(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】淡水魚用配合飼料及び淡水魚の筋肉内ドコサヘキサエン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23K 50/80 20160101AFI20240328BHJP
A23K 20/105 20160101ALI20240328BHJP
【FI】
A23K50/80
A23K20/105
(21)【出願番号】P 2020050774
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-03-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月26日、平成31年度日本水産学会春季大会講演要旨集、公益社団法人日本水産学会 平成31年3月29日、平成31年度日本水産学会春季大会
(73)【特許権者】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀一
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 穣
(72)【発明者】
【氏名】アセッぺ リドワヌディ
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 飛鳳
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/038029(WO,A1)
【文献】再公表特許第2018/199205(JP,A1)
【文献】特開2004-121015(JP,A)
【文献】特開2001-186847(JP,A)
【文献】特開平10-271960(JP,A)
【文献】特開平03-164140(JP,A)
【文献】Ridwanudin Asep 外3名,Effect of nucleotides supplementation to low-fish meal feed on long-chain polyunsaturated fatty acid composition of juvenile rainbow trout Oncorhynchus mykiss,Aquaculture Research,第50巻第8号,米国,2019年,第2218-2230頁,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/are.14103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 50/80
A23K 20/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚油、4重量%以上のα-リノレン酸、及び0.05重量%以上のピリミジンヌクレオチドを含む、
ニジマス型魚類用配合飼料。
【請求項2】
前記魚油が8重量%以下である請求項1に記載の
ニジマス型魚類用配合飼料。
【請求項3】
前記α-リノレン酸が、アマニ油、エゴマ油、シソ油、チアシード油、及びサチャインチ油由来である、請求項1又は2に記載の
ニジマス型魚類用配合飼料。
【請求項4】
前記ピリミジンヌクレオチドが、ウリジル酸、シチジル酸、又はそれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の
ニジマス型魚類用配合飼料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の
ニジマス型魚類用配合飼料を、
ニジマス型魚類に給餌することを特徴とする
ニジマス型魚類の筋肉内におけるドコサヘキサエン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、淡水魚用飼料及び淡水魚の筋肉内ドコサヘキサエン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本における魚類養殖の飼料は、配合飼料が多くなってきている。生餌の給餌は、養殖漁場の環境汚染、魚病の発生、薬剤投与、及び養殖魚の品質低下などの悪循環をもたらすためである。現在の海面養殖では、イワシ等の生餌が一部で使用されているが、配合飼料へと移行しつつある(非特許文献1)。しかし、配合飼料の主要原料である魚油は、需要の拡大を背景として、価格が上昇してきている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「改訂 魚類の栄養と飼料」(渡邊武 編)(日本)恒星社厚生閣、2009年、p1-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の通り、魚油の価格が上昇していることから、配合飼料への魚油の含有量を減らすことが考えられるが、養殖魚の品質が低下すると考えられた。従って、本発明の目的は、高品質の養殖魚を得るための配合飼料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、高品質の養殖魚を得るための配合飼料について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、魚油の含有量が少ない場合であっても、α-リノレン酸及びピリミジンヌクレオチドを淡水魚の配合飼料に添加することよって、高品質の養殖魚が得られることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]魚油、4重量%以上のα-リノレン酸、及び0.05重量%以上のピリミジンヌクレオチドを含む、淡水魚用配合飼料、
[2]前記魚油が8重量%以下である[1]に記載の淡水魚用配合飼料、
[3]前記α-リノレン酸が、アマニ油、エゴマ油、シソ油、チアシード油、及びサチャインチ油由来である、[1]又は[2]に記載の淡水魚用配合飼料、
[4]前記ピリミジンヌクレオチドが、ウリジル酸、シチジル酸、又はそれらの混合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の淡水魚用配合飼料、及び
[5][1]~[4]のいずれかに記載の淡水魚用配合飼料を、淡水魚に給餌することを特徴とする淡水魚の筋肉内におけるドコサヘキサエン酸の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の淡水魚用配合飼料によれば、少ない魚油の含有量にもかかわらず、淡水魚の筋肉内のドコサヘキサエン酸を増加させることができる。すなわち、本発明の淡水魚用配合飼料によれば、高魚油飼料で飼育した養殖淡水魚と同程度のDHAを筋肉内に含む養殖淡水魚を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】比較例1を100とした場合の筋肉におけるDHAの増加率を示したグラフである。
【
図2】比較例1を100とした場合の肝臓におけるDHAの増加率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1]淡水魚用配合飼料
本発明の淡水魚用配合飼料は、魚油、4重量%以上のα-リノレン酸、及び0.05重量%以上のピリミジンヌクレオチドを含む。
【0009】
《魚油》
魚油は、養殖魚の配合飼料の主要な原料である。しかしながら、養殖魚の配合飼料の需要が拡大しているために、その価格が上昇している。
魚油の配合飼料の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば8重量%以下であり、好ましくは7重量%以下であり、さらに好ましくは6重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは4重量%以下である。また、魚油の下限は、魚油を含む配合飼料が、養殖魚の配合飼料として使用できる限りにおいて、特に限定されるものではなく、魚油を含まない配合飼料とすることも可能であるが、例えば1重量%以上であり、好ましくは2重量%以上である。前記範囲であることにより、配合飼料中の魚油の含有量を減らすことが可能であり、安価な配合飼料を製造することができる。
【0010】
前記魚油の由来は、配合飼料に使用できる限りにおいて、特に限定されるものではなく、例えばイワシ油、サンマ油、イカ油、メンハーデン油、アンチョビ油、サケ油、タラ油、カラフトシシャモ油、ニシン油、アオギス油、イカナゴ油、又はノルウェーパウツ油が挙げられる。
【0011】
《α-リノレン酸》
本発明の淡水魚用配合飼料は、4重量%以上のα-リノレン酸を含む。配合飼料中のα-リノレン酸の含有量は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、好ましくは8重量%以上であり、より好ましくいは12重量%以上であり、更に好ましくは、16重量%以上であり、最も好ましくは18重量%以上である。α-リノレン酸の含有量の上限は、含有量が多い場合本発明の効果が得られるため、特に限定されないが、配合飼料のコストを考慮すると、例えば40重量%以下であり、好ましくは35重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下である。
【0012】
α-リノレン酸は、植物油に多く含まれており、植物油を配合飼料に添加することができる。α-リノレン酸の由来は、配合飼料における前記の範囲のα-リノレン酸の含有量を得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、α-リノレン酸を多く含む植物油が好ましく、例えばアマニ油、エゴマ油、シソ油、チアシード油、及びサチャインチ油が挙げられる。
【0013】
《ピリミジンヌクレオチド》
本発明の淡水魚用配合飼料は、0.05重量%以上のピリミジンヌクレオチドを含む。配合飼料中のピリミジンヌクレオチドの含有量は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、好ましくは0.7重量%以上であり、より好ましくは0.9重量%以上であり、更に好ましくは1.1重量%以上である。ピリミジンヌクレオチドの含有量の上限は、含有量が多い場合本発明の効果が得られるため、特に限定されないが、配合飼料のコストを考慮すると、例えば1重量%以下であり、好ましくは0.8重量%以下であり、より好ましくは0.6重量%以下であり、最も好ましくは0.4重量%以下である。ピリミジンヌクレオチドの含有量が、前記範囲であることにより、淡水魚の筋肉内で効率的にドコサヘキサエン酸が生成される。
【0014】
前記、ピリミジンヌクレオチドとしては、ウリジル酸(uridine 5’-monophoshate;UMP)又はシチジル酸(cytidine 5’-monophosphate;CMP)が挙げられる。本発明の淡水魚用配合飼料は、ピリミジンヌクレオチドとして、ウリジル酸、シチジル酸、又はその混合物を含むことができる。
【0015】
《その他の成分》
本発明の淡水魚の配合飼料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、アンチョビミール、脱脂大豆ミール、コーングルテンミール、羽毛粉(Feather meal)、小麦粉、プレゼラチン化澱粉、菜種油、ビタミン類、塩化コリン、ミネラル類、第一リン酸カルシウム、脱脂米ぬか、襖及びセルロースが挙げられる。
【0016】
《淡水魚》
本発明の配合飼料は、淡水魚用の配合飼料である。本発明の配合飼料を用いることのできる、淡水魚は、特に限定されるものではないが、例えばニジマス、ヤマメ、ヒメマス、ギンザケ、アユ、イワナ、ドジョウ、ナマズ、ティラピア、ウナギ、又はコイが挙げられる。
【0017】
《ドコサヘキサエン酸(DHA)》
ドコサヘキサエン酸(以下、DHAと称することがある)は、不飽和脂肪酸であり、6つの二重結合を有し、そして22個の炭素を有するカルボン酸である。「22:6n-3」と記載されることがある。サバ、イワシ、サンマ等の青魚の魚油に多く含まれる。
DHAは精液、脳、又は網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分である。特に、脳内にもっとも豊富に存在する長鎖不飽和脂肪酸である。DHAには、学習機能向上作用制がん作用、血中脂質低下作用、網膜反射能向上作用、血圧降下作用、抗血栓作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用、及び抗糖尿病作用などの作用があると言われている。従って、DHAを筋肉の可食部に多く含む養殖魚は、ヒトの健康に有用であると考えられる。
【0018】
本発明の淡水魚用配合飼料を淡水魚に給餌することにより、淡水魚の筋肉内のドコサヘキサエン酸を増加させることができる。
【0019】
《作用》
本発明の淡水魚用配合飼料が、淡水魚の筋肉内において、ドコサヘキサエン酸を増加させる機構は、解明されたわけではないが、以下のように推定される。しかしながら、本発明は以下の推定によって、限定されるものではない。
本発明の淡水魚用配合飼料は、α-リノレン酸及びピリミジンヌクレオチドを含んでいる。淡水魚の筋肉内において、α-リノレン酸からのドコサヘキサエン酸への変換をウリジル酸又はシチジル酸が促進していると推定される。なお、この変換はグアニル酸(Guanosine 5’-monophosphate;GMP)又はアデニル酸(Adenosine monophosphate;AMP)では起こらず、ウリジル酸又はシチジル酸のみが促進することは驚くべきことである。また、淡水魚の肝臓では、DHAへの変換が起こらず、筋肉のみで変換されることは驚くべきことである。
【0020】
[2]淡水魚の筋肉内DHAの製造方法
本発明の淡水魚の筋肉内DHAの製造方法は、淡水魚用配合飼料を淡水魚に給餌することを特徴とする。本発明のDHAの製造方法によれば、淡水魚の筋肉内でDHAが増加し、DHAを製造することができる。
本発明の製造方法における、「魚油」、「α-リノレン酸」、「ピリミジンヌクレオチド」、及び「ドコサヘキサエン酸」等は、前記「[1]淡水魚用配合飼料」の項に記載のものと同様であり、同じものを使用することができる。
【0021】
《給餌方法》
淡水魚への給餌方法は、本分野における通常の給餌方法を用いることができる。例えば100g当たり、2~3gの飼料を2~3回に分けて給餌する。飼育期間は概ね12週間とする。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
《実施例1》
本実施例では、低魚油飼料にウリジル酸を添加した配合飼料を作製した。
魚油、アマニ油、ナタネ油をそれぞれ4%、6%、2%配合した低魚油飼料(LFO)を作製し、核酸製剤であるウリジル酸uridine 5’-monophoshateを0.15%添加した(表1)。
飼料の作製手順は、魚油と植物油を除く原料を万能混合攪拌器(株式会社小平製作所製 ACM-50LAT)で攪拌した。但し、大豆油粕とコーングルテンミールは前もって超遠心粉砕機(Retch社製 ZM200)を用いて粉砕し、0.5mmの網目を通ったものを使用している。その後、魚油と植物油を添加・攪拌し、飼料の重量に対して28%の水を添加し、均等になるまで攪拌した。その後ミートチョッパー(日立工機株式会社製 LCM22)を用いてペレット状に成型した。ペレットの直径は3mmとした。試料の乾燥には真空凍結乾燥機(共和真空技術株式会社製 RLEII-206)を用い乾燥させ、完成した飼料は試験開始まで4℃で保存した。
作製した飼料の組成は、粗タンパク質含量は44.1-44.4%、灰分は5.8-6.0%、水分は2.2-2.9%、粗脂肪含量は18.8%であった。必須アミノ酸含量は16-18%、非必須アミノ酸含量は20-22%となった。総脂肪酸組成は、リノール酸(18:2n-6)は17.5%、リノレン酸(18:3n-3)は23.4-23.6%、DHA(22:6n-3)は2.7-2.9%となった(表2)。
【0024】
《実施例2》
本実施例では、低魚油飼料にシチジル酸を添加した配合飼料を作製した。
ウリジル酸に代えて、シチジル酸を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、配合飼料を得た(表1及び表2)。
【0025】
《比較例1》
本比較例では、低魚油飼料に核酸を添加せずに配合飼料を作製した。
ウリジル酸を添加しないことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、配合飼料を得た(表1及び表2)。
【0026】
【0027】
【0028】
《給餌試験1》
本給餌試験では、実施例1及び2、並びに比較例1で得られた配合飼料を淡水魚に給餌する給餌試験を実施した。
供試魚にはニジマスOncorhynchus mykissを用いた。東京海洋大学大泉ステーションにて孵化・育成された幼魚を、同大学品川キャンパスの水族栄養学研究室飼育実験室へ搬送し、飼育期間まで市販飼料を与えた。実験開始時の平均魚体重は13.5±0.2gであった。実験魚の飼育は飼育実験室にある温度管理式の循環式飼育システムを用いた。濾過システムにはサンドフィルターおよびウールマットを使用した物理濾過層、セラミック濾過材を使用した生物濾過槽、活性炭を使用した化学濾過が用いられた。飼育水槽は60L透明ガラス水槽を用い、1つの水槽に20尾収容し、試験は二重反復で行った。成長試験の飼育期間は2018年9月24日からの12週間とした。また、飼育期間中は週1回の割合でスポンジも使用し水槽内壁の拭き掃除を行った。実験期間中の平均水温は16.4±0.3℃であった。給餌は1日2回、週6日与えた。給餌時刻は10:00、16:00とし、給餌量はほぼ飽食量とした。給餌量は給餌前と給餌後の飼料保存容器の重量の差より算出した。
供試魚の魚体重測定は実験開始時と4週間おきに計4回測定した。測定は測定前日を無給餌とし、測定当日にフェノキシエタノール(2-Phenoxyethanol,関東化学株式会社製)で麻酔した供試魚全個体の魚体重量を測定した。成長試験開始前および成長試験終了時の計量終了後、分析に用いる全魚体サンプルとして各試験水槽から5尾ずつ無作為抽出し、分析まで-30℃で凍結保存した。
【0029】
《脂肪酸の分析》
分析に用いる試験飼料は乳鉢ですりつぶしたものを分析に供し、魚体は超遠心粉砕機(Retch社製 ZM100)の0.5mmの目合いを用いて粉砕したものを分析に供した。肝臓、筋肉及び全魚体の分析を以下の各方法で行った。
粗脂肪含量はFolch et al. (1957)の方法により、メタノール・クロロホルム混合液(メタノール:クロロホルム=1:2)を用いて抽出した。サンプル(試験飼料約2g、魚体約5g)をホモジナイズカップに入れ、メタノール・クロロホルム混合液60mL、蒸留水3mL(魚体の場合不要)を加え、ホモジナイザー(MS-3,日本精機株式会社)を用いて、細分化および均一化した(13000rpm,5分間)。ホモジナイズ後、メタノール・クロロホルム混合液約60mLを用いてブフナー漏斗により全量濾過し、濾液を0.03mol/L塩化マグネシウム溶液24mLをあらかじめ入れた分液漏斗に移して攪拌し、8時間以上静置して液を分離させた。分離後、ナスフラスコに下層のみを移し、エバポレーター(SB-650,東京理化器械株式会社)および窒素を用いて溶媒を揮発させ、粗脂肪含量を算出した。
【0030】
脂質分析後のサンプルにエタノール15mL、50%水酸化カリウム1mL、沸騰石3粒加えて80℃で1時間加熱し、けん化した。不けん化物を除去した後に、7%3-フッ化ホウ酸メタノールを加え、20分加熱してメチル化した。メチル化した後、サンプル重量×30000μLのヘキサンを用いてサンプルを希釈し、ガスクロマトグラフ(GC-2025,株式会社島津製作所)に約0.6μL注入し分析した。キャリアガスにはヘリウムガス、カラムには毛細管カラムSUPELCOWAX10(長さ30mm×内径0.32mm×層厚0.25μm,Sigma-Aldrich Co., Ltd.)を用いた。カラムの温度は170℃から280℃まで毎分2℃ずつ上昇させ、気化室を250℃、検出器温度を250℃とした。分析結果はクロマトパック(C-R8A,株式会社島津製作所)を用いて解析した。
筋肉の脂肪酸の分析結果を表3に示す。全魚体、肝臓、及び筋肉のDHAの含有量を表4に示す。
【0031】
【0032】
【0033】
ウリジル酸又はシチジル酸を配合飼料に添加することによって、筋肉においてDHAの含有量が増加した。しかし、全魚体ではDHAの含有量はほとんど変化せず、肝臓では逆にDHAの含有量が減少した。
【0034】
《比較例3》
本比較例では、低魚油飼料にイノシン酸を添加した配合飼料を作製した。
ウリジル酸に代えて、イノシン酸を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、配合飼料を得た。
【0035】
《比較例4》
本比較例では、低魚油飼料にアデニル酸を添加した配合飼料を作製した。
ウリジル酸に代えて、アデニル酸を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、配合飼料を得た。
【0036】
《比較例5》
本比較例では、低魚油飼料にグアニル酸を添加した配合飼料を作製した。
ウリジル酸に代えて、グアニル酸を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、配合飼料を得た。
【0037】
《給餌試験2》
本給餌試験では、比較例1~4で得られた配合飼料を淡水魚に給餌する給餌試験を実施した。給餌試験は、前記給餌試験1と同様に実施し、肝臓及び筋肉の脂肪酸を分析した。
表5に示すように、比較例2~4でイノシン酸、アデニル酸、又はグアニル酸を配合飼料に添加した場合、肝臓のDHAの含有量はほとんど変化しなかった。一方、イノシン酸、アデニル酸、又はグアニル酸を添加した場合、肝臓のDHAの含有量は減少した。
【0038】
【0039】
図1に給餌試験1及び2における、比較例1を100とした場合の、実施例1及び2、比較例2~4の筋肉におけるDHAの増加率を示す。また、
図2に肝臓におけるDHAの増加率を示す。
筋肉においては、ウリジル酸(実施例1)を添加した場合126%に、シチジル酸(実施例2)を添加した場合143%に増加した。一方、イノシン酸(比較例2)、アデニル酸(比較例3)、及びグアニル酸(比較例4)の添加では、それぞれ109%、84%及び104%であり、ほとんど変化しなかった。
肝臓においては、ウリジル酸(実施例1)、シチジル酸(実施例2)をイノシン酸(比較例2)、アデニル酸(比較例3)、及びグアニル酸(比較例4)の添加で、それぞれ87%、62%、75%、83%、及び60%であり、いずれもDHAの含有量が減少した。
従って、低魚油配合飼料において、ウリジル酸又はシチジル酸の添加によって、ニジマスの筋肉内のDHAの含有量が増加することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の配合飼料は、淡水魚の配合飼料として用いることができ、筋肉内のDHA含有量を増加させることができる。