IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清製粉株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】麺類用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240327BHJP
   A23J 3/18 20060101ALI20240327BHJP
   A23J 3/30 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 C
A23J3/18
A23J3/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020044284
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021141871
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦行
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-191306(JP,A)
【文献】特許第6674583(JP,B1)
【文献】特開平8-51944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109-7/113
A23J 3/18
A23J 3/30
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュラム小麦由来の精製蛋白と小麦蛋白加水分解物とを含有する麺類用品質改良剤。
【請求項2】
前記デュラム小麦由来の精製蛋白と前記小麦蛋白加水分解物の含有比が、質量比で99:1~75:25である、請求項1記載の麺類用品質改良剤。
【請求項3】
前記デュラム小麦由来の精製蛋白と前記小麦蛋白加水分解物の合計含有量が50質量%以上である、請求項1又は2記載の麺類用品質改良剤。
【請求項4】
穀粉及び/又は澱粉を含有する粉と、請求項1~3のいずれか1項記載の麺類用品質改良剤とを含有する、麺類用穀粉組成物。
【請求項5】
前記穀粉及び/又は澱粉を含有する粉100質量部に対して、前記麺類用品質改良剤を前記デュラム小麦由来の精製蛋白と前記小麦蛋白加水分解物の合計量換算で0.1~15質量部含有する、請求項4記載の麺類用穀粉組成物。
【請求項6】
前記穀粉と澱粉を30:70~100:0の質量比で含有する、請求項4又は5に記載の麺類用穀粉組成物。
【請求項7】
前記麺類が低温保存される調理済み麺類である、請求項4~6のいずれか1項記載の麺類用穀粉組成物。
【請求項8】
前記調理済み麺類が、低温保存後、再度の加熱調理をされることなく喫食される調理済み麺類である、請求項7記載の麺類用穀粉組成物。
【請求項9】
請求項4~8のいずれか1項記載の麺類用穀粉組成物を用いる麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類用品質改良剤、及びそれを含む麺類用穀粉組成物、ならびに該麺類用品質改良剤を用いて得られる麺類及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α化した状態で冷蔵又は冷凍された麺類が販売されており、これらは、調理なし又は簡便な調理ですぐ喫食できるため便利な食品である。一方、低温保存される調理済み麺類は、澱粉の老化が進行しやすく、また時間の経過とともに水分が分散するため、食感が損なわれやすい。
【0003】
従来、麺類を製造する際に、食感の強化や経時変化の抑制を目的としてグルテン(小麦蛋白)を配合することが行われている。さらに、グルテンの分解物を麺類や他の食品の食感改良のために使用することも開示されている。特許文献1には、穀物蛋白質の分解物であって重量平均分子量が約3,000~約110,000の範囲で、かつ分解後の重量平均分子量Mwと分解前の重量平均分子量Moとの比率(Mw/Mo)が0.024~0.88の部分分解物1重量部に対し、穀物蛋白質を0.3~5重量部配合してなる麺用品質改良剤が記載されており、該穀物蛋白質としてグルテンを使用できること、また該麺用品質改良剤により、麺類に好ましい弾力性のある触感が得られ、かつその効果が麺類の加熱殺菌処理後、生麺や茹麺の冷蔵又は冷凍保存後、さらには即席麺においても持続されることが記載されている。特許文献2には、菓子類、パン類、フライ食品のバッターなどの撹拌を通じて製造される食品にサクサク感、ふんわり感などを付与することができる、起泡性が向上された小麦蛋白分解物を含む食品用品質改良剤が記載されている。該小麦蛋白分解物は、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーによる重量平均分子量(Mw)基準の分子量分布測定により得られる1,355~66,338の分子量範囲内のクロマトグラム曲線において、分子量17,000を境界とした高分子量領域(A)の低分子量領域(B)に対する面積比(A/B)が、0.25~0.5であることを特徴とする。
【0004】
特許文献1、2のような従来の食品製造技術で用いられている小麦蛋白は、通常、普通系小麦(6倍体小麦)由来の蛋白質である。一方、特許文献3には、デュラム小麦蛋白濃縮物が麺類に対して黄色みが強い色調と、弾力や歯ごたえのある良好な食感を与える特性があることが記載されている。また特許文献4には、100質量部中に、穀粉類40~85質量部、澱粉類10~50質量部、及び粗蛋白含量が50質量%以上のデュラム小麦由来の小麦蛋白0.5~15質量部を含有することを特徴とする麺類用穀粉組成物を含む麺類が、冷蔵又は冷凍で保存及び流通されても粘弾性等の食感が良好であり、かつ色調や喫食時のホグレ性に優れることが記載されている。しかしながら、デュラム小麦由来の小麦蛋白については流通、生産量が少なく、また生産コストもかかることから、これを多く配合した麺を工業的に大量生産することについては、生産能及び生産コストの面で未だ障害がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-280342号公報
【文献】特開2018-57409号公報
【文献】特開2002-191306号公報
【文献】特許第6408732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、調理された状態で低温保存されても粘弾性のある食感を保つことができる麺類を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、麺類の原料粉にデュラム小麦由来の小麦蛋白と、小麦蛋白加水分解物とを組み合わせて配合することにより、茹で伸び耐性に優れ、調理された状態で低温保存されても粘弾性のある食感を保つことができる麺類を製造することができることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、デュラム小麦由来の精製蛋白と小麦蛋白加水分解物とを含有する麺類用品質改良剤を提供する。
また本発明は、穀粉及び/又は澱粉を含有する粉と、前記麺類用品質改良剤とを含有する、麺類用穀粉組成物を提供する。
また本発明は、前記麺類用穀粉組成物を用いる麺類の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の麺類用品質改良剤を用いて製造した麺類は、茹で伸び耐性に優れ、茹で又は蒸し調理された状態で低温保存されても粘弾性のある食感を保つことができる。また本発明によれば、デュラム小麦由来の小麦蛋白を、小麦蛋白加水分解物と併用することで、単独使用の場合と比べて使用量を低減しながらも、麺類の品質を維持することができる。本発明によれば、流通量が少なく、コストの高いデュラム小麦由来の小麦蛋白の使用量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、麺類の製造に使用するための麺類用品質改良剤(以下、本発明の改良剤ともいう)を提供する。本明細書における麺類とは、麺線類、麺皮類等のあらゆる形状のものを含み、その例としては、うどん、素麺、冷麦、中華麺、パスタ(ショートパスタ、ロングパスタ、平打ちパスタ等を含む)、そば、餃子、焼売、ワンタンなどが挙げられる。麺線類としてはうどん及び中華麺が、麺皮類としては餃子が好ましい。
【0011】
本発明の改良剤は、デュラム小麦由来の小麦蛋白(以下、「デュラム小麦蛋白」ということがある)と、小麦蛋白加水分解物(以下、「小麦蛋白分解物」ということがある)とを含有する。
【0012】
本発明で用いるデュラム小麦蛋白は、デュラム小麦粉又はその製造工程で生じる蛋白質を多く含む画分から、普通小麦蛋白(いわゆるグルテン)の製造における定法に従って調製することができる。本発明の改良剤に用いられるデュラム小麦蛋白は、粗蛋白含量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。小麦蛋白中の粗蛋白含量は、燃焼法に基づいて測定することができる。
【0013】
本発明で用いる小麦蛋白分解物は、小麦蛋白を加水分解することによって調製することができる。あるいは、予め加水分解された小麦蛋白をさらに加水分解して、本発明で用いる小麦蛋白分解物を調製してもよい。該小麦蛋白分解物の原料となる小麦蛋白は、普通小麦蛋白でもデュラム小麦蛋白でもよい。コスト及び入手しやすさの観点からは、普通小麦蛋白が好ましい。麺類の茹で伸び耐性や食感向上の点ではデュラム小麦蛋白が好ましい。該加水分解の方法の例としては、酸処理、強アルカリ処理、酵素処理などが挙げられる。このうち酵素処理が好ましい。酵素処理に用いる酵素の例としては、蛋白分解酵素(プロテアーゼ)、ペプチド分解酵素(ペプチダーゼ)などが挙げられる。好ましくは、エンドプロテアーゼが用いられる。該酵素処理においては、例えば、小麦蛋白をエンドプロテアーゼで30分~5時間加水分解する。さらに、該加水分解の反応産物を酵素失活、精製、又は乾燥処理することが好ましい。得られた生成物を、小麦蛋白分解物として用いることができる。好ましくは、本発明で用いる小麦蛋白分解物の粗蛋白含有量は、70質量%以上である。小麦蛋白分解物中の粗蛋白含量は、燃焼法に基づいて測定することができる。
【0014】
本発明で用いる小麦蛋白分解物は、重量平均分子量Mwが、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは3,000~100,000である。本明細書における蛋白加水分解物の重量平均分子量Mwとは、ゲル濾過法(ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー)によって測定される値である。
【0015】
本発明の改良剤における、該デュラム小麦蛋白と該小麦蛋白分解物の含有比は、質量比で、デュラム小麦蛋白:小麦蛋白分解物=99:1~50:50が好ましく、99:1~75:25がより好ましく、99:1~85:15がさらに好ましく、98:2~88:12がさらに好ましく、95:5~90:10がさらに好ましい。
【0016】
本発明の改良剤は、該デュラム小麦蛋白と該小麦蛋白分解物からなるものであってもよく、又は、さらに後述するような麺類の製造に通常用いられる副材料を含んでいてもよい。好ましくは、本発明の改良剤が該デュラム小麦蛋白と該小麦蛋白分解物以外の他の成分を含有する場合、該他の成分の含有量は、改良剤全量中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下であり、言い換えると、該デュラム小麦蛋白と該小麦蛋白分解物との合計含有量が、改良剤全量中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。また、改良剤全量中、デュラム小麦蛋白と小麦蛋白分解物の粗蛋白量換算での合計含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。好ましくは、本発明の改良剤は小麦粉を含まない。
【0017】
本発明の改良剤を用いて麺類を製造する場合、本発明の改良剤を、麺類の原料粉に配合すればよい。したがって、本発明はまた、本発明の麺類用品質改良剤を含有する麺類用穀粉組成物を提供する。すなわち、当該麺類用穀粉組成物は、穀粉及び/又は澱粉と、本発明の麺類用品質改良剤とを含有する。
【0018】
当該麺類用穀粉組成物に含まれ得る穀粉の例としては、小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉、ライ麦粉などが挙げられ、好ましくは小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、及びそば粉が挙げられる。これらの穀粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。好ましくは、該穀粉は小麦粉を含む。小麦粉は、麺類の製造に一般に使用されるものであればよく、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉、ふすま粉、熱処理小麦粉(α化小麦粉、部分α化小麦粉、焙焼小麦粉等)などが挙げられる。これらの小麦粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。好ましくは、該麺類用穀粉組成物に含まれる穀粉は、その全量中の50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、なお好ましくは100質量%が小麦粉である。
【0019】
当該麺類用穀粉組成物に澱粉を配合することで、麺類のソフトで粘弾性のある食感をより向上させることができ、また麺類の冷凍耐性を向上させることができる。該麺類用穀粉組成物に含まれ得る澱粉の例としては、麺類の製造に一般に使用されるものであれば特に限定されず、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、及びそれらを加工(例えば、架橋化、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化など)した加工澱粉が挙げられる。本発明において、これら未加工澱粉及び加工澱粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。好ましくは、該澱粉はタピオカ由来の澱粉である。また好ましくは、該澱粉の全量中50~100質量%は加工澱粉であり、より好ましくは、該澱粉は加工澱粉である。該澱粉に加工澱粉を用いることで、麺類のソフトで粘弾性のある食感が冷蔵後にも維持されやすくなり、さらに麺類の冷凍耐性もより向上する。より好ましくは、該加工澱粉は加工タピオカ澱粉であり、さらに好ましくは、アセチル化、エーテル化及び架橋化からなる群より選択される1種以上の加工を行ったタピオカ澱粉である。該澱粉は、難消化性澱粉を含んでいてもよいが、必ずしもこれに限定されない。
【0020】
当該麺類用穀粉組成物は、麺類の製造に通常用いられる副材料をさらに含んでいてもよい。該副材料の例としては、食塩;かんすい;卵白粉、卵黄粉、全卵粉等の卵粉や液卵;キサンタンガム、ウェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸及びその塩やエステル、寒天、ゼラチン、ペクチン、タラガム、メチルセルロース類やその誘導体、マンナン、カードラン等の増粘剤;動植物油脂、乳化油脂、ショートニング等の油脂類;レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;炭酸塩、リン酸塩等の無機塩類;大豆蛋白質、カゼイン等の蛋白類(但し、上述したデュラム小麦蛋白及び小麦蛋白加水分解物を除く);糖類、デキストリン(難消化性含む)、食物繊維;エチルアルコール、pH調整剤、保存剤、酵素剤、酸化還元剤、色粉等の食品添加物、などが挙げられる。
【0021】
当該麺類用穀粉組成物は、上述の穀粉及び/又は澱粉、ならびに必要に応じて上述の副材料を含有する粉に、本発明の改良剤を添加することで調製することができる。本発明の麺類用穀粉組成物は、該穀粉及び/又は澱粉(さらに必要に応じて該副材料)を含有する粉100質量部に対して、本発明の改良剤を、該デュラム小麦蛋白と該小麦蛋白分解物との合計量換算で、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.15~10質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部含有する。あるいは、本発明の麺類用穀粉組成物における該改良剤の含有量は、該穀粉及び/又は澱粉(さらに必要に応じて該副材料)を含有する粉100質量部に対して、デュラム小麦蛋白と小麦蛋白分解物の粗蛋白量の合計量換算で、好ましくは0.06~12質量部、より好ましくは0.1~8質量部、さらに好ましくは0.3~8質量部である。
【0022】
好ましくは、本発明の麺類用穀粉組成物は穀粉を含有する。より好ましくは、本発明の麺類用穀粉組成物は穀粉と澱粉を含有する。該麺類用穀粉組成物における該穀粉及び澱粉の合計含有量は、全量中、99.9質量%以下であればよく、好ましくは75~99.9質量%、より好ましくは80~99.85質量%、さらに好ましくは80~99.5質量部、さらに好ましくは90~99.5質量部である。該麺類用穀粉組成物における該穀粉と澱粉の含有比は、質量比で、穀粉:澱粉=30:70~100:0が好ましく、40:60~90:10がより好ましく、50:50~80:20がさらに好ましい。本発明の麺類用原料粉において、該穀粉の含有量が少ないと、製造した麺類が食味や風味、食感に劣ることがあり、一方で該澱粉の含有量が少ないと、麺類を低温保存した際の食感が低下することがある。該麺類用原料粉における上述した副材料の含有量は、10質量%以下が好ましい。
【0023】
本発明の麺類用穀粉組成物を用いて麺類を製造することができる。本発明の麺類は、原料粉として本発明の麺類用穀粉組成物を用いる以外は、従来の麺類の製法と同様の手順で製造することができる。例えば、常法に従って、本発明の麺類用穀粉組成物に加水し、混練して、該麺類用穀粉組成物を含有する麺生地を作製する。次いで、該麺生地を成形して該麺類用穀粉組成物を含有する麺類を製造する。本発明において、該麺類用穀粉組成物への加水量は、麺類の種類等に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは該麺類用穀粉組成物100質量部に対して25~60質量部である。水分としては、通常使用される水、塩水、かん水などの他、ガス含有水(炭酸水等)を使用することもできる。麺生地の成形の方法は、圧延、複合や切出し等の工程を含むロール製麺、押出し、それらの組み合わせなど、特に限定されない。得られた生麺類に対して、さらに常法に従って、乾燥、調理、凍結、冷蔵、それらの組み合わせなどの処理を施してもよい。
【0024】
本発明の麺類用穀粉組成物を用いて製造される麺類の種類としては、生麺、調理麺(茹で麺、蒸し麺等)、それらの冷凍麺、冷蔵麺又はチルド麺、ならびにノンフライ即席麺、フライ即席麺、乾麺などが挙げられ、特に限定されない。好ましくは、本発明で製造される麺類は、加熱調理(例えば茹で又は蒸し調理)された後、低温(例えば冷蔵、チルド又は冷凍下で)保存される調理済み麺類である。好ましくは、該調理済み麺類は、加熱調理され低温保存された後、再度の加熱調理(茹で、蒸し、焼き、炒め、電子レンジ加熱等)をされることなく喫食される。
【実施例
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0026】
(1)デュラム小麦蛋白の調製
デュラム小麦粉(日清製粉製)に約0.7倍量の水を添加して混捏して生地とした。この生地に約5倍量の水を添加して混合及び洗浄した後、さらに水洗して生グルテンを調製した。得られた生グルテンを真空凍結乾燥した後、粉砕してデュラム小麦蛋白を得た(粗蛋白含量:約70質量%)。
【0027】
(2)小麦蛋白加水分解物の調製
普通小麦蛋白(AグルG、グリコ栄養食品(株))を水に分散させ、撹拌しながら加熱した。液温が50℃に達したところでエンドプロテアーゼ(プロチンNY100、天野エンザイム(株))を投入し、50℃にて1時間加水分解反応させた。反応液から遠心分離にて上澄み液を回収し、該上澄み液をpH5.0に調整した後、液温を70℃まで昇温させ、70℃にて30分間プロペラミキサーで攪拌しながら加熱して酵素を失活させた。失活液を、液温50℃まで冷却してから活性炭を投入し、精製した。精製後の液を珪藻土濾過し、水溶性部分を回収した。回収物を80℃で30分間加熱殺菌してから、スプレードライにより粉末化した。得られた粉末を、小麦蛋白加水分解物(粗蛋白含量:約85%)として用いた。
【0028】
(3)麺類用品質改良剤の調製
表1記載の配合で麺類用品質改良剤を調製した。デュラム小麦蛋白、及び小麦蛋白加水分解物は上記(1)及び(2)で調製したものを用いた。対照例として、デュラム小麦蛋白の代わりに普通小麦蛋白を含む麺類用品質改良剤を調製した。普通小麦蛋白は市販のグルテン(AグルG、粗蛋白含量約85%、グリコ栄養食品(株))を用いた。
【0029】
【表1】
【0030】
試験1
表1記載の麺類用品質改良剤を含む麺類を製造した。小麦粉は中力粉を用いた。加工澱粉はアセチル化タピオカ澱粉(A700;Jオイルミルズ)を用いた。表2記載の配合にて原料粉と水分(食塩含む)を混合し、ミキシング(高速6分間→低速7分間)して麺生地を調製した。該麺生地を製麺ロールにより圧延及び複合して麺帯を作製し、切り刃(#10角)で切り出して生うどん(麺厚3mm)を製造した。
【0031】
得られた生うどんを熱湯で10分間茹で、水洗冷却し、4℃で24時間保存した。得られた調理済み冷蔵うどん(麺1~10)に等倍量の麺つゆをかけ、10分後、食感(粘弾性)と茹で伸び耐性を、標準品(対照例の品質改良剤を用いて製造したうどん)との比較に基づき下記基準にて評価した。評価は訓練された10名のパネラーによって行い、10名の評価の平均点を求めた。結果を表3に示す。
<評価基準>
食感(粘弾性)
5点:標準品と比べて弾力に富み、硬さと粘りに優れる
4点:標準品と比べてやや弾力があり、硬さと粘りがやや優れる
3点:標準品と同等である
2点:標準品と比べてやや弾力がなく、硬さと粘りにやや劣る
1点:標準品と比べて弾力がなく、硬さと粘りに劣る
茹で伸び耐性
5点:標準品と比べて麺のふやけが軽度である
4点:標準品と比べて麺のふやけがやや軽度である
3点:標準品と同等のふやけ具合である
2点:標準品と比べて麺のふやけがやや進んでいる
1点:標準品と比べて麺のふやけの進行が著しい
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
試験2
表4記載の材料を用いて調理済み冷蔵うどん(麺11~12)を製造し、試験1で製造した標準品との比較に基づき、食感(粘弾性)と茹で伸び耐性を評価した。調理済み冷蔵うどんの製造及び評価は試験1と同様の手順で行った。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
試験3
表5記載の材料を用いて調理済み冷蔵うどん(麺13~16)を製造し、標準品(対照例の品質改良剤を用いた以外は同様の手順で製造したうどん)との比較に基づき、食感(粘弾性)と茹で伸び耐性を評価した。調理済み冷蔵うどんの製造及び評価は試験1と同様の手順で行った。結果を表5に示す。
【0037】
【表5】
【0038】
試験4
表6記載の配合で、対照例の麺類用品質改良剤を調製した。デュラム小麦蛋白は上記(1)で調製したものを用いた。普通小麦蛋白は市販のグルテン(AグルG、粗蛋白含量約85%、グリコ栄養食品)を用いた。
【0039】
麺類用品質改良剤を含む麺類を製造した。小麦粉は準強力粉を用いた。加工澱粉はアセチル化タピオカ澱粉(A700;Jオイルミルズ)を用いた。表7記載の配合にて原料粉と水分(食塩、かん水(「青かんすい」オリエンタル酵母工業製)含む)を混合し、ミキシング(高速6分間→低速7分間)して麺生地を調製した。該麺生地を製麺ロールにより圧延及び複合して麺帯を作製し、切り刃(#20角)で切り出して生中華麺(麺厚1.5mm)を製造した。
【0040】
得られた生中華麺を熱湯で2分間茹で、水洗冷却し、4℃で24時間保存した。得られた調理済み中華麺に等倍量の麺つゆをかけ、10分後、食感(粘弾性)と茹で伸び耐性を、表7記載の標準品を用いて試験1と同様の手順で評価した。結果を表7に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】