr)ガス、ラドン(Rn)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0055】
[ステップA2]
ステップA1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSi含有層に対して、窒化剤を供給する。
【0056】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ窒化剤を流す。窒化剤は、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して窒化剤が供給される(窒化剤供給)。このとき、バルブ243d,243eを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0057】
本ステップにおける処理条件としては、
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~1200Pa
窒化剤供給流量:0.1~20slm、好ましくは1~10slm
窒化剤供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。他の処理条件は、ステップA1にて原料を供給する際における処理条件と同様な処理条件とする。
【0058】
上述の処理条件下でウエハ200に対して窒化剤を供給することにより、ウエハ200上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が窒化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、SiおよびNを含む層として、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。SiN層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、窒化剤によるSi含有層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiN層は、ステップA1で形成されたSi含有層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0059】
SiN層が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への窒化剤の供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0060】
窒化剤としては、例えば、N及びH含有ガスを用いることができる。窒化剤は、N-H結合を有することが好ましい。窒化剤としては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。窒化剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述するステップB3,C3においても同様である。
【0061】
[所定回数実施]
上述のステップA1,A2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面を下地として、この下地上に、第1膜として、例えば、第1元素としてのSiおよび第2元素としてのNを含む、所定の厚さのシリコン窒化膜(SiN膜)を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiN層を積層することで形成されるSiN膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0062】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上へ所望の厚さの第1窒化膜を形成する処理が完了した後、ノズル249a,249bのそれぞれからパージガスとして不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0063】
(ボートアンロード)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。
【0064】
(ウエハ冷却)
ボートアンロード後、すなわち、シャッタクローズ後、処理済のウエハ200は、ボート217に支持された状態で、取り出し可能な所定の温度となるまで冷却される(ウエハ冷却)。
【0065】
(ウエハディスチャージ)
ウエハ冷却後、取り出し可能な所定の温度となるまで冷却された処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0066】
このようにして、ウエハ200上に第1膜を形成する一連の処理が終了する。
【0067】
《第2膜形成》
次に、第2膜形成の処理手順、処理条件について、
図5を用いて説明する。以下では、処理容器内にウエハ200が搬入されていない状態で第2膜形成処理を新たに開始する場合について説明する。
【0068】
本態様では、第2膜形成処理にて、例えば、第2処理ガスとして、原料と、N及びC含有ガスと、窒化剤と、を供給し、ウエハ200上に、第1膜とは組成の異なる第2膜を形成することができる。
【0069】
本態様における第2膜形成処理では、
図5に示す処理シーケンスのように、
処理容器内に収容されたウエハ200に対して原料を供給するステップB1と、
処理容器内に収容されたウエハ200に対してN及びC含有ガスを供給するステップB2と、
処理容器内に収容されたウエハ200に対して窒化剤を供給するステップB3と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(m回、mは2以上の整数)行うことで、すなわち、このサイクルを繰り返すことで、ウエハ200上に、第1膜とは組成の異なる第2膜を形成する。
【0070】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の態様や変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0071】
(原料→N及びC含有ガス→窒化剤)×m
【0072】
まず、上述の第1膜形成におけるウエハチャージ、ボートロード、および、圧力調整および温度調整と同様の処理手順により、ウエハチャージ、ボートロード、および、圧力調整および温度調整を行う。
【0073】
(ガス供給サイクル)
その後、ステップB1,B2を順次実行する。
【0074】
〔ステップB1〕
ステップB1では、上述のステップA1における処理手順、処理条件と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内のウエハ200に対して、原料を供給する(原料供給)。これにより、ウエハ200の最表面上にSi含有層が形成される。Si含有層が形成された後、処理室201内への原料の供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0075】
[ステップB2]
ステップB1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSi含有層に対して、N及びC含有ガスを供給する。
【0076】
具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へN及びC含有ガスを流す。N及びC含有ガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対してN及びC含有ガスが供給される(N及びC含有ガス供給)。このとき、バルブ243d,243eを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0077】
本ステップにおける処理条件としては、
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~1200Pa
N及びC含有ガス供給流量:0.1~1slm
N及びC含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。他の処理条件は、ステップA1にて原料を供給する際における処理条件と同様な処理条件とする。
【0078】
上述の条件下でウエハ200に対して、例えばN及びC含有ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が改質される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、Si、C、およびNを含む層として、シリコン炭窒化層(SiCN層)が形成される。SiCN層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、N及びC含有ガスによるSi含有層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiCN層は、ステップB1で形成されたSi含有層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0079】
SiCN層が形成された後、バルブ243cを閉じ、処理室201内へのN及びC含有ガスの供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0080】
N及びC含有ガスとしては、例えば、モノエチルアミン(C2H5NH2、略称:MEA)ガス、ジエチルアミン((C2H5)2NH、略称:DEA)ガス、トリエチルアミン((C2H5)3N、略称:TEA)ガス等のエチルアミン系ガスや、モノメチルアミン(CH3NH2、略称:MMA)ガス、ジメチルアミン((CH3)2NH、略称:DMA)ガス、トリメチルアミン((CH3)3N、略称:TMA)ガス等のメチルアミン系ガスや、モノメチルヒドラジン((CH3)HN2H2、略称:MMH)ガス、ジメチルヒドラジン((CH3)2N2H2、略称:DMH)ガス、トリメチルヒドラジン((CH3)2N2(CH3)H、略称:TMH)ガス等の有機ヒドラジン系ガス等を用いることができる。N及びC含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述するステップC2においても同様である。
【0081】
[ステップB3]
ステップB2が終了した後、上述のステップA2における処理手順、処理条件と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiCN層に対して、窒化剤を供給する(窒化剤供給)。これにより、ウエハ200上に形成されたSiCN層中に、さらにN成分を取り込ませ、この層を、N濃度のより高いSiCN層に改質させることが可能となる。SiCN層が改質された後、処理室201内への窒化剤の供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0082】
[所定回数実施]
上述のステップB1~B3を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(m回、mは2以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面を下地として、この下地上に、第2膜として、例えば、第1元素としてのSi、第2元素としてのNおよび第3元素としてのCを含む、所定の厚さのシリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiCN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiCN層を積層することで形成されるSiCN膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0083】
その後、上述の第1膜形成におけるアフターパージおよび大気圧復帰、ボートアンロード、ウエハ冷却、および、ウエハディスチャージと同様の処理手順により、アフターパージおよび大気圧復帰、ボートアンロード、ウエハ冷却、および、ウエハディスチャージを行う。
【0084】
このようにして、ウエハ200上に第2膜を形成する一連の処理が終了する。
【0085】
《プリコート》
次に、プリコートの処理手順、処理条件について説明する。以下では、処理容器内にウエハ200が搬入されていない状態で、処理容器内の部材の最表面に第2膜を形成する場合について説明する。
【0086】
本態様では、プリコートにて、例えば、第2処理ガスである、原料と、N及びC含有ガスと、窒化剤と、を供給し、処理容器内の部材の最表面に、第2膜を形成することができる。
【0087】
本態様におけるプリコートでは、
図5に示す処理シーケンスのように、
処理容器内へ原料を供給するステップC1と、
処理容器内へN及びC含有ガスを供給するステップC2と、
処理容器内へ窒化剤を供給するステップC3と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことで、処理容器内の部材の最表面に、第2膜を形成する。
【0088】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の態様や変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0089】
(原料→N及びC含有ガス→窒化剤)×m
【0090】
空のボート217、すなわち、ウエハ200を保持していないボート217が、ボートエレベータ115によって持ち上げられて、処理室201内へ搬入(空ボートロード)される。その後、上述の第1膜形成における圧力調整および温度調整と同様の処理手順により、圧力調整および温度調整を行う。なお、プリコートを行う際は、ボート217を回転させなくてもよい。
【0091】
(ガス供給サイクル)
その後、ステップC1~C3を順次実行する。
【0092】
〔ステップC1〕
ステップC1では、上述のステップA1における処理手順、処理条件と同様の処理手順、処理条件により、処理容器内へ原料を供給する(原料供給)。これにより、処理容器内の部材の最表面上にSi含有層が形成される。Si含有層が形成された後、処理室201内への原料の供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0093】
[ステップC2]
ステップC1が終了した後、上述のステップB2における処理手順、処理条件と同様の処理手順、処理条件により、処理容器内へN及びC含有ガスを供給する(N及びC含有ガス供給)。これにより、処理容器内の部材の最表面に形成されたSi含有層の少なくとも一部が改質される。結果として、処理容器内の部材の最表面上にSi、C、およびNを含む層として、シリコン炭窒化層(SiCN層)が形成される。SiCN層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、N及びC含有ガスによるSi含有層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiCN層は、ステップC1で形成されたSi含有層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0094】
[ステップC3]
ステップC2が終了した後、上述のステップA2における処理手順、処理条件と同様の処理手順、処理条件により、処理容器内へ窒化剤を供給する(窒化剤供給)。これにより、処理容器内の部材の最表面に形成されたSiCN層中に、さらにN成分を取り込ませ、この層を、N濃度のより高いSiCN層に改質させることが可能となる。SiCN層が改質された後、処理室201内への窒化剤の供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0095】
[所定回数実施]
上述のステップC1~C3を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことにより、処理容器内の部材の表面を下地として、この下地上に、第2膜として、例えば、第1元素としてのSi、第2元素としてのNおよび第3元素としてのCを含む、所定の厚さのシリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiCN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiCN層を積層することで形成されるSiCN膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0096】
プリコートが終了した後、空のボート217が、マニホールド209の下端から反応管203の外部へ搬出される(ボートアンロード)。
【0097】
(3)第2膜形成で行う制御動作
上述の第1膜、第2膜形成は、同一のウエハ200に対して任意の順序で連続して行うことが可能である。例えば、所定のウエハ200に対して第1膜形成を行った後、同一のウエハ200に対して第2膜形成を続けて行うことが可能である。また例えば、所定のウエハ200に対して第2膜形成を行った後、同一のウエハ200に対して第2膜形成を続けて行うことが可能である。
【0098】
また、上述の第1膜、第2膜形成は、異なるウエハ200に対して任意の順序で続けて行うことも可能である。例えば、所定のウエハ200に対して第1膜形成を行った後、このウエハとは異なる別のウエハ200に対して第2膜形成を行うことも可能である。また、所定のウエハ200に対して第2膜形成を行った後、このウエハ200とは異なる別のウエハ200に対して第2膜形成を行うことも可能である。
【0099】
いずれの場合であっても、第1膜形成を行うと、処理容器内は、処理容器内の部材の最表面(例えば、反応管203の内壁や、ボート217の表面など)に第1膜が付着した状態(以下、この状態を第1の状態とも称する)となる。また、第2膜形成を行うと、処理容器内は、処理容器内の部材の最表面に第2膜が付着した状態(以下、この状態を第2の状態とも称する)となる。
【0100】
なお、第1膜、第2膜形成を行うことによって処理容器内に第1膜、第2膜が付着して累積した場合、処理容器内にエッチングガス等を供給し、処理容器内に累積した膜を除去する処理(クリーニング)が行われることがある。クリーニングを行うと、処理容器内は、処理容器内の部材の表面にクリーニング後の清浄面が露出している状態(以下、この状態を第3の状態とも称する)となる。クリーニングを行った後は、上述の第1膜形成、第2膜形成が再開されることとなる。
【0101】
ここで、発明者らの鋭意研究によれば、第1の状態で第2膜形成を行うと、第2の状態で第2膜形成を行う場合に比べて、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さが薄くなる、或いは、厚くなる現象(以下、これらの現象を膜厚変動現象とも称する)が生じる場合があることが判明した。例えば、処理容器内の部材の最表面に第1膜としてSiN膜のような二元系膜が付着している第1の状態で第2膜形成を行うと、処理容器内の部材の最表面に第2膜としてSiCN膜のような三元系膜が付着している第2の状態で第2膜形成を行う場合に比べて、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さが厚くなる膜厚変動現象が生じる場合がある。
【0102】
また、第3の状態で第2膜形成を行うと、第2の状態で第2膜形成を行う場合に比べて、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さが薄くなる現象(以下、クリーニング後の膜厚変動現象とも称する)が生じる場合もある。
【0103】
これらの課題に対し、本態様では、第2膜形成を行う際、処理容器内の状態(第1~第3の状態)に応じて、
図6に示す種々の制御を行うようにしている。
【0104】
具体的には、処理容器内の部材の最表面に第2膜が付着している第2の状態で第2膜形成を行う場合(S10で「第2の状態」の場合)は、サイクルの繰り返し回数を所定のm回に設定する処理(通常設定)を行ってから(S22)、サイクルの繰り返しを開始する。すなわち、処理容器内の部材の最表面に第2膜が付着している第2の状態で第2膜形成を行う場合は、サイクルの繰り返しをm回行う。
【0105】
また、処理容器内の部材の最表面に第1膜が付着している第1の状態で第2膜形成を行う場合(S10で「第1の状態」の場合)は、サイクルの繰り返し回数を上述のm回とは異なるm±回に設定する処理(例外設定)を行ってから(S12)サイクルの繰り返しを開始するか、処理容器内の部材の最表面に第2膜を形成する上述のプリコート(S31)、および、通常設定(S22)を行ってからサイクルの繰り返しを開始する。すなわち、処理容器内の部材の最表面に第1膜が付着している第1の状態で第2膜形成を行う場合は、サイクルの繰り返しをm回とは異なるm±回行うか、処理容器内の部材の最表面に第2膜を形成するプリコート工程を行ってからサイクルの繰り返しをm回行う。なお、第1膜形成では第1膜としてSiN膜を形成し、第2膜形成では第2膜としてSiCN膜を形成する場合、例外設定では、サイクルの繰り返し回数を、m回よりも少ないm-回に設定する。
【0106】
また、処理容器内の部材の表面にクリーニング後の清浄面が露出している第3の状態で第2膜形成を行う場合(S10で「第3の状態」の場合)は、プリコート(S31)、および、通常設定(S22)を行ってからサイクルの繰り返しを開始する。
【0107】
いずれの場合も、サイクルの繰り返しは、サイクルを1回実施し(S51)、S22あるいはS12で設定した繰り返し回数をデクリメントし(S52)、デクリメント後の繰り返し回数がゼロであるか否かを判定し、それがゼロでない場合(S53でNoの場合)は上述のS51,S52を繰り返し、ゼロになったら(S53でYesになったら)サイクルの繰り返し実施を終了する。
【0108】
上述の制御の結果、本態様では、所定のウエハ200に対して第1膜形成を行った後、同一のウエハ200に対して第2膜形成を続けて行う場合、すなわち、第1の状態で、同一のウエハ200に対して第2膜形成を行う場合は、例外設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始することになる(
図6のS10→S11→S12→S51~S53参照)。
【0109】
また、本態様では、所定のウエハ200に対して第2膜形成を行った後、同一のウエハ200に対して第2膜形成を続けて行う場合、すなわち、第2の状態で、同一のウエハ200に対して第2膜形成を行う場合は、通常設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始することになる(
図6のS10→S21→S22→S51~S53参照)。
【0110】
また、本態様では、所定のウエハ200に対して第1膜形成を行った後、このウエハ200とは異なる別のウエハ200に対して第2膜形成を行う場合、すなわち、第1の状態で、別のウエハ200に対して第2膜形成を行う場合は、プリコート、および、通常設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始することとなる(
図6のS10→S11→S31→S32→S22→S51~S53参照)。
【0111】
また、本態様では、所定のウエハ200に対して第2膜形成を行った後、このウエハ200とは異なる別のウエハ200に対して第2膜形成を行う場合、すなわち、第2の状態で、別のウエハ200に対して第2膜形成を行う場合は、通常設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始することとなる(
図6のS10→S21→S23→S22→S51~S53参照)。
【0112】
(4)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す一つ又は複数の効果が得られる。
【0113】
(a)第1の状態で第2膜形成を行うと、第2の状態で第2膜形成を行う場合に比べて、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さが変化する膜厚変動現象が生じる場合がある。このような課題に対し、本態様においては、第2の状態で第2膜形成を行う場合は、サイクルの繰り返し回数をm回に設定する通常設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始し、第1の状態で第2膜形成を行う場合は、サイクルの繰り返し回数をm回とは異なるm±回に設定する例外設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始するか、処理容器内の部材の最表面に第2膜を形成するプリコート、および、通常設定行ってからサイクルの繰り返しを開始する。換言すれば、第2の状態で第2膜形成を行う場合は、サイクルの繰り返しをm回行い、第1の状態で第2膜形成を行う場合は、サイクルの繰り返しをm回とは異なるm±回行うか、処理容器内の部材の最表面に第2膜を形成するプリコート工程を行ってからサイクルの繰り返しをm回行う。これらにより、第1の状態で第2膜形成を行う場合であっても、第2の状態で第2膜形成を行う場合であっても、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さを、常に一定に保つことが可能となる。
【0114】
例えば、処理容器内の部材の最表面に第1膜としてSiN膜のような二元系膜が付着している第1の状態で第2膜形成を行うと、処理容器内の部材の最表面に第2膜としてSiCN膜のような三元系膜が付着している第2の状態で第2膜形成を行う場合に比べて、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さが厚くなる膜厚変動現象が生じる場合がある。このような課題に対し、本態様によれば、例外設定処理にて、サイクルの繰り返し回数を、m回よりも少ないm-回に設定することにより、第1の状態で第2膜形成を行う場合であっても、第2の状態で第2膜形成を行う場合であっても、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さを、常に一定に保つことが可能となる。
【0115】
(b)所定のウエハ200に対して第1膜形成を行った後、このウエハ200に対して第2膜形成を続けて行う場合は、第1膜形成の後に行う第2膜形成が第1の状態で行われることになり、上述の膜厚変動現象が生じやすくなる。これに対し、本態様のように、第1膜形成の後に行う第2膜形成において、上述の例外設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始することにより、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さを、常に一定に保つことが可能となる。また、この場合は、ウエハ200の搬出・搬入を伴うプリコートを行わないので、基板処理における生産性の低下を回避することが可能となる。
【0116】
(c)所定のウエハ200に対して第2膜形成を行った後、このウエハ200に対して第2膜形成を続けて行う場合は、後に行う第2膜形成が第2の状態で行われることになり、上述の膜厚変動現象が生じにくくなる。このため、この場合は、本態様のように、後に行う第2膜形成において、通常設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始することにより、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さを、常に一定に保つことが可能となる。
【0117】
(d)所定のウエハ200に対して第1膜形成を行った後、このウエハ200とは異なるウエハ200に対して第2膜形成を行う場合は、第1膜形成の後に行う第2膜形成が第1の状態で行われることになり、上述の膜厚変動現象が生じやすくなる。これに対し、本態様によれば、第1膜形成の後に行う第2膜形成において、プリコート、および、通常設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始することにより、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さを、常に一定に保つことが可能となる。また、この場合は、例外設定を行わないので、制御プログラムを簡素化させ、基板処理装置の製造コストを低減させることが可能となる。
【0118】
(e)所定のウエハ200に対して第2膜形成を行った後、このウエハ200とは異なるウエハ200に対して第2膜形成を行う場合は、後に行う第2膜形成が第2の状態で行われることになり、上述の膜厚変動現象が生じにくくなる。このため、この場合は、本態様のように、後に行う第2膜形成において、通常設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始することにより、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さを、常に一定に保つことが可能となる。
【0119】
(f)第3の状態で第2膜形成を行う場合は、プリコート、および、通常設定を行ってからサイクルの繰り返しを開始することにより、クリーニング後の膜厚変動現象が生じにくくなり、ウエハ200上に形成される第2膜の厚さを、常に一定に保つことが可能となる。
【0120】
(g)プリコートを、処理容器内にウエハ200が存在しない状態で行うことにより、プリコートを実施することによるウエハ200への影響を回避することが可能となる。また、プリコートでは、第2膜形成と同様に、処理容器内へ第2処理ガスを供給するサイクルを繰り返すことにより、プリコートと、第2膜形成とで、使用する処理ガスや制御プログラムを共用化させることができ、基板処理装置の製造コストを低減させることが可能となる。
【0121】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0122】
上述の態様では、処理容器内が第1の状態であるときに第2膜形成を行うと、第2膜の膜厚が厚くなるという膜厚変動現象を回避するため、サイクルの繰り返し回数をm回よりも少ないm-回に設定するという例外設定を行う例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、処理容器内が第1の状態であるときに第2膜形成を行うと、第2膜の膜厚が薄くなるという膜厚変動現象が生じる場合には、サイクルの繰り返し回数をm回よりも多いm+回に設定する例外設定を行うことで、この現象の発生を回避することができ、この場合においても、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0123】
上述の態様では、処理容器内が第3の状態であるときに第2膜形成を行うと、第2膜の膜厚が薄くなるという膜厚変動現象を回避するため、プリコート、および、繰り返し回数をm回に設定する通常設定を行う例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、処理容器内が第3の状態であるときに第2膜形成を行う場合には、プリコートおよび通常設定を行うことなく、繰り返し回数をm回よりも多いm+回に設定する例外設定を行うことで、この現象の発生を回避することができ、この場合においても、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0124】
上述の態様では、第1膜形成において、原料と窒化剤とを非同時に供給するサイクルを所定回数(1回以上)行う場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1膜形成において、原料と窒化剤とを同時に供給するサイクルを所定回数(1回以上)行う場合であっても、本開示は好適に適用可能である。この場合においても、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0125】
上述の態様では、第2膜形成において、原料とN及びC含有ガスと窒化剤と、を非同時に供給するサイクルを繰り返す場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、以下に示す成膜シーケンスのように、第2膜形成において、原料とN及びC含有ガスとを非同時に供給するサイクルを繰り返すようにしてもよい。また、第2膜形成において、原料を供給するステップと、N及びC含有ガスおよび窒化剤を同時に供給するステップと、を非同時に行うサイクルを繰り返すようにしてもよい。また、原料として、1,1,2,2-テトラクロロ-1,2-ジメチルジシラン((CH3)2Si2Cl4、略称:TCDMDS)ガス、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン((CH3)4Si2Cl2、略称:DCTMDS)ガス、ビス(トリクロロシリル)メタン((SiCl3)2CH2、略称:BTCSM)ガス等のSi及びCを含むガスを用い、原料と窒化剤とを非同時に供給するサイクルを繰り返すようにしてもよい。また、原料と、プロプレン(C3H6)ガス等の炭素(C)含有ガスと、窒化剤と、を非同時に供給するサイクルを繰り返すようにしてもよい。
【0126】
(原料→N及びC含有ガス)×m
(原料→N及びC含有ガス+窒化剤)×m
(Si及びCを含む原料→窒化剤)×m
(原料→C含有ガス→窒化剤)×m
【0127】
各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の態様の各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。これらの場合においても、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0128】
上述の態様では、プリコートにおいて、処理容器内の部材の最表面を下地として第2膜を形成する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、プリコートにおいて、処理容器内の部材の最表面に第1膜を形成した後、この膜上に第2膜を積層させるようにしてもよい。また、プリコートにおいて、処理容器内の部材の最表面に第1膜を形成した後、この膜を第2膜へと改質させるようにしてもよい。これらの場合においても、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0129】
上述の態様では、第1膜、第2膜が、それぞれ、Siを主元素とする場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1膜、第2膜が、それぞれ、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)等の金属元素を主元素とする場合にも、本開示は好適に適用できる。これらの場合においても、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0130】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0131】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0132】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0133】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0134】
また、上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0135】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0136】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)処理容器内に収容された基板に対して第1処理ガスを供給し、基板上に、所定の組成を有する第1膜を形成する工程と、
(b)前記処理容器内に収容された基板に対して第2処理ガスを供給するサイクルを繰り返し、基板上に、前記第1膜とは組成の異なる第2膜を形成する工程と、
を有し、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜が付着している第2の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルの繰り返しを所定のm回行い、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第1膜が付着している第1の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルの繰り返しを前記m回とは異なるm±回行うか、前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜を形成するプリコート工程を行ってから前記サイクルの繰り返しを前記m回行う
半導体装置の製造方法または基板処理方法が提供される。
【0137】
(付記2)
好ましくは、付記1に記載の方法であって、
前記サイクルの繰り返しを前記m回行うことは、前記サイクルの繰り返し回数を前記m回に設定する通常設定工程に基づいて実行され、
前記サイクルの繰り返しを前記m±回行うことは、前記サイクルの繰り返し回数を前記m±回に設定する例外設定工程に基づいて実行される。
【0138】
(付記3)
本開示の他の態様によれば、
(a)処理容器内に収容された基板に対して第1処理ガスを供給し、基板上に、所定の組成を有する第1膜を形成する工程と、
(b)前記処理容器内に収容された基板に対して第2処理ガスを供給するサイクルを繰り返し、基板上に、前記第1膜とは組成の異なる第2膜を形成する工程と、
を有し、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜が付着している第2の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルの繰り返し回数を所定のm回に設定する通常設定工程を行ってから前記サイクルの繰り返しを開始し、
前記処理容器内の部材の最表面に前記第1膜が付着している第1の状態で前記(b)を行う場合は、前記サイクルの繰り返し回数を前記m回とは異なるm±回に設定する例外設定工程を行ってから前記サイクルの繰り返しを開始するか、前記処理容器内の部材の最表面に前記第2膜を形成するプリコート工程、および、前記通常設定工程を行ってから前記サイクルの繰り返しを開始する
半導体装置の製造方法または基板処理方法が提供される。
【0139】
(付記4)
好ましくは、付記2または3に記載の方法であって、
所定の基板に対して前記(a)を行った後、前記所定の基板に対して前記(b)を続けて行う場合は、前記例外設定工程を行ってから前記サイクルの繰り返しを開始する。
【0140】
(付記5)
好ましくは、付記2~4のいずれかに記載の方法であって、
所定の基板に対して前記(b)を行った後、前記所定の基板に対して前記(b)を続けて行う場合は、前記通常設定工程を行ってから前記サイクルの繰り返しを開始する。
【0141】
(付記6)
好ましくは、付記2~5のいずれかに記載の方法であって、
所定の基板に対して前記(a)を行った後、前記所定の基板とは異なる基板に対して前記(b)を行う場合は、前記プリコート工程、および、前記通常設定工程を行ってから前記サイクルの繰り返しを開始する。
【0142】
(付記7)
好ましくは、付記2~6のいずれかに記載の方法であって、
所定の基板に対して前記(b)を行った後、前記所定の基板とは異なる基板に対して前記(b)を行う場合は、前記通常設定工程を行ってから前記サイクルの繰り返しを開始する。
【0143】
(付記8)
好ましくは、付記2~7のいずれかに記載の方法であって、
前記処理容器内の部材の表面にクリーニング後の清浄面が露出している第3の状態で前記(b)を行う場合は、前記プリコート工程、および、前記通常設定工程を行ってから前記サイクルの繰り返しを開始する。
【0144】
(付記9)
好ましくは、付記2~8のいずれかに記載の方法であって、
前記プリコート工程では、前記処理容器内に基板が存在しない状態で、前記処理容器内へ前記第2処理ガスを供給する前記サイクルを繰り返す。
【0145】
(付記10)
好ましくは、付記2~9のいずれかに記載の方法であって、
前記(a)では、前記第1膜として、第1元素(例えばSi)および第2元素(例えばN)を含む膜を形成し、
前記(b)では、前記第2膜として、前記第1元素、前記第2元素、および、第3元素(例えばC)を含む膜を形成し、
前記例外設定工程では、前記サイクルの繰り返し回数を、前記m回よりも少ないm-回に設定する。
【0146】
(付記11)
好ましくは、付記10に記載の方法であって、
前記(a)では、前記第1膜としてシリコン窒化膜を形成し、
前記(b)では、前記第2膜としてシリコン炭窒化膜を形成する。
【0147】
(付記12)
本開示の他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内へ第1処理ガスおよび第2処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記付記1または3の各処理(各工程)を行わせるように、前記処理ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0148】
(付記13)
本開示のさらに他の態様によれば、
前記付記1または3の各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0149】
200 ウエハ(基板)