(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】保護部材の設置方法、被加工物の加工方法、保護部材の製造方法及び被加工物の保護部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240329BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240329BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240329BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240329BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240329BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240329BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240329BHJP
C09J 5/06 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
H01L21/78 M
B24B41/06 L
B24B49/12
B24B7/04 B
C09J201/00
C09J11/04
C09J5/06
(21)【出願番号】P 2020044097
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有福 法久
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌照
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章文
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-156330(JP,A)
【文献】特開2004-210867(JP,A)
【文献】特開2019-057526(JP,A)
【文献】特開2015-126063(JP,A)
【文献】特開2010-155298(JP,A)
【文献】特開2016-225375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
H01L 21/301
B24B 41/06
B24B 49/12
B24B 7/04
C09J 201/00
C09J 11/04
C09J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被加工物の一方の面を保護する保護部材の設置方法であって、
支持テーブルの平坦な支持面に、塊状、紐状、粒状または流動体状の熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給ステップと、
該熱可塑性樹脂を加熱して軟化させながら該支持面に沿って押し広げてシート状に成形し、該支持面にシート状の該熱可塑性樹脂の保護部材を形成する保護部材形成ステップと、
シート状の該保護部材の一方の面に被加工物の一方の面を密着させ、密着した該保護部材を加熱して被加工物に接着する保護部材接着ステップと、
該保護部材接着ステップで加熱した該保護部材を冷却する接着後冷却ステップと、を備え、
該熱可塑性樹脂は、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラーが混合されている保護部材の設置方法。
【請求項2】
該保護部材接着ステップで該保護部材を加熱する条件は、該保護部材形成ステップで該熱可塑性樹脂を加熱する条件に比べ、温度が低いまたは加熱時間が短い請求項1に記載の保護部材の設置方法。
【請求項3】
該保護部材形成ステップは、シート状に成形した保護部材を冷却する成形後冷却ステップを備える請求項1または2に記載の保護部材の設置方法。
【請求項4】
該保護部材形成ステップでは、該熱可塑性樹脂を該支持面と平行な平坦な押圧面で押し広げる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の保護部材の設置方法。
【請求項5】
被加工物の一方の面は凹凸の構造物を備え、該保護部材形成ステップで成形したシート状の該保護部材の厚さは、該凹凸の高さより厚く成形されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の保護部材の設置方法。
【請求項6】
該保護部材形成ステップで該熱可塑性樹脂を成形する時より、該保護部材接着ステップで該熱可塑性樹脂を被加工物に接着する時の方が、該熱可塑性樹脂の押圧量が少ない請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の保護部材の設置方法。
【請求項7】
被加工物は、半導体デバイスを表面に備える半導体ウェーハである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の保護部材の設置方法。
【請求項8】
一方の面に保護部材が接着された板状の被加工物の該保護部材側をチャックテーブルの保持面で吸引保持し、該被加工物を他方の面側から加工する被加工物の加工方法であって、該保護部材は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の保護部材の設置方法で該被加工物に設置される被加工物の加工方法。
【請求項9】
該保護部材を介して該被加工物の該一方の面に形成されたパターンをカメラユニットで撮影し、該パターンの位置に基づいて該被加工物が加工される請求項8に記載の被加工物の加工方法。
【請求項10】
板状の被加工物の一方の面を保護する保護部材の製造方法であって、
支持テーブルの平坦な支持面に、塊状、紐状、粒状または流動体状の熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給ステップと、
該熱可塑性樹脂を加熱して軟化させながら該支持面に沿って押し広げてシート状に成形し、該支持面にシート状の該熱可塑性樹脂の保護部材を形成する保護部材形成ステップと、を備え、
該熱可塑性樹脂は、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラーが混合されている保護部材の製造方法。
【請求項11】
該保護部材形成ステップでは、該シート状に成形した該熱可塑性樹脂を冷却する成形後冷却ステップを備える請求項10に記載の保護部材の製造方法。
【請求項12】
塊状、紐状、粒状または流動体状の熱可塑性樹脂を、加熱しながら押し広げて
1層のシート状に成形し、被加工物の一方の面に加熱されて接着され
て、被加工物の該一方の面を途切れなく覆う被加工物の保護部材であって、
該熱可塑性樹脂は、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラーが混合されている被加工物の保護部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護部材の設置方法、被加工物の加工方法、保護部材の製造方法及び被加工物の保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハや樹脂パッケージ基板、セラミックス基板、ガラス基板など各種板状の被加工物を研削して薄化したり、切削ブレードやレーザー光線で分割したりする際、被加工物はチャックテーブルに保持される。被加工物は、加工時に保持される面がチャックテーブルと接触して損傷したり汚れたりするのを防ぐため、又は分割後に一括搬送が出来るように、保持される面に粘着テープが貼着されるのが一般的である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、粘着テープを剥離する際に粘着材等の残渣が被加工物に残ってしまうという問題があった。また、加工中に粘着テープの糊層がクッションとなってしまい、被加工物が振動して、欠けたり、チップが飛んだりする可能性があるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物から剥離されても被加工物に残渣として残らず、加工中にクッションとなってしまうことにより被加工物が欠けたりチップが飛んだりすることを低減する保護部材の設置方法、被加工物の加工方法、保護部材の製造方法及び被加工物の保護部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の保護部材の設置方法は、板状の被加工物の一方の面を保護する保護部材の設置方法であって、支持テーブルの平坦な支持面に、塊状、紐状、粒状または流動体状の熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給ステップと、該熱可塑性樹脂を加熱して軟化させながら該支持面に沿って押し広げてシート状に成形し、該支持面にシート状の該熱可塑性樹脂の保護部材を形成する保護部材形成ステップと、シート状の該保護部材の一方の面に被加工物の一方の面を密着させ、密着した該保護部材を加熱して被加工物に接着する保護部材接着ステップと、該保護部材接着ステップで加熱した該保護部材を冷却する接着後冷却ステップと、を備え、該熱可塑性樹脂は、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラーが混合されている。
【0007】
該保護部材接着ステップで該保護部材を加熱する条件は、該保護部材形成ステップで該熱可塑性樹脂を加熱する条件に比べ、温度が低いまたは加熱時間が短くてもよい。
【0008】
該保護部材形成ステップは、シート状に成形した保護部材を冷却する成形後冷却ステップを備えてもよい。
【0009】
該保護部材形成ステップでは、該熱可塑性樹脂を該支持面と平行な平坦な押圧面で押し広げてもよい。
【0010】
被加工物の一方の面は凹凸の構造物を備え、該保護部材形成ステップで成形したシート状の該保護部材の厚さは、該凹凸の高さより厚く成形されていてもよい。
【0011】
該保護部材形成ステップで該熱可塑性樹脂を成形する時より、該保護部材接着ステップで該熱可塑性樹脂を被加工物に接着する時の方が、該熱可塑性樹脂の押圧量が少なくてもよい。
【0012】
被加工物は、半導体デバイスを表面に備える半導体ウェーハであってもよい。
【0013】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の加工方法は、一方の面に保護部材が接着された板状の被加工物の該保護部材側をチャックテーブルの保持面で吸引保持し、該被加工物を他方の面側から加工する被加工物の加工方法であって、該保護部材は、上記のいずれかの保護部材の設置方法で該被加工物に設置される。
【0014】
該保護部材を介して該被加工物の該一方の面に形成されたパターンをカメラユニットで撮影し、該パターンの位置に基づいて該被加工物が加工されてもよい。
【0015】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の保護部材の製造方法は、板状の被加工物の一方の面を保護する保護部材の製造方法であって、支持テーブルの平坦な支持面に、塊状、紐状、粒状または流動体状の熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給ステップと、該熱可塑性樹脂を加熱して軟化させながら該支持面に沿って押し広げてシート状に成形し、該支持面にシート状の該熱可塑性樹脂の保護部材を形成する保護部材形成ステップと、を備え、該熱可塑性樹脂は、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラーが混合されている。
【0016】
該保護部材形成ステップでは、該シート状に成形した該熱可塑性樹脂を冷却する成形後冷却ステップを備えてもよい。
【0017】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の保護部材は、塊状、紐状、粒状または流動体状の熱可塑性樹脂を、加熱しながら押し広げて1層のシート状に成形し、被加工物の一方の面に加熱されて接着されて、被加工物の該一方の面を途切れなく覆う被加工物の保護部材であって、該熱可塑性樹脂は、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラーが混合されている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明は、被加工物から剥離されても被加工物に残渣として残らず、加工中にクッションとなってしまうことにより被加工物が欠けたりチップが飛んだりすることを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法の対象の被加工物を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る保護部材の設置方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2の樹脂供給ステップを説明する斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2の保護部材形成ステップを説明する断面図である。
【
図5】
図5は、
図2の保護部材形成ステップを説明する断面図である。
【
図6】
図6は、
図2の保護部材形成ステップを説明する断面図である。
【
図7】
図7は、
図2の保護部材接着ステップを説明する断面図である。
【
図8】
図8は、
図2の保護部材接着ステップを説明する断面図である。
【
図9】
図9は、
図2の保護部材接着ステップを説明する断面図である。
【
図10】
図10は、
図2の接着後冷却ステップの後に実施する保護部材カットステップを説明する断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の一例である研削加工を示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る保護部材の設置方法を説明する断面図である。
【
図13】
図13は、変形例1に係る被加工物の加工方法の一例である切削加工を示す断面図である。
【
図14】
図14は、変形例1に係る被加工物の加工方法の一例であるレーザー加工を示す断面図である。
【
図15】
図15は、実施形態3に係る保護部材の設置方法を説明する断面図である。
【
図16】
図16は、実施形態3に係る被加工物の加工方法の一例である研削加工を示す断面図である。
【
図17】
図17は、実施形態4に係る保護部材の設置方法を説明する断面図である。
【
図18】
図18は、実施形態4に係る保護部材の設置方法を説明する断面図である。
【
図19】
図19は、変形例2に係る被加工物の加工方法の一例である切削加工を示す断面図である。
【
図20】
図20は、変形例2に係る被加工物の加工方法の一例であるレーザー加工を示す断面図である。
【
図21】
図21は、変形例3に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法の対象の被加工物を示す斜視図である。
【
図22】
図22は、変形例3に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法の対象の被加工物を示す斜視図である。
【
図23】
図23は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【
図24】
図24は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【
図25】
図25は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【
図26】
図26は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【
図27】
図27は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【
図28】
図28は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【
図29】
図29は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【
図30】
図30は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【
図31】
図31は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【
図32】
図32は、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0021】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る保護部材の設置方法、被加工物の加工方法、保護部材の製造方法及び被加工物の保護部材を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法の対象の被加工物1を示す斜視図である。被加工物1は、実施形態1では、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素、SiC基板、GaN基板、LT基板、単結晶ダイヤモンド基板などを基板2とする円板状の半導体ウェーハである。被加工物1は、実施形態1では、
図1に示すように、交差(実施形態1では、直交)する複数の分割予定ライン3で区画された表面4の各領域にそれぞれ半導体デバイス5が形成されている。なお、被加工物1の半導体ウェーハは、本発明ではこれに限定されず、半導体デバイス5が形成されていてもいなくても良い。被加工物1は、半導体デバイス5の表面に複数の電極バンプ6が搭載されている。電極バンプ6は、半導体デバイス5の表面から突出している。半導体デバイス5は、表面4に電極バンプ6が搭載されていることで、凹凸の構造物を備えている。被加工物1及び半導体デバイス5は、表面4とは反対側の裏面7が平坦に形成されている。被加工物1は、各分割予定ライン3に沿って分割されて、個々の半導体デバイス5に分割される。なお、実施形態1において、被加工物1は、半導体デバイス5の表面に電極バンプ6が搭載されて凹凸の構造物を備えているが、本発明ではこれに限定されず、表面に凹凸の構造物を備えていなくてもよい。また、被加工物1は、本発明では、半導体デバイス5を表面4に備える半導体ウェーハに限定されず、光デバイスを表面に備える光デバイスウェーハであってもよい。
【0022】
次に、実施形態1に係る保護部材の設置方法、保護部材の製造方法及び被加工物の保護部材を説明する。
図2は、実施形態1に係る保護部材の設置方法を示すフローチャートである。保護部材の設置方法は、板状の被加工物1の一方の面である表面4を保護する保護部材101(
図5及び
図6等参照)の設置方法であって、
図2に示すように、樹脂供給ステップ1011と、保護部材形成ステップ1012と、保護部材接着ステップ1013と、接着後冷却ステップ1014と、を備える。また、保護部材の製造方法は、実施形態1に係る被加工物1の保護部材101を製造する方法、すなわち板状の被加工物1の一方の面である表面4を保護する保護部材101の製造方法であって、保護部材の設置方法と同様の、樹脂供給ステップ1011と、保護部材形成ステップ1012と、を備える。
【0023】
なお、保護部材の設置方法は、本発明では、被加工物1の表面4を保護する保護部材101の設置方法に限定されず、被加工物1の裏面7を保護する保護部材101の設置方法であってもよい。また、保護部材の製造方法は、本発明では、被加工物1の表面4を保護する保護部材101の製造方法に限定されず、被加工物1の裏面7を保護する保護部材101の製造方法であってもよい。また、被加工物1の保護部材101は、本発明では、被加工物1の表面4を保護する保護部材101に限定されず、被加工物1の裏面7を保護する保護部材101であってもよい。
【0024】
図3は、
図2の樹脂供給ステップ1011を説明する斜視図である。樹脂供給ステップ1011は、
図3に示すように、支持テーブル10の平坦な支持面11に、熱可塑性樹脂100を供給するステップである。樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、実施形態1では塊状であるが、本発明ではこれに限定されず、紐状、粒状または流動体状であってもよい。
【0025】
樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、被加工物1の表面4の全面において電極バンプ6を覆うことが可能な体積を有する。すなわち、樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、後述する保護部材接着ステップ1013で、表面4を途切れなく覆う保護部材101を形成することが可能であり、電極バンプ6によって形成された表面4上の凹凸より厚い保護部材101を形成することが可能な体積を有する。
【0026】
樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、実施形態1では、軟化点より低温の硬化状態では、流動性を有さない剛体であり、実質的に粘着剤のような粘着性を有さないため、被加工物1における表面4及び電極バンプ6等と粘着することが抑制される。また、樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、軟化点より高温の軟化状態では、流動性を有するものの、実質的に粘着剤のような粘着性は概ね見られないため、被加工物1における表面4及び電極バンプ6等と粘着することが低減される。
【0027】
樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、具体的には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ビニル系樹脂、ポリアセタール、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン),ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン-6,ナイロン-66,ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレン、エーテルポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル-無水マレイン酸三元共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化樹脂、並びに、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0028】
樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100に使用される上記のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を構成する不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、及び、無水イタコン酸等が例示される。ここで、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸の2元共重合体のみならず、更に他の単量体が共重合された多元共重合体を包含するものである。エチレン-不飽和カルボン酸共重合体に共重合されていてもよい上記他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステルなどが例示される。
【0029】
樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100の軟化点は、実施形態1では、0℃以上300℃以下の範囲内の温度である。樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、上で例示した化合物群が使用されるので、軟化点が0℃以上300℃以下の範囲内の温度となる。樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、上で例示した異なる種類の化合物を混ぜることで、軟化点を調整することができ、例えば、軟化点をドライ研磨加工中の被加工物1の温度である40℃~100℃程度よりも高い温度に調整することで、ドライ研磨加工中に軟化状態となることを防止することができる。
【0030】
樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラーが混合されている。フィラーは、実施形態1では、粒状であるが、本発明ではこれに限定されず、繊維のような柱状等の形状を有していてもよい。なお、本明細書では、フィラーの大きさは、フィラーの粒子径で定義される。粒子径の表し方には、幾何学的径、相当径等の既知の手法がある。幾何学的径には、フェレー(Feret)径、定方向最大径(即ち、Krummbein径)、Martin径、ふるい径等があり、相当径には、投影面積円相当径(即ち、Heywood径)、等表面積球相当径、等体積球相当径、ストークス径、光散乱径等がある。フィラーが繊維のような柱状等の形状を有している場合でも、前述のフィラーが粒状である場合と同様の方法で、フィラーの大きさを定義できる。また、本明細書では、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラーのことを、nmオーダーの大きさのフィラーであるとして、ナノフィラーと適宜称する。
【0031】
このようなナノフィラーが混合された熱可塑性樹脂100を用いて製造される被加工物1の保護部材101は、混合されているナノフィラーの大きさが可視光の波長よりも小さく、可視光を吸収または散乱できないため、透明に近くなり、保護部材101越しに被加工物1を観察する事を妨げないため、半導体デバイス5のデバイス面側に固定した保護部材101越しに半導体デバイス5を観察するアライメントが容易に実施出来る。なお、400nmより大きいフィラーが混合された熱可塑性樹脂を用いて製造される被加工物の保護部材は、混合されているフィラーが可視光を吸収または散乱する割合が大きくなってしまい、透明度が落ちてしまう可能性がある。
【0032】
樹脂供給ステップ1011で供給する熱可塑性樹脂100は、全フィラーのうちナノフィラーが混合された割合が50wt%(質量%)を超えて含まれることが好ましい。なお、例えば、全フィラーのうち大きさが500nmのフィラーをそれぞれ40wt%、50wt%、60wt%の割合で混合したところ、40wt%の場合には、保護部材101越しに保護した被加工物1の半導体デバイス5の視認性が良好であったが、50wt%、60wt%の場合には、保護部材101越しに保護した被加工物1の半導体デバイス5の視認はできるものの、40wt%の場合と比較してその視認性が低下した。
【0033】
樹脂供給ステップ1011で供給される熱可塑性樹脂100に混合されるナノフィラーは、熱可塑性樹脂100より熱膨張係数が小さい充填剤である。樹脂供給ステップ1011で供給される熱可塑性樹脂100に混合されるナノフィラーは、熱可塑性樹脂100より熱膨張係数が小さい無機充填剤または有機充填剤が好適に使用される。熱可塑性樹脂100は、このようなナノフィラーが混合されることにより、保護部材101が、後述する成形後冷却ステップや接着後冷却ステップ1014で冷却する際に収縮することを低減及び防止することができ、これに伴い、保護部材101を設置した被加工物1が撓んだり変形したりすることを防止することができる。
【0034】
熱可塑性樹脂100に混合されるナノフィラーは、無機充填剤であることが好ましく、具体的には、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マイカ、ガラス、石英、雲母等が好適に使用される。また、熱可塑性樹脂100に混合されるナノフィラーは、上記の2種類以上を混合して使用しても良い。熱可塑性樹脂100に混合されるナノフィラーは、上記した無機充填剤のうち、溶融シリカや結晶性シリカ等のシリカ類が使用されることが好ましく、この場合、ナノフィラーのコストを好適に抑制することができる。
【0035】
熱可塑性樹脂100のうちナノフィラーの含有割合(混合割合)は、0.01wt%~90wt%の範囲で変更可能であり、ナノフィラーの含有割合が多い方が、保護部材101の熱膨張係数が小さくなり、ドレッシング効果も高くなるが、多すぎると保護部材101の全体が脆くなる可能性があるため、適宜の割合を選択して保護部材101を形成する。
【0036】
樹脂供給ステップ1011で供給される熱可塑性樹脂100には、フィラーの他に、酸化防止剤、光安定剤、バインダー樹脂、帯電防止剤、シランカップリング剤、離型剤、界面活性剤、染料、顔料、蛍光剤、紫外線吸収剤等の種々の配合剤を必要に応じて添加することができる。
【0037】
図4、
図5及び
図6は、
図2の保護部材形成ステップ1012を説明する断面図である。保護部材形成ステップ1012は、樹脂供給ステップ1011の後に実施される。保護部材形成ステップ1012は、
図4、
図5及び
図6に示すように、樹脂供給ステップ1011で供給した熱可塑性樹脂100を加熱して軟化させながら支持面11に沿って押し広げてシート状に成形し、支持面11にシート状の熱可塑性樹脂100の保護部材101を形成するステップである。
【0038】
保護部材形成ステップ1012では、まず、支持テーブル10の内部に備えられた熱源12により、支持面11側から熱可塑性樹脂100を加熱して軟化させる。保護部材形成ステップ1012では、また、
図4に示すように、押圧部材20の平坦な押圧面21を、支持面11側とは反対側から熱可塑性樹脂100に向けて接近させて接触させる。保護部材形成ステップ1012では、また、押圧部材20の内部に備えられた熱源22により、押圧面21側から熱可塑性樹脂100をさらに加熱して軟化させる。
【0039】
保護部材形成ステップ1012では、このように熱源12,22により熱可塑性樹脂100を加熱して軟化させながら、
図5に示すように、支持面11と平行にした押圧面21で支持面11上の熱可塑性樹脂100を支持面11に沿って押し広げて、シート状に成形することで、支持面11にシート状の熱可塑性樹脂100の保護部材101を形成する。保護部材形成ステップ1012では、支持面11と押圧面21とがともに平坦で互いに平行であるので、一方の面103と他方の面104とがともに平坦で互いに平行なシート状の保護部材101を形成する。保護部材形成ステップ1012では、実施形態1では、例えば、熱源12,22により150℃で10分間加熱しながら、支持テーブル10及び押圧部材20により加圧して、熱可塑性樹脂100をシート状に成形する。
【0040】
樹脂供給ステップ1011及び保護部材形成ステップ1012で使用する支持テーブル10は、支持面11に離型材料が被覆されることが好ましく、この場合、支持面11に軟化した熱可塑性樹脂100が粘着する可能性をさらに抑制することができる。同様に、保護部材形成ステップ1012で使用する押圧部材20は、押圧面21に離型材料が被覆されることが好ましく、この場合、押圧面21に軟化した熱可塑性樹脂100が粘着する可能性をさらに抑制することができる。支持面11及び押圧面21に被覆される離型材料としては、フッ素樹脂が好適なものとして例示される。他にも、離型シートとして機能する平坦な樹脂シートを支持面11及び押圧面21に配置しておき、シート状の保護部材101を形成後に、この樹脂シートを保護部材101からめくって剥離しても良い。なお、支持面11及び押圧面21に配置する樹脂シートは、表面に離型材料が被覆されていることが好ましい。
【0041】
保護部材形成ステップ1012では、実施形態1では、熱源12及び熱源22により、支持面11側及び押圧面21側の両側から熱可塑性樹脂100を加熱して軟化しているが、本発明はこれに限定されず、熱源12及び熱源22のうちいずれか一方により、支持面11側及び押圧面21側のうちいずれか一方から熱可塑性樹脂100を加熱して軟化してもよい。なお、保護部材形成ステップ1012では、両方の熱源12,22の温度が同じでも異なっていても良く、低い温度の方にシート状の保護部材101がくっつきやすい特性があるので、次の工程の都合等に合わせて、温度を各々設定しても良い。
【0042】
また、保護部材形成ステップ1012は、減圧チャンバ内で実施してもよく、この場合、シート状の保護部材101の内部に気泡が混入することを抑制できる。
【0043】
保護部材形成ステップ1012は、実施形態1では、シート状に成形した保護部材101を冷却する成形後冷却ステップを備える。このため、実施形態1では、成形後冷却ステップにより、シート状に成形してすぐ後に、保護部材101を構成する熱可塑性樹脂100を硬化させるので、保護部材101の形状を速やかに安定化させることができる。成形後冷却ステップでは、実施形態1では、例えば、熱源12及び熱源22をオフにして熱源12及び熱源22による保護部材101の加熱を停止することにより、保護部材101の冷却を開始し、例えば大気により、保護部材101を大気の温度程度まで冷却する。
【0044】
成形後冷却ステップでは、本発明ではこれに限定されず、熱源12及び熱源22をオフにした後、押圧部材20で保護部材101を加圧した状態で、支持テーブル10及び押圧部材20の内部に設けられた不図示の空冷又は水冷等の冷却機構により、支持面11側及び押圧面21側から保護部材101を冷却してもよい。成形後冷却ステップでは、また、熱源22をオフすることに代えて、押圧部材20を保護部材101から離すことで、熱源22による保護部材101の加熱を停止してもよい。成形後冷却ステップは、保護部材形成ステップ1012で熱源12及び熱源22をそれぞれ熱可塑性樹脂100の加熱及び軟化に使用するか否かに応じて、適宜変更することができる。
【0045】
保護部材形成ステップ1012では、その後、押圧部材20を保護部材101から離し、
図6に示すように、シート状に成形した保護部材101を支持テーブル10の支持面11から剥すことにより、実施形態1に係る被加工物1の保護部材101である、シート状の保護部材101を得る。実施形態1に係るシート状の保護部材101は、上述したように、塊状の熱可塑性樹脂101を、加熱しながら押し広げてシート状に形成したものであり、後述するように、被加工物1の一方の面(実施形態1では表面4)に加熱されて接着されるものである。なお、シート状の保護部材101は、本発明ではこれに限定されず、紐状、粒状または流動体状の熱可塑性樹脂101を、加熱しながら押し広げてシート状に形成したものでもよい。また、シート状の保護部材101は、本発明ではこれに限定されず、被加工物1の裏面7に加熱されて接着されるものであってもよい。
【0046】
実施形態1に係るシート状の保護部材101は、上述したように、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラー(ナノフィラー)が混合された熱可塑性樹脂100を成形して得たものであるので、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラー(ナノフィラー)が混合されているため、上述したように、可視光を吸収または散乱できないため、透明に近くなる等の作用効果が得られる。
【0047】
保護部材形成ステップ1012では、実施形態1では、被加工物1の表面4の全面において電極バンプ6を覆うことが可能な体積の熱可塑性樹脂100をシート状に形成するので、表面4を途切れなく覆う大きさのシート状に、なおかつ、電極バンプ6によって形成された表面4上の凹凸より厚いシート状の保護部材101を形成する。保護部材形成ステップ1012では、実施形態1では、支持テーブル10の上昇量及び押圧部材20の下降量を調整することで、形成するシート状の保護部材101の厚さを調整できる。
【0048】
図7、
図8及び
図9は、
図2の保護部材接着ステップ1013を説明する断面図である。なお、
図7、
図8及び
図9は、電極バンプ6を省略している。保護部材接着ステップ1013は、保護部材形成ステップ1012の後に実施される。保護部材接着ステップ1013は、
図7、
図8及び
図9に示すように、シート状の保護部材101の一方の面103に被加工物1の一方の面である表面4を密着させ、密着した保護部材101を加熱して被加工物1に接着するステップである。
【0049】
保護部材接着ステップ1013では、まず、
図7に示すように、被加工物1を、表面4側を上方に向けて、保護部材密着装置30の真空チャンバ31内の下方の中央領域に設置された支持台32上に載置する。保護部材接着ステップ1013では、次に、シート状の保護部材101の一方の面103を下方に向けて、保護部材101の両端を、真空チャンバ31の側方に支持台32を挟んで形成された一対の貫通穴33に挿通させ、真空チャンバ31の外から所定の力で引っ張る。保護部材接着ステップ1013では、このようにして、シート状の保護部材101を、一方の面103を支持台32上の被加工物1の表面4側に向けて、表面4の上方を覆うように配置する。
【0050】
保護部材接着ステップ1013では、シート状の保護部材101を被加工物1の上方に配置した後、
図7に示すように、真空チャンバ31の上方の中央領域に設けられた第1連通路34と、真空チャンバ31の下方の支持台32よりも外側に設けられた第2連通路35とから、真空チャンバ31内を排気して減圧する。保護部材接着ステップ1013では、この減圧処理により、被加工物1の表面4と保護部材101の一方の面103との間に空気が噛み込まれることを低減及び防止する。保護部材接着ステップ1013では、実施形態1では、例えば、第1連通路34及び第2連通路35に連通して設けられたドライポンプや油回転ポンプ等により、真空チャンバ31内を10
5Pa~10
1Pa程度の低真空に減圧する。
【0051】
保護部材接着ステップ1013では、第1連通路34及び第2連通路35から真空チャンバ31内を排気して減圧した後、
図8に示すように、第2連通路35からの排気を継続した状態で、第1連通路34から真空チャンバ31内にガスを導入する。保護部材接着ステップ1013では、このように、保護部材101の上方の気圧を保護部材101の下方の気圧よりも高くすることで、
図8に示すように、シート状の保護部材101の一方の面103を、保護部材101の下方にある被加工物1の表面4に密着させる。
【0052】
なお、保護部材接着ステップ1013では、シート状の保護部材101と被加工物1との上下方向の位置関係を入れ替えて、被加工物1を上から押圧して、被加工物1の表面4を、被加工物1の下方にあるシート状の保護部材101の一方の面103に密着させてもよい。
【0053】
また、保護部材接着ステップ1013では、被加工物1を支持する支持台32を上昇させて、被加工物1の表面4を、被加工物1の上方にあるシート状の保護部材101の一方の面103に密着させてもよい。この場合、シート状の保護部材101の他方の面104側を所定の支持部材の支持面によって上から押さえつけられていることが好ましい。また、被加工物1を支持する支持台32の内部と、シート状の保護部材101の他方の面104側を支持する支持部材の内部とに、後述する熱源42,52と同様の熱源が備えられていても良い。
【0054】
保護部材接着ステップ1013では、保護部材101の一方の面103に被加工物1の表面4を密着させた後、保護部材101及び被加工物1を保護部材密着装置30の真空チャンバ31内から取り出し、
図9に示すように、被加工物1の他方の面側である裏面7側を吸引保持テーブル40の保持面41に向けて載置し、吸引保持する。ここで、吸引保持テーブル40は、保持面41が設けられかつポーラスセラミックス等から形成された保持部43を備え、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面41で被加工物1を吸引保持する。
【0055】
保護部材接着ステップ1013では、そして、吸引保持テーブル40の内部に備えられた熱源42により、保持面41側から被加工物1を介して保護部材101を加熱して軟化させる。保護部材接着ステップ1013では、また、
図9に示すように、押圧部材20と同様の押圧部材50の平坦な押圧面51を、保持面41側とは反対側から、吸引保持テーブル40で吸引保持した被加工物1の表面4に密着した保護部材101の他方の面104に向けて接近させて接触させる。保護部材接着ステップ1013では、また、押圧部材50の内部に備えられた熱源52により、押圧面51側から保護部材101を加熱して軟化させる。なお、実施形態1では、保護部材形成ステップ1012で使用する押圧部材20と、保護部材接着ステップ1013で使用する押圧部材50とを別々としているが、本発明ではこれに限定されず、同じものを使用しても良い。
【0056】
保護部材接着ステップ1013では、このように熱源42,52により保護部材101を加熱して軟化させながら、
図9に示すように、保持面41と平行にした押圧面51で軟化した保護部材101を被加工物1に押し付けることで、軟化した保護部材101の一方の面103を被加工物1の表面4に接着する。保護部材接着ステップ1013では、保持面41と押圧面51とがともに平坦で互いに平行であるので、保護部材101の露出面である他方の面104と被加工物1の裏面7とが互いに平行になるように、保護部材101を被加工物1に接着する。
【0057】
保護部材接着ステップ1013では、また、軟化した保護部材101が被加工物1の表面4の電極バンプ6に押し付けられて変形し、保護部材101を構成する熱可塑性樹脂100が隣接する電極バンプ6の間の領域に埋め込まれる。保護部材接着ステップ1013では、これにより、保護部材101が、電極バンプ6によって形成された表面4上の凹凸より厚く、なおかつ、被加工物1の表面4を途切れなく覆うものとなる。保護部材接着ステップ1013では、実施形態1では、吸引保持テーブル40の上昇量及び押圧部材50の下降量を調整することで、被加工物1の表面4を覆う保護部材101の厚さを調整できる。
【0058】
保護部材接着ステップ1013では、保護部材101の被加工物1に接着する領域を限定的に熱源42,52により加熱して軟化することが好ましい。このため、熱源42,52は、保護部材101の被加工物1に接着する領域に対向して限定的に設けられていることが好ましい。なお、熱源42は、実施形態1では、
図9に示すように、保護部材101の被加工物1に接着する領域に対向して限定的に設けられている。
【0059】
保護部材接着ステップ1013では、実施形態1では、例えば、熱源42,52により、30℃以上250℃以下、好ましくは40℃以上150℃以下で加熱しながら、吸引保持テーブル40及び押圧部材50により加圧して、保護部材101を被加工物1に接着する。
【0060】
実施形態1では、保護部材接着ステップ1013で保護部材101を被加工物1に接着するときの保護部材101を加熱する条件と、保護部材形成ステップ1012で熱可塑性樹脂100をシート状に成形するときの熱可塑性樹脂100を加熱する条件とは、異なる。実施形態1では、保護部材接着ステップ1013で保護部材101を被加工物1に接着するときの保護部材101の加熱温度は、保護部材形成ステップ1012で熱可塑性樹脂100をシート状に成形するときの熱可塑性樹脂100の加熱温度より低いことが好ましい。また、実施形態1では、保護部材接着ステップ1013で保護部材101を被加工物1に接着するときの保護部材101の加熱時間は、保護部材形成ステップ1012で熱可塑性樹脂100をシート状に成形するときの熱可塑性樹脂100の加熱時間より短いことが好ましい。
【0061】
実施形態1では、また、保護部材接着ステップ1013で保護部材101を被加工物1に接着するときの押圧量は、保護部材形成ステップ1012で熱可塑性樹脂100をシート状に成形するときの押圧量より少ないことが好ましい。ここで、保護部材接着ステップ1013で保護部材101を被加工物1に接着するときの押圧量は、保護部材接着ステップ1013で保護部材101を被加工物1に接着するときに被加工物1にかかり続ける単位面積当たりの圧力の総量(所謂力積)のことを指す。また、保護部材形成ステップ1012で熱可塑性樹脂100をシート状に成形するときの押圧量は、熱可塑性樹脂100及び保護部材101にかかり続ける単位面積当たりの圧力の総量(所謂力積)のことを指す。保護部材接着ステップ1013で保護部材101を被加工物1に接着するときの押圧量、及び、保護部材形成ステップ1012で熱可塑性樹脂100をシート状に成形するときの押圧量は、同じ圧力がかかっていても、圧力がかけられた時間が短いほど小さくなる。
【0062】
実施形態1では、保護部材接着ステップ1013で保護部材101を被加工物1に接着するときの方が、保護部材形成ステップ1012で熱可塑性樹脂100をシート状に成形するときより、加熱温度が低い、加熱時間が短い、または、押圧量が少ない。このため、実施形態1では、保護部材接着ステップ1013で被加工物1に加える熱や圧力を抑えることができ、半導体デバイス5の変質や損傷を抑制できる。また、実施形態1では、保護部材接着ステップ1013で保護部材101が変形して被加工物1の外縁に回り込み、被加工物1の加工時に加工を邪魔することを抑制することができる。
【0063】
接着後冷却ステップ1014は、保護部材接着ステップ1013の後に実施される。接着後冷却ステップ1014は、保護部材接着ステップ1013で加熱した保護部材101を冷却するステップである。
【0064】
実施形態1では、接着後冷却ステップ1014により、被加工物1に接着したすぐ後に、保護部材101を構成する熱可塑性樹脂100を硬化させるので、保護部材101の形状を安定化させることができる。接着後冷却ステップ1014では、実施形態1では、例えば、熱源42,52をオフにして熱源42,52による保護部材101の加熱を停止することにより、保護部材101の冷却を開始し、例えば大気により、保護部材101を大気の温度程度まで冷却する。
【0065】
接着後冷却ステップ1014では、本発明ではこれに限定されず、熱源42,52をオフにした後、押圧部材50で保護部材101を加圧した状態で、吸引保持テーブル40及び押圧部材50の内部に設けられた不図示の空冷又は水冷等の冷却機構により、保持面41側及び押圧面51側から保護部材101を冷却してもよい。接着後冷却ステップ1014では、また、熱源52をオフすることに代えて、押圧部材50を保護部材101から離すことで、熱源52による保護部材101の加熱を停止してもよい。接着後冷却ステップ1014は、保護部材接着ステップ1013で熱源42,52をそれぞれ保護部材101の加熱及び軟化に使用するか否かに応じて、適宜変更することができる。
【0066】
接着後冷却ステップ1014の後、押圧部材50を保護部材101から離し、保護部材101を接着した被加工物1を吸引保持テーブル40から取り外す。
【0067】
図10は、
図2の接着後冷却ステップ1014の後に実施する保護部材カットステップを説明する断面図である。なお、
図10は、電極バンプ6を省略している。実施形態1に係る保護部材の設置方法は、
図10に示すように、保護部材101の被加工物1の外周の領域106を切除する保護部材カットステップをさらに備えることが好ましい。保護部材カットステップは、接着後冷却ステップ1014の後に実施される。
【0068】
保護部材カットステップでは、まず、
図10に示すように、保護部材101を接着した被加工物1の裏面7側を、吸引保持テーブル60の保持面61で吸引保持する。ここで、吸引保持テーブル60は、吸引保持テーブル40において、熱源42がなく、保持部43が保持部63に変更されたものである。保持部63は、保持面61側に、被加工物1の外径と同様の直径を有する円環状の溝65が形成されている。
【0069】
保護部材カットステップでは、次に、切除装置70のカッター71で、吸引保持テーブル60の保持面61で保持された被加工物1に形成された保護部材101のうち、被加工物1の外縁から径方向にはみ出した部分である外周の領域106を切除する。ここで、切除装置70は、被加工物1の外縁に向けてカッター71を保持する円板72と、円板72を軸心周りに回転駆動する不図示の回転駆動源とを備え、カッター71の刃先を溝65に挿入した状態で回転駆動源により円板72を軸心周りに回転させることで、カッター71を被加工物1の外縁に沿って回転移動させて、外周の領域106を切除する。保護部材カットステップでは、このように、保護部材101が表面4の全面を覆って接着された被加工物1を得る。
【0070】
次に、実施形態1に係る被加工物の加工方法を説明する。
図11は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の一例である研削加工を示す断面図である。なお、
図11は、電極バンプ6を省略している。実施形態1に係る被加工物の加工方法は、
図10に示すように、実施形態1に係る保護部材の設置方法で表面4に保護部材101が接着された被加工物1の保護部材101側(他方の面104側)を研削装置80のチャックテーブル85の保持面86で吸引保持し、被加工物1を裏面7側から研削加工するものである。
【0071】
実施形態1に係る被加工物の加工方法では、具体的には、
図11に示すように、被加工物1を保護部材101側から保持したチャックテーブル85を不図示の回転駆動源により軸心周りに回転させつつ、研削装置80の研削液供給部81から被加工物1の裏面7に研削液82を供給しながら、研削装置80に装着された研削砥石83を軸心回りに回転させて被加工物1の裏面7に接触させて研削する。
【0072】
実施形態1に係る保護部材の設置方法は、粘着テープに使用される粘着層と異なり、実質的に粘着剤のような粘着性は概ね見られず、冷却されることで固化して実質的に粘着性を有さない性質を有する保護部材101を被加工物1に接着するので、保護部材101が被加工物1から剥離されても被加工物1に残渣として残らないという作用効果を奏する。また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、上記のような性質を有する保護部材101を被加工物1に接着するので、保護部材101が加工中にクッションとなってしまうことが抑制されるので、加工処理を施すことによって被加工物1が欠ける現象が起きる可能性を低減することができるという作用効果を奏する。また、実施形態1に係る保護部材の製造方法は、上記の性質を有する保護部材101を製造するので、被加工物1に接着することで、上記した実施形態1に係る保護部材の設置方法と同様の作用効果を奏する。
【0073】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、樹脂供給ステップ1011で供給される熱可塑性樹脂100にフィラーが混合されている。このため、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、この方法の結果で得られる被加工物1の保護部材101が、混合されたフィラーの効果により、冷却時に収縮することを低減及び防止することができ、これに伴い、被加工物1と熱可塑性樹脂100との間の熱膨張係数差に起因して被加工物1が撓んだり変形したりすることを防止することができるという作用効果を奏する。
【0074】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、樹脂供給ステップ1011で供給される熱可塑性樹脂100に大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラー(ナノフィラー)が混合されている。このため、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、この方法の結果で得られる被加工物1の保護部材101が、混合されているナノフィラーの大きさが可視光の波長よりも小さく、可視光を吸収または散乱できないため、透明に近くなり、保護部材101越しに被加工物1を観察する事を妨げないため、半導体デバイス5のデバイス面側に固定した保護部材101越しに半導体デバイス5を観察するアライメントが容易に実施出来るという作用効果を奏する。
【0075】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、保護部材接着ステップ1013で保護部材101を被加工物1に接着するときの方が、保護部材形成ステップ1012で熱可塑性樹脂100をシート状に成形するときより、加熱温度が低い、加熱時間が短い、または、押圧量が少ない。このため、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、保護部材接着ステップ1013で被加工物1に加える熱や圧力を抑えることができるという作用効果を奏する。また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、保護部材接着ステップ1013で保護部材101が変形して被加工物1の外縁に回り込むことを抑制することができるという作用効果を奏する。
【0076】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、保護部材形成ステップ1012が、シート状に成形した保護部材101を冷却する成形後冷却ステップを備える。このため、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、シート状に成形してすぐ後に、保護部材101を構成する熱可塑性樹脂100を硬化させるので、保護部材101の形状を速やかに安定化させることができるという作用効果を奏する。また、実施形態1に係る保護部材の製造方法は、上記のように形状を速やかに安定化させた保護部材101を製造することができるという作用効果を奏する。
【0077】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、保護部材形成ステップ1012では、熱可塑性樹脂100を、被加工物1の表面4を途切れなく覆う大きさのシート状の保護部材101に成形する。このため、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、保護部材101により、被加工物1の表面4を全面に渡って途切れなく保護し、保護部材101側で被加工物1を平坦な状態でより強力に固定することができるという作用効果を奏する。
【0078】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、保護部材形成ステップ1012では、熱可塑性樹脂100を支持面11と平行で平坦な押圧面21で押し広げる。このため、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、一方の面103と他方の面104とがともに平坦で互いに平行なシート状の保護部材101を被加工物1に接着するので、被加工物1の厚さばらつきに寄らず、被加工物1の上面高さを一定にすることが出来る。更に、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、平坦なチャックテーブル85で保持する際、保護部材101側で被加工物1を平坦な状態でより強力に固定することができるという作用効果を奏する。
【0079】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、被加工物1の表面4が凹凸の構造物を備え、保護部材形成ステップ1012で成形したシート状の保護部材101の厚さが凹凸の高さより厚く成形されている。このため、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、保護部材101により、被加工物1の表面4の凹凸の構造物を全面に渡って途切れなく覆って保護し、保護部材101側で被加工物1を平坦な状態でより強力に固定することができるという作用効果を奏する。
【0080】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、被加工物1が、半導体デバイス5を表面4に備える半導体ウェーハである。このため、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、保護部材101を設置することで、半導体デバイス5の表面4を好適に保護するとともに、保護部材101が半導体デバイス5から剥離されても半導体デバイス5に残渣として残らないという作用効果を奏する。
【0081】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法は、従来に保護部材として用いられる粘着テープと異なり、熱可塑性樹脂100の供給量や押し広げる際の押圧量に応じて、所望の厚さに形成した保護部材101を被加工物1に設置することができるので、任意の厚さの保護部材101を最小の熱可塑性樹脂100で製造出来、厚さ毎に粘着テープを複数所有するよりコスト削減に繋がるという作用効果を奏する。
【0082】
実施形態1に係る保護部材の製造方法及び被加工物の保護部材は、実施形態1に係る保護部材の設置方法に含まれる方法及びその製造物であり、上記した実施形態1に係る保護部材の設置方法と同様の作用効果を奏する。
【0083】
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る保護部材の設置方法で表面4に保護部材101が接着された被加工物1の保護部材101側をチャックテーブル85の保持面86で吸引保持し、被加工物1を他方の面側である裏面7側から加工するものである。このため、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、被加工物1の表面4に保護部材101が接着されているという点で、上記した実施形態1に係る保護部材の設置方法と同様であるため、上記した実施形態1に係る保護部材の設置方法と同様の作用効果を奏する。これにより、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、表面4の凹凸等の形状に密着させつつ、保護部材101側で被加工物1を平坦な状態でより強力に固定することができ、また、糊層が無いので、保護部材101が加工中にクッションとなってしまうことが抑制されることにより、加工処理を施すことによって被加工物1が欠ける現象が起きる可能性を低減することができるので、被加工物1の裏面7側を精度よく加工することができるという作用効果を奏する。
【0084】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る保護部材の設置方法を図面に基づいて説明する。
図12は、実施形態2に係る保護部材の設置方法を説明する断面図である。なお、
図12は、電極バンプ6を省略している。
図12は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
実施形態2に係る保護部材の設置方法は、実施形態1に係る保護部材の設置方法において、保護部材接着ステップ1013を変更したものである。実施形態2に係る保護部材接着ステップ1013では、シート状の保護部材101の一方の面103を被加工物1の表面4に密着させるまでは、実施形態1と同様である。
【0086】
実施形態2に係る保護部材接着ステップ1013では、互いに密着させた保護部材101及び被加工物1を保護部材密着装置30の真空チャンバ31内から取り出した後、
図12に示すように、保護部材101の他方の面104側を、支持テーブル10と同様の支持テーブル110の支持面111に向けて載置する。
【0087】
実施形態2に係る保護部材接着ステップ1013では、そして、支持テーブル110の内部に備えられた熱源112により、支持面111側から保護部材101を加熱して軟化させる。実施形態2に係る保護部材接着ステップ1013では、また、
図12に示すように、押圧部材50の平坦な押圧面51を、支持面111側とは反対側から、支持テーブル110で支持した保護部材101の一方の面103が密着した被加工物1の裏面7に向けて接近させて接触させる。実施形態2に係る保護部材接着ステップ1013では、また、押圧部材50の内部に備えられた熱源52により、押圧面51側から被加工物1を介して保護部材101を加熱して軟化させる。実施形態2に係る保護部材接着ステップ1013では、その後、
図12に示すように、保持面41と平行にした押圧面51で被加工物1を軟化した保護部材101に押し付けることで、被加工物1の表面4を軟化した保護部材101の一方の面103に接着する。
【0088】
実施形態2に係る保護部材接着ステップ1013では、このように、実施形態1に係る保護部材接着ステップ1013において、互いに密着した被加工物1と保護部材101との上下方向の位置関係を入れ替えた状態で、保護部材101の一方の面103を被加工物1の表面4に接着する。
【0089】
以上のような構成を備える実施形態2に係る保護部材の設置方法は、実施形態1に係る保護部材の設置方法において、互いに密着した被加工物1と保護部材101との上下方向の位置関係を入れ替えて保護部材101を被加工物1に接着するものであるので、実施形態1に係る保護部材の設置方法と同様の作用効果を奏する。
【0090】
〔変形例1〕
本発明の実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図13は、変形例1に係る被加工物の加工方法の一例である切削加工を示す断面図である。
図14は、変形例1に係る被加工物の加工方法の一例であるレーザー加工を示す断面図である。なお、
図13及び
図14は、電極バンプ6を省略している。
図13及び
図14は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
変形例1に係る被加工物の加工方法の第1例は、
図11に示す実施形態1に係る研削加工の変形例であり、被加工物1の最外周の側端部分を残し、その内周のみを研削装置80の研削砥石83により裏面7側から研削して、被加工物1を薄化する方法であり、すなわち、被加工物1を裏面7側から所謂TAIKO(登録商標)研削する方法である。
【0092】
変形例1に係る被加工物の加工方法の第2例は、
図13に示すように、チャックテーブル125の保持面126で被加工物1を保護部材101側から保持した状態で、被加工物1の裏面7に切削液を供給しながら、切削装置120に装着された切削ブレード121を軸心回りに回転させて、不図示の駆動源によりチャックテーブル125または切削装置120の切削ブレード121を加工送り、割り出し送り、及び切り込み送りすることで、被加工物1を裏面7側から切削する方法である。変形例1に係る被加工物の加工方法の第2例では、例えば、分割予定ライン3に沿って被加工物1を裏面7側から切削して切削溝129を形成することで、被加工物1をハーフカットしたり、被加工物1を各半導体デバイス5に分割(フルカット)したりする。
【0093】
変形例1に係る被加工物の加工方法の第3例は、
図14に示すように、チャックテーブル135の保持面136で保護部材101側から保持した被加工物1の裏面7に向けて、レーザー照射装置130からレーザー光線131を照射することで、被加工物1を裏面7側からレーザー加工する方法である。なお、変形例1に係る被加工物の加工方法の第3例では、パルス状のレーザー光線131が使用されても良い。変形例1に係る被加工物の加工方法の第3例では、例えば、分割予定ライン3に沿って被加工物1を裏面7側からレーザー光線131を照射して、レーザー加工溝139を形成する。変形例1に係る被加工物の加工方法の第3例では、所謂アブレーション加工をすることで、被加工物1をハーフカットしたり、各半導体デバイス5に分割したりしてもよいし、改質層を内部に形成してもよい。変形例1に係る被加工物の加工方法の第3例は、保護部材101がデバイス面に密着しているので、アブレーション加工で発生したデブリが被加工物1(半導体デバイス5やバンプ6)に付着することを抑制する。
【0094】
変形例1に係る被加工物の加工方法は、第2例の切削加工や第3例のレーザー加工の際、チャックテーブル125,135の上方に設けられた赤外線カメラ等のカメラユニット127,137で被加工物1の裏面7側から表面4側に形成された半導体デバイス5や分割予定ライン3のパターンを撮影し、カメラユニット127,137が撮影したパターンの位置に基づいて加工する領域である分割予定ライン3を割り出してから、被加工物1を加工しても良い。
【0095】
また、変形例1に係る被加工物の加工方法は、第2例の切削加工や第3例のレーザー加工の際、ガラス等の透光性のあるチャックテーブル125,135を用いて被加工物1を保持し、チャックテーブル125,135の下方に設けられたカメラユニット128,138でチャックテーブル125,135越しに保護部材101を介して被加工物1の表面4側に形成された半導体デバイス5や分割予定ライン3のパターンを撮影し、カメラユニット128,138が撮影したパターンの位置に基づいて分割予定ライン3を割り出してから、被加工物1を加工しても良い。なお、このように、チャックテーブル125,135越しに被加工物1の表面4のパターンを撮影して加工する位置を割り出すことは、バックサイドアライメントと称される。
【0096】
なお、変形例1に係る被加工物の加工方法の第2例及び第3例は、被加工物1の表面4に設置した保護部材101側をチャックテーブル125,135の保持面126,136で吸引保持し、被加工物1を裏面7側から切削加工やレーザー加工をする形態に限定されず、被加工物1の裏面7に設置した保護部材101側をチャックテーブル125,135の保持面126,136で吸引保持し、被加工物1を表面4側から切削加工やレーザー加工をしてもよい。
【0097】
以上のような構成を備える変形例1に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法と同様に、実施形態1に係る保護部材の設置方法で表面4に保護部材101が接着された被加工物1の保護部材101側をチャックテーブル85,125,135の保持面86,126,136で吸引保持し、被加工物1を他方の面側である裏面7側から加工するものであるので、実施形態1に係る被加工物の加工方法と同様の作用効果を奏する。
【0098】
また、変形例1に係る被加工物の加工方法は、第2例の切削加工の際、さらに、切削ブレード121でフィラーが混合された保護部材101を切削する場合、フィラーによって切削ブレード121の消耗が促進され、切削ブレード121のドレッシング効果が発生するという作用効果を奏する。
【0099】
また、変形例1に係る被加工物の加工方法は、第2例の切削加工や第3例のレーザー加工の際、透光性のあるチャックテーブル125,135越しに被加工物1の表面4側の半導体デバイス5を撮影して分割予定ライン3を割り出す場合、保護部材101が、粘着テープに使用される半透明な粘着層と異なり、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラー(ナノフィラー)が混合されているため、良好な透光性を有するので、粘着テープを使用する従来と比較して、保護部材101を介して被加工物1の表面4側からカメラユニット128,138で半導体デバイス5を明瞭に撮影して精度よく分割予定ライン3を割り出すことができるという作用効果を奏する。
【0100】
また、変形例1に係る被加工物の加工方法の第3例は、本発明では、被加工物1の裏面7側からレーザー光線131を照射してレーザー加工する形態に限定されず、実施形態1に係る保護部材の設置方法を施した被加工物1に対して、保護部材101を設置した表面4側から、所定のレーザー光線を保護部材101越しに照射することで、被加工物1をアブレーション加工により、レーザー加工溝139を形成したり、または内部に改質層を形成したりしてもよい。変形例1に係る被加工物の加工方法の第3例は、このように保護部材101越しでアブレーション加工をする場合、保護部材101が、粘着テープに使用される半透明な粘着層と異なり、大きさが0.1nm以上400nm以下のフィラー(ナノフィラー)が混合されているため、良好な透光性を有するので、粘着テープを使用する従来と比較して、保護部材101を介して被加工物1の表面4側からカメラユニット137で半導体デバイス5を明瞭に撮影して精度よく分割予定ライン3を割り出すことができるという作用効果を奏する。変形例1に係る被加工物の加工方法の第3例は、さらに、特に半導体デバイス5のデバイス面にアブレーション加工を実施する場合、保護部材101がデバイス面に密着しているので、アブレーション加工で発生したデブリが被加工物1(半導体デバイス5やバンプ6)に付着することを抑制するという作用効果を奏する。
【0101】
また、実施形態1に係る保護部材の設置方法で被加工物1に設置する保護部材101は、実施形態1及び変形例1でそれぞれ記載したように、被加工物1を裏面7側から研削、切削(ダイシング)及びレーザー加工のいずれの加工を実施するときにも、表面4側の半導体デバイス5を保護する。このため、実施形態1に係る保護部材の設置方法、保護部材の製造方法及び変形例1に係る被加工物の加工方法は、被加工物1の半導体デバイス5が形成された表面4側に保護部材101を設置することで、研削と切削、レーザー加工を被加工物1の裏面7側から実施する場合、保護部材101を一度設置すれば、研削から引き続き、切削やレーザー加工を実施することも出来るため、保護部材101の貼り替えを不要とするという作用効果も奏する。実施形態1に係る保護部材の設置方法、保護部材の製造方法及び変形例1に係る被加工物の加工方法は、特に被加工物1がSiC基板上に半導体デバイス5が形成されたデバイスウェーハである場合、デバイス面と反対側の面から切削ブレード121で切り込ませて切断する方が、欠け(チッピング)が小さくなるので、有効である。
【0102】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図15は、実施形態3に係る保護部材の設置方法を説明する断面図である。
図16は、実施形態3に係る被加工物の加工方法の一例である研削加工を示す断面図である。なお、
図15及び
図16は、電極バンプ6を省略している。
図15及び
図16は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0103】
実施形態3に係る保護部材の設置方法は、実施形態1に係る保護部材の設置方法において、保護部材接着ステップ1013を変更したものである。実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、
図15に示すように、保護部材101の被加工物1の外周の領域106が被加工物1を囲む環状フレーム9に接着され、保護部材101で被加工物1を環状フレーム9の開口9-1に固定したフレームユニット200(
図16参照)を形成する。ここで、環状フレーム9の開口9-1の内径は、被加工物1の外径よりも大きい。
【0104】
実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、シート状の保護部材101の一方の面103を被加工物1の表面4に密着させるまでは、実施形態1と同様である。
【0105】
実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、
図15に示すように、吸引保持テーブル140の保持面141の外周の領域に円環状に窪んで形成されたフレーム載置部144に、環状フレーム9を載置する。実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、環状フレーム9をフレーム載置部144に載置した後、互いに密着させた保護部材101及び被加工物1を、被加工物1側を下方に向けて、吸引保持テーブル140の保持面141に載置し、吸引保持する。なお、吸引保持テーブル140は、吸引保持テーブル40と同様の保持部143を備え、吸引保持テーブル40と同様の機構により保持面141で被加工物1を吸引保持する。実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、保持面141で被加工物1を吸引保持することにより、保護部材101の外周の領域106を環状フレーム9上に載置する。
【0106】
なお、実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、環状フレーム9と保護部材101の外周の領域106との間に、環状フレーム9に対する熱可塑性樹脂100の接着を促進する接着促進部材を設けてもよい。また、接着促進部材が環状フレーム9に配置されていても良い。ここで、接着促進部材は、環状フレーム9と熱可塑性樹脂100との間で発生する接着反応を促進する材料で形成されている。
【0107】
実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、環状フレーム9と、互いに密着させた保護部材101及び被加工物1とを吸引保持テーブル140に載置した後、実施形態1と同様に、熱源52及び吸引保持テーブル140の熱源142により保護部材101を加熱して軟化しつつ、保持面141と平行にした押圧面51で軟化した保護部材101を被加工物1及び環状フレーム9に押し付けることで、軟化した保護部材101の一方の面103を被加工物1の表面4及び環状フレーム9に接着する。実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、その後、保護部材101を冷却させ、保護部材101で被加工物1を環状フレーム9の開口9-1に固定したフレームユニット200を得る。なお、実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、環状フレーム9の加熱温度を被加工物1の加熱温度より高くし、環状フレーム9を強固に保護部材101に固定してもよい。
【0108】
実施形態3に係る保護部材接着ステップ1013では、保護部材101の被加工物1及び環状フレーム9にそれぞれ接着する領域を熱源142,52により加熱して軟化する。このため、熱源142,52は、保護部材101の被加工物1及び環状フレーム9にそれぞれ接着する領域にわたって対向して設けられていることが好ましい。なお、熱源142,52は、実施形態3では、
図15に示すように、保護部材101の被加工物1及び環状フレーム9にそれぞれ接着する領域にわたって対向して設けられている。
【0109】
実施形態3に係る被加工物の加工方法は、
図16に示すように、フレームユニット200の環状フレーム9をクランプ157で把持し、フレームユニット200の保護部材101側をチャックテーブル155の保持面156で吸引保持した状態で、チャックテーブル155を不図示の回転駆動源により軸心周りに回転させつつ、研削装置150の研削液供給部151から被加工物1の裏面7に研削液152を供給しながら、研削装置150に装着された研削砥石153を軸心回りに回転させて被加工物1の裏面7に接触させて研削する。
【0110】
以上のような構成を備える実施形態3に係る保護部材の設置方法は、保護部材接着ステップ1013では、保護部材101の被加工物1の外周の領域106が被加工物1を囲む環状フレーム9に接着され、保護部材101で被加工物1を環状フレーム9の開口9-1に固定したフレームユニット200を形成する。このため、実施形態3に係る保護部材の設置方法は、実施形態1に係る保護部材の設置方法と同様の作用効果を奏する。また、実施形態3に係る保護部材の設置方法は、保護部材101を被加工物1に接着する処理を利用して、同時に保護部材101の外周の領域106を環状フレーム9に接着して、被加工物1を環状フレーム9の開口9-1に固定することができるので、被加工物1を環状フレーム9の開口9-1に固定する手間及びコストを大幅に低減することができるという作用効果を奏する。また、実施形態3に係る保護部材の設置方法は、保護部材101が環状フレーム9に固定されることで、曲がるなどの変形が抑制されるため、保護部材101に固定された被加工物1の損傷も抑制される。
【0111】
また、以上のような構成を備える実施形態3に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、加工対象をフレームユニット200に変更したものであるので、実施形態1に係る被加工物の加工方法と同様の作用効果を奏する。
【0112】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係る保護部材の設置方法、保護部材の製造方法、被加工物の加工方法及び被加工物の保護部材を図面に基づいて説明する。
図17及び
図18は、実施形態4に係る保護部材の設置方法を説明する断面図である。なお、
図17及び
図18は、電極バンプ6を省略している。
図17及び
図18は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0113】
実施形態4に係る保護部材の設置方法は、実施形態1に係る保護部材の設置方法において、樹脂供給ステップ1011、保護部材形成ステップ1012及び保護部材接着ステップ1013を変更したものである。また、実施形態4に係る保護部材の製造方法は、実施形態1に係る保護部材の製造方法において、樹脂供給ステップ1011及び保護部材形成ステップ1012を変更したものである。
【0114】
実施形態4に係る樹脂供給ステップ1011では、
図17に示すように、支持テーブル160の平坦な支持面161と、支持面161の外周の領域に円環状に窪んで形成された溝部164とに、熱可塑性樹脂100を供給する。ここで、溝部164の内径は、被加工物1の外径よりも大きい。
【0115】
実施形態4に係る保護部材形成ステップ1012では、
図17に示すように、シート状の保護部材101の外周縁に熱可塑性樹脂100の肉厚部109を形成する。ここで、肉厚部109は、保護部材101よりも厚い部分のことであり、具体的には、実施形態3の環状フレーム9と同等の厚さ分だけ保護部材101よりも厚い。実施形態4に係る保護部材形成ステップ1012では、支持テーブル160の内部に備えられた熱源162と、押圧部材20の熱源22とにより、熱可塑性樹脂100を加熱して軟化させながら、支持面161と平行にした押圧面21で、支持面161上の熱可塑性樹脂100を支持面161に沿って押し広げてシート状に成形しつつ、溝部164内の熱可塑性樹脂100を溝部164に従って肉厚に成形することで、実施形態4に係る被加工物1の保護部材101である、外周縁に熱可塑性樹脂100の肉厚部109を備えたシート状の熱可塑性樹脂100の保護部材101を形成する。
【0116】
なお、実施形態4に係る樹脂供給ステップ1011では、溝部164に環状のフレーム芯材を供給し、実施形態4に係る保護部材接着ステップ1013では、溝部164内で環状のフレーム芯材と熱可塑性樹脂100とにより肉厚部109を形成してもよい。ここで、環状のフレーム芯材は、径方向中央における直径が溝部164と等しく、径方向の幅及び厚みが溝部164より小さい芯材である。
【0117】
実施形態4に係る保護部材接着ステップ1013は、実施形態1に係る保護部材接着ステップ1013において、被加工物1の表面4に密着させ接着する対象を、実施形態4に係る樹脂供給ステップ1011及び保護部材形成ステップ1012で形成された肉厚部109付き保護部材101に変更したものである。
【0118】
実施形態4に係る保護部材接着ステップ1013では、まず、実施形態1と同様に、保護部材密着装置30の真空チャンバ31内で、肉厚部109付き保護部材101のシート状の領域の肉厚部109の突出側の面である一方の面103を被加工物1の表面4に密着させ、互いに密着させた肉厚部109付き保護部材101及び被加工物1を保護部材密着装置30の真空チャンバ31内から取り出す。すなわち、実施形態4に係る保護部材接着ステップ1013では、肉厚部109付き保護部材101の肉厚部109に囲繞された凹部の底面である一方の面103を被加工物1の表面4に密着させる。
【0119】
実施形態4に係る保護部材接着ステップ1013では、
図18に示すように、互いに密着させた肉厚部109付き保護部材101及び被加工物1を、肉厚部109付き保護部材101側を下方に向けて、吸引保持テーブル170の保持面171に載置し、吸引保持する。
【0120】
実施形態4に係る保護部材接着ステップ1013では、互いに密着させた肉厚部109付き保護部材101及び被加工物1を吸引保持テーブル170に載置した後、実施形態1と同様に、押圧部材175の熱源177及び吸引保持テーブル170の熱源172により肉厚部109付き保護部材101を加熱して軟化しつつ、保持面171と平行にした押圧面176で被加工物1を軟化した肉厚部109付き保護部材101に押し付けることで、被加工物1の表面4に軟化した肉厚部109付き保護部材101の一方の面103を接着する。ここで、押圧部材175は、押圧部材50の径方向の幅を、肉厚部109付き保護部材101の肉厚部109に囲繞された凹部の底面の内径よりも小さくしたものである。実施形態4に係る保護部材接着ステップ1013では、その後、保護部材101を冷却させ、保護部材101で被加工物1を肉厚部109の開口109-1に固定したフレームユニット200-2を得る。フレームユニット200-2では、肉厚部109は、フレームユニット200に係る環状フレーム9と同様に、被加工物1及びフレームユニット200-2を補強する補強部材として機能する。
【0121】
実施形態4に係る保護部材接着ステップ1013では、肉厚部109付き保護部材101の被加工物1に接着する領域を熱源172,177により加熱して軟化する。また、実施形態4に係る保護部材接着ステップ1013では、肉厚部109付き保護部材101の肉厚部109が加熱されて軟化して変形することを抑制することが好ましい。このため、熱源172,177は、肉厚部109付き保護部材101の被加工物1に接着する領域に対向して限定的に設けられていることが好ましい。なお、熱源172,177は、実施形態4では、
図18に示すように、肉厚部109付き保護部材101の被加工物1に接着する領域に対向して限定的に設けられている。
【0122】
実施形態4に係る被加工物の加工方法は、実施形態3に係る被加工物の加工方法において、加工対象をフレームユニット200-2に変更したものである。
【0123】
以上のような構成を備える実施形態4に係る保護部材の設置方法は、保護部材形成ステップ1012では、シート状の保護部材101の外周縁に熱可塑性樹脂100の肉厚部109を形成し、保護部材接着ステップ1013では、シート状の領域に被加工物1が接着され、肉厚部109が補強部材として機能する。このため、実施形態4に係る保護部材の設置方法は、実施形態3に係る保護部材の設置方法において、環状フレーム9を肉厚部109に変更したものであるので、実施形態3に係る保護部材の設置方法と同様の作用効果を奏する。また、実施形態4に係る保護部材の製造方法は、上記の肉厚部109付き保護部材101を製造するので、被加工物1に接着することで、上記した実施形態4に係る保護部材の設置方法と同様の作用効果を奏する。
【0124】
また、以上のような構成を備える実施形態4に係る被加工物の加工方法は、実施形態3に係る被加工物の加工方法において、加工対象をフレームユニット200-2に変更したものであるので、実施形態3に係る被加工物の加工方法と同様の作用効果を奏する。
【0125】
〔変形例2〕
本発明の実施形態3の変形例2に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図19は、変形例2に係る被加工物の加工方法の一例である切削加工を示す断面図である。
図20は、変形例2に係る被加工物の加工方法の一例であるレーザー加工を示す断面図である。なお、
図19及び
図20は、電極バンプ6を省略している。
図19及び
図20は、実施形態3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0126】
変形例2に係る被加工物の加工方法の第1例は、
図16に示す実施形態3に係る研削加工の変形例であり、被加工物1の最外周の側端部分を残し、その内周のみを研削装置150の研削砥石153により裏面7側から研削して、被加工物1を薄化する方法であり、すなわち、被加工物1を裏面7側から所謂TAIKO(登録商標)研削する方法である。
【0127】
変形例2に係る被加工物の加工方法の第2例は、
図19に示すように、フレームユニット200の環状フレーム9をクランプ187で把持し、フレームユニット200の保護部材101側をチャックテーブル185の保持面186で吸引保持した状態で、被加工物1の裏面7に切削液を供給しながら、切削装置180に装着された切削ブレード181を軸心回りに回転させて、不図示の駆動源によりチャックテーブル185または切削装置180の切削ブレード181を加工送り、割り出し送り、及び切り込み送りすることで、被加工物1を裏面7側から切削する方法である。変形例2に係る被加工物の加工方法の第2例では、例えば、分割予定ライン3に沿って被加工物1を裏面7側から切削して切削溝189を形成することで、被加工物1をハーフカットしたり、被加工物1を各半導体デバイス5に分割したりする。
【0128】
変形例2に係る被加工物の加工方法の第3例は、
図20に示すように、フレームユニット200の環状フレーム9をクランプ197で把持し、フレームユニット200の保護部材101側をチャックテーブル195の保持面196で吸引保持した状態で、被加工物1の裏面7に向けて、レーザー照射装置190からレーザー光線191を照射することで、被加工物1を裏面7側からレーザー加工する方法である。なお、変形例2に係る被加工物の加工方法の第3例では、パルス状のレーザー光線191が使用されても良い。変形例2に係る被加工物の加工方法の第3例では、例えば、分割予定ライン3に沿って被加工物1を裏面7側からレーザー光線191を照射して、レーザー加工溝199を形成する。変形例2に係る被加工物の加工方法の第3例では、所謂アブレーション加工をすることで、被加工物1をハーフカットしたり、各半導体デバイス5に分割したりしてもよいし、改質層を内部に形成してもよい。
【0129】
なお、変形例2に係る被加工物の加工方法は、加工対象を実施形態4に係るフレームユニット200-2に変更してもよい。
【0130】
以上のような構成を備える変形例2に係る被加工物の加工方法は、実施形態3に係る被加工物の加工方法と同様に、実施形態3に係る保護部材の設置方法で表面4に保護部材101が接着された被加工物1の保護部材101側をチャックテーブル155,185,195の保持面156,186,196で吸引保持し、被加工物1を他方の面側である裏面7側から加工するものであるので、実施形態3に係る被加工物の加工方法と同様の作用効果を奏する。
【0131】
また、変形例2に係る被加工物の加工方法は、変形例1に係る被加工物の加工方法において、加工対象の被加工物1に設置した保護部材101の外周縁に環状フレーム9または肉厚部109をさらに設けたものである。このため、変形例2に係る被加工物の加工方法は、変形例1に係る被加工物の加工方法と同様の変形や応用が可能であり、同様の作用効果を奏する。例えば、変形例2に係る被加工物の加工方法は、変形例1に係る被加工物の加工方法と同様に、第2例の切削加工の際、切削ブレード181でフィラーが混合された保護部材101を切削する場合、フィラーによって切削ブレード181の消耗が促進され、切削ブレード181のドレッシング効果が発生するという作用効果を奏する。
【0132】
また、変形例2に係る被加工物の加工方法は、変形例1に係る被加工物の加工方法と同様に、第2例の切削加工や第3例のレーザー加工の際、チャックテーブル185,195の上方に設けられた赤外線カメラ等のカメラユニット182,192で被加工物1の裏面7側から表面4側に形成された半導体デバイス5や分割予定ライン3のパターンを撮影し、カメラユニット182,192が撮影したパターンの位置に基づいて加工する領域である分割予定ライン3を割り出してから、被加工物1を加工しても良い。また、変形例2に係る被加工物の加工方法は、変形例1に係る被加工物の加工方法と同様に、第2例の切削加工や第3例のレーザー加工の際、ガラス等の透光性のあるチャックテーブル185,195を用いて被加工物1を保持し、チャックテーブル185,195の下方に設けられたカメラユニット183,193でチャックテーブル185,195越しに保護部材101を介して被加工物1の表面4側に形成された半導体デバイス5や分割予定ライン3のパターンを撮影し、カメラユニット183,193が撮影したパターンの位置に基づいて分割予定ライン3を割り出してから、被加工物1を加工しても良い。
【0133】
〔変形例3〕
本発明の変形例3に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図21は、変形例3に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法の対象の被加工物1-2を示す斜視図である。
図22は、変形例3に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法の対象の被加工物1-2を示す斜視図である。
図21は、被加工物1-2を表面4-2側から見た斜視図、
図22は被加工物1-2を裏面7-2側から見た斜視図である。
【0134】
変形例3に係る保護部材の設置方法は、保護部材101の設置対象が
図21及び
図22に示す被加工物1-2であり、被加工物1-2の形状に応じて、使用される支持テーブル10,110,160、押圧部材20、保護部材密着装置30、吸引保持テーブル40,60,140,170、押圧部材50,175及び切除装置70の形状が異なること以外、上記した各実施形態と同じである。変形例3に係る被加工物の加工方法は、加工対象が被加工物1-2であり、被加工物1-2の形状に応じて、使用される研削装置80,150、切削装置120,180及びレーザー照射装置130,190の形状が異なること以外、上記した各実施形態及び各変形例と同じである。
【0135】
被加工物1-2は、変形例3では、絶縁性の絶縁板及び絶縁板の内部に埋設され導電性の金属により構成されたグランドラインを有し、表面4-2及び裏面7-2に電極や各種配線が形成された配線基板2-2を備えたパッケージ基板である。被加工物1-2は、
図21に示すように、交差(変形例3では、直交)する複数の分割予定ライン3-2で区画された表面4-2の各領域にそれぞれ半導体デバイス5-2が形成されている。被加工物1-2は、配線基板2-2の裏面7-2に、各半導体デバイス5-2及び各半導体デバイス5-2にワイヤボンディングにより形成された不図示のワイヤを封止する封止剤8(
図22参照)が形成されている。封止剤8は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、又はポリイミド樹脂等により構成された所謂モールド樹脂である。被加工物1-2は、表面4-2に半導体デバイス5-2が、裏面7-2に封止剤8が、それぞれ形成されていることで、凹凸の構造物を備えている。被加工物1-2は、各分割予定ライン3-2に沿って分割されて、個々の半導体デバイス5-2に分割される。
【0136】
変形例3に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法は、上記した各実施形態及び各変形例において、保護部材101の設置対象及び加工対象を被加工物1-2に変更したものであるので、上記した各実施形態及び各変形例と同様の作用効果を奏する。
【0137】
また、変形例3に係る保護部材の設置方法及び被加工物の加工方法は、保護部材101の形成に熱可塑性樹脂100を使用しているので、熱可塑性樹脂100が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、又はポリイミド樹脂等といった封止剤8に使用されている硬化反応済みの硬化性樹脂とほとんど反応することなく、保護部材101を安定して形成することができるという作用効果を奏する。
【0138】
〔変形例4〕
本発明の変形例4に係る保護部材の設置方法及び保護部材の製造方法を図面に基づいて説明する。
図23から
図32は、それぞれ、変形例4に係る保護部材の設置方法における樹脂供給ステップ1011の一例を示す斜視図である。
図23から
図32は、上記した各実施形態及び各変形例と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0139】
変形例4に係る保護部材の設置方法及び保護部材の製造方法は、樹脂供給ステップ1011が異なること以外、上記した各実施形態と同じである。なお、
図23から
図32は、実施形態1で使用する支持テーブル10の支持面11に熱可塑性樹脂100-2から熱可塑性樹脂100-13を供給する例を示している。
【0140】
変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第1例は、
図23に示すように、粉状の熱可塑性樹脂100-2(熱可塑性樹脂粉末)を供給するものである。変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第2例は、
図24に示すように、1個または複数個のブロック状の熱可塑性樹脂100-3(熱可塑性樹脂ブロック)を供給するものである。変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第3例は、
図25に示すように、ドーナツ状の熱可塑性樹脂100-4(熱可塑性樹脂ドーナツ)を供給するものである。変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第4例は、
図26に示すように、麺状(繊維状)の熱可塑性樹脂100-5(熱可塑性樹脂繊維)を供給するものである。
【0141】
変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第5例は、
図27に示すように、1個または複数個のタブレット状の熱可塑性樹脂100-6(熱可塑性樹脂タブレット)を供給するものである。変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第6例は、
図28に示すように、渦巻き状に配した繊維状(紐状)の熱可塑性樹脂100-7(熱可塑性樹脂渦巻き)を供給するものである。変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第7例は、
図29に示すように、固形の熱可塑性樹脂100を薄くスライスした薄片状の熱可塑性樹脂100-8(熱可塑性樹脂薄片)を供給するものである。変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第8例は、
図30に示すように、樹脂供給部210の四角筒状の供給筒211の内部を通って供給される四角柱状の固形の熱可塑性樹脂100-9を、供給筒211の供給口に沿って設けられたカッター212で切断することで、切ったようかん状の熱可塑性樹脂100-10(熱可塑性樹脂ようかん片)を供給するものである。
【0142】
変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第9例は、
図31に示すように、樹脂供給部220の円筒状の加熱部221の内部を通って供給される円柱状の固形の熱可塑性樹脂100-11を、加熱部221で加熱して軟化させつつ、加熱部221の上方から押圧部222で下方に押し出すことで、軟化して流動体となった熱可塑性樹脂100-12(熱可塑性樹脂流動体)を供給するものである。変形例4に係る樹脂供給ステップ1011の第10例は、
図32に示すように、樹脂供給部230から流動体の熱可塑性樹脂100-13(熱可塑性樹脂流動体)を供給するものである。なお、変形例4に係る樹脂供給ステップ1011で流動体の熱可塑性樹脂100-11,100-13を供給する方法は、本発明では、これらの方法に限定されず、グルーガン等を使用して、熱可塑性樹脂100をグルーガン等に備え付けられた加熱体で加熱して軟化させて、当該グルーガン等から熱可塑性樹脂100を支持テーブル10の支持面11に供給するものとしてもよい。
【0143】
これらの変形例4に係る保護部材の設置方法及び保護部材の製造方法は、上記した各実施形態において、樹脂供給ステップ1011で熱可塑性樹脂100-2から熱可塑性樹脂100-13を供給する方法を変更したものであるので、上記した各実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0144】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記した各実施形態及び各変形例において使用する熱可塑性樹脂100は、紫外線からの回路保護や回路の秘匿を目的として、黒などの暗色に着色されていてもよく、紫外線吸収剤を混練させてもよい。
【符号の説明】
【0145】
1,1-2 被加工物
4,4-2 表面
5,5-2 半導体デバイス
6 電極バンプ
7,7-2 裏面
9 フレーム
9-1,109-1 開口
10,110,160 支持テーブル
11,111,161 支持面
20 押圧部材
21 押圧面
85,125,135,155,185,195 チャックテーブル
86,126,136,156,186,196 保持面
100 熱可塑性樹脂
101 保護部材
103 一方の面
104 他方の面
109 肉厚部
127,128,137,138,182,183,192,193 カメラユニット
200,200-2 フレームユニット