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特許7461165動画像符号化装置、動画像復号装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】動画像符号化装置、動画像復号装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/85 20140101AFI20240327BHJP
【FI】
H04N19/85
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020031056
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021136562
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康孝
【審査官】岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020ー150422(JP,A)
【文献】特開2019-208090(JP,A)
【文献】国際公開第2015/104963(WO,A1)
【文献】松尾 康孝 他,超解像・ぼやけピクチャを用いた画面間予測による符号化効率改善の検討,第33回 画像符号化シンポジウム 第23回 映像メディア処理シンポジウム ,2018年11月19日,P-1-02,pp.20-21
【文献】松尾 康孝,鮮鋭化・ぼやけピクチャを用いた画面間予測による動画像符号化,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2020年02月27日,Vol.119,No.456,pp.97-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 - 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力動画像から予測ピクチャを減算して残差ピクチャを生成し、当該残差ピクチャに対し直交変換、量子化及びエントロピー符号化を行うことで符号化信号を生成して出力すると共に、前記量子化により生成した量子化インデックス列に対し逆量子化及び逆直交変換を行うことで復号残差ピクチャを生成し、当該復号残差ピクチャに前記予測ピクチャを加算して加算後ピクチャを生成し、当該加算後ピクチャにフィルタ処理を施して局部復号済ピクチャを生成し、当該局部復号済ピクチャに基づいて超解像ピクチャを生成し、前記局部復号済ピクチャ及び前記超解像ピクチャを用いて画面間予測を行うことで前記予測ピクチャを生成する動画像符号化装置において、
前記局部復号済ピクチャを第1局部復号済ピクチャとし、当該第1局部復号済ピクチャに対応する前記入力動画像のピクチャを基準としたときの当該基準よりも前のピクチャに対応する局部復号済ピクチャまたは前記基準よりも後のピクチャに対応する局部復号済ピクチャを第2局部復号済ピクチャとして、
前記第1局部復号済ピクチャをウェーブレットパケット分解することで第1多重解像度成分を生成すると共に、前記第2局部復号済ピクチャをウェーブレットパケット分解することで第2多重解像度成分を生成する多重解像度分解部と、
前記多重解像度分解部により生成された前記第1多重解像度成分における所定階層の複数の低周波帯域成分のそれぞれを複数のブロックに分割し、当該ブロックを位置合わせ元ブロックとして当該位置合わせ元ブロック毎に、当該位置合わせ元ブロックと、前記第1多重解像度成分における前記所定階層の他の複数の低周波帯域成分内のブロック及び前記第2多重解像度成分における前記所定階層の複数の低周波帯域成分内のブロックとの間でブロックマッチングによる位置合わせを行うことで、前記低周波帯域成分毎の位置合わせ先ブロックをそれぞれ設定し、前記位置合わせ元ブロック及び前記位置合わせ先ブロックを特定するための位置合わせ情報を生成する位置合わせ部と、
前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報にて特定される前記位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロックを位置合わせ元高周波ブロックとし、前記位置合わせ情報にて特定される前記位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロックを位置合わせ先高周波ブロックとして、当該位置合わせ先高周波ブロックを前記位置合わせ元高周波ブロックに割り付けることで、前記位置合わせ先高周波ブロックに基づいた値を前記位置合わせ元高周波ブロックの新たな値に設定し、新たな第1多重解像度成分を生成する割り付け部と、
前記割り付け部により生成された前記新たな第1多重解像度成分をウェーブレットパケット再構成することで前記超解像ピクチャを生成する再構成部と、
を備えたことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動画像符号化装置において、
さらに、前記位置合わせ元高周波ブロックのパワーを位置合わせ元パワーとして算出すると共に、前記位置合わせ先高周波ブロックのパワーを位置合わせ先パワーとして算出し、前記位置合わせ元パワー及び前記位置合わせ先パワーの差の絶対値が所定の閾値未満である場合、前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報を確度の高い位置合わせ情報に設定し、前記差の絶対値が前記所定の閾値以上である場合、前記位置合わせ情報を確度の低い位置合わせ情報に設定する確度判定部を備え、
前記割り付け部は、
前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報の代わりに、前記確度判定部により設定された前記確度の高い位置合わせ情報を用いて、前記新たな第1多重解像度成分を生成する、ことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の動画像符号化装置において、
さらに、前記位置合わせ元高周波ブロックのパワーを位置合わせ元パワーとして算出すると共に、前記位置合わせ先高周波ブロックのパワーを位置合わせ先パワーとして算出し、前記位置合わせ元パワー及び前記位置合わせ先パワーの差の絶対値が所定の閾値未満であり、かつ前記位置合わせ先パワーが前記位置合わせ元パワーよりも大きい場合、前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報を確度の高い位置合わせ情報に設定し、前記差の絶対値が前記所定の閾値以上である場合、または前記位置合わせ先パワーが前記位置合わせ元パワー以下である場合、前記位置合わせ情報を確度の低い位置合わせ情報に設定する確度判定部を備え、
前記割り付け部は、
前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報の代わりに、前記確度判定部により設定された前記確度の高い位置合わせ情報を用いて、前記新たな第1多重解像度成分を生成する、ことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の動画像符号化装置において、
前記入力動画像のピクチャの前記基準よりも前の所定数のピクチャに対応する当該所定数の局部復号済ピクチャ、前記基準よりも後の所定数のピクチャに対応する当該所定数の局部復号済ピクチャ、または、前記基準よりも前及び後の所定数のピクチャに対応する当該所定数の局部復号済ピクチャを前記第2局部復号済ピクチャとする、ことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項5】
動画像の符号化信号を入力し、当該符号化信号に対しエントロピー復号、逆量子化及び逆直交変換を行うことで復号残差ピクチャを生成し、当該復号残差ピクチャに予測ピクチャを加算して加算後ピクチャを生成し、前記加算後ピクチャにフィルタ処理を施して復号済ピクチャを生成することで、元の前記動画像を復元し、前記復号済ピクチャに基づいて超解像ピクチャを生成し、前記復号済ピクチャ及び前記超解像ピクチャを用いて画面間予測を行うことで前記予測ピクチャを生成する動画像復号装置において、
前記復号済ピクチャを第1復号済ピクチャとし、当該第1復号済ピクチャに対応する前記動画像のピクチャを基準としたときの当該基準よりも前のピクチャに対応する復号済ピクチャまたは前記基準よりも後のピクチャに対応する復号済ピクチャを第2復号済ピクチャとして、
前記第1復号済ピクチャをウェーブレットパケット分解することで第1多重解像度成分を生成すると共に、前記第2復号済ピクチャをウェーブレットパケット分解することで第2多重解像度成分を生成する多重解像度分解部と、
前記多重解像度分解部により生成された前記第1多重解像度成分における所定階層の複数の低周波帯域成分のそれぞれを複数のブロックに分割し、当該ブロックを位置合わせ元ブロックとして当該位置合わせ元ブロック毎に、当該位置合わせ元ブロックと、前記第1多重解像度成分における前記所定階層の他の複数の低周波帯域成分内のブロック及び前記第2多重解像度成分における前記所定階層の複数の低周波帯域成分内のブロックとの間でブロックマッチングによる位置合わせを行うことで、前記低周波帯域成分毎の位置合わせ先ブロックをそれぞれ設定し、前記位置合わせ元ブロック及び前記位置合わせ先ブロックを特定するための位置合わせ情報を生成する位置合わせ部と、
前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報にて特定される前記位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロックを位置合わせ元高周波ブロックとし、前記位置合わせ情報にて特定される前記位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロックを位置合わせ先高周波ブロックとして、当該位置合わせ先高周波ブロックを前記位置合わせ元ブロックに割り付けることで、前記位置合わせ先高周波ブロックに基づいた値を前記位置合わせ元ブロックの新たな値に設定し、新たな第1多重解像度成分を生成する割り付け部と、
前記割り付け部により生成された前記新たな第1多重解像度成分をウェーブレットパケット再構成することで前記超解像ピクチャを生成する再構成部と、
を備えたことを特徴とする動画像復号装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から4までのいずれか一項に記載の動画像符号化装置として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項5に記載の動画像復号装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像を符号化する動画像符号化装置、符号化信号を復号する動画像復号装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、解像度の高い4Kまたは8Kの動画像を対象とした動画圧縮方式の標準規格として、H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)が知られている(例えば非特許文献1を参照)。このH.265/HEVCの規格は、符号化されたフレームを用いて動きを予測し、予測残差の信号を直交変換して符号化する、動き補償及び直交変換の技術を基本としている。
【0003】
図18は、従来の動画像符号化装置の構成例を示すブロック図であり、H.265/HEVCの標準規格に従った符号化側の構成を示している。この動画像符号化装置100は、減算部110、直交変換部111、量子化部112、逆量子化部113、逆直交変換部114、加算部115、画面内予測部116、インループフィルタ117、画面間予測部118、スイッチ119及びエントロピー符号化部120を備えている。画面間予測部118は、画面間予測処理部121及びフレームメモリ122を備えている。
【0004】
動画像符号化装置100は、入力動画像に対し、1フレームのピクチャ毎に符号化処理を行い、符号化信号を生成して出力する装置である。
【0005】
入力動画像のピクチャは、減算部110により、画面内予測部116または画面間予測部118により生成された予測ピクチャとの間で減算処理が施される。これにより、残差ピクチャが生成される。
【0006】
残差ピクチャは、直交変換部111による直交変換処理、量子化部112による量子化処理、及びエントロピー符号化部120によりエントロピー符号化処理が施され、符号化信号として出力される。
【0007】
一方、量子化部112により量子化処理が施された量子化インデックス列は、逆量子化部113による逆量子化処理、逆直交変換部114による逆直交変換処理が施される。これにより、復号残差ピクチャが生成される。
【0008】
復号残差ピクチャは、加算部115により、予測ピクチャとの間で加算処理が施される。加算部115による加算結果の加算後ピクチャは、画面内予測部116による画面内予測処理が施される。また、加算後ピクチャは、インループフィルタ117によるフィルタ処理が施され、局部復号済ピクチャとして画面間予測部118のフレームメモリ122に格納される。
【0009】
フレームメモリ122に格納された局部復号済ピクチャは、画面間予測処理部121により過去の局部復号済ピクチャとして読み出される。そして、現在の局部復号済ピクチャ(入力動画像のピクチャ)を基準ピクチャとし、過去の局部復号済ピクチャを参照ピクチャとして、画面間予測処理が行われる。
【0010】
画面内予測部116による画面内予測処理にて生成された画像、及び画面間予測処理部121による画面間予測処理にて生成された画像のうち、いずれか一方がスイッチ119により選択され、予測ピクチャとして減算部110へ入力される。
【0011】
このような動き補償及び直交変換を基本とした動画像符号化技術において、符号化効率を向上させるための技術が提案されている。例えば、符号化の前段及び後段に画像縮小及び超解像復元を行うことで、符号化効率を向上させる手法がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0012】
具体的には、この手法は、画像を高圧縮伝送するために、符号化側が画像に口ーパスフィルタを施し縮小して伝送し、復号側が超解像処理を施す。超解像処理では、画像の複雑さを示すパラメータに基づいて拡大係数を設定すると共に、最適な折り返し周波数を設定することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第6344800号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】大久保榮、「インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書」、インプレスジャパン
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の動き補償及び直交変換を基本とした動画像符号化技術では、画面間予測処理により生成される予測ピクチャは、例えばブロックマッチング法にて予測誤差が最小となる画像が選択される。これにより、符号化効率を向上させることができ、復号側において客観的に高画質な動画像を得ることができる。
【0016】
しかしながら、動画像のピクチャ間におけるオブジェクトの動きによっては、オブジェクトがぼやけたり鮮鋭化したりする場合がある。この場合は、オブジェクトの動き速度が変化している可能性が高く、また、オブジェクトがカメラレンズの被写界深度内外に移動している可能性も高い。
【0017】
従来の動画像符号化技術では、ぼやけまたは鮮鋭化が起こる動画像であっても、このようなピクチャを用いて局部復号済ピクチャを生成し、局部復号済ピクチャを用いて予測ピクチャを生成する。このため、予測精度が低下しやすくなり、符号化効率が低下するという問題があった。
【0018】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、動画像のピクチャの画面間予測処理を行う際に、画面間でオブジェクトがぼやけたり鮮鋭化したりする場合であっても、精度の高い予測ピクチャを生成し、符号化効率を向上させることが可能な動画像符号化装置、動画像復号装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、請求項1の動画像符号化装置は、入力動画像から予測ピクチャを減算して残差ピクチャを生成し、当該残差ピクチャに対し直交変換、量子化及びエントロピー符号化を行うことで符号化信号を生成して出力すると共に、前記量子化により生成した量子化インデックス列に対し逆量子化及び逆直交変換を行うことで復号残差ピクチャを生成し、当該復号残差ピクチャに前記予測ピクチャを加算して加算後ピクチャを生成し、当該加算後ピクチャにフィルタ処理を施して局部復号済ピクチャを生成し、当該局部復号済ピクチャに基づいて超解像ピクチャを生成し、前記局部復号済ピクチャ及び前記超解像ピクチャを用いて画面間予測を行うことで前記予測ピクチャを生成する動画像符号化装置において、前記局部復号済ピクチャを第1局部復号済ピクチャとし、当該第1局部復号済ピクチャに対応する前記入力動画像のピクチャを基準としたときの当該基準よりも前のピクチャに対応する局部復号済ピクチャまたは前記基準よりも後のピクチャに対応する局部復号済ピクチャを第2局部復号済ピクチャとして、前記第1局部復号済ピクチャをウェーブレットパケット分解することで第1多重解像度成分を生成すると共に、前記第2局部復号済ピクチャをウェーブレットパケット分解することで第2多重解像度成分を生成する多重解像度分解部と、前記多重解像度分解部により生成された前記第1多重解像度成分における所定階層の複数の低周波帯域成分のそれぞれを複数のブロックに分割し、当該ブロックを位置合わせ元ブロックとして当該位置合わせ元ブロック毎に、当該位置合わせ元ブロックと、前記第1多重解像度成分における前記所定階層の他の複数の低周波帯域成分内のブロック及び前記第2多重解像度成分における前記所定階層の複数の低周波帯域成分内のブロックとの間でブロックマッチングによる位置合わせを行うことで、前記低周波帯域成分毎の位置合わせ先ブロックをそれぞれ設定し、前記位置合わせ元ブロック及び前記位置合わせ先ブロックを特定するための位置合わせ情報を生成する位置合わせ部と、前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報にて特定される前記位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロックを位置合わせ元高周波ブロックとし、前記位置合わせ情報にて特定される前記位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロックを位置合わせ先高周波ブロックとして、当該位置合わせ先高周波ブロックを前記位置合わせ元高周波ブロックに割り付けることで、前記位置合わせ先高周波ブロックに基づいた値を前記位置合わせ元高周波ブロックの新たな値に設定し、新たな第1多重解像度成分を生成する割り付け部と、前記割り付け部により生成された前記新たな第1多重解像度成分をウェーブレットパケット再構成することで前記超解像ピクチャを生成する再構成部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項2の動画像符号化装置は、請求項1に記載の動画像符号化装置において、さらに、前記位置合わせ元高周波ブロックのパワーを位置合わせ元パワーとして算出すると共に、前記位置合わせ先高周波ブロックのパワーを位置合わせ先パワーとして算出し、前記位置合わせ元パワー及び前記位置合わせ先パワーの差の絶対値が所定の閾値未満である場合、前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報を確度の高い位置合わせ情報に設定し、前記差の絶対値が前記所定の閾値以上である場合、前記位置合わせ情報を確度の低い位置合わせ情報に設定する確度判定部を備え、前記割り付け部が、前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報の代わりに、前記確度判定部により設定された前記確度の高い位置合わせ情報を用いて、前記新たな第1多重解像度成分を生成する、ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項3の動画像符号化装置は、請求項1に記載の動画像符号化装置において、さらに、前記位置合わせ元高周波ブロックのパワーを位置合わせ元パワーとして算出すると共に、前記位置合わせ先高周波ブロックのパワーを位置合わせ先パワーとして算出し、前記位置合わせ元パワー及び前記位置合わせ先パワーの差の絶対値が所定の閾値未満であり、かつ前記位置合わせ先パワーが前記位置合わせ元パワーよりも大きい場合、前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報を確度の高い位置合わせ情報に設定し、前記差の絶対値が前記所定の閾値以上である場合、または前記位置合わせ先パワーが前記位置合わせ元パワー以下である場合、前記位置合わせ情報を確度の低い位置合わせ情報に設定する確度判定部を備え、前記割り付け部が、前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報の代わりに、前記確度判定部により設定された前記確度の高い位置合わせ情報を用いて、前記新たな第1多重解像度成分を生成する、ことを特徴とする。
【0022】
また、請求項4の動画像符号化装置は、請求項1から3までのいずれか一項に記載の動画像符号化装置において、前記入力動画像のピクチャの前記基準よりも前の所定数のピクチャに対応する当該所定数の局部復号済ピクチャ、前記基準よりも後の所定数のピクチャに対応する当該所定数の局部復号済ピクチャ、または、前記基準よりも前及び後の所定数のピクチャに対応する当該所定数の局部復号済ピクチャを前記第2局部復号済ピクチャとする、ことを特徴とする。
【0023】
さらに、請求項5の動画像復号装置は、動画像の符号化信号を入力し、当該符号化信号に対しエントロピー復号、逆量子化及び逆直交変換を行うことで復号残差ピクチャを生成し、当該復号残差ピクチャに予測ピクチャを加算して加算後ピクチャを生成し、前記加算後ピクチャにフィルタ処理を施して復号済ピクチャを生成することで、元の前記動画像を復元し、前記復号済ピクチャに基づいて超解像ピクチャを生成し、前記復号済ピクチャ及び前記超解像ピクチャを用いて画面間予測を行うことで前記予測ピクチャを生成する動画像復号装置において、前記復号済ピクチャを第1復号済ピクチャとし、当該第1復号済ピクチャに対応する前記動画像のピクチャを基準としたときの当該基準よりも前のピクチャに対応する復号済ピクチャまたは前記基準よりも後のピクチャに対応する復号済ピクチャを第2復号済ピクチャとして、前記第1復号済ピクチャをウェーブレットパケット分解することで第1多重解像度成分を生成すると共に、前記第2復号済ピクチャをウェーブレットパケット分解することで第2多重解像度成分を生成する多重解像度分解部と、前記多重解像度分解部により生成された前記第1多重解像度成分における所定階層の複数の低周波帯域成分のそれぞれを複数のブロックに分割し、当該ブロックを位置合わせ元ブロックとして当該位置合わせ元ブロック毎に、当該位置合わせ元ブロックと、前記第1多重解像度成分における前記所定階層の他の複数の低周波帯域成分内のブロック及び前記第2多重解像度成分における前記所定階層の複数の低周波帯域成分内のブロックとの間でブロックマッチングによる位置合わせを行うことで、前記低周波帯域成分毎の位置合わせ先ブロックをそれぞれ設定し、前記位置合わせ元ブロック及び前記位置合わせ先ブロックを特定するための位置合わせ情報を生成する位置合わせ部と、前記位置合わせ部により生成された前記位置合わせ情報にて特定される前記位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロックを位置合わせ元高周波ブロックとし、前記位置合わせ情報にて特定される前記位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロックを位置合わせ先高周波ブロックとして、当該位置合わせ先高周波ブロックを前記位置合わせ元ブロックに割り付けることで、前記位置合わせ先高周波ブロックに基づいた値を前記位置合わせ元ブロックの新たな値に設定し、新たな第1多重解像度成分を生成する割り付け部と、前記割り付け部により生成された前記新たな第1多重解像度成分をウェーブレットパケット再構成することで前記超解像ピクチャを生成する再構成部と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
さらに、請求項6のプログラムは、コンピュータを、請求項1から4までのいずれか一項に記載の動画像符号化装置として機能させることを特徴とする。
【0025】
また、請求項7のプログラムは、コンピュータを、請求項5に記載の動画像復号装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、動画像のピクチャの画面間予測処理を行う際に、画面間でオブジェクトがぼやけたり鮮鋭化したりする場合であっても、精度の高い予測ピクチャを生成し、符号化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態による動画像符号化装置の構成例を示すブロック図である。
図2】動画像符号化装置に備えた画面間予測部の構成例を示すブロック図である。
図3】超解像処理部の構成例を示すブロック図である。
図4】超解像処理部の処理例を示すフローチャートである。
図5】多重解像度分解部の処理例を説明する図である。
図6】帯域、ブロック等の定義を説明する図である。
図7】位置合わせ部の処理例(ステップS403)を示すフローチャート。
図8】位置合わせ情報を説明する図である。
図9】確度判定部の第1処理例(ステップS404)を示すフローチャートである。
図10】水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのブロックのパワーを説明する図である。
図11】確度判定部の第2処理例(ステップS404)を示すフローチャートである。
図12】判定後の位置合わせ情報の具体例を説明する図である。
図13】割り付け部の第1処理例(ステップS405、置き換え処理)を示すフローチャートである。
図14】割り付けの具体例を説明する図である。
図15】割り付け部の第2処理例(ステップS405、平均値置き換え処理)を示すフローチャートである。
図16】本発明の実施形態による動画像復号装置の構成例を示すブロック図である。
図17】動画像復号装置に備えた画面間予測部の構成例を示すブロック図である。
図18】従来の動画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、参照ピクチャに加えて超解像ピクチャ(または超解像ピクチャ及びぼやけピクチャ)を用いて画面間予測を行う場合に、参照ピクチャ及びその前後(前、後または前及び後)の局部復号済ピクチャ(復号側では復号済ピクチャ)を用いて超解像ピクチャを生成することを特徴とする。
【0029】
これにより、入力動画像の画面間でオブジェクトがぼやけたり鮮鋭化したりする場合であっても、精度の高い予測ピクチャを生成し、符号化効率を向上させることができる。
【0030】
〔動画像符号化装置〕
まず、本発明の実施形態による動画像符号化装置について説明する。図1は、本発明の実施形態による動画像符号化装置の構成例を示すブロック図である。この動画像符号化装置1は、減算部110、直交変換部111、量子化部112、逆量子化部113、逆直交変換部114、加算部115、画面内予測部116、インループフィルタ117、画面間予測部10、スイッチ119及びエントロピー符号化部120を備えている。尚、図1には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0031】
減算部110は、入力動画像のピクチャ(Iピクチャ、Pピクチャ及びBピクチャ)を入力すると共に、スイッチ119から当該ピクチャの予測ピクチャを入力する。そして、減算部110は、入力動画像のピクチャから予測ピクチャを減算して残差ピクチャを生成し、残差ピクチャを直交変換部111に出力する。
【0032】
直交変換部111は、減算部110から残差ピクチャを入力し、残差ピクチャに対し直交変換を行い、変換係数列を生成する。そして、直交変換部111は、変換係数列を量子化部112に出力する。
【0033】
量子化部112は、直交変換部111から変換係数列を入力し、変換係数列に対し量子化を行い、量子化インデックス列を生成する。そして、量子化部112は、量子化インデックス列を逆量子化部113及びエントロピー符号化部120に出力する。
【0034】
逆量子化部113は、量子化部112から量子化インデックス列を入力し、量子化部112の逆の処理を行うことで、量子化インデックス列を逆量子化し、変換係数列を生成する。そして、逆量子化部113は、変換係数列を逆直交変換部114に出力する。
【0035】
逆直交変換部114は、逆量子化部113から変換係数列を入力し、直交変換部111の逆の処理を行うことで、変換係数列を逆直交変換し、復号残差ピクチャを生成する。そして、逆直交変換部114は、復号残差ピクチャを加算部115に出力する。
【0036】
加算部115は、逆直交変換部114から復号残差ピクチャを入力すると共に、スイッチ119から予測ピクチャを入力する。そして、加算部115は、予測ピクチャに復号残差ピクチャを加算し、加算後ピクチャを画面内予測部116及びインループフィルタ117に出力する。
【0037】
画面内予測部116は、加算部115から加算後ピクチャを入力し、所定領域毎に、加算後ピクチャに画面内予測処理を施し、画面内予測結果を生成し、所定領域毎の画面内予測結果をスイッチ119に出力する。
【0038】
インループフィルタ117は、加算部115から加算後ピクチャを入力し、加算後ピクチャにフィルタ処理を施し、局部復号済ピクチャKを生成する。そして、インループフィルタ117は、局部復号済ピクチャKを画面間予測部10に出力する。
【0039】
画面間予測部10は、インループフィルタ117から局部復号済ピクチャKを入力し、局部復号済ピクチャ(被予測ピクチャの参照ピクチャ)K及びその前後の局部復号済ピクチャK1,K2を用いて、超解像ピクチャCを生成する。また、画面間予測部10は、局部復号済ピクチャKを用いてぼやけピクチャBを生成する。局部復号済ピクチャK、超解像ピクチャC及びぼやけピクチャBは、画面間予測処理のための参照ピクチャとして用いられる。尚、画面間予測部10は、ぼやけピクチャBを生成する処理を行わなくてもよい。
【0040】
画面間予測部10は、所定領域毎に、入力動画像のピクチャである基準ピクチャ、及び局部復号済ピクチャK及び超解像ピクチャC等の参照ピクチャを用いて、画面間予測処理を行う。画面間予測部10は、所定領域毎に、局部復号済ピクチャK及び超解像ピクチャC等のそれぞれについて、動きベクトル、予測ピクチャ及び予測誤差を求める。
【0041】
画面間予測部10は、所定領域毎に、動きベクトル及び予測誤差等に基づいて予測ピクチャを選択し、所定領域毎の画面間予測結果としてスイッチ119に出力する。
【0042】
また、画面間予測部10は、所定領域毎に最適な予測ピクチャを選択する処理において、所定領域毎に実際に選択した予測ピクチャの種類、算出した動きベクトル等をパラメータに設定する。そして、画面間予測部10は、パラメータをエントロピー符号化部120に出力する。画面間予測部10の詳細については後述する。
【0043】
スイッチ119は、画面内予測部116から所定領域毎の画面内予測結果を入力すると共に、画面間予測部10から所定領域毎の画面間予測結果を入力し、いずれか一方を選択し、予測ピクチャとして減算部110及び加算部115に出力する。
【0044】
エントロピー符号化部120は、量子化部112から量子化インデックス列を入力すると共に、画面間予測部10からパラメータを入力し、さらに、直交変換部111等からパラメータを入力する。そして、エントロピー符号化部120は、量子化インデックス列及びパラメータに対しエントロピー符号化を行い、符号化信号を生成する。エントロピー符号化部120は、符号化信号を、後述する動画像復号装置2へ出力する。
【0045】
〔画面間予測部10〕
次に、図1に示した画面間予測部10について詳細に説明する。図2は、動画像符号化装置1に備えた画面間予測部10の構成例を示すブロック図である。この画面間予測部10は、超解像処理部11、ぼやけ処理部12、フレームメモリ13、画面間予測処理部14、選択部15及びパラメータ処理部16を備えている。尚、図2には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0046】
画面間予測部10は、インループフィルタ117から局部復号済ピクチャKを入力し、局部復号済ピクチャKをフレームメモリ13に格納する。
【0047】
超解像処理部11は、局部復号済ピクチャ(被予測ピクチャの参照ピクチャ)Kを入力すると共に、フレームメモリ13から当該参照ピクチャKの前後の局部復号済ピクチャK1,K2を読み出す。ここでは、参照ピクチャKの前後の局部復号済ピクチャK1,K2として、参照ピクチャKよりも前の1つの局部復号済ピクチャK1、及び参照ピクチャKよりも後の1つの局部復号済ピクチャK2が読み出されるものとする。
【0048】
ここで、参照ピクチャKよりも前の局部復号済ピクチャK1とは、参照ピクチャKに対応する入力動画像のピクチャを基準として、時系列の入力動画像のピクチャのうち、当該基準よりも前に動画像符号化装置1が入力するピクチャに対応する局部復号済ピクチャKをいう。また、参照ピクチャKよりも後の局部復号済ピクチャK2とは、時系列の動画像のピクチャのうち、当該基準よりも後に動画像符号化装置1が入力するピクチャに対応する局部復号済ピクチャKをいう。このように、参照ピクチャKの前後の局部復号済ピクチャK1,K2における前後とは、符号化処理の順番の前後を意味するのではなく、入力動画像のピクチャにおける時系列の順番の前後を意味する。
【0049】
超解像処理部11は、参照ピクチャK及び局部復号済ピクチャK1,K2に、本発明の実施形態による超解像処理を施して超解像ピクチャCを生成し、超解像ピクチャCをフレームメモリ13に格納する。尚、超解像処理部11は、局部復号済ピクチャKに超解像処理を施して所定種類の超解像ピクチャC1を生成し、超解像ピクチャC1もフレームメモリ13に格納するようにしてもよい。
【0050】
ぼやけ処理部12は、局部復号済ピクチャKを入力し、局部復号済ピクチャKにぼやけ処理を施して1または複数の所定種類のぼやけピクチャBを生成し、ぼやけピクチャBをフレームメモリ13に格納する。
【0051】
フレームメモリ13には、局部復号済ピクチャK、超解像ピクチャC及びぼやけピクチャBがフレーム毎に格納される。
【0052】
画面間予測処理部14は、フレームメモリ13に格納された局部復号済ピクチャK、超解像ピクチャC及びぼやけピクチャBを参照ピクチャとして読み出す。また、画面間予測処理部14は、現在の入力動画像のピクチャを基準ピクチャとして入力する。
【0053】
画面間予測処理部14は、局部復号済ピクチャK、超解像ピクチャC及びぼやけピクチャBのそれぞれについて、所定領域毎に、基準ピクチャ及び参照ピクチャを用いて例えばブロックマッチング法にて、予測ピクチャ、動きベクトル及び予測誤差を求める。所定領域は、例えばslice(スライス)領域、CTU(Coding Tree Unit:コーディングツリーユニット)領域、CU(Coding Unit:コーディングユニット)領域である。
【0054】
画面間予測処理部14は、局部復号済ピクチャK、超解像ピクチャC及びぼやけピクチャBのそれぞれについて、所定領域毎の予測ピクチャ、動きベクトル及び予測誤差を選択部15に出力する。
【0055】
選択部15は、画面間予測処理部14から所定領域毎の予測ピクチャ、動きベクトル及び予測誤差を入力する。選択部15は、所定領域毎に、動きベクトル及び予測誤差に基づいて、局部復号済ピクチャK、超解像ピクチャC及びぼやけピクチャBのうちのいずれかの予測ピクチャを選択し、選択した予測ピクチャを画面間予測結果としてスイッチ119に出力する。
【0056】
パラメータ処理部16は、選択部15により所定領域毎に選択された予測ピクチャの種類、及び画面間予測処理部14により算出された動きベクトル等をパラメータに設定し、パラメータをエントロピー符号化部120に出力する。尚、画面間予測部10は、ぼやけ処理部12を備えていなくてもよい。
【0057】
〔超解像処理部11〕
次に、図2に示した超解像処理部11について説明する。図3は、超解像処理部11の構成例を示すブロック図であり、図4は、超解像処理部11の処理例を示すフローチャートである。この超解像処理部11は、多重解像度分解部20、位置合わせ部21、確度判定部22、割り付け部23及び再構成部24を備えている。
【0058】
多重解像度分解部20は、局部復号済ピクチャKである被予測ピクチャの参照ピクチャK(以下、「参照ピクチャK」という。)を入力すると共に、フレームメモリ13から当該参照ピクチャKの前後の局部復号済ピクチャK1,K2を入力する(ステップS401)。
【0059】
多重解像度分解部20は、参照ピクチャK及び局部復号済ピクチャK1,K2のそれぞれを多重解像度分解(例えば多階層のウェーブレットパケット分解)する。そして、多重解像度分解部20は、参照ピクチャKの多重解像度成分、局部復号済ピクチャK1の多重解像度成分及び局部復号済ピクチャK2の多重解像度成分を生成する(ステップS402)。
【0060】
参照ピクチャK、局部復号済ピクチャK1及び局部復号済ピクチャK2のそれぞれをウェーブレットパケット分解するのは、ぼやけ量がピクチャ毎に異なることを考慮し、多重解像度分解を詳細に行うためである。
【0061】
多重解像度分解部20は、参照ピクチャKの多重解像度成分、局部復号済ピクチャK1の多重解像度成分及び局部復号済ピクチャK2の多重解像度成分を位置合わせ部21に出力する。
【0062】
位置合わせ部21は、多重解像度分解部20から参照ピクチャKの多重解像度成分、局部復号済ピクチャK1の多重解像度成分及び局部復号済ピクチャK2の多重解像度成分を入力する。
【0063】
位置合わせ部21は、参照ピクチャKの多重解像度成分における所定階層の複数の低周波帯域成分のそれぞれを複数のブロックに分割する。分割後のブロックを位置合わせ元ブロックとする。そして、位置合わせ部21は、位置合わせ元ブロックと、参照ピクチャKの多重解像度成分における所定階層の他の複数の低周波帯域成分内のブロック、局部復号済ピクチャK1の多重解像度成分における所定階層の複数の低周波帯域成分内のブロック、及び局部復号済ピクチャK2の多重解像度成分における所定階層の複数の低周波帯域成分内のブロックとの間で、例えばブロックマッチングによる位置合わせを行う。
【0064】
位置合わせ部21は、ブロックマッチングによりマッチングした各低周波帯域成分内のブロックを位置合わせ先ブロックとし、位置合わせ元ブロックの識別子及び位置合わせ先ブロックの識別子からなる位置合わせ情報を生成する(ステップS403)。位置合わせ部21は、位置合わせ情報を確度判定部22に出力する。
【0065】
位置合わせ情報に含まれる位置合わせ元ブロックの識別子は、位置合わせ元ブロックを特定するための情報であり、参照ピクチャKの多重解像度成分における所定階層の複数の低周波帯域成分のそれぞれにおいて、分割されたブロックの番号を示す。
【0066】
位置合わせ情報に含まれる位置合わせ先ブロックの識別子は、位置合わせ先ブロックを特定するための情報である。位置合わせ先ブロックの識別子は、参照ピクチャKの多重解像度成分における所定階層の他の複数の低周波帯域成分のそれぞれにおいて、マッチングしたブロックの位置を特定するための識別子を示す。また、位置合わせ先ブロックの識別子は、局部復号済ピクチャK1,K2の多重解像度成分における所定階層の複数の低周波帯域成分のそれぞれにおいて、マッチングしたブロックの位置を特定するための識別子を示す。
【0067】
確度判定部22は、位置合わせ部21から位置合わせ元ブロックの識別子及び位置合わせ先ブロックの識別子からなる位置合わせ情報を入力する。
【0068】
確度判定部22は、参照ピクチャKの低周波帯域成分内の位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロック(位置合わせ元高周波ブロック)のパワー(位置合わせ元パワー)をそれぞれ算出する。また、確度判定部22は、参照ピクチャK、局部復号済ピクチャK1及び局部復号済ピクチャK2の低周波帯域成分内の位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の複数の高周波帯域成分内のブロック(位置合わせ先高周波ブロック)のパワー(位置合わせ先パワー)をそれぞれ算出する。確度判定部22は、位置合わせ情報毎にパワーの算出を行う。
【0069】
確度判定部22は、位置合わせ情報毎に、これらのパワーに基づいて、周波数成分におけるパワーの方向性が似ている程度を示す確度を求め、確度の高い位置合わせ情報を判定後の位置合わせ情報とする(ステップS404)。確度判定部22は、判定後の位置合わせ情報及びその確度を割り付け部23に出力する。
【0070】
例えば確度判定部22は、位置合わせ元ブロックに関するパワーと位置合わせ先ブロックに関するパワーとの間の差の絶対値が所定の閾値未満である場合、当該位置合わせ情報を確度の高い位置合わせ情報に設定する。一方、確度判定部22は、当該差の絶対値が所定の閾値未満である場合、当該位置合わせ情報を確度の低い位置合わせ情報に設定する。確度判定部22は、確度の高い位置合わせ情報を判定後の位置合わせ情報とする。
【0071】
割り付け部23は、確度判定部22から判定後の位置合わせ情報及びその確度を入力する。そして、割り付け部23は、判定後の位置合わせ情報及びその確度に基づいて、位置合わせ元ブロック毎に、当該位置合わせ元ブロックに対応する位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の高周波帯域成分内のブロックを、当該位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の高周波帯域成分内のブロックに割り付ける。
【0072】
割り付け部23は、位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の高周波帯域成分内のブロックの値を、位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の高周波帯域成分内のブロックの値に基づいた新たな値に置き換え、割り付け後の参照ピクチャKの多重解像度成分を生成する(ステップS405)。そして、割り付け部23は、割り付け後の参照ピクチャKの多重解像度成分を再構成部24に出力する。
【0073】
再構成部24は、割り付け後の参照ピクチャKの多重解像度成分を入力し、当該多重解像度成分を多重解像度再構成(例えばウェーブレットパケット再構成)し、参照ピクチャKの超解像ピクチャCを生成する(ステップS406)。再構成部24は、超解像ピクチャCをフレームメモリ13に格納する(ステップS407)。
【0074】
〔多重解像度分解部20〕
次に、図3に示した多重解像度分解部20の処理について詳細に説明する。図5は、多重解像度分解部20の処理例を説明する図であり、図4に示したステップS402の処理において、ウェーブレットパケット分解数n=2の場合を示している。
【0075】
図5に示すように、多重解像度分解部20は、参照ピクチャKをウェーブレットパケット分解数n=2のウェーブレットパケット分解し、参照ピクチャKの多重解像度成分を生成する。同様に、多重解像度分解部20は、局部復号済ピクチャK1をウェーブレットパケット分解数n=2のウェーブレットパケット分解し、局部復号済ピクチャK1の多重解像度成分を生成する。また、多重解像度分解部20は、局部復号済ピクチャK2をウェーブレットパケット分解数n=2のウェーブレットパケット分解し、局部復号済ピクチャK2の多重解像度成分を生成する。
【0076】
このように、多重解像度分解部20により、参照ピクチャK、局部復号済ピクチャK1及び局部復号済ピクチャK2のそれぞれについて、多重解像度成分が生成される。
【0077】
超解像処理の周波数制御を詳細に行うために、多重解像度分解処理におけるウェーブレットパケット分解数nはなるべく大きくすることが望ましい。
【0078】
ここで、例えば参照ピクチャKの画素数を7680×4320(画素/ピクチャ)、ウェーブレットパケット分解数n=2とする。ウェーブレットパケット分解では、1階分解する毎に1つの帯域が4分割されるため、図5に示したとおり、参照ピクチャKから2階ウェーブレットパケット分解された42(=16)個の帯域が生成される。各帯域は、1920×1080(サンプル/ピクチャ)となる。
【0079】
また、例えばウェーブレットパケット分解数n=3とすると、参照ピクチャKから3階ウェーブレットパケット分解された43(=64)個の帯域が生成され、各帯域は、960×540(サンプル/ピクチャ)となる。局部復号済ピクチャK1,K2のそれぞれについても同様である。
【0080】
図6は、帯域、ブロック等の定義を説明する図である。参照ピクチャK及び局部復号済ピクチャK1,K2におけるそれぞれの多重解像度成分は、16個の帯域から構成される。LLは低周波帯域成分を示し、LHは水平高周波帯域成分を示し、HLは垂直高周波帯域成分を示し、HHは対角高周波帯域成分を示す。また、p=1の場合、参照ピクチャKを示し、p=2の場合、局部復号済ピクチャK1を示し、p=3の場合、局部復号済ピクチャK2を示す。
【0081】
多重解像度成分における16個の帯域のうち左下の4個の帯域は、LLp 1,LHp 1,HLp 1,HHp 1である。これらの帯域は、元のピクチャが1階ウェーブレットパケット分解されたときの第1(q=1)番目の帯域である低周波帯域成分LLについて、さらにウェーブレットパケット分解されることで生成される。
【0082】
右下の4個の帯域は、LLp 2,LHp 2,HLp 2,HHp 2である。これらの帯域は、元のピクチャが1階ウェーブレットパケット分解されたときの第2(q=2)番目の帯域である水平高周波帯域成分LHについて、さらにウェーブレットパケット分解されることで生成される。
【0083】
左上の4個の帯域は、LLp 3,LHp 3,HLp 3,HHp 3である。これらの帯域は、元のピクチャが1階ウェーブレットパケット分解されたときの第3(q=3)番目の帯域である垂直高周波帯域成分HLについて、さらにウェーブレットパケット分解されることで生成される。
【0084】
右上の4個の帯域は、LLp 4,LHp 4,HLp 4,HHp 4である。これらの帯域は、元のピクチャが1階ウェーブレットパケット分解されたときの第4(q=4)番目の帯域である対角高周波帯域成分HHについて、さらにウェーブレットパケット分解されることで生成される。
【0085】
多重解像度成分における第q番目の低周波帯域成分LLp q内における所定位置のブロックを、ブロックMp qとする。pは局部復号済ピクチャK,K1,K2の番号を示し、qは帯域の番号を示す。位置合わせ部21により、低周波帯域成分LLp q内のブロックMp qを単位として、異なる低周波帯域成分LLp q間で位置合わせが行われる。詳細については後述する。
【0086】
〔位置合わせ部21〕
次に、図3に示した位置合わせ部21の処理について詳細に説明する。図7は、位置合わせ部21の処理例を説明する図であり、図4に示したステップS403の処理を示している。図8は、位置合わせ情報を説明する図である。
【0087】
位置合わせ部21は、多重解像度分解部20から参照ピクチャKの多重解像度成分、局部復号済ピクチャK1の多重解像度成分及び局部復号済ピクチャK2の多重解像度成分を入力する(ステップS701)。
【0088】
位置合わせ部21は、参照ピクチャKの多重解像度成分における所定階層の低周波帯域成分LL1 1,LL1 2,LL1 3,LL1 4のそれぞれについて、ブロック(位置合わせ元ブロック)毎に分割する(ステップS702)。
【0089】
位置合わせ部21は、低周波帯域成分LL1 1,LL1 2,LL1 3,LL1 4のそれぞれについて、位置合わせ元ブロックと、他の低周波帯域成分LL1 1,LL1 2,LL1 3,LL1 4内のブロックとの間で位置合わせを行う(ステップS703)。
【0090】
例えば位置合わせ部21は、位置合わせ元ブロックと後者のブロックとの間で、後者のブロックを1サンプル毎ずらしてブロックマッチングを行う。そして、位置合わせ部21は、位置合わせ元ブロックのサンプルの値と後者のブロックのサンプルの値との間の差分の絶対値が最小となる後者のブロックの位置を特定する。
【0091】
位置合わせ部21は、特定した後者の位置のブロックを位置合わせ先ブロックに設定し、図8の左側に示すように、位置合わせ元ブロックの識別子及び位置合わせ先ブロックの識別子からなる位置合わせ情報M1 q1 q’を生成する。q=1~4であり、q’はq’=1~4かつq≠q’である。
【0092】
図8の左側を参照して、位置合わせ部21は、低周波帯域成分LL1 1内の位置合わせ元ブロックと、他の低周波帯域成分LL1 2,LL1 3,LL1 4内のブロックとの間でそれぞれ位置合わせを行い、位置合わせ情報M1 11 2,M1 11 3,M1 11 4を生成する。低周波帯域成分LL1 1内の位置合わせ元ブロックは、点線で区切られたブロック(分割により得られたブロック)であり、例えばブロックM1 1である。
【0093】
同様に、位置合わせ部21は、低周波帯域成分LL1 2内の位置合わせ元ブロックと、他の低周波帯域成分LL1 1,LL1 3,LL1 4内のブロックとの間でそれぞれ位置合わせを行い、位置合わせ情報M1 21 1,M1 21 3,M1 21 4を生成する。また、位置合わせ部21は、低周波帯域成分LL1 3内の位置合わせ元ブロックと、他の低周波帯域成分LL1 1,LL1 2,LL1 4内のブロックとの間でそれぞれ位置合わせを行い、位置合わせ情報M1 31 1,M1 31 2,M1 31 4を生成する。さらに、位置合わせ部21は、低周波帯域成分LL1 4内の位置合わせ元ブロックと、他の低周波帯域成分LL1 1,LL1 2,LL1 3内のブロックとの間でそれぞれ位置合わせを行い、位置合わせ情報M1 41 1,M1 41 2,M1 41 3を生成する。
【0094】
図7に戻って、位置合わせ部21は、参照ピクチャKの低周波帯域成分LL1 1,LL1 2,LL1 3,LL1 4のそれぞれについて、位置合わせ元ブロックと、局部復号済ピクチャK1の低周波帯域成分LL2 1,LL2 2,LL2 3,LL2 4内のブロックとの間で位置合わせを行う(ステップS704)。
【0095】
具体的には、位置合わせ部21は、ステップS703と同様に、位置合わせ元ブロックと後者のブロックとの間で、後者のブロックを1サンプル毎ずらしてブロックマッチングを行い、両者のサンプルの値の差分の絶対値が最小となる後者のブロックの位置を特定する。
【0096】
位置合わせ部21は、特定した後者の位置のブロックを位置合わせ先ブロックに設定し、図8の右下に示すように、位置合わせ元ブロックの識別子及び位置合わせ先ブロックの識別子からなる位置合わせ情報M1 q2 qを生成する。
【0097】
図8の右下を参照して、位置合わせ部21は、低周波帯域成分LL1 1内の位置合わせ元ブロックと、局部復号済ピクチャK1の低周波帯域成分LL2 1,LL2 2,LL2 3,LL2 4内のブロックとの間でそれぞれ位置合わせを行い、位置合わせ情報M1 12 1,M1 12 2,M1 12 3,M1 12 4を生成する。
【0098】
同様に、位置合わせ部21は、低周波帯域成分LL1 2内の位置合わせ元ブロックと、局部復号済ピクチャK1の低周波帯域成分LL2 1,LL2 2,LL2 3,LL2 4内のブロックとの間でそれぞれ位置合わせを行い、位置合わせ情報M1 22 1,M1 22 2,M1 22 3,M1 22 4を生成する。また、位置合わせ部21は、低周波帯域成分LL1 3内及びLL1 4内の位置合わせ元ブロックについてそれぞれ位置合わせを行い、位置合わせ情報M1 32 1,M1 32 2,M1 32 3,M1 32 4及び位置合わせ情報M1 42 1,M1 42 2,M1 42 3,M1 42 4生成する。
【0099】
図7に戻って、位置合わせ部21は、ステップS703と同様に、局部復号済ピクチャK2について位置合わせを行う(ステップS705)。
【0100】
図8の右上を参照して、位置合わせ部21は、位置合わせにより、位置合わせ情報M1 13 1,M1 13 2,M1 13 3,M1 13 4を生成し、同様に、位置合わせ情報M1 23 1,M1 23 2,M1 23 3,M1 23 4等を生成する。
【0101】
図7に戻って、位置合わせ部21は、ステップS703~S705にて生成した位置合わせ情報を確度判定部22に出力する(ステップS706)。
【0102】
このように、位置合わせ部21により、参照ピクチャKの低周波帯域成分LL1の位置合わせ元ブロックの識別子と、当該位置合わせ元ブロックのサンプルの値に最もマッチングした参照ピクチャKの他の低周波帯域成分LL1の位置合わせ先ブロックの識別子とからなる位置合わせ情報が生成される。また、位置合わせ部21により、参照ピクチャKの低周波帯域成分LL1の位置合わせ元ブロックの識別子と、当該位置合わせ元ブロックのサンプルの値に最もマッチングした局部復号済ピクチャK1,K2の低周波帯域成分LLの位置合わせ先ブロックの識別子とからなる位置合わせ情報が生成される。つまり、位置合わせ情報の示す位置合わせ元ブロックと位置合わせ先ブロックとは、低周波帯域成分LLが似ていることとなる。
【0103】
〔確度判定部22〕
次に、図3に示した確度判定部22の処理について詳細に説明する。図9は、確度判定部22の第1処理例を示すフローチャートであり、図4に示したステップS404の処理を示している。図10は、水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのブロックのパワーを説明する図である。
【0104】
確度判定部22は、位置合わせ部21から位置合わせ情報を入力する(ステップS901)。そして、確度判定部22は、位置合わせ情報毎に、後述するステップS902~S909の処理を行う。
【0105】
確度判定部22は、位置合わせ情報における位置合わせ元ブロックについて、低周波帯域成分LL1内の当該位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1内のブロックを特定し、当該ブロックのパワー(位置合わせ元パワー)P(LH1),P(HL1),P(HH1)を算出する(ステップS902)。
【0106】
図10に示すように、低周波帯域成分LL1内の位置合わせ元ブロックと、これと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1内のブロックとは、低周波帯域成分LL1内における位置合わせ元ブロックの周波数位置と、水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1内における前記ブロックの周波数位置とが同じ位置関係にある。
【0107】
図10の左側を参照して、確度判定部22は、例えば位置合わせ元ブロックが低周波帯域成分LL1 1内のブロックM1 1の場合、これと同じ位相位置の水平高周波帯域成分LH1 1内のブロックを特定する。そして、確度判定部22は、特定したブロックのパワーP(LH1 1)を算出する。
【0108】
同様に、確度判定部22は、低周波帯域成分LL1 1内のブロックM1 1と同じ位相位置の垂直高周波帯域成分HL1 1内のブロックを特定し、当該ブロックのパワーP(HL1 1)を算出する。また、確度判定部22は、低周波帯域成分LL1 1内のブロックM1 1と同じ位相位置の対角高周波帯域成分HH1 1内のブロックを特定し、当該ブロックのパワーP(HH1 1)を算出する。
【0109】
図9に戻って、確度判定部22は、ステップS902にて算出した水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1内のブロックのパワーP(LH1),P(HL1),P(HH1)を合計する。そして、確度判定部22は、合計値(P(LH1)+P(HL1)+P(HH1))で正規化したパワー(位置合わせ元正規化パワー)PN(LH1),PN(HL1),PN(HH1)を算出する(ステップS903)。
【0110】
確度判定部22は、位置合わせ情報における位置合わせ先ブロックについて、低周波帯域成分LL内の当該位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HH内のブロックを特定し、当該ブロックのパワー(位置合わせ先パワー)P(LH),P(HL),P(HH)を算出する(ステップS904)。
【0111】
図10の左側を参照して、確度判定部22は、例えば位置合わせ先ブロックが低周波帯域成分LL1 4内のブロックα1の場合、これと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1 4,HL1 4,HH1 4内のブロックを特定する。そして、確度判定部22は、特定したブロックのパワーP(LH1 4),P(HL1 4),P(HH1 4)を算出する。
【0112】
同様に、確度判定部22は、例えば位置合わせ先ブロックが局部復号済ピクチャK1の低周波帯域成分LL2 2内のブロックα2の場合、これと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH2 2,HL2 2,HH2 2内のブロックのパワーP(LH2 2),P(HL2 2),P(HH2 2)を算出する。
【0113】
また、確度判定部22は、例えば位置合わせ先ブロックが局部復号済ピクチャK2の低周波帯域成分LL3 3内のブロックα3の場合、これと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH3 3,HL3 3,HH3 3内のブロックのパワーP(LH3 3),P(HL3 3),P(HH3 3)を算出する。
【0114】
図9に戻って、確度判定部22は、ステップS904にて算出した水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HH内のブロックのパワーP(LH),P(HL),P(HH)を合計する。そして、確度判定部22は、合計値(P(LH)+P(HL)+P(HH))で正規化したパワー(位置合わせ先正規化パワー)PN(LH),PN(HL),PN(HH)を算出する(ステップS905)。
【0115】
確度判定部22は、当該位置合わせ情報について、水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのそれぞれについて、位置合わせ元正規化パワーPN(LH1)と位置合わせ先正規化パワーPN(LH)との差分の絶対値、位置合わせ元正規化パワーPN(HL1)と位置合わせ先正規化パワーPN(HL)との差分の絶対値、及び位置合わせ元正規化パワーPN(HH1)と位置合わせ先正規化パワーPN(HH)との差分の絶対値を算出する。
【0116】
確度判定部22は、これらの差分の絶対値の合計値DN(MM)算出し、合計値DN(MM)の逆数を確度に設定する(ステップS906)。MMは位置合わせ情報である。
【0117】
合計値DN(MM)が小さいほど、確度は高くなる。この場合、参照ピクチャKの低周波帯域成分LL1内の位置合わせ元ブロックから、これと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1内のブロックへのパワーの方向性と、参照ピクチャKの他の低周波帯域成分LL1内及び局部復号済ピクチャK1,K2の低周波帯域成分LL内の位置合わせ先ブロックから、これと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HH内のブロックへのパワーの方向性とが似ているものと判断される。一方、合計値DN(MM)が大きいほど、確度は低くなる。この場合、位置合わせ元のパワーの方向性と、位置合わせ先のパワーの方向性とが似ていないものと判断される。
【0118】
確度判定部22は、合計値DN(MM)が予め設定された閾値THよりも小さいか否かを判定し(ステップS907)、合計値DN(MM)が閾値THよりも小さいと判定した場合(ステップS907:Y:DN(MM)<TH)、当該位置合わせ情報MMを採用すると判断する(ステップS908)。
【0119】
これにより、合計値DN(MM)が閾値THよりも小さいと判定された場合、確度が高く方向性が似ているとして、当該位置合わせ情報MMが採用される。
【0120】
一方、確度判定部22は、ステップS907において、合計値DN(MM)が閾値THよりも小さくない(合計値DN(MM)が閾値TH以上である)と判定した場合(ステップS907:N:DN(MM)≧TH)、当該位置合わせ情報MMを採用しないと判断する(ステップS909)。
【0121】
これにより、合計値DN(MM)が閾値TH以上であると判定された場合、確度が低く方向性が似ていないとして、当該位置合わせ情報MMは不採用となる。
【0122】
確度判定部22は、ステップS908,S909から移行して、全ての位置合わせ情報について処理が完了したか否かを判定する(ステップS910)。確度判定部22は、ステップS910において、全ての位置合わせ情報について処理が完了していないと判定した場合(ステップS910:N)、次の位置合わせ情報について、ステップS902~S909の処理を行う。
【0123】
一方、確度判定部22は、ステップS910において、全ての位置合わせ情報について処理が完了したと判定した場合(ステップS910:Y)、ステップS908にて採用した位置合わせ情報MMを判定後の位置合わせ情報に設定する。そして、確度判定部22は、判定後の位置合わせ情報、及び当該判定後の位置合わせ情報におけるステップS906にて設定した確度を割り付け部23に出力する(ステップS911)。
【0124】
このように、確度判定部22により、位置合わせ元の周波数成分のパワーの方向性と位置合わせ先の周波数成分のパワーの方向性とが似ている位置合わせ情報が判定後の位置合わせ情報として設定される。また、確度判定部22により、その方向性の似ている程度を示す確度が設定される。
【0125】
図11は、確度判定部22の第2処理例を示すフローチャートであり、図4に示したステップS404の処理を示している。図11のステップS1101~S1103,S1105,S1106,S1108は、それぞれ図10のステップS901~S906に相当する。確度判定部22は、位置合わせ情報毎に、ステップS1102~S1112の処理を行う。
【0126】
確度判定部22は、ステップS1103から移行して、水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1内のブロックのパワーP(LH1),P(HL1),P(HH1)の合計値(P(LH1)+P(HL1)+P(HH1))を位置合わせ元の合計パワーMPとして求める(ステップS1104)。
【0127】
また、確度判定部22は、ステップS1106から移行して、水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HH内のブロックのパワーP(LH),P(HL),P(HH)の合計値(P(LH)+P(HL)+P(HH))と位置合わせ先の合計パワーSPとして求める(ステップS1107)。
【0128】
確度判定部22は、ステップS1108から移行して、合計値DN(MM)が予め設定された閾値THよりも小さいか否かを判定し(ステップS1109)、合計値DN(MM)が閾値THよりも小さいと判定した場合(ステップS1109:Y:DN(MM)<TH)、ステップS1110へ移行する。
【0129】
一方、確度判定部22は、ステップS1109において、合計値DN(MM)が閾値THよりも小さくない(合計値DN(MM)が閾値TH以上である)と判定した場合(ステップS1109:N:DN(MM)≧TH)、ステップS1112へ移行する。
【0130】
確度判定部22は、ステップS1109(Y)から移行して、位置合わせ先の合計パワーSPが位置合わせ元の合計パワーMPよりも大きいか否かを判定する(ステップS1110)。
【0131】
確度判定部22は、ステップS1110において、位置合わせ先の合計パワーSPが位置合わせ元の合計パワーMPよりも大きいと判定した場合(ステップS1110:Y:SP>MP)、当該位置合わせ情報MMを採用すると判断する(ステップS1111)。
【0132】
これにより、合計値DN(MM)が閾値THよりも小さく、かつ位置合わせ先の合計パワーSPが位置合わせ元の合計パワーMPよりも大きいと判定された場合、確度が高く方向性が似ており、かつ、後段の再構成部24により超解像化する方向の(鮮鋭化した)超解像ピクチャCが生成される(入力動画像が鮮鋭化している場合に、これに対応した超解像ピクチャCが生成される)として、当該位置合わせ情報MMが採用される。
【0133】
一方、確度判定部22は、ステップS1110において、位置合わせ先の合計パワーSPが位置合わせ元の合計パワーMPよりも大きくない(以下である)と判定した場合(ステップS1110:N:SP≦MP)、ステップS1112へ移行する。
【0134】
確度判定部22は、ステップS1109(N)またはステップS1110(N)から移行して、当該位置合わせ情報MMを採用しないと判断する(ステップS1112)。
【0135】
これにより、合計値DN(MM)が閾値TH以上であると判定された場合、確度が低く方向性が似ていないとして、当該位置合わせ情報MMは不採用となる。また、位置合わせ先の合計パワーSPが位置合わせ元の合計パワーMP以下であると判定された場合、後段の再構成部24により超解像化する方向の超解像ピクチャCが生成されない(入力動画像が鮮鋭化している場合に、これに対応した超解像ピクチャCが生成されない)として、当該位置合わせ情報MMは不採用となる。
【0136】
確度判定部22は、ステップS1111,S1112から移行して、全ての位置合わせ情報について処理が完了したか否かを判定する(ステップS1113)。確度判定部22は、ステップS1113において、全ての位置合わせ情報について処理が完了していないと判定した場合(ステップS1113:N)、次の位置合わせ情報について、ステップS1102~S1112の処理を行う。
【0137】
一方、確度判定部22は、ステップS1113において、全ての位置合わせ情報について処理が完了したと判定した場合(ステップS1113:Y)、ステップS1111にて採用した位置合わせ情報を判定後の位置合わせ情報に設定する。そして、確度判定部22は、判定後の位置合わせ情報、及び当該判定後の位置合わせ情報におけるステップS1108にて設定した確度を割り付け部23に出力する(ステップS1114)。
【0138】
このように、確度判定部22により、パワーの方向性が似ており、かつ後段の再構成部24により超解像化する方向の超解像ピクチャCが生成されると判断された位置合わせ情報が判定後の位置合わせ情報として設定される。また、確度判定部22により、その方向性の似ている程度を示す確度が設定される。
【0139】
図12は、判定後の位置合わせ情報の具体例を説明する図である。この具体例では、図9に示した第1処理例により、参照ピクチャKの低周波帯域成分LL1 1における位置合わせ元正規化パワーPN(LH1 1),PN(HL1 1),PN(LL1 1)と、位置合わせ先正規化パワーPN(LH2 2),PN(HL2 2),PN(HH2 2)との差分の絶対値の合計値DN(M1 12 2)が閾値TH以下であり、位置合わせ情報M1 12 2のみが採用されたものとする。
【0140】
または、図11に示した第2処理例により、合計値DN(M1 12 2)が閾値TH以下であり、かつ位置合わせ先の合計パワーSPが位置合わせ元の合計パワーMPよりも大きく、位置合わせ情報M1 12 2のみが採用されたものとする。
【0141】
この場合、判定後の位置合わせ情報M1 12 2のみが確度判定部22から割り付け部23に出力される。
【0142】
〔割り付け部23〕
次に、図3に示した割り付け部23の処理について詳細に説明する。図13は、割り付け部23の第1処理例を示すフローチャートであり、図4に示したステップS405の処理が置き換え処理の場合を示している。図14は、割り付けの具体例を説明する図である。
【0143】
割り付け部23は、確度判定部22から判定後の位置合わせ情報及びその確度を入力する(ステップS1301)。そして、割り付け部23は、判定後の位置合わせ情報の示す位置合わせ元ブロック毎に、すなわち同じ位置合わせ元ブロックの識別子を含む全ての判定後の位置合わせ情報を単位として、ステップS1302,S1303の処理を行う。
【0144】
図8に示した例においては、参照ピクチャKの低周波帯域成分LL1 1内の位置合わせ元ブロックであるブロックM1 1について、当該ブロックM1 1の識別子を含む全ての判定後の位置合わせ情報を対象にして処理が行われる。参照ピクチャKの低周波帯域成分LL1 2,LL1 3,LL1 4内の位置合わせ元ブロックであるブロックM1 2,M1 3,M1 4のそれぞれについても同様である。
【0145】
割り付け部23は、同じ位置合わせ元ブロックの識別子を含む全ての判定後の位置合わせ情報のうち、確度の最も高い1つの位置合わせ情報を特定する(ステップS1302)。
【0146】
図8に示した例を参照して、位置合わせ元ブロックであるブロックM1 1について、当該ブロックM1 1の識別子を含む全ての判定後の位置合わせ情報が、例えば位置合わせ情報M1 11 2,M1 11 3,M1 11 4,M1 12 2,M1 13 3(ブロックM1 1から実際に矢印が出ている位置合わせ情報のみ)である場合を想定する。この場合、割り付け部23は、位置合わせ元ブロックであるブロックM1 1について、位置合わせ情報M1 11 2,M1 11 3,M1 11 4,M1 12 2,M1 13 3のうち、確度の最も高い1つの位置合わせ情報を特定する。
【0147】
割り付け部23は、確度の最も高い1つの位置合わせ情報について、位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのブロックの値を、位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1のブロックの値にそれぞれ割り付けて置き換えることで、割り付け後(及び置き換え後)の参照ピクチャKの多重解像度成分を生成する(ステップS1303)。
【0148】
割り付け部23は、全ての位置合わせ元ブロックの処理が完了したか否かを判定する(ステップS1304)。割り付け部23は、ステップS1304において、全ての位置合わせ元ブロックの処理が完了していないと判定した場合(ステップS1304:N)、ステップS1302へ移行し、次の位置合わせ元ブロックについて、ステップS1302,S1303の処理を行う。
【0149】
一方、割り付け部23は、ステップS1304において、全ての位置合わせ元ブロックの処理が完了したと判定した場合(ステップS1304:Y)、割り付け後の参照ピクチャKの多重解像度成分を再構成部24に出力する(ステップS1305)。
【0150】
図14は、割り付けの具体例を説明する図であり、割り付け部23により特定される確度の最も高い位置合わせ情報を位置合わせ情報M1 12 2とする。
【0151】
この場合、割り付け部23は、位置合わせ情報M1 12 2における位置合わせ先ブロックであるブロックM2 2と同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH2 2,HL2 2,HH2 2のブロックの値を、位置合わせ元ブロックであるブロックM1 1と同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1 1,HL1 1,HH1 1のブロックの値にそれぞれ割り付けて置き換えることで、割り付け後の参照ピクチャKの多重解像度成分を生成する。
【0152】
図15は、割り付け部23の第2処理例を示すフローチャートであり、図4に示したステップS405の処理が平均値置き換え処理の場合を示している。
【0153】
割り付け部23は、確度判定部22から判定後の位置合わせ情報及びその確度を入力する(ステップS1501)。そして、割り付け部23は、判定後の位置合わせ情報の示す位置合わせ元ブロック毎に、すなわち同じ位置合わせ元ブロックの識別子を含む全ての判定後の位置合わせ情報を単位として、ステップS1502,S1503の処理を行う。
【0154】
割り付け部23は、同じ位置合わせ元ブロックの識別子を含む全ての判定後の位置合わせ情報について、位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1のブロックの値、及び、対応する全ての位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのブロックの値を成分毎に合計し、成分毎に平均値を算出する(ステップS1502)。
【0155】
これにより、水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのそれぞれについて、ブロックの平均値が得られる。
【0156】
割り付け部23は、ステップS1502にて算出した位置合わせ先ブロックの水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのブロックの平均値を、位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1のブロックの値にそれぞれ割り付けて置き換え、割り付け後(及び置き換え後)の参照ピクチャKの多重解像度成分を生成する(ステップS1503)。
【0157】
割り付け部23は、全ての位置合わせ元ブロックの処理が完了したか否かを判定する(ステップS1504)。割り付け部23は、ステップS1504において、全ての位置合わせ元ブロックの処理が完了していないと判定した場合(ステップS1504:N)、ステップS1502へ移行し、次の位置合わせ元ブロックについて、ステップS1502,S1503の処理を行う。
【0158】
一方、割り付け部23は、ステップS1504において、全ての位置合わせ元ブロックの処理が完了したと判定した場合(ステップS1504:Y)、割り付け後の参照ピクチャKの多重解像度成分を再構成部24に出力する(ステップS1505)。
【0159】
前述のとおり、位置合わせ情報の示す位置合わせ元ブロックと位置合わせ先ブロックとは、低周波帯域成分LLが似ている。このため、割り付け部23により、位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1と位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHとが似ていると仮定して割り付けが行われ、割り付け後の参照ピクチャKの多重解像度成分が生成される。
【0160】
尚、図15に示した第2処理例では、割り付け部23は、平均値置き換え処理を行うようにしたが、確度に応じた重み付け平均値置き換え処理を行うようにしてもよい。確度が高いほど大きい重み係数を用い、確度が低いほど小さい重み係数を用いる。
【0161】
具体的には、割り付け部23は、位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのブロックの値に、当該位置合わせ情報の確度に応じた重み係数を乗算することで、重み付け結果を求める。そして、割り付け部23は、位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1のブロックの値、及び、位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのブロックの重み付き結果を成分毎に合計し、成分毎に重み付き平均値を算出する。
【0162】
割り付け部23は、位置合わせ先ブロックの水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHのブロックの重み付き平均値を、位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1のブロックの値にそれぞれ割り付けて置き換え、割り付け後(及び置き換え後)の参照ピクチャKの多重解像度成分を生成する。
【0163】
以上のように、本発明の実施形態の動画像符号化装置1によれば、多重解像度分解部20は、参照ピクチャK及びその前後の局部復号済ピクチャK1,K2を多階層のウェーブレットパケット分解する。
【0164】
位置合わせ部21は、参照ピクチャKの低周波帯域成分LL1のそれぞれを複数のブロック(位置合わせ元ブロック)に分割する。そして、位置合わせ部21は、位置合わせ元ブロックと、参照ピクチャKの他の低周波帯域成分LL1内のブロック、局部復号済ピクチャK1の低周波帯域成分LL2内のブロック及び局部復号済ピクチャK2の低周波帯域成分LL3内のブロックとの間でブロックマッチングによる位置合わせを行い、位置合わせ元ブロックの識別子及び位置合わせ先ブロックの識別子からなる位置合わせ情報を生成する。
【0165】
これにより、低周波帯域成分LLが似ている位置合わせ元ブロック及び位置合わせ先ブロックを特定するための位置合わせ情報が生成される。
【0166】
確度判定部22は、位置合わせ情報毎に、参照ピクチャKの低周波帯域成分LL1内の位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1内のブロックのパワーを算出すると共に、参照ピクチャK、局部復号済ピクチャK1及び局部復号済ピクチャK2の低周波帯域成分LL内の位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HH内のブロックのパワーを算出する。そして、確度判定部22は、これらのパワーに基づいて確度を求め、確度の高い位置合わせ情報を判定後の位置合わせ情報とする。
【0167】
これにより、図9に示した第1処理例では、位置合わせ部21により生成された位置合わせ情報のうち、位置合わせ元の周波数成分のパワーの方向性と位置合わせ先の周波数成分のパワーの方向性とが似ている位置合わせ情報が、判定後の位置合わせ情報として設定される。
【0168】
また、図11に示した第2処理例では、位置合わせ部21により生成された位置合わせ情報のうち、パワーの方向性が似ており、かつ再構成部24により超解像化する方向の超解像ピクチャCが生成されると判断された位置合わせ情報が判定後の位置合わせ情報として設定される。つまり、入力動画像が鮮鋭化している場合に、これに対応した超解像ピクチャCが生成され、予測ピクチャを生成する際の予測精度が高くなる。
【0169】
割り付け部23は、判定後の位置合わせ情報及びその確度に基づいて、位置合わせ元ブロック毎に、位置合わせ先ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HH内のブロックを、位置合わせ元ブロックと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH1,HL1,HH1内のブロックに割り付けることで、前者のブロックに基づいた値(ブロックの値、平均値等)を後者のブロックの新たな値に設定することで、割り付け後の新たな参照ピクチャKの多重解像度成分を生成する。
【0170】
一般に、入力動画像のピクチャは周波数成分が連続していることから、位置合わせ元ブロック及び位置合わせ先ブロックの低周波帯域成分LLが似ている場合、これと同じ位相位置の水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHも似ているものと仮定できる。このため、水平、垂直及び対角高周波帯域成分LH,HL,HHが似ているブロック間(同一ピクチャ内のブロック間、当該ピクチャのブロックとその前後のピクチャのブロックとの間)で割り付けが行われる。
【0171】
再構成部24は、割り付け後の参照ピクチャKの多重解像度成分をウェーブレットパケット再構成し、参照ピクチャKの超解像ピクチャCを生成する。
【0172】
これにより、動画像のピクチャの画面間予測処理を行う際に、画面間でオブジェクトがぼやけたり鮮鋭化したりする場合であっても、精度の高い予測ピクチャを生成し、符号化効率を向上させることができる。
【0173】
〔動画像復号装置2〕
次に、本発明の実施形態による動画像復号装置について説明する。図16は、本発明の実施形態による動画像復号装置の構成例を示すブロック図である。この動画像復号装置2は、エントロピー復号部50、逆量子化部51、逆直交変換部52、加算部53、画面内予測部54、インループフィルタ55、画面間予測部56及びスイッチ57を備えている。尚、図16には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0174】
エントロピー復号部50は、図1に示した動画像符号化装置1から出力された符号化信号を入力し、図1に示したエントロピー符号化部120の逆の処理を行うことで、符号化信号に対しエントロピー復号を行い、量子化インデックス列及びパラメータを生成する。
【0175】
エントロピー復号部50は、量子化インデックス列を逆量子化部51に出力し、所定領域毎に選択された予測ピクチャの種類及び算出された動きベクトル等を含むパラメータを画面間予測部56に出力すると共に、他のパラメータを逆量子化部51等に出力する。
【0176】
逆量子化部51は、エントロピー復号部50から量子化インデックス列を入力し、図1に示した量子化部112の逆の処理を行うことで、量子化インデックス列を逆量子化し、変換係数列を生成する。そして、逆量子化部51は、変換係数列を逆直交変換部52に出力する。
【0177】
逆直交変換部52は、逆量子化部51から変換係数列を入力し、図1に示した直交変換部111の逆の処理を行うことで、変換係数列を逆直交変換し、復号残差ピクチャを生成する。そして、逆直交変換部52は、復号残差ピクチャを加算部53に出力する。
【0178】
加算部53は、逆直交変換部52から復号残差ピクチャを入力すると共に、スイッチ57から予測ピクチャを入力する。そして、加算部53は、予測ピクチャに復号残差ピクチャを加算し、加算後ピクチャを画面内予測部54及びインループフィルタ55に出力する。
【0179】
画面内予測部54は、加算部53から加算後ピクチャを入力し、図1に示した画面内予測部116と同様の処理を行うことで、所定領域毎に、加算後ピクチャに画面内予測処理を施し、所定領域毎の画面内予測結果をスイッチ57に出力する。また、画面内予測部54は、加算後ピクチャを復号画像として出力する。これにより、元の動画像が復元される。
【0180】
インループフィルタ55は、加算部53から加算後ピクチャを入力し、図1に示したインループフィルタ117と同様の処理を行うことで、加算後ピクチャにフィルタ処理を施し、復号済ピクチャK’を生成する。そして、インループフィルタ55は、復号済ピクチャK’を画面間予測部56に出力する。
【0181】
画面間予測部56は、インループフィルタ55から復号済ピクチャK’を入力すると共に、エントロピー復号部50から、所定領域毎に選択された予測ピクチャの種類及び算出された動きベクトル等を含むパラメータを入力する。そして、画面間予測部56は、復号済ピクチャ(被予測ピクチャの参照ピクチャ)K’及びその前後の復号済ピクチャK1’,K2’を用いて、超解像ピクチャC’を生成する。また、画面間予測部56は、復号済ピクチャK’を用いてぼやけピクチャB’を生成する。復号済ピクチャK’、超解像ピクチャC’及びぼやけピクチャB’は、画面間予測処理のための参照ピクチャとして用いられる。尚、画面間予測部56は、ぼやけピクチャB’を生成する処理を行わなくてもよい。
【0182】
画面間予測部56は、所定領域毎に、パラメータに基づいて所定の画面間予測処理を行うことで、予測ピクチャを生成し、これを所定領域毎の画面間予測結果としてスイッチ57に出力する。また、画面間予測部56は、復号済ピクチャK’を復号画像として出力する。これにより、元の動画像が復元される。画面間予測部56の詳細については後述する。
【0183】
スイッチ57は、画面内予測部54から所定領域毎の画面内予測結果を入力すると共に、画面間予測部56から所定領域毎の画面間予測結果を入力し、いずれか一方を選択し、予測ピクチャとして加算部53に出力する。
【0184】
〔画面間予測部56〕
次に、図16に示した画面間予測部56について詳細に説明する。図17は、動画像復号装置2に備えた画面間予測部56の構成例を示すブロック図である。この画面間予測部56は、超解像処理部60、ぼやけ処理部61、フレームメモリ62、画面間予測処理部63及びパラメータ処理部64を備えている。尚、図17には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0185】
画面間予測部56は、インループフィルタ55から復号済ピクチャK’を入力し、復号済ピクチャK’をフレームメモリ62に格納する。また、画面間予測部56のパラメータ処理部64は、エントロピー復号部50から、所定領域毎に選択された予測ピクチャの種類及び算出された動きベクトル等を含むパラメータを入力し、パラメータを画面間予測処理部63に出力する。
【0186】
超解像処理部60は、復号済ピクチャK’に対し、図2及び図3に示した超解像処理部11と同様の本発明の実施形態による超解像処理を施し、超解像ピクチャC’を生成してフレームメモリ62に格納する。尚、超解像処理部60の処理は超解像処理部11の処理と同様であるため、ここでは説明を省略する。超解像処理部60は、復号済ピクチャK’に超解像処理を施して所定種類の超解像ピクチャC1’を生成し、超解像ピクチャC1’もフレームメモリ62に格納するようにしてもよい。
【0187】
ぼやけ処理部61は、復号済ピクチャK’に対し、図2に示したぼやけ処理部12と同様のぼやけ処理を施し、ぼやけピクチャB’を生成してフレームメモリ62に格納する。
【0188】
フレームメモリ62には、復号済ピクチャK’、超解像ピクチャC’及びぼやけピクチャB’がフレーム毎に格納される。
【0189】
画面間予測処理部63は、パラメータ処理部64からパラメータを入力し、パラメータに含まれる予測ピクチャの種類に応じて、フレームメモリ62から復号済ピクチャK’、超解像ピクチャC’及びぼやけピクチャB’のいずれかを読み出す。
【0190】
画面間予測処理部63は、読み出した復号済ピクチャK’、超解像ピクチャC’及びぼやけピクチャB’のいずれか、並びにパラメータに含まれる動きベクトル等に基づいて、画面間予測を行い、所定領域毎に予測ピクチャを求める。
【0191】
画面間予測処理部63は、所定領域毎の予測ピクチャを画面間予測結果としてスイッチ57に出力する。
【0192】
また、図示しない読み出し部は、フレームメモリ62から復号済ピクチャK’を読み出し、これを復号画像として出力する。尚、画面間予測部56は、ぼやけ処理部61を備えていなくてもよい。
【0193】
以上のように、本発明の実施形態の動画像復号装置2によれば、動画像符号化装置1の場合と同様に、動画像のピクチャの画面間予測処理を行う際に、画面間でオブジェクトがぼやけたり鮮鋭化したりする場合であっても、精度の高い予測ピクチャを生成し、符号化効率を向上させることができる。
【0194】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0195】
例えば図1に示した動画像符号化装置1において、画面間予測部10の超解像処理部11は、参照ピクチャK、及び当該参照ピクチャKの前後の局部復号済ピクチャK1,K2を対象として超解像処理を行うようにした。これに対し、超解像処理部11は、参照ピクチャK及び当該参照ピクチャKの前の局部復号済ピクチャK1を対象とするようにしてもよいし、参照ピクチャK及び当該参照ピクチャKの後の局部復号済ピクチャK2を対象とするようにしてもよい。また、局部復号済ピクチャK1,K2のそれぞれについて、1つのピクチャを対象とするようにしてもよいし、2以上の所定数のピクチャを対象とするようにしてもよい。図16に示した動画像復号装置2についても同様である。
【0196】
また、動画像符号化装置1において、画面間予測部10の超解像処理部11は、多重解像度分解部20、位置合わせ部21、確度判定部22、割り付け部23及び再構成部24を備えるようにした。これに対し、超解像処理部11は、確度判定部22を除く、多重解像度分解部20、位置合わせ部21、割り付け部23及び再構成部24を備えるようにしてもよい。この場合、割り付け部23は、位置合わせ部21から位置合わせ情報を入力する。動画像復号装置2に備えた画面間予測部56の超解像処理部60についても同様である。
【0197】
尚、本発明の実施形態による動画像符号化装置1及び動画像復号装置2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。動画像符号化装置1及び動画像復号装置2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0198】
動画像符号化装置1に備えた減算部110、直交変換部111、量子化部112、逆量子化部113、逆直交変換部114、加算部115、画面内予測部116、インループフィルタ117、画面間予測部10、スイッチ119及びエントロピー符号化部120の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0199】
また、動画像復号装置2に備えたエントロピー復号部50、逆量子化部51、逆直交変換部52、加算部53、画面内予測部54、インループフィルタ55、画面間予測部56及びスイッチ57の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0200】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【符号の説明】
【0201】
1,100 動画像符号化装置
2 動画像復号装置
10,56,118 画面間予測部
11,60 超解像処理部
12,61 ぼやけ処理部
13,62,122 フレームメモリ
14,63,121 画面間予測処理部
15 選択部
16,64 パラメータ処理部
20 多重解像度分解部
21 位置合わせ部
22 確度判定部
23 割り付け部
24 再構成部
50 エントロピー復号部
51,113 逆量子化部
52,114 逆直交変換部
53,115 加算部
54,116 画面内予測部
55,117 インループフィルタ
57,119 スイッチ
110 減算部
111 直交変換部
112 量子化部
120 エントロピー符号化部
K 局部復号済ピクチャ、被予測ピクチャの参照ピクチャ
K1 参照ピクチャKの前の局部復号済ピクチャ
K2 参照ピクチャKの後の局部復号済ピクチャ
K’ 復号済ピクチャ、被予測ピクチャの参照ピクチャ
K1’ 参照ピクチャK’の前の局部復号済ピクチャ
K2’ 参照ピクチャK’の後の局部復号済ピクチャ
B,B’ ぼやけピクチャ
C,C1,C’, C1 ’ 超解像ピクチャ
n ウェーブレットパケット分解数
LL 低周波帯域成分
LH 水平高周波帯域成分
HL 垂直高周波帯域成分
HH 対角高周波帯域成分
M ブロック
p 局部復号済ピクチャの番号
q 帯域の番号
MM 位置合わせ情報
P パワー
N 正規化パワー
MP,SP 合計パワー
N 合計値
H 閾値
α1,α2,α3 ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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