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  • 特許-位置合わせ誤差を決定するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】位置合わせ誤差を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20240327BHJP
【FI】
G03F1/84
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022079331
(22)【出願日】2022-05-13
(65)【公開番号】P2022176170
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10 2021 112 547.2
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】マリオ レングル
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-211265(JP,A)
【文献】特開2011-017705(JP,A)
【文献】特開2011-033746(JP,A)
【文献】特開2005-252166(JP,A)
【文献】特開2003-279319(JP,A)
【文献】特開2003-107669(JP,A)
【文献】特開平11-237344(JP,A)
【文献】特開2007-64842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体リソグラフィ用のマスク上の構造の該マスクに対する位置合わせ誤差を決定するための方法であって、
前記マスクの少なくとも1つの領域の像を生成するステップと、
前記像の少なくとも1つの測定輪郭を決定するステップと、
設計輪郭と測定輪郭の形状を互いにマッチングさせると同時に、前記2つの輪郭の前記位置合わせをマッチングさせるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記位置合わせが、像面において前記2つの輪郭の平均横方向距離を最小化することによってマッチングされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記形状の前記マッチングおよび前記輪郭の位置合わせが前記設計輪郭の修正によってもたらされる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記形状の前記マッチングおよび前記輪郭の位置合わせが前記測定輪郭の修正によってもたらされる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記測定輪郭と前記設計輪郭との間の横方向距離が前記マッチングの品質の尺度として使用される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記横方向距離を最小化するために、最適化の方法、特に多次元ニュートン法が使用される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
すべての前記横方向距離の平均値が最適化の進行の尺度として使用される、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記マッチングが前記像の個々の部分領域に対して別々に実行される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記像の特定の領域が前記マッチングのために使用されない、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記マッチングに使用されない前記領域が、欠陥が検出された領域である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記形状および平均横方向距離の修正が交互に行われる、
請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月14日のドイツ特許出願10 2021 112 547.2号の優先権を主張するものであり、その内容は参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、半導体リソグラフィ用のマスクの位置合わせ誤差(registration error)を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フォトリソグラフィマスクは、リソグラフィシステムにおいて、または集積回路もしくはLCD(液晶ディスプレイ)などの微細構造構成要素を製造するために使用される。リソグラフィプロセスまたはマイクロリソグラフィプロセスにおいて、照明ユニットは、フォトマスクまたは単にマスクとも呼ばれるフォトリソグラフィマスクを照明する。マスクを通過する光またはマスクによって反射された光は、投影光学素子によって、感光層(フォトレジスト)が塗布された、投影光学素子の像面に配置された基板(例えばウエハ)上に投影されて、マスクの構造要素を基板の感光塗膜上に転写し、こうして基板上に所望の構造を生成する。
【0004】
マスク表面上への構造要素の配置は、非常に正確でなければならず、したがって、対応するマスクを用いた露光中にウエハ上に誤差が生じないようにするために、指定位置からの許容偏差(位置合わせ誤差として知られる)は、好ましくはサブナノメートルの範囲にある。これらの要件を満たすことができるフォトマスクの製造は、非常に複雑であり、誤差の影響を受けやすく、したがって高価である。
【0005】
位置合わせ誤差を決定するために、マスク検査顕微鏡、電子顕微鏡または位置決定装置が使用される。構造は、通常、エッジ検出に基づいて検出される。構造を特性評価するために、通常、3つの方法が使用される。
【0006】
構造の位置が、強度しきい値に基づいて見出されるエッジと、構造に対して垂直に延在する測定面または基準面との交点を決定することによって決定される、しきい値法。
【0007】
構造の位置が、位置決定装置によって捕捉された空間像とシミュレートされた空間像との相関によって決定される、相関法。第2のステップにおいて、位置決定装置によって空間像で捕捉された構造の形状と、シミュレートされた構造の形状とを互いに適合させて、2つの構造間の距離を決定する。この距離は、空間像によって捕捉された構造の目標位置からの偏差に相当する。
【0008】
ドイツ特許出願第10 2010 047 051号に詳細に記載されている対称相関法。
【0009】
これらの方法は、最初の2つの方法の場合、像フィールドに捕捉される構造の未知の回転が誤った結果をもたらす可能性があるという欠点を有する。さらに、最後の2つの方法の場合は、実際には無関係な、捕捉された構造から離れた像強度の誤差が顕著であり、したがって、誤った測定結果をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】ドイツ特許出願第10 2010 047 051号
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を克服する改良された方法を提供することである。
【0012】
この目的は、独立請求項の特徴を有する方法によって達成される。従属請求項は、本発明の有利な発展形態および変形形態に関する。
【0013】
半導体リソグラフィ用のマスク上の構造の位置合わせ誤差を決定するための本発明による方法は、以下の方法ステップ、すなわち、
マスクの少なくとも1つの領域の像を生成するステップと、
像の少なくとも1つの測定輪郭を決定するステップと、
設計輪郭と測定輪郭の形状を互いにマッチングさせると同時に、2つの輪郭の位置合わせをマッチングさせるステップと、
を含む。
【0014】
換言すれば、形状および位置合わせは、測定輪郭と設計輪郭との間の最小平均横方向距離が達成されるように適合される。
【0015】
測定輪郭は、像から抽出された輪郭である。設計輪郭は、例えば、マスク上に構造を生成または作成するためのマスク書き込み装置(mask writer)で利用できるような輪郭を意味すると理解される。本発明によると、構造の形状および位置合わせが、有利には、同時に最適化またはマッチングされる。
【0016】
特に、位置合わせは、マスク面における2つの輪郭の平均横方向距離を最小化することによって最小化することができる。したがって、強度値に基づく相関はなく、代わりに、測定と設計との間の横方向距離が考慮される。この変形形態の利点は、特に、設計像に対する測定像の回転から生じる誤差を確実に検出して考慮に入れることができ、したがって、回転が、決定の精度に関して、決定された位置合わせ誤差を悪化させないことである。原理的には、構造の形状および位置を同時に最適化することも考えられるが、横方向距離の代わりに強度を最適化基準として使用することも考えられ、同様に、形状および位置を順次最適化またはマッチングさせ、横方向距離を最適化基準として使用することもできる。
【0017】
輪郭の形状のマッチングは、設計輪郭の修正によってもたらされてもよく、同様に、輪郭の形状のマッチングは、測定輪郭の修正によって、または2つの方法の組み合わせによってもたらされてもよい。
【0018】
本発明の有利な変形形態では、測定輪郭と設計輪郭との重ね合わせの差を、マッチングの品質の尺度として使用することができる。これらの差は、残差とも呼ばれる。残差は、可能な限り最小化されるべきであり、特に、a)設計輪郭線に対するすべての測定輪郭点の最短距離、またはb)測定輪郭線に対するすべての設計輪郭点の最短距離、またはc)a)およびb)からの合計量の結果であってもよい。したがって、従来技術で知られている強度差の代わりに、横方向距離が考慮される。原理的には、多くの最適化法が考えられる。したがって、例えば、多次元ニュートン法を使用して、測定輪郭と設計輪郭との間の距離を最小化することができる。このような方法は、比較的ロバストであり、最小二乗法を使用することによって形状および位置合わせをマッチングさせるための最適パラメータを決定する。
【0019】
本発明の有利な実施形態では、測定輪郭と設計輪郭との間のすべての距離の平均値を、最適化の進捗の尺度として使用することができる。「平均残差(MeanResid)」とも呼ばれるこの数値は、マッチング中の反復の進捗の良好な尺度を表す。この値が2回の反復の間に予め固定された最大値よりも下に停滞するとすぐに、最適化を終了することができる。
【0020】
マッチングは、像の個々の部分領域に対して実行されてもよい。この場合、個々の像領域に対する個別のパラメータから、特徴として知られている個々の部分構造に対する個別のパラメータまでを特に適合させることができる。混合形態も考えられ、例えば、位置合わせの全体的な修正と局所的な修正との混合、および/または形状の全体的な修正と局所的な修正との混合である。
【0021】
同様に、マッチングのために像の特定の領域を使用しないことが有利な場合もある。欠陥が検出された領域は、特にこの目的のために考慮される。
【0022】
さらに、形状および位置合わせの修正を交互に行い、したがって変更することができる。
【0023】
本発明の例示的な実施形態および変形形態を、図面に基づいて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】初期状態の例示的な表現である。
図2】マッチングに使用されるパラメータの例示的な進展である。
図3】マッチングの結果である。
図4】欠陥構造とのマッチングの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、初期状態の例示的な表現を示す。設計輪郭は、ここでは実線で示されている。測定輪郭は、図1において点線で表されている。基礎として使用される結像(imaging)は、特に電子顕微鏡写真であってよい。図1では、輪郭間のわずかなオフセットおよび輪郭自体の形状の互いからのずれがよくわかる。したがって、図1に示す例の評価の目的は、基本的に、位置合わせ誤差、すなわちマスク設計に対する測定輪郭のオフセットを決定することである。既に述べたように、位置合わせ誤差の決定における精度が依存する要因の1つは、測定輪郭と設計輪郭が互いにどの程度ずれているかである。したがって、位置合わせ誤差の決定では、設計輪郭と測定輪郭との間で可能な限り良好なマッチングを実現することが重要である。
【0026】
図2は、8回の反復ステップにわたる形状および平均横方向距離のマッチングに使用されるパラメータの例示的な進展を示す。この場合、上段の4つのグラフは、位置合わせパラメータとして知られる位置合わせのためのパラメータを表し、一方、下段のグラフは、右側のグラフを除いて、形状パラメータとして知られるものを表す。
【0027】
具体的には、
位置合わせパラメータ:
1.「平行移動X」:x方向における輪郭の変位(0次)。
2.「平行移動Y」:y方向における輪郭の変位(0次)。
3.「スケール」:原点を中心とした輪郭の広がり方(1次)。
4.「回転」:原点を中心とした輪郭の回転(1次)。
【0028】
マッチングの最適化のための他の考えられるパラメータは、非対称スケールおよび非対称回転であるが、これらは図示する例では使用されていない。また、1次のパラメータを「スケールX」、「スケールY」、「回転X」、「回転Y」に変換することもできる。
【0029】
図示する例では、上述の位置合わせパラメータが測定輪郭に適用された。位置合わせパラメータを設計輪郭に適用することも考えられ、さらに、測定輪郭および設計輪郭を組み合わせて適用することも考えられるが、この変形形態の場合、望ましくない冗長性、したがってパラメータの望ましくない依存性がないことを確認すべきである。
【0030】
形状パラメータ(下段の最初の3つのグラフ)は、測定輪郭と設計輪郭の外観をマッチングさせるために輪郭の形状を変化させる役割を果たす。図示した変形形態では、以下に説明する形状パラメータを使用した(他の形状パラメータも考えられる)。
【0031】
1.「シグマ」は、設計輪郭から生成されたオブジェクトがフィルタリングされるガウスフィルタの幅である。
2.「しきい値(Thresh)」は、新しい設計輪郭が計算されるガウスフィルタリングされたオブジェクトの関数値である。
3.「バイアス」は、2.で新たに算出した設計輪郭を法線方向に変位させる値である。
【0032】
形状パラメータは、(図示する例のように)測定輪郭または設計輪郭のいずれかに、さもなければ組み合わせてまたは分割して適用することもできる。
【0033】
下段の4番目のグラフは、既に上述した「平均残差」の最適化基準を示す。図では、3回目の反復から、「平均残差」の値が停滞し始め、この場合、マッチングを終了することができることがよくわかる。
【0034】
原理的に、最適化パラメータは、互いに独立して線形に選択され、信号に影響を与えることが保証される必要がある。例えば、像がX方向に走る線のみを含む場合、X方向の平行移動を決定しようとすることに意味はない。
【0035】
図3は、マッチングの結果を示す。最適化された形状および位置合わせパラメータを使用すると、測定輪郭と設計輪郭との重ね合わせが大幅に改善されることがよくわかる。
【0036】
図4は、欠陥構造とのマッチングの結果を示し、欠陥の領域は図4において点線で表されている。図4では、測定された構造がターゲット構造からかなり横方向にずれていることがわかる。このような欠陥は、位置合わせ誤差の決定においてかなりの誤差をもたらす。したがって、図に示されるような、誤差が大きく逸脱する領域は、マッチングにおいて考慮しないことが推奨される。
図1
図2
図3
図4