(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】搬送トレー
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240327BHJP
H01L 21/673 20060101ALI20240327BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20240327BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/68 U
H01L21/68 T
H01L21/304 611Z
(21)【出願番号】P 2020026979
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106458(JP,A)
【文献】特開平06-181252(JP,A)
【文献】特開2006-210378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/673
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置で使用される搬送トレーであって、
上壁と、下壁と、該上壁と該下壁とを連結する一対の側壁と、該上壁と該下壁と該一対の側壁とで形成されるトンネルとを備えた筐体と、
該筐体の該上壁に形成されインゴットを収容するインゴット収容凹部と、
該筐体の該下壁に形成されウエーハを収容するウエーハ収容部と、を備え、
該インゴット収容凹部は、2以上の大きさのインゴットに対応した同心状の収容凹部を備え、該収容凹部には2以上のインゴットの大きさに対応した梃子が配設されており、
該梃子は、該インゴット収容凹部の底面から突出
し2以上の大きさのインゴットに対応する
2以上の力点と、該インゴット収容凹部の側面から突出
し2以上の大きさのインゴットに対応する
2以上の作用点と、該
2以上の力点と該
2以上の作用点と
に接続された
共通支点とを有
し、
該インゴット収容凹部にインゴットが収容されると、該インゴット収容凹部に収容されたインゴットの自重によって該力点が作動して
、該インゴット収容凹部に収容されたインゴットの大きさに対応する該作用点によってインゴットの側面を支持する搬送トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置で使用される搬送トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等のデバイスは、Si(シリコン)やAl2O3(サファイア)等を素材としたウエーハの表面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されて形成される。また、パワーデバイス、LED等は単結晶SiC(炭化ケイ素)を素材としたウエーハの表面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されて形成される。デバイスが形成されたウエーハは、切削装置、レーザー加工装置によって分割予定ラインに加工が施されて個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話やパソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
デバイスが形成されるウエーハは、一般的に円柱形状のインゴットをワイヤーソーで薄く切断することにより生成される。切断されたウエーハの表面および裏面は、研磨することにより鏡面に仕上げられる(たとえば特許文献1参照)。しかし、インゴットをワイヤーソーで切断し、切断したウエーハの表面および裏面を研磨すると、インゴットの大部分(70~80%)が捨てられることになり不経済であるという問題がある。特に単結晶SiCインゴットにおいては、硬度が高くワイヤーソーでの切断が困難であり相当の時間を要するため生産性が悪いと共に、インゴットの単価が高く効率よくウエーハを生成することに課題を有している。
【0004】
そこで、単結晶SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を単結晶SiCインゴットの内部に位置づけて単結晶SiCインゴットにレーザー光線を照射して切断予定面に剥離層を形成し、剥離層が形成された切断予定面に沿って単結晶SiCインゴットからウエーハを剥離する技術が提案されている(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-94221号公報
【文献】特開2019-106458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に開示されているウエーハ生成装置においては、インゴット研削ユニットやレーザー照射ユニット等の各ユニット間において、インゴットおよび剥離されたウエーハを搬送トレーに載せて搬送している。しかしながら、この搬送トレーにおいては、インゴット支持部でインゴットを支持して搬送する際に、インゴットが搬送トレーに対して不安定であり、搬送トレーからインゴットが脱落するおそれがある。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、インゴットを搬送している際に、インゴットを安定して保持することができ、インゴットの脱落を防止することができる搬送トレーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために以下の搬送トレーを提供する。すなわち、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置で使用される搬送トレーであって、
上壁と、下壁と、該上壁と該下壁とを連結する一対の側壁と、該上壁と該下壁と該一対の側壁とで形成されるトンネルとを備えた筐体と、
該筐体の該上壁に形成されインゴットを収容するインゴット収容凹部と、
該筐体の該下壁に形成されウエーハを収容するウエーハ収容部と、を備え、
該インゴット収容凹部は、2以上の大きさのインゴットに対応した同心状の収容凹部を備え、該収容凹部には2以上のインゴットの大きさに対応した梃子が配設されており、
該梃子は、該インゴット収容凹部の底面から突出し2以上の大きさのインゴットに対応する2以上の力点と、該インゴット収容凹部の側面から突出し2以上の大きさのインゴットに対応する2以上の作用点と、該2以上の力点と該2以上の作用点とに接続された共通支点とを有し、
該インゴット収容凹部にインゴットが収容されると、該インゴット収容凹部に収容されたインゴットの自重によって該力点が作動して、該インゴット収容凹部に収容されたインゴットの大きさに対応する該作用点によってインゴットの側面を支持する搬送トレーを本発明は提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の搬送トレーは、
上壁と、下壁と、該上壁と該下壁とを連結する一対の側壁と、該上壁と該下壁と該一対の側壁とで形成されるトンネルとを備えた筐体と、
該筐体の該上壁に形成されインゴットを収容するインゴット収容凹部と、
該筐体の該下壁に形成されウエーハを収容するウエーハ収容部と、を備え、
該インゴット収容凹部は、2以上の大きさのインゴットに対応した同心状の収容凹部を備え、該収容凹部には2以上のインゴットの大きさに対応した梃子が配設されており、
該梃子は、該インゴット収容凹部の底面から突出し2以上の大きさのインゴットに対応する2以上の力点と、該インゴット収容凹部の側面から突出し2以上の大きさのインゴットに対応する2以上の作用点と、該2以上の力点と該2以上の作用点とに接続された共通支点とを有し、
該インゴット収容凹部にインゴットが収容されると、該インゴット収容凹部に収容されたインゴットの自重によって該力点が作動して、該インゴット収容凹部に収容されたインゴットの大きさに対応する該作用点によってインゴットの側面を支持するので、インゴットを搬送している際に、インゴットを安定して保持することができ、インゴットの脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成された搬送トレーの斜視図。
【
図3】(a)大径のインゴットがインゴット収容凹部の上方に位置づけられた状態における
図1に示す搬送トレーの断面図、(b)大径のインゴットがインゴット収容凹部に支持された状態における
図1に示す搬送トレーの断面図。
【
図4】(a)小径のインゴットがインゴット収容凹部の上方に位置づけられた状態における
図1に示す搬送トレーの断面図、(b)小径のインゴットがインゴット収容凹部に支持された状態における
図1に示す搬送トレーの断面図。
【
図6】
図1に示す搬送トレーが用いられるウエーハ生成装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された搬送トレーの好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1に全体を符号2で示す搬送トレーは、筐体4と、インゴットを収容するインゴット収容凹部6と、ウエーハを収容するウエーハ収容部8とを備える。
【0014】
筐体4は、矩形状の上壁10と、上壁10の下方に配置された矩形状の下壁12と、上壁10と下壁12とを連結する矩形状の一対の側壁14と、上壁10と下壁12と一対の側壁14とで形成されるトンネル16とを備える。
【0015】
図1に示すとおり、インゴット収容凹部6は、筐体4の上壁10の上面に形成されている。図示の実施形態のインゴット収容凹部6は、上壁10の上面から下方に没入した環状の第一のインゴット収容凹部6aと、第一のインゴット収容凹部6aよりも直径が小さく第一のインゴット収容凹部6aよりも更に下方に没入した円形の第二のインゴット収容凹部6bとを有する。第一のインゴット収容凹部6aと第二のインゴット収容凹部6bとは同心状に形成されている。
【0016】
第一のインゴット収容凹部6aの直径は比較的大径(たとえば直径6インチ)の円柱状インゴット18よりも若干(数mm程度)大きく、第一のインゴット収容凹部6aには比較的大径のインゴット18が収容される。第二のインゴット収容凹部6bの直径は比較的小径(たとえば直径4インチ)の円柱状インゴット20よりも若干大きく、第二のインゴット収容凹部6bには比較的小径のインゴット20が収容される。
【0017】
このように図示の実施形態のインゴット収容凹部6は、2種類の大きさのインゴット18、20に対応した同心状の第一・第二のインゴット収容凹部6a、6bを備える。なお、インゴット収容凹部6は、1種類の大きさのインゴットに対応した単一の円形収容凹部であってもよく、あるいは、3種類以上の大きさのインゴットに対応した同心状の複数の収容凹部を備えていてもよい。
【0018】
図1ないし
図3を参照して説明すると、搬送トレー2には、インゴット収容凹部6の周方向に間隔をおいて複数個(図示の実施形態では4個)の梃子22が配設されている。各梃子22は、インゴット収容凹部6の底面から突出する力点24と、インゴット収容凹部6の側面から突出する作用点26と、力点24と作用点26との間に形成された支点28とを有する。
【0019】
図3を参照することによって理解されるとおり、各梃子22は、梃子22の形状に対応して筐体4に形成された収容孔30に配置されていると共に、支点28を貫通するピン(符号省略)を介して筐体4に揺動自在に支持されている。
【0020】
図2および
図3に示すとおり、図示の実施形態の梃子22は、支点28から上方に延びる第一の部分22aと、第一の部分22aの上端からインゴット収容凹部6の径方向内側に延びる第二の部分22bと、支点28からインゴット収容凹部6の径方向内側に延びる第三の部分22cと、第三の部分22cの径方向外側端部と径方向内側端部との間において第三の部分22cから上方に延びる第四の部分22dと、第四の部分22dの上端と下端との間において第四の部分22dから径方向内側に延びる第五の部分22eと、第三の部分22cの径方向内側端部から上方に延びる第六の部分22fとを有する。
【0021】
図示の実施形態の梃子22の力点24は、第一のインゴット収容凹部6aの底面から突出する第四の部分22dの上端によって構成される第一の力点24aと、第二のインゴット収容凹部6bの底面から突出する第六の部分22fの上端によって構成される第二の力点24bとを備える。図示の実施形態の梃子22の作用点26は、第一のインゴット収容凹部6aの側面から突出する(突出可能な)第二の部分22bの径方向内側端部によって構成される第一の作用点26aと、第二のインゴット収容凹部6bの側面から突出する(突出可能な)第五の部分22eの径方向内側端部によって構成される第二の作用点26bとを備える。
【0022】
梃子22は、作用点26によってインゴットの側面を支持する支持位置と、インゴットの支持を解除する解除位置との間で支点28を中心として揺動自在である。
図3(a)に示すとおり、解除位置では、第一の力点24aが第一のインゴット収容凹部6aの底面から突出すると共に、第二の力点24bが第二のインゴット収容凹部6bの底面から突出している一方、第一の作用点26aは第一のインゴット収容凹部6aの側面から突出しておらず、第二の作用点26bも第二のインゴット収容凹部6bの側面から突出していない。
【0023】
図3(a)に示すとおり、図示の実施形態の搬送トレー2には、インゴット18、20が第一・第二のインゴット収容凹部6a、6bに収容されていない場合に、梃子22を解除位置に位置づける位置づけ手段32が筐体4に付設されている。図示の実施形態の位置づけ手段32は、筐体4に形成された径方向に延びる孔34に配置されたコイルばねから構成されており、コイルばねの片側端部が梃子22の第一の部分22aに連結され、コイルばねの他側端部が孔34の側面に連結されている。
【0024】
図3を参照して説明を続けると、第一のインゴット収容凹部6aに大径のインゴット18が収容されると、
図3(b)に示すとおり、梃子22の第一の力点24aがインゴット18に押し付けられ下方に移動する。すなわち、インゴット18の自重によって第一の力点24aが作動する。そうすると、位置づけ手段32の力に打ち勝って梃子22が支点28を中心として支持位置に向かって揺動し、梃子22の第一の作用点26aが第一のインゴット収容凹部6aの側面から突出してインゴット18の側面を支持する。したがって、搬送トレー2においては、インゴット18を搬送している際に、インゴット18を安定して保持することができ、インゴット18の脱落を防止することができる。なお、梃子22の数量は任意であるが、インゴット18を安定して保持する観点から3個以上であるのが好ましい。
【0025】
図4(a)および
図4(b)を参照して説明すると、第二のインゴット収容凹部6bに小径のインゴット20が収容されると、
図4(b)に示すとおり、インゴット20の自重によって第二の力点24bが作動(下方に移動)する。そうすると、位置づけ手段32の力に打ち勝って梃子22が支点28を中心として支持位置に向かって揺動し、梃子22の第二の作用点26bが第二のインゴット収容凹部6bの側面から突出してインゴット20の側面を支持する。このように、搬送トレー2は、インゴット18、20の大きさに対応した梃子22が配設されており、インゴット18、20を安定して保持することができる。
【0026】
他方、第一・第二のインゴット収容凹部6a、6bからインゴット18、20が除去されると、インゴット18、20の自重が第一・第二の力点24a、24bに作用しなくなるため、位置づけ手段32によって梃子22が支点28を中心として解除位置に向かって揺動する。
【0027】
なお、解除位置に向かって梃子22に対して力を付与する位置づけ手段32は、図示の実施形態ではコイルばねから構成されているが、インゴット18、20が第一・第二のインゴット収容凹部6a、6bに収容された際に梃子22の揺動を許容し、第一・第二の作用点26a、26bがインゴット18、20の側面を支持することができる程度に、解除位置に向かって梃子22に対して力を付与する形態であればよく、コイルばねには限定されない。
【0028】
たとえば、インゴット18、20が第一・第二のインゴット収容凹部6a、6bに収容されていないときに梃子22が解除位置に位置するように、梃子22の重心位置と支点28の位置とが適宜調整されている場合には、位置づけ手段32が筐体4に付設されていなくてもよい。
【0029】
上述の梃子22は、インゴット18、20の双方の大きさに対応しているが、
図5に示すとおり、インゴット18に対応した複数個の第一の梃子36aと、インゴット20の大きさに対応した複数個の第二の梃子36bとがそれぞれ周方向に間隔をおいて筐体4に配設されていてもよい。
【0030】
そして、図示していないが、第一のインゴット収容凹部6aにインゴット18が収容されると、インゴット18の自重によって第一の力点38aが作動(第一の支点40aを中心として第一の梃子36aが揺動)して第一の作用点42aがインゴット18の側面を支持し、かつ、第二のインゴット収容凹部6bにインゴット20が収容されると、インゴット20の自重によって第二の力点38bが作動(第二の支点40bを中心として第二の梃子36bが揺動)して第二の作用点42bがインゴット20の側面を支持するようになっていてもよい。
【0031】
また、インゴット収容凹部6が1種類の大きさのインゴットに対応した単一の円形収容凹部である場合には、1種類の大きさのインゴットに対応した梃子が配設され、インゴット収容凹部6が3種類以上の大きさのインゴットに対応した同心状の収容凹部を備えている場合には、3種類以上の大きさのインゴットに対応した梃子が配設される。
【0032】
図1に示すとおり、ウエーハ収容部8は筐体4の下壁12の上面に形成されている。図示の実施形態のウエーハ収容部8は、下壁12の上面から下方に没入した環状の第一のウエーハ収容部8aと、第一のウエーハ収容部8aよりも直径が小さく第一のウエーハ収容部8aよりも更に下方に没入した円形の第二のウエーハ収容部8bとを有する。第一のウエーハ収容部8aと第二のウエーハ収容部8bとは同心状に形成されている。
【0033】
第一のウエーハ収容部8aの直径は比較的大径(たとえば直径6インチ)の円板状ウエーハよりも若干大きく、第一のウエーハ収容部8aには比較的大径のウエーハが収容される。第二のウエーハ収容部8bの直径は比較的小径(たとえば直径4インチ)の円板状ウエーハよりも若干大きく、第二のウエーハ収容部8bには比較的小径のウエーハが収容される。
【0034】
このように図示の実施形態のウエーハ収容部8は、2種類の大きさのウエーハに対応した同心状の第一・第二のウエーハ収容部8a、8bを備える。なお、ウエーハ収容部8は、1種類の大きさのウエーハに対応した単一の円形収容部であってもよく、あるいは、3種類以上の大きさのウエーハに対応した同心状の複数の収容部を備えていてもよい。
【0035】
図6および
図7には、上述したとおりの搬送トレー2が使用されるウエーハ生成装置50が示されている。
【0036】
インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置50は、インゴット研削ユニット52と、レーザー照射ユニット54と、ウエーハ剥離ユニット56と、上記搬送トレー2に支持されたインゴットをインゴット研削ユニット52とレーザー照射ユニット54とウエーハ剥離ユニット56との間で搬送するベルトコンベアーユニット58と、搬送トレーストッカー60と、インゴットから剥離されたウエーハを収容するカセット62が複数収容されたカセットストッカー64と、搬送トレーストッカー60内の搬送トレー2をベルトコンベアーユニット58まで搬送すると共に、搬送トレー2のウエーハ収容部8に支持されたウエーハをカセットストッカー64内のカセット62に収容する収容手段66とを備える。
【0037】
図7に示すとおり、インゴット研削ユニット52は、インゴットを吸引保持する回転可能な保持テーブル68と、保持テーブル68に吸引保持されたインゴットの上面を研削して平坦化する研削手段70とを含む。研削手段70は、研削砥石(図示していない。)を有する回転可能な研削ホイール72を有する。そして、インゴット研削ユニット52は、インゴットを吸引保持した保持テーブル68を回転させると共に研削ホイール72を回転させながら、研削砥石をインゴットの上面に接触させることにより、インゴットの上面を研削して平坦化する。
【0038】
レーザー照射ユニット54は、インゴットを吸引保持しX軸方向に移動可能かつ回転可能な保持テーブル74と、保持テーブル74に吸引保持されたインゴットにレーザー光線を照射するレーザー照射手段76とを含む。レーザー照射手段76は、レーザー発振器(図示していない。)が発振したパルスレーザー光線を集光してインゴットに照射すると共にY軸方向に移動可能な集光器78を有する。
【0039】
レーザー照射ユニット54は、インゴットを吸引保持した保持テーブル74をX軸方向に移動させながら、あるいは集光器78をY軸方向に移動させながら、インゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置づけてレーザー光線をインゴットに照射することにより、インゴットの内部に強度が低下した剥離層を形成する。
【0040】
ウエーハ剥離ユニット56は、インゴットを吸引保持しX軸方向に移動可能な保持テーブル80と、保持テーブル80と協働して液体収容空間を形成する液槽体82と、保持テーブル80に吸引保持されたインゴットに超音波振動を付与すると共にインゴットから剥離したウエーハを吸引保持する超音波振動生成部材84とを含む。
【0041】
ウエーハ剥離ユニット56は、インゴットを吸引保持した保持テーブル80と液槽体82とによって形成した液体収容空間に液体を収容した後、超音波振動生成部材84を作動させてインゴットに超音波振動を付与することにより、剥離層を起点としてインゴットからウエーハを剥離する。
【0042】
ベルトコンベアーユニット58は、Y1方向に搬送トレー2を搬送する往路ベルトコンベアー86と、Y2方向(Y1の反対方向)に搬送トレー2を搬送する復路ベルトコンベアー88と、往路ベルトコンベアー86の終点から復路ベルトコンベアー88の始点に搬送トレー2を搬送すると共に往路ベルトコンベアー86で搬送されている搬送トレー2をウエーハ剥離ユニット56に対面する位置で停止させる第一の搬送手段90と、復路ベルトコンベアー88の終点から往路ベルトコンベアー86の始点に搬送トレー2を搬送する第二の搬送手段92とを含む。
【0043】
また、ベルトコンベアーユニット58は、往路ベルトコンベアー86で搬送されている搬送トレー2をインゴット研削ユニット52に対面する位置で停止させる昇降可能な第一の搬送トレーストッパー94と、往路ベルトコンベアー86で搬送されている搬送トレー2をレーザー照射ユニット54に対面する位置で停止させる昇降可能な第二の搬送トレーストッパー96とを含む。
【0044】
さらに、ベルトコンベアーユニット58は、第一の搬送トレーストッパー94で停止された搬送トレー2とインゴット研削ユニット52との間でインゴットを移し替える第一の移し替え手段98と、第二の搬送トレーストッパー96で停止された搬送トレー2とレーザー照射ユニット54との間でインゴットを移し替える第二の移し替え手段100と、第一の搬送手段90で停止された搬送トレー2とウエーハ剥離ユニット56との間でインゴットを移し替えると共にインゴットから剥離されたウエーハをウエーハ剥離ユニット56から搬送トレー2に移し替える第三の移し替え手段102とを含む。
【0045】
共通の構成でよい第一・第二・第三の移し替え手段98、100、102のそれぞれは、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能な多関節アーム104と、多関節アーム104の先端に上下反転自在に装着された吸着片106とを含む。吸着片106の片面には、吸引手段(図示していない。)に接続された複数の吸引孔(図示していない。)が形成されている。
【0046】
図6を参照して説明すると、図示の実施形態の搬送トレーストッカー60は、X軸方向に貫通した4個の収容部108を有する。搬送トレーストッカー60においては、
図6においてX軸方向手前側から収容部108に搬送トレー2を収容可能であり、かつ
図6においてX軸方向奥側から収容部108内の搬送トレー2を搬出可能となっている。
【0047】
図6に示すとおり、図示の実施形態のカセットストッカー64は、Y軸方向に貫通した16個の収容部110を有し、各収容部110には、インゴットから剥離されたウエーハを収容するカセット62が収容される。カセットストッカー64においては、
図6においてY軸方向手前側から収容部110にカセット62を収容可能であり、かつ
図6においてY軸方向奥側から収容部110内のカセット62にウエーハを収容可能となっている。
【0048】
図7に示すとおり、収容手段66は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能な多関節アーム112と、多関節アーム112の先端に上下反転自在に装着された吸着片114とを含む。吸着片114の片面には、吸引手段(図示していない。)に接続された複数の吸引孔(図示していない。)が形成されている。
【0049】
ウエーハ生成装置50によってインゴットからウエーハを生成する際は、
図6に示すとおり、まず、1個以上のインゴット(図示の実施形態では4個の大径のインゴット18)を準備する。次いで、ウエーハ生成装置50においてインゴット18を搬送している際に搬送トレー2からインゴット18が脱落しないように、それぞれのインゴット18を搬送トレー2の第一のインゴット収容凹部6aに収容し、インゴット18の側面を第一の作用点26aによって支持させる。次いで、インゴット18を支持した搬送トレー2を搬送トレーストッカー60の収容部108に収容する。
【0050】
次いで、搬送トレーストッカー60からレーザー照射ユニット54にインゴット18を搬送する第一の搬送工程を実施する。通常、インゴットは、後述の剥離層形成工程におけるレーザー光線の入射を妨げない程度に端面が平坦化されているため、図示の実施形態では、第一の搬送工程において搬送トレーストッカー60からレーザー照射ユニット54にインゴット18を搬送する例を説明するが、インゴット18の端面が剥離層形成工程におけるレーザー光線の入射を妨げない程度に平坦化されていない場合には、第一の搬送工程において搬送トレーストッカー60からインゴット研削ユニット52にインゴット18を搬送してもよい。
【0051】
第一の搬送工程では、まず、収容手段66の多関節アーム112を駆動させ、吸引孔を上に向けた吸着片114を搬送トレー2のトンネル16に挿入する。次いで、トンネル16内において吸着片114を若干上昇させて搬送トレー2の上壁10の下面を吸着片114で吸引保持する。次いで、吸着片114で吸引保持した搬送トレー2を搬送トレーストッカー60から往路ベルトコンベアー86に搬送する。
【0052】
搬送トレー2を往路ベルトコンベアー86に載せた後、レーザー照射ユニット54に対面する位置まで往路ベルトコンベアー86でY1方向に搬送トレー2を搬送する。この際には、第一の搬送トレーストッパー94を下降させると共に、第二の搬送トレーストッパー96を上昇させることにより、レーザー照射ユニット54に対面する位置で搬送トレー2を停止させる。
【0053】
次いで、第二の移し替え手段100の多関節アーム104を駆動させ、搬送トレー2上のインゴット18を吸着片106で吸引保持する。次いで、吸着片106で吸引保持したインゴット18を搬送トレー2からレーザー照射ユニット54の保持テーブル74に移し替える。なお、第一のインゴット収容凹部6aからインゴット18が持ち上げられると、インゴット18の自重が第一の力点24aに作用しなくなるので、位置づけ手段32によって梃子22が支点28を中心として解除位置に向かって揺動する。
【0054】
第一の搬送工程を実施した後、保持テーブル74でインゴット18を吸引保持すると共に、保持テーブル74で吸引保持したインゴット18の上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに、インゴット18に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置づけて、レーザー光線をインゴット18に照射し剥離層を形成する剥離層形成工程をレーザー照射ユニット54において実施する。
【0055】
剥離層形成工程を実施した後、剥離層が形成されたインゴット18をレーザー照射ユニット54からウエーハ剥離ユニット56に搬送する第二の搬送工程を実施する。
【0056】
第二の搬送工程では、まず、第二の移し替え手段100の多関節アーム104を駆動させ、保持テーブル74上のインゴット18を吸着片106で吸引保持すると共に、保持テーブル74の吸引力を解除する。次いで、吸着片106で吸引保持したインゴット18を保持テーブル74から搬送トレー2の第一のインゴット収容凹部6aに移し替える。
【0057】
次いで、ウエーハ剥離ユニット56に対面する位置まで往路ベルトコンベアー86でY1方向に搬送トレー2を搬送する。この際には、第一の搬送手段90によって搬送トレー2をウエーハ剥離ユニット56に対面する位置で停止させる。次いで、第三の移し替え手段102の多関節アーム104を駆動させ、搬送トレー2上のインゴット18を吸着片106で吸引保持する。次いで、吸着片106で吸引保持したインゴット18を搬送トレー2からウエーハ剥離ユニット56の保持テーブル80に移し替える。
【0058】
第二の搬送工程を実施した後、剥離層が形成されたインゴット18を保持テーブル80で吸引保持すると共に、保持テーブル80で吸引保持したインゴット18の上面を保持し剥離層を起点としてインゴット18からウエーハを剥離するウエーハ剥離工程をウエーハ剥離ユニット56において実施する。
【0059】
ウエーハ剥離工程を実施した後、インゴット18から剥離されたウエーハ(図示していない。)をウエーハ剥離ユニット56からカセットストッカー64のカセット62に搬送すると共に、ウエーハが剥離されたインゴット18をウエーハ剥離ユニット56からインゴット研削ユニット52に搬送する第三の搬送工程を実施する。
【0060】
第三の搬送工程では、まず、第三の移し替え手段102の多関節アーム104を駆動させ、インゴット18から剥離されたウエーハを吸着片106で吸引保持する。次いで、吸着片106で吸引保持したウエーハをウエーハ剥離ユニット56から搬送トレー2の第一のウエーハ収容部8aに移し替える。
【0061】
次いで、第三の移し替え手段102の多関節アーム104を駆動させ、保持テーブル80上のインゴット18を吸着片106で吸引保持すると共に、保持テーブル80の吸引力を解除する。次いで、吸着片106で吸引保持したインゴット18を保持テーブル80から搬送トレー2の第一のインゴット収容凹部6aに移し替える。
【0062】
次いで、インゴット18およびウエーハを支持した搬送トレー2を第一の搬送手段90によって往路ベルトコンベアー86から復路ベルトコンベアー88に搬送する。次いで、復路ベルトコンベアー88によって搬送トレー2をY2方向に搬送して第二の搬送手段92に搬送トレー2を受け渡す。次いで、第二の搬送手段92によって往路ベルトコンベアー86に向かって搬送トレー2を搬送する。
【0063】
第二の搬送手段92から往路ベルトコンベアー86に搬送トレー2が受け渡される前に第二の搬送手段92を一旦停止させる。次いで、収容手段66の多関節アーム112を駆動させ、第二の搬送手段92上の搬送トレー2に支持されたウエーハを吸着片114で吸引保持する。そして、吸着片114で吸引保持したウエーハを搬送トレー2から搬出して、カセットストッカー64のカセット62内にウエーハを収容する。
【0064】
次いで、第二の搬送手段92を作動させ、第二の搬送手段92から往路ベルトコンベアー86に搬送トレー2を受け渡した後、インゴット研削ユニット52に対面する位置まで往路ベルトコンベアー86でY1方向に搬送トレー2を搬送する。この際には、第一の搬送トレーストッパー94を上昇させることにより、インゴット研削ユニット52に対面する位置で搬送トレー2を停止させる。次いで、第一の移し替え手段98の多関節アーム104を駆動させ、搬送トレー2上のインゴット18を吸着片106で吸引保持する。次いで、吸着片106で吸引保持したインゴット18を搬送トレー2からインゴット研削ユニット52の保持テーブル68に移し替える。
【0065】
第三の搬送工程を実施した後、ウエーハが剥離されたインゴット18を保持テーブル68で吸引保持すると共に、保持テーブル68で吸引保持したインゴット18の上面(剥離面)を研削して平坦化するインゴット研削工程をインゴット研削ユニット52において実施する。
【0066】
インゴット研削工程を実施した後、上面が平坦化されたインゴット18をインゴット研削ユニット52からレーザー照射ユニット54に搬送する第四の搬送工程を実施する。
【0067】
第四の搬送工程では、まず、第一の移し替え手段98の多関節アーム104を駆動させ、保持テーブル68上のインゴット18を吸着片106で吸引保持すると共に、保持テーブル68の吸引力を解除する。次いで、吸着片106で吸引保持したインゴット18を保持テーブル68から搬送トレー2の第一のインゴット収容凹部6aに移し替える。
【0068】
次いで、レーザー照射ユニット54に対面する位置まで往路ベルトコンベアー86でY1方向に搬送トレー2を搬送する。次いで、第二の移し替え手段100の多関節アーム104を駆動させ、搬送トレー2上のインゴット18を吸着片106で吸引保持する。次いで、吸着片106で吸引保持したインゴット18を搬送トレー2からレーザー照射ユニット54の保持テーブル74に移し替える。
【0069】
第四の搬送工程を実施した後、上述の剥離層形成工程をレーザー照射ユニット54において実施する。そして、剥離層形成工程と、ウエーハ剥離工程と、インゴット研削工程と、第二から第四までの搬送工程とを繰り返し実施することにより、インゴット18から生成可能な数量のウエーハを生成し、カセットストッカー64のカセット62にウエーハを収容する。
【0070】
図示の実施形態では、ウエーハ生成装置50で実施する各工程を1個のインゴット18に着目して説明したが、搬送トレーストッカー60からレーザー照射ユニット54にインゴット18を搬送する第一の搬送工程を実施した後、適宜の間隔をおいて、第一の搬送工程を繰り返し実施すると共に、剥離層形成工程と、ウエーハ剥離工程と、インゴット研削工程と、第二から第四までの搬送工程とを並行して複数(たとえば4個)のインゴット18に対して繰り返し実施することにより、複数のインゴット18から生成可能な数量のウエーハが生成され得る。
【0071】
以上のとおりであり、上述したようなウエーハ生成装置50で使用される図示の実施形態の搬送トレー2は、インゴットの自重によって力点24が作動(下方に移動)して作用点26がインゴットの側面を支持するので、インゴットを搬送している際に、インゴットを安定して保持することができ、インゴットの脱落を防止することができる。
【符号の説明】
【0072】
2:搬送トレー
4:筐体
6:インゴット収容凹部
6a:第一のインゴット収容凹部
6b:第二のインゴット収容凹部
8:ウエーハ収容部
8a:第一のウエーハ収容部
8b:第二のウエーハ収容部
10:上壁
12:下壁
14:側壁
16:トンネル
22:梃子
22a:梃子の第一の部分
22b:梃子の第二の部分
22c:梃子の第三の部分
22d:梃子の第四の部分
22e:梃子の第五の部分
22f:梃子の第六の部分
24:力点
24a:第一の力点
24b:第二の力点
26:作用点
26a:第一の作用点
26b:第二の作用点
28:支点