(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】半導体レーザモジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02251 20210101AFI20240328BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20240328BHJP
H01S 3/0941 20060101ALI20240328BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H01S5/02251
H01S3/067
H01S3/0941
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2020500555
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2019005349
(87)【国際公開番号】W WO2019160038
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2018024415
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】石毛 悠太
(72)【発明者】
【氏名】片山 悦治
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0291813(US,A1)
【文献】国際公開第2015/037725(WO,A1)
【文献】特開2015-126036(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022142(WO,A1)
【文献】特開2005-150451(JP,A)
【文献】特開平10-325933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G02B 6/32
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被実装面を有する被実装部材と、
前記被実装部材の前記被実装面上に設置された複数の半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズと、
前記レーザ光を集光する集光レンズと、
集光された前記レーザ光が光結合される光ファイバと、
を具備し、さらに
前記レーザ光を集光する集光レンズと、前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズと、の間に、前記レーザ光の遅速軸方向の光を制限するアパーチャを具備し、
前記アパーチャは、前記アパーチャにおける前記レーザ光が通過する空間を画定する上部に空けた部材によって、前記レーザ光の進行方向に垂直な方向において上部に空けたU字型又は上部に空けた矩形の輪郭を有する前記空間を有することで、前記レーザ光の遅速軸方向の幅を、前記レーザ光の高速軸方向の位置に関わらず同じ幅として前記集光レンズに導くことが可能なように構成されており、
前記被実装部材は、底板部及び複数の段を有し、前記複数の段の上面上に、前記複数の半導体レーザ素子が設置されており、
前記半導体レーザ素子から前記レーザ光が出力される側を前方としたとき、前記複数の段の上面は、前方の段の上面よりも後方の段の上面が前記底板部の上面からの高さが高くなっており、
前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズによりコリメートされた前記レーザ光の遅速軸方向端部が、前記レーザ光を集光する集光レンズに導かれる手前で、前記アパーチャにより制限され、前記レーザ光を集光する集光レンズに入射する前記レーザ光の遅速軸方向の開口数が、前記アパーチャの有する
前記空間
の幅で制限される値以下となる、ことを特徴とする半導体レーザモジュール。
【請求項2】
前記集光レンズは1枚又は複数枚で構成されている請求項1に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項3】
前記アパーチャは、前記集光レンズと一体、もしくは独立して構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項4】
前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズによりコリメートされたレーザ光のうち、前記半導体レーザ素子の発信波長に対して一部の波長のレーザ光を反射する反射ミラーを有する請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項5】
前記反射ミラーは反射率が4%以上である請求項4に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項6】
前記半導体レーザ素子の発振波長とは異なる波長の光を反射する光フィルタを、前記アパーチャと前記集光レンズとの間に有する請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項7】
前記光フィルタは、前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズによりコリメートされたレーザ光の光軸に対して角度をつけて配置されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項8】
前記光フィルタは、前記半導体レーザ素子の発振波長よりも長い波長を反射することを特徴とする請求項6又は7に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項9】
被実装面を有する被実装部材と、
前記被実装部材の前記被実装面上に設置された複数の半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズと、
前記レーザ光を集光する集光レンズと、
集光された前記レーザ光が光結合される光ファイバと、
を具備し、さらに
前記レーザ光を集光する集光レンズと、前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズと、の間に、前記レーザ光の遅速軸方向の光を制限するアパーチャを具備し、
前記アパーチャは、半導体レーザモジュール組み立て後に、前記レーザ光の光軸に対する向きを調節可能な機構を有する、半導体レーザモジュール。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体レーザモジュールと、
前記半導体レーザモジュールが設置された設置面を有するベース部材と
を有する光源装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光源装置と、
増幅用光ファイバと、
前記光源装置の前記半導体レーザモジュールから出力されるレーザ光を前記増幅用光ファイバに入射させる入射部と
を有する光ファイバレーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザは、消費電力が小さい、小型である等の特徴を有しており、光通信、光記録、物質加工等の様々な分野において広く利用されるに至っている。半導体レーザが実装された半導体レーザモジュールとしては、パッケージ内に複数の半導体レーザ素子(以下、半導体レーザともいう)が設けられたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の半導体レーザが設けられた半導体レーザモジュールでは、複数の半導体レーザから出射したレーザ光は、レンズを通してコリメートされた後、集光レンズを通して集光されて光ファイバに結合される。ここで光ファイバに入射するレーザ光の開口数について
図13および
図14を用いて説明する。
【0005】
図13は、光ファイバに入射する半導体レーザからのレーザ光の遠視野像を示した模式図である。
図14は、集光レンズに入射する半導体レーザからのレーザ光の像を示した模式図である。半導体レーザは、レーザ光の出射口での回折の影響により遠視野像は楕円形となる特徴がある。そのため、半導体レーザモジュールにおいて、各半導体レーザに由来するレーザ光は、
図13に示すようにファイバに入射する時点では楕円形の遠視野像1311となっている。ここで楕円形の遠視野像1311の短軸がレーザ光の高速軸、長軸が遅速軸である。複数の半導体レーザが設けられた半導体レーザモジュールにおいては、集光レンズに入射するレーザ光は
図14に示すように、各半導体レーザに由来する楕円形の像1411が高速軸方向に重ねられた像として形成される。ここで光ファイバに入射するレーザ光の、遅速軸方向の開口数をNAv、高速軸方向の開口数をNAhとすると、集光レンズに入射するレーザ光の開口数NA
Fiberoutは式1で表される。
【数1】
ここで、NAvは半導体レーザの高速軸方向のビーム広がり角度と半導体レーザの搭載数により変化し、NAhは半導体レーザの遅軸方向のビーム広がり角度により変化する。半導体レーザの駆動電力を上げるに従い、集光レンズに入射するレーザ光の楕円形の像1411も大きくなるが、特に遅速軸方向の長大化が顕著である。つまり、半導体レーザの駆動電力を上げると、NAhが著しく増加する。そのため、NA
Fiberoutを一定の値を超えないようにするためには、半導体レーザの駆動電力は一定のレベルに制約され、さらに搭載可能な半導体レーザの数も制限される。以上の理由により、従来の半導体レーザモジュールでは、光ファイバレーザの高出力化に限界があった。
【0006】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、光ファイバレーザの高出力化が可能な半導体レーザモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、被実装面を有する被実装部材と、前記被実装部材の前記被実装面上に設置された複数の半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズと、前記レーザ光を集光する集光レンズと、集光された前記レーザ光が光結合される光ファイバと、を具備し、さらに前記レーザ光を集光する集光レンズと、前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズと、の間に、前記レーザ光の遅速軸方向の光を制限するアパーチャを具備することを特徴とする半導体レーザモジュールが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ファイバレーザの高出力化が可能な半導体レーザモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態による半導体レーザモジュールを示す上面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態による半導体レーザモジュールを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態による半導体レーザモジュールにおけるアパーチャの配置を説明する部分拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態による光源装置を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態による光源装置を励起光源として用いた光ファイバレーザを示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態による半導体レーザモジュールにおけるアパーチャの配置を説明する部分拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3実施形態による半導体レーザモジュールにおけるアパーチャの配置を説明する部分拡大斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4実施形態による半導体レーザモジュールにおけるアパーチャの配置を説明する部分拡大斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第5実施形態による半導体レーザモジュールを示す上面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第5実施形態による半導体レーザモジュールにおける反射ミラーの配置を説明する部分拡大斜視図である。
【
図11】
図11は本発明の第6実施形態による半導体レーザモジュールにおける光フィルタの配置を説明する部分拡大斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の第7実施形態による半導体レーザモジュールを示す上面図である。
【
図13】
図13は、光ファイバに入射する半導体レーザからのレーザ光の遠視野像を示した模式図である。
【
図14】
図14は、集光レンズに入射する半導体レーザからのレーザ光の像を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による半導体レーザモジュールについて
図1乃至
図3を用いて説明する。
【0011】
まず、本実施形態による半導体レーザモジュールの構成について
図1乃至
図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態による半導体レーザモジュールを示す上面図である。
図2は、本実施形態による半導体レーザモジュールを示す斜視図である。また、
図3は本実施形態による半導体レーザモジュールにおけるアパーチャの配置を説明する部分拡大斜視図である。
【0012】
本実施形態による半導体レーザモジュールは、レーザ素子として複数の半導体レーザ素子を有する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態による半導体レーザモジュール10は、複数の半導体レーザ素子12と、複数の半導体レーザ素子12に対応して設けられた光学系14を有している。また、本実施形態による半導体レーザモジュール10は、複数の半導体レーザ素子12、光学系14等が設けられた被実装部材である底板部24を有している。さらに、本実施形態による半導体レーザモジュール10は、レーザ光が出力される出力部18と、それぞれ外部と電気的に接続可能な端子部20、22とを有している。
【0013】
底板部24は、例えば一方向に長い例えば略矩形状の平面形状を有する板状の部材であり、上面と、上面に対向する下面とを有している。底板部24は、後述する段差部38とともに被実装部材を構成する。底板部24では、その長手方向において互いに対向する一端部及び他端部が、それぞれ前方端部及び後方端部になっている。なお、底板部24の平面形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状を採用することができる。
【0014】
底板部24及び段差部38により構成される被実装部材は、半導体レーザ素子12、光学系14、端子部20、22等が実装される複数の被実装面を有している。具体的には、底板部24の上面と、段差部38における複数の段40の上面とが被実装面になっている。複数の段40の上面は、それぞれ底板部24の上面と平行な被実装面になっており、互いに底板部24の上面からの高さが異なっている。
【0015】
なお、半導体レーザ素子12、光学系14を構成する光学素子等が実装される被実装部材は、底板部24のような板状部材及びこれに設けられた段差部38により構成されるものに限定されるものではない。被実装部材は、半導体レーザ素子12、光学素子等を実装しうる一又は複数の被実装面を有するものであればよい。また、被実装面は、平面のみならず、曲面、凹凸面であってもよいが、好ましくは平面である。
【0016】
底板部24の上面上には、複数の半導体レーザ素子12、光学系14、後述の集光レンズ64、65及び後述のアパーチャ111が設けられている。また、底板部24の上面上には、後述するように端子部20、22が設けられている。
【0017】
底板部24は、後述するように、半導体レーザモジュール10を基板上に設置する際に、基板の設置面上にその下面を接触させて設置されるものである。底板部24の上面上には、段差部38が設けられている。段差部38は、階段状になっており、半導体レーザモジュール10からレーザ光が出力される側を前方としたとき、底板部24の前後方向に沿って並ぶように設けられた複数の段40を有している。段差部38の複数の段40は、前方から後方に向かうに従って段々に高くなっている。すなわち、それぞれ被実装面である複数の段40の上面は、前方のものよりも後方のものが底板部24の上面からの高さが高くなっている。段差部38は、底板部24と一体的に形成されていてもよいし、はんだ付け等により底板部24に固定された別部品であってもよい。
【0018】
底板部24の上面上及び段差部38の複数の段40の上面上には、複数の半導体レーザ素子12が設置されている。複数の半導体レーザ素子12は、例えば、互いに発振波長、出力その他のレーザ特性を同じくする同一の半導体レーザ素子である。なお、複数の半導体レーザ素子12の数は、特に限定されるものではなく、半導体レーザモジュール10に要求されるレーザ出力等に応じて適宜設定することができる。
【0019】
複数の半導体レーザ素子12は、別々のチップに形成された互いに別個独立の素子である。各半導体レーザ素子12は、例えば、サブマント42上にはんだ付け等により固定されて搭載されたチップオンサブマウント(Chip On Submount、COS)の形態で、底板部24の上面上及び段差部38の複数の段40上に設置されている。
【0020】
底板部24上及び段差部38の複数の段40上に設置された複数の半導体レーザ素子12は、底板部24の長手方向に沿って一列に配列されている。一列に配列された複数の半導体レーザ素子12の間には、段差部38による高低差が設けられている。複数の半導体レーザ素子12は、それぞれレーザ光の出力方向が底板部24の短手方向になるように配置されている。一列に配列された複数の半導体レーザ素子12は、その配列に対して同じ一方の側にレーザ光を出力するように配置されている。なお、複数の半導体レーザ素子12の配列は、一列のみならず、複数列設けられていてもよい。
【0021】
複数の半導体レーザ素子12の配列においては、隣接する半導体レーザ素子12の電極がワイヤボンディング等により電気的に接続されている。これにより、複数の半導体レーザ素子12が直列に接続されている。なお、半導体レーザ素子12を電気的に接続する方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができるが、例えば特開2015-185667号公報に記載されるワイヤボンディングによる方法を用いることができる。
【0022】
複数の半導体レーザ素子12の配列の前方側において、底板部24の上面上には、端子部20が設けられている。また、複数の半導体レーザ素子12の配列の後方側において、底板部24の上面上には、端子部22が設けられている。端子部20、22は、それぞれ外部の駆動電源に電気的に接続可能であり、駆動電源により複数の半導体レーザ素子12のそれぞれに駆動電流を印加するためのものである。端子部20、22のうち、一方が駆動電源の正極端子に接続され、他方が駆動電源の負極端子に接続される。
【0023】
端子部20、22は、それぞれ、素子接続部44と、素子接続部44と電気的に接続された外部接続部46とを有している。端子部20、22は、それぞれ外部との電気的な接続に際してねじを利用する接続形式のものである。
【0024】
各端子部20、22の素子接続部44は、底板部24の上面上に設けられている。このように、各端子部20、22の一部である素子接続部44が、底板部24に設けられている。各端子部20、22の素子接続部44は、シート状導体48をそれぞれ有している。シート状導体48は、底板部24に平行に設けられている。シート状導体48は、直列に接続された複数の半導体レーザ素子12の配列における端部の半導体レーザ素子12の電極に、例えばワイヤボンディングによるワイヤを介して電気的に接続されている。
【0025】
より具体的には、端子部20における素子接続部44のシート状導体48は、直列に接続された複数の半導体レーザ素子12の配列における前側の端部の半導体レーザ素子12の電極に、ワイヤボンディングによるワイヤを介して電気的に接続されている。また、端子部22における素子接続部44のシート状導体48は、直列に接続された複数の半導体レーザ素子12の配列における後側の端部の半導体レーザ素子12の電極に、ワイヤボンディングによるワイヤを介して電気的に接続されている。なお、素子接続部44のシート状導体48と半導体レーザ素子12の電極とを電気的に接続する方法は、ワイヤボンディングによる方法に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。
【0026】
各端子部20、22の外部接続部46は、素子接続部44上に設けられている。各端子部20、22の外部接続部46は、例えば底板部24に垂直な柱状に形成された柱状導体50を有している。各端子部20、22において、柱状導体50は、シート状導体48に電気的に接続されている。各柱状導体50は、上方に向けて開口した雌ねじ孔52を上端に有している。各雌ねじ孔52は、後述するように、外部との電気的な接続のために用いられるものである。こうして、各端子部20、22の外部接続部46は、底板部24に対して上向きに設けられている。すなわち、各端子部20、22の一部である外部接続部46は、底板部24が設置されて固定される設置面とは反対側において、その設置面と反対方向に延伸するように設けられている。なお、底板部24に対して上向きとは、底板部24に直交する方向に底板部24に対して上向きである場合のほか、底板部24に直交する方向に対して所定の傾斜角度で傾斜する方向に底板部24に対して上向きである場合をも含みうる。すなわち、底板部24に対して上向く方向は、底板部24に直交する方向のみならず、底板部24に直交する方向に対して所定の傾斜角度で傾斜する方向であってもよい。
【0027】
各端子部20、22の外部接続部46は、雌ねじ孔52に螺合するねじ又はねじ部を利用して、外部と電気的に接続することができる。例えば、雌ねじ孔52に螺合するねじにより、導体棒であるバスバーを、柱状導体50と接触させつつ外部接続部46に固定し、固定したバスバーを介して外部接続部46を外部と電気的に接続することができる。また、雌ねじ孔52に螺合する雄ねじ部を有する外部端子を用い、外部端子の雄ねじ部を雌ねじ孔52に螺合して固定し、固定した外部端子を介して外部接続部46を外部と電気的に接続することができる。また、例えば丸形又は先開形の圧着端子である外部端子を、雌ねじ孔52に螺合する雄ねじにより、柱状導体50と接触させつつ外部接続部46に固定し、固定した外部端子を介して外部接続部46を外部と電気的に接続することができる。
【0028】
複数の半導体レーザ素子12の配列の一方の側には、光学系14が設けられている。光学系14は、これを構成する光学素子として、複数組のコリメートレンズ58、60及び反射ミラー62を有している。複数組のコリメートレンズ58、60及び反射ミラー62は、複数の半導体レーザ素子12に対応して、底板部24の上面上及び段差部38の複数の段40の上面上に設置されている。複数のコリメートレンズ58は、光学特性を同じくする同一のものになっている。複数のコリメートレンズ60は、光学特性を同じくする同一のものになっている。複数の反射ミラー62は、光学特性を同じくする同一のものになっている。光学系14を構成する光学素子は、コリメートレンズ58、60、反射ミラー62に限定されるものではなく、その他の光学素子を用いて構成することができる。
【0029】
コリメートレンズ58、60及び反射ミラー62の各組において、コリメートレンズ58、60は、対応する半導体レーザ素子12のレーザ光の出力側に順次配置されている。また、反射ミラー62は、コリメートレンズ60の後段に配置されている。コリメートレンズ58、60は、対応する半導体レーザ素子12から出力されたレーザ光をそれぞれ縦方向及び横方向にコリメートして平行光とする。反射ミラー62は、対応するコリメートレンズ58、60によりコリメートされたレーザ光を前方側に90°反射して、出力部18が設けられた底板部24の前方側に導く。
【0030】
底板部24の前方端部の上面上には、出力部18が設けられている。出力部18と光学系14との間には、集光レンズ64、65及びアパーチャ111が設けられている。出力部18は、レーザ光を出力するための光ファイバ68を有しており、光ファイバ68を通してレーザ光を出力するようになっている。なお、光ファイバ68の長さは、設計に応じて適宜変更することができる。
【0031】
出力部18の光ファイバ68は、底板部24の上面上に固定された一端である固定端と、底板部24の外部に引き出された一端である出力端とを有している。集光レンズ64、65は、光学系14とともに、複数の半導体レーザ素子12から出力されたレーザ光を光ファイバ68の固定端に入射させるための光学系を構成している。集光レンズ64、65は、複数の反射ミラー62のそれぞれにより反射されたレーザ光を、光ファイバ68の固定端に集光して入射させる。光ファイバ68の固定端に入射したレーザ光は、光ファイバ68を伝搬して、半導体レーザモジュール10の出力として光ファイバ68の出力端から出力される。本実施形態では集光レンズが2枚で構成されている例を示したが、集光レンズは1枚又は2枚を超える複数枚で構成されていてもよい。集光レンズが1枚で構成されている場合は、集光レンズはレーザ光の高速軸方向及び遅速軸方向の両方向について集光する集光レンズである。本発明において、集光レンズが1枚で構成されている場合は、明細書の説明における遅速軸方向のレーザ光を集光する集光レンズ65を、高速軸方向及び遅速軸方向の両方向について集光する集光レンズとすればよい。なお、光ファイバ68の固定端にレーザ光を入射させるための光学系の構成は、各種フィルタを有するものであってもよい。
【0032】
アパーチャ111は、半導体レーザ素子12から出力されたレーザ光の遅速軸方向を制限する。
図2に示すように、本実施形態におけるアパーチャ111はレーザ光が通過するU字型の空間を有する部材である。アパーチャ111は、レーザ光が通過する遅速軸方向中央部の空間と、遅速軸端部に、前記空間を挟んでレーザ光の通過を妨げる部材とを有する構成となっていればよく、本実施形態に示すようなU字型の形状に限られない。アパーチャ111を構成する部材の材料としては、一般にレーザモジュールに組み込まれるアパーチャの材料として通常用いられる材料を用いればよく、例えば銅、鉄、アルミニウム、銅タングステン、SUS、コバール等が挙げられる。中でも放熱の観点から銅が好ましい。アパーチャ111の表面は、レーザ光を反射又は吸収するような表面処理が施されていることが好ましい。表面処理としては、例えば金メッキ、ニッケルメッキ、アルマイト処理、黒化処理、レイデント処理等が挙げられる。中でも反射の観点から金メッキが好ましい。アパーチャ111の、レーザ光の光軸と直交する面と、レーザ光が通過する空間に接するレーザ光の光軸に平行な面と、の間にはテーパーカットが施されていても良い。特に、アパーチャ111の表面にレーザ光を反射するような表面処理が施されている場合には、レーザ光の遅速軸端部が照射される範囲にテーパーを設けることで、反射した光がレーザ光出射側に戻るのを避けることができる。
【0033】
本実施形態におけるアパーチャ111は、集光レンズ64と、集光レンズ65との間に設けられている。ここで集光レンズ64は高速軸方向のレーザ光を集光するレンズであり、集光レンズ65は遅速軸方向のレーザ光を集光するレンズである。アパーチャ111は、遅速軸方向のレーザ光を集光する集光レンズ65と、レーザ光をコリメートするコリメートレンズ60との間の光路上に設けられていればよく、本実施形態で示す位置に限られない。また、集光レンズ64又は集光レンズ65と一体、もしくは独立して構成されていてもよい。さらに、集光レンズが複数枚で構成されている場合は、アパーチャ111は、少なくとも1枚の、遅速軸方向のレーザ光を集光して出力部18の光ファイバ68の固定端に入射させるための集光レンズと、レーザ光をコリメートするコリメートレンズ60との間の光路上に設けられていればよい。アパーチャ111は、例えば、接着剤、ねじ止め、はんだ付け等により底板部24の上面上に固定することができる。アパーチャ111は、これを有さない半導体レーザモジュールに後付することも可能である。また、後述の他の実施形態で示すように、前記レーザ光の光軸に対する向きを、半導体レーザモジュール組み立て後に調節可能な機構により、可動に設けられていてもよい。
【0034】
本実施形態による半導体レーザモジュール10は、底板部24に設けられた複数の固定部212を有している。各固定部212は、底板部24からその外側に突出するように底板部24に設けられている。例えば、底板部24の長手方向に沿った2つの縁端部のうち、一方に2つに固定部212が設けられ、他方に1つの固定部212が設けられている。なお、固定部212の数及び位置は、特に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0035】
各固定部212には、固定ねじが貫通する貫通孔214が設けられている。半導体レーザモジュール10は、例えば、基板の設置面上に複数配列されて光源装置として用いられる。基板の設置面に雌ねじ孔を設けることで、各固定部212の貫通孔214を貫通して基板の設置面に設けられた雌ねじ孔に螺合する固定ねじにより、半導体レーザモジュール10を基板の設置面上に取り付けて固定することができる。なお、半導体レーザモジュール10を基板の設置面上に固定する方法は、特に限定されるものではなく、固定ねじを用いた方法のほか、ボルト及びナットを用いた方法等の種々の方法を用いることができる。また、底板部24は複数の固定部212を有する代わりに、底板部24の前端部及び後端部に、固定ねじが貫通する貫通孔が設けられていてもよい。
【0036】
こうして、本実施形態による半導体レーザモジュール10が構成されている。
【0037】
本実施形態では、端子部20、22が雌ねじ孔52を有する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。端子部20、22は、雌ねじ孔52に代えて、外部との電気的な接続のための雄ねじ部を有するものとすることができる。この場合、例えば、その雄ねじ部に螺合するナット等を用いて、雄ねじ部に挿入された環状部等により雄ねじ部と接触した外部端子を端子部20、22に固定することができる。
【0038】
また、本実施形態では、端子部20、22としてねじ又は開口部を利用する接続形式のものを例に説明したが、これらに限定されるものではなく、他の接続形式のものを用いることができる。例えば、端子部20、22として、バナナプラグ等のプラグが挿入可能なジャックを利用する接続形式のものとすることができる。
【0039】
本実施形態による半導体レーザモジュール10の動作時には、端子部20、22に電気的に接続された外部の駆動電源により、直列に接続された複数の半導体レーザ素子12のそれぞれに駆動電流が印加される。駆動電流が印加されると、各半導体レーザ素子12は、レーザ発振してレーザ光を出力する。各半導体レーザ素子12から出力されたレーザ光は、対応するコリメートレンズ58、60によりコリメートされた後、対応する反射ミラー62により反射されて集光レンズ64に導かれる。集光レンズ64で高速軸方向が集光されたレーザ光は、アパーチャ111に導かれる。アパーチャ111で遅速軸方向端部が制限されたレーザ光は、集光レンズ64により遅速軸方向が集光されて出力部18の光ファイバ68の固定端に入射する。光ファイバ68の固定端に入射したレーザ光は、半導体レーザモジュール10の出力として、光ファイバ68の出力端から出力される。
【0040】
本実施形態による半導体レーザモジュール10は、上述のように、底板部24の上面、遅速軸方向のレーザ光を集光する集光レンズ65と、レーザ光をコリメートするコリメートレンズ60との間の光路上にアパーチャ111が設けられている。このためコリメートレンズ58、60によりコリメートされたレーザ光の遅速軸方向端部が、遅速軸方向のレーザ光を集光する集光レンズ65に導かれる手前で、アパーチャ111により制限される。このとき、遅速軸方向のレーザ光を集光する集光レンズ65には、アパーチャ111の有する空間を通過したレーザ光が入射する。すなわち、遅速軸方向のレーザ光を集光する集光レンズ65に入射するレーザ光のNAhは、アパーチャ111の有する空間幅で制限される値以下となる。つまり、アパーチャ111を設けることで、遅速軸方向のレーザ光を集光する集光レンズ65に入射するレーザ光のNAhを一定の値以下に制御することが可能となる。NAhの上限値は、アパーチャの有する空間の幅を変えることで、任意に制御することができる。
【0041】
半導体レーザの駆動電力を上げると、半導体レーザ素子12から出射されるレーザ光のNAhが著しく増加するが、アパーチャ111を設けることで、NAhを一定の値以下に制御することが可能となる。そのため、半導体レーザ素子12の駆動電力を上げることによるNAhの著しい増加を抑制することができる。さらに、アパーチャ111によりNAhが一定の値以下に制限されるため、一定のNAFiberoutの範囲内でNAvを増加させる余裕ができる。つまり搭載可能な半導体レーザ素子12の数も増やすことができる。以上により、本発明の実施形態による半導体レーザモジュールでは、光ファイバレーザの高出力化が可能となる。
【0042】
本実施形態による半導体レーザモジュール10は、これを複数配列することにより光源装置を構成することができる。複数の半導体レーザモジュール10を用いることにより、光源装置の高出力化を図ることができる。以下、複数の半導体レーザモジュール10を配列した本実施形態による光源装置について
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態による光源装置を示す概略図である。
【0043】
図4に示すように、本実施形態による光源装置80は、基板82と、基板82上に配列されて設置された複数の半導体レーザモジュール10とを有している。なお、複数の半導体レーザモジュール10の数は、特に限定されるものではなく、光源装置80に要求されるレーザ出力等に応じて適宜設定することができる。
【0044】
基板82は、配列される複数の半導体レーザモジュール10が設置された設置面を有し、その設置面上に設置された複数の半導体レーザモジュール10を支持するベース部材である。基板82の設置面上には、複数の半導体レーザモジュール10のそれぞれが、底板部24側を基板82側にして取り付けられて固定されている。半導体レーザモジュール10が配列される基板82の設置面には、雄ねじである固定ねじが螺合する雌ねじ孔が設けられている。半導体レーザモジュール10は、各固定部212の貫通孔214を貫通して基板82の設置面に設けられた雌ねじ孔に螺合する固定ねじにより、基板82の設置面上に取り付けられて固定されている。なお、半導体レーザモジュール10を基板82の設置面上に固定する方法は、特に限定されるものではなく、固定ねじを用いた方法のほか、ボルト及びナットを用いた方法等の種々の方法を用いることができる。なお、複数の半導体レーザモジュール10が設置されるベース部材は、基板82のような板状部材に限定されるものではなく、種々の形状を採ることができる。例えば、複数の半導体レーザモジュール10が設置されるベース部材は、ヒートシンクのような放熱部材として機能するものであってもよい。この場合、ベース部材は、例えば、放熱性能を向上するための複数枚のフィンを有するものとすることができる。
【0045】
基板82の設置面上に設置された複数の半導体レーザモジュール10は、例えば基板82の長手方向を配列方向として横方向に一列に配列されている。一列に配列された複数の半導体レーザモジュール10は、その配列に対して同じ側に出力部18を向けている。複数の半導体レーザモジュール10のそれぞれは、複数の半導体レーザモジュール10の配列方向に対して、その底板部24の長手方向が直交するように配置されている。なお、配列方向に対する半導体レーザモジュール10の傾斜角度は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。また、隣接する2つの半導体レーザモジュール10は、互いに底板部24及び蓋部26の側端部を密着させて配列されていてもよいし、一定の間隔を空けて配列されていてもよい。
【0046】
隣接する2つの半導体レーザモジュール10のうち、一方の半導体レーザモジュール10の端子部20と、他方の半導体レーザモジュール10の端子部22とは、導体棒であるバスバーにより電気的に接続してもよい。バスバーの一端は、一方の半導体レーザモジュール10の端子部20の雌ねじ孔52に螺合する固定ねじにより、その端子部20に固定されて端子部20に電気的に接続できる。バスバーの他端は、他方の半導体レーザモジュール10の端子部22の雌ねじ孔52に螺合する固定ねじにより、その端子部22に固定されて端子部22に電気的に接続できる。こうして、複数の半導体レーザモジュール10を直列に接続することができる。なお、複数の半導体レーザモジュール10を電気的に接続する方法は、バスバーを用いた方法に限定されるものではなく、リード線を用いた方法等の種々の方法を用いることができる。
【0047】
こうして、本実施形態による光源装置80が構成されている。
【0048】
本実施形態では、複数の半導体レーザモジュール10を基板82上に設置する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。複数の半導体レーザモジュール10、基板82のほか、設置台等の種々のベース部材の設置面上に設置することができる。
【0049】
また、本実施形態では、
図4に示すように、一列に配列された複数の半導体レーザモジュール10が、その配列に対して同じ側に出力部18を向けている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、一列に配列された複数の半導体レーザモジュール10が、その配列に対して一方の側と他方の側に互い違いに出力部18を向けていてもよい。この場合、隣接する2つの半導体レーザモジュール10におけるバスバーで接続すべき端子部20、22が互いに同じ側に位置するので、バスバーの長さを短縮することができ、よって、電気的な接続経路を短縮することができる。
【0050】
上述のように、本実施形態による半導体レーザモジュール10は高出力化が可能であるため、複数の半導体レーザモジュール10を用いた光源装置80も高出力化が可能である。
【0051】
本実施形態による光源装置80は、例えば、光ファイバレーザの励起光源として用いることができる。ここで、本実施形態による光源装置80を励起光源として用いた光ファイバレーザについて
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態による光源装置80を励起光源として用いた光ファイバレーザを示す概略図である。
【0052】
図5に示すように、本実施形態による光源装置80を励起光源として用いた光ファイバレーザ94は、励起光源としての光源装置80と、光結合部としてのポンプコンバイナ96とを有している。また、光ファイバレーザ94は、増幅用光ファイバとしての希土類添加光ファイバ98と、出力側光ファイバ100とを有している。希土類添加光ファイバ98の入力端及び出力端には、それぞれ高反射FBG(Fiber Bragg Grating)102及び低反射FBG104が設けられている。
【0053】
光源装置80に含まれる複数の半導体レーザモジュール10における出力部18の光ファイバ68の出力端は、複数入力1出力のポンプコンバイナ96の複数の入力ポートにそれぞれ結合されている。ポンプコンバイナ96の出力ポートには、希土類添加光ファイバ98の入力端が接続されている。希土類添加光ファイバ98の出力端には、出力側光ファイバ100の入力端が接続されている。なお、複数の半導体レーザモジュール10から出力されるレーザ光を希土類添加光ファイバ98に入射させる入射部としては、ポンプコンバイナ96に代えて他の構成を用いることもできる。例えば、複数の半導体レーザモジュール10における出力部18の光ファイバ68を並べて配置し、複数の光ファイバ68から出力されたレーザ光を、レンズを含む光学系等の入射部を用いて、希土類添加光ファイバ98の入力端に入射させるように構成してもよい。
【0054】
こうして、本実施形態による光源装置80を励起光源として用いた光ファイバレーザ94が構成されている。
【0055】
光ファイバレーザ94において、複数の半導体レーザモジュール10の光ファイバ68から出力されたレーザ光は、ポンプコンバイナ96により結合されてその出力ポートから出力される。入射部としてのポンプコンバイナ96は、その出力ポートから出力された励起光としてのレーザ光を、希土類添加光ファイバ98の入力端に入射させる。希土類添加光ファイバ98においては、高反射FBG102及び低反射FBG104により、希土類添加光ファイバ98を含む共振器が形成されている。
【0056】
増幅用光ファイバである希土類添加光ファイバ98では、伝搬する励起光が、コアにドープされた希土類元素に吸収されて、基底準位と準安定準位との間に反転分布が生じて光が放出される。こうして放出された光は、希土類添加光ファイバ98の光増幅作用と高反射FBG102及び低反射FBG104により構成されるレーザ共振器の作用とによってレーザ発振する。こうして、レーザ発振によりレーザ光が生じる。生じたレーザ光は、希土類添加光ファイバ98の出力端に接続された出力側光ファイバ100の出力端から出力される。
【0057】
本実施形態では、
図5に示すように、光源装置80を光ファイバレーザ94の励起光源として用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。光源装置80は、波長合成を行う装置、偏波合成を行う装置等、種々の装置又はシステムの光源として用いることができる。また、光源装置80は、ダイレクトダイオードレーザとして用いることができる。例えば、光源装置80は、その複数の半導体レーザモジュール10から出力されたレーザ光が入射される光学系とともに用いることができる。光学系には、集光レンズ等のレンズ、コンバイナ、ミラー等が含まれる。より具体的には、光源装置80における複数の半導体レーザモジュール10から出力されたレーザ光を、レンズを含む光学系により集光して出力することができる。また、光源装置80における複数の半導体レーザモジュール10から出力されたレーザ光を、コンバイナにより結合して出力することができる。なお、光源装置80における複数の半導体レーザモジュール10は、レーザ光の波長等のレーザ特性が互いに同一であっても異なっていてもよい。複数の半導体レーザモジュール10のレーザ特性は、光源装置80の用途に応じて適宜設定することができる。
【0058】
[第2乃至4実施形態]
本発明の第2乃至4実施形態による半導体レーザモジュールについて
図6乃至
図8を用いて説明する。なお、上記第1実施形態による半導体レーザモジュールと同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
【0059】
第2乃至4実施形態による半導体レーザモジュールの構成は、アパーチャ111を、第2実施形態ではアパーチャ211に、第3実施形態ではアパーチャ311に、第4実施形態ではアパーチャ411に、それぞれ代えた以外は、第1実施形態による半導体レーザモジュール10と同様である。
【0060】
第2実施形態による半導体レーザモジュールでは、アパーチャ211の有するレーザ光が通過する空間が、上部に開けた矩形となっている。
図6に示すように、本実施形態ではアパーチャ211が、集光レンズ64と、集光レンズ65との間に設けられているが、例えば、集光レンズ64にレーザ光が入射する手前にアパーチャ211を設けることもできる。高速軸方向のレーザ光を集光する集光レンズ64に入射する前のレーザ光は、高速軸方向に広がりを持つが、アパーチャ211の有する空間が矩形であることで、遅速軸方向のレーザ光を、高速軸方向の位置に関わらず同じ幅で、集光レンズ64に導くことができる。
【0061】
第3実施形態による半導体レーザモジュールでは、
図7に示すように、アパーチャ311は直方体の部材2つで構成されている。アパーチャ311の有するレーザ光が通過する空間が、矩形となっている点は、第2実施形態で用いたアパーチャ211と同様である。また、例えば、集光レンズ64にレーザ光が入射する手前にアパーチャ311を設けた場合に、遅速軸方向のレーザ光を、高速軸方向の位置に関わらず同じ幅で、集光レンズ64に導くことができる点も、第2実施形態と同様である。アパーチャ311は、互いに独立した2つの部材で構成されているため、レーザ光が通過する空間の幅を、適宜変えることが可能である。さらにアパーチャ311を構成する部材の形状がシンプルで有り、製造に有利である。
【0062】
第4実施形態による半導体レーザモジュールでは、
図8に示すように、アパーチャ411は、レーザ光が通過する空間として矩形の孔部を構成する枠で構成された部材である。アパーチャ411の有するレーザ光が通過する空間が、矩形となっている点は、第2実施形態で用いたアパーチャ211と同様である。また、例えば、集光レンズ64にレーザ光が入射する手前にアパーチャ411を設けた場合に、遅速軸方向のレーザ光を、高速軸方向の位置に関わらず同じ幅で、集光レンズ64に導くことができる点も、第2実施形態と同様である。
【0063】
第1乃至4実施形態において、アパーチャの構成の異なるものを例示したが、本発明に係るアパーチャの構成はこれらに限るものではなく、レーザ光が通過する遅速軸方向中央部の空間と、遅速軸端部に、前記空間を挟んでレーザ光の通過を妨げる部材とを有する構成となっていればよい。
【0064】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による半導体レーザモジュールについて
図9及び
図10を用いて説明する。なお、上記第1実施形態による半導体レーザモジュールと同様の構成については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
【0065】
本実施形態による半導体レーザモジュール510の構成は、
図9及び
図10に示すように、アパーチャ111と、集光レンズ65との間に、反射ミラー511を有する以外は、第1実施形態による半導体レーザモジュール10の構成と同様である。
【0066】
本実施形態による半導体レーザモジュール510の有する反射ミラー511は、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートするレンズによりコリメートされたレーザ光のうち、前記半導体レーザの発信波長に対して一部のレーザ光を反射する。
【0067】
反射ミラー511は半導体レーザ素子12と、出力部18との間の光路上に設けられていればよいが、集光レンズ64と、集光レンズ65との間に設けることが好ましい。反射ミラー511の材料及び形状については、一般的に用いられる反射ミラーと同様でよい。また、反射ミラー511の有する反射率は、半導体レーザにアパーチャで制限された光を再結合させる観点から4%以上であることが好ましい。本実施形態による半導体レーザモジュール510の有する反射ミラー511は、レーザ光が照射される面がレーザ光の光軸に対して直交する向きで配置されているが、光フィルタのレーザ光照射面にレーザ光が照射される限りにおいて、レーザ光の光軸に対してその他の向きで配置されていてもよい。
【0068】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態による半導体レーザモジュールについて
図11を用いて説明する。なお、上記第1実施形態による半導体レーザモジュールと同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
【0069】
本実施形態による半導体レーザモジュールの構成は、
図11に示すように、第5実施形態による半導体レーザモジュール510の反射ミラー511を光フィルタ611に置き換えたもので、他の構成要素は半導体レーザモジュール510の構成と同様である。
【0070】
光フィルタ611は2枚の集光レンズ64と65の間に配置されており、例えば2度以上傾いていることが好ましい。光フィルタ611は光ファイバ68を伝搬して外部から照射される例えば波長1060~1080nmの光を反射する。この時、光フィルタ611が傾いていることにより、反射光は光ファイバ68に再結合したり、光ファイバ68を固定している接着剤などを焼損させてしまうことを防止することができる。
【0071】
さらに光フィルタ611を2枚の集光レンズの間に配置することにより、外部から光ファイバ68を伝搬して照射される光を光フィルタ611で反射した際に、光ファイバ68付近で再集光されてしまうことを防止することができる。これによって外部からの照射光による光ファイバ固定部分などの破壊を抑制することができる。2枚の集光レンズよりも光ファイバ68側に光フィルタ611を配置した場合、再集光されてしまうことは抑制できるが、光ファイバ固定部分も含めて光が照射されてしまい、好ましくない。また2枚の集光レンズの外側に光フィルタ611を配置した場合、1点に再集光されてしまい、光ファイバ固定部など、部品を焼損させてしまうリスクがある。したがって2枚の集光レンズの間にフィルタを傾けて配置する場合が、最大の効果を発揮することができる。
【0072】
なお、第5実施形態と第6実施形態の変形例として、反射ミラー511と光フィルタ611を両方備えてもよい。この場合、アパーチャ111に近い側に反射ミラー511を、集光レンズ65に近い側に光フィルタ611を配置することが好ましい。また、反射ミラー511と光フィルタ611の機能を備えた一つの部品としてもよい。
【0073】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態による半導体レーザモジュールについて
図11を用いて説明する。なお、上記第1実施形態による半導体レーザモジュールと同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
【0074】
本実施形態による半導体レーザモジュール710の基本的構成は、第1実施形態による半導体レーザモジュール10の構成と同様である。本実施形態による半導体レーザモジュールは、第1実施形態による半導体レーザモジュール10の構成に加えて、さらに半導体レーザ素子12とは異なる電子部品及びこれに対応する端子部を有している。
【0075】
図12は、本実施形態による半導体レーザモジュールを示す上面図である。
【0076】
図12に示すように、本実施形態による半導体レーザモジュール710は、第1実施形態による半導体レーザモジュール10の構成に加えて、電子部品712と、これに対応する端子部714、716とを有している。
【0077】
電子部品712は、底板部24の上面上に設けられている。また、端子部714、716も、底板部24の上面上に設けられている。
【0078】
電子部品712は、半導体レーザ素子12とは異なるものであり、アパーチャ111の、レーザ光の光軸に対する向きを調節可能にするための駆動部品である。電子部品712は、アパーチャ111の下に設置されている。電子部品712は、例えば、回転ステージであり、外部からの制御によりアパーチャ111の、レーザ光の光軸に対する向きを調節可能である。底板部24は、電子部品712及び端子部714、716を設けるため、第1実施形態と比較して拡張されている。
【0079】
電子部品712に対応する端子部714、716は、それぞれ底板部24の電子部品712の近傍の領域上に設置されている。端子部714、716は、それぞれ電子部品712に応じた外部の回路部に電気的に接続され、電子部品712の機能を実現するためのものである。
【0080】
端子部714、716は、それぞれ、部品接続部720と、部品接続部720と電気的に接続された外部接続部722とを有している。端子部714、716は、それぞれ外部との電気的な接続に際してねじを利用する接続形式のものである。端子部714、716の部品接続部720及び外部接続部722は、それぞれ端子部20、22の素子接続部44及び外部接続部46と同様の構造を有している。
【0081】
各端子部714、716の部品接続部720は、底板部24の上面上に設けられている。このように、各端子部714、716の一部である部品接続部720が、底板部24に設けられている。各端子部714、716の部品接続部720は、シート状導体724をそれぞれ有している。シート状導体724は、底板部24に平行に設けられている。シート状導体724は、電子部品712の電極に、例えばワイヤボンディングによるワイヤを介して電気的に接続されている。
【0082】
より具体的には、端子部714における部品接続部720のシート状導体724は、電子部品712の一方の電極に、ワイヤボンディングによるワイヤを介して電気的に接続されている。また、端子部716における部品接続部720のシート状導体724は、電子部品712の他方の電極に、ワイヤボンディングによるワイヤを介して電気的に接続されている。なお、部品接続部720のシート状導体724と電子部品712の電極とを電気的に接続する方法は、ワイヤボンディングによる方法に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。
【0083】
各端子部714、716の外部接続部722は、部品接続部720上に設けられている。各端子部714、716の外部接続部722は、例えば底板部24に垂直な柱状に形成された柱状導体726を有している。各端子部714、716において、柱状導体726は、シート状導体724に電気的に接続されている。各柱状導体726は、上方に向けて開口した雌ねじ孔728を上端に有している。各雌ねじ孔728は、後述するように、外部との電気的な接続のために用いられるものである。こうして、各端子部714、716の外部接続部722は、端子部20、22の外部接続部46と同様に、底板部24に対して上向きに設けられている。すなわち、各端子部714、716の一部である外部接続部722は、底板部24が設置されて固定される設置面とは反対側において、その設置面と反対方向に延伸するように設けられている。
【0084】
各端子部714、716の外部接続部722は、雌ねじ孔728に螺合するねじ又はねじ部を利用して、外部と電気的に接続することができる。例えば、雌ねじ孔728に螺合するねじにより、導体棒であるバスバーを、柱状導体726と接触させつつ外部接続部722に固定し、固定したバスバーを介して外部接続部722を外部と電気的に接続することができる。また、雌ねじ孔728に螺合する雄ねじ部を有する外部端子を用い、外部端子の雄ねじ部を雌ねじ孔728に螺合して固定し、固定した外部端子を介して外部接続部722を外部と電気的に接続することができる。また、例えば丸形又は先開形の圧着端子である外部端子を、雌ねじ孔728に螺合する雄ねじにより、柱状導体726と接触させつつ外部接続部722に固定し、固定した外部端子を介して外部接続部722を外部と電気的に接続することができる。
【0085】
本実施形態のように、アパーチャ111の、レーザ光の光軸に対する向きを調節可能にするための駆動部品である電子部品712を設けることで、アパーチャ111の有する、レーザ光が通過する空間の幅を適宜調節可能となる。すなわち、半導体レーザモジュール710の使用条件に対応して、半導体レーザ素子12から出射されたレーザ光のNAhを適宜所望の値に制限することが可能となる。
【0086】
なお、第7実施形態の変形例として、第5実施形態および第6実施形態で示した反射ミラー511、光フィルタ512またはその両方を備えてもよい。反射ミラー511と光フィルタ611の両方を備える場合、アパーチャ111に近い側に反射ミラー511を、集光レンズ65に近い側に光フィルタ611を配置することが好ましい。また、反射ミラー511と光フィルタ611の機能を備えた一つの部品としてもよい。
【0087】
この出願は2018年2月14日に出願された日本国特許出願第2018-024415号からの優先権を主張するものであり、その内容を引用してこの出願の一部とするものである。
【符号の説明】
【0088】
10、510、710…半導体レーザモジュール
12…半導体レーザ素子
18…出力部
20、320、420…端子部
22、322、422…端子部
24…底板部
80…光源装置
82…基板
94…光ファイバレーザ
96…ポンプコンバイナ
98…希土類添加光ファイバ
111、211、311、411…アパーチャ
511…反射ミラー
611…光フィルタ
712…電子部品
714…端子部
716…端子部