(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】めっき装置
(51)【国際特許分類】
C25D 21/12 20060101AFI20240328BHJP
C25D 17/10 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C25D21/12 C
C25D17/10 A
C25D21/12 A
(21)【出願番号】P 2024508467
(86)(22)【出願日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2023041002
【審査請求日】2024-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】関 正也
(72)【発明者】
【氏名】下山 正
(72)【発明者】
【氏名】奥園 貴久
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 良輔
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-85612(JP,A)
【文献】特開2017-75405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/00-21/22
C25D 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を収容するためのめっき槽と、
前記めっき槽内に配置されたアノードと、
被めっき面が前記アノードと対向するように基板を保持するための基板ホルダと、
前記アノードと前記基板ホルダとの間に配置されたアノードマスクであって、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通するアノード開口を有し、前記アノード開口の大きさを調節可能に構成された、アノードマスクと、
前記アノードマスクと前記基板ホルダとの間に配置された電場調節部材と、
前記アノードマスクと前記電場調節部材との間に配置された測定電極と、
前記めっき槽に収容されためっき液中に配置される基準電極と、
前記基準電極と前記測定電極との間の電圧を計測するための計測器と、
を含む、
めっき装置。
【請求項2】
前記測定電極は、前記アノードの中心と前記基板の中心を結ぶ仮想軸を中心とした円周上に等間隔に配置された複数の測定電極を含む、
請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記複数の測定電極は、前記アノードマスクの前記基板ホルダ側の面に配置される、
請求項2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記計測器によって計測された電圧の時間変化に基づいて、前記アノードマスクまたは前記電場調節部材の破損を検出するように構成された検出部材をさらに含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記アノード開口は、前記基板ホルダに保持された矩形の基板の形状に対応した矩形に形成され、
前記複数の測定電極はそれぞれ、矩形のアノード開口の各辺に対して配置され、
前記アノードマスクは、矩形のアノード開口の各辺に設けられた複数の遮蔽部材を含み、
前記計測器によって計測された電圧に基づいて、前記複数の遮蔽部材を前記アノード開口の中心に近づく方向または遠ざかる方向に移動させるように構成された開口調節部材をさらに含む、
請求項2または3に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記基板ホルダは、被めっき面を側方に向けた状態で基板を保持するように構成され、
前記電場調節部材は、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する単一のレギュレーション開口を有するレギュレーションプレートを含む、
請求項1に記載のめっき装置。
【請求項7】
前記基板ホルダは、被めっき面を下方に向けた状態で基板を保持するように構成され、
前記電場調節部材は、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する複数の開口を有する抵抗体を含む、
請求項1に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解めっき装置の一例として、ディップ式のめっき装置とカップ式のめっき装置が知られている。いずれも、基板(例えば半導体ウェハ)を基板ホルダに保持してめっき液に浸漬させ、基板(カソード)とアノードとの間に電圧を印加することによって、基板の表面に導電膜を析出させる点は共通している。両者は、基板の被めっき面が向いている方向が異なる。ディップ式のめっき装置は、被めっき面が側方に向くように基板をめっき液に浸漬させ、カップ式のめっき装置は、被めっき面が下方に向くように基板をめっき液に浸漬させる。
【0003】
特許文献1には、ディップ式のめっき装置が開示されている。このめっき装置は、アノードと基板との間の電場を調節するためのアノードマスクを備えている。アノードマスクは、アノードと基板ホルダとの間に配置された板状の部材であり、アノードと基板との間に流れる電流が通過する開口を中央部に有し、開口の径を調節可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されためっき装置は、アノードと基板との間に形成される電場の乱れを検出することについては考慮されていない。
【0006】
すなわち、アノードマスクの一部(例えばアノードマスクの開口の径を調節するための部材)は、めっき液による化学変化によって部材の劣化が進み、破損する場合がある。アノードマスクの一部が破損すると、アノードと基板との間の電場が乱れ、被めっき面に所望のめっきの膜厚分布を形成するのが難しくなる。また、アノードマスクだけではなく、めっき槽内に配置される他の部材についても、めっき液による化学変化によって部材が破損するおそれがある。
【0007】
さらに、めっき装置では、アノード、アノードマスク、および基板(基板ホルダ)を軸合わせした適切な位置に配置することが求められる。しかしながら、いずれかの部材の配置位置がずれた場合、アノードと基板との間の電場が乱れ、所望のめっき膜厚分布を形成するのが難しくなる。
【0008】
そこで、本願は、アノードと基板との間に形成される電場の乱れを検出することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、めっき液を収容するためのめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、被めっき面が前記アノードと対向するように基板を保持するための基板ホルダと、前記アノードと前記基板ホルダとの間に配置されたアノードマスクであって、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通するアノード開口を有し、前記アノード開口の大きさを調節可能に構成された、アノードマスクと、前記アノードマスクと前記基板ホルダとの間に配置された電場調節部材と、前記アノードマスクと前記電場調節部材との間に配置された測定電極と、前記めっき槽に収容されためっき液中に配置される基準電極と、前記基準電極と前記測定電極との間の電圧を計測するための計測器と、を含む、めっき装置が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態のめっき装置の全体構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のアノードマスクの概略正面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のアノードマスクの縦断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のアノードマスクの概略正面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のアノードマスクの概略正面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のめっき装置の全体構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0012】
図1は、一実施形態のめっき装置の全体構成を示す断面図である。図示のように、本実施形態に係るめっき装置10は、アノード21を保持するように構成されたアノードホルダ20と、基板WFを保持するように構成された基板ホルダ40と、アノードホルダ20と基板ホルダ40とを内部に収容するめっき槽50と、を有する。本実施形態では、基板WFは円板状に形成され、アノード21は基板WFの形状に対応して円板状に形成される。
【0013】
図1に示すように、めっき槽50は、添加剤を含むめっき液Qを収容するめっき処理槽52と、めっき処理槽52からオーバーフローしためっき液Qを受けて排出するめっき液排出槽54と、めっき処理槽52とめっき液排出槽54とを仕切る仕切り壁55と、を有する。
【0014】
アノード21を保持したアノードホルダ20と基板WFを保持した基板ホルダ40は、めっき処理槽52内のめっき液Qに浸漬され、アノード21と基板WFの被めっき面WF1が略平行になるように対向して設けられる。言い換えると、基板ホルダ40は、被めっき面WF1を側方に向けた状態で基板WFを保持する。アノード21と基板WFは、めっき処理槽52のめっき液Qに浸漬された状態で、電圧が印加される。これにより、金属イオンが基板WFの被めっき面WF1において還元され、被めっき面WF1に膜が形成される。
【0015】
めっき処理槽52は、槽内部にめっき液Qを供給するためのめっき液供給口56を有する。めっき液排出槽54は、めっき処理槽52からオーバーフローしためっき液Qを排出するためのめっき液排出口57を有する。めっき液供給口56はめっき処理槽52の底部に配置され、めっき液排出口57はめっき液排出槽54の底部に配置される。
【0016】
めっき液Qがめっき液供給口56からめっき処理槽52に供給されると、めっき液Qはめっき処理槽52から溢れ、仕切り壁55を越えてめっき液排出槽54に流入する。めっき液排出槽54に流入しためっき液Qはめっき液排出口57から排出され、めっき液循環装置58が有するフィルタ等で不純物が除去される。不純物が除去されためっき液Qは、めっき液循環装置58によりめっき液供給口56を介してめっき処理槽52に供給される。
【0017】
めっき装置10は、アノード21と基板WFとの間の電場を調節するためのアノードマスク70を有する。アノードマスク70は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードホルダ20の前面に設けられる。ここで、アノードホルダ20の前面とは、基板ホルダ40に対向する側の面をいう。すなわち、アノードマスク70は、アノード21と基板ホルダ40の間に配置される。アノードマスク70は、アノード21側と基板ホルダ40側とを貫通する、言い換えればアノード21と基板WFとの間に流れる電流が通過する、アノード開口70aを略中央部に有する。アノード開口70aの径は、アノード21の径よりも小さいことが好ましい。アノードマスク70は、アノード開口70aの径を調節可能に構成される。以下、この点について説明する。
【0018】
図2は、アノードマスク70の概略正面図である。
図2は、
図1におけるA-A線の矢視図である。
図2に示すように、アノードマスク70は、板状のアノードマスク本体71と、アノードマスク本体71の中央に形成された略環状の縁部73と、を有する。アノードマスク70は、アノード開口70aを調節可能に構成される複数の絞り羽根72を有する。絞り羽根72は、縁部73に取り付けられており、協働してアノード開口70aを画定する。絞り羽根72の各々は、カメラの絞り機構と同様の構造により、アノード開口70aの径を拡大または縮小させる(アノード開口70aの径を調節する)。
図2に示すアノードマスク70のアノード開口70aは、絞り羽根72によって非円形状(例えば多角形状)に形成される。この場合のアノード開口70aの径は、多角形の対向する辺の最短距離、または内接する円の直径をいう。あるいは、アノード開口70aの径は、開口面積と等価な面積を有する円の直径で定義することもできる。
【0019】
絞り羽根72の各々は、例えば手動によりアノード開口70aの径を拡大または縮小させる。また、絞り羽根72の各々は、エア圧力あるいは電気的な駆動力を利用して駆動するように構成されてもよい。
【0020】
図1を参照すると、めっき装置10は、アノード21と基板WFとの間の電場を調節するための電場調節部材の一例であるレギュレーションプレート30を有する。レギュレーションプレート30は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードマスク70と基板ホルダ40(基板WF)との間に配置される。レギュレーションプレート30は、アノード21側と基板ホルダ40側とを貫通する、言い換えればアノード21と基板WFとの間に流れる電流が通過する、レギュレーション開口30aを有する。レギュレーション開口30aの径は、基板WFの径より小さいことが好ましい。
【0021】
レギュレーションプレート30は、アノードマスク70と同様に、絞り羽根によってレギュレーション開口30aの径を調節可能に構成されていてもよい。ただし、レギュレーション開口30aの径の調節は、絞り羽根に限定されない。例えば、略環状の縁部に弾性チューブを取り付け、弾性チューブの内部の空洞に流体(空気や窒素等の気体、または水等の流体)を出し入れして弾性チューブを膨張/収縮させることによって、レギュレーション開口30aの径を調節することもできる。
【0022】
レギュレーションプレート30は、アノードホルダ20と基板ホルダ40との中間位置よりも基板ホルダ40に近い位置であることが好ましい。レギュレーションプレート30が基板ホルダ40に近い位置に配置されるほど、レギュレーションプレート30のレギュレーション開口30aの径を調節することにより、基板WFの周縁部の膜厚をより正確に制御することができる。
【0023】
レギュレーションプレート30と基板ホルダ40との間には、基板WFの被めっき面WF1近傍のめっき液Qを撹拌するためのパドル18が設けられる。パドル18の一端は、パドル駆動装置19に固定される。パドル18は、パドル駆動装置19により基板WFの被めっき面WF1に沿って移動され、これによりめっき液Qが撹拌される。
【0024】
めっき装置10は、さらに、メンブレンボックス60を有する。メンブレンボックス60は、めっき槽50内において、アノードホルダ20(アノード21)およびアノードマスク70を収容するための箱状の部材である。メンブレンボックス60は、アノードマスク70とレギュレーションプレート30との間に配置されたメンブレン62を有する。メンブレン62は、アノード21が配置されたアノード領域と基板WFが配置されるカソード領域とを仕切る膜である。メンブレンボックス60は、メンブレンボックス60をめっき槽50から持ち上げたときにメンブレンボックス60からめっき液Qを排出するためのプラグ64を有する。
【0025】
次に、めっき装置10の電場の乱れの検出態様について説明する。
図2に示すように、めっき装置10は、測定電極74(
図2の実施形態では3個の測定電極74-1,74-2,74-3)と、基準電極75と、基準電極75と測定電極74との間の電圧を計測する計測器76と、を有する。
【0026】
図2の実施形態では、測定電極74-1,74-2,74-3は、アノードマスク70の基板ホルダ40側の面に、アノード開口70aの中心に対する円周上に等間隔(120°間隔)に配置される。より具体的には、測定電極74-1,74-2,74-3は、絞り羽根72の基板ホルダ40側の面に配置される。ただし、測定電極74は、
図2の実施形態のような配置態様に限定されず、アノードマスク70とレギュレーションプレート30(電場調節部材)との間に配置されていてもよい。測定電極74が複数ある場合には、各測定電極74は、アノード21の中心と基板WFの中心を結ぶ仮想軸を中心とする円周上に等間隔に配置されてもよい。測定電極74の個数は単数であってもよい。
【0027】
基準電極75は、アノードマスク70の基板ホルダ40側の面の、アノードマスク70の中心に対して測定電極74-1,74-2,74-3より遠い場所に配置される。ただし、基準電極75は、
図2の実施形態のような配置態様に限定されず、めっき槽50に収容されためっき液Q中に配置されていればよい。測定電極74および基準電極75はそれぞれ、パターン配線77を介して計測器76に接続される。
【0028】
図3は、一実施形態のアノードマスク70およびメンブレン62の斜視断面図である。
図3に示すように、アノードマスク本体71は、板状の第1のアノードマスク本体71-1と、板状の第2のアノードマスク本体71-2と、を有する。第1のアノードマスク本体71-1および第2のアノードマスク本体71-2は、間隔をあけて相互に対向するように配置される。パターン配線77は、第1のアノードマスク本体71-1と、第2のアノードマスク本体71-2と、の間の空間に配置される。パターン配線77はエポキシ等の基板に銅箔をパターン形成することによって構成することができる。第1のアノードマスク本体71-1および第2のアノードマスク本体71-2は封止材として機能するので、パターン配線77を収容する内部の空間にめっき液Qが侵入するのを防ぐことができる。
【0029】
めっき装置10は、計測器76によって基準電極75に対する測定電極74の電圧を計測することができるので、アノード21と基板WFとの間に形成される電場の乱れを検出することができる。以下、当該電場の乱れの検出に関する例について説明する。
【0030】
図2を参照すると、めっき装置10は、計測器76によって計測された電圧の時間変化に基づいてアノードマスク70またはレギュレーションプレート30(電場調節部材)の破損を検出するように構成された検出部材80を有する。すなわち、アノードマスク70の一部(例えばアノード開口の径を調節するための絞り羽根72)は、めっき液による化学変化によって部材の劣化が進み、破損する場合がある。アノードマスクの一部が破損すると、アノードと基板との間の電場が乱れ、被めっき面に所望のめっきの膜厚分布を形成するのが難しくなる。また、アノードマスク70だけではなく、レギュレーションプレート30についても、めっき液による化学変化によって部材が破損するおそれがある。
【0031】
これに対して、検出部材80は、計測器76によって計測された電圧の時間変化に基づいて、測定電極74-1,74-2,74-3の少なくとも1つの電圧が正常状態に対して変化したことを検出する。例えば測定電極74-1の近傍に配置された絞り羽根72が破損した場合には、測定電極74-1の電圧が正常状態に対して変化する。検出部材80は、測定電極74-1の電圧が正常状態に対して変化したことを検出した場合には、測定電極74-1の近傍に配置された絞り羽根72の破損の可能性を示唆する警報を発出することができる。また、検出部材80は、警報を発出するとともに、めっき装置10の運転を停止することができる。
【0032】
図4は、一実施形態のアノードマスクの概略正面図である。
図4に示すように、めっき装置10は、6個の測定電極74-1~74-6を有していてもよい。この場合、測定電極74-1~74-6は、アノードマスク70の基板ホルダ40側の面に、アノード開口70aの中心に対する円周上に等間隔(60°間隔)に配置される。
【0033】
検出部材80は、測定電極74-1~74-6のそれぞれについて、計測器76によって計測された電圧の時間変化に基づいてアノードマスク70またはレギュレーションプレート30(電場調節部材)の破損を検出するように構成される。本実施形態のように測定電極74の数を増やすことにより、アノード21と基板WFとの間に形成される電場の乱れが発生している場所をより具体的に検出することができる。その結果、例えば、絞り羽根72に破損が生じた場合に、破損発生箇所をより具体的に特定することができる。
【0034】
図5は、一実施形態のアノードマスクの概略正面図である。本実施形態は、矩形に形成された基板WFに対してめっき処理を行うめっき装置の実施形態である。
図5に示すように、アノード開口70aは、矩形の基板WFの形状に対応した矩形に形成される。
【0035】
図5に示すように、アノードマスク70は、矩形のアノード開口70aの各辺に設けられた複数の遮蔽部材79(遮蔽部材79-1,79-2,79-3,79-4)を有する。各遮蔽部材79は、アノード開口70aの中心に近づく方向および遠ざかる方向に移動可能になっている。また、
図5に示すように、めっき装置10は、矩形のアノード開口70aの各辺に対してそれぞれ配置された複数(4個)の測定電極74-1,74-2,74-3,74-4を含む。
【0036】
めっき装置10は、計測器76によって計測された複数の測定電極の電圧に基づいて遮蔽部材79を移動させるように構成された開口調節部材90を有する。開口調節部材90は、アノード21、アノードマスク70、および基板WF(基板ホルダ40)の軸合わせがずれている場合に、アノード開口70aの調節を行うことができる。
【0037】
すなわち、アノード21、アノードマスク70、および基板WF(基板ホルダ40)は、相互に軸合わせされた適切な位置に配置することが求められる。しかしながら、いずれかの部材の配置位置がずれた場合、アノードと基板との間の電場が乱れ、所望のめっき膜厚分布を形成するのが難しくなる。
【0038】
これに対して、開口調節部材90は、アノード開口70aの向かい合う辺の測定電極の電圧の値を比較し、比較結果に基づいて遮蔽部材79-1,79-2,79-3,79-4を移動させてアノード開口70aの位置を調節する。例えば、基板ホルダ40が適切な位置よりも低い位置に配置されたとする。この場合、アノードと基板との間の電場が乱れ、測定電極74-1の電圧と測定電極74-3の電圧を比較すると、測定電極74-3の電圧のほうが高くなり得る。開口調節部材90は、この比較結果に基づいて、遮蔽部材79-1,79-3を下方に移動させることによって、アノード開口70aを下方に移動させる。開口調節部材90は、測定電極74-1の電圧と測定電極74-3の電圧が等しくなるまで、遮蔽部材79-1,79-3を下方に移動させることができる。その結果、アノードと基板との間の電場の乱れを抑制し、所望のめっき膜厚分布を形成し易くなる。
【0039】
上記の実施形態では、被めっき面WF1が側方に向くように基板WFをめっき液に浸漬させる、ディップ式のめっき装置を例に説明したが、これに限定されない。本発明は、被めっき面WF1が下方に向くように基板WFをめっき液に浸漬させる、カップ式のめっき装置にも適用することができる。以下、この点について説明する。
【0040】
図6は、一実施形態のめっき装置の全体構成を示す断面図である。上記の実施形態と同様の機能を有する部材については同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、基板ホルダ40は、被めっき面WF1を下方に向けた状態で基板WFを保持するように構成されている。めっき装置10は、アノードマスク70と基板ホルダ40との間に配置され、アノード21側と基板ホルダ40側とを貫通する複数の開口32aを有する、抵抗体32(電場調節部材)を有する。抵抗体32は、一例として複数のパンチング開口が形成されたパンチングプレートとすることができるが、これに限定されない。
【0042】
本実施形態によれば、上記の実施形態と同様に、めっき装置10は、計測器76によって基準電極75に対する測定電極74の電圧を計測することができるので、アノード21と基板WFとの間に形成される電場の乱れを検出することができる。また、めっき装置10は、計測器76によって計測された電圧の時間変化に基づいてアノードマスク70または抵抗体32(電場調節部材)の破損を検出するように構成された検出部材80を有する。検出部材80は、測定電極74の電圧が正常状態に対して変化したことを検出した場合には、測定電極74の近傍に配置された絞り羽根72の破損の可能性を示唆する警報を発出することができる。また、検出部材80は、警報を発出するとともに、めっき装置10の運転を停止することができる。
【0043】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0044】
本願は、一実施形態として、めっき液を収容するためのめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、被めっき面が前記アノードと対向するように基板を保持するための基板ホルダと、前記アノードと前記基板ホルダとの間に配置されたアノードマスクであって、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通するアノード開口を有し、前記アノード開口の大きさを調節可能に構成された、アノードマスクと、前記アノードマスクと前記基板ホルダとの間に配置された電場調節部材と、前記アノードマスクと前記電場調節部材との間に配置された測定電極と、前記めっき槽に収容されためっき液中に配置される基準電極と、前記基準電極と前記測定電極との間の電圧を計測するための計測器と、を含む、めっき装置を開示する。
【0045】
また、本願は、一実施形態として、前記測定電極は、前記アノードの中心と前記基板の中心を結ぶ仮想軸を中心とした円周上に等間隔に配置された複数の測定電極を含む、めっき装置を開示する。
【0046】
また、本願は、一実施形態として、前記複数の測定電極は、前記アノードマスクの前記基板ホルダ側の面に配置される、めっき装置を開示する。
【0047】
また、本願は、一実施形態として、前記計測器によって計測された電圧の時間変化に基づいて、前記アノードマスクまたは前記電場調節部材の破損を検出するように構成された検出部材をさらに含む、めっき装置を開示する。
【0048】
また、本願は、一実施形態として、前記アノード開口は、前記基板ホルダに保持された矩形の基板の形状に対応した矩形に形成され、前記複数の測定電極はそれぞれ、矩形のアノード開口の各辺に対して配置され、前記アノードマスクは、矩形のアノード開口の各辺に設けられた複数の遮蔽部材を含み、前記計測器によって計測された電圧に基づいて、前記複数の遮蔽部材を前記アノード開口の中心に近づく方向または遠ざかる方向に移動させるように構成された開口調節部材をさらに含む、めっき装置を開示する。
【0049】
また、本願は、一実施形態として、前記基板ホルダは、被めっき面を側方に向けた状態で基板を保持するように構成され、前記電場調節部材は、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する単一のレギュレーション開口を有するレギュレーションプレートを含む、めっき装置を開示する。
【0050】
また、本願は、一実施形態として、前記基板ホルダは、被めっき面を下方に向けた状態で基板を保持するように構成され、前記電場調節部材は、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する複数の開口を有する抵抗体を含む、めっき装置を開示する。
【符号の説明】
【0051】
10 めっき装置
21 アノード
30 レギュレーションプレート
30a レギュレーション開口
32 抵抗体
32a 開口
40 基板ホルダ
50 めっき槽
70 アノードマスク
70a アノード開口
74 測定電極
75 基準電極
76 計測器
79 遮蔽部材
80 検出部材
90 開口調節部材
Q めっき液
WF 基板
WF1 被めっき面
【要約】
アノードと基板との間に形成される電場の乱れを検出する。
めっき装置10は、めっき液Qを収容するためのめっき槽50と、めっき槽50内に配置されたアノード21と、被めっき面WF1がアノード21と対向するように基板WFを保持するための基板ホルダ40と、アノード21と基板ホルダ40との間に配置されたアノードマスク70であって、アノード21側と基板ホルダ40側とを貫通するアノード開口70aを有し、アノード開口70aの大きさを調節可能に構成された、アノードマスク70と、アノードマスク70と基板ホルダ40との間に配置されたレギュレーションプレート30と、アノードマスク70とレギュレーションプレート30との間に配置された測定電極74と、めっき槽50に収容されためっき液Q中に配置される基準電極75と、基準電極75と測定電極74との間の電圧を計測する計測器76と、を含む。