(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】光透過パネル、光透過装置
(51)【国際特許分類】
E04C 2/54 20060101AFI20240327BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20240327BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E04C2/54 C
E06B5/00 D
E06B9/24 Z
(21)【出願番号】P 2020045809
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 学
(72)【発明者】
【氏名】海法 圭
(72)【発明者】
【氏名】田中 義之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 友梨
(72)【発明者】
【氏名】木村 安希
(72)【発明者】
【氏名】管家 了
(72)【発明者】
【氏名】金藤 晶彦
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247015(JP,A)
【文献】特開平07-317451(JP,A)
【文献】特開2007-320163(JP,A)
【文献】特開平09-096023(JP,A)
【文献】特開2016-176278(JP,A)
【文献】特開平10-266732(JP,A)
【文献】登録実用新案第3216941(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00- 2/54
E06B 5/00
E06B 3/68-3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状である本体と、
ハニカム構造であり前記本体の厚さ方向に光を透過する複数の光透過部と、
前記光透過部の縁部
及び内面に配置され
、接着剤からなる端部部材と、を備え、
前記端部部材は外に露出している、
光透過パネル。
【請求項2】
前記端部部材は樹脂からなる請求項1に記載の光透過パネル。
【請求項3】
光透過パネルと、前記光透過パネルの少なくとも一方の面に配置された面材とを備え、
前記光透過パネルは、
板状である本体と、
ハニカム構造であり前記本体の厚さ方向に光を透過する複数の光透過部と、
前記光透過部の縁部に配置された端部部材と、
を有し、
前記面材は、厚さ方向に貫通する穴を有しており、前記穴は平面視で前記光透過部を複
数含む大きさを備えており、
前記穴の部位に配置された前記端部部材は外に露出している、
光透過装置。
【請求項4】
前記面材が2つ設けられており、
その一方の前記面材は前記光透過パネルの一方の面に配置され、他方の前記面材は前記光透過パネルの他方の面に配置され、
2つの前記面材では、前記穴の少なくとも1つにおいて、面内方向位置が同じである、請求項3に記載の光透過装置。
【請求項5】
厚さ方向に貫通する穴を有する面材と、前記穴の内側に配置された光透過パネルと、を備え、
前記光透過パネルは、
板状である本体と、
ハニカム構造であり前記本体の厚さ方向に光を透過する複数の光透過部と、
前記光透過部の縁部に配置され、外に露出した端部部材と、を有し、
前記穴は平面視で前記光透過部を複数含む大きさを備えている、光透過装置。
【請求項6】
光透過パネルと、前記光透過パネルの少なくとも一方の面に配置された複数の面材と、を備え、
前記光透過パネルは、
板状である本体と、
ハニカム構造であり前記本体の厚さ方向に光を透過する複数の光透過部と、
前記光透過部の縁部に配置され、外に露出した端部部材と、を有し、
前記面材が配置されない部分において、平面視で前記光透過部を複数含む領域を形成し、前記端部部材は外に露出している、
光透過装置。
【請求項7】
前記複数の面材は、前記光透過パネルの両面のそれぞれに配置されており、
前記光透過パネルの一方の面に配置された前記領域と、前記光透過パネルの他方の面に配置された前記領域と、がその少なくとも一部において面内方向位置が同じである、請求項6に記載の光透過装置。
【請求項8】
前記端部部材が樹脂からなる請求項3乃至7のいずれかに記載の光透過装置。
【請求項9】
前記樹脂が接着剤である請求
項8に記載の光透過装置。
【請求項10】
請求項3乃至9のいずれかに記載の光透過装置が2枚重ねられ、前記2枚の光透過装置が相対的に移動可能とされた、光透過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過するパネル、及び光透過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において、ハニカム板のような厚さ方向に連通する穴を多数有する軽量な板を用いて室内外や室内で隣接する空間を仕切る板、及び該板を構成要素とする各種装置が知られている。例えば特許文献1には建築現場の周囲を囲繞して建築時の騒音の外界への伝播を低減せしめる防音パネルが開示されている。又、特許文献2には、ハニカム板と防虫網との積層体からなり、該ハニカム板の各1個の連通孔を該防虫網の複數の孔で被覆する構成の扉装着用換気パネルが開示されている。これも室内外で空気を連通させて換気したり、視界を遮蔽しつつ光を透過させたりする構造を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許2526133号公報
【文献】特開2008-138476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、光の透過を制御することができる新規な態様の光透過パネルを提供することを課題とする。また、光透過パネルを備える光透過装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの態様は、板状である本体と、本体の厚さ方向に光を透過する複数の光透過部と、光透過部の縁部に配置された端部部材と、を備える光透過パネルである。
【0006】
端部部材は樹脂からなるように構成してもよい。
【0007】
本開示の他の態様は、光透過パネルと、光透過パネルの少なくとも一方の面に配置された面材とを備え、光透過パネルは、板状である本体と、本体の厚さ方向に光を透過する複数の光透過部と、を有し、面材は、厚さ方向に貫通する穴を有しており、穴は平面視で光透過部を複数含む大きさを備えている、光透過装置である。このとき、面材を2つ設け、その一方の面材は光透過パネルの一方の面に配置され、他方の面材は前記光透過パネルの他方の面に配置され、2つの面材では、穴の少なくとも1つにおいて、面内方向位置が同じであるように構成してもよい。
【0008】
また、厚さ方向に貫通する穴を有する面材と、穴の内側に配置された光透過パネルと、を備え、光透過パネルは、板状である本体と、本体の厚さ方向に光を透過する複数の光透過部と、を有し、穴は平面視で光透過部を複数含む大きさを備えている、光透過装置を提供することもできる。
【0009】
また、光透過パネルと、光透過パネルの少なくとも一方の面に配置された複数の面材と、を備え、光透過パネルは、板状である本体と、本体の厚さ方向に光を透過する複数の光透過部と、を有し、面材が配置されない部分において、平面視で光透過部を複数含む領域を形成する、光透過装置を提供することもできる。このとき、複数の面材を光透過パネルの両面のそれぞれに配置し、光透過パネルの一方の面に配置された領域と、光透過パネルの他方の面に配置された領域と、がその少なくとも一部において面内方向位置が同じであるように構成してもよい。
【0010】
上記光透過装置において光透過部の縁部に端部部材が具備されてもよく、またこれが樹脂や接着剤からなってもよい。
【0011】
上記光透過装置が2枚重ねられ、2枚の光透過装置が相対的に移動可能とされでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、光の透過が制御され室内への光の入射制御や視線の制限ができるとともに、空間や建築物に一体感や新たな外観を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2は光透過パネル10の一部を表した図である。
【
図3】
図3は光透過部11aの形状の例を表した図である。
【
図4】
図4は光透過部11aの1つの例の形状を説明する図である。
【
図5】
図5は光透過部11aの1つの例の形状を説明する図である。
【
図6】
図6は光透過部11aの1つの例の形状を説明する図である。
【
図7】
図7は光透過パネル10の作用について説明する図である。
【
図16】
図16は正面視野、及び、下方視野に関する試験方法を説明する図である。
【
図17】
図17は水平視野に関する試験方法を説明する図である。
【
図18】
図18は採光性の試験方法について説明する図である。
【
図19】
図19は通気性の試験方法について説明する図である。
【
図20】
図20は擦傷性の試験方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の光透過パネル及び光透過装置の形態例を図面を参照しつつ説明する。ただしこれら図面は概念的なものであり、正確な寸法や縮尺を表したものではない。また、本発明は以下に示す形態例に限定されるものではない。
各図には便宜のため3次元の直交座標系の軸線方向を併せて示した。ここで、平板状である光透過パネル及び光透過装置の面内方向はXY面内方向、厚さ方向はZ方向として説明する。
【0015】
[光透過パネル]
図1に1つの態様にかかる光透過パネル10の外観斜視図を表した。
図2の左側には光透過パネル10の一部(
図1のAで示した部分)を平面視(Z方向から見た)図を表し、
図2の右側には
図2のB-B矢視断面図を表した。
【0016】
図1、
図2からわかるように、光透過パネル10は全体として板状の部材であり、板状の本体11を有し、この本体11を厚さ方向(同図に於けるZ方向)に光を透過する複数の光透過部11aが設けられている。
本形態では光透過部11aは本体11を厚さ方向に貫通する穴により構成されており、この穴は本体11の一部である壁11bにより囲まれてなる。本形態では平面視で六角形の光透過部11aがXY面内に細密に配列されたいわゆるハニカム構造である。ただし、必ずしも光透過部11aが細密に配置されている必要はなく、複数の光透過部11aがXY面内に配列されていればよい。
【0017】
また、光透過部11aの平面視の形状は六角形である必要はなく、他の幾何学的形状であってもよい。
図3にはその形状を例示した。
図3の上部に示した形状は正方形の例、
図3の中央に示した形状は円形の例、
図3の下部に示した形状は三角形の例である。ただしこれらの例に限られることはなく、例えば四角形であれば、長方形、菱形、平行四辺形等があり、その他にも楕円形、波型、及び、不定型な幾何学形状であってもよい。
【0018】
また、光透過部11aを構成する壁11bの内面性状についても適宜設定することができる。例えば壁11bの内面の光反射性を高くすることで採光効率を向上させることができる。逆に当該内面の光反射性を低くする(例えば黒色とする)ことにより光の遮蔽性を高めることができる。また当該内面を粗面とすることで、光の乱反射をさせ、これによる反対側の視認性を低下させたり、特有のデザインとして演出したりすることもできる。
【0019】
本体11を構成する材料は特に限定されることはなく、光を透過しない材料であることが好ましい。その中でも軽量であることが好ましく、アルミニウム、チタニウム等の金属、又はこれら金属を1種以上含むジュラルミン等の合金、メタ系アラミド樹脂(商品としては、E.I.du Pon社のノーメックス(Nomex;E.I.du Pon社の商標)がある。)、ポリエチレンン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、クラフト紙、ボール紙、ガラス織布(ガラスクロス)、ガラス不織布等の紙、織布、又は不織布、又は紙、織布、又は不織布の何れかに樹脂の何れか1種以上を含侵し、硬化性の樹脂の場合には該含侵樹脂を硬化せしめたもの等を挙げることができる。
【0020】
さらに、本形態の光透過パネル10は、本体11の表裏面(厚さ方向(Z方向)の両端)に端部部材12が配置されている。
図4に説明のための図を示した。
図4の上部に示した図は1つの光透過部11aに注目して平面視した図、
図4の中央に示した図は
図4のC-C矢視断面図、
図4の下部に示した図は
図4のDで示した部分を拡大して表した図である。
【0021】
図4からわかるように、本形態の光透過パネル10には、光透過部11aの縁部となる本体11の部分に沿って端部部材12が配置されている。これにより、光透過パネル10に特有の外観を付与することができる。また、光透過部11aの縁部に端部部材12が配置されることにより、当該縁部の保護や、縁部に触れることによる負傷の防止等の機能も得ることができる。
本形態では端部部材12が本体11の表裏面の両方に配置されているがこれに限定されずいずれか一方のみに配置されてもよい。
また、本形態と異なり隣り合う光透過部11aが離隔しており、隣り合う光透過部11aの間に平坦な本体11部分がある場合、光透過部11aの縁部のみに端部部材12が配置されてもよいし、当該縁部に加えて平坦部分の本体11にも端部部材12が配置されてもよい。
【0022】
端部部材12は、少なくとも本体11の光透過部11aの縁部に配置されていればよい。これは例えば本形態のように光透過部11aの縁部にのみ端部部材12が配置される形態の他、
図5、
図6に示したように、光透過部11aの内側に材料が配置されることで端部部材12を構成するようにしてもよい。
図5、
図6は
図4と同様の視点による図である。
図5の上部に示した図は1つの光透過部11aに注目して平面視した図、
図5の中央に示した図は
図5のE-E矢視断面図、
図5の下部に示した図は
図5のFで示した部分を拡大して表した図である。
図6の上部に示した図は1つの光透過部11aに注目して平面視した図、
図6の中央に示した図は
図6のG-G矢視断面図、
図6の下部に示した図は
図6のHで示した部分を拡大して表した図である。
この態様では光透過部11aの内側に材料が満たされていることで光透過部11aの縁部に当該材料が配置され、端部部材12を構成する。
図5の例は光透過部11aの内側の全部に光透過性の材料が充填された例、
図6は光透過部11aを形成する壁11bの面に沿って材料が配置された例である。
【0023】
端部部材12を構成する材料は特に限定されることはないが、樹脂を用いることができる。このような樹脂としては例えばシリコーン樹脂、弗素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂を挙げることができる。
これによれば、溶液乃至分散液、単量体乃至プレポリマー等の液状組成物、又は加熱熔融物の液状物の状態で該樹脂を光透過部11aの縁に塗り(ディップ塗工等。)、塗った後、該液状物が溶液乃至分散液の場合は、溶媒(溶剤)乃至分散媒を乾燥させることで固化(硬化)させることで端部部材12とすることができる。該液状物が単量体乃至プレポリマーの液状組成物の場合は、加熱、電子線や紫外線等の電離放射線照射、湿気等の作用による架橋乃至は重合反応で固化(硬化)させることで端部部材12とすることができる。該液状物が加熱熔融物の場合は、該熔融物を冷却させることで固化(硬化)させることで端部部材12とすることができる。
【0024】
また、後述する光透過装置の面材との接合にも寄与する観点から、当該樹脂を接着剤で構成することができる。このような接着剤としては例えば、デンプンやカゼイン等の天然高分子系接着剤、ポリ酢酸ビニル等のビニル系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリウレタン系接着剤等の熱可塑性樹脂系接着剤、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂系接着剤等が挙げられる。
【0025】
また、光透過パネル10は、例えば次のように構成されていることが好ましい。
各光透過部11aの開口面積(
図4の上部の図の視点による1つの光透過部11aの開口部分の面積)は、4mm
2以上900mm
2以下であることが好ましい。光透過部11aの開口面積は、光透過パネル10に含まれる複数の光透過部において全てが同じである必要はなく、誤差の範囲(±5%)を超えて意図的に変えてもよい。この場合、例えば平面視で光透過パネルの一方側端部から他方側端部に向けて無段階的又は段階的に開口面積を変更してもよいし、不規則と感じさせる程度に各光透過部11aの開口面積を変えてもよい。
【0026】
各光透過部11aにおいて、
図4の上部の図に示したように平面視した場合に、その開口部形状を考えたとき、その重心位置Gを規定し、当該重心位置Gを通り対向する間の距離Lは、そのうち最も短い距離が2mm以上30mm以下であることが好ましい。
また、当該距離のうち最も長い距離に対する最も短い距離は、0.1以上1.0以下であることが好ましい。
【0027】
図2にTで示した光透過部11aの深さ(光透過パネル10の厚さ)は、3mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0028】
また、
図4のθで示した見込角は10°以上80°以下であることが好ましい。これにより光透過パネル10を挟んで反対側の視野制御がより顕著なものとなる。ここで見込角θは次のように定義される。
初めに、上記した距離Lのうち、最も短くなる距離の部分における
図4の中央に示した図に相当するような厚さ方向の断面を考える。次に、
図4の中央に示した図ように、Z方向一方側端部と他方側端部とでY方向位置が反対となるように対角線状の線を規定する。このような線は
図4で言えば右肩上がりと右肩下がりとの2つ得ることができるが、そのうちのZ方向に平行な線(厚さ方向に平行な線)に対する角度の小さい方を見込角θとする。
【0029】
光透過パネルの平面視面積(縦×横、X方向大きさ×Y方向大きさ)に対する光透過部の開口面積の合計の割合は、0.70以上0.99以下であることが好ましい。
【0030】
光透過部11aの配列に規則性がある場合、隣接する同じ態様の光透過部11aとの距離(例えば
図2にPで示したピッチ)は4mm以上60mm以下であることが好ましい。
【0031】
以上のような光透過パネル10によれば、例えば次のように作用する。
図7に説明のための図を示した。
図7は
図2の右側に表した図と同様であり、光透過パネル10の断面が表れている。
【0032】
光透過パネル10を室内外の間、又は、室内における隣接した空間の間に配置する(Y方向を鉛直方向として立てて配置する。)と、光透過パネル10を挟んでその両側からの視線(
図7の矢印S)は、Z方向に近い角度からの視野角に制限され、それ以外の視線を遮断できるため隠蔽性が高まる。
一方、光については視線と同様にZ方向に対して大きい角度で入射する光が遮断されるが、Z方向に平行に近い角度で入射する光は透過するため(
図7の矢印L
1)、特に空間の奥にまで届く光を選択的に取り入れることができ、採光性を確保することが可能である。ここで、光透過部11aを構成する壁11bの内面が光反射性を有するように構成されていれば反射光も採光することができ(
図7の矢印L
2)、入射光を増やすことができる。一方、光透過部11aを構成する壁11aの内面が光を反射しないように構成されている場合には、Z方向に対して大きい角度で入射する光が遮断されるが、このような光は例えば夏場の南中高度が高い位置から光が想定され、室内空間の温度上昇の原因となるため、これを遮断することができ冷房効率を高めることも可能である。
【0033】
また、光透過部11aが、本体11の厚さ方向を貫通する穴を有して構成されている場合には通気性も確保することができる。
【0034】
[光透過装置]
図8に1つの形態にかかる光透過装置20の外観斜視図、
図9にその分解斜視図、
図10に平面視した(Z方向から見た)図を表した。これら図からわかるように、本形態の光透過装置20は、上記した光透過パネル10及びその表裏に配置された面材21を有している。
【0035】
光透過パネル10は上記した光透過パネル10を用いることができる。この光透過パネル10には上記した形態のいずれの光透過パネルも用いることができる。
また、この光透過パネル10の代わりに、該光透過パネル10に具備されていた端部部材12を備えておらず、本体11及び光透過部11aのみからなる光透過パネルを用いることもできる。
【0036】
面材21は薄板状の部材であり、板状の面材本体22、及び、該面材本体22に設けられた複数の穴22aを具備している。
【0037】
特に
図10からわかるように、1個の穴22aは、面材21の平面視(Z方向からの視点、
図10の視点)において、光透過パネル10の光透過部11aが複数含まれる(複数の光透過部11aが露出する。)大きさとされている。ただし、複数の穴22aのうち全ての穴22aがこのような大きさである必要はなく、少なくとも複数の穴22aにおいて、1個の穴22a内に平面視で光透過部11aが複数含まれる(複数の光透過部11aが露出する。)大きさであればよい。
上記以外に関する穴22aの大きさは特に限定されることはなく、想定した視線制御、採光、通気、デザイン等の観点から適宜変更することができる。
【0038】
穴22aの形状は特に限定されることはなく、想定した視線制御、採光、通気、デザイン等の観点から適宜設定することができ、本形態のように円形である他、三角形、四角形(正方形、長方形、菱形、平行四辺形等)、五角形、六角形等の多角形や、楕円形、長円、波型等の各種幾何学形状、アルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字等の文字をかたどった形状等あらゆる形態を取りうる。
【0039】
穴22aのピッチや配列される数、開口率(面材本体における穴が占める面積割合を百分率で表したもの)等についても想定した視線制御、採光、通気、デザイン等の観点から適宜設定することができる。
【0040】
このような面材を構成する材料は特に限定されることはないが光透過装置20の強度を確保する観点から選択されることが好ましく、例えばアルミニウム、チタニウム、鉄、銅等の金属、又はこれら金属を1種以上含むジュラルミン、ステンンレ鋼等の合金等の各種金属、ガラス、陶磁器等のセラミックス、シリコーン樹脂、弗素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等の樹脂等必要に応じて適宜用いることができる。
【0041】
面材の厚さも特に限定されることはないが、光透過装置20の軽量化の観点から薄いことが好ましく、具体的には0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5.0mm以下であることがさらに好ましい。
また、光透過装置の平面視面積(縦×横、X方向大きさ×Y方向大きさ)に対する当該平面視で表れる光透過パネルの光透過部の開口面積の合計の割合は、0.20以上0.70以下であることが好ましい。
【0042】
また、本形態では光透過パネル10の表裏の両面に面材21が配置されているが、いずれか一方であってもよい。表裏の両面に面材21が配置されたときには、その少なくとも一部において、両方の面材21でその穴22aの位置が面内(xy面内)で一致することが好ましい。これにより、穴22aを通して光透過装置20を光が透過することができる。このときの光の透過は上記光透過パネル10で説明したように制御され、上記の効果を奏するものとなる。
【0043】
光透過パネル10と面材21との接合方法は特に限定されることはなく、公知の方法によることができる。例えば光透過パネル10と面材21とを1つの枠体により固定したり、ボルトとナットとの組み合わせにしたりすることが挙げられる。
また、光透過パネル10に端部部材12が具備され、この端部部材12が接着剤によるものであれば、この接着剤を面材21との接合に利用することができ、これによる接着も可能である。
【0044】
以上のような光透過装置20によれば、上記した光透過パネル10の効果を有しつつ、デザイン性に優れ、例えば空間との一体感を演出したり、特徴ある空間を演出したりすることができる。
【0045】
図11、
図12には他の形態例にかかる光透過装置30を説明するための図を示した。
図11は光透過装置30の外観斜視図、
図12は光透過装置30の分解斜視図である。
上記光透過装置20は、1枚の板状の光透過パネル10の両面に面材21を配置する形態であることに対して、光透過装置30は1枚の面材本体32に複数の穴32aが設けられ、複数の穴32aのそれぞれに光透過パネル33が嵌め込まれているようにして配置されている。
このような光透過装置30も同様の効果を奏するものとなる。
【0046】
図13乃至
図15にはさらなる他の形態例にかかる光透過装置40を説明するための図を示した。
図13は光透過装置40の外観斜視図、
図14は光透過装置40の分解斜視図、及び、
図15は光透過装置40を正面視した図である。
上記光透過装置20は、面材21に穴22aが設けられることで光透過パネル10の一部が露出し、ここから光透過パネル10で制御された光を透過することができるように構成されていた。これに対して光透過装置40では、光透過パネル10の少なくとも一方の面側に複数の面材41が配置され、面材41が配置されていない部分が領域41aなり、ここが穴22aと同様に作用して、光透過パネル10の一部を露出させ、ここから光透過パネル10で制御された光を透過することができるように構成されている。
このような光透過装置40も同様の効果を奏するものとなる。
【0047】
表裏の両面のそれぞれ複数の面材41が配置されたときには、その少なくとも一部において、両面における領域41aの位置が面内(XY面内)で一致することが好ましい。これにより、領域41aを通して光透過装置40を光が透過することができる。このときの光の透過は上記光透過パネル10で説明したように制御され、上記の効果を奏するものとなる。
【0048】
なお、光透過パネル10の一方の面に面材21aが配置され、他方の面に複数の面材41による領域41aが形成されてもよい。この場合も、少なくとも一部において穴21a及び領域41aの位置が(XY面内)で一致することが好ましい。
【0049】
以上各例の光透過装置は、1つの光透過装置により構成されたものであるが、2つの光透過装置が厚さ方向に重ねられ、相対的にX方向又はY方向に移動するように構成されてもよい。これにより、2つの光透過装置の面材の穴の位置を厚さ方向に重ねれば光が透過し、両者の穴の位置をずらせば遮光することができるため、光の透過と遮断を切り替えることができる。
【0050】
上記説明した光透過パネル、光透過装置は、建物の内外においてその場所を問わず適用させることができる。特に取り付ける態様によって選択的に光、視線、風を制限する利点が得られる場所や用途に適用されることが有効である。すなわち、例えば、光に関しては直射光のカット、外観(照明)を彩り、光を拡散させることができる態様、視線については当該視線の一部を遮ることで視野角を制限してプライバシーを守る態様、風については強い風を遮断したり弱めたりする態様である。
より具体的な用途例としては、屋内用途では窓際設置のカーテン・ブラインド、間仕切りパーテーション、すだれ、照明カバー等が挙げられ、屋外用途では、すだれ、玄関目隠しフェンス、ベランダ柵カーテン、天井ルーバー、庇軒ルーバー、外付けルーバー等を挙げることができる。
【実施例】
【0051】
実施例1、及び、実施例2では光透過パネル10に倣って光透過パネルを作製し、実施例3、及び、実施例4では上記光透過装置20の例に倣って光透過装置を作製し、その性能を評価した。詳しくは以下の通りである。
【0052】
[実施例1乃至実施例4の形態]
<光透過パネル>
実施例1乃至実施例4で光透過パネルとしてアルミニウム製のハニカムパネル(モリシン工業株式会社)を用いた。いずれも横400mm、縦600mm、厚さ(
図2のT)を8mmとした。光透過部となるハニカムの各穴の形状は六角形であり、その大きさは実施例1が1/2インチ、実施例2乃至実施例4は1/4インチである。
ここで、ハニカムの大きさは公知の表示の通りであるが、六角形のうち対向する辺(全部で3組)間の距離である。正六角形でない場合には、3組の対向する辺の距離のうち最も短いものにより表記される。
【0053】
光透過パネルの光透過部の縁部に次のように端部部材を配置した。なお、実施例3、及び、実施例4の端部部材は面材との接着も兼ねるものとした。
実施例1については、エポキシ系接着剤(コニシ株式会社、MOS7、品番#46811)を70g/m2(乾燥後の質量)となるように塗布し、25℃の温度条件で24時間以上静置させて硬化させた。
実施例2については、酢酸ビニル系接着剤(コニシ株式会社、木工用ボンド、品番#40167)を100g/m2(乾燥後の質量)となるように塗布し、25℃の温度条件で24時間以上静置させて硬化させた。
実施例3については、酢酸ビニル系接着剤(コニシ株式会社、木工用ボンド多用途、品番#5504)を150g/m2(乾燥後の質量)となるように塗布し、25℃の温度条件で24時間以上静置させて硬化させた。
実施例4については、2液混合型エポキシ系接着剤(コニシ株式会社、ボンドEセット、品番#16023)を100g/m2(乾燥後の質量)となるように塗布し、25℃の温度条件で24時間以上静置させて硬化させた。
【0054】
<面材>
実施例3ではアルミニウム製のシート(横400mm、縦600mm、厚さ0.5mm)を用い、直径6mmの穴を等間隔で複数、開口率が35%(開口の割合0.35)となるように設けた。本例では光透過パネルの一方の面のみに面材を配置した。
実施例4では樹脂製の化粧シート(横400mm、縦600mm、厚さ0.5mm)を用い、直径30mmの穴を等間隔で複数、開口率が44%(開口の割合0.44)となるように設けた。本例では光透過パネルの両面に面材を配置した。
【0055】
[比較例1の形態]
比較例1では、複数のアルミニウムによる長尺の角棒(一辺30mm正方形断面)を、長手方向が鉛直方向となり、水平方向に複数の角棒を等間隔で配列(開口率が50%(開口の割合0.50))した。
[比較例2の形態]
比較例2では、実施例1の光透過パネルに対して端部部材を配置しない形態の光透過パネルとした。
[比較例3の形態]
比較例3では、実施例3を基本とし、面材に穴を有しない(すなわち開口率0%(開口の割合0))ものとした。
【0056】
[試験]
<正面視線(正面視野)>
試験体を屋外との境界部分に立て(Y方向を鉛直方向)、
図16にPで示したように、試験者Pが試験体正面の屋内側に位置し、目線を試験体のXY面の法線方向に平行となるようにして試験体の中央部分を視認し、試験体の反対側の視認性を確認した。当該反対側を視認できたときを可、できなかったときを否とした。この試験では「可」となることは、正面方向の視野角について視認性が確保されていることを意味する。
【0057】
<下方視線(下方視野)>
試験体を屋外との境界部分に立て(Y方向を鉛直方向)、
図16にQで示したように、試験者Qが試験体の屋内側に位置し、目線は試験体のXY面法線方向に対して60°下方向となるように試験体の中央を見下ろすことで、視認により試験体の反対側の視認性を確認した。当該反対側を視認できたときを「可」、できなかったときを「否」とした。この試験では「否」となることは、鉛直方向において視線が遮られて視野角の制御が適切に行われたこと意味する。
【0058】
<水平斜め視線(水平視野)>
試験体を屋外との境界部分に立て(Y方向を鉛直方向)、
図17にRで示したように、試験者Rが試験体の屋内側に位置し、目線は試験体のXY面法線方向に対して水平方向70°となるように試験体の中央を見ることで、視認により試験体の反対側の視認性を確認した。当該反対側を視認できたときを「可」、できなかったときを「否」とした。この試験では「否」となることは水平方向において視線が遮られ視野角の制御が適切に行われたこと意味する。
【0059】
<採光性>
図18に示したように、各例の試験体を屋外との境界部分に立て(Y方向を鉛直方向)、試験体正面から室内側に150mm離隔した位置の床に輝度計を設置して入射する光の強さを輝度計により測定した。
【0060】
<通気性>
図19に示したように、各例の試験体を室内で鉛直方向に立て、試験体を挟んで一方側にドライヤー(HITACHI社製 HD-1263)、他方側に風速計(メーカー:カスタム 型番:CW-50)をそれぞれ試験体の面から150mm離隔し、高さ150mmとなる位置に設置した。ドライヤーから試験体に向けて冷風による送風し、風速計により風速を測定した。
【0061】
<試験体端部接触時の擦傷性(擦傷性)>
図20に示したように、各例の試験体を水平(Y方向が水平)となるように置き、その上に透明PETシート(ルミラー(登録商標) #38-S10 東レ社製)を置き、さらにその上におもり(荷重1kg、学振型摩擦堅牢度試験機用荷重 テスター産業株式会社製)を載せる。この状態でPETシートをおもりとともに、試験体表面上で100mmスライドさせ、元の位置まで再度スライドさせる(1往復)。その後、PETシート表面を目視で観察し、試験体の擦傷性を確認した。PETシートに傷があった場合を「有」、傷がなかった場合を「無」とした。
【0062】
表1に各例の結果を示す。
【0063】
【0064】
結果からわかるように、実施例にかかる試験体について、いずれも視野については正面視野を確保しつつ鉛直方向(下方視野)及び水平視野が制限されており、適切な視野制御が可能とされている。さらに実施例にかかる試験体では擦傷性、すなわち光透過部端部による他への傷付けが抑制され、当該端部自体の保護も可能とされている。
また、本例では光透過部を中空としたので、通気も併せて可能とされている。
【符号の説明】
【0065】
10 光透過パネル
11 本体
11a 光透過部
11b 壁
12 端部部材
20、30 光透過装置
21 面材
22、32 面材本体
22a、32a 穴
33 光透過パネル