(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム、および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240327BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20240327BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240327BHJP
C23C 16/30 20060101ALI20240327BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/31 B
C23C16/30
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022047955
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 政哉
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-011367(JP,A)
【文献】特開2014-075491(JP,A)
【文献】特開2016-051864(JP,A)
【文献】特開2008-117987(JP,A)
【文献】特開2018-041793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/318
H01L 21/31
C23C 16/30
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)処理容器内の基板上に、窒素、酸素及び所定元素を含有する第1膜と、窒素を含有し前記第1膜とは組成が異なる第2膜と、が積層されてなる積層膜を形成する工程と、
(b)(a)において前記処理容器内に付着した前記積層膜における前記第2膜の組成を前記第1膜の組成に近づける改質処理を行う工程と、
を
有する基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記改質処理は、酸素含有ガスを前記処理容器内に供給する酸化処理である。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜と前記第2膜との膜ストレス差は、(b)を行う前の前記第1膜と前記第2膜との膜ストレス差よりも小さい。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第1膜及び前記第2膜のそれぞれは、さらに半導体元素および金属元素のうち少なくともいずれかを含有する。
【請求項5】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記所定元素は、炭素および硼素のうち少なくともいずれかである。
【請求項6】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第1膜は、SiOCN膜またはSiBON膜である。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理方法であって、前記第2膜は、SiN膜である。
【請求項8】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜における酸素濃度は、(b)を行う前の前記第1膜における酸素濃度よりも高い。
【請求項9】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(a)では、前記第2膜を、前記第1膜の厚さよりも薄い厚さで形成する。
【請求項10】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(a)を1回行うごとに、(b)を行う。
【請求項11】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(a)を2回以上行うごとに、(b)を行う。
【請求項12】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(a)を、前記処理容器内に基板を支持した支持具を収容した状態で行い、(b)を、前記処理容器内に(a)が終了した後の基板を支持しない前記支持具を収容した状態で行う。
【請求項13】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(b)を行う前の前記第2膜は、酸素及び前記所定元素のいずれも含有しない。
【請求項14】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜と前記第2膜とにおける窒素濃度の差は、(b)を行う前の前記第1膜と前記第2膜とにおける窒素濃度の差よりも小さい。
【請求項15】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜と前記第2膜とにおける酸素濃度の差は、(b)を行う前の前記第1膜と前記第2膜とにおける酸素濃度の差よりも小さい。
【請求項16】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜と前記第2膜とにおける前記所定元素の濃度の差は、( b)を行う前の前記第1膜と前記第2膜とにおける前記所定元素の濃度の差よりも小さい。
【請求項17】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第2膜は、シリコンを更に含有し、(b)を行う前の前記第2膜におけるシリコン濃度は窒素濃度よりも低く、(b)を行った後の前記第2膜におけるシリコン濃度は、窒素濃度よりも高い。
【請求項18】
(a)処理容器内の基板上に、窒素、酸素及び所定元素を含有する第1膜と、窒素を含有し前記第1膜とは組成が異なる第2膜と、が積層されてなる積層膜を形成する工程と、
(b)(a)において前記処理容器内に付着した前記積層膜における前記第2膜の組成を前記第1膜の組成に近づける改質処理を行う工程と、
を
有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)
基板処理装置の処理容器内の基板上に、窒素、酸素及び所定元素を含有する第1膜と、窒素を含有し前記第1膜とは組成が異なる第2膜と、が積層されてなる積層膜を形成する手順と、
(b)(a)において前記処理容器内に付着した前記積層膜における前記第2膜の組成を前記第1膜の組成に近づける改質処理を行う手順と、
をコンピュータによって
前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内へ窒素含有ガス、酸素含有ガス、および所定元素含有ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記処理容器内において、(a)前記処理容器内の基板上に、窒素、酸素及び所定元素を含有する第1膜と、窒素を含有し前記第1膜とは組成が異なる第2膜と、が積層されてなる積層膜を形成する処理と、(b)(a)において前記処理容器内に付着した前記積層膜における前記第2膜の組成を前記第1膜の組成に近づける改質処理を行う処理と、を行わせるように、前記処理ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム、および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、処理容器内の基板上に第1膜と第2膜とが積層されてなる積層膜を形成する工程が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板上に積層膜を形成する際に、処理容器内にも積層膜が形成されて付着し、処理容器内に付着した積層膜における第1膜と第2膜との膜ストレス差に起因して膜剥がれが生じることがある。
【0005】
本開示の目的は、処理容器内に付着した積層膜の膜剥がれの発生を抑制することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)処理容器内の基板上に、窒素、酸素及び所定元素を含有する第1膜と、窒素を含有し前記第1膜とは組成が異なる第2膜と、が積層されてなる積層膜を形成する工程と、
(b)(a)において前記処理容器内に付着した前記積層膜における前記第2膜の組成を前記第1膜の組成に近づける改質処理を行う工程と、
を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、処理容器内に付着した積層膜の膜剥がれの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分をA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】本開示の一態様の基板処理工程におけるフローを示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一態様における第1膜の処理シーケンスの例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の一態様における第2膜の処理シーケンスの例を示す図である。
【
図7】
図7(a)は、ウエハ200の表面における断面部分拡大図である。
図7(b)は、ウエハ200上に第1膜を形成した後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。
図7(c)は、第1膜上に第2膜を形成した後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。
【
図8】
図8は、第1膜と第2膜とが交互に積層されてなる積層膜が付着した処理容器内壁の断面部分拡大図である。
【
図9】
図9は、積層膜における各膜が有する膜ストレスの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、
図1~
図8を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(熱励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内、すなわち、この処理容器内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0012】
処理室201内には、第1供給部、第2供給部としてのノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bを第1ノズル、第2ノズルとも称する。ノズル249a,249bは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bが接続されている。ノズル249a,249bはそれぞれ異なるノズルであり、隣接して設けられている。
【0013】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232fが接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232c~232eが接続されている。ガス供給管232c~232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241c~241fおよびバルブ243c~243fがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232fは、例えばSUS等の金属材料により構成されている。
【0014】
図1、
図2に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、それぞれが、平面視においてウエハ200の中心に向かって開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、半導体元素または金属元素を含有する原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232bからは、酸素(O)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232cからは、炭素(C)および硼素(B)のうち少なくともいずれかを含有する所定元素含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
ガス供給管232dからは、窒素(N)含有ガスが、MFC241d、バルブ243d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0019】
ガス供給管232e,232fからは、不活性ガスが、それぞれMFC241e,241f,バルブ243e,243f、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0020】
主に、ガス供給管232a~232d、MFC241a~241d、バルブ243a~243dにより、処理ガス供給系(原料ガス供給系、窒素含有ガス供給系、酸素含有ガス供給系、所定元素含有ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232e,232f、MFC241e,241f、バルブ243e,243fにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0021】
上述の各種ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系は、バルブ243a~243f、MFC241a~241f等が集積されてなる集積型ガス供給システム248として構成されていてもよい。集積型ガス供給システム248は、ガス供給管232a~232fのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232f内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243fの開閉動作やMFC241a~241fによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型ガス供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232f等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型ガス供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0022】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0023】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、例えばSUS等の金属材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0024】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0025】
基板を支持する支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように構成されている。すなわち、ボート217は、複数枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、垂直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。ボート217は、複数枚のウエハ200をそれぞれ支持することができるように構成されている。
【0026】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0027】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0028】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、の動作を制御する制御プログラムや、後述する処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0029】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241f、バルブ243a~243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0030】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241gによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0031】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行っうようにしてもよい。
【0032】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、処理容器内の基板としてのウエハ200上に第1膜と第2膜とが積層されてなる積層膜を形成し、処理容器内に付着した積層膜における第2膜の組成を第1膜の組成に近づける改質処理を行う処理シーケンスの例について説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0033】
本態様における処理シーケンスでは、
処理容器内のウエハ200上に、N、O及び所定元素を含有する第1膜と、Nを含有し第1膜とは組成が異なる第2膜と、が積層されてなる積層膜を形成するステップAと、
ステップAにおいて処理容器内に付着した積層膜における第2膜の組成を第1膜の組成に近づける改質処理を行うステップBと、
を行う。
【0034】
本態様では、ステップAにて、ウエハ200上に、例えば、原料ガス、N含有ガス、O含有ガス及び所定元素含有ガスを供給して第1膜を形成し(第1膜成膜処理)、原料ガス及びN含有ガスを供給して第2膜を形成して(第2膜成膜処理)、第1膜と第2膜との積層膜を形成する。さらに、ステップBにて、例えばO含有ガスを供給し、処理容器内に付着した積層膜における第2膜の組成を第1膜の組成に近づける改質処理を行う。
【0035】
本態様におけるステップAの第1膜成膜処理では、
図5に示す処理シーケンスのように、
処理容器内のウエハ200に対して原料ガスを供給するステップA1と、
処理容器内のウエハ200に対して所定元素含有ガスを供給するステップA2と、
処理容器内のウエハ200に対してO含有ガスを供給するステップA3と、
処理容器内のウエハ200に対してN含有ガスを供給するステップA4と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上に、第1膜を形成する。
【0036】
本態様におけるステップAの第2膜成膜処理では、
図6に示す処理シーケンスのように、
処理容器内のウエハ200に対して原料ガスを供給するステップa1と、
処理容器内のウエハ200に対してN含有ガスを供給するステップa2と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことで、第1膜上に、第2膜を形成する。
【0037】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の態様や変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0038】
第1膜成膜処理:(原料ガス→所定元素含有ガス→O含有ガス→N含有ガス)×n
第2膜成膜処理:(原料ガス→N含有ガス)×m
【0039】
本明細書において用いる「ウエハ」という言葉は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0040】
(2-1)成膜処理
まず、ウエハ200上に第1膜を形成する第1膜成膜処理のシーケンス例について説明し、次に、第1膜上に第2膜を形成する第2膜成膜処理のシーケンス例について説明する。
【0041】
(ウエハチャージ)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。
【0042】
(ボートロード)
その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入される(ボートロード)。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0043】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が、所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内のウエハ200が、所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0044】
(第1膜成膜処理)
その後、次のステップA1~A4を順次実行する。
【0045】
[ステップA1]
ステップA1では、処理室201内のウエハ200に対して、原料ガスを供給する。
【0046】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して原料ガスが供給される(原料ガス供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、以下に示すいくつかの方法においては、処理室201内への不活性ガスの供給を不実施とするようにしてもよい。
【0047】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:250~800℃、好ましくは400~700℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは67~1333Pa
原料ガス供給流量:0.01~2slm、好ましくは0.1~1slm
原料ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。
【0048】
なお、本明細書における「250~800℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「250~800℃」とは「250℃以上800℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0049】
上述の処理条件下でウエハ200に対して原料ガスとして、例えば、クロロシラン系ガスを供給することにより、下地としてのウエハ200の最表面上に、Clを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、ウエハ200の最表面への、クロロシラン系ガスの分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積等により形成される。Clを含むSi含有層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSiの堆積層であってもよい。本明細書では、Clを含むSi含有層を、単に、Si含有層とも称する。なお、上述の処理条件下では、ウエハ200の最表面上へのクロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着が支配的に(優先的に)生じ、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積は僅かに生じるか、あるいは、殆ど生じないこととなる。すなわち、上述の処理条件下では、Si含有層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)を圧倒的に多く含むこととなり、Clを含むSiの堆積層を僅かに含むか、もしくは、殆ど含まないこととなる。
【0050】
Si含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開いたままとし、処理室201内へ不活性ガスを供給し、排気口231aより排気して、処理室201内を不活性ガスでパージする(パージ)。
【0051】
パージにおける処理条件としては、
処理圧力:1~20Pa
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.05~20slm
不活性ガス供給時間:1~200秒、好ましくは1~40秒
が例示される。他の処理条件は、原料ガスを供給する際における処理条件と同様な処理条件とする。
【0052】
原料ガスとしては、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)を含むシラン系ガスを用いることができる。シラン系ガスとしては、例えば、ハロゲン及びSiを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、Cl及びSiを含む上述のクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0053】
原料ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:4CS)ガス、ヘキサクロロジシランガス(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0054】
原料ガスとしては、クロロシラン系ガスの他、例えば、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0055】
原料ガスとしては、これらの他、例えば、アミノ基及びSiを含むガス、すなわち、アミノシラン系ガスを用いることもできる。アミノ基とは、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンから水素(H)を除去した1価の官能基のことであり、-NH2,-NHR,-NR2のように表すことができる。なお、Rはアルキル基を示し、-NR2の2つのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH3[N(C3H7)2]、略称:DIPAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
これらの点は、後述するステップa1においても同様である。
【0057】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス、クリプトン(Kr)ガス、ラドン(Rn)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0058】
[ステップA2]
ステップA1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSi含有層に対して、所定元素含有ガスを供給する。
【0059】
具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ所定元素含有ガスを流す。所定元素含有ガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して所定元素含有ガスが供給される(所定元素含有ガス供給)。このとき、バルブ243e,243fを開いたままとし、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給してもよい。
【0060】
本ステップにおける処理条件としては、
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
所定元素含有ガス供給流量:0.1~10slm
所定元素含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。他の処理条件は、ステップA1にて原料ガスを供給する際における処理条件と同様な処理条件とする。
【0061】
上述の条件下でウエハ200に対して所定元素含有ガスとして、例えば、炭素(C)含有ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が炭化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、Si含有層が炭化されてなる層、すなわち、SiおよびCを含む層として、シリコン炭化層(SiC層)が形成される。SiC層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、所定元素含有ガスによるSi含有層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiC層は、Si含有層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0062】
SiC層が形成された後、バルブ243cを閉じ、処理室201内への所定元素含有ガスの供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0063】
所定元素含有ガスとしては、例えば、C含有ガスを用いることができる。C含有ガスとしては、例えば、プロピレン(C3H6)ガス、エチレン(C2H4)ガス、アセチレン(C2H2)ガス等の炭化水素系ガスを用いることができる。所定元素含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0064】
[ステップA3]
ステップA2が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiC層に対して、O含有ガスを供給する。
【0065】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へO含有ガスを流す。O含有ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対してO含有ガスが供給される(O含有ガス供給)。このとき、バルブ243e,243fを開いたままとし、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給してもよい。
【0066】
本ステップにおける処理条件としては、
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
O含有ガス供給流量:0.1~10slm
O含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。他の処理条件は、ステップA1にて原料ガスを供給する際における処理条件と同様な処理条件とする。
【0067】
上述の条件下でウエハ200に対してO含有ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSiC層の少なくとも一部が酸化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、SiC層が酸化されてなる層、すなわち、Si,OおよびCを含む層として、シリコン酸炭化層(SiOC層)が形成される。SiOC層を形成する際、SiC層に含まれていたCl等の不純物は、O含有ガスによるSiC層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiOC層は、SiC層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0068】
SiOC層が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのO含有ガスの供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0069】
O含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス等を用いることができる。O含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述するステップbにおいても同様である。
【0070】
[ステップA4]
ステップA3が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiOC層に対して、N含有ガスを供給する。
【0071】
具体的には、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ、N含有ガスを流す。N含有ガスは、MFC241dにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して、N含有ガスが供給される(N含有ガス供給)。このとき、バルブ243e,243fを開いたままとし、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給してもよい。
【0072】
本ステップにおける処理条件としては、
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
N含有ガス供給流量:0.1~10slm
N含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。他の処理条件は、ステップA1にて原料ガスを供給する際における処理条件と同様な処理条件とする。
【0073】
上述の条件下でウエハ200に対してN含有ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSiOC層の少なくとも一部が窒化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、SiOC層が窒化されてなる層、すなわち、Si,O,CおよびNを含む層として、シリコン酸炭窒化層(SiOCN層)が形成される。SiOCN層を形成する際、SiOC層に含まれていたCl等の不純物は、N含有ガスによるSiOC層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiOCN層は、SiOC層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0074】
SiOCN層が形成された後、バルブ243dを閉じ、処理室201内へのN含有ガスの供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0075】
N含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。N含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述するステップa2においても同様である。
【0076】
[サイクルの所定回数実施]
上述のステップA1~A4を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面を下地として、この下地上に、第1膜として、O,N、所定元素として例えばC及び半導体元素として例えばSiを含有する所定の厚さの例えばシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)を形成することができる(
図7(a)、
図7(b)参照)。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiOCN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiOCN層を積層することで形成されるSiOCN膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0077】
(第2膜成膜処理)
その後、次のステップa1,a2を順次実行する。
【0078】
[ステップa1]
ステップa1では、上述のステップA1における処理手順、処理条件と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1膜に対して、原料ガスを供給する(原料ガス供給)。これにより、第1膜上にSi含有層が形成される。Si含有層が形成された後、処理室201内への原料ガスの供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0079】
[ステップa2]
ステップa1が終了した後、上述のステップA1における処理手順、処理条件と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上の第1膜上に形成されたSi含有層に対して、N含有ガスを供給する(N含有ガス供給)。これにより、第1膜上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が窒化(改質)される。結果として、下地としての第1膜上に、Si含有層が窒化されてなる層、すなわち、SiおよびNを含む層として、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。SiN層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、N含有ガスによるSiN層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiN層は、Si含有層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0080】
SiN層が形成された後、処理室201内へのN含有ガスの供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0081】
[サイクルの所定回数実施]
上述のステップa1,a2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことにより、第1膜の表面を下地として、この下地上に、第2膜として、N及び半導体元素として例えばSiを含有する所定の厚さの例えばシリコン窒化膜(SiN膜)を形成することができる(
図7(c)参照)。第2膜は、第1膜が含有するO及び所定元素を実質的に含有しない膜であり、第1膜とは成分および組成が異なっている。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiN層を積層することで形成されるSiN膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0082】
上述の処理手順、処理条件により形成される第2膜の厚さは、第2膜の下地となる第1膜の厚さよりも薄い厚さで形成されることとなる。
【0083】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上へ所望の厚さの、第1膜と第2膜とが積層されてなる積層膜を形成する処理が完了した後、ノズル249a,249bのそれぞれからパージガスとして不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0084】
(ボートアンロード)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。
【0085】
(ウエハディスチャージ)
ウエハ冷却後、取り出し可能な所定の温度となるまで冷却された処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0086】
このようにして、ウエハ200上に、第1膜と第2膜とが積層されてなる積層膜を形成する処理が終了する。この処理は、所定回数(1回以上)行われることとなる。
【0087】
(2-2)積層膜の改質処理
上述の第1膜成膜処理と第2膜成膜処理とを行うと、第1膜と第2膜との積層膜が、処理容器内の部材の表面、例えば、反応管203の内壁面やボート217の表面等にも付着する。
図8に、第1膜成膜処理、第2膜成膜処理を交互に繰り返し行うことで、第1膜と第2膜とが交互に積層されてなる積層膜が付着した処理容器内壁、すなわち、反応管203の内壁の断面部分拡大図を模式的に示す。第1膜と第2膜とでは、膜に発生するストレス(応力)が異なるため、積層膜を形成する処理を行うことで、第1膜と第2膜との膜ストレス差に起因して積層膜にクラックが発生し、膜が部材の表面から剥がれ、炉内に異物(パーティクル)を発生させることがある。そこで、積層膜を形成した後、所定のタイミングで、処理容器内に付着した積層膜を改質し、第1膜と第2膜との膜ストレスとの差を小さく(緩和)するメンテナンス処理を行う。
【0088】
以下、処理容器内に付着した積層膜の改質処理について説明する。以下の説明においても、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0089】
(空ボートロード)
シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、表面に第2膜が付着している空のボート217、すなわち、ウエハ200を保持していないボート217が、ボートエレベータ115によって持ち上げられて、表面に第2膜が付着している処理容器内、すなわち、処理室201内へ搬入される(空ボートロード)。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0090】
(圧力調整および温度調整)
空ボートロードが終了した後、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構254による空のボート217の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、処理室201内の加熱、ボート217の回転は、いずれも、積層膜の改質処理が終了するまでの間は継続して行われる。なお、ボート217は回転させなくてもよい。
【0091】
(改質処理)
その後、次のステップbを実行する。
【0092】
[ステップb]
ステップbでは、上述のステップA3における処理手順と同様の処理手順により、処理容器内の積層膜に対して、例えばO含有ガスを供給する(O含有ガス供給)。これにより、処理容器内の積層膜に対して酸化処理が行われる。酸化処理の終了後、処理室201内への原料ガスの供給を停止し、ステップA1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0093】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:300~750℃、好ましくは500~650℃
処理圧力:30~1200Pa、好ましくは1000~1200Pa
O含有ガス供給流量:1~10slm、好ましくは3~6slm
O含有ガス供給時間:10~60分、好ましくは20~40分
が例示される。他の処理条件は、ステップA1にて原料ガスを供給する際における処理条件と同様な処理条件とする。
【0094】
上述の条件下で処理容器内の積層膜に対してO含有ガスを供給することにより、積層膜における第1膜(SiOCN膜)と第2膜(SiN膜)のいずれの膜の少なくとも一部が酸化(改質)される。具体的には、処理容器内にO含有ガスを供給することにより、第2膜を酸化させ、シリコン酸窒化膜(SiON膜)に改質させるとともに、第1膜を酸化させ、第1膜中に、さらにOを取り込ませてO濃度の高い(酸素リッチな)SiOCN膜に改質させる。このようにして、第2膜の組成を第1膜の組成に近づけることにより、第1膜と第2膜との膜ストレス差を小さくすることができる。
【0095】
処理温度が300℃未満となると、O含有ガスの活性化が不充分となり、改質(酸化)処理の進行が困難となる場合がある。処理温度を300℃以上にすることにより、O含有ガスの活性化が充分となり、改質(酸化)処理を進行させることができる。処理温度を500℃以上にすることにより、O含有ガスをさらに活性化させ、改質(酸化)処理を効率的に行うことができる。
【0096】
処理温度が750℃を超えると、O含有ガスの活性化が過剰となり、改質(酸化)処理の進行が困難となる場合がある。処理温度を750℃以下とすることにより、O含有ガスの活性を適正に抑制し、改質(酸化)処理を進行させることができる。処理温度を650℃以下とすることにより、O含有ガスの活性をより適正に抑制し、改質(酸化)処理を効率的に行うことができる。
【0097】
処理圧力が30Pa未満となると、O含有ガスの活性化が不充分となり、改質(酸化)処理の進行が困難となる場合がある。処理圧力を30Pa以上とすることにより、O含有ガスの活性化が充分となり、改質(酸化)処理を進行させることができる。処理圧力を1000Pa以上とすることにより、O含有ガスをさらに活性化させ、改質(酸化)処理を効率的に行うことができる。
【0098】
処理圧力が1200Paを超えると、O含有ガスの活性化が過剰となり、改質(酸化)処理の進行が困難となる場合がある。処理圧力を1200Pa以下とすることにより、O含有ガスの活性を適正に抑制し、改質(酸化)処理を進行させることができる。
【0099】
O含有ガス供給流量が1slm未満となると、改質(酸化)処理の進行が困難となる場合がある。O含有ガス供給流量を1slm以上とすることにより、改質(酸化)処理を進行させることができる。O含有ガス供給流量を3slm以上とすることにより、改質(酸化)処理を効率的に行うことができる。
【0100】
O含有ガス供給流量が10slmを超えると、改質(酸化)処理が過剰に進行する場合がある。また、ガスコストの増加を招いてしまう場合がある。O含有ガス供給流量を10slm以下とすることにより、改質(酸化)処理の過剰な進行を抑制することができ、ガスコストの増加を回避することができる。O含有ガス供給流量を6slm以下とすることにより、改質(酸化)処理の過剰な進行をより適正に抑制することができ、ガスコストの増加をより確実に回避することができる。
【0101】
O含有ガス供給時間が10分未満となると、改質(酸化)処理の進行が困難となる場合がある。O含有ガス供給時間を10分以上とすることにより、改質(酸化)処理を進行させることができる。O含有ガス供給時間を20分以上とすることにより、改質(酸化)処理を効率的に行うことができる。
【0102】
O含有ガス供給時間が60分を超えると、改質(酸化)処理が過剰に進行する場合がある。また、生産性の低下を招いてしまう場合がある。O含有ガス供給時間を60分以下とすることにより、改質(酸化)処理の過剰な進行を抑制することができ、生産性の低下を回避することができる。O含有ガス供給時間を40分以下とすることにより、改質(酸化)処理の過剰な進行をより適正に抑制することができ、生産性の低下をより確実に回避することができる。
【0103】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
処理容器内の積層膜に対する改質(酸化)処理が完了した後、ノズル249a,249bのそれぞれからパージガスとして不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0104】
(空ボートアンロード)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、空のボート217がマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。
【0105】
このようにして、処理容器内に付着した第1膜と第2膜とが積層されたなる積層膜の改質処理が終了する。この処理は、第1膜成膜処理と第2膜成膜処理をそれぞれ1回行うごとに行うようにしてもよく、第1膜成膜処理と第2膜成膜処理をそれぞれ2回以上(複数回)行うごとに行うようにしてもよい。
【0106】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0107】
(a)ステップBにおいて、処理容器内に付着した積層膜における第2膜の組成を第1膜の組成に近づける改質処理を行うことにより、第1膜と第2膜との膜ストレス差を、ステップBを行う前の第1膜と第2膜との膜ストレス差よりも小さくすることができる。これにより、処理容器内に付着した積層膜が剥がれにくくなり、パーティクルの発生を抑制することができる。結果として、ウエハ200上に形成する膜の品質を向上させ、歩留まりを大幅に向上させることが可能となる。また、膜剥がれの発生を抑制することにより、クリーニング処理の頻度を下げることができ、基板処理装置のダウンタイムを短縮させることが可能となる。クリーニング処理の頻度が下がることにより、その後に行われる第1膜成膜処理において、処理容器の内壁等から脱離したクレーニングガスの成分が、ウエハ200上に形成される膜中に混入し、その膜質を低下させることを回避することができる。
【0108】
(b)ステップBにおいて、O含有ガスを処理容器内に供給して改質(酸化)処理を行うことにより、第1膜と第2膜のそれぞれの膜における膜ストレスを低減することができる。具体的には、第1膜よりも大きい膜ストレスを有する第2膜の膜ストレスをより大きく減少させることができるので、第1膜と第2膜との膜ストレス差を小さくすることができる。また、ステップBにおいて、第1膜に含まれるOを含有するガス(O含有ガス)を用いて改質(酸化)処理を行うことにより、処理容器内に供給するガスのコンタミネーションの発生を防止することができる。
【0109】
(c)第2膜の厚さを、第1膜の厚さよりも薄い厚さで形成することにより、第1膜を層間絶縁膜、第2膜をキャップ膜として用いることができる。
【0110】
(d)ステップA(第1膜成膜処理と第2膜成膜処理をそれぞれ)を1回行う度に、ステップB(改質処理)を行う場合には、第1膜と第2膜との膜ストレス差を理容器内に付着した積層膜における第1膜と第2膜との膜ストレス差を確実に小さくすることができる。
【0111】
(e)ステップA(第1膜成膜処理と第2膜成膜処理を)2回以上行う度に、ステップB(改質処理)を行う場合には、スループットを実質的に低下させることなく、処理容器内に付着した積層膜における第1膜と第2膜との膜ストレス差を小さくすることができる。
【0112】
(f)ステップAを処理容器内にウエハ200を支持したボート217を収容した状態で行い、ステップBを、処理容器内にウエハ200を支持しないボート217を収容した状態で行うことにより、ウエハ200上に形成した積層膜に悪影響を与えることなく、ボート217や処理容器内に付着した積層膜における第1膜と第2膜との膜ストレス差を小さくすることができる。
【0113】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明したが、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0114】
上述の態様では、第1膜、第2膜として、半導体元素(Si)を含有する膜を形成する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1膜、第2膜として、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含有する膜を形成する場合にも、本開示を適用することができる。この場合においても、上述の態様における効果と同様な効果が得られる。
【0115】
上述の態様では、所定の元素としてCを用い、所定の元素を含有する第1膜としてSiOCN膜を形成する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、所定の元素としてBを用い、所定元素含有ガスとして、例えばジボラン(B2H6)ガス、トリクロロボラン(BCl3)ガス等のB含有ガスを用いて、第1膜としてシリコン硼酸窒化膜(SiBON膜)を形成する場合にも、本開示を適用することができる。また、例えば、所定の元素としてCおよびBを含有するガスを用いて、第1膜としてシリコン硼酸炭窒化膜(SiBOCN膜)を形成する場合にも、本開示を適用することができる。これらの場合においても、上述の態様における効果と同様な効果が得られる。
【0116】
上述の態様では、同一のウエハ200上に、第1膜と第2膜とが積層してなる積層膜を形成する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1膜、第2膜を、それぞれ異なるウエハ200上に形成する場合にも、本開示を適用することができる。この場合においても、上述の態様における効果と同様な効果が得られる。
【0117】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成できるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0118】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0119】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0120】
このような基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0121】
上述の態様は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例】
【0122】
上述の態様における基板処理装置を用い、以下の第1処理を行うことで、複数枚のウエハ上にSiOCN膜とSiN膜とが積層されてなる積層膜を形成した。また、以下の第2処理を行うことで、複数枚のウエハ上に上述の積層膜を形成し、積層膜に酸化(改質)処理を施した。SiOCN膜においては、原料ガスとしてHCDSガスを、所定元素含有ガスとしてC3H6ガスを、O含有ガスとしてO2ガスを、N含有ガスとしてNH3ガスを用いた。SiN膜においては、原料ガス、N含有ガスとして、SiOCN膜と同様に、それぞれHCDSガス、NH3ガスを用いた。酸化(改質)処理では、O含有ガスとしてO2ガスを用いた。他の処理条件は、上述の態様における処理条件範囲内の共通の条件とした。
【0123】
第1処理:(原料ガス→所定元素含有ガス→O含有ガス→N含有ガス)×n→(原料ガス→N含有ガス)×m
第2処理:(原料ガス→所定元素含有ガス→O含有ガス→N含有ガス)×n→(原料ガス→N含有ガス)×m→O含有ガス
【0124】
第1処理を行うことにより形成された積層膜におけるSiN膜をサンプル1、SiOCN膜をサンプル2とした。第2処理を行うことにより積層膜におけるSiN膜が酸化され改質されたSiON膜をサンプル3、Oがさらに取り込まれたSiOCN膜をサンプル4とした。
【0125】
サンプル1~4における膜ストレスをそれぞれ測定した。その結果を
図9に示す。横軸は、各サンプルを示している。縦軸は膜ストレス[MPa]を示している。縦軸における正のストレスはテンサイルストレスを、負のストレスはコンプレッシブストレスを意味している。
【0126】
図9に示すように、サンプル1~4における膜ストレスは、順に、800MPa、280MPa、250MPa、230MPa程度の大きさのそれぞれテンサイルストレスとなることが確認できた。すなわち、積層膜に酸化処理を施して、SiN膜をSiON膜に改質することにより、膜ストレスが大幅に低下(800MPa程度→250MPa程度)することが確認できた。また、積層膜に酸化処理を施して、SiOCN膜に、さらにOを取り込ませることにより、膜ストレスが低下(280MPa程度→230MPa程度)することが確認できた。また、積層膜に酸化処理を施して、SiN膜をSiON膜に改質し、SiOCN膜の組成に近づけることにより、SiON膜(サンプル3)とSiOCN膜(サンプル4)との膜ストレス差を、酸化処理を施す前のSiN膜(サンプル1)とSiOCN膜(サンプル2)との膜ストレス差よりも小さくできることが確認できた。
【0127】
また、サンプル1~4の膜の組成比、すなわち、各膜中に含まれるSi、O、C、N等の濃度を、XPS(X線光電子分光法)により測定した。サンプル3(SiON膜)は、サンプル1(SiN膜)と比較して、O濃度は高く、Si濃度は低く、N濃度は低くなることが確認された。サンプル4(SiOCN膜)は、サンプル2(SiOCN膜)と比較して、O濃度は高く、Si濃度及びC濃度は低く、N濃度は変化なし、であることが確認された。サンプル2(SiOCN膜)は、サンプル1(SiN膜)と比較して、O濃度は高く、Si濃度は低く、N濃度は低いことが確認された。サンプル4(SiOCN膜)は、サンプル3(SiON膜)と比較して、O濃度は高く、Si濃度はほぼ等しく、C濃度は高く、N濃度は低い、ことが確認された。
【0128】
また、サンプル3(SiON膜)とサンプル4(SiOCN膜)におけるSi濃度の差は、サンプル1(SiN膜)とサンプル2(SiOCN膜)におけるSi濃度の差と比較して、小さくなることが確認された。サンプル3(SiON膜)とサンプル4(SiOCN膜)におけるO濃度の差は、サンプル1(SiN膜)とサンプル2(SiOCN膜)におけるO濃度の差と比較して、小さくなることが確認された。サンプル3(SiON膜)とサンプル4(SiOCN膜)におけるC濃度の差は、サンプル1(SiN膜)とサンプル2(SiOCN膜)におけるC濃度の差と比較して、小さくなることが確認された。サンプル3(SiON膜)とサンプル4(SiOCN膜)におけるN濃度の差は、サンプル1(SiN膜)とサンプル2(SiOCN膜)におけるN濃度の差と比較して、小さくなることが確認された。
【0129】
また、サンプル1(SiN膜)では、N濃度>Si濃度>O濃度であり、改質後のサンプル3(SiON膜)では、Si濃度>N濃度>O濃度であることが確認された。このように、サンプル1(SiN膜)とサンプル3(SiON膜)では、N濃度とSi濃度の順位が逆転した。また、サンプル2(SiOCN膜)では、Si濃度>O濃度>N濃度>C濃度であり、改質後のサンプル4(SiOCN膜)も、この順位は変わらず、Si濃度>O濃度>N濃度>C濃度であることが確認された。
【0130】
以上のように、積層膜におけるSiN膜およびSiOCN膜のいずれの膜も、酸化処理を施すことにより、O濃度が高くなることが確認された。例えば、積層膜におけるSiOCN膜(サンプル2)は、酸化処理を施すことにより、O濃度が28at%から31at%に上昇したことが確認され、積層膜におけるSiN膜(サンプル1)は、酸化処理を施すことにより、O濃度が3at%から21at%に上昇したことが確認された。また、酸化処理を施すことにより、酸化処理後の各膜のSi、O、C及びNの各濃度の差は、酸化処理前の各膜のそれぞれと比べて、小さくなることが確認された。このように、酸化処理によれば、サンプル1(SiN膜)の組成は、サンプル2(SiOCN膜)の組成に近づくように改質されたことが確認された。
【0131】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0132】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)処理容器内の基板上に、窒素、酸素及び所定元素を含有する第1膜と、窒素を含有し前記第1膜とは組成が異なる第2膜と、が積層されてなる積層膜を形成する工程と、
(b)(a)において前記処理容器内に付着した前記積層膜における前記第2膜の組成を前記第1膜の組成に近づける改質処理を行う工程と、
を備える基板処理方法、または半導体装置の製造方法が提供される。
【0133】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
前記改質処理は、酸素含有ガスを前記処理容器内に供給する酸化処理である。
【0134】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜と前記第2膜との膜ストレス差は、(b)を行う前の前記第1膜と前記第2膜との膜ストレス差よりも小さい。
【0135】
(付記4)
付記1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1膜及び前記第2膜のそれぞれは、さらに半導体元素または金属元素を含有する。
【0136】
(付記5)
付記4に記載の方法であって、
前記半導体元素は、シリコンである。
【0137】
(付記6)
付記1~5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記所定元素は、炭素および硼素のうち少なくともいずれかである。
【0138】
(付記7)
付記1~6のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1膜は、SiOCN膜またはSiBON膜である。
【0139】
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第2膜は、SiN膜である。
【0140】
(付記9)
付記1~8のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)では、前記第2膜を、窒素及び酸素含有膜に改質させる。
【0141】
(付記10)
付記1~9のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜における酸素濃度は、(b)を行う前の前記第1膜における酸素濃度よりも高い。
【0142】
(付記11)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)では、前記第2膜を、前記第1膜の厚さよりも薄い厚さで形成する。
【0143】
(付記12)
付記1~11のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)を1回行うごとに、(b)を行う。
【0144】
(付記13)
付記1~12のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)を2回以上行うごとに、(b)を行う。
【0145】
(付記14)
付記1~13のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)を、前記処理容器内に基板を支持した支持具を収容した状態で行い、(b)を、前記処理容器内に(a)が終了した後の基板を支持しない前記支持具を収容した状態で行う。
【0146】
(付記15)
付記1~14のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)における処理温度を300℃以上750℃以下とする。
【0147】
(付記16)
付記1~15のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)における処理時間を10分以上60分以下とする。
【0148】
(付記17)
付記1~16のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)における前記酸素含有ガスの供給流量を1slm以上10slm以下とする。
【0149】
(付記18)
付記1~17のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)における処理圧力を30Pa以上1200Pa以下とする。
【0150】
(付記19)
付記1~18のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)を行う前の前記第2膜は、酸素及び前記所定元素のいずれも含有しない。
【0151】
(付記20)
付記1~19のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜と前記第2膜とにおける窒素濃度の差は、(b)を行う前の前記第1膜と前記第2膜とにおける窒素濃度の差よりも小さい。
【0152】
(付記21)
付記1~20のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜と前記第2膜とにおける酸素濃度の差は、(b)を行う前の前記第1膜と前記第2膜とにおける酸素濃度の差よりも小さい。
【0153】
(付記22)
付記1~21のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)を行った後の前記第1膜と前記第2膜とにおける前記所定元素の濃度の差は、(b)を行う前の前記第1膜と前記第2膜とにおける前記所定元素の濃度の差よりも小さい。
【0154】
(付記23)
付記1~22のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第2膜は、シリコンを更に含有し、(b)を行う前の前記第2膜におけるシリコン濃度は窒素濃度よりも低く、(b)を行った後の前記第2膜におけるシリコン濃度は、窒素濃度よりも高い。
【0155】
(付記24)
本開示の更に他の態様によれば、
基板処理装置の処理容器内において、付記1の各手順(各工程)をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0156】
(付記25)
本開示の更に他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内へ窒素含有ガス、酸素含有ガス、および所定元素含有ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記処理容器内において、付記1の各処理(各工程)を行わせるように、前記処理ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0157】
(付記26)
本開示の更に他の態様によれば、
窒素、酸素及び所定元素を含有する第1膜と、窒素を含有し前記第1膜とは組成が異なる第2膜と、が積層されてなる積層膜が付着した処理容器を用意する工程と、
前記処理容器内に付着した前記積層膜における前記第2膜の組成を前記第1膜の組成に近づける改質処理を行う工程と、
を有する基板処理装置のメンテナンス方法が提供される。
【符号の説明】
【0158】
200 ウエハ
201 処理室