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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】足底筋膜症改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20240327BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20240327BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240327BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K36/65
A61K36/484
A61P21/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019236221
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104953
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】大森 公貴
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-114253(JP,A)
【文献】特開平06-199676(JP,A)
【文献】Brian G. Donley et al.,"The Efficacy of Oral Nonsteroidal Anti-Inflammatory Medication (NSAID) in the Treatment of Plantar Fasciitis: A Randomized, Prospective, Placebo-Controlled Study”,Foot & Ankle International,2007年01月,Vol.28, No.1,p.20-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
36/00-36/9068
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イブプロフェンと、(B)シャクヤクエキス及び/又はカンゾウエキスとを含有する、足底筋膜症改善剤。
【請求項2】
前記(B)成分が、シャクヤクエキス及びカンゾウエキスである、請求項1に記載の足底筋膜症改善剤。
【請求項3】
1日当たりの投与量が、前記シャクヤクエキスを含む場合はシャクヤクエキスの原生薬換算量で5.0g以下、前記カンゾウエキスを含む場合はカンゾウエキスの原生薬換算量で5.0g以下となる量である、請求項1又は2に記載の足底筋膜症改善剤。
【請求項4】
足裏の凝り及び/又は張りの改善に用いられる、請求項1~3のいずれかに記載の足底筋膜症改善剤。
【請求項5】
足裏の痛みの改善に用いられる、請求項1~のいずれかに記載の足底筋膜症改善剤
【請求項6】
経口投与によって投与される、請求項1~のいずれかに記載の足底筋膜症改善剤。
【請求項7】
保存療法と併用されない、請求項1~6のいずれかに記載の足底筋膜症改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足底筋膜症改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
足底筋膜症は、足底筋膜と踵骨の付着部における痛み(踵骨の腱付着部症)であり、足底筋膜の内側帯に沿った痛みを伴うことも伴わないこともある(非特許文献1)。足底筋膜の痛みの症候群については足底筋膜炎と呼ばれることもあるが、通常は炎症がないことから、足底筋膜症と呼ぶ方が正しい(非特許文献1)。
【0003】
足底筋膜症の具体的な自覚症状としては、足裏の凝り、張り、痛み等が挙げられるが、訴えとして最も多いのが痛みである。具体的には、足裏やかかとが痛い、起床時の歩き始めに足の裏が痛い、といった症状が挙げられ、それらはしばしば激痛を伴う。
【0004】
足底筋膜症の認識されている原因としては、腓腹部の筋肉および足底筋膜の短縮又は拘縮などがある(非特許文献1)。足底筋膜症の治療は、その多くが、足裏への反復的な機械的刺激からの保護を主旨とした保存療法である。具体的な保存療法としては、腓腹部の筋肉および足底軟部組織の足のストレッチ運動、夜間用装具、矯正器具、適切な踵の高さがある靴の使用などが挙げられる(非特許文献1)。
【0005】
しかしながら、足底筋膜症は、このような保存療法では改善できない場合も多く、生活に支障をきたすほど痛みが強くなる場合や、スポーツ選手の場合等は、内視鏡下で足底腱膜を切り離す外科手術を行う場合もある。しかしながら、外科手術については大掛かりな処理であるにも関わらずその効果を疑う意見もある。
【0006】
一方で、足底筋膜症に対する積極的な治療として、体外衝撃波や拡散圧力波を取り入れた治療(非特許文献2)が様々な医療機関で導入されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】MSDマニュアル プロフェッショナル版、医学事典、06.筋骨格疾患と結合組織疾患、足および足関節の疾患、足底筋膜症(plantar fasciosis)、2016年
【文献】新しい足底腱膜炎に対するアプローチの試み、理学療法学Supplement、2017年、Vol.44、Suppl.No.2、(第52回日本理学療法学術大会)、セッションID: P-MT-48-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでの足底筋膜症の治療方法の中でも、体外衝撃波や拡散圧力波を取り入れた治療は、非侵襲的でありながら効果が期待しやすいといえる。しかしながら、これらの治療は、特別な機械が必要であることや通院が必要である点で、日常的に取り入れやすい方法とはいえない。このように、これまで、足底筋膜症に関しては、その症状に積極的に対処する方法であって、且つ、日常的に取り入れやすい方法は無かった。
【0009】
ここで、痛みを伴う結合組織の異変としては、筋が不随意又は発作的に収縮する痙攣もあるが、足底筋膜症は、痛みを伴う結合組織の異変の中でも、筋が弛緩しなくなる拘縮状態であるという点で特殊であり、痙攣状態とは根本的に異なる。これまで、測定筋膜症に対して日常的に取り入れやすく積極的に対処する方法が無い背景はこのような点にもある。
【0010】
そこで、本発明は、足底筋膜症の症状に積極的に対処する方法であって、且つ、日常的に取り入れやすい方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の非ステロイド系消炎鎮痛剤と、特定の生薬エキスとを組み合わせることによって、足底筋膜症の症状に対して優れた改善効果が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)イブプロフェン、ロキソプロフェン、及びジクロフェナク、並びにそれらの塩からなる群より選択される非ステロイド系消炎鎮痛剤と、(B)シャクヤクエキス及び/又はカンゾウエキスとを含有する、足底筋膜症改善剤。
項2. 前記(B)成分が、シャクヤクエキス及びカンゾウエキスである、項1に記載の足底筋膜症改善剤。
項3. 1日当たりの投与量が、前記シャクヤクエキスを含む場合はシャクヤクエキスの原生薬換算量で5.0g以下、前記カンゾウエキスを含む場合はカンゾウエキスの原生薬換算量で5.0g以下となる量である、項1又は2に記載の足底筋膜症改善剤。
項4. 足底筋膜による痛みの改善に用いられる、項1~3のいずれかに記載の足底筋膜症改善剤
項5. 経口投与によって投与される、項1~4のいずれかに記載の足底筋膜症改善剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、足底筋膜症の症状に積極的に対処する方法であって、且つ、日常的に取り入れやすい方法が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の足底筋膜症改善剤は、(A)イブプロフェン、ロキソプロフェン、及びジクロフェナク、並びにそれらの塩からなる群より選択される非ステロイド系消炎鎮痛剤(以下において、「(A)成分」とも記載する)と、(B)シャクヤクエキス及び/又はカンゾウエキス(以下において、「(B)成分」とも記載する)とを含有することを特徴とする。
【0015】
(A)非ステロイド系消炎鎮痛剤
本発明の足底筋膜症改善剤は、(A)成分としてイブプロフェン、ロキソプロフェン、及びジクロフェナク、並びにそれらの塩からなる群より選択される非ステロイド系消炎鎮痛剤を含む。これらの非ステロイド系消炎鎮痛剤は、単独では足底筋膜症に対して所望の効果は得られないが、本発明の足底筋膜症改善剤は、足底筋膜症に対して優れた効果を奏する。
【0016】
イブプロフェンは、2-(p-イソブチルフェニル)プロパン酸である。ロキソプロフェンは、2-[パラ-(2-オキソシクロペンチルメチル)フェニル]プロピオン酸である。ジクロフェナクは、[o-(2,6-ジクロロアニリノ)フェニル]酢酸である。これらの塩としては、薬学上許容される塩であれば特に制限されず、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルギニン塩、リジン塩等の有機塩基との塩等が挙げられる。また、塩は水和物であってもよい。
【0017】
(A)成分としては、イブプロフェン、ロキソプロフェン、及びジクロフェナク、並びにそれらの塩の中から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
これらの(A)成分の中でも、より一層優れた足底筋膜症改善効果を得る観点から、好ましくはイブプロフェンが挙げられる。
【0019】
本発明の足底筋膜症改善剤における(A)成分の含有量としては特に限定されず、例えば15~35重量%が挙げられる。
【0020】
(B)生薬エキス
本発明の足底筋膜症改善剤は、(B)成分として、シャクヤクエキス及び/又はカンゾウエキスを含む。
【0021】
シャクヤク(芍薬)は、ボタン科(Paeoniaceae)のシャクヤクPaeonia lactiflora Pallasの根であり、生薬(日本薬局方)として、婦人薬、冷え症用薬、かぜ薬、皮膚疾患用薬、消炎排膿薬とみなされる処方に対して配合される。
【0022】
カンゾウ(甘草)は、マメ科(Leguminosae)のGlycyrrhiza uralensis Fischer又はGlycyrrhiza glabra Linne の根及びストロン、ときには周皮を除いたものであり、生薬(日本薬局方)として、風邪薬、鎮咳去痰薬、健胃消化薬、止瀉整腸薬とみなされる処方に対して配合される。
【0023】
本発明では、(B)成分は、上記の植物の部位を抽出処理し、得られた抽出液を必要に応じて濃縮することでエキス液として得てもよいし、エキス液を乾燥処理することでエキス末として得てもよい。
【0024】
(B)成分の製造において、抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されず、水又は含水エタノールが挙げられ、好ましくは水が挙げられる。また、乾燥処理としても、特に限定されず、公知の方法、例えば、スプレードライ法や、エキス液の濃度を高めた軟エキスに対して適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0025】
本発明の足底筋膜症改善剤において、(B)成分としては、シャクヤクエキス及びカンゾウエキスのうちいずれか一方を単独で用いてもよいし、両方を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
また、(B)成分として、シャクヤクエキス及びカンゾウエキスを組み合わせて用いる場合、シャクヤクの単独抽出物(単味エキス)とカンゾウの単独抽出物(単味エキス)との混合物を用いてもよいし、シャクヤク及びカンゾウを含む混合生薬(生薬調合物)のエキスを用いてもよい。
【0027】
シャクヤクの単独抽出物及びカンゾウの単独抽出物としては、シャクヤク又はカンゾウを前述の方法で調製したエキスを使用してもよいし、市販されるものを使用してもよい。
【0028】
シャクヤク及びカンゾウを含む混合生薬のエキスとしては、少なくともシャクヤク及びカンゾウを含む漢方のエキスであれば特に限定されず、例えば、芍薬甘草湯エキス、葛根湯エキス、十全大補湯エキス、人参養栄湯エキス、が挙げられ、好ましくは芍薬甘草湯エキスが挙げられる。
【0029】
シャクヤク及びカンゾウを含む混合生薬のエキスとしては、混合生薬を上記の方法で調製したエキスを使用してもよいし、市販されるものを使用してもよい。
【0030】
これらの(B)成分の中でも、より一層優れた足底筋膜症改善効果を得る観点から、好ましくはシャクヤクエキス及びカンゾウエキスの両方を組み合わせることが好ましく、シャクヤクの単独抽出物及びカンゾウの単独抽出物の両方を組み合わせることがより好ましい。
【0031】
本発明の足底筋膜症改善剤における(B)成分の含有量(総量)としては本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、乾燥エキス量換算で、例えば50~60重量%が挙げられる。乾燥エキス量換算とは、乾燥エキス(エキス末)を使用する場合にはそれ自体の量でありエキス液や軟エキスを使用する場合には、溶媒を除去した残量に換算した量である。また、乾燥エキス末が、製造時に添加される吸着剤等の添加剤を含む場合は、当該添加剤を除いた量である。
【0032】
また、(B)成分としてシャクヤクエキス及びカンゾウエキスの両方を組み合わせる場合、それぞれの含有量の比率としては特に限定されないが、より一層好ましい足底筋膜症改善効果を得る観点から、例えば、シャクヤク(原生薬)1重量部に対し、カンゾウ(原生薬)が、0.5~1.5重量部、好ましくは0.8~1.2重量部、より好ましくは0.9~1.1重量部が挙げられる。
【0033】
本発明の足底筋膜症改善剤における(A)成分の含有量に対する(B)成分の含有量(総量、乾燥エキス量換算)としては特に限定されず、上記の各成分の含有量によって定められるが、より一層好ましい足底筋膜症改善効果を得る観点から、例えば、(A)成分1重量部に対して、(B)成分1.0~3.5重量部、好ましくは1.4~3.2重量部、より好ましくは1.7~2.9重量部が挙げられる。
【0034】
他の含有成分
本発明の足底筋膜症改善剤は、前述の成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分の種類については、特に限定されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬、生薬エキス末、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類等に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
【0035】
本発明の足底筋膜症改善剤には、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、薬学的に許容される基剤や添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤や添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類や剤型等に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
【0036】
剤型
本発明の足底筋膜症改善剤の剤型については、特に制限されず、投与形態に応じて適宜決定することができる。例えば内服剤の場合、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤、フィルム剤、液剤(ドリンク剤)等のいずれであってもよい。また、外用剤の場合、液状、固形状、半固形状(ゲル状、軟膏状、ペースト状)等のいずれであってもよい。これらの剤型は、薬学的に許容される基材や添加剤を用いて調製することができ、当該基材や添加剤の種類や配合量についても、製剤技術の分野で公知である。
【0037】
用途
本発明の足底筋膜症改善剤は、足底筋膜症の改善目的で使用される。具体的には、本発明の足底筋膜症改善剤は、足底筋膜症による足裏の凝り、張り、及び/又は痛みの症状の改善に用いられる。中でも、足底筋膜症については足裏の痛みに対する訴えが多いことから、本発明の足底筋膜症改善剤は、足底筋膜症による足裏の痛みの改善に用いられることが好ましい。
【0038】
用量・用法
本発明の足底筋膜症改善剤の投与形態としては特に限定されず、経皮投与及び経口投与が挙げられる。本発明の足底筋膜症改善剤は足底筋膜症の改善効果に優れているため、経口投与であっても効果的に足底筋膜症の改善効果を得ることができる。従って、本発明の足底筋膜症改善剤の好ましい投与形態としては、経口投与が挙げられる。
【0039】
本発明の足底筋膜症改善剤の投与量については、足底筋膜症による症状の程度、年齢等に応じて適宜設定される。
【0040】
例えば、1日当たりの摂取量としては、(A)成分が、100~550mg(具体的には、イブプロフェン及び/又はその塩の場合、イブプロフェン及びその塩の総量で、 200~550mg、好ましくは300~500mg、より好ましくは400~470 mg;ロキソプロフェン及び/又はその塩の場合、ロキソプロフェン及びその塩の総量で、50~250mg、好ましくは100~230mg、より好ましくは150~200mg;ジクロフェナク及び/又はその塩の場合、ジクロフェナク及びその塩の総量で、12.5~300mg、好ましくは25~200mg、より好ましくは50~100
mg)となる量が挙げられる。
【0041】
また、1日当たりの摂取量としては、(B)成分中のシャクヤクの原生薬換算量が、5.0以下、好ましくは1.0~5.0g、より好ましくは2.0~3.5g、さらに好ましくは2.4~3.1g、カンゾウの原生薬換算量が、5.0以下、好ましくは1.0~5.0g、より好ましくは2.0~3.5g、さらに好ましくは2.4~3.1gとなる量が挙げられ;(B)成分が、総量で、700~1000mg、好ましくは800~900mg、より好ましくは830~870mg;シャクヤクエキスが、350~650mg、好ましくは400~600mg、より好ましくは450~550mg、カンゾウエキスが、250~600mg、好ましくは280~450mg、より好ましくは300~400mgが挙げられる。
【0042】
服用タイミングについては特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよいが、空腹時を避けて、食間(食後2~3時間)に服用することが好ましい。1日当たりの服用回数としては、例えば1~3回が挙げられる。また、服用期間については特に限定されず、例えば1~5日、好ましくは1~3日が挙げられる。
【実施例
【0043】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
試験例1
(1)試験方法
表1に示す成分を含む試験製剤を用意した。実施例1の製剤は次のようにして製造した。原料生薬として、シャクヤク及びカンゾウを、刻んだ後1:1の重量比で混合し、水20倍重量を加えて約100℃で1時間抽出した。その後、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、芍薬甘草湯エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。得られた芍薬甘草湯エキス末を表1に記載の配合量で用い、イブプロフェン、および添加物(二酸化ケイ酸、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セルロース)とともに混ぜ合わせ、日局製剤総則・錠剤の項に準じて素錠を製造した。また、比較例1の製剤は、芍薬甘草湯エキス末を配合しなかったことを除いて実施例1の製剤と同様にして製造した。
【0045】
【表1】
【0046】
足底筋膜症による足裏の痛み、凝り、張りの自覚症状を有するモニターが、実施例1の製剤と、比較例1の製剤とを、表1に示す用量で、なるべく空腹時を避けて、食間(食後2~3時間)に、1日3回、3日服用させた。実施例1の製剤及び比較例1の製剤の効果の対比のため、同一モニターがそれぞれの製剤を評価した。ただし、先に服用した製剤による影響を排除するために、上記の自覚症状がある時期にいずれか一方の製剤を服用して評価し、その後充分に期間を設けた後に(当該一方の製剤により症状が軽減された場合は、上記の自覚症状が試験前と同程度まで復活した後に)、他方の製剤を服用して評価した。
【0047】
(2)結果1
足裏の痛みの程度の改善効果及びその持続性、並びに、足裏の凝り・張りの程度の改善効果を評価した。具体的には、足裏の痛みの改善効果及びその持続性(回答人数:実施例1について10人、比較例1について9人)並びに足裏の凝り・張りの改善効果(回答人数:実施例1について8人、比較例1について8人)について以下の基準に基づいてモニターが採点し、それぞれの評点を付けたモニターの数の割合(%)を、回答した全モニター数を100%として導出した。結果を表1に示す。
5点:満足
4点:どちらかといえば満足
3点:どちらともいえない
2点:どちらかといえば不満
1点:不満
【0048】
【表2】
【0049】
表2から明らかなとおり、イブプロフェンを単独で服用した場合(比較例1)は、足底筋膜症による足裏の凝り、張り、及び痛みの症状に対して十分な効果は得られなかったが、イブプロフェンとシャクヤク/カンゾウエキス末とを組み合わせて服用した場合(実施例1)には、足底筋膜症による足裏の凝り・張り、及び痛みの症状に対する優れた改善効果が認められた。
【0050】
(3)結果2
足裏の痛みに対する即効性を評価した。具体的には、上記結果1において、足裏の痛みの改善効果について4点以上の評点を付けたモニターが、1回の服用で上記結果1の評価のうちの4点を獲得できる程度の効果を感じたか否かで回答し、1回の服用で効果を感じたと回答したモニターの数の割合(%)を、全モニター数を100%として導出した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3から明らかなとおり、イブプロフェンとシャクヤク/カンゾウエキス末とを組み合わせて服用した場合(実施例1)、イブプロフェンを単独で服用した場合(比較例1)に比べて、痛みに対する即効性に優れていることも認められた。
【0053】
試験例2
(1)試験方法
表4に示す成分を含む試験製剤を用意した。実施例2の製剤は次のようにして製造した。原料生薬として、シャクヤクを刻んだ後水20倍重量を加えて約100℃で1時間抽出した。その後、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、シャクヤクの単味エキス末を得た。また、カンゾウを刻んだ後水20倍重量を加えて約100℃で1時間抽出し、同様にしてカンゾウの単味エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。シャクヤク単味エキス末とカンゾウ単味エキス末とを表4に記載の割合で用い、添加物(無水ケイ酸、乳糖、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム)とともに混ぜ合わせ、日局製剤総則・錠剤の項に準じて素錠を製した。そこにコーティング剤成分(ヒプロメロース、酸化チタン、マクロゴール、三二酸化鉄、カルナウバロウ)を用いてフィルムコート錠とした。また、比較例1の製剤は試験例1で用いたものと同じである。さらに、比較例2の製剤は、イブプロフェンを含まないこと、及び芍薬甘草湯エキス末の配合量が表4に示す量に変更されたことを除いて、試験例1の実施例1の製剤と同様にして製造した。
【0054】
【表4】
【0055】
足底筋膜症による足裏の痛み、凝り、張りの自覚症状を有するモニターが、実施例2の製剤と、比較例1の製剤と、比較例2の製剤とを、表4に示す用量で、なるべく空腹時を避けて、食間(食後2~3時間)に、1日3回、3日服用させた。実施例2の製剤、比較例1の製剤、及び比較例2の製剤の効果の対比のため、同一モニターがそれぞれの製剤を評価した。先に服用した製剤による影響を排除するように服用した点については、試験例1と同様である。
【0056】
(2)結果
足裏の痛みの程度の改善効果及びその持続性、並びに、足裏の凝り・張りの程度の改善効果を評価した。具体的には、足裏の痛みの改善効果及びその持続性(回答人数:実施例2について5人、比較例2について5人)並びに足裏の凝り・張りの改善効果(回答人数:実施例2について5人、比較例2について5人)について以下の基準に基づいてモニターが採点し、それぞれの評点を付けたモニターの数の割合(%)を、回答した全モニター数を100%として導出した。結果を表5に示す。
5点:満足
4点:どちらかといえば満足
3点:どちらともいえない
2点:どちらかといえば不満
1点:不満
【0057】
【表5】
【0058】
表5から明らかなとおり、イブプロフェンを単独で服用した場合(比較例1)と芍薬甘草湯エキスを単独で服用した場合(比較例2)は、足底筋膜症による足裏の凝り、張り、及び痛みの症状に対して十分な効果は得られなかったが、イブプロフェンとシャクヤク単味エキスとカンゾウ単味エキスとを含む製剤を服用した場合(実施例2)には、足底筋膜症による足裏の凝り・張り、及び痛みの症状に対する優れた改善効果が認められた。