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特許7460963接着剤組成物、積層体及び積層体の製造方法並びに半導体形成基板を薄化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】接着剤組成物、積層体及び積層体の製造方法並びに半導体形成基板を薄化する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240327BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20240327BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20240327BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20240327BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20240327BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
H01L21/304 621B
C09J183/05
C09J183/07
C09J183/06
C09J11/02
B32B27/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020557742
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046201
(87)【国際公開番号】W WO2020111069
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2018222885
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】森谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】新城 徹也
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525953(JP,A)
【文献】特開2017-132036(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221772(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190438(WO,A1)
【文献】特開2018-046095(JP,A)
【文献】特開2017-079245(JP,A)
【文献】特開2016-119438(JP,A)
【文献】特開2013-232459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09J 183/05
C09J 183/07
C09J 183/06
C09J 11/02
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体形成基板からなる第1基体と支持基板からなる第2基体との間で剥離可能に接着する接着層を形成するための接着剤組成物であって、
ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)と、
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分を含む剥離成分(B)とを含み、
前記成分(A)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)(前記R~Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基又は水素原子を表す。)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、
前記ポリシロキサン(A1)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1)(前記R’~R’は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基又はアルケニル基を表すが、前記R’~R’の少なくとも1つは、前記アルケニル基である。)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種または2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、且つ、官能基(Si-H)の量が、5.0mol/kg以上であるポリオルガノシロキサン(a2)(前記R”~R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基又は水素原子を表すが、前記R”~R”の少なくとも1つは、水素原子である。)とを含み、
前記エポキシ変性ポリオルガノシロキサンが、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ変性ポリオルガノシロキサンである接着剤組成物。
【請求項2】
半導体形成基板からなる第1基体と、支持基板からなる第2基体と、前記第1基体と前記第2基体との間で剥離可能に接着する接着層とを備える積層体であって、
前記接着層が、請求項1記載の接着剤組成物を用いて形成された硬化膜であることを特徴とする積層体。
【請求項3】
半導体形成基板からなる第1基体又は支持基板からなる第2基体に請求項1記載の接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する工程と、
前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体とを密着させ、その後、後加熱処理を行う工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項4】
半導体形成基板を薄化する方法であって、
半導体形成基板からなる第1基体又は支持基板からなる第2基体に請求項1記載の接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する工程と、
前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体とを密着させ、その後、後加熱処理を行って、積層体を製造する工程と、
前記積層体の前記第1基体に薄化処理を施す工程と、
を含む、半導体形成基板を薄化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、積層体及び積層体の製造方法並びに半導体形成基板を薄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来2次元的な平面方向に集積してきた半導体ウエハーは、より一層の集積化を目的に平面を更に3次元方向にも集積(積層)する半導体集積技術が求められている。この3次元積層はシリコン貫通電極(TSV:through silicon via)によって結線しながら多層に集積していく技術である。多層に集積する際に、集積されるそれぞれのウエハーは形成された回路面とは反対側(即ち、裏面)を研磨によって薄化し、薄化された半導体ウエハーが積層される。
【0003】
薄化前の半導体ウエハー(ここでは単にウエハーとも呼ぶ)は、研磨装置で研磨するために支持体に接着される。その際の接着は研磨後に容易に剥離されなければならないため、仮接着と呼ばれる。
この仮接着の取り外しに大きな力を加えると薄化された半導体ウエハーは、切断されたり、変形したりすることがある。そのようなことが起きないように、仮接着された支持体は、容易に取り外されなければならない。しかし、その一方で、半導体ウエハーの裏面研磨時に研磨応力によって仮接着された支持体が外れたりずれたりすることは好ましくない。従って、仮接着に求められる性能は研磨時の応力に耐えるが、研磨後に容易に取り外されることである。
例えば研磨時の平面方向に対して高い応力(強い接着力)を持ち、取り外し時の縦方向に対して低い応力(弱い接着力)を有する性能が求められる。
【0004】
このような事情より、研磨時の平面方向に対して高い応力(強い接着力)と、取り外し時の縦方向に対して低い応力(弱い接着力)が仮接着には必要となる。これに関連する方法として、接着層と分離層を持ち、分離層がジメチルシロキサンのプラズマ重合によって形成され、研磨後に機械的に分離する方法(例えば特許文献1,2)、支持基板と半導体ウエハーとを接着性組成物で接着し、半導体ウエハーの裏面を研磨した後に接着剤をエッチング液で除去する方法(例えば特許文献3)が報告されている。また、これに関連する支持体と半導体ウエハーを接着する接着層等としては、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサンとを白金触媒で重合した重合層と、熱硬化性ポリシロキサンからなる重合層との組み合わせを含むウエハー加工体(例えば特許文献4~6)が報告されている。さらに、ヒドロシリル化反応の抑制剤として長鎖α-アセチレンアルコールと硬化性シリコーン組成物(例えば特許文献7)が報告されている。しかしながら、昨今の半導体分野における急速な進展に伴い、常に、新技術や改良技術への強い要望が存在し、仮接着に関する新技術や改良技術も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2012-510715号公報
【文献】特表2012-513684号公報
【文献】特開2013-179135号公報
【文献】特開2013-232459号公報
【文献】特開2006-508540号公報
【文献】特開2009-528688号公報
【文献】特開平6-329917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、支持体の接合時(硬化時)やウエハー裏面の加工時、さらには部品実装プロセスにおける耐熱性に優れ、支持体の剥離時には容易に剥離できる接着層を与える接着剤組成物、それを用いて得られる積層体及びその製造方法並びに半導体形成基板の薄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、半導体形成基板からなる第1基体と支持基板からなる第2基体との間で剥離可能に接着する接着層を形成するための、所定のポリシロキサン及び白金族金属系触媒を含むヒドロシリル化反応により硬化する成分と、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分を含む剥離成分とを含む接着剤組成物において、所定のポリシロキサンが含むSiH基含有ポリオルガノシロキサンの官能基(Si-H)の量を5.0mol/kg以上とすることで、特に耐熱性に優れ、支持基板の剥離時には容易に剥離できる接着層が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.半導体形成基板からなる第1基体と支持基板からなる第2基体との間で剥離可能に接着する接着層を形成するための接着剤組成物であって、
ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)と、
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分を含む剥離成分(B)とを含み、
前記成分(A)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)(前記R~Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基又は水素原子を表す。)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、
前記ポリシロキサン(A1)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1)(前記R’~R’は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基又はアルケニル基を表すが、前記R’~R’の少なくとも1つは、前記アルケニル基である。)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種または2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、且つ、官能基(Si-H)の量が、5.0mol/kg以上であるポリオルガノシロキサン(a2)(前記R”~R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基又は水素原子を表すが、前記R”~R”の少なくとも1つは、水素原子である。)とを含む接着剤組成物、
2.前記エポキシ変性ポリオルガノシロキサンが、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ変性ポリオルガノシロキサンである1の接着剤組成物、
3.半導体形成基板からなる第1基体と、支持基板からなる第2基体と、前記第1基体と前記第2基体との間で剥離可能に接着する接着層とを備える積層体であって、
前記接着層が、1又は2の接着剤組成物を用いて形成された硬化膜であることを特徴とする積層体、
4.半導体形成基板からなる第1基体又は支持基板からなる第2基体に1又は2の接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する工程と、
前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体とを密着させ、その後、後加熱処理を行う工程と、
を含む、積層体の製造方法、
5.半導体形成基板を薄化する方法であって、
半導体形成基板からなる第1基体又は支持基板からなる第2基体に1又は2の接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する工程と、
前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体とを密着させ、その後、後加熱処理を行って、積層体を製造する工程と、
前記積層体の前記第1基体に薄化処理を施す工程と、
を含む、半導体形成基板を薄化する方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接着剤組成物から得られる接着層は、ウエハー等の被加工体の加工がされている時は支持体と被加工体との間で好適な接着能を発揮し、且つ、加工の後は、容易に剥離できることから、本発明の接着剤組成物を用いることで、支持体やウエハー等の被加工体に剥離のための過度の負荷をかけずに剥離可能な接着層を製造できる。また、本発明の接着剤組成物から得られる接着層は、優れた耐熱性を有することから、ウエハーの薄化、TSVプロセスといった半導体プロセス工程で負荷される高温にも十分耐え得るものである。このような特徴を備える本発明の接着剤組成物は、昨今の半導体分野における進展に十分対応し得るものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の接着剤組成物は、例えば、支持体とウエハーの回路面との間で両者を剥離可能に接着しウエハーの裏面を加工するために用いる接着剤であり、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)と、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む剥離成分(B)とを含み、当該成分(A)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、当該ポリシロキサン(A1)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種または2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、且つ、官能基(Si-H)の量が、5.0mol/kg以上であるポリオルガノシロキサン(a2)とを含む。
【0011】
ここで、本発明の接着剤組成物を用いて得られる接着層は、ウエハーの回路面と支持体とを剥離可能に好適に接着することから、例えば、ウエハーの回路面とは反対側の裏面を研磨等によって加工することにより、ウエハーの厚みを薄化等することができ、加工が終了した後は、当該接着層を剥離することで薄化等が施されたウエハーを支持体から容易に取り外すことができる。なお、剥離可能とは他の剥離箇所よりも接着強度が低く、すなわち剥離性に優れ、剥離しやすいことを意味する。
【0012】
~Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基又は水素原子を表す。
’~R’は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基又はアルケニル基を表すが、R’~R’の少なくとも1つは、アルケニル基である。
”~R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、アルキル基又は水素原子を表すが、R”~R”の少なくとも1つは、水素原子である。
【0013】
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
【0014】
直鎖状又は分岐鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、メチル基が好ましい。
【0015】
環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
【0017】
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、エテニル基、2-プロペニル基を好ましい。
【0018】
前述の通り、ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)とを含むが、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基と、ポリオルガノシロキサン(a2)に含まれる水素原子(Si-H基)とが白金族金属系触媒(A2)によるヒドロシリル化反応によって架橋構造を形成し硬化する。従って、その硬化のメカニズムは、例えばシラノール基を介した反応とは異なり、それ故、本発明で用いるシロキサンは、シラノール基や、アルキルオキシ基のような加水分解によってシラノール基を形成することが官能基を含む必要は無い。
【0019】
ポリオルガノシロキサン(a1)は、Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a1)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(Q’単位とM’単位)、(D’単位とM’単位)、(T’単位とM’単位)、(Q’単位とT’単位とM’単位)、が挙げられるが、これらに限定されない。
また、ポリオルガノシロキサン(a1)に包含されるポリオルガノシロキサンを2種以上含まれる場合、(Q’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(T’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(Q’単位とT’単位とM’単位)と(T’単位とM’単位)との組み合わせが好ましいが、これらに限定されない。
【0020】
ポリオルガノシロキサン(a2)は、Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a2)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(M”単位とD”単位)、(Q”単位とM”単位)、(Q”単位とT”単位とM”単位)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
ポリオルガノシロキサン(a1)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又はアルケニル基が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R’~R’で表される全置換基中におけるアルケニル基の割合は、好ましくは0.1モル%~50.0モル%、より好ましくは0.5モル%~30.0モル%であり、残りのR’~R’はアルキル基とすることができる。
【0022】
ポリオルガノシロキサン(a2)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又は水素原子が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R”~R”で表される全ての置換基及び置換原子中における水素原子の割合は、好ましくは0.1モル%~50.0モル%、より好ましくは10.0モル%~40.0モル%であり、残りのR”~R”はアルキル基とすることができる。
【0023】
本発明で用いるポリオルガノシロキサン(a2)の官能基(Si-H)の量は、5.0mol/kg以上であるが、好ましくは5.5mol/kg以上、より好ましくは6.0mol/kg以上、より一層好ましくは6.5mol/kg以上、更に好ましくは7.0mol/kg以上である。このような条件を満たすポリオルガノシロキサン(a2)を用いることで、剥離性に優れるとともに、特に耐熱性に優れる接着層を与える接着剤組成物を再現性よく得ることができる。
なお、官能基(Si-H)の量は、例えば、当該官能基のプロトンに基づくH-NMR測定によって算出することができる。
【0024】
ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)とを含むものであるが、本発明の好ましい一態様においては、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)に含まれるSi-H結合を構成する水素原子とのモル比は、1.0:0.5~1.0:0.66の範囲である。
【0025】
ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の重量平均分子量は、それぞれ、通常500~1,000,000であるが、好ましくは5,000~50,000である。
【0026】
なお、本発明における重量平均分子量は、例えば、GPC装置(東ソー(株)製EcoSEC,HLC-8320GPC)及びGPCカラム(昭和電工(株)製Shodex(登録商標),KF-803L、KF-802及びKF-801)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を1.0mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)を用いて、測定することができる。
【0027】
成分(A)は、白金族金属系触媒(A2)を含む。このような白金系の金属触媒は、ポリオルガノシロキサン(a1)のアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)のSi-H基とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
白金系の金属触媒の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
白金とオレフィン類との錯体としては、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンと白金との錯体が挙げられるが、これに限定されない。
白金族金属系触媒(A2)の量は、通常、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、1.0~50.0ppmの範囲である。
【0028】
成分(A)は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制する目的で、重合抑制剤(A3)を含んでもよい。本発明の接着剤組成物に重合抑制剤を含めることで、貼り合せ時の加熱による硬化を好適に制御可能となり、接着性と剥離性に優れる接着層を与える組成物を再現性よく得ることができる。
重合抑制剤は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制できる限り特に限定されるものではないが、その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,1-ジフェニル-2-プロピオン-1-オール等のアルキニルアルキルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されない。
重合抑制剤の量は、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)に対して、通常、その効果を得る観点から1000.0ppm以上であり、ヒドロシリル化反応の過度な抑制を防止する観点から10000.0ppm以下である。
【0029】
本発明で用いる剥離成分(B)は、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分を含む。
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンとしては、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D10単位)を含むものが挙げられる。
【0030】
11は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、R12は、ケイ素原子に結合する基であり、エポキシ基又はエポキシ基を含む有機基を表し、アルキル基の具体例としては、前述の例示を挙げることができる。
また、エポキシ基を含む有機基におけるエポキシ基は、その他の環と縮合せずに、独立したエポキシ基であってもよく、1,2-エポキシシクロヘキシル基のように、その他の環と縮合環を形成しているエポキシ基であってもよい。
エポキシ基を含む有機基の具体例としては、3-グリシドキシプロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、エポキシ変性ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0031】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンは、前述のシロキサン単位(D10単位)を含むものであるが、D10単位以外に、前記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
本発明の好ましい一態様においては、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D10単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0032】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンは、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ変性ポリジメチルシロキサンが好ましく、その重量平均分子量は、通常1,500~500,000であるが、組成物中での析出抑制の観点から、好ましくは100,000以下である。
なお、本発明におけるエポキシ価は、例えば、エポキシ価を測定したいエポキシ変性ポリオルガノシロキサン0.5mgと、測定溶液(ジイソブチルケトン:酢酸:テトラエチルアンモニウムブロマイド=1000:1000:140(v/v/v))50gとを30分間撹拌して得られる溶液に、自動滴定装置(三菱化学(株)(現 (株)三菱ケミカルアナリテック)製 GT-100)を使用し、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を加えることにより測定することができる。
【0033】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(B-1)で表される商品名ECMS-227(ゲレスト社製、重量平均分子量27,000)、式(B-2)で表される商品名ECMS-327(ゲレスト社製、重量平均分子量28,800)、式(B-3)で表される商品名KF-101(信越化学工業(株)製、重量平均分子量31,800)、式(B-4)で表される商品名KF-1001(信越化学工業(株)製、重量平均分子量55,600)、式(B-5)で表される商品名KF-1005(信越化学工業(株)製、重量平均分子量11,500)、式(B-6)で表される商品名X-22-343(信越化学工業(株)製、重量平均分子量2,400)、式(B-7)で表される商品名BY16-839(ダウコーニング社製、重量平均分子量51,700)、式(B-8)で表される商品名ECMS-327(ゲレスト社製、重量平均分子量28,800)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
【化1】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0035】
【化2】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0036】
【化3】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0037】
【化4】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0038】
【化5】
(m、n及びoはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0039】
【化6】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)




【0040】
【化7】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0041】
【化8】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0042】
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分とともに、メチル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分やフェニル基含有ポリオルガノシロキサンといった剥離性を示すポリオルガノシロキサンを含む成分を含んでもよい。
【0043】
本発明の接着剤組成物は、成分(A)と成分(B)とを任意の比率で含み得るが、接着性と剥離性のバランスを考慮すると、成分(A)と成分(B)との比率は、質量%で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
【0044】
本発明の接着剤組成物は、粘度の調整等を目的に、溶媒を含んでもよく、その具体例としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン等が挙げられるが、これらに限定されない。
より具体的には、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、メンタン、リモネン、トルエン、キシレン、メチシレン、クメン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸ブチル、ジイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ノナノン、5-ノナノン等が挙げられるが、これらに限定されない。このような溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の接着剤組成物が溶媒を含む場合、その含有量は、所望の組成物の粘度、採用する塗布方法、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、組成物全体に対して、10~90質量%程度の範囲である。
【0045】
本発明の接着剤組成物の粘度は、25℃で、通常1,000~20,000mPa・s、好ましくは1,000~5,000mPa・sである。本発明の接着剤組成物の粘度は、用いる塗布方法、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、用いる有機溶媒の種類やそれらの比率、膜構成成分濃度等を変更することで調整可能である。
【0046】
本発明の接着剤組成物は、膜構成成分と溶媒を混合することで製造できる。ただし、溶媒が含まれない場合、膜構成成分を混合することで、本発明の光照射剥離用接着剤組成物を製造することができる。
その混合順序は特に限定されるものではないが、容易にかつ再現性よく、本発明の接着剤組成物を製造できる方法の一例としては、例えば、膜構成成分の全てを溶媒に溶解させる方法や、膜構成成分の一部を溶媒に溶解させ、膜構成成分の残りを溶媒に溶解させ、得られた溶液を混合する方法が挙げられる。この場合において、必要であれば、一部の溶媒や、溶解性に優れる膜構成成分を最後に加えることもできる。更に、組成物を調製する際、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
【0047】
本発明においては、組成物中の異物を除去する目的で、組成物を製造する途中段階でまたは全ての成分を混合した後に、接着剤組成物をサブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0048】
本発明の積層体は、半導体形成基板からなる第1基体と、支持基板からなる第2基体と、前記第1基体と前記第2基体との間で剥離可能に接着する接着層とを備え、当該接着層が、前記接着剤組成物を用いて形成された硬化膜である積層体であるから、本発明の積層体は、2つの基体の間に剥離可能に接着する接着層を有する積層体である限り特に限定されるものではない。従って、例えば、基体と接着層との間に、剥離の際の基体への負荷をより低減する目的等で、任意の機能層を設けることもできる。この際、当該機能層は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択される。
【0049】
本発明の積層体が備える接着層の架橋密度は、通常、0.50mol/kg以上であるが、好ましくは0.60mol/kg以上、より好ましくは0.70mol/kg以上、より一層好ましくは0.80mol/kg以上、更に好ましくは0.90mol/kg以上である。なお、本発明において、架橋密度は、架橋密度=[A]×[B]/[C]([A]:ポリオルガノシロキサン(a2)の官能基(Si-H)の量(mol/kg)、[B]:ポリオルガノシロキサン(a2)の添加量(kg)、[C]:溶媒成分を除いた接着剤組成物の総重量(kg))との式に基づき算出できる。
【0050】
本発明の好適な一態様においては、本発明の積層体は、半導体形成基板からなる第1基体、支持基板からなる第2基体、及び、これら2つの基体の間に前記接着剤組成物を用いて形成された硬化膜からなる接着層を当該2つの基体に接するように備えるものである。
【0051】
本発明の好適な一態様としては、本発明の積層体の製造方法は、第1基体又は第2基体の表面に前記接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する工程と、前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体と密着させ、その後、後加熱処理を行う工程とを含む。この工程の後加熱処理により、接着剤塗布層が最終的に好適に硬化して接着層となる。
【0052】
ここで、例えば、第1基体がウエハーであり、第2基体が支持体である。接着剤組成物を塗布する対象は、第1基体と第2基体のいずれか一方でも又は両方でもよいが、第1基体が好ましい。
ウエハーとしては、例えば直径300mm、厚さ770μm程度のシリコンウエハーやガラスウエハーが挙げられるが、これらに限定されない。
支持体(キャリア)は、特に限定されるものではないが、例えば直径300mm、厚さ700μm程度のシリコンウエハーを挙げることができるが、これに限定されない。
【0053】
第2基体側から剥離するためのレーザーを照射する場合には、第2基体は、レーザーを透過するものを用いる。この場合のレーザーの透過率は、通常80%以上、好ましくは90%以上である。具体的には、例えば直径300mm、厚さ700μm程度のシリコンウエハーを挙げることができるが、これに限定されない。
【0054】
ここで、レーザーとは、後述する剥離工程で使用するレーザーであり、その波長は、通常、190nm~600nmであるが、再現性よく好適に剥離する観点等から、好ましく250nm以上、より好ましくは300nm以上であり、好ましくは580nm以下、より好ましくは560nm以下であり、例えば、308nm、355nm又は532nmのレーザーによって、本発明の積層体を好適に剥離できる。
【0055】
前記接着剤塗布層の膜厚は、通常5~500μmであるが、膜強度を保つ観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、より一層好ましくは30μm以上であり、厚膜に起因する不均一性を回避する観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、より一層好ましくは120μm以下、更に好ましくは70μm以下である。
【0056】
塗布方法は、特に限定されるものではないが、通常、スピンコート法である。なお、別途スピンコート法などで塗布膜を形成し、シート状の塗布膜を貼付する方法を採用してもよく、これも塗布又は塗布膜という。
【0057】
加熱処理の温度は、通常80℃以上であり、過度の硬化を防ぐ観点から、好ましくは150℃以下である。加熱処理の時間は、仮接着能を確実に発現させる観点から、通常30秒以上、好ましくは1分以上であるが、接着層やその他の部材の変質を抑制する観点から、通常10分以下、好ましくは5分以下である。
【0058】
減圧処理は、2つの基体及びそれらの間の接着剤塗布層を10~10,000Paの気圧下にさらせばよい。減圧処理の時間は、通常1~30分である。
【0059】
本発明の好ましい態様においては、2つの基体及びそれらの間の層は、好ましくは加熱処理によって、より好ましくは加熱処理と減圧処理の併用によって、貼り合せられる。
【0060】
前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重は、前記第1基体及び前記第2基体とそれらの間の層に悪影響を及ぼさず、且つこれらをしっかりと密着させることができる荷重である限り特に限定されないが、通常10~1,000Nの範囲内である。
【0061】
後加熱温度は、十分な硬化速度を得る観点から、好ましくは120℃以上であり、基板や接着剤の変質を防ぐ観点から、好ましくは260℃以下である。加熱時間は、硬化によるウエハーの好適な接合を実現する観点から、通常1分以上であり、さらに接着剤の物性安定化の観点等から、好ましくは5分以上であり、過度の加熱による接着層への悪影響等を回避する観点から、通常180分以下、好ましくは120分以下である。加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。なお、後加熱処理の一つの目的は、例えばヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)を含む接着剤組成物をより好適に硬化させることである
【0062】
本発明の積層体に施される加工の一例としては、半導体形成基板からなる第1基体の表面の回路面とは反対の裏面の加工が挙げられ、典型的には、ウエハー裏面の研磨によるウエハーの薄化が挙げられる。このような薄化されたウエハーを用いて、シリコン貫通電極(TSV)等の形成を行い、次いで支持体から薄化ウエハーを剥離してウエハーの積層体を形成し、3次元実装化される。また、それに前後してウエハー裏面電極等の形成も行われる。ウエハーの薄化とTSVプロセスには支持体に接着された状態で250~350℃の熱が負荷されるが、本発明の積層体が含む接着層は、その熱に対する耐熱性を有している。
【0063】
例えば、直径300mm、厚さ770μm程度のウエハーは、表面の回路面とは反対の裏面を研磨して、厚さ80μm~4μm程度まで薄化することができる。
【0064】
本発明の積層体の剥離方法は、溶剤剥離、レーザー剥離、鋭部を有する機材による機械的な剥離、支持体とウエハーとの間で引きはがす剥離等が挙げられるが、これらに限定されない。通常、剥離は、本発明の積層体を製造し、それに所定の加工等が行われた後に、実施される。
【0065】
一例を挙げれば、例えば剥離箇所を本発明の積層体の支持基板と接着層との間とし、その剥離箇所に所定の力を加えることで、第2基体と、第1基体及び接着層とを容易に分離できる。
【0066】
他の一例を挙げれば、本発明の積層体の、例えば、レーザーを透過する第2基体側からレーザーを照射し、第2基体を取り外すことができる。本発明の積層体においては第1基体とレーザーを透過する第2基体とがレーザーを吸収する接着層によって好適に剥離可能に仮接着されているので、第2基体側からレーザーを照射した際、接着層がレーザーの照射を受けると、レーザーを吸収して接着層表面が分解し、基板にダメージを与えない程度の微量の気体が接着層と第2基体との間で発生することでその接着力が低下し、第2基体と接着層との界面を介して、第2基体と、第1基体及び接着層とを容易に分離できる。
なお、レーザーの照射は、必ずしも接着層の全領域に対してなされる必要はない。レーザーが照射された領域と照射されていない領域とが混在していても、接着層全体としての接着強度が十分に低下していれば、わずかな外力を加えて第2基体を例えば引き上げることによって、第2基体を接着層と第2基体との界面で積層体から取り外すことができる。レーザーを照射する領域と照射しない領域との比率および位置関係は、用いる接着剤の種類やその具体的な組成、接着層の厚さ、照射するレーザーの強度等によって異なるが、当業者であれば、過度の試験を要することなく、適宜条件を設定できる。例えば、レーザーの描写線幅と同一幅でもって、レーザーを照射しない領域を、レーザーを照射する領域の隣に設けるようにしてもよい。
このように、接着層の一部にのみにレーザーを照射する場合であっても第2基体を分離することができるため、積層体1つ当たりのレーザーの照射時間を短くでき、その結果、剥離に要する総時間を短縮することができる。
【0067】
ウエハーの表面に樹脂(接着層)が残存した場合、溶剤による洗浄(溶解、リフトオフ)、テープピーリングなどにより樹脂を除去することができる。
本発明は前記方法で接合(接着)し、ウエハーの裏面を研磨後、前記方法で剥離する積層体の加工方法である。
【実施例
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)NMR:JEOL社製 NMR ECA500
(2)攪拌機:(株)シンキー製 あわとり練太郎
(3)熱重量分析(TGA):差動型示差熱天秤 NETZSCH社製 TG-DTA2020SR
(4)貼り合せ装置:ズースマイクロテック社製 XBS300
(5)剥離装置:ズースマイクロテック社製 マニュアルデボンダー
(6)超音波顕微鏡:Sonoscan社製 CSAMD9600
(7)真空加熱装置:アユミ工業(株)製 VJ-300-S
(8)裏面研削装置(薄化処理):(株)東京精密製バックグラインダー SS30
【0069】
[1]官能基(Si-H)の量の測定
粘度が100mPa・sであるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)0.02gを、測定溶媒(ジメチルスルホン:重クロロホルム=0.2:99.8)1.0gに溶解させ、測定溶液を調製した。
得られた測定溶液をNMR装置(条件:測定方法HNMR、温度25℃、積算回数32回)にて測定し、測定結果の積分値から官能基(Si-H)の量を算出した。
同様の方法で、粘度が70mPa・sであるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)と粘度が30mm/sであるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)についても官能基(Si-H)の量をそれぞれ算出した。
その結果、粘度が100mPa・sであるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)の官能基(Si-H)の量は4.3mol/kg、粘度が70mPa・sであるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)の官能基(Si-H)の量は7.4mol/kg、粘度が30mm/sであるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)の官能基(Si-H)の量は13.1mol/kgであった。
【0070】
[2]エポキシ価の測定
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンのエポキシ価を後述の方法で測定した。結果を表1に示す。エポキシ価は、0.5mgのエポキシ変性ポリオルガノシロキサン(エポキシ化合物)と、測定溶液(ジイソブチルケトン:酢酸:テトラエチルアンモニウムブロマイド=1000:1000:140(v/v/v))50gとを30分間撹拌して得られる溶液に、自動滴定装置(三菱化学(株)(現 (株)三菱ケミカルアナリテック)製 GT-100)を使用し、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を加えることにより測定した。なお、各エポキシ化合物の構造等の情報は、前述の通りである。
【0071】
【表1】
【0072】
[3]接着剤の製造
[参考例1]
ポリシロキサン(a1)としてのビニル基含有のMQ樹脂であるベースポリマー(ワッカーケミ社製)50.0g、ポリシロキサン(a2)としての粘度が100mPa・sであり官能基(Si-H)の量が4.3mol/kgあるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)7.84g、ポリシロキサン(a1)としての粘度が200mPa・sであるビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)17.88g、重合抑制剤(A3)としての1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.19g、重合抑制剤(A3)としての1,1-ジフェニル-2-プロピオン-1-オール(東京化成工業(株)製)0.19g、溶媒としてのp-メンタン(富士フイルム和光純薬(株)製)11.64g、デカン(東京化成工業(株)製)1.21gおよび剥離成分(B)としてのエポキシ変性ポリオルガノシロキサン 前記商品名X-22-343(信越化学工業(株)製)0.76gを撹拌機で10分間撹拌した。
得られた混合物に、白金族金属系触媒(A2)としての白金触媒(ワッカーケミ社製)0.15g及びポリシロキサン(a1)としての粘度が1000mPa・sであるビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)0.76gを撹拌機で10分間撹拌して別途得られた混合物のうちの0.46gを加え、さらに撹拌機で10分間撹拌して、組成物を得た。
【0073】
[実施例1]
ポリシロキサン(a1)としてのビニル基含有のMQ樹脂であるベースポリマー(ワッカーケミ社製)50.0g、ポリシロキサン(a2)としての粘度が70mPa・sであり官能基(Si-H)の量が7.4mol/kgであるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)4.29g、ポリシロキサン(a2)としての粘度が30mm/sであり官能基(Si-H)の量が13.1mol/kgであるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)2.68g、ポリシロキサン(a1)としての粘度が200mPa・sであるビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)1.61g、重合抑制剤(A3)としての1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.18g、重合抑制剤(A3)としての1,1-ジフェニル-2-プロピオン-1-オール(東京化成工業(株)製)0.18g、溶媒としてのp-メンタン(東京化成工業(株)製)を10.93g、デカン(富士フイルム和光純薬(株)製)を1.21g、剥離成分(B)としてのエポキシ変性ポリオルガノシロキサン 前記商品名X-22-343(信越化学工業(株)製)0.71gを撹拌機で10分間撹拌した。
得られた混合物に、白金族金属系触媒(A2)としての白金触媒(ワッカーケミ社製)0.09g及びポリシロキサン(a1)としての粘度が1000mPa・sであるビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)15.4gを撹拌機で10分間撹拌して別途得られた混合物のうち12.9gを加え、さらに撹拌機で10分間撹拌して、組成物を得た。
【0074】
[4]耐熱性試験(TGA)
[参考例2、実施例2]
得られた組成物を用いて耐熱性の分析を行った。組成物から溶媒を除去して得られる固体50.0mgを用い、差動型示差熱天秤によって重量が1%減少した温度を算出した。なお、温度範囲は室温から400℃までとし、昇温速度10℃/分とした。
その結果、参考例1で得られた組成物に関しては、架橋密度は0.44mol/kg、1%重量減少温度は359.5℃であったのに対し、実施例1で得られた組成物に関しては、架橋密度は0.92mol/kgであり、1%重量減少温度は391.0℃であった。このように、本発明の組成物に関しては、高い耐熱性が確認できた。
なお、架橋密度は、架橋密度=[A]×[B]/[C]([A]:ポリオルガノシロキサン(a2)であるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサンの官能基(Si-H)の量(mol/kg)、[B]:ポリオルガノシロキサン(a2)であるSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサンの添加量(kg)、[C]:溶媒成分を除いた接着剤組成物の総重量(kg))との式に基づき算出した。
【0075】
[5]積層体の作製並びに剥離性験及び耐熱性試験
[実施例3]
実施例1で得られた組成物を半導体形成基板としての300mmのシリコンウエハー(厚さ770μm)にスピンコートで塗布し、シリコンウエハーの回路面に厚さ約10μmの薄膜(接着剤塗布層)を得た。
薄膜を有する半導体形成基板としてのシリコンウエハーと、支持基板としての300mmシリコンウエハー(厚さ770μm)とを、薄膜を挟むように貼り合せ装置にて貼り合わせ、その後、ホットプレート上で半導体形成基板としてのシリコンウエハーが下となるようにして200℃で10分間加熱して(後加熱処理)、積層体を得た。なお、貼り合せは、温度50℃、減圧度10mBarで、荷重500Nをかけて行った。
その後、剥離性を確認するために、得られた積層体を用いて、剥離装置によって剥離に要する力を測定した。なお、剥離箇所は、支持基板としてのシリコンウエハーと接着剤層との間とした。その結果、15Nの力で良好に剥離できた。
また、耐熱性を確認するために、前述の方法と同様の方法で製造した積層体を、真空加熱装置(条件:減圧度2.1torr、加熱温度350℃、加熱時間30分間)によって加熱し、加熱した積層体のウエハー上のボイド等の不具合の有無を超音波顕微鏡によって確認した。その結果、そのような不具合は発見されず、良好な耐熱性が確認された。
【0076】
[6]薄化工程
[実施例4]
実施例3の方法と同様の方法で製造した積層体を用いて、裏面研削装置によって、半導体形成基板としてのシリコンウエハーの薄化を実施した。その結果、シリコンウエハーは良好に薄化でき、また、光学顕微鏡による観察においても、薄化したウエハーのエッジにチッピングは発見されなかった。