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  • 特許-切削装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20240327BHJP
   B24B 45/00 20060101ALI20240327BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240327BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240327BHJP
   B28D 1/24 20060101ALI20240327BHJP
   B28D 7/00 20060101ALI20240327BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B24B27/06 J
B24B45/00 A
B24B49/10
B23Q17/00 A
B23Q17/00 B
B28D1/24
B28D7/00
H01L21/78 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019214137
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021084162
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】新田 秀次
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 治信
(72)【発明者】
【氏名】松下 嘉男
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-023139(JP,A)
【文献】特開2016-111173(JP,A)
【文献】特開2018-010952(JP,A)
【文献】特開2019-104068(JP,A)
【文献】特開2015-023222(JP,A)
【文献】米国特許第05934973(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-51/00
B23Q17/00-23/00
B28D1/00-7/04
H01L21/301;21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、該切削ブレードと被加工物に切削水を供給する切削水供給手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含む切削装置であって、
該切削手段は、回転軸と、該回転軸を回転可能に支持するハウジングと、該回転軸の先端に形成され該切削ブレードを保持するマウントと、から少なくとも構成され、
該マウントは、該切削ブレードの中央に形成された開口に挿入されるボス部と、該ボス部の外周に形成され該切削ブレードの切り刃を露出させて支持するリング状の支持部と、該ボス部と該支持部との間に開口し該切削ブレードを吸引保持する吸引孔と、該吸引孔を吸引源に連通する連通路とを含み、
該連通路には圧力計が配設され、該圧力計が計測した値が許容値に達しない場合は該回転軸の回転開始および切削水の供給開始を阻止し、該圧力計が計測した値が許容値に達した場合は該回転軸の回転開始を許容すると共に該回転軸の回転開始時以降において切削水の供給開始を許容する制御手段を備え
該切削手段は、該切削ブレードが対向するように2個配設され、
該制御手段は、該圧力計が計測した値が許容値に達した状態で双方の該切削手段の該マウントに該切削ブレードが装着されている場合に、一方の該切削手段のみによる該保持手段に保持された被加工物の切削を許容すると共に、他方の該切削手段の該回転軸を回転させる切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、切削ブレードと被加工物に切削水を供給する切削水供給手段と、保持手段と切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含む切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを回転可能に備えた切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
本出願人は、切削ブレードをナットでマウントに締結する際に必要な特殊工具の回避、切削ブレードをナットでマウントに締結する際の個人差の回避、を可能にした切削装置を提案した(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
この切削装置は、被加工物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、切削ブレードと被加工物に切削水を供給する切削水供給手段と、保持手段と切削手段とを相対的に加工送りする送り手段とを含む。切削手段は、回転軸と、回転軸を回転可能に支持するハウジングと、回転軸の先端に形成され切削ブレードを保持するマウントとを備える。マウントは、切削ブレードの中央に形成された開口に挿入されるボス部と、ボス部の外周に形成され切削ブレードの切り刃を露出させて支持するリング状の支持部と、ボス部と支持部との間に開口し切削ブレードを吸引保持する吸引孔と、吸引孔を吸引源に連通する連通路とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-154054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、マウントと切削ブレードとの間に異物が介在し充分な吸引力が得られない状態で切削ブレードを回転させて切削加工を施すとウエーハおよび切削ブレードを損傷させるという問題がある。
【0007】
また、マウントに切削ブレードが適正に装着されている場合であっても、切削水を供給した際に、マウントと切削ブレードとの間の僅かな隙間から切削水と共に切削屑が吸引されてしまうという問題がある。
【0008】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、ウエーハおよび切削ブレードを損傷させることがないと共に、マウントと切削ブレードとの間から切削水および切削屑が吸引されることがない切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために以下の切削装置を提供する。すなわち、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、該切削ブレードと被加工物に切削水を供給する切削水供給手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含む切削装置であって、該切削手段は、回転軸と、該回転軸を回転可能に支持するハウジングと、該回転軸の先端に形成され該切削ブレードを保持するマウントと、から少なくとも構成され、該マウントは、該切削ブレードの中央に形成された開口に挿入されるボス部と、該ボス部の外周に形成され該切削ブレードの切り刃を露出させて支持するリング状の支持部と、該ボス部と該支持部との間に開口し該切削ブレードを吸引保持する吸引孔と、該吸引孔を吸引源に連通する連通路とを含み、該連通路には圧力計が配設され、該圧力計が計測した値が許容値に達しない場合は該回転軸の回転開始および切削水の供給開始を阻止し、該圧力計が計測した値が許容値に達した場合は該回転軸の回転開始を許容すると共に該回転軸の回転開始時以降において切削水の供給開始を許容する制御手段を備え、該切削手段は、該切削ブレードが対向するように2個配設され、該制御手段は、該圧力計が計測した値が許容値に達した状態で双方の該切削手段の該マウントに該切削ブレードが装着されている場合に、一方の該切削手段のみによる該保持手段に保持された被加工物の切削を許容すると共に、他方の該切削手段の該回転軸を回転させる切削装置を本発明は提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の切削装置は、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、該切削ブレードと被加工物に切削水を供給する切削水供給手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含み、該切削手段は、回転軸と、該回転軸を回転可能に支持するハウジングと、該回転軸の先端に形成され該切削ブレードを保持するマウントと、から少なくとも構成され、該マウントは、該切削ブレードの中央に形成された開口に挿入されるボス部と、該ボス部の外周に形成され該切削ブレードの切り刃を露出させて支持するリング状の支持部と、該ボス部と該支持部との間に開口し該切削ブレードを吸引保持する吸引孔と、該吸引孔を吸引源に連通する連通路とを含み、該連通路には圧力計が配設され、該圧力計が計測した値が許容値に達しない場合は該回転軸の回転開始および切削水の供給開始を阻止し、該圧力計が計測した値が許容値に達した場合は該回転軸の回転開始を許容すると共に該回転軸の回転開始時以降において切削水の供給開始を許容する制御手段を備え、該切削手段は、該切削ブレードが対向するように2個配設され、該制御手段は、該圧力計が計測した値が許容値に達した状態で双方の該切削手段の該マウントに該切削ブレードが装着されている場合に、一方の該切削手段のみによる該保持手段に保持された被加工物の切削を許容すると共に、他方の該切削手段の該回転軸を回転させるので、マウントと切削ブレードとの間に異物が介在し充分な吸引力が得られない場合は、圧力計が計測した値が許容値に達しないため切削加工が開始されず、ウエーハおよび切削ブレードを損傷させるという問題が解消する。また、本発明の切削装置においては、回転軸の回転開始時以降において切削水の供給開始を許容するので、マウントおよび切削ブレードに切削水および切削水が付着しても、マウントおよび切削ブレードの遠心力によって切削水および切削屑が吹き飛ばされ、マウントと切削ブレードとの間の僅かな隙間から切削水と共に切削屑が吸引されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成された切削装置の一部斜視図。
図2】(a)図1に示す切削手段の一部斜視図、(b)(a)に示す状態から切削水供給部を跳ね上げた状態を示す斜視図、(c)(b)に示す状態から切削ブレードを取り外した状態を示す斜視図。
図3図1に示す切削手段の一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された切削装置の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示す切削装置2は、被加工物を保持する保持手段4と、保持手段4に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持した切削手段6と、切削ブレードと被加工物に切削水を供給する切削水供給手段8(図2参照)と、保持手段4と切削手段6とを相対的に加工送りする送り手段10と、を含む。なお、図1には、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向がそれぞれ矢印X、Y、Zで示されている。X軸方向およびY軸方向が規定する平面は実質上水平である。
【0015】
保持手段4は、X軸方向に移動自在に基板12に搭載されたX軸可動板14と、X軸可動板14の上面に固定された支柱16と、支柱16の上端に固定されたカバー板18とを備える。カバー板18には円形開口18aが形成され、円形開口18aを通って上方に延びるチャックテーブル20が支柱16の上端に回転自在に搭載されている。チャックテーブル20は、支柱16に内蔵されたチャックテーブル用モータ(図示していない。)によって上下方向に延びる軸線を中心として回転される。
【0016】
チャックテーブル20の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円形状の吸着チャック22が配置されている。そして、チャックテーブル20においては、吸引手段で吸着チャック22の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック22の上面に載せられた被加工物を吸引保持するようになっている。また、チャックテーブル20の周縁には、周方向に間隔をおいて複数のクランプ24が配置されている。
【0017】
図示の実施形態の切削手段6は、互いにY軸方向に間隔をおいて切削ブレードが対向するように2個配設された第一の切削手段6aおよび第二の切削手段6bを有している。図示の実施形態の切削手段6においては、保持手段4に保持された被加工物を2個の切削ブレードによって同時に切削加工を施すことができるようになっている。図2および図3を参照して説明すると、第一の切削手段6aは、回転軸26(図3参照)と、回転軸26を回転可能に支持するハウジング28と、回転軸26の先端に形成され切削ブレード30を保持するマウント32と、から少なくとも構成されている。
【0018】
回転軸26の他端には、回転軸26を回転させるためのモータ(図示していない。)が連結されている。図2に示すとおり、ハウジング28の先端にはブレードカバー34が装着されている。ブレードカバー34は、ハウジング28の先端に固定された主部36と、主部36に揺動自在に支持された可動部38とを含む。切削ブレード30は、円筒状の基台40と、基台40の片側面の外周部に装着された環状の切り刃42とを有する。基台40の中央部には円形状の開口40aが形成されている。なお、図3においては、便宜上、ブレードカバー34を省略している。
【0019】
図3を参照して説明を続けると、マウント32は、切削ブレード30の中央に形成された開口40aに挿入されるボス部44と、ボス部44の外周に形成され切削ブレード30の切り刃42を露出させて支持するリング状の支持部46と、ボス部44と支持部46との間に開口し切削ブレード30を吸引保持する吸引孔50と、吸引孔50を吸引源52に連通する連通路54とを含む。
【0020】
ボス部44は円柱状に形成されており、ボス部44の直径は切削ブレード30の基台40の開口40aの直径に対応している。支持部46の外径は切削ブレード30の切り刃42の外径よりも小さく、マウント32に切削ブレード30が装着された際に、マウント32から切り刃42が露出するようになっている。また、支持部46のY軸方向先端面は、ボス部44のY軸方向先端面よりも後退している。
【0021】
ボス部44と支持部46との間には、支持部46の先端よりもY軸方向に更に後退した環状凹所48が設けられており、この環状凹所48には、切削ブレード30を吸引保持するための吸引孔50が形成されている。図示の実施形態のマウント32には一対の吸引孔50が設けられている。吸引孔50は1個でもよいが、回転バランスを良好にするために等角度間隔で2個以上形成されているのが好ましい。図3に示すとおり、各吸引孔50は吸引源52に連通路54を介して連通している。連通路54には、連通路54内の圧力を計測する圧力計56と、連通路54を開閉するためのバルブ58とが配設されている。そして、マウント32においては、バルブ58を開けた状態で吸引源52を作動することにより、ボス部44に嵌め合わされた切削ブレード30を吸引保持するようになっている。
【0022】
また、第一の切削手段6aは、図1に示すとおり、Y軸方向に移動自在に適宜の支持部材(図示していない。)に支持されたY軸可動片60と、Z軸方向に移動自在にY軸可動片60に支持されたZ軸可動片62とを含む。Z軸可動片62の下端には、上記ハウジング28が固定されている。なお、第二の切削手段6bについては、第一の切削手段6aと同一の構成でよいので第一の切削手段6aの構成と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0023】
図2を参照して切削水供給手段8について説明する。切削水供給手段8は、ブレードカバー34の主部36に付設された円筒状の供給口64と、供給口64に連通する一対のノズル66とを含む。供給口64は切削水供給源(図示していない。)に連通しており、供給口64と切削水供給源とを連通する水路(図示していない。)には、この水路を開閉するバルブ(図示していない。)が設けられている。図2(b)および図2(c)に示すとおり、ノズル66には複数の噴射孔68が形成されている。そして、切削水供給手段8においては、保持手段4に保持された被加工物に切削手段6によって切削加工を施す際に、切削水供給源から供給口64に供給された切削水をノズル66の噴射孔68から切削水を切削ブレード30および被加工物に向かって噴射するようになっている。
【0024】
図3に示すとおり、圧力計56には、切削装置2の作動を制御する制御手段70が電気的に接続されており、圧力計56で計測した値が制御手段70に送られるようになっている。コンピュータから構成されている制御手段70は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)とを有する(いずれも図示していない。)。そして、制御手段70は、圧力計56が計測した値が許容値に達しない場合は回転軸26の回転開始および切削水の供給開始を阻止し、圧力計56が計測した値が許容値に達した場合は回転軸26の回転開始を許容すると共に回転軸26の回転開始時以降において切削水の供給開始を許容するようになっている。
【0025】
図示の実施形態の送り手段10は、図1に示すとおり、X軸送り手段72と、基台12をまたいで配設された門型フレーム(図示せず)に配設された第一・第二のY軸送り手段74a、74bと、第一・第二のZ軸送り手段76a、76bとを含む。X軸送り手段72は、X軸可動板14に連結されX軸方向に延びるボールねじ78と、ボールねじ78を回転させるモータ80とを有する。そして、X軸送り手段72は、ボールねじ78によりモータ80の回転運動を直線運動に変換してX軸可動板14に伝達し、切削手段6に対して保持手段4をX軸方向に相対的に加工送りする。
【0026】
第一のY軸送り手段74aは、Y軸可動片60に連結されY軸方向に延びるボールねじ82と、ボールねじ82を回転させるモータ84とを有する。そして、第一のY軸送り手段74aは、ボールねじ82によりモータ84の回転運動を直線運動に変換してY軸可動片60に伝達し、保持手段4に対して第一の切削手段6aをY軸方向に相対的に加工送り(割り出し送り)する。また、第一のY軸送り手段74aにおいてはモータ84がボールねじ82のY軸方向一端部に接続されている一方、第二のY軸送り手段74bにおいてはモータ84がボールねじ84のY軸方向他端部に接続されている点を除き、第二のY軸送り手段74bは第一のY軸送り手段74aと同一の構成でよい。そして、第二のY軸送り手段74bは、保持手段4に対して第二の切削手段6bをY軸方向に相対的に加工送り(割り出し送り)する。
【0027】
第一のZ軸送り手段76aは、Z軸可動片62に連結されZ軸方向に延びるボールねじ(図示していない。)と、このボールねじを回転させるモータ86とを有する。そして、第一のZ軸送り手段76aは、ボールねじによりモータ86の回転運動を直線運動に変換してZ軸可動片62に伝達し、保持手段4に対して第一の切削手段6aをZ軸方向に相対的に加工送り(切り込み送り)する。また、第一のZ軸送り手段76aと同一の構成でよい第二のZ軸送り手段76bは、保持手段4に対して第二の切削手段6bをZ軸方向に相対的に加工送り(切り込み送り)する。
【0028】
上述したとおりの切削装置2では、第一の切削手段6aまたは第二の切削手段6bのいずれかにおいて、マウント32と切削ブレード30との間に異物等が介在していると、マウント32と切削ブレード30との間に隙間が生じ、この隙間から連通路54内に空気が流入するため、連通路54内の圧力が許容値(たとえば、絶対圧0.03MPa程度)まで下がらず、マウント32が切削ブレード30を保持する吸引力が所要値に達することがない。したがって、圧力計56が計測した値が許容値に達しない場合に制御手段70は、第一・第二の切削手段6a、6bの双方の回転軸26の回転開始および切削水の供給開始を阻止する。
【0029】
一方、第一・第二の切削手段6a、6bの双方において、マウント32と切削ブレード30との間に異物等が介在していない場合、切削ブレード30をマウント32に吸引保持(装着)させた際に、マウント32の支持部46と切削ブレード30とが密着することになる。そうすると、連通路54内の圧力が許容値まで下がり、所要の吸引力で切削ブレード30がマウント32に保持される。したがって、圧力計56が計測した値が許容値に達した場合に制御手段70は、第一・第二の切削手段6a、6bの双方の回転軸26の回転開始を許容すると共に、双方の回転軸26の回転開始時以降において切削水の供給開始を許容する。
【0030】
このように図示の実施形態の切削装置2においては、いずれか一方の圧力計56が計測した値が許容値に達しない場合は、第一・第二の切削手段6a、6bの双方の回転軸26の回転開始および切削水の供給開始を阻止し、双方の圧力計56が計測した値が許容値に達した場合は、第一・第二の切削手段6a、6bの双方の回転軸26の回転開始を許容すると共に、双方の回転軸26の回転開始時以降において切削水の供給開始を許容する制御手段70を備えるので、マウント32と切削ブレード30との間に異物が介在し充分な吸引力が得られない場合には切削加工が開始されないため、ウエーハおよび切削ブレード30を損傷させることがない。
【0031】
また、切削装置2においては、回転軸26の回転開始時以降において切削水の供給開始を許容するので、マウント32および切削ブレード30に切削水および切削水が付着しても、マウント32および切削ブレード30の遠心力によって切削水および切削屑が吹き飛ばされ、マウント32と切削ブレード30との間の僅かな隙間から切削水と共に切削屑が吸引されることがない。
【0032】
また、切削装置2においては、第一・第二の切削手段6a、6bのいずれか一方のみによって、保持手段4に保持された被加工物を切削するときがある。このようなとき、制御手段70は、双方の圧力計56が計測した値が許容値に達した状態で双方のマウント32に切削ブレード30が装着されている場合に、第一・第二の切削手段6a、6bの一方のみによる被加工物の切削を許容すると共に、第一・第二の切削手段6a、6bの他方の回転軸26を回転させる。
【0033】
これによって、一方の切削手段6の切削によって発生する切削屑が他方の切削手段6のマウント32に付着してマント32が汚染されることがない。すなわち、圧力計56が計測した値が許容値に達した状態で他方の切削手段6のマウント32に切削ブレード30が装着されていることによって、他方の切削手段6のマウント32への切削屑の付着が防止される。
【0034】
また、他方の切削手段6の切削ブレード30がマウント32に装着されていても、一方の切削手段6の切削によって発生する切削屑が切削ブレード30とマウント32との僅かな隙間から吸引されることがない。すなわち、他方の切削手段6の回転軸26を回転させることで、回転による遠心力によってマウント32と切削ブレード30との僅かな隙間から切削屑が吸引されることが防止される。
【0035】
なお、図示の実施形態の切削装置2において切削手段6を2個備える例を説明したが、切削手段6は1個であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
2:切削装置
4:保持手段
6:切削手段
6a:第一の切削手段
6b:第二の切削手段
8:切削水供給手段
10:送り手段
26:回転軸
28:ハウジング
30:切削ブレード
32:マウント
42:切り刃
44:ボス部
46:支持部
50:吸引孔
52:吸引源
54:連通路
56:圧力計
70:制御手段
図1
図2
図3