(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ホウ素含有重合体、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置
(51)【国際特許分類】
C08G 61/00 20060101AFI20240327BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20240327BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240327BHJP
【FI】
C08G61/00
H05B33/22 B
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2020018184
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】深川 弘彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴央
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗弘
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184430(JP,A)
【文献】特開2011-140649(JP,A)
【文献】特表2017-507901(JP,A)
【文献】特開2009-245747(JP,A)
【文献】特開平04-085389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
H05B33
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素含有化合物(a)と、その他の単量体(b)と、を含む単量体成分を鎖状に重合して得られるホウ素含有重合体であって、
前記ホウ素含有化合物(a)は、下記式(1):
【化1】
[式中、R
1
及びR
2
は、同一若しくは異なって
、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、ビニル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、ボリルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アルデヒド基、及びアセトニトリル基から選択される反応性基
で置換した、
更に置換基を有していても
よいアリール基
であり、R
3
は、
ピリジル基を有するアリール基である。]で表わされ、
前記その他の単量体(b)は、下記式(2):
X
1-A-X
2 (2)
[式中、Aは、カルバゾール基を表し、X
1及びX
2は、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表し、但し、X
1及びX
2の少なくとも1つは、反応性基を有する置換基である。]で表わされ、
前記単量体成分は、当該単量体成分全体100質量%に対して、前記式(1)で表されるホウ素含有化合物(a)を10~90質量%含み、
前記ホウ素含有重合体は、下記式(3):
【化2】
[式中
、X
1’及びX
2’は、それぞれ
、式(2)のX
1及びX
2と同様の基、2価の基、3価の基、又は、直接結合を表し、Aは、式(2)のAと同様の基を表す。]で表される繰り返し単位の構造を有することを特徴とする、ホウ素含有重合体。
【請求項2】
前記式(1)におけるR
1及びR
2が、同一若しくは異なって、反応性基で置換した、更に置換基を有していてもよい、炭素数6~30のアリール基
である、請求項1に記載のホウ素含有重合体。
【請求項3】
基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記陰極と前記発光層との間に、請求項1又は2に記載のホウ素含有重合体からなる層を有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記ホウ素含有重合体からなる層が、還元剤を含む、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記ホウ素含有重合体からなる層が、酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物を含む、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記陰極と前記発光層との間に、金属酸化物からなる電子注入層を有する、請求項3~5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、表示装置。
【請求項8】
請求項3~6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素含有重合体、有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンス(電界発光)を「EL」と記す場合がある。)素子、表示装置、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、薄く、柔軟でフレキシブルである。また、有機EL素子を用いた表示装置は、現在主流となっている液晶表示装置及びプラズマ表示装置と比べて、高輝度、高精細な表示が可能である(例えば、特許文献1、非特許文献1~11参照)。また、有機EL素子を用いた表示装置は、液晶表示装置に比べて視野角が広い。このため、有機EL素子を用いた表示装置は、今後、テレビや携帯電話のディスプレイ等としての利用の拡大が期待されている。また、有機EL素子は、照明装置としての利用も期待されている。
【0003】
有機EL素子は、陰極と陽極との間に、発光層を含む複数の層が積層された構造を有する。有機EL素子は、陰極と陽極との間に、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等の複数の層が積層された構造を有しており、基板上に設置された陽極上にこのような積層構造が形成された、いわゆる順構造の有機EL素子と、基板上に設置された陰極上にこのような積層構造が形成された、いわゆる逆構造の有機EL素子とに分けられる。逆構造の有機EL素子の一部においては、有機EL素子を構成する層の一部が無機物からなる有機無機ハイブリッド型のもの(Hybrid Organic Inorganic LED:HOILED)が報告されている。このハイブリッド型素子の特徴は、電子注入層として無機の酸化物を用いており、アルカリ金属を用いず電子注入が可能であり、通常の有機EL素子に比べ酸素・水分耐性が高いという優位性がある。
【0004】
前記逆構造の有機EL素子では、基板上に発光層を形成する前に、電子注入層を形成できる。したがって、例えば、スパッタ法を用いて無機酸化物等の電子注入層を形成しても発光層が損傷を受けることがなく、逆構造の有機EL素子は、前記ハイブリッド型の素子作製に好ましい。
【0005】
この逆構造の有機EL素子の無機の酸化物層は、電子注入層として用いられるが(例えば、非特許文献3参照)、無機の酸化物層は、有機層への電子注入性が不十分である。
そのため、無機の酸化物層の上に、さらに電子注入層を成膜することにより、有機EL素子の電子注入性を改善する技術が知られている。例えば、下記非特許文献6には、ポリエチレンイミンからなる電子注入層を有する有機EL素子が記載されている。また、下記非特許文献7には、アミンが電子の注入速度の改善に有効であることが記載されている。また、下記非特許文献8~11には、電極と有機層との界面において、アミノ基が電子注入に及ぼす効果について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】ウ シク ジェオン(Woo Sik Jeon)、外5名、「オーガニック エレクトロニクス(Organic Electronics)」、第10巻、2009年、p240-246
【文献】タエ ジン パク(Tae Jin Park)、外7名、「アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)」、第92巻、2008年、p113308
【文献】ウ シク ジェオン(Woo Sik Jeon)、外6名、「アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)」、第92巻、2008年、p113311
【文献】ヘンク J.ボリンク(Henk J.Bolink)、外3名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、2010年、第22巻、p2198-2201
【文献】ヘンク J.ボリンク(Henk J.Bolink)、外2名、「ケミストリー オブ マテリアルズ(Chemistry of Materials)」、2009年、第21巻、p439-441
【文献】ヒョサン チョイ(Hyosung Choi)、外8名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、第23巻、2011年、p2759
【文献】ウィンファ チョウ(Yinhua Zho)、外21名、「サイエンス(Science)」、第336巻、2012年、p327
【文献】ヨンフーン キム(Young-Hoon Kim)、外5名、「アドバンスト ファンクショナル マテリアルズ(Advanced Functional Materials)」、2014年、DOI:10.1002/adfm.201304163
【文献】ステファン フォーフル、外4名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、2014年、DOI:10.1002/adma.201304666
【文献】ステファン フォーフル、外5名、「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、第26巻、2014年、DOI:10.1002/adma.201400332
【文献】ペン ウェイ、外3名、「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)」、第132巻、2010年、p8852
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記逆構造の有機EL素子では、陽極からの正孔の注入に比べて陰極からの電子の注入が遅く、陽極から注入される正孔により電子注入層界面で材料が劣化し、素子の駆動安定性が乏しくなるという課題があった。特に、酸化物上の電子注入層は塗布法で形成することが好ましいと提唱されながらも、溶解性や耐熱性に優れる、重合体等の分子量が大きい材料を電子注入層に用いた、駆動安定性に優れる逆構造の有機EL素子は報告されていない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、有機EL素子の駆動安定性を向上させることが可能な材料を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる材料を用いた、駆動安定性に優れた有機EL素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、いわゆる逆構造の有機EL素子の駆動安定性を高めることができる材料について種々検討したところ、特定のホウ素含有重合体が、逆構造の有機EL素子に好適であり、該ホウ素含有重合体を逆構造の有機EL素子の材料として用いることで、有機EL素子の駆動安定性が向上して、上記課題をみごとに解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0011】
本発明のホウ素含有重合体は、ホウ素含有化合物(a)と、その他の単量体(b)と、を含む単量体成分を鎖状に重合して得られるホウ素含有重合体であって、
前記ホウ素含有化合物(a)は、下記式(1):
【化1】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、同一若しくは異なって、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、ビニル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、ボリルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アルデヒド基、及びアセトニトリル基から選択される反応性基、(iii)置換基を有していてもよい、アリール基、複素環基、アルキル基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、R
1とR
2とが結合してなる2,2’-ビフェニル基、オリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、及びアリールアルキル基から選択される置換基、或いは、(iv)前記(iii)の置換基の一部を前記(ii)の反応性基で置換した置換基を表し、但し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つは、反応性基を有する置換基である。]で表わされ、
前記その他の単量体(b)は、下記式(2):
X
1-A-X
2 (2)
[式中、Aは、カルバゾール基を表し、X
1及びX
2は、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表し、但し、X
1及びX
2の少なくとも1つは、反応性基を有する置換基である。]で表わされ、
前記単量体成分は、当該単量体成分全体100質量%に対して、前記式(1)で表されるホウ素含有化合物(a)を10~90質量%含み、
前記ホウ素含有重合体は、下記式(3):
【化2】
[式中、R
1'、R
2'、R
3'、X
1'及びX
2'は、それぞれ、式(1)のR
1、R
2及びR
3、式(2)のX
1及びX
2と同様の基、2価の基、3価の基、又は、直接結合を表し、Aは、式(2)のAと同様の基を表す。]で表される繰り返し単位の構造を有することを特徴とする。
かかる本発明のホウ素含有重合体は、有機EL素子に用いることで、有機EL素子の駆動安定性を向上させることができる。
【0012】
本発明のホウ素含有重合体の好適例においては、前記式(1)におけるR1及びR2が、同一若しくは異なって、反応性基で置換した、更に置換基を有していてもよい、炭素数6~30のアリール基であり、前記式(3)におけるR1'及びR2'が、同一若しくは異なって、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のアリーレン基である。この場合、有機EL素子に用いることで、有機EL素子の駆動安定性を更に向上させることができる。
【0013】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記陰極と前記発光層との間に、上記のホウ素含有重合体からなる層を有することを特徴とする。
かかる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、駆動安定性に優れる。
【0014】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好適例においては、前記ホウ素含有重合体からなる層が、還元剤を含む。この場合、陰極から発光層への電子の供給が充分に行われるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動安定性が更に向上する。
【0015】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の好適例においては、前記ホウ素含有重合体からなる層が、酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物を含む。この場合、ホウ素含有重合体からなる層の電子注入性が向上するため、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動安定性が更に向上する。
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記陰極と前記発光層との間に、金属酸化物からなる電子注入層を有することが好ましい。この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子の保存安定性が向上し、駆動安定性が更に向上する。
【0017】
また、本発明の表示装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。かかる本発明の表示装置は、駆動安定性に優れる。
【0018】
また、本発明の照明装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。かかる本発明の照明装置は、駆動安定性に優れる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、有機EL素子の駆動安定性を向上させることが可能なホウ素含有重合体を提供することができる。
また、本発明によれば、基板上に陰極を有する、いわゆる逆構造の有機EL素子であって、駆動安定性に優れた有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の有機EL素子の構造の一例を示した概略図である。
【
図2】式(16-6)で表わされる繰り返し単位の構造を有するホウ素含有重合体のNMRスペクトルである。
【
図3】式(17-3)で表わされる繰り返し単位の構造を有するホウ素含有重合体のNMRスペクトルである。
【
図4】実施例1及び比較例1-3で製造した、各種有機EL素子の輝度-電圧特性を測定した結果を示すグラフである。
【
図5】実施例1及び比較例2-3で製造した、各種有機EL素子を連続駆動した際の輝度の時間変化を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明のホウ素含有重合体、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0022】
<ホウ素含有重合体>
本発明のホウ素含有重合体は、ホウ素含有化合物(a)と、その他の単量体(b)と、を含む単量体成分を鎖状に重合して得られるホウ素含有重合体であって、
前記ホウ素含有化合物(a)は、下記式(1):
【化3】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、同一若しくは異なって、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、ビニル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、ボリルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アルデヒド基、及びアセトニトリル基から選択される反応性基、(iii)置換基を有していてもよい、アリール基、複素環基、アルキル基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、R
1とR
2とが結合してなる2,2’-ビフェニル基、オリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、及びアリールアルキル基から選択される置換基、或いは、(iv)前記(iii)の置換基の一部を前記(ii)の反応性基で置換した置換基を表し、但し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つは、反応性基を有する置換基である。]で表わされ、
前記その他の単量体(b)は、下記式(2):
X
1-A-X
2 (2)
[式中、Aは、カルバゾール基を表し、X
1及びX
2は、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表し、但し、X
1及びX
2の少なくとも1つは、反応性基を有する置換基である。]で表わされ、
前記単量体成分は、当該単量体成分全体100質量%に対して、前記式(1)で表されるホウ素含有化合物(a)を10~90質量%含み、
前記ホウ素含有重合体は、下記式(3):
【化4】
[式中、R
1'、R
2'、R
3'、X
1'及びX
2'は、それぞれ、式(1)のR
1、R
2及びR
3、式(2)のX
1及びX
2と同様の基、2価の基、3価の基、又は、直接結合を表し、Aは、式(2)のAと同様の基を表す。]で表される繰り返し単位の構造を有することを特徴とする。
【0023】
本発明のホウ素含有重合体においては、単量体として用いる式(1)のホウ素含有化合物(a)が電子輸送性を有するため、電子輸送性に優れる。そのため、本発明のホウ素含有重合体からなる層を、有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極と発光層との間に用いることで、陽極からの正孔の注入と、陰極からの電子の注入とをバランスさせ、陽極から注入される正孔によって、ホウ素含有重合体からなる層の界面における、材料の劣化を抑制して、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動安定性を向上させることができる。
また、本発明のホウ素含有重合体は、式(1)のホウ素含有化合物(a)と、式(2)のその他の単量体(b)と、を含む単量体成分を鎖状に重合して得られるため、分子量が大きく、溶解性及び耐熱性に優れる。そのため、本発明のホウ素含有重合体は、印刷(塗布)工程での成膜に好適である。
【0024】
前記ホウ素含有重合体は、ホウ素含有化合物(a)と、その他の単量体(b)と、を含む単量体成分を鎖状に重合(共重合)して得られる。ここで、鎖状に重合して得られる重合体とは、重合体の主鎖の方向に、単量体単位が主として連なっている重合体を指し、一部分岐を有していてもよい。
【0025】
前記ホウ素含有化合物(a)は、下記式(1):
【化5】
で表わされる。
式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、同一若しくは異なって、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、ビニル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、ボリルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アルデヒド基、及びアセトニトリル基から選択される反応性基、(iii)置換基を有していてもよい、アリール基、複素環基、アルキル基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、R
1とR
2とが結合してなる2,2’-ビフェニル基、オリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、及びアリールアルキル基から選択される置換基、或いは、(iv)前記(iii)の置換基の一部を前記(ii)の反応性基で置換した置換基を表し、但し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つは、反応性基を有する置換基である。ここで、「反応性基を有する置換基」は、反応性基を有していればよく、置換基中に反応性基を有する基であってもよいし、前記反応性基自体であってもよく、具体的には、前記(ii)の反応性基、又は前記(iv)の前記(iii)の置換基の一部を前記(ii)の反応性基で置換した置換基である。
【0026】
前記反応性基は、反応性を有して、重合反応に関与できる基である。該反応性基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、ビニル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、ボリルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アルデヒド基、及びアセトニトリル基から選択される。
【0027】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらの中でも臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0028】
前記ボリル基としては、下記式(4-1)~(4-4):
【化6】
で表わされる基等が挙げられる。ここで、式中、Meはメチル基を表わし、Etはエチル基を表わす。
【0029】
前記スルホニウムメチル基としては、-CH2SMe2X(ここで、Meはメチル基であり、Xはハロゲン原子である)で表わされる基や、-CH2SPh2X(ここで、Phはフェニル基であり、Xはハロゲン原子である)で表わされる基等が挙げられる。
【0030】
前記ホスホニウムメチル基としては、-CH2PPh3X(ここで、Phはフェニル基であり、Xはハロゲン原子である)で表わされる基等が挙げられる。
【0031】
前記ホスホネートメチル基としては、-CH2PO(OR’)2(ここで、R’はアルキル基、アリール基、又はアリールアルキル基である)で表わされる基等が挙げられる。
【0032】
前記アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インデニル基、インダニル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0033】
前記複素環基としては、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、ピペリジニル基、ピペリジノ基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。これらの中でも、ピリジル基、チエニル基が好ましい。
【0034】
前記アルキル基としては、炭素数1~30の直鎖状又は分岐状炭化水素基、炭素数3~30の脂環式炭化水素基が挙げられる。ここで、炭素数1~30の直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。また、炭素数1~30の分岐状炭化水素基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基等が挙げられる。また、炭素数3~30の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル基等が挙げられる。前記アルキル基としては、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、オクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソブチル基、オクチル基が更に好ましい。
【0035】
前記R1、R2及びR3としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のハロゲン原子;塩化メチル基、臭化メチル基、ヨウ化メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5~7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ヒドロキシル基;チオール基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1~4のアルキル基を有するモノ又はジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基等のアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;アリル基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、ピレニルオキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基等のパーフルオロ基及び更に長鎖のパーフルオロ基;ジフェニルボリル基、ジメシチルボリル基、ビス(パーフルオロフェニル)ボリル基等のボリル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリフェニルシリル基等のシリル基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基等で置換されていてもよいフェニル基、2,6-キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、ピリジルフェニル基、フェナンスレニル基等のアリール基;チエニル基、フリル基、シラシクロペンタジエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、アクリジニル基、キノリル基、キノキサロイル基、フェナンスロリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基等の複素環基;カルボキシル基;エポキシ基;イソシアネート基;ホルミル基;等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子や芳香族等で置換されていてもよく、更に、これらの基がお互いに任意の場所で結合して環を形成していてもよい。
また、前記(iii)に関して、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、ハロアルキル基、複素環基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、オクチル基、フッ素原子、臭素原子、ビニル基、エチニル基、ジフェニルアミノ基、ジフェニルアミノフェニル基、トリフルオロメチル基、ピリジル基がより好ましい。
【0036】
前記R1、R2及びR3としては、上述したものの中でも、水素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、n-オクチル基、フェニル基、4-メトキシフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェニル基、4-(4-ピリジル)フェニル基、4-(4-ピリジル)-2,6-ジメチルフェニル基、2,2’-ビフェニル基、スチリル基、ジフェニルアミノフェニル基が好ましく、臭素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、n-オクチル基、フェニル基、4-メトキシフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェニル基、4-(4-ピリジル)フェニル基、4-(4-ピリジル)-2,6-ジメチルフェニル基、2,2’-ビフェニル基、スチリル基、ジフェニルアミノフェニル基が更に好ましく、臭素原子、イソプロピル基、イソブチル基、n-オクチル基、フェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェニル基、4-(4-ピリジル)フェニル基、4-(4-ピリジル)-2,6-ジメチルフェニル基、2,2’-ビフェニル基、スチリル基、ジフェニルアミノフェニル基が特に好ましい。
【0037】
前記R1、R2及びR3としては、その内の2つ(例えば、R1及びR2)が、同一若しくは異なって、反応性基で置換した、更に置換基を有していてもよい、炭素数6~30のアリール基であり、他の1つ(例えば、R3)が、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のアリール基であることが好ましい。この場合、ホウ素含有重合体からなる層の電子輸送性が向上し、駆動安定性が向上する。
また、前記R1、R2及びR3としては、その内の2つ(例えば、R1及びR2)が、同一若しくは異なって、反応性基で置換した、更に置換基を有していてもよい、炭素数6~30のフェニル基であり、他の1つ(例えば、R3)が、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のフェニル基であることが更に好ましい。この場合、ホウ素含有重合体からなる層の電子輸送性が更に向上し、駆動安定性が更に向上する。
ここで、反応性基で置換した、更に置換基を有していてもよい、炭素数6~30のフェニル基としては、4-ブロモフェニル基、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェニル基が好ましく、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェニル基が特に好ましい。
また、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のフェニル基としては、4-(4-ピリジル)フェニル基、4-(4-ピリジル)-2,6-ジメチルフェニル基が好ましく、4-(4-ピリジル)-2,6-ジメチルフェニル基が特に好ましい。
【0038】
前記その他の単量体(b)は、下記式(2):
X1-A-X2 (2)
で表わされる。
式(2)中、Aは、カルバゾール基を表し、X1及びX2は、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表し、但し、X1及びX2の少なくとも1つは、反応性基を有する置換基である。
【0039】
前記式(2)におけるAは、カルバゾール基である。ここで、「カルバゾール基」には、カルバゾールから2つの水素原子を除いて形成される2価の基(カルバゾールジイル基)の他、カルバゾールジイル基の任意の位置の水素原子が、任意の置換基で置換された2価の基(置換カルバゾールジイル基)が包含される。該カルバゾール基に対するX1及びX2の結合位置は、いずれでもよく、また、カルバゾール基の窒素原子には、水素原子又は任意の1価の置換基が結合することができる。
なお、前記置換基としては、前記R1、R2及びR3における置換基と同様のものを用いることができる。
【0040】
前記カルバゾール基としては、下記式(5)で表される複素環基が好ましい。
【化7】
【0041】
なお、式(5)において、Rは、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アルキルオキシアリール基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミド基、イミン残基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基またはシアノ基を表す。
また、環構造に交差して付されたRの付いた線は、Rが、その環構造に対して1つ結合していてもよく、複数結合していてもよいことを意味し、その結合位置も限定されない。
また、式(5)において、水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
前記式(2)におけるAが、式(5)の複素環基である場合、ホウ素含有重合体からなる層の電子輸送性が向上し、駆動安定性が向上する。
【0042】
前記式(2)で表される、その他の単量体(b)において、X1及びX2は、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表し、但し、X1及びX2の少なくとも1つは、反応性基を有する置換基である。
【0043】
前記式(2)のX1及びX2において、1価の置換基としては特に制限されないが、前記R1、R2及びR3と同様のものが挙げられる。
X1及びX2としては、より具体的には、水素原子;ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等の反応性基;炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又は該反応性基で置換された炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基又は該反応性基で置換された炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;アリール基又は該反応性基で置換されたアリール基;オリゴアリール基又は該反応性基で置換されたオリゴアリール基;1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基又は該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基;アルキルチオ基;アリールオキシ基;アリールチオ基;アリールアルキル基;アリールアルコキシ基;アリールアルキルチオ基;アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基;アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基が好ましい。より好ましくは、水素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ボリル基、アルキニル基、アルケニル基、ホルミル基、スタニル基、ホスフィノ基、アリール基又は該反応性基で置換されたアリール基、該反応性基で置換されたオリゴアリール基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基、N-カルバゾリル基等の1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基、該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基、アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基、アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基である。
【0044】
また、前記式(2)におけるX1及びX2は、反応性基を有する置換基であることが好ましい。X1及びX2が反応性基を有する置換基である場合、該置換基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等の反応性基;該反応性基で置換された炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;該反応性基で置換された炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;該反応性基で置換されたアリール基;該反応性基で置換されたオリゴアリール基;該反応性基で置換された1価の複素環基;該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基;アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基;アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基が好ましい。より好ましくは、臭素原子、ヨウ素原子、ボリル基、ホルミル基、スタニル基、ホスフィノ基、該反応性基で置換されたアリール基、該反応性基で置換されたオリゴアリール基、該反応性基で置換された1価の複素環基、該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基、アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基、アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基である。更に好ましくは、臭素原子、ボリル基、ホルミル基、スタニル基、ホスフィノ基、該反応性基で置換されたアリール基、該反応性基で置換されたオリゴアリール基、該反応性基で置換された1価の複素環基、該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基、アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基、アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基である。
【0045】
上述のホウ素含有化合物(a)と、その他の単量体(b)と、を含む単量体成分を鎖状に重合して得られる、ホウ素含有重合体は、下記式(3):
【化8】
で表される繰り返し単位の構造を有する。
式(3)中、R
1'、R
2'、R
3'、X
1'及びX
2'は、それぞれ、式(1)のR
1、R
2及びR
3、式(2)のX
1及びX
2と同様の基、2価の基、3価の基、又は、直接結合を表し、Aは、式(2)のAと同様の基(即ち、カルバゾール基)を表す。
前記ホウ素含有重合体は、式(1)中のR
1、R
2及びR
3の少なくとも1つの基と、式(2)中のX
1及びX
2の少なくとも1つの基と、が重合して形成される繰り返し単位を有するものである。
【0046】
上記式(3)は、R1'、R2'及びR3'のうち、いずれか1つ以上、かつ、X1'及びX2'のうち、いずれか1つ以上が、重合体の主鎖の一部として結合を形成することを意味する。
上記式(3)で表される繰り返し単位を有するホウ素含有重合体において、上記式(1)由来の繰り返し単位、上記式(2)由来の繰り返し単位は、ランダム重合体であっても、ブロック重合体でも、グラフト重合体あってもよい。また、高分子主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある場合やデンドリマーでもよい。
また、上記式(3)で表される繰り返し単位を有するホウ素含有重合体は、上記式(1)由来の繰り返し単位、上記式(2)由来の繰り返し単位をそれぞれ1種含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。繰り返し単位を2種以上含むものである場合、当該2種以上の構造は、ランダム重合体であっても、ブロック重合体でも、グラフト重合体あってもよい。また、高分子主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある場合やデンドリマーでもよい。
【0047】
上記式(3)で表されるホウ素含有重合体としては、
(i)上記式(1)中のR
1、R
2及びR
3のうち、いずれか2つと、上記式(2)中のX
1及びX
2とが、重合体の主鎖の一部として結合を形成する場合、
(ii)上記式(1)中のR
1、R
2及びR
3のうち、いずれか2つと、上記式(2)中のX
1及びX
2のいずれか1つの基とが、重合体の主鎖の一部として結合を形成する場合、
(iii)上記式(1)中のR
1、R
2及びR
3のうち、いずれか1つと、上記式(2)中のX
1及びX
2とが、重合体の主鎖の一部として結合を形成する場合、
(iv)上記式(1)中のR
1、R
2及びR
3のうち、いずれか1つと、上記式(2)中のX
1及びX
2のいずれか1つの基とが、重合体の主鎖の一部として結合を形成する場合がある。
これらの場合の繰り返し単位の構造の具体例として、例えば、下記式(6-1)~(6-4)のような構造があり、これらの中でも、式(6-1)の構造が好ましい。
【化9】
【0048】
前記R1'、R2'及びR3'としては、その内の2つ(例えば、R1'及びR2')が、同一若しくは異なって、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のアリーレン基であり、他の1つ(例えば、R3')が、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のアリール基であることが好ましい。この場合、ホウ素含有重合体からなる層の電子輸送性が向上し、駆動安定性が向上する。
また、前記R1'、R2'及びR3'としては、その内の2つ(例えば、R1'及びR2')が、同一若しくは異なって、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のフェニレン基であり、他の1つ(例えば、R3')が、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のフェニル基であることが更に好ましい。この場合、ホウ素含有重合体からなる層の電子輸送性が更に向上し、駆動安定性が更に向上する。
ここで、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のフェニレン基としては、フェニレン基、2,6-ジメチルフェニレン基が好ましく、2,6-ジメチルフェニレン基が特に好ましい。
また、置換基を有していてもよい、炭素数6~30のフェニル基としては、4-(4-ピリジル)フェニル基、4-(4-ピリジル)-2,6-ジメチルフェニル基が好ましく、4-(4-ピリジル)-2,6-ジメチルフェニル基が特に好ましい。
【0049】
上記式(3)中のAの構造としては、式(2)中のAと同様に、式(5)であることが好ましい。
式(3)中のAが、式(5)である場合、ホウ素含有重合体からなる層の電子輸送性が向上し、駆動安定性が向上する。
【0050】
前記ホウ素含有重合体の両末端に結合している基は、特に制限されず、また、同一であっても、異なっていてもよい。前記両末端に結合している基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0051】
前記ホウ素含有重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000~100,000,000であることが好ましい。数平均分子量がこのような範囲であると、良好に薄膜化できる。該数平均分子量は、1,000~10,000,000であることが更に好ましく、1,500~1,000,000であることが特に好ましい。
前記ホウ素含有重合体は、重量平均分子量(Mw)が1,500~100,000,000であることが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲であると、良好に薄膜化できる。該重量平均分子量は、1,500~10,000,000であることが更に好ましく、4,000~1,000,000であることが特に好ましい。
ここで、前記数平均分子量、重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;THF)によって、実施例に記載の装置、及び測定条件で測定することができる。
【0052】
前記ホウ素含有重合体は、前記式(1)で表わされるホウ素含有化合物(a)と、前記式(2)で表わされるその他の単量体(b)と、を含む単量体成分を鎖状に重合して得られる。
前記単量体成分は、当該単量体成分全体100質量%に対して、前記式(1)で表されるホウ素含有化合物(a)を10~90質量%含み、30~70質量%含むことが好ましい。
また、前記単量体成分は、当該単量体成分全体100質量%に対して、前記式(2)で表わされるその他の単量体(b)を10~90質量%含むことが好ましく、30~70質量%含むことが更に好ましい。
なお、前記単量体成分は、式(1)で表されるホウ素含有化合物(a)、式(2)で表されるその他の単量体(b)とも、1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
また、重合反応の際には、単量体成分の固形分濃度は、0.01質量%~溶解する最大濃度の範囲で適宜設定することができるが、希薄すぎると反応の効率が悪く、濃すぎると反応の制御が難しくなる恐れがあることから、好ましくは、0.1~20質量%である。
【0053】
前記ホウ素含有重合体が重縮合反応により形成される場合、上記反応性基の組み合わせが、アルデヒド基とホスホニウムメチル基との組み合わせである場合にはWittig反応により、ビニル基とハロゲン原子との組み合わせである場合にはHeck反応により、アルデヒド基とホスホネートメチル基との組み合わせである場合にはHorner反応により、ハロアルキル基とハロアルキル基との組み合わせである場合には脱ハロゲン化水素法により、スルホニウムメチル基とスルホニウムメチル基との組み合わせである場合にはスルホニウム塩分解法により重合を行うことができる。また、上記反応性基の組み合わせが、アルデヒド基とアセトニトリル基との組み合わせである場合にはKnoevenagel反応により、アルデヒド基とアルデヒド基との組み合わせである場合にはMcMurry反応により、ハロゲン原子とボリル基との組み合わせである場合にはSuzukiカップリング反応により、ハロゲン原子とハロゲン原子との組み合わせである場合には0価のニッケル触媒を用いた山本重合反応により重合することができる。その他、重合方法としては、塩化鉄(III)等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法等が挙げられる。
これらの重合方法のうちでも、Suzukiカップリング反応、山本重合反応により重合を行うことが好ましく、Suzukiカップリング反応により重合を行うことが特に好ましい。
【0054】
前記重合工程において用いる溶媒としては、当該反応が進行するものである限り特に制限されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル等のエステル類;ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルフェニルエーテル(アニソール)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)等のグリコールエーテル(セロソルブ)類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;水、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメトキシエタン等を用いることができる。これらの中でも、トルエン、テトラヒドロフラン、キシレンが好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、上記Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、N、N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエンが好適に用いられる。また、上記Heck反応の場合には、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等の比較的沸点の高い溶媒が好適に用いられる。上記Suzukiカップリング反応の場合には、N、N-ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが好適に用いられる。
また、前記溶媒を用いる際には、副反応を抑制するために、充分に脱酸素処理を行い、不活性雰囲気下で反応が進行するようにすることが好ましい。また、同様の理由から、脱水処理を行うことが好ましい場合もある。ただし、Suzukiカップリング反応のように、水との二相系で反応を行う場合にはその限りではない。
【0055】
前記重合工程においては、触媒を用いてもよく、特に、上記Heck反応、Suzukiカップリング反応、上記重縮合し得る反応性基の組み合わせがスタニル基とハロゲン原子のようなStille重合反応、山本重合反応により重合を行う場合には、触媒が用いられる。
Heck反応、Suzukiカップリング反応、Stille重合する際の触媒としては、0価のパラジウム触媒、2価のパラジウム塩触媒等が挙げられ、具体的には、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロライド、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム、ビス(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム、ビス(1,1’-(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、テトラキス(トリエチルホスファイト)パラジウム、パラジウム(II)アセテート類等を挙げることができる。これらの触媒は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これらの中でも、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム,トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)が好ましい。
また、前記触媒を用いる際には、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフリルホスフィン等の配位子を添加剤として加えてもよい。
なお、触媒を反応液に混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で攪拌しながら、ゆっくりと触媒を含む溶液を添加する方法、触媒を含む溶液に反応液をゆっくりと添加する方法等が挙げられる。
【0056】
前記触媒を用いる場合、触媒の使用量としては、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物(a)1モルに対して、0.001~0.2モルであることが好ましい。触媒の使用量が0.001モルより少ないと、触媒の機能が充分に発揮されず、0.2モルより多くしても、それ以上の効果の向上は期待できないため、製造コストの点から好ましくない。より好ましくは、0.005~0.15モルであり、更に好ましくは、0.01~0.1モルである。
【0057】
前記重合工程においては、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス-2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシド等を用いることができる。
また、促進剤として、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸等の還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシン等のアミン化合物を併用することもできる。
これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記重合開始剤を用いる場合、重合開始剤の使用量としては、単量体成分100質量%に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
前記促進剤を使用する場合の使用量としては、単量体成分100質量%に対して、例えば0.05質量%以上であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
重合に際し、安定した分子量の制御には連鎖移動剤の使用が好ましく、単量体との相溶性、溶媒への溶解性から、必要に応じて1種又は2種以上の連鎖移動剤を使用することができる。このような連鎖移動剤としては、炭素数3以上の炭化水素基をもつチオール化合物又は25℃の水に対する溶解度が10%以下の化合物が好適であり、上述した連鎖移動剤や、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や亜硫酸が好適である。
【0060】
前記連鎖移動剤の使用量は、単量体成分100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。また、連鎖移動剤の使用量は、単量体成分100質量%に対して、0.5質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
前記重合工程においては、アルカリ成分を添加し、アルカリ存在下に反応を行ってもよい。特に、上記Wittig反応、Heck反応、Horner反応、脱ハロゲン化水素法、Knoevenagel反応、Suzukiカップリング反応の場合には、アルカリ存在下に反応を行うことが好ましい。
前記アルカリ成分としては、特に制限されないが、例えば、Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、ナトリウムエチラート、リチウムメチラート等の金属アルコラート;水素化ナトリウム等のハイドライド試薬;ナトリウムアミド等のアミド類等を用いることができる。Heck反応の場合には、トリエチルアミン等を用いることができる。Suzukiカップリング反応の場合には、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化バリウム等の無機塩基;炭酸テトラエチルアンモニウム等の炭酸アンモニウム塩、トリエチルアミン、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基;フッ化セシウム等の無機塩等を用いることができ、無機塩を用いる場合には、無機塩を水溶液として、二相系で反応させてもよい。
なお、アルカリ成分を反応液に混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で攪拌しながら、ゆっくりとアルカリ成分を含む溶液を添加する方法、アルカリ成分を含む溶液に反応液をゆっくりと添加する方法等が挙げられる。
【0062】
前記アルカリ成分の使用量としては、単量体成分の有する官能基に対して当量以上であることが好ましい。特に、Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、1~3当量であることがより好ましく、Suzukiカップリング反応の場合には、1~10当量であることがより好ましい。
【0063】
前記重合工程は、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。不活性ガスとしては、特に制限されず、窒素、アルゴン、ヘリウム等のいずれを用いてもよいが、窒素、アルゴンが好ましい。不活性ガスは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0064】
前記重合工程の反応温度は、50℃~200℃であることが好ましい。特に、Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、通常室温から150℃程度で反応を進行させることができる。Heck反応の場合には、80℃から160℃程度で反応を進行させることができる。また、Suzukiカップリング反応の場合には、溶媒に応じて設定することができるが、50~160℃で反応を行うことが好適である。
反応圧力は、加圧、常圧、減圧のいずれであってもよいが、常圧であることが好ましい。
また、反応時間は、5時間以上であることが好ましい。
特に、Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、通常5分~40時間であればよいが、好ましくは、10分~24時間である。Heck反応の場合には、1~100時間程度であればよい。また、Suzukiカップリング反応の場合には、1~200時間程度であればよい。
前記重合反応は、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0065】
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記陰極と前記発光層との間に、上述のホウ素含有重合体からなる層を有することを特徴とする。
【0066】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記ホウ素含有重合体の単量体として用いる式(1)のホウ素含有化合物(a)が電子輸送性を有するため、前記ホウ素含有重合体からなる層は、電子輸送性に優れる。そのため、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、陽極からの正孔の注入と、陰極からの電子の注入とがバランスされており、陽極から注入される正孔によって、ホウ素含有重合体からなる層の界面における、材料の劣化が抑制されており、駆動安定性が向上している。
また、前記ホウ素含有重合体は、式(1)のホウ素含有化合物(a)と、式(2)のその他の単量体(b)と、を含む単量体成分を鎖状に重合して得られるため、分子量が大きく、溶解性及び耐熱性に優れる。そのため、金属酸化物層上に前記ホウ素含有重合体からなる層を形成する場合においても、該ホウ素含有重合体は、印刷(塗布)工程での成膜に好適であるので、金属酸化物層上にホウ素含有重合体からなる層を塗布法で形成し易いという利点もある。
【0067】
次に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一態様を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の有機EL素子の構造の一例を示した概略図である。
【0068】
図1に示す有機EL素子1は、基板2上に、陰極3と、発光層6と、陽極9と、がこの順に設けられており、陰極3と発光層6の間に、電子注入・輸送層5を有する。
ここで、
図1に示す有機EL素子においては、電子注入・輸送層5が、上述のホウ素含有重合体を含み、即ち、上述のホウ素含有重合体からなる層である。上述したように、陰極3と発光層6の間に、前記ホウ素含有重合体からなる電子注入・輸送層5設けることで、逆構造の有機EL素子の駆動安定性を向上させることができる。
【0069】
前記有機EL素子1を構成する層には、陽極9、陰極3の他、発光層6、電子注入・輸送層5、正孔輸送層7、正孔注入層8等があり、これらの層が適宜選択されて積層され、有機EL素子1が構成される。
なお、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極9と、基板2上に形成された陰極3との間に複数の層が積層された構造を有するものである限り、積層される層の構成は特に制限されないが、陰極3、電子注入・輸送層5、発光層6、必要に応じて正孔輸送層7、正孔注入層8、陽極9の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。
【0070】
前記基板2の材料としては、樹脂材料、ガラス材料等が挙げられる。基板2に用いられる樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。基板2の材料として、樹脂材料を用いた場合、柔軟性に優れた有機EL素子1が得られるため好ましい。一方、基板2に用いられるガラス材料としては、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。
【0071】
前記有機EL素子1がボトムエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板を用いる。一方、前記有機EL素子1がトップエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板だけでなく、不透明基板を用いてもよい。不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料からなる基板、ステンレス鋼のような金属板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成した基板、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0072】
前記基板2の平均厚さは、基板2の材料等に応じて決定でき、0.1~30mmであることが好ましく、0.1~10mmであることがより好ましい。なお、基板2の平均厚さは、デジタルマルチメーター、ノギスにより測定できる。
【0073】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、陰極3及び陽極9としては、公知の導電性材料を適宜用いることができるが、光取り出しのために少なくともいずれか一方は透明であることが好ましい。公知の透明導電性材料の例としては、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等が挙げられる。一方、不透明な導電性材料の例としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、錫、インジウム、銅、銀、金、白金やこれらの合金等が挙げられる。
陰極3としては、これらの中でも、ITO、IZO、FTOが好ましい。
陽極9としては、これらの中でも、Au、Ag、Alが好ましい。
【0074】
上記のように、一般に陽極9に用いられる金属を陰極3及び陽極9に用いる事ができる事から、上部電極からの光の取り出しを想定する場合(トップエミッション構造の場合)も容易に実現でき、上記電極を種々選んでそれぞれの電極に用いる事ができる。例えば、下部電極としてAl、上部電極にITO等である。
【0075】
前記陰極3の平均厚さは、特に制限されないが、10~500nmであることが好ましく、100~200nmであることが更に好ましい。なお、陰極3の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0076】
前記陽極9の平均厚さは、特に限定されないが、10~1000nmであることが好ましく、30~150nmであることが更に好ましい。また、不透過な材料を用いる場合でも、例えば、平均厚さを10~30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極9として使用することができる。なお、陽極9の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0077】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極9と陰極3との間に金属酸化物層4を有することが好ましい。陽極9と陰極3との間の積層構造の材料として金属酸化物を用いると、金属酸化物からなる層を有さない有機EL素子に比べて連続駆動寿命や保存安定性に優れたものとなる。
【0078】
金属酸化物層4は、陰極3の一部又は電子注入層として機能する層である。
金属酸化物層4は、単体の金属酸化物膜の一層からなる層、もしくは、単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層である半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層である。金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素からなる群から選ばれる。これらのうち、積層又は混合金属酸化物層を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましく、その中でも単体の金属酸化物ならば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物を含むことが好ましい。
【0079】
前記単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層の例としては、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウム等の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものや、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛等の三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したもの等が挙げられる。これらの中には、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZOやエレクトライドである12CaO7Al2O3も含まれる。
なお、本発明においては、シート抵抗が100Ω/□より低い物は導電体、シート抵抗が100Ω/□より高い物は半導体または絶縁体として分類される。従って、透明電極として知られているITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等の薄膜は、導電性が高く半導体または絶縁体の範疇に含まれないことから、本発明の金属酸化物層4を構成する一層に該当しない。
【0080】
前記金属酸化物層4の平均厚さは、1nmから数μm程度まで許容できるが、低電圧で駆動できる有機EL素子とする点から、1~1000nmであることが好ましく、2~100nmであることが更に好ましい。金属酸化物層4の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0081】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記陰極3と前記発光層6との間に、金属酸化物からなる電子注入層(金属酸化物層4)を有することが更に好ましい。電子注入層は、陰極3から発光層6への電子の注入の速度・電子輸送性を改善するものであり、陰極3と発光層6との間に、電子注入層として、金属酸化物層4を有することで、有機EL素子の保存安定性が向上し、駆動安定性が更に向上する。
【0082】
図1に示す有機EL素子は、陰極3と発光層6の間に形成する電子注入・輸送層5に上述のホウ素含有重合体を含むものである。該電子注入・輸送層5は、ホウ素含有重合体を含む溶液を塗布して形成されることが好ましい。電子注入・輸送層5が、上述のホウ素含有重合体からなる層であることで、電子注入・輸送層5の電子注入性及び電子輸送性が向上し、陽極からの正孔の注入と、陰極からの電子の注入とがバランスされ、有機EL素子1の駆動安定性が向上する。
なお、
図1においては、陰極3の上に金属酸化物層4が積層されており、更に、金属酸化物層4の上に電子注入・輸送層5が積層されているが、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、金属酸化物層4と電子注入・輸送層5との積層順序は逆でもよい。
【0083】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子注入・輸送層5(ホウ素含有重合体からなる層)は、還元剤を含むことが好ましい。
ここで、還元剤は、n-ドーパントとして働くため、電子注入・輸送層5が還元剤を含むことで陰極3から発光層6への電子の供給が充分に行われるため、有機EL素子の駆動安定性が更に向上する。
【0084】
前記還元剤としては、電子供与性の化合物が好ましく、例えば、1,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、1,3-ジメチル-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、(4-(1,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)フェニル)ジメチルアミン(N-DMBI)、1,3,5-トリメチル-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール等の2,3-ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物;3-メチル-2-フェニル-2,3-ジヒドロベンゾ[d]チアゾール等の2,3-ジヒドロベンゾ[d]チアゾール化合物;3-メチル-2-フェニル-2,3-ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール等の2,3-ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール化合物;ロイコクリスタルバイオレット(=トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタン)、ロイコマラカイトグリーン(=ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン)、トリフェニルメタン等のトリフェニルメタン化合物;2,6-ジメチル-1,4-ジヒドロピリジン-3,5-ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)等のジヒドロピリジン化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、2,3-ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物や、ジヒドロピリジン化合物が好ましく、(4-(1,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)フェニル)ジメチルアミン(N-DMBI)、または2,6-ジメチル-1,4-ジヒドロピリジン-3,5-ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)が特に好ましい。
【0085】
前記還元剤の量は、電子注入・輸送層5を形成するホウ素含有重合体100質量%に対して、0.1~15質量%であることが好ましい。還元剤をこのような割合で含むと、有機EL素子の発光効率を充分に高いものとすることができる。還元剤の量は、より好ましくは、ホウ素含有重合体100質量%に対して、0.5~10質量%であり、更に好ましくは、0.5~5質量%である。
【0086】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子注入・輸送層5(ホウ素含有重合体からなる層)は、酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物を含むことが好ましい。該酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物としては、三級アミン、フォスファゼン化合物、グアニジン化合物、アミジン構造を含む複素環式化合物、環構造を有する炭化水素化合物、及びケトン化合物が好ましい。これら化合物は、1種でも、2種以上の組み合わせでもよい。
【0087】
前記酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物は、ホウ素含有重合体からプロトン(H+)を引き抜く能力を有する。該塩基性の化合物は、pKaが5以上であることが好ましく、11以上であることが更に好ましく、pKaが高い程、ホウ素含有重合体からプロトンを引き抜く能力がより高いものとなる。その結果、電子注入・輸送層5の電子注入性がより向上する。また、前記塩基性の化合物は、無機化合物の欠損箇所に好適に配位することから、外部から侵入する酸素や水との界面での反応を妨げ、素子の大気安定性を高める効果もある。
なお、本発明において、「pKa」は通常は「水中における酸解離定数」を意味するが、水中で測定できないものは「ジメチルスルホキシド(DMSO)中における酸解離定数」を意味し、DMSO中でも測定できないものは、「アセトニトリル中の酸解離定数」を意味する。好ましくは「水中における酸解離定数」を意味する。
【0088】
前記三級アミン(三級アミン誘導体)としては、鎖状や環状等のアミン化合物であっても良く、環状である場合には複素環式のアミン化合物であってもよく、脂肪族アミンや芳香族アミン等の複素環式のアミン化合物であってもよい。三級アミンは、アミノ基を1~4個有していることが好ましく、1または2個有していることがより好ましい。また、アミン化合物としては、アルキル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を有する化合物であってもよい。具体的には、(モノ、ジ、トリ)アルキルアミン;アルキルアミノ基を1~3つ有する芳香族アミン;アルコキシ基を1~3つ有する芳香族アミン等が挙げられる。
【0089】
前記三級アミンとしては、1級アミンおよび2級アミンを含まないものが好ましい。具体的には、該三級アミンとして、下記構造式(7-1)または(7-2)で示されるジメチルアミノピリジン(DMAP)等のジアルキルアミノピリジン、下記構造式(7-3)で示されるトリエチルアミン等のNR
4R
5R
6で表される構造を有するアミン(ただし、R
4、R
5、R
6は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)、下記構造式(7-4)で示されるアクリジンオレンジ(AOB)等が挙げられる。
【化10】
【0090】
前記炭化水素基としては、炭素数1~30のものが好ましく、炭素数1~8のものがより好ましく、炭素数1~4のものが更に好ましく、炭素数1または2のものがより一層好ましい。炭化水素基が置換基を有する場合には、置換基も含めた全体として前記炭素数であることが好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示されるが、アルキル基が好ましい。置換基を有する炭化水素基における置換基としては、ハロゲン原子、複素環基、シアノ基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基等が例示される。ジメチルアミノピリジンとしては、電子供与基であるジメチルアミノ基のピリジン環に結合している位置が、2位(2-DMAP)または4位(4-DMAP)であることが好ましい。特に、ピリジン環の4位にジメチルアミノ基が結合している4-ジメチルアミノピリジンは、pKaが高く、しかも、これを含む有機薄膜を有機EL素子の電子注入・輸送層5として用いた場合に長い寿命が得られるため好ましい。
【0091】
前記三級アミンとしては、メトキシピリジン誘導体等のアルコキシピリジン誘導体も用いることができる。アルコキシ基としては、炭素数1~30のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がさらに好ましく、1または2のアルコキシ基がより一層好ましい。アルコキシピリジン誘導体には、アルコキシピリジンの水素原子の1または2以上が、置換基で置換された構造の化合物も含まれる。置換基としては、上記の三級アミンの炭化水素基の置換基と同様のものが例示される。
メトキシピリジン誘導体としては、メトキシ基のピリジン環に結合している位置が4位である下記構造式(8-1)で示される4-メトキシピリジン(4-MeOP)または3位である下記構造式(8-2)で示される3-メトキシピリジン(3-MeOP)であることが好ましい。特に、ピリジン環の4位にメトキシ基が結合している4-メトキシピリジンは、pKaが高いため好ましい。
【化11】
【0092】
前記三級アミンとしては、ジアルキルアミノ基および/またはアルコキシ基を有する複素環式芳香族アミン、トリアルキルアミンから選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、ジアルキルアミノピリジン、トリアルキルアミン、アルコキシピリジン誘導体から選択される1種又は2種以上を用いることが、電子注入性、寿命の向上の観点から特に好ましい。
【0093】
前記アミジン構造を含む複素環式化合物において、アミジン構造とは、R7-C(=NR8)-NR9R10で表される構造(ただし、R7~R10は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を表す。)である。アミジン構造を含む複素環式化合物としては、ジアザビシクロノネン誘導体やジアザビシクロウンデセン誘導体等が挙げられる。
【0094】
前記ジアザビシクロノネン誘導体としては、下記構造式(9-1)で示される1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)等が挙げられる。DBNは、これを含む有機薄膜を有機EL素子の電子注入・輸送層5として用いた場合に、長い寿命が得られるため好ましい。
前記ジアザビシクロウンデセン誘導体としては、下記構造式(9-2)で示される1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
【化12】
【0095】
前記ジアザビシクロノネン誘導体には、ジアザビシクロノネンの水素原子の1または2以上が、置換基で置換された構造の化合物も含まれ、ジアザビシクロウンデセン誘導体には、ジアザビシクロウンデセン水素原子の1または2以上が、置換基で置換された構造の化合物も含まれる。置換基としては、上記の三級アミンの炭化水素基の置換基と同様のものが例示される。
【0096】
前記フォスファゼン化合物(フォスファゼン塩基誘導体)とは、例えば、下記一般式(10)で表される構造を含む化合物である。
【化13】
【0097】
上記式(10)において、R
11は、水素原子又は炭化水素基を表し、R
12~R
14は、水素原子、炭化水素基、-NR’R”ただし、R’、R”は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基を表す。)、又は下記式(11)で表される基を表し、nは1~5の数を表す。
【化14】
【0098】
上記式(11)において、R15~R17は、水素原子、炭化水素基、又は-NR’R”(ただし、R’、R”は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基を表す。)を表し、mは1~5の数を表す。
【0099】
上記式(10)、(11)における炭化水素基としては、炭素数1~8の基が好ましく、炭素数1~4の基が好ましい。また、炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。上記R11としては、ターシャリーブチル基が特に好ましい。
【0100】
前記フォスファゼン塩基誘導体としては、下記構造式(12)で示される化合物等が挙げられる。
【化15】
【0101】
前記グアニジン化合物とは、下記一般式(13)で表される構造を含む化合物である。
【化16】
【0102】
上記式(13)中、R18~R22は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を表し、R18~R22のうち2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。
【0103】
前記グアニジン化合物としては、グアニジン環状誘導体等を用いることができる。グアニジン環状誘導体としては、下記式(14-1)で示される7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、下記式(14-2)で示される1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)等が挙げられる。
【化17】
【0104】
前記環構造を有する炭化水素化合物としては、環構造として5員環又は6員環を有する化合物が好ましく、5員環と6員環とが縮環した環構造や、複数の6員環が縮環した環構造を有する化合物も好ましい。5員環としては、シクロペンタン環やシクロペンタジエン環等が挙げられ、6員環としては、ベンゼン環等が挙げられる。
環構造を有する炭化水素化合物としては、環構造のみの化合物、環構造に炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5のアルキル基が結合した構造の化合物や、複数の環構造が直接又は炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5の炭化水素の連結基を介して結合した構造の化合物が好ましい。環構造を有する炭化水素化合物の具体例としては、下記式(15-1)~(15-14)の化合物が挙げられる。なお、式中のPhはフェニル基を表す。
【化18】
【0105】
前記ケトン化合物としては、炭素数が2~30のケトンが好ましく、環状構造を有していても良い。具体的には、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、3,5,5-トリメチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0106】
前記ホウ素含有重合体と、前記pKaが1以上の塩基性の化合物と、の質量比(ホウ素含有重合体:pKaが1以上の塩基性の化合物)は、1:0.01~1:10の範囲が好ましく、1:0.5~1:5の範囲が更に好ましい。質量比がこの範囲であれば、ホウ素含有重合体と、pKaが1以上の塩基性の化合物との効果が十分に発揮されて、電子輸送性及び電子注入性の向上効果が顕著となる。
【0107】
前記電子注入・輸送層5は、前記ホウ素含有重合体と複数の材料を積層させてもよい。用いることができるその他の材料としては、上述した、還元剤、酸解離定数pKaが1以上である塩基性の化合物の他に、トリス-1,3,5-(3’-(ピリジン-3”-イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)等のピリジン誘導体、2-(3-(9-カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ)等のキノリン誘導体、2-フェニル-4,6-ビス(3,5-ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)等のピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)等のフェナントロリン誘導体、2,4-ビス(4-ビフェニル)-6-(4’-(2-ピリジニル)-4-ビフェニル)-[1,3,5]トリアジン(MPT)等のトリアジン誘導体、3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)等のトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル-1,3,4-オキサジアゾール)(PBD)等のオキサジアゾール誘導体、2,2’,2”-(1,3,5-ベントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(TPBI)等のイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ)2)、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)等に代表される各種金属錯体、2,5-ビス(6’-(2’,2”-ビピリジル))-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられる。
【0108】
前記電子注入・輸送層5の平均厚さは、5~100nmであることが好ましい。電子注入・輸送層5の平均厚さが5nm以上の場合、正孔をブロックする効果が大きく、有機EL素子の駆動安定性が更に向上する。電子注入・輸送層5の平均厚さが100nm以下の場合、駆動電圧が低く、実用上好ましい。前記電子注入・輸送層5の平均厚さは、より好ましくは10~60nmである。また、本発明の有機EL素子の連続駆動寿命の点も考えると、前記電子注入・輸送層5の平均厚さは、10~30nmであることが更に好ましい。なお、電子注入・輸送層5の平均厚さは触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0109】
本発明の有機EL素子において、発光層6を形成する材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
【0110】
前記発光層6を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ-フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)等のポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ-フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレンビニレン)(RO-PPV)、シアノ-置換-ポリ(パラ-フェンビニレン)(CN-PPV)、ポリ(2-ジメチルオクチルシリル-パラ-フェニレンビニレン)(DMOS-PPV)、ポリ(2-メトキシ,5-(2’-エチルヘキソキシ)-パラ-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)等のポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)等のポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン-アルト-ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω-ビス[N,N’-ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]-ポリ[9,9-ビス(2-エチルヘキシル)フルオレン-2,7-ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレニル-オルト-コ(アントラセン-9,10-ジイル)等のポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ-フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレン)(RO-PPP)等のポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)等のポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)等のポリシラン系化合物;更には特開2011-184430号、特開2012-151148号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
【0111】
前記発光層6を形成する低分子材料としては、後述するホストとして機能する金属錯体、及び、リン光発光材料、熱活性化遅延蛍光材料の他、8-ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)、トリス(4-メチル-8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq3)、8-ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq2)、(1,10-フェナントロリン)-トリス-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-ブタン-1,3-ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)3(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィンプラチナム(II)等の各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)等のベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッド等のナフタレン系化合物、フェナントレン等のフェナントレン系化合物、クリセン、6-ニトロクリセン等のクリセン系化合物、ペリレン、N,N’-ビス(2,5-ジ-t-ブチルフェニル)-3,4,9,10-ペリレン-ジ-カルボキシイミド(BPPC)等のペリレン系化合物、コロネン等のコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセン等のアントラセン系化合物、ピレン等のピレン系化合物、4-(ジ-シアノメチレン)-2-メチル-6-(パラ-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)等のピラン系化合物、アクリジン等のアクリジン系化合物、スチルベン等のスチルベン系化合物、4,4’-ビス[9-ジカルバゾリル]-2,2’-ビフェニル(CBP)、4、4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-1,1’-ビフェニル(BCzVBi)等のカルバゾール系化合物、2,5-ジベンゾオキサゾールチオフェン等のチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾール等のベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系化合物、2,2’-(パラ-フェニレンジビニレン)-ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミド等のナフタルイミド系化合物、クマリン等のクマリン系化合物、ペリノン等のペリノン系化合物、オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5-ペンタフェニル-1,3-シクロペンタジエン(PPCP)等のシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッド等のキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン等のピリジン系化合物、2,2’,7,7’-テトラフェニル-9,9’-スピロビフルオレン等のスピロ化合物、フタロシアニン(H2Pc)、銅フタロシアニン等の金属または無金属のフタロシアニン系化合物、さらには特開2009-155325号公報および特許第5660371号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
また、量子ドットやペロブスカイト材料も発光層6として用いることができる。
【0112】
前記発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましい。なお、発光層6の平均厚さは、触針式段差計により測定してもよいし、水晶振動子膜厚計により発光層6の成膜時に測定してもよい。
【0113】
前記正孔輸送層7の材料としては、正孔輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン-アリールアミン共重合体、フルオレン-ビチオフェン共重合体、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
また、これらの化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0114】
前記p型の低分子材料としては、1,1-ビス(4-ジ-パラ-トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’-ビス(4-ジ-パラ-トリルアミノフェニル)-4-フェニル-シクロヘキサン等のアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4”-トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’-テトラフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD1)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-メトキシフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD3)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、TPTE等のアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’-テトラフェニル-パラ-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(パラ-トリル)-パラ-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(メタ-トリル)-メタ-フェニレンジアミン(PDA)等のフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N-イソプロピルカルバゾール、N-フェニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、スチルベン、4-ジ-パラ-トリルアミノスチルベン等のスチルベン系化合物、OxZ等のオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、4,4’,4”-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)等のトリフェニルメタン系化合物、1-フェニル-3-(パラ-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾール等のトリアゾール系化合物、イミダゾール等のイミダゾール系化合物、1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ジ(4-ジメチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、2,7-ビス(2-ヒドロキシ-3-(2-クロロフェニルカルバモイル)-1-ナフチルアゾ)フルオレノン等のフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4-ジチオケト-3,6-ジフェニル-ピロロ-(3,4-c)ピロロピロール等のピロール系化合物、フルオレン等のフルオレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン等のポルフィリン系化合物、キナクリドン等のキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t-ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニン等の金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニン等の金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン等のベンジジン系化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、α-NPD、TPTE等のアリールアミン系化合物が好ましい。
【0115】
本発明の有機EL素子が独立した層として正孔輸送層7を有する場合、正孔輸送層7の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、40~100nmであることが更に好ましい。正孔輸送層7の平均厚さは、低分子化合物の場合は、水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は、接触式段差計により測定することができる。
【0116】
前記正孔注入層8としては、特に制限されないが、酸化バナジウム(V2O5)、酸化モリブテン(MoO3)、酸化ルテニウム(RuO2)等金属酸化物の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とすることが好ましい。正孔注入層8が酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とする場合、正孔注入層8が陽極9から正孔を注入して発光層6又は正孔輸送層7へ輸送する正孔注入層8としての機能がより優れたものとなる。また、酸化バナジウム又は酸化モリブテンは、それ自体の正孔輸送性が高いため、陽極9から発光層6又は正孔輸送層7への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止できる。正孔注入層8は、酸化バナジウム及び/又は酸化モリブテンからなるものであることがより好ましい。
【0117】
また、前記正孔注入層8として、正孔注入が促進可能なアクセプター材料である、1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノ-キノジメタン(F4-TCNQ)、ヘキサフルオロテトラシアノナフトキノジメタン(F6-TNAP)等も用いることができる。
【0118】
前記正孔注入層8の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましく、より好ましくは5~50nmである。なお、正孔注入層8の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0119】
本発明の有機EL素子において、全ての層を形成する方法は、特に制限されず、気相成膜法であるプラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射法、そして液相成膜法である電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、ゾル・ゲル法、MOD法、スプレー熱分解法、微粒子分散液を用いたドクターブレード法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーンプリンティング法等の印刷技術等を用いることができ、材料に応じた適切な方法を選択して用いることができる。
これらの方法は各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作製方法が異なっていてもよい。
【0120】
本発明の有機EL素子は、発光層6の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。このため、本発明の有機EL素子は、表示装置や照明装置に好適に用いることができるものである。
【0121】
<表示装置>
本発明の表示装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。本発明の表示装置は、上述した駆動安定性に優れた有機EL素子を具えるため、駆動安定性に優れる。本発明の表示装置は、上述した有機エレクトロルミネッセンス素子の他に、表示装置に一般に用いられる他の部品を具えることができる。
【0122】
<照明装置>
本発明の照明装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。本発明の照明装置は、上述した駆動安定性に優れた有機EL素子を具えるため、駆動安定性に優れる。本発明の照明装置は、上述した有機エレクトロルミネッセンス素子の他に、照明装置に一般に用いられる他の部品を具えることができる。
【実施例】
【0123】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0124】
<数平均分子量、重量平均分子量の測定方法>
重合体の数平均分子量、重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;THF)によって、測定した。測定装置及び測定条件は、以下の通りである。
GPC装置本体: 東ソー社製、カラムオーブンはCO-8020、カラムポンプはDP-8020、検出器はShodex R1-101である。
カラム: Shodex KF803L×2
溶媒: THF
流量: 1ml/min
温度: 40℃
SD(スタンダート): ポリスチレン、Shodex製、66000、28500、11300、6900、4750、2960、1700、1300の8点
【0125】
<NMRの測定方法>
JEOL社のAL400を用いた。なお、分光計はAL-Series分光計であり、プローブはTH5ATFG2プローブである。また、溶媒は、CDCl3である。
【0126】
<ホウ素含有重合体1の合成>
500mL反応器に蒸留水(25mL)、濃硫酸(25mL)、4-ブロモ-2,6-ジメチルアニリン(下記式(16-1)、25g、0.125mol、1.0eq.)を順次加え、氷冷下5℃に冷却した。この懸濁液に、蒸留水(25mL)で溶解させた亜硝酸ナトリウム(8.62g、0.125mol、1.0eq.)を内温が10℃を超えないようにゆっくり滴下し、同温で1.5時間撹拌した。この懸濁液に、蒸留水(63mL)で溶解させたヨウ化カリウム(62.3g、0.375mol、3.0eq.)を滴下し、これを発泡に注意しながらゆっくり80℃に昇温し、同温で2時間加熱撹拌した。放冷後、この懸濁液を、ヘキサン(100mL×2)で抽出し、有機層を合わせ、市水、飽和食塩水で順次洗浄、乾燥、濃縮し、無色の液体(32.1g)を得た。これを、カラム精製(SiO
2=300g、ヘプタンのみ)し、無色の粘稠な液体(27.8g)を得た。これを、ヘキサン(約150mL)に加え、-30℃に冷却し、析出した固体をトリチュレートし、-30℃に冷却したヘキサンで洗浄、高真空下乾燥を行い、無色の固体である下記式(16-2)で表わされる化合物(24.7g、79.4mmol、63%)を得た。反応スキームを以下に示す。
【化19】
【0127】
500mLの反応器に、上記式(16-2)で表わされる化合物(24.7g、79.4mmol、3.0eq.)、ジエチルエーテル(Et
2O、250mL)を加え、-78℃に冷却した。この懸濁液に、n-BuLi(1.64mol/Lのヘキサン溶液)(48.4mL、79.4mmol、3.0eq.)を約30分かけて滴下し、滴下後、同温で2.5時間撹拌し、得られた白色懸濁液に、BF
3・OEt
2(3.32mL、11.1mmol、1.0eq.)をゆっくり滴下し、冷却バスを付けたまま室温まで昇温しながら18時間撹拌した。この懸濁液に、市水(100mL)を加えた後、ジエチルエーテルを濃縮除去し、残渣を酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機層を合わせて市水、飽和食塩水で順次洗浄、乾燥、濃縮し、無色の粉末(10.9g)を得た。これを、加熱エタノールにて再結晶を行い、無色の結晶である下記式(16-3)で表わされる化合物(3.96g、7.03mmol、26%)を得た。反応スキームを以下に示す。
【化20】
【0128】
300mLの反応器に上記式(16-3)で表わされる化合物(3.96g、7.03mmol、1.0eq.)、4-ピリジンボロン酸(1.03g、8.44mmol、1.2eq.)、Pd(Ph
3P)
4(0.24g、0.211mmol、0.03eq.)、炭酸ナトリウム(2.24g、21.1mmol、3.0eq.)、トルエン(40mL)、蒸留水(40mL)、エタノール(20mL)を加えた。得られた懸濁液を、アルゴンバブリングしながら10分間撹拌後、バス温95℃に昇温し、同温で18時間加熱撹拌した。得られた黄色溶液に、市水(100mL)、トルエン(100mL)を加え2層に分けた。水層を市水、飽和食塩水で順次洗浄、乾燥、濃縮し、無色の固体(4.67g)を得た。これをカラム精製(SiO
2=120g、ヘプタン/トルエン=3/1→2/1)し、無色の固体(1.81g)を得た。これを、さらに分取GPCにて精製を行い、無色の固体(1.26g)を得た。これを、エタノール/ヘキサンによって再結晶を行い、無色の固体である下記式(16-4)で表わされる化合物(0.69g、1.23mmol、17%、HPLC純度95.7%)を得た。反応スキームを以下に示す。
【化21】
【0129】
アルゴン雰囲気下、50mLの耐圧試験管に、上記式(16-4)で表わされる化合物(0.5g、0.89mmol、1.0eq.)、下記式(16-5)で表わされる化合物(0.57g、0.89mmol、1.0eq.)、Pd(Ph
3P)
4(100mg、0.089mmol、0.05eq.)、炭酸ナトリウム(0.472g、4.45mmol、5.0eq.)、Aliquat(登録商標)336(0.2g)、脱気トルエン(10mL)、脱気蒸留水(10mL)を加えた。この懸濁液を約15分間アルゴンバブリングした後、バス温100℃に昇温して、24時間加熱還流した。得られた黒色懸濁液に、ヨードベンゼン(0.181g、0.89mmol、1.0eq.)を加え、同温で8時間撹拌後、フェニルボロン酸(0.217g、1.78mmol、2.0eq.)を加え、同温で18時間撹拌した。得られた黒褐色懸濁液の有機層をセライト濾過し、濾液を濃縮し、褐色の粘稠な液体(2.5g)を得た。これをカラム精製(上層:SiO
2=40g、中層:NH-SiO
2=40g、下層:中性アルミナ=15g、クロロホルム/メタノール=50/1→30/1)し、薄い茶色の粉末(0.98g)を得た。これにヘプタン(10mL)、エタノール(10mL)を加え、加熱分散洗浄、放冷後、固体を濾過し、エタノールにてかけ洗い、高真空下乾燥を行い、薄黄色の固体(0.61g)を得た。生成物を
1H-NMRで分析したところ、下記式(16-6)で表わされる繰り返し単位の構造を有することが分かった。NMRのスペクトルを
図2に示す。また、生成物をGPC(THF)にて分析したところ、数平均分子量が13000であることが分かった。反応スキームを以下に示す。
【化22】
【0130】
<ホウ素含有重合体2の合成>
50mLの反応器に、上記式(16-3)で表わされる化合物(1.0g、1.77mmol、1.0eq.)、4-ピリジントリメチルスズ(0.344g、1.42mmol、0.8eq.)、Pd(Ph
3P)
4(62mg、0.0533mmol、0.03eq.)、トルエン(20mL)を加えた。この黄色溶液を、バス温80℃で18時間加熱撹拌した。この黄色溶液を濃縮し、褐色の固体A(1.22g)を得た。
また、500mLの反応器に、上記式(16-3)で表わされる化合物(14g、24.8mmol、1.0eq.)、4-ピリジントリメチルスズ(4.8g、19.8mmol、0.8eq.)、Pd(Ph
3P)
4(0.573g、0.496mmol、0.02eq.)、トルエン(210mL)を加えた。この黄色溶液を、バス温80℃で18時間加熱撹拌した。この黄色溶液を濃縮し、褐色の固体B(20.5g)を得た。
得られた褐色の固体Aと褐色の固体Bとを合わせてカラム精製(NH-SiO
2=400g、ヘプタン/トルエン=1/1→1/2→トルエンのみ)し、無色の固体(6.1g)を得た。これを小量のメタノールにて超音波洗浄を行い、無色の固体である下記式(16-4)で表わされる化合物(5.6g、9.98mmol、47%)を得た。反応スキームを以下に示す。
【化23】
【0131】
100mLの反応器に、3,6-ジブロモ-9-[4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル]-9H-カルバゾール(下記式(17-1)、3.72g、7.03mmol、1.0eq.)、無水THF(40mL)を加え、-78℃に冷却した。この溶液に、n-BuLi(2.76mol/Lのヘキサン溶液)(5.6mL、15.5mmol、2.2eq.)を約5分かけて滴下し、滴下後同温で0.5時間撹拌し、この黄色溶液に、無水THF(5mL)で希釈したイソプロポキシピナコールボラン(3.14g、16.9mmol、1.0eq.)を加えた。冷却バスを付けたまま室温まで昇温しながら18時間撹拌した。この懸濁液を市水(100mL)に加えた後、酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、有機層を合わせて市水、飽和食塩水で順次洗浄、乾燥、濃縮し、茶色の粉末(4.4g)を得た。これをカラム精製(SiO
2=120g、ヘプタン/酢酸エチル=10/1→7/1)し、薄黄色の固体(2.95g)を得た。これをエタノールにて分散洗浄を行い、無色の固体である下記式(17-2)で表わされる化合物(2.5g、4.01mmol、57%)を得た。反応スキームを以下に示す。
【化24】
【0132】
アルゴン雰囲気下、100mLの反応器に、上記式(16-4)で表わされる化合物(1.13g、2.00mmol、1.0eq.)、上記式(17-2)で表わされる化合物(1.25g、2.00mmol、1.0eq.)、Pd(Ph
3P)
4(116mg、0.10mmol、0.05eq.)、Na
2CO
3(1.06g、10.0mmol、5.0eq.)、Aliquat(登録商標)336(0.2g)、脱気トルエン(25mL)、脱気蒸留水(25mL)を加えた。この懸濁液を約15分間アルゴンバブリングした後、バス温80℃(内温72℃)に昇温して、18時間加熱撹拌した。この懸濁液に、ヨードベンゼン(0.41g、2.0mmol、1.0eq.)を加え、同温で3時間撹拌後、フェニルボロン酸(0.49g、4.00mmol、2.0eq.)を加え、同温で6時間撹拌した。放冷後、この黄褐色懸濁液を桐山濾紙にて濾過し、トルエン(50mL)にて濾床をかけ洗い、濾液を2層に分けた。有機層を市水(20mL×2)、飽和食塩水(20mL)にて順次洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムにて乾燥、濃縮し、黄褐色の粉末(1.80g)を得た。これをカラム精製(NH-SiO
2=50g、クロロホルムのみ→クロロホルム/メタノール=20/1)し、黄色の粉末(1.01g)を得た。これをエタノール、ヘプタンで順次分散洗浄を行った後、高真空下60℃で14時間乾燥を行い、黄色粉末(0.75g)を得た。生成物を
1H-NMRで分析したところ、下記式(17-3)で表わされる繰り返し単位の構造を有することが分かった。NMRのスペクトルを
図3に示す。また、生成物をGPC(THF)にて分析したところ、数平均分子量が2500、重量平均分子量が5400であることが分かった。反応スキームを以下に示す。
【化25】
【0133】
<有機EL素子1の製造>
以下に示す方法により、有機EL素子1を製造した。
【0134】
[工程1]
基板2として、ITOからなる厚み150nmのパターニングされた電極(陰極3)が形成されている平均厚さ0.7mmの市販されている透明ガラス基板を用意した。そして、陰極3を有する基板2を、アセトン中、イソプロパノール中で超音波洗浄し、その後、UVオゾン洗浄を20分間行った。
【0135】
[工程2]
前記[工程1]で作製したITO電極(陰極3)上に、亜鉛金属をターゲットとし、反応ガスとして酸素をキャリアガスとしてアルゴンを用いたスパッタ法により、平均厚さ10nmの酸化亜鉛(ZnO)層を形成した。その後、イソプロパノール、アセトンで洗浄を行った。さらに、本基板をスピンコーターにセットし、1質量%の酢酸マグネシウム溶液(水/エタノール=1/3)を毎分1600回転で60秒スピンコートし、大気下でホットプレートにより、400℃で、1時間アニールを行った。続いて本基板を水で洗浄した後、大気下でホットプレートにより、250℃で、30分間乾燥させ、金属酸化物層4を形成した。
【0136】
[工程3]
次に、以下に示す方法により、電子注入・輸送層5を形成した。
なお、実施例1、比較例1、比較例2、比較例3は、電子注入・輸送層5が異なるのみで、その他の層は、同様である。以下に、実施例1、比較例1、比較例2、比較例3における、電子注入・輸送層5の形成方法を示す。
【0137】
(実施例1)
上記のようにして合成した、式(17-3)で表わされる繰り返し単位の構造を有するホウ素含有重合体2(1質量%)と、上記式(9-1)で表わされる1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN、2質量%)をシクロペンタノンに溶解し、混合溶液を得た。次に、前記[工程2]で作製した陰極3および金属酸化物層4の形成されている基板2をスピンコーターに設置した。そして、混合溶液を金属酸化物層4上に滴下しながら、基板2を毎分3000回転で30秒間回転させて塗膜を形成した。その後、ホットプレートを用いて窒素雰囲気下で120℃、2時間のアニール処理を施し、電子注入・輸送層5を形成した。得られた電子注入・輸送層5の平均厚さは30nmであった。
【0138】
(比較例1)
下記式(18):
【化26】
で表わされる繰り返し単位の構造を有する重合体(ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(6,6’-{2,2’-ビピリジン})]、Luminescence Technology Corp.製、LT-A1023 PFO-BPy、重量平均分子量>10000)(1質量%)と、上記式(9-1)で表わされる1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN、2質量%)をシクロペンタノンに溶解し、混合溶液を得た。次に、前記[工程2]で作製した陰極3および金属酸化物層4の形成されている基板2をスピンコーターに設置した。そして、混合溶液を金属酸化物層4上に滴下しながら、基板2を毎分3000回転で30秒間回転させて塗膜を形成した。その後、ホットプレートを用いて窒素雰囲気下で120℃、2時間のアニール処理を施し、電子注入・輸送層5を形成した。得られた電子注入・輸送層5の平均厚さは30nmであった。
【0139】
(比較例2)
電子注入層として広く用いられている、下記式(19):
【化27】
で表わされるポリエチレンイミン(PEI、株式会社日本触媒製、重量平均分子量=約70000)をエタノールに溶解した。次に、前記[工程2]で作製した陰極3および金属酸化物層4の形成されている基板2をスピンコーターに設置した。そして、溶液を金属酸化物層4上に滴下しながら、基板2を毎分3000回転で30秒間回転させて塗膜を形成した。その後、ホットプレートを用いて窒素雰囲気下で120℃、2時間のアニール処理を施し、電子注入・輸送層5を形成した。得られた電子注入・輸送層5の平均厚さは10nmであった。
【0140】
(比較例3)
上記のようにして合成した、式(16-6)で表わされる繰り返し単位の構造を有するホウ素含有重合体1(1質量%)と、上記式(9-1)で表わされる1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN、2質量%)をシクロペンタノンに溶解し、混合溶液を得た。次に、前記[工程2]で作製した陰極3および金属酸化物層4の形成されている基板2をスピンコーターに設置した。そして、混合溶液を金属酸化物層4上に滴下しながら、基板2を毎分3000回転で30秒間回転させて塗膜を形成した。その後、ホットプレートを用いて窒素雰囲気下で120℃、2時間のアニール処理を施し、電子注入・輸送層5を形成した。得られた電子注入・輸送層5の平均厚さは30nmであった。
【0141】
[工程4]
次に、電子注入・輸送層5までの各層が形成された基板2を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
また、下記式(20)で示されるビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(Zn(BTZ)
2)と、
下記式(21)で示されるトリス[1-フェニルイソキノリン]イリジウム(III)(Ir(piq)
3)と、
下記式(22)で示されるN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)と、
下記式(23)で示されるN4,N4’-ビス(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)-N4,N4’-ジフェニルビフェニル-4,4’-ジアミン(DBTPB)と、
Alとを、それぞれアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。
【化28】
【0142】
そして、真空蒸着装置内を約1×10-5Paの圧力となるまで減圧して、Zn(BTZ)2をホスト、Ir(piq)3をドーパントとして20nm共蒸着し、発光層6を成膜した。この時、ドープ濃度は、Ir(piq)3が発光層6全体に対して6質量%となるようにした。
次に、発光層6まで形成した基板2上に、DBTPBとα-NPDをそれぞれ10nmと30nmをそれぞれ蒸着することにより、正孔輸送層7を成膜した。
さらに、三酸化モリブデンMoO3を真空一貫で蒸着することにより成膜し、膜厚が10nmの正孔注入層8を形成した。
【0143】
[工程5]
次に、正孔注入層8まで形成した基板2上に、アルミニウム(陽極9)を膜厚が100nmとなるように蒸着して、有機EL素子を得た。
【0144】
(有機EL素子の発光特性測定)
全ての素子に対して、ケースレー社製の「2400型ソースメーター」を用いて電圧を印加し、コニカミノルタ社製の「LS-100」を用いて輝度を測定した。その後、初期輝度を1000cd/m2として連続駆動し、経過時間に対する輝度の変化を調べた。
【0145】
(逆構造有機EL素子におけるホウ素含有重合体からなる層の重要性)
図4に実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3の輝度-電圧特性を示す。
電子注入・輸送層5がホウ素含有重合体から形成された実施例1及び比較例3は、低い電圧で駆動できているのに対し、比較例1の駆動電圧は高い。このことから、電子注入・輸送層5がホウ素含有重合体から形成された素子では、低い電圧で駆動できるといえる。
また、実施例1及び比較例3の駆動電圧は、電子注入性に優れたポリエチレンイミンを電子注入・輸送層5に用いた比較例2よりも優れている。このことからも、ホウ素含有重合体が、電子注入・輸送に極めて有効であるといえる。
【0146】
図5に各素子を初期輝度1000cd/m
2として連続駆動し、経過時間に対する輝度の変化をプロットした結果を示す。なお、比較例1は駆動すると瞬時に輝度が減衰したため、
図5にデータを記載していない。この原因は発光効率が極めて低いためであると考えられる。
図5に示す通り、ポリエチレンイミンを電子注入・輸送層5に用いた比較例2に比べ、電子注入・輸送層5がホウ素含有重合体から形成された実施例1及び比較例3の駆動安定性は大幅に高い。
更に、実施例1と比較例3を比較した場合、比較例3よりも実施例1の方が駆動安定性に優れていることが分かる。輝度が850cd/m
2まで減衰する時間で比較しても、比較例3は500時間強であるのに対し、実施例1は1000時間以上である。
これらの結果から、
図1に示す逆構造有機EL素子における電子注入・輸送層5に用いる材料として、カルバゾール基を有するホウ素含有重合体が好適であることが分かる。
【符号の説明】
【0147】
1:有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子
2:基板
3:陰極
4:金属酸化物層
5:電子注入・輸送層
6:発光層
7:正孔輸送層
8:正孔注入層
9:陽極