(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】昇圧型スイッチングレギュレータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02M3/155 F
(21)【出願番号】P 2020145479
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 裕樹
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-056986(JP,A)
【文献】特開2014-003850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/008748(US,A1)
【文献】特開2021-078312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の入力電圧をコイルおよびスイッチング素子を介して前記入力電圧より高い直流の出力電圧に変換する昇圧型スイッチングレギュレータであって、
前記コイルおよび前記スイッチング素子と直列に接続されているロードスイッチと、
前記スイッチング素子を一定の周波数および可変のディーティ比でオン・オフさせるスイッチング制御部と、
前記スイッチング素子を流れる電流を表す電流検出信号を生成する電流検出回路と、
スイッチングの各サイクルにおいてオン時間の開始直後に時間幅の可変または切替可能なブランキング期間を挿入するブランキング回路を含み、前記ブランキング期間の終了時以後に前記電流検出信号が第1の監視値を超えたときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子を途中でオフにする第1の保護回路と、
スイッチングの各サイクルにおいてオン時間中に前記電流検出信号が前記第1の監視値より高い第2の監視値を超えたときは、前記ロードスイッチをオフにする第2の保護回路と、
を有する昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項2】
前記ブランキング回路は、前記ブランキング期間の時間幅を第1の時間幅とそれより大きい第2の時間幅との間で切替可能とし、所定の事象の有無または状況に応じて前記第1の時間幅または前記第2の時間幅のいずれかを選択する、請求項1に記載の昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項3】
負荷に印加される出力電圧が所定の閾値より高いか低いかを監視するための電圧監視回路が設けられ、
前記ブランキング回路は、前記電圧監視回路の出力信号に基づいて、前記出力電圧が前記閾値より高い間は前記第1の時間幅を選択し、前記出力電圧が前記閾値より低くなったときに前記第2の時間幅を選択する、
請求項2に記載の昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項4】
前記ブランキング回路は、前記出力電圧が前記閾値より低くなった直後のスイッチングの1サイクルまたは数サイクルでのみ前記第2の時間幅を選択し、それ以外のサイクルでは前記第1の時間幅を選択する、請求項3に記載の昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項5】
前記第1の保護回路は、
スイッチングの各サイクルにおいて、前記電流検出信号を監視し、前記電流検出信号が前記第1の監視値を超えた時に第1の過電流検知信号を発生する第1の過電流監視回路と、
前記ブランキング期間中は前記第1の過電流監視回路より前記第1の過電流検知信号が発生されてもそれを無効にし、前記ブランキング期間の終了時以降に前記第1の過電流監視回路より前記第1の過電流検知信号が発生されたときに、それに応動して前記スイッチング制御部に前記スイッチング素子をオフにする電流制限指示信号を与えるゲート回路と、
を有し、
前記ブランキング回路は、前記ゲート回路より前記電流制限指示信号が発生されていない間は前記第1の時間幅を選択し、前記ゲート回路より不意に前記電流制限指示信号が発生されたときに前記第2の時間幅を選択する、
請求項2に記載の昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項6】
前記ブランキング回路は、前記ゲート回路より前記電流制限指示信号が不意に発生された直後のスイッチングの1サイクルまたは数サイクルでのみ前記第2の時間幅を選択する、請求項5に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項7】
前記第2の保護回路は、
スイッチングの各サイクルにおいて、前記電流検出信号を監視し、前記電流検出信号が前記第2の監視値を超えた時に第2の過電流検知信号を発生する第2の過電流監視回路と、
前記第2の過電流監視回路より前記第2の過電流検知信号が発生されたときは、それに応動して前記ロードスイッチをオフにする遮断指示信号を発生する遮断・復帰回路と、
を有する、請求項2~6のいずれか一項に記載の昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項8】
前記スイッチング制御部は、起動時または再起動時に、ソフトスタートで前記デューティ比を漸次的に増大させ、
前記ブランキング回路は、起動時または再起動時に、最初は前記第2の時間幅を選択し、起動または再起動が実質的に完了した後は前記第1の時間幅を選択する、
請求項2に記載の昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項9】
前記第2の保護回路は、前記ロードスイッチをオフにするときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子のオン・オフ動作を停止する、請求項1~8のいずれか一項に記載の昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項10】
直流の入力電圧をコイルおよびスイッチング素子を介して前記入力電圧より高い直流の出力電圧に変換する昇圧型スイッチングレギュレータであって、
前記コイルおよび前記スイッチング素子と直列に接続されているロードスイッチと、
前記スイッチング素子を一定の周波数および可変のディーティ比でオン・オフさせるスイッチング制御部と、
スイッチングの各サイクルにおいて前記スイッチング素子を流れる電流を第1の監視値とそれより高い第2の監視値とを用いて監視し、所定の事象の有無または状況に応じて条件的にオン時間の開始直後にブランキング期間を挿入し、前記ブランキング期間の間に前記電流が前記第2の監視値を超えたときは、前記ロードスイッチをオフにし、前記ブランキング期間の終了時以後に前記電流が前記第1の監視値を超えたときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子を途中でオフにする保護部と、
を有する昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項11】
前記保護部は、前記事象の種類または内容に応じて、前記ブランキング期間の時間幅を可変し、または複数の設定時間幅の間で切り替える、請求項10に記載の昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項12】
直流の入力電圧をコイルおよびスイッチング素子を介して前記入力電圧より高い直流の出力電圧に変換する昇圧型スイッチングレギュレータであって、
前記コイルおよび前記スイッチング素子と直列に接続されているロードスイッチと、
前記スイッチング素子を一定の周波数および可変のディーティ比でオン・オフさせるスイッチング制御部と、
スイッチングの各サイクルにおいて前記スイッチング素子を流れる電流を第1の監視値とそれより高い第2の監視値とを用いて監視し、スイッチングの各サイクルにおいてオン時間の開始直後に時間幅の可変または切替可能な第1の部分監視期間を設け、前記第1の部分監視期間の中で前記電流が前記第2の監視値を超えたときは、前記ロードスイッチをオフにし、前記第1の部分監視期間の終了後の残りの第2の部分監視期間の中で前記電流が前記第1の監視値を超えたときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子を途中でオフにする保護部と、
を有する昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項13】
直流の入力電圧をコイルおよびスイッチング素子を介して前記入力電圧より高い直流の出力電圧に変換する昇圧型スイッチングレギュレータであって、
前記コイルおよび前記スイッチング素子と直列に接続されているロードスイッチと、
前記スイッチング素子を一定の周波数および可変のディーティ比でオン・オフさせるスイッチング制御部と、
スイッチングの各サイクルにおいて前記スイッチング素子を流れる電流を第1の監視値とそれより高い第2の監視値とを用いて監視し、スイッチングの各サイクルにおいてオン時間の開始直後に第1の部分監視期間を設け、前記第1の部分監視期間の中で前記電流が前記第2の監視値を超えたときは、前記ロードスイッチをオフにし、前記第1の部分監視期間の終了後の残りの第2の部分監視期間の中で前記電流が前記第1の監視値を超えたときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子を途中でオフにする保護部と、
を有する昇圧型スイッチングレギュレータ。
【請求項14】
前記保護部は、前記ロードスイッチをオフにするときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子のオン・オフ動作を停止する、請求項10~13のいずれか一項に記載の昇圧型スイッチングレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子を天絡から保護する回路を有する昇圧型スイッチングレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、スイッチングレギュレータは、直流電圧で動作する装置向けの小型軽量・高効率の電源として、特に電池や蓄電池を使用する移動体や可搬型機器用のDC-DCコンバータとして、需要がますます高まっている。一方で、スイッチングレギュレータにおける安全性および信頼性の要求性能もますます高くなっている。
【0003】
スイッチングレギュレータの多くは、過電流や短絡等から電源および負荷を保護するための保護回路を備えている。一般に、この種の保護回路は、スイッチング素子を流れる電流を検出し、その電流検出値が所定の監視値または閾値を超えたときに、不所望に大きな電流つまり過電流が流れているものと判断する。保護回路は、そのような過電流を検知したときに、パルス幅変調信号の各サイクルのオン時間を制限して負荷に電流を流し続ける過電流制限型(パルスバイパルス方式)と、スイッチング素子のオン・オフ動作を停止して負荷への電流供給を断つ遮断型とがあり、両方式を組み合わせることも可能である。
【0004】
過電流制限型は、一時的な過負荷に対して誤動作を防止できる反面、過電流を制限しても制限値付近で流し続けると、そのうち装置が多量の発熱や破壊を生ずるおそれがある。そこで、過電流の検知が連続する多数のサイクルにわたって長く続くときは、検知回数をカウントし、検知回数が設定回数に達した時点で、遮断型の仕方によりスイッチング動作を完全に止めて出力電流を断つ技法が従来から行われている。
【0005】
もっとも、連続する多数のサイクルにわたって過電流の検知回数をカウントしている間に過電流を制限しきれなくなったときは、設定回数に達する前に装置回路が破壊するおそれがある。そこで、過電流の検知回数をカウントしてパルスバイパルス方式の電流制限を継続している間に、過電流が一段と増して短絡検知用の高い第2の閾値を超えたときは、検知回数がまだ設定回数に達していなくても、その時点でスイッチング動作を停止して出力電流を断つようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昇圧型のスイッチングレギュレータは、基本構成として、入力端子と出力端子との間にチョークコイルとダイオードを直列に設け、チョークコイルとダイオード間の第1のノードとグランド電位との間にスイッチング素子を設け、ダイオードと出力端子間の第2のノードとグランド電位との間にコンデンサを設けている。このような昇圧型スイッチングレギュレータにおいては、何らかの原因でチョークコイルで短絡またはレアショートが起きると、第1のノードが天絡し、それによってスイッチング素子に異常な過電流が流れて、スイッチング素子の破壊を招くことが問題になっている。
【0008】
この点に関して、従来のスイッチングレギュレータでは、如何なる過電流に対しても常に優先的に過電流制限型の保護回路が働いて低い方の第1の閾値付近に制限しようとする。このため、当初から高い第2の閾値を超えそうな異常な過電流であっても、パルスバイパルスの電流制限を受けて、第2の閾値を超えるまでの時間を引き延ばされ、その間にスイッチング素子が多量に発熱して破壊することがある。特に、レアショートのようにそれほど低くないインピーダンスでスイッチング素子に異常な過電流が流れる場合には、パルスバイパルスの電流制限がほどほどに作用するため、上記引き延ばしの時間が長引いて、スイッチング素子の多量発熱・熱破壊が生じやすい。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するものであり、スイッチング素子を天絡から安全適確に保護することができる昇圧型スイッチングレギュレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点における昇圧型スイッチングレギュレータは、直流の入力電圧をコイルおよびスイッチング素子を介して前記入力電圧より高い直流の出力電圧に変換する昇圧型スイッチングレギュレータであって、前記コイルおよび前記スイッチング素子と直列に接続されているロードスイッチと、前記スイッチング素子を一定の周波数および可変のディーティ比でオン・オフさせるスイッチング制御部と、前記スイッチング素子を流れる電流を表す電流検出信号を生成する電流検出回路と、スイッチングの各サイクルにおいてオン時間の開始直後に時間幅の可変または切替可能なブランキング期間を挿入するブランキング回路を含み、前記ブランキング期間の終了時以後に前記電流検出信号が第1の監視値を超えたときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子を途中でオフする第1の保護回路と、スイッチングの各サイクルにおいてオン時間中に前記電流検出信号が前記第1の監視値より高い第2の監視値を超えたときは、前記ロードスイッチをオフにする第2の保護回路とを有する。
【0011】
上記構成の昇圧スイッチングレギュレータにおいては、スイッチングの各サイクルにおいて、オン時間の開始直後のブランキング期間中は、スイッチング素子を流れる電流に対応する電流検出信号が低い方の第1の監視値を超えただけではロードスイッチおよびスイッチング素子のいずれもオフにせず、高い方の第2の監視値を超えたときにロードスイッチをオフにして電力供給ラインを遮断する。そして、電流検出信号がブランキング期間中に第2の監視値を超えずブランキング期間中またはブランキング期間の終了時以後に第1の監視値を超えたときは、スイッチング素子をオフにして当該サイクルのオン時間を途中で終了する。このように、オン時間の開始直後に上記のような作用をもたらすブランキング期間を挿入することで、天絡に起因する異常な過電流をパルスバイパルスの電流制限によって引き延ばすことなく早期に電力供給ラインを遮断してスイッチング素子の破壊を防ぐことができる。しかも、ブランキング期間の時間幅を可変しまたは複数の設定時間幅の間で切り替えることで、レアショートのようにそれほど低くないインピーダンスの天絡が発生した場合にも、異常な過電流状態を引き延ばすことなく迅速適確に電力供給ラインを遮断することが可能であり、スイッチング素子が多量に発熱ないし破壊する事態を未然に防ぐことができる。
【0012】
本発明の第2の観点における昇圧型スイッチングレギュレータは、直流の入力電圧をスイッチング素子およびコイルを介して前記入力電圧より高い直流の出力電圧に変換する昇圧型スイッチングレギュレータであって、前記スイッチング素子および前記コイルと直列に接続されているロードスイッチと、前記スイッチング素子を一定の周波数および可変のディーティ比でオン・オフさせるスイッチング制御部と、スイッチングの各サイクルにおいて前記スイッチング素子を流れる電流を第1の監視値とそれより高い第2の監視値とを用いて監視し、所定の事象の有無または状況に応じて条件的にオン時間の開始直後にブランキング期間を挿入し、前記ブランキング期間の間に前記電流が前記第2の監視値を超えたときは、前記ロードスイッチをオフにし、前記ブランキング期間の終了時以後に前記電流が前記第1の監視値を超えたときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子を途中でオフにする保護部とを有する。
【0013】
上記構成の昇圧型スイッチングレギュレータにおいては、スイッチングの特定のサイクルで(たとえば、出力電圧の異常な低下が検出された直後の1サイクルまたは数サイクルに限定して)、オン時間の開始直後にブランキング期間が挿入された場合には、ブランキング期間中にスイッチング素子を流れる電流に対応する電流検出信号が低い方の第1の監視値を超えただけではロードスイッチおよびスイッチング素子のいずれもオフにせず、高い方の第2の監視値を超えたときにロードスイッチをオフにして電力供給ラインを遮断する。そして、電流検出信号がブランキング期間中に第2の監視値を超えずブランキング期間の終了時以後に第1の監視値を超えたときは、スイッチング素子をオフして当該サイクルのオン時間を途中で終了する。このように、出力電圧の異常な低下等が検出されたときは、オン時間の開始直後に上記のような作用をもたらすブランキング期間を挿入することで、天絡に起因する異常な過電流をパルスバイパルスの電流制限によって引き延ばすことなく早期に電力供給ラインを遮断してスイッチング素子の発熱ないし破壊を防止することができる。
【0014】
本発明の第3の観点における昇圧型スイッチングレギュレータは、直流の入力電圧をスイッチング素子およびコイルを介して前記入力電圧より高い直流の出力電圧に変換する昇圧型スイッチングレギュレータであって、前記スイッチング素子および前記コイルと直列に接続されているロードスイッチと、前記スイッチング素子を一定の周波数および可変のディーティ比でオン・オフさせるスイッチング制御部と、スイッチングの各サイクルにおいて前記スイッチング素子を流れる電流を第1の監視値とそれより高い第2の監視値とを用いて監視し、スイッチングの各サイクルにおいてオン時間の開始直後に時間幅の可変または切替可能な第1の部分監視期間を設け、前記第1の部分監視期間の中で前記電流が前記第2の監視値を超えたときは、前記ロードスイッチをオフにし、前記第1の部分監視期間の終了後の残りの第2の部分監視期間の中で前記電流が前記第1の監視値を超えたときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子を途中でオフにする保護部とを有する。
【0015】
上記構成の昇圧型スイッチングレギュレータにおいては、スイッチングの各サイクルにおいて、オン時間の開始直後の第1の部分監視期間中は、スイッチング素子を流れる電流に対応する電流検出信号が低い方の第1の監視値を超えただけではロードスイッチおよびスイッチング素子のいずれもオフにせず、高い方の第2の監視値を超えたときにロードスイッチをオフにして電力供給ラインを遮断する。そして、電流検出信号が第1の部分監視期間中に第2の監視値を超えず第2の部分監視期間中に第1の監視値を超えたときは、スイッチング素子をオフにして当該サイクルのオン時間を途中で終了する。このように、スイッチングの各サイクルのオン時間に上記のような作用をもたらす第1および第2の部分監視期間を設定することで、異常な過電流をパルスバイパルスの電流制限によって引き延ばすことなく早期に電力供給ラインを遮断してスイッチング素子の発熱ないし破壊を防ぐことができる。しかも、第1の部分監視期間の時間幅を可変しまたは複数の設定時間幅の間で切り替えることで、レアショートのようにそれほど低くないインピーダンスの天絡が発生した場合にも、異常な過電流状態を引き延ばすことなく迅速適確に電力供給ラインを遮断することが可能であり、スイッチング素子が多量に発熱ないし破壊する事態を未然に防ぐことができる。
【0016】
本発明の第4の観点における昇圧型スイッチングレギュレータは、直流の入力電圧をスイッチング素子およびコイルを介して前記入力電圧より高い直流の出力電圧に変換する昇圧型スイッチングレギュレータであって、前記スイッチング素子および前記コイルと直列に接続されているロードスイッチと、前記スイッチング素子を一定の周波数および可変のディーティ比でオン・オフさせるスイッチング制御部と、スイッチングの各サイクルにおいて前記スイッチング素子を流れる電流を第1の監視値とそれより高い第2の監視値とを用いて監視し、スイッチングの各サイクルにおいてオン時間の開始直後に第1の部分監視期間を設け、前記第1の部分監視期間の中で前記電流が前記第2の監視値を超えたときは、前記ロードスイッチをオフにし、前記第1の部分監視期間の終了後の残りの第2の部分監視期間の中で前記電流が前記第1の監視値を超えたときは、前記スイッチング制御部を通じて前記スイッチング素子を途中でオフにする保護部とを有する。
【0017】
上記構成の昇圧型スイッチングレギュレータにおいては、スイッチングの各サイクルにおいて、オン時間の開始直後の第1の部分監視期間中は、スイッチング素子を流れる電流に対応する電流検出信号が低い方の第1の監視値を超えただけではロードスイッチおよびスイッチング素子のいずれもオフにせず、高い方の第2の監視値を超えたときに、ロードスイッチをオフにして電力供給ラインを遮断する。そして、電流検出信号が第1の部分監視期間中に第2の監視値を超えず第2の部分監視期間中に第1の監視値を超えたときは、スイッチング素子をオフして当該サイクルのオン時間を途中で終了する。このように、スイッチングの各サイクルのオン時間に上記のような作用をもたらす第1および第2の部分監視期間を設定することで、異常な過電流をパルスバイパルスの電流制限によって引き延ばすことなく早期に電力供給ラインを遮断して、スイッチング素子の発熱ないし破壊を防止することができる。
【0018】
本発明の好適な実施態様においては、ロードスイッチをオフにするときは、スイッチング制御部を通じてスイッチング素子のオン・オフ動作を停止する。このように、天絡発生時には、電源供給ラインの遮断に重ねて、スイッチング素子自体をオフ状態に保持することにより、スイッチング素子をより安全確実に保護するとともにスイッチング制御部をより安定に動作させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の昇圧型スイッチングレギュレータによれば、上記のような構成および作用により、スイッチング素子を天絡から安全適確に保護し、さらにはレアショート等のようにそれほど低くないインピーダンスで異常な過電流が発生した場合でも適確に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態における昇圧型スイッチングレギュレータの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】上記実施形態における昇圧型スイッチングレギュレータのより具体的な構成例を示す回路図である。
【
図3】
図2の昇圧型スイッチングレギュレータに含まれるブランキング回路の具体的構成例を示す回路図である。
【
図4】
図3のブランキング回路に含まれるSST状況判別回路に関する作用を説明するための各部の波形または状態を示す図である。
【
図5】
図4のブランキング回路に含まれるFB状況判別回路に関する作用を説明するための各部の波形または状態を示す図である。
【
図6】
図4のブランキング回路に含まれるOCP1状況判別回路に関する作用を説明するための各部の波形または状態を示す図である。
【
図7】
図2の昇圧型スイッチングレギュレータにおいて、スイッチングの或るサイクルで不意にインピーダンスの非常に低い天絡が発生した場合の作用を説明するための各部の波形または状態を示す図である。
【
図8】
図2の昇圧型スイッチングレギュレータにおいて、スイッチングの或るサイクルで不意にインピーダンスのそれほど低くない天絡が発生した場合の作用を説明するための各部の波形または状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[スイッチングレギュレータの全体構成]
【0022】
図1に、本発明の一実施形態における昇圧型スイッチングレギュレータの全体構成を示す。この昇圧型スイッチングレギュレータは、入力端子10より入力される直流の電圧VDDをそれより高い一定の電圧値に制御された直流の電圧VOUTに変換して出力端子12より負荷に供給するDC-DCコンバータとして構成されている。通常、負荷は出力端子12とグランド電位端子との間に接続される。入力端子10は、たとえば電池または蓄電池(図示せず)に接続される。
【0023】
この昇圧型スイッチングレギュレータは、基本構成として、昇圧チョッパ回路16およびスイッチング制御部18を有している。昇圧チョッパ回路16は、入力端子10と出力端子12との間にチョークコイル11とダイオード13を直列に接続し、チョークコイル11とダイオード13間のノードNAとグランド電位との間にスイッチング素子14を接続し、ダイオード13と出力端子12間のノードNBとグランド電位との間にコンデンサ15を接続している。スイッチング素子14は、好ましくは高速にオン・オフ可能な半導体スイッチング素子でよく、たとえばMOSFETからなるスイッチングトランジスタであってよい。
【0024】
スイッチング制御部18は、電圧検出回路22、誤差増幅器24、基準電圧回路26およびスイッチング回路28を含んでいる。
【0025】
電圧検出回路22は、昇圧チョッパ回路16の出力端側に得られる出力電圧VOUTを検出して、これを表す電圧検出信号FBを誤差増幅器24に与える。誤差増幅器24には、基準電圧回路26より2種類の基準電圧VREF3,SSTも与えられる。一方の基準電圧VREF3は、出力電圧VOUTの設定値に対応する一定の電圧レベルを有している。他方の基準電圧SSTは、起動時または再起動時に出力電圧VOUTを緩やかに立ち上げるソフトスタートのためのもので、可変の電圧レベルを有する。より詳しくは、基準電圧SSTは、起動時または再起動時に、固定レベルの基準電圧VREF3より低いグランド電位からVREF3より高い入力電圧VDDのレベルへ漸次的に上昇する。そして、スイッチング動作を停止してシャットダウンするときは、基準電圧SSTがそれまでのVDDレベルから瞬時にグランド電位にドロップするようになっている。
【0026】
誤差増幅器24は、電圧検出回路22からの電圧検出信号FBを基準電圧回路26からの基準電圧VREF3,SSTのうちの低い方と比較して比較誤差を表す誤差信号ERを生成するように構成されている。定常状態では、SST>VREF3であり、誤差増幅器24は、電圧検出信号FBを低い方の基準電圧VREF3と比較して得られる誤差信号ERをスイッチング回路28に与える。
【0027】
スイッチング回路28は、スイッチングの周波数で鋸波信号あるいは三角波信号等のランプ信号を発生する発振回路と、誤差増幅器24からの誤差信号ERをランプ信号と比較して両者の大小関係を二値の電圧レベル(Hレベル/Lレベル)で表すパルス幅変調信号を出力するコンパレータと、パルス幅変調信号に応じた駆動信号DRVによりスイッチング素子14をオン・オフ駆動するドライバ回路等を含んでいる。
【0028】
スイッチング制御部18は、上記の構成により、スイッチング素子14を一定のスイッチング周波数および可変のデューティ比でオン・オフさせる。ここで、スイッチング素子14がオンしている期間中は、入力端子10からチョークコイル11およびスイッチング素子14を通ってグランド電位端子に電流が流れ、チョークコイル11に電磁エネルギーが蓄積される。その際、チョークコイル11には、入力電圧VDDに逆らう誘導起電力が発生する。スイッチング素子14がオフしている期間中は、チョークコイル11よりダイオード13を介してコンデンサ15ないし負荷に電磁エネルギーが放出(供給)され、その際チョークコイル11には電流を流し続けるように入力電圧VDDと同じ向きの誘導起電力が発生する。こうして、出力端子12には入力電圧VDDより高い出力電圧VOUTが得られる。スイッチング制御部18は、出力電圧VOUTをフィードバック制御によって設定値付近に維持しながら、時間的に連続する出力電流ILを負荷に供給する。
【0029】
この昇圧型スイッチングレギュレータは、上記のような昇圧チョッパ回路16およびスイッチング制御部18に加えて、ロードスイッチ200、ロードスイッチ駆動回路202および保護部20を有している。
【0030】
ロードスイッチ200は、好ましくはMOSFETからなり、電力供給ライン上でチョークコイル11およびスイッチング素子14と直列に接続されている。より詳細には、ロードスイッチ200は、電源供給ライン上で入力端子10とチョークコイル11との間(またはチョークコイル11とノードNAとの間)に設けられる。ロードスイッチ駆動回路202は、正常時はロードスイッチ200をオン状態に保ち、保護部20より後述する遮断指示信号OCP2を受け取ると、これに応動してロードスイッチ200をオフ状態にするようになっている。
【0031】
この実施形態における保護部20は、電流検出回路30、小過電流監視回路(第1の過電流監視回路)32、ブランキング回路34、ゲート回路36、大過電流監視回路(第2の過電流監視回路)38および遮断・復帰回路40を有している。このうち、小過電流監視回路32、ブランキング回路34およびゲート回路36は、過電流制限回路(第1の保護回路)42を構成する。一方、大過電流監視回路38および遮断・復帰回路40は、短絡保護回路(第2の保護回路)44を構成する。
【0032】
保護部20は、後述するように、スイッチングの各サイクルにおいてスイッチング素子14を流れる電流ISを所定の第1の監視値(低監視値)とそれより高い所定の第2の監視値(高監視値)とを用いて監視し、スイッチングの各サイクルにおいてオン時間の開始直後に時間幅の可変または切替可能な第1の部分監視期間(ブランキング期間BT)を設け、第1の部分監視期間(BT)の中で電流ISが第2の監視値を超えたときは、ロードスイッチ駆動回路202を通じてロードスイッチ200をオフにすると同時に、スイッチング制御部18を通じてスイッチング素子14のオン・オフ動作を停止し、第1の部分監視期間(BT)の終了時以後の残りの第2の部分監視期間の中で電流ISが第1の監視値を超えたときは、スイッチング制御部18を通じてスイッチング素子14を途中でオフにするようなっている。
【0033】
スイッチング制御部18のスイッチング回路28より出力される信号DRVは、上記のようにスイッチング素子14に対して駆動信号として与えられるだけでなく、保護部20のブランキング回路34、電流検出回路30および両過電流監視回路32,38に対してもスイッチング素子14のオン・オフ状況を示すタイミング用の制御信号として与えられる。
【0034】
電流検出回路30は、スイッチング回路28からのタイミング制御信号DRVに応動し、スイッチングの各サイクルCYi毎に、スイッチング素子14を流れる電流ISを電流センサ46を介して検出し、電流ISの波形を表す電流検出信号VOCPを生成するように構成されている。この電流検出信号VOCPは、両過電流監視回路32,38に与えられる。
【0035】
過電流制限回路42の小過電流監視回路32は、スイッチング回路28からのタイミング制御信号DRVに応動して、スイッチングの各サイクルCYiのオン時間中に電流検出信号VOCPを監視し、電流検出信号VOCPがパルスバイパルス用の低い方の監視値(第1の監視値)VREF1を超えたときに、小過電流検知信号EXD1(第1の過電流検知信号)を発生する。この小過電流検知信号EXD1はゲート回路36に入力される。
【0036】
ゲート回路36には、ブランキング回路34からのパルス信号またはブランキング信号BLKも入力される。このブランキング信号BLKは、スイッチングの各サイクルCYiのオン時間TONの開始直後にブランキング期間BTを挿入するためのものであり、そのパルス幅がブランキング期間BTの時間幅TWを規定する。
【0037】
ブランキング回路34は、スイッチング回路28からのタイミング制御信号DRVを入力するだけでなく、電圧検出回路22からの電圧検出信号FB、基準電圧回路26からの可変の基準電圧SSTおよびゲート回路36からの後述する電流制限指示信号OCP1を各事象の有無または状況を示す事象情報信号として入力する。
【0038】
ブランキング回路34は、各事象情報信号FB,SST,OCP1に基づいてブランキング信号BLKの発生条件や特性等を制御または選択し、特にブランキング期間BTの時間幅TWを可変し、または複数の設定時間幅(たとえば後述する通常時間幅TWS,拡張時間幅TWL)の間で切り替えるように構成されている。ブランキング回路34の詳細な構成および作用については、後に詳しく説明する。
【0039】
ゲート回路36は、ブランキング信号BLKのパルスが持続している間つまりブランキング期間BT中は、小過電流監視回路32より小過電流検知信号EXD1が発生されても、これを無効にする。しかし、ブランキング信号BLKの持続時間(ブランキング期間BT)が終了した後は、小過電流監視回路32より小過電流検知信号EXD1が発生されると、これに応動してスイッチング回路28に対して電流制限指示信号OCP1を出力する。スイッチング回路28は、ゲート回路36より電流制限指示信号OCP1を受け取ると、直ちにスイッチング素子14をオフし、当該サイクルCYiのオン時間TONを途中で終了するようになっている。
【0040】
このように、過電流制限回路42は、スイッチングの各サイクルCYiにおいてオン時間TONの開始直後に時間幅TWの可変または切替可能なブランキング期間BTを挿入するブランキング回路34を有している。そして、過電流制限回路42は、スイッチングの各サイクルCYiにおいて、電流検出回路30より与えられる電流検出信号VOCPをパルスバイパルス用の低監視値VREF1を用いて監視し、ブランキング期間BT中は電流検出信号VOCPが低監視値VREF1を超えてもスイッチング回路28に対して何の働きもしないで、ブランキング期間BTの終了時以後に電流検出信号VOCPが低監視値VREF1を超えたときは、直ちにスイッチング素子14をオフさせるための電流制限指示信号OCP1をスイッチング回路28に与えるようになっている。
【0041】
一方、短絡保護回路44の大過電流監視回路38は、スイッチング回路28からのタイミング制御信号DRVに応動し、スイッチングの各サイクルCYiのオン時間TON中に、電流検出回路30より与えられる電流検出信号VOCPを監視し、電流検出信号VOCPが遮断用の高監視値(第2の監視値)VREF2(ただしVREF1<VREF2)を超えたときは、そのタイミングで大過電流検知信号(第2の過電流検知信号)EXD2を発生する。この大過電流検知信号EXD2は遮断・復帰回路40に与えられる。
【0042】
遮断・復帰回路40は、大過電流監視回路38より大過電流検知信号EXD2を受け取ると、これに応動して遮断指示信号OCP2を出力する。この遮断指示信号OCP2は、ロードスイッチ駆動回路202を通じてロードスイッチ200をオフにすると同時に、スイッチング回路28を通じてスイッチング素子14のオン・オフ動作を停止する。これによって、スイッチング素子14には電流ISが流れなくなる。また、電力供給ラインがロードスイッチ200で遮断されることにより、出力電流ILが消滅し、出力電圧VOUTがグランド電位まで下がる。
【0043】
遮断・復帰回路40は、上記のようにしてシャットダウンを行った場合には、所定時間の経過後に、ロードスイッチ駆動回路202およびスイッチング回路28に対する遮断指示信号OCP2を解除して、ロードスイッチ200をオン状態に復帰させ、スイッチング制御部18を通じてソフトスタートの再起動を行うようになっている。ソフトスタートの再起動では、可変基準電圧発生回路68(
図2)において可変の基準電圧SSTがそれまでのグランド電位からVDDレベルへ漸次的に上昇する。誤差増幅器24は、SSTがVREF3を超えるまでは、電圧検出信号FBに対する比較基準電圧としてSSTを用いる。比較基準電圧のSSTが漸次的に上昇することで、パルス幅変調信号PWMのデューティ比が漸次的に増大し、短絡状態が収まっている限り、出力電圧VOUTは緩やかに立ち上がる。
【0044】
さらに、遮断・復帰回路40は、過電流制限回路42のゲート回路36より電流制限指示信号OCP1が発生されると、これを取り込む。そして、所定時間以内または所定サイクル数以内に電流制限指示信号OCP1の発生回数が設定値に達したときには、ロードスイッチ駆動回路202およびスイッチング制御部18に対してアクティブな遮断指示信号OCP2を与えるようになっている。この場合も、ロードスイッチ駆動回路202はロードスイッチ200をオフにし、スイッチング制御部18はスイッチング素子14のオン・オフ動作を停止する。そして、一定時間の経過後に、遮断・復帰回路40が上記と同様に遮断指示信号OCP2を解除すると、ロードスイッチ200がオン状態に復帰するとともに、スイッチング制御部18がソフトスタートで再起動を行うようになっている。
【0045】
このように、短絡保護回路44は、スイッチングの各サイクルCYiにおいて、電流検出回路30より与えられる電流検出信号VOCPを遮断用の高監視値VREF2を用いて監視し、ブランキング信号BLKの与えるブランキング期間BTとは関係なく、オン時間中に電流検出信号VOCPが高監視値VREF2を超えたときは常に、ロードスイッチ200をオフにするとともにスイッチング素子14のオン・オフ動作を停止するための遮断指示信号OCP2をロードスイッチ駆動回路202およびスイッチング制御部18に与え、一定時間の経過後にロードスイッチ200をオン状態に復帰させるとともにスイッチング素子14のオン・オフ動作をソフトスタートで再開するようになっている。
[スイッチングレギュレータの具体的構成例]
【0046】
図2に、この実施形態における昇圧型スイッチングレギュレータのより具体的な構成例を示す。
【0047】
ロードスイッチ200は、PMOSトランジスタからなり、そのソースが入力端子10に接続され、ドレインがチョークコイル11の入力端に接続され、ゲートがロードスイッチ駆動回路202の出力端子に接続されている。
【0048】
ロードスイッチ駆動回路202には駆動トランジスタ204が含まれている。この駆動トランジスタ204は、NMOSトランジスタからなり、そのソースがグランド電位端子に接続され、ドレインがロードスイッチ(PMOSトランジスタ)200の制御端子(ゲート)に接続されるとともに抵抗206を介して入力端子10に接続され、ゲートがインバータ208を介して保護回路20の遮断・復帰回路44の出力端子に接続されている。
【0049】
昇圧チョッパ回路16のスイッチング素子14はNMOSトランジスタからなり、そのソースはセンス抵抗82を介してグランド電位端子に接続され、ドレインはノードNAに接続され、ゲートはスイッチング回路28のドライバ回路56の出力端子に接続されている。スイッチング素子(NMOSトランジスタ)14は、ドライバ回路56よりパルス信号として与えられる駆動信号DRVの二値の電圧レベル(Hレベル/Lレベル)にしたがってオン・オフし、DRVがHレベルのときはオンし、DRVがLレベルのときはオフする。
【0050】
スイッチング回路28は、ドライバ回路56のほかに、発振回路58およびコンパレータ60を含んでいる。発振回路58は、スイッチングの周波数で鋸波信号あるいは三角波信号等のランプ信号OSCを発生する。コンパレータ60は、誤差増幅器24からの誤差信号ERをランプ信号OSCと比較して両者の大小関係を二値の電圧レベル(Hレベル/Lレベル)で表すパルス信号をパルス幅変調信号PWMとして出力する。
【0051】
ドライバ回路56には、コンパレータ60からのパルス幅変調信号PWMが入力されるだけでなく、過電流制限回路42のゲート回路36からの電流制限指示信号OCP1および短絡保護回路44の遮断・復帰回路40からの遮断指示信号OCP2も入力される。ドライバ回路56は、たとえばRSフリップフロップからなるラッチ回路を有しており、スイッチングの各サイクルにおいて、パルス幅変調信号PWMのサイクル始端(Lレベル→Hレベルの変化)に応動して駆動信号DRVをアクティブなHレベルにセットする。この後、ドライバ回路56は、指示信号OCP1,OCP2のいずれの入力もないときは、現時のデューティ比で決まるパルス幅変調信号PWMのレベル変化(Hレベル→Lレベル)のタイミングで、駆動信号DRVを非アクティブなLレベルにリセットする。しかし、駆動信号DRVがアクティブなHレベルになっているときに、指示信号OCP1,OCP2のいずれかを入力すると、これをラッチしてドライバ回路56は駆動信号DRVを非アクティブなLレベルにリセットする。この場合、スイッチング素子14は、現時のデューティ比で決まる本来のオン時間の途中でオフすることになる。
【0052】
電圧検出回路22は、昇圧チョッパ回路16の出力端とグランド電位端子との間に直列に接続された2つの抵抗62,64からなり、両抵抗間のノードN1より電圧検出信号FBを出力する。この電圧検出信号FBは、定電圧制御用のフィードバック信号として誤差増幅器24に与えられるだけでなく、出力電圧VOUTの有無または状況を示す事象情報信号としてブランキング回路34にも与えられる。
【0053】
基準電圧回路26は、出力電圧VOUTの設定値に対応した一定レベルの基準電圧VREF3を出力する基準電圧源66と、ソフトスタート用の可変の基準電圧SSTを出力する可変基準電圧発生回路68とを有する。可変基準電圧発生回路68は、VDD電圧供給端子(入力端子10)とグランド電位端子との間に直列に接続された定電流源70およびコンデンサ72を有し、両者間のノードN2上に可変の基準電圧SSTを発生する。ノードN2とグランド電位端子との間には、遮断・復帰回路40のNMOSトランジスタ80がスイッチとして設けられている。
【0054】
定常時は、NMOSトランジスタ80がオフ状態に保持されている。これにより、コンデンサ72は満充電状態を保ち、その充電電圧つまりノードN2上の基準電圧SSTは固定の基準電圧VREF3より高いVDDレベルに維持される。しかし、短絡保護回路44において遮断・復帰回路40がシャットダウンのための遮断指示信号OCP2を発生すると、これに応動してNMOSトランジスタ80がオンする。これによって、ノードN2上の基準電圧SSTは瞬時に放電し、VDDレベルからグランド電位にドロップする。この時、スイッチング制御部18内では、基準電圧SSTが電圧検出信号FBとの比較基準値に用いられることにより、パルス幅変調信号PWMのデューティ比が速やかにゼロに向かって小さくなる。
【0055】
再起動時には、遮断・復帰回路40がNMOSトランジスタ80をオン状態からオフ状態に切り替える。すると、定電流源70より供給される定電流IREF1によってコンデンサ72が充電され、上昇中の充電電圧がノードN2より基準電圧SSTとして出力される。この充電速度はソフトスタートの速度を律速し、充電電流IREF1の電流量とコンデンサ72の容量によって決まる。ノードN2上に得られる基準電圧SSTは、スイッチング制御部18の誤差増幅器24に与えられるだけでなく、ソフトスタートの有無(オン・オフ)ないし状況を示す事象情報信号としてブランキング回路34にも与えられる。
【0056】
スイッチング素子(NMOSトランジスタ)14を流れる電流ISの検出に用いられる電流センサ46は、スイッチング素子(NMOSトランジスタ)14のソースとグランド電位端子との間に接続されているセンス抵抗82を有し、センス抵抗82の電圧降下を電流センス電圧SNSとして取り出す。センス抵抗82の抵抗値は非常に低く(たとえば数mΩ程度)、スイッチング素子14を流れる電流ISに影響を与えない。
【0057】
この実施形態における電流検出回路30は、電流センサ46と誤差増幅器86とを含んで構成され、電流センサ46より得られる電流センス電圧SNSを誤差増幅器86によって増幅し、電流ISの波形を表す電圧信号つまり電流検出信号VOCPを生成する。
【0058】
電流検出回路30の出力端子であるノードN4は、小過電流監視回路32を構成するコンパレータ94の反転入力端子(-)に接続されるとともに、大過電流監視回路38を構成するコンパレータ96の非反転入力端子(+)に接続されている。ノードN4とグランド電位端子との間には、NMOSトランジスタ98がスイッチとして設けられている。
【0059】
NMOSトランジスタ98のゲートには、スイッチング回路28のドライバ回路56より駆動信号DRVがスイッチングの各サイクルCYi毎にスイッチング素子14のオン・オフ状況を示すタイミング制御信号としてインバータ99を介して入力される。
【0060】
タイミング制御信号DRVがLレベルになっている時(スイッチング素子14がオフしている時)は、NMOSトランジスタ98がオン状態となり、ノードN4はグランド電位にクランプされる。タイミング制御信号DRVがHレベルになっている時(スイッチング素子14がオンしている時)は、NMOSトランジスタ98がオフ状態となり、ノードN4上に電流検出信号VOCPが生成される。
【0061】
小過電流監視回路32において、コンパレータ94の非反転入力端子(+)には、基準電圧源100より低監視値としての基準電圧VREF1が常時入力される。タイミング制御信号DRVがLレベルになっている時(スイッチング素子14がオフしている時)は、上記のようにノードN4がオン状態のNMOSトランジスタ98を介してグランド電位にクランプされるため、コンパレータ94の出力は非アクティブなHレベルに保持される。タイミング制御信号DRVがHレベルになっている時(スイッチング素子14がオンしている時)は、電流検出回路30よりノードN4上に出力される電流検出信号VOCPの電圧値によってコンパレータ94の出力の論理レベルが決まり、電流検出信号VOCPが低監視値VREF1を超えた時だけコンパレータ94の出力がLレベルに変わり、このLレベルのパルスが小過電流検知信号EXD1となる。
【0062】
コンパレータ94の出力は、短絡制限回路42のゲート回路36を構成するNOR回路の一方の入力端子に入力される。NOR回路36の他方の入力端子には、ブランキング回路34の出力が入力される。ブランキング回路34は、タイミング制御信号DRVに応動し、スイッチングの各サイクルにおいてオン時間の開始直後にHレベルのパルス信号としてブランキング信号BLKを出力する。
【0063】
NOR回路36は、一方の入力信号であるHレベルのブランキング信号BLKが持続している間(ブランキング期間BT中)は、他方の入力信号であるコンパレータ94の出力の値または状態には関係なく、一義的に非アクティブなLレベルの出力を発生する。これにより、ブランキング期間BT中にコンパレータ94よりLレベルの小過電流検知信号EXD1を受け取っても、NOR回路36はこれを無効にする。
【0064】
ブランキング信号BLKの持続時間(ブランキング期間BT)が終了し、ブランキング回路34の出力がLレベルになると、NOR回路36の出力はコンパレータ94の出力によって決まる。すなわち、ノードN4上の電流検出信号VOCPが低監視値VREF1より低くて、コンパレータ94の出力がHレベルであるときは、NOR回路36は非アクティブなLレベルの出力を保つ。しかし、電流検出信号VOCPが低監視値VREF1を超えたときは、コンパレータ94の出力がHレベルからLレベルに変わり(小過電流検知信号EXD1が発生され)、これに応動してNOR回路36の出力がLレベルからHレベルに変わる(電流制限指示信号OCP1が発生される)。
【0065】
NOR回路36より発生された電流制限指示信号OCP1は、スイッチング素子14をオフするためにスイッチング回路28のドライバ回路56に与えられる。一方で、電流制限指示信号OCP1は、スイッチング素子14を流れる電流ISが不意に低監視値VREF1を超えるほどの過電流になったことを示す事象情報信号としてブランキング回路34にも与えられ、さらには短絡保護回路44の遮断・復帰回路40にも与えられる。
【0066】
電流検出回路30の出力端子であるノードN4は、上記のように、短絡保護回路44の大過電流監視回路38を構成するコンパレータ96の非反転入力端子(+)にも接続されている。コンパレータ96の反転入力端子(-)には、基準電圧源102より高監視値としての基準電圧VREF2が常時入力される。
【0067】
タイミング制御信号DRVがLレベルになっている時(スイッチング素子14がオフしている時)は、上記のようにノードN4がオン状態のNMOSトランジスタ98を介してグランド電位にクランプされ、コンパレータ96の出力は非アクティブなLレベルに保持される。タイミング制御信号DRVがHレベルになっている期間中(スイッチング素子14がオンしている期間中)は、電流検出回路30よりノードN4上に出力される電流検出信号VOCPの電圧値によってコンパレータ96の出力のレベルまたは論理値が決まる。すなわち、電流検出信号VOCPが高監視値VREF2より低いうちはコンパレータ96の出力がLレベルであり、電流検出信号VOCPが高監視値VREF2を超えるとコンパレータ96の出力がHレベルとなり、このHレベルのパルスが大過電流検知信号EXD2となる。
【0068】
大過電流監視回路38のコンパレータ96よりHレベルの大過電流検知信号EXD2が出力されると、この大過電流検知信号EXD2は遮断・復帰回路40に与えられ、ORゲート74を介してRSフリップフロップ76のセット入力端子Sに入力される。RSフリップフロップ76はこれに応動してQ出力をHレベルにセットし、これが遮断指示信号OCP2となる。
【0069】
遮断・復帰回路40よりアクティブなHレベルの遮断指示信号OCP2が出力されると、ロードスイッチ駆動回路202の駆動トランジスタ(NMOSトランジスタ)204がオフして、それまでオン状態に保持していたロードスイッチ200をオフにする。一方で、Hレベルの遮断指示信号OCP2に応動して、スイッチング回路28のドライバ回路56がスイッチング素子14をオフにし、かつオン・オフ動作を停止する。さらに、遮断指示信号OCP2は、上述したように可変基準電圧発生回路68の基準電圧SSTをVDDレベルからグランド電位に下げるためにNMOSトランジスタ80のゲートにも与えられる。
【0070】
遮断・復帰回路40は、NMOSトランジスタ80、ORゲート74、RSフリップフロップ76のほかにタイマ回路78およびカウンタ104を有している。タイマ回路78は、RSフリップフロップ76のQ出力がHレベルにセットされると、これに応動して計時を開始し、予め設定した時間が経過した時にHレベルのパルスをRSフリップフロップ76のリセット入力端子Rに与える。これにより、RSフリップフロップ76のQ出力がLレベルにリセットされ、遮断指示信号OCP2の持続時間が終了する。
【0071】
こうして遮断指示信号OCP2がアクティブなHレベルから非アクティブなLレベルに変わると、ロードスイッチ200がオフ状態(電力遮断状態)からオン状態(電力供給状態)に復帰すると同時に、スイッチング制御部18がスイッチング素子14のオン・オフ動作を再開する。すなわち、可変基準電圧発生回路68でグランド電位から漸次的に上昇する可変の基準電圧SSTが誤差増幅器24で比較基準電圧に用いられ、パルス幅変調信号PWMのデューティ比が漸次的に増大する。ドライバ回路56は、パルス幅変調信号PWMに応じて駆動信号DRVを出力するようになる。
【0072】
なお、遮断・復帰回路40のカウンタ104は、過電流制限回路42のNOR回路36より発生された電流制限指示信号OCP1を取り込んでカウントする。そして、所定時間以内または所定のサイクル数以内にカウント値が設定値に達したときは、カウンタ104がHレベルのパルス信号を発生する。このHレベルのパルス信号は、パルスバイパルス方式による連続的な電流制限の回数が許容限界値を超えたことを示し、遮断要請信号ARMとしてORゲート74を介してRSフリップフロップ76のセット入力端子Sに与えられる。これによって、上記と同様にRSフリップフロップ76より遮断指示信号OCP2が出力され、シャットダウン等が行われる。
[ブランキング回路の具体例]
【0073】
図3に、
図2の昇圧型スイッチングレギュレータに含まれるブランキング回路34の具体的構成例を示す。このブランキング回路34は、ブランキング信号生成回路110とブランキング期間選択回路112とを有している。
【0074】
ブランキング信号生成回路110は、定電流源114,116、PMOSトランジスタ118、NMOSトランジスタ120、コンデンサ122、インバータ(反転回路)124,126およびNORゲート128を含んでいる。
【0075】
図示のように、VDD電圧供給端子とグランド電位端子との間に、定電流源114およびコンデンサ122がノードN5を介して直列に接続されるとともに、定電流源116、PMOSトランジスタ118およびNMOSトランジスタ120がノードN5を介して直列に接続されている。
【0076】
より詳しくは、定電流源114の出力端子にノードN5を介してコンデンサ122が接続されている。一方、PMOSトランジスタ118のソースが定電流源116の出力端子に接続され、NMOSトランジスタ120のソースがグランド電位端子に接続され、両トランジスタのそれぞれのドレインがノードN5を介して相互に接続されている。
【0077】
ノードN5は、インバータ124,126を介してNORゲート128の一方の入力端子に接続されている。NORゲート128の他方の入力端子には、スイッチング回路28のドライバ回路56(
図2)からタイミング制御信号DRVがインバータ119を介して入力される。タイミング制御信号DRVは、NMOSトランジスタ120のゲートにもインバータ119を介して与えられる。PMOSトランジスタ118のゲートには、ブランキング信号選択回路112のORゲート142の出力が与えられる。
【0078】
上記のように、スイッチング素子14がオフしている時は、タイミング制御信号DRVがLレベルになっている。この時、ブランキング信号生成回路110内では、NMOSトランジスタ120がオンしていて、コンデンサ122は無充電状態にあり、ノードN5の電位VN5はグランド電位つまりLレベルに保持される。また、NORゲート128は、インバータ119を介してタイミング制御信号DRVの反転レベル(Hレベル)を入力するため、インバータ126の出力の状態に関係なくLレベルの出力を保持する。もっとも、ノードN5の電位VN5がLレベルであるから、インバータ126の出力はLレベルになっている。
【0079】
タイミング制御信号DRVは、スイッチング素子14をオンさせる時にLレベルからHレベルに変わる。すると、ブランキング信号生成回路110内では、NORゲート128の両入力がLレベルになるため出力がそれまでのLレベルからHレベルに変わり、ブランキング信号BLKのパルスが立ち上がる(ブランキング期間BTが開始する。)。一方で、NMOSトランジスタ120がオフしてノードN5をグランドから電気的に遮断するので、必ず定電流源114からの定電流IREF3がコンデンサ122に流れ込んで充電に寄与する。この時、PMOSトランジスタ118がオンしているときは、定電流源116からの定電流IREF4もコンデンサ122に流れ込んで充電に寄与する。しかし、PMOSトランジスタ118がオフしているときは、定電流IREF4は遮断され、コンデンサ122の充電に寄与しない。
【0080】
こうしてコンデンサ122に単一の定電流IREF3もしくは合成の定電流(IREF3+IREF4)が流れ込むことにより、コンデンサ122の充電電圧つまりノードN5の電位VN5が二通りのレートで上昇する。そして、いずれの定電流によって充電が行われても、ノードN5の電位VN5がインバータ124の閾値電圧TH124を超えた時に、NORゲート128の出力がHレベルからLレベルに変化して、ブランキング信号BLKの持続時間またはブランキング期間BTが終了する。
【0081】
このように、ブランキング信号生成回路110においては、コンデンサ122の容量をC122とすると、ブランキング期間BTの時間幅TWとして、TH124×C122÷(IREF3+IREF4)で決まる短めの通常時間幅(第1の時間幅)TWSまたはTH124×C122÷IREF3で決まる長めの拡張時間幅(第2の時間幅)TWLのいずれかをPMOSトランジスタ118のオン/オフによって選択することができる。
【0082】
ブランキング期間選択回路112は、3種類の事象情報信号SST,FB,OCP1にそれぞれ対応する3つの事象状況判別回路130,132,134を有している。
図4~
図6には、これらの事象状況判別回路130,132,134に関する作用を説明するための各部の波形又は状態を示す。
【0083】
SST状況判別回路130は、コンパレータ138と基準電圧源140とを有し、可変基準電圧発生回路68(
図2)における可変の基準電圧SSTが所定の閾値電圧VREF4より高いか低いかを監視する監視回路として構成されている。
【0084】
より詳しくは、コンパレータ138は、一方の入力端子(反転入力端子(-))に可変基準電圧発生回路68からの基準電圧SSTを入力し、他方の入力端子(非反転入力端子(+))に定電圧源140からの閾値電圧VREF4を入力する。そして、コンパレータ138は、両入力信号の電圧レベルを比較し、SST<VREF4のときはHレベルを出力し、SST>VREF4のときはLレベルを出力する。コンパレータ138の出力は、ORゲート142を介してブランキング信号生成回路110内のPMOSトランジスタ118のゲートに与えられる。
【0085】
このSST状況判別回路130によれば、SST<VREF4のときはブランキング信号生成回路110内でPMOSトランジスタ118がオフして単一充電電流IREF3ひいては拡張時間幅TWLが選択され、SST>VREF4のときはブランキング信号生成回路110内でPMOSトランジスタ118がオンして合成充電電流(IREF3+IREF4)ひいては通常時間幅TWSが選択されるようになっている。
【0086】
より詳しくは、
図4に示すように、起動時または再起動時には、ソフトスタートを行うために、可変基準電圧SSTがグランド電位からVDDレベルへと線形的に上昇する。この場合、遮断・復帰回路40がNMOSトランジスタ80(
図2)をオフした時(t
0)からSSTが閾値電圧VREF4を超える時(t
S)までの間は、SST状況判別回路130のコンパレータ138の出力はHレベルであり、ブランキング信号生成回路110内ではPMOSトランジスタ118がオフして単一充電電流IREF3が選択される。これにより、ブランキング信号BLKは、拡張時間幅TW
Lの持続時間を有するHレベルのパルスとして出力される。
【0087】
そして、SSTがVREF4を超えた時(tS)からコンパレータ138の出力がLレベルに変わり、ブランキング信号生成回路110内ではPMOSトランジスタ118がオンして合成充電電流(IREF3+IREF4)が選択される。これにより、SSTがVREF4を超えた後は、ブランキング信号BLKが通常時間幅TWSの持続時間を有するHレベルのパルスとして出力される。
【0088】
再び
図3において、FB状況判別回路132は、コンパレータ144と定電圧源146とを有し、電圧検出回路22より出力される電圧検出信号FBの電圧レベルが所定の閾値電圧VREF5より高いか低いかを監視する電圧監視回路として構成されている。
【0089】
より詳しくは、コンパレータ144は、一方の入力端子(反転入力端子(-))に電圧検出回路22(
図2)からの電圧検出信号FBを入力し、他方の入力端子(非反転入力端子(+))に基準電圧源146から閾値電圧VREF5を入力する。コンパレータ144は、可変基準電圧SSTをイネーブル信号として入力し、ソフトスタートによる起動また再起動が実質的に完了してから動作する。そして、両入力信号の電圧レベルを比較し、FB>VREF5のときはLレベルを出力し、FB<VREF5のときはHレベルを出力する。
【0090】
図5に示すように、電圧検出信号FBの電圧レベルが閾値電圧VREF5より高い間は、コンパレータ144の出力はLレベルで、ブランキング信号生成回路110内ではPMOSトランジスタ118のゲート電圧がLレベルであり、PMOSトランジスタ118がオンしている。これにより、合成充電電流(IREF3+IREF4)が選択され、ブランキング信号BLKは通常時間幅TW
Sの持続時間を有するHレベルのパルスとして出力される。
【0091】
しかし、電圧検出信号FBの電圧レベルが下がって時点tMで閾値電圧VREF5を切ると、コンパレータ144の出力がLレベルからHレベルに変わる。そうすると、コンパレータ144のHレベルの出力に応動してワンショット回路162より出力される短いパルス幅のワンショットパルスPLSがRSフリップフロップ164のセット入力端子Sに入力され、RSフリップフロップ164のQ出力がHレベルにセットされる。このRSフリップフロップ164のHレベルのQ出力は、ORゲート142を介してブランキング信号生成回路110のPMOSトランジスタ118のゲートに与えられる。これによって、PMOSトランジスタ118がオフし、ブランキング期間BTの時間幅TWがそれまでの通常時間幅TWSから拡張時間幅TWLに切り替わる。
【0092】
もっとも、後述するリセット回路180の作用により、RSフリップフロップ164のQ出力(ひいてはPMOSトランジスタ118のゲート電圧)は、上記のようにLレベルからHレベルに変わってもそれから直ぐに(一定時間TJ後に)Lレベルにリセットされる。これにより、ブランキング期間BTが拡張時間幅TWLで出力されるのは、FB>VREF5の状態からFB<VREF5の状態に変わった直後の限られた一定時間TJの間だけである。
【0093】
再び
図3において、OCP1状況判別回路134は、コンパレータ148、基準電圧源150、定電流源152、コンデンサ154およびNMOSトランジスタ156を有している。定電流源152とコンデンサ154は、VDD電圧供給端子とグランド電位との間でノードN6を介して直列に接続されている。NMOSトランジスタ156は、ソースがグランド電位端子に接続され、ドレインがノードN6に接続され、ゲートに過電流制限回路42(
図2)からの電流制限指示信号OCP1を入力する。コンパレータ148は、一方の入力端子(反転入力端子(-))にノードN6の電位VN6を入力し、他方の入力端子(非反転入力端子(+))に基準電圧源150から所定の閾値電圧VREF6を入力する。コンパレータ148は、両入力信号の電圧レベルを比較し、VN6>VREF6のときはLレベルを出力し、VN6<VREF6のときはHレベルを出力する。コンパレータ148の出力は、ORゲート160を介してワンショット回路162の入力端子に与えられる。これにより、コンパレータ148の出力は、後段の回路(ワンショット回路162、RSフリップフロップ164等)に対して上述したFB状況判別回路132のコンパレータ144の出力と同じ作用を与えるようになっている。
【0094】
図6に示すように、過電流制限回路42より電流制限指示信号OCP1が発生されていない安定状態では、NMOSトランジスタ156はオフ状態、コンデンサ154は満充電状態にあり、ノードN6の電位VN6はVDDレベルつまりHレベルに保持される。したがって、VN6>VREF6の状態にあり、コンパレータ148の出力はLレベルである。これにより、ブランキング信号生成回路110では、PMOSトランジスタ118がオンして合成充電電流(IREF3+IREF4)が選択され、ブランキング信号BLKは通常時間幅TW
Sで出力される。
【0095】
しかし、そのような安定状態の下で過電流制限回路42より不意に電流制限指示信号OCP1が出力されると、これに応動してNMOSトランジスタ156がオンし、コンデンサ154が瞬時に放電して、一瞬にそれまでのVN6>VREF6の状態からVN6<VREF6の状態に変わり、コンパレータ148の出力はLレベルからHレベルに変わる。これによって、ブランキング信号生成回路110内では、PMOSトランジスタ118がオフして単一の充電電流(IREF3)が選択され、ブランキング信号BLKのパルス持続時間(ブランキング期間BT)は拡張時間幅TWLに切り替わる。そして、上記一定時間TJの経過後に、ブランキング期間BTは通常時間幅TWSに戻る。
【0096】
なお、OCP1状況判別回路134においては、過電流制限回路42より不意(最初)に発生された電流制限指示信号OCP1を入力した直後に、NMOSトランジスタ156がオフする。これにより、コンデンサ154が定電流源152からの定電流IREF2によって充電され、ノードN6の電位VN6(充電電圧)は一定のレートで上昇する。この場合、次のサイクルでも電流制限指示信号OCP1が発生されたときは、その電流制限指示信号OCP1に応動してNMOSトランジスタ156がオンして、ノードN6上の電位VN6の上昇が閾値電圧VREF6に達する前に止まり、VN6はグランド電位にドロップするようになっている。その次のサイクルで電流制限指示信号OCP1が発生されたときも同様である。これにより、過電流制限回路42より電流制限指示信号OCP1が不意(最初)に発生された直後の所定時間TJだけ拡張時間幅TWLが選択されるようになっている。
【0097】
リセット回路180は、コンパレータ166、基準電圧源168、定電流源170、コンデンサ172、PMOSトランジスタ174およびNMOSトランジスタ176を有している。定電流源170とコンデンサ172は、VDD電圧供給端子とグランド電位との間でPMOSトランジスタ174とノードN7を介して直列に接続されている。PMOSトランジスタ174およびNMOSトランジスタ176は、それぞれのソースが定電流源170の出力端子およびグランド電位端子に接続され、それぞれのドレインがノードN7を介して相互に接続され、それぞれのゲートがRSフリップフロップ164のQ_出力(反転出力)に接続されている。コンパレータ166は、一方の入力端子(非反転入力端子(+))にノードN7の電位VN7を入力し、他方の入力端子(反転入力端子(-))に基準電圧源168から所定の閾値電圧VREF7を入力する。コンパレータ166は、両入力信号の電圧レベルを比較し、VN7<VREF7のときはLレベルを出力し、VN7>VREF7のときはHレベルを出力する。コンパレータ166の出力は、RSフリップフロップ164のリセット入力端子Rに与えられる。
【0098】
FB状況判別回路132またはOCP1状況判別回路134がRSフリップフロップ164のQ出力をLレベルにしている時は、Q_出力(反転出力)がHレベルになっている。この時、ブランキング信号生成回路110は、通常時間幅TWSのパルス持続時間を有するブランキング信号BLKを出力する。一方、リセット回路180では、PMOSトランジスタ174がオフ状態、NMOSトランジスタ176がオン状態で、ノードN7の電位VN7はグランド電位にクランプされ、コンパレータ166の出力はLレベルである。
【0099】
上記のように、FB状況判別回路132またはOCP1状況判別回路134からのHレベルの出力に応じてワンショット回路162よりワンショットパルスPLSが発生されると、RSフリップフロップ164のQ出力がHレベルにセットされ、ブランキング信号生成回路110内ではブランキング信号BLKのパルス持続時間(ブランキング期間BTの時間幅TW)が拡張時間幅TWLに切り替えられる。リセット回路180では、RSフリップフロップ164のQ_出力(反転出力)のHレベルからLレベルへの変化に応動して、NMOSトランジスタ176がオフするとともにPMOSトランジスタ174がオンし、コンデンサ172が定電流源170からの定電流IREF5によって充電され、ノードN7の電圧VN7(充電電圧)が一定のレートで上昇する。そして、ワンショットパルスPLSの発生から一定時間TJが経過した時点、つまり電圧VN7が閾値電圧VREF7に達した時点で、コンパレータ166の出力がLレベルからHレベルに変わり、これに応動してRSフリップフロップ164がリセットされ、Q出力をHレベルからLレベルに変える。これによって、ブランキング期間BTの時間幅TWが通常時間幅TWSに切り替えられる。リセット回路180内では、PMOSトランジスタ174がオフ、NMOSトランジスタ176がオンして、ノードN7の電圧VN7がグランド電位に下がり、コンパレータ166の出力がLレベルに戻る。
[スイッチングレギュレータの作用]
【0100】
図7~
図9を参照して、
図2および
図3の昇圧型スイッチングレギュレータの主要な作用について説明する。
【0101】
図7は、たとえばチョークコイル11の短絡により、スイッチングの或るサイクルCY
n-1の途中で不意に昇圧チョッパ回路16内のノードN
Aで非常に低いインピーダンスの天絡が発生した場合の一例である。この場合、スイッチング素子14のオン期間中には、入力電圧VDDが殆ど直接にスイッチング素子14に印加されるため、スイッチング素子14に非常に大きな電流ISが流れる一方で、チョークコイル11には電磁エネルギーが殆ど蓄積されない。このため、スイッチング素子14のオフ期間中には、チョークコイル11からの電磁エネルギーの放出が非常に少なく、コンデンサ15ないし負荷側に供給される電流が減少する。これにより、出力電圧VOUTが下がり、スイッチング制御部18では誤差信号ERのレベルが高くなる。こうして、次のサイクルCYnでオン時間T
ONが開始してスイッチング素子14がオンするや否や、スイッチング素子14を流れる電流ISが急峻に増大し、電流検出信号VOCPがブランキング期間BT(通常時間幅TW
S)の中で低監視値VREF1のみならず高監視値VREF2をも超える。
【0102】
この場合、過電流制限回路42では、電流検出信号VOCPが低監視値VREF1を超えた時に、小過電流監視回路32より小過電流検知信号EXD1が発生されるが、ゲート回路(NORゲート)36がこれを無効にするので、電流制限指示信号OCP1は出力されない。一方、短絡保護回路44では、大過電流監視回路38のコンパレータ96より大過電流検知信号EXD2が発生され、遮断・復帰回路40よりアクティブなHレベルの
H遮断指示信号OCP2が発生される。ロードスイッチ駆動回路202は、遮断指示信号OCP2に応動してロードスイッチ200をオフにする。また、スイッチング回路28も、遮断指示信号OCP2に応動してスイッチング素子14のオン・オフ動作を停止する。
【0103】
なお、遮断指示信号OCP2に応動してスイッチング回路28のドライバ回路56の出力信号DRVがHレベルからLレベルに変わると、スイッチング素子14がオフする一方で、NMOSトランジスタ98がオンし、ノードN4の電位VN4が瞬時にグランド電位に下がる。これにより、過電流制限回路42内ではコンパレータ94の出力がHレベルになり(小過電流検知信号EXD1のパルス持続時間が終了し)、短絡保護回路44内ではコンパレータ96の出力がLレベルになる(大過電流検知信号EXD2のパルス持続時間が終了する)。
【0104】
このように、スイッチングの各サイクルCYiにおけるブランキング期間BTの時間幅TWとして通常時間幅TWSが継続的または定常的に選択されている時に、スイッチングの或るサイクルCYnでブランキング期間BT中に電流検出信号VOCPが高監視値VREF2を超えた場合は、当該サイクルCYn内で短絡保護回路44が遮断指示信号OCP2を発生してロードスイッチ200およびスイッチング素子14をオフにし、かつ以後のサイクルCYn+1,CYn+2,‥‥のオン・オフ動作を停止する。ロードスイッチ200がオフすることにより、入力端子10とノードNAとの間で電力供給ラインが遮断される。また、スイッチング素子14のオン・オフ動作が停止してスイッチング素子14がオフ状態に保持されることにより、スイッチング素子14には電流が流れなくなる。
【0105】
このように、チョークコイル11の短絡等に起因する非常に低いインピーダンスの天絡により不意に異常に大きな過電流がスイッチング素子14に流れても、直ちにロードスイッチ200により電力供給ラインを遮断し、さらにはスイッチング素子14のオン・オフ動作を停止するので、スイッチング素子14を安全適確に保護することができる。
【0106】
図8は、たとえばチョークコイル11のレアショートにより、スイッチングの或るサイクルCY
n-2で不意に昇圧チョッパ回路16のノードN
Aでそれほど低くないインピーダンスの天絡が発生した場合の一例である。この場合にも、短絡のときほど急激ではないが、上記と同様の作用により、出力電圧VOUTが下がり、スイッチング制御部18内では誤差信号ERが高くなる。そして、次のサイクルCY
n-1でオン時間T
ONが開始してスイッチング素子14がオンすると、スイッチング素子14を流れる電流ISの立ち上がり速度は大きいものの短絡のときほど急峻ではなく、電流検出信号VOCPはブランキング期間BTの中では低監視値VREF1を超えても高監視値VREF2には達しない。
【0107】
サイクルCYn-1において、短絡保護回路44では、ブランキング期間BT(通常時間幅TWS)中に大過電流監視回路38より大過電流検知信号EXD2が発生されない。他方、過電流制限回路42では、電流検出信号VOCPが低監視値VREF1を超えているので小過電流検知信号EXD1はLとなるが、ブランキング期間BT(通常時間幅TWS)中はゲート回路36より電流制限指示信号OCP1が発生せず、ブランキング期間BTの終了後に、電流制限指示信号OCP1が発生される。スイッチング回路28は、この電流制限指示信号OCP1に応動してスイッチング素子14をオフし、オン時間TONを途中で終了する。
【0108】
このように、スイッチングの各サイクルCYiにおけるブランキング期間BTの時間幅TWとして通常時間幅TWSが継続的または定常的に選択されている時に、スイッチングの或るサイクルCYn-1でブランキング期間BT中に電流検出信号VOCPが低監視値VREF1を超えても高監視値VREF2に達しなかった場合は、ブランキング期間BTの終了時に過電流制限回路42が電流制限指示信号OCP1を発生して、スイッチング素子14をオフし、当該サイクルCYn-1のオン時間を途中で終了する。すなわち、パルスバイパルス方式で電流制限をかける。そして、次のサイクルCYnに限り、ブランキング期間BTの時間幅TWとして拡張時間幅TWLが選択され、この拡張時間幅TWLの中で電流検出信号VOCPが高監視値VREF2を超えた場合は、短絡保護回路44が遮断指示信号OCP2を発生して当該サイクルCYn内でロードスイッチ200をオフにして電力供給ラインを遮断するとともにスイッチング素子14をオフにし、以後のサイクルCYn+1,CYn+2,‥‥ではスイッチング素子14のオン・オフ動作を停止する。
【0109】
こうして、オン時間開始直後の過電流の立ち上がりが出力短絡のときほど急峻でなくても、ブランキング期間BTの拡張時間幅TWLの中で高監視値VREF2を超えたときは異常な過電流であるとみなし、その時点でロードスイッチ200をオフにするようにしている。これにより、チョークコイル11のレアショート等に起因してそれほど低くないインピーダンスの天絡が発生した場合にも、スイッチング素子14に異常な過電流が流れる状態を引き延ばすことなく迅速適確にシャットダウンすることが可能であり、スイッチング素子14の発熱ないし破壊を未然に防ぐことができる。
【0110】
さらに、この実施形態では、
図4に示すようにソフトスタートの開始直後はブランキング期間BTの時間幅TWに拡張時間幅TW
Lが選択される。これにより、上記のような天絡状態が起動または再起動の前から既に発生しまたは続いている場合には、起動または再起動の途中で異常な過電流状態であることを適格に検知して早期に上記と同様のシャットダウンを行うことが可能であり、スイッチング素子14の発熱ないし破壊を防止することができる。
[他の実施形態または変形例]
【0111】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものではない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0112】
たとえば、上述した実施形態では、保護部20より同一の遮断指示信号OCP2をロードスイッチ駆動回路202およびスイッチング回路28に与えて、ロードスイッチ200およびスイッチング素子14を同時にオフにするようにしている。しかし、両者のターンオフのタイミングに一定の時間差を設けることも可能である。
【0113】
また、上述した実施形態のように、ロードスイッチ200をオフにするときは、それに連動してスイッチング素子14のオン・オフ動作を停止することにより、スイッチング素子14を最も確実に保護し、かつスイッチング制御部18を安定に動作させることができる。もっとも、保護部20よりロードスイッチ駆動回路202およびスイチング回路28に個別の遮断指示信号を与える構成や、あるいはロードスイッチ駆動回路202だけに遮断指示信号を与える構成も可能である。
【0114】
上述した実施形態では、過電流制限回路42または短絡保護回路44より指示信号OCP1,OCP2が発生されたときは、その直後だけブランキング期間BTの時間幅TWを拡張時間幅TWLとする限定時間をスイッチングの1サイクル分とした。しかし、そのような限定時間を数サイクル分とすることも可能である。
【0115】
また、上記実施形態では、ブランキング期間BTの時間幅TWを通常時間幅TWSおよび拡張時間幅TWLの2つの間で切り替えるようにした。しかし、各種事象情報信号の特性に応じて、ブランキング期間BTの時間幅TWを3つ以上の設定時間幅の間で切り替えることも可能であり、その場合はブランキング信号生成回路110において定電流源116およびPMOSトランジスタ118の数を増やせばよい。また、電流量の可変な定電流源を用いることで、ブランキング期間BTの時間幅TWを任意に可変制御することも可能である。
【0116】
上記実施形態においてブランキング回路34が取り込む3種類の事象情報信号SST,FB,OCP1は一例である。スイッチングレギュレータの形式・構成に応じた他の種類の事象情報信号をブランキング回路34に与えて、ブランキング期間BTの時間幅TWを適宜可変しまたは複数の設定時間幅の間で切り替えることも可能である。
【0117】
本発明の一実施形態として、昇圧型スイッチングレギュレータの方式や特性に応じて、スイッチングの各サイクルにおいてスイッチング素子を流れる電流を第1の監視値とそれより高い第2の監視値とを用いて監視し、所定の事象の有無または状況に応じて条件的に特定のサイクルにおいてのみ(たとえば、出力電圧の異常な低下が検出された直後の1サイクルまたは数サイクルに限定して)オン時間の開始直後にブランキング期間を挿入し、そのブランキング期間中に電流の瞬時値が第2の監視値を超えたときは、ロードスイッチをオフにし、ブランキング期間の終了時以後に電流の瞬時値が第1の監視値を超えたときは、スイッチング制御部を通じてスイッチング素子を途中でオフする構成とすることも可能である。
【0118】
さらには、本発明によれば、
図7から理解されるように、ブランキング期間BTの時間幅TWを常時固定する構成によっても、上述した実施形態ほどの広汎な短絡保護は難しくなるが、従来技術の課題を一定の限度で解決することができる。
【符号の説明】
【0119】
14 スイッチング素子
16 昇圧チョッパ回路
18 スイッチング制御部
20 保護部
22 電圧検出回路
24 誤差増幅器
26 基準電圧回路
28 スイッチング回路
30 電流検出回路
32 小過電流監視回路(第1の過電流監視回路)
34 ブランキング回路
36 NORゲート(ゲート回路)
38 大過電流監視回路(第2の過電流監視回路)
40 遮断・復帰回路
42 過電流制限回路(第1の保護回路)
44 短絡保護回路(第2の保護回路)
46 電流センサ
200 ロードスイッチ
202 ロードスイッチ駆動回路