(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】円偏光板、光学積層体及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240329BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240329BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G02B5/30
G06F3/041 495
G06F3/041 660
G09F9/00 302
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
(21)【出願番号】P 2021140573
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2021-09-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2020214736
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 亨
(72)【発明者】
【氏名】白石 貴志
(72)【発明者】
【氏名】松野 健次
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】廣田 健介
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-525837(JP,A)
【文献】特開2019-203949(JP,A)
【文献】特開2020-126226(JP,A)
【文献】特開2006-251780(JP,A)
【文献】特開2008-233768(JP,A)
【文献】特開2011-52161(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0092264(US,A1)
【文献】特開2020-170152(JP,A)
【文献】特開2020-106781(JP,A)
【文献】国際公開第2013/191010(WO,A1)
【文献】特開2016-224307(JP,A)
【文献】特開2013-148806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光板と液晶硬化層とを含む円偏光板であって、
前記直線偏光板は、偏光子と前記偏光子の片面にのみ積層される保護フィルムとを含み、
前記偏光子、前記保護フィルム及び前記液晶硬化層がこの順に配置され、
前記偏光子は、ホウ酸架橋度指数が0.8以上であり、
前記偏光子を除くいずれかの層が、光選択吸収性を有し、
光選択吸収性を有する前記層は、前記偏光子と前記液晶硬化層との間に介在する1以上の層であり、
光選択吸収性を有する前記層は、前記保護フィルムを含み、
前記保護フィルムの厚みが10μm以上であ
り、
前記円偏光板において、前記直線偏光板側の最表面は、前記偏光子の表面である、円偏光板。
【請求項2】
前記保護フィルムと前記液晶硬化層との間にハードコート層をさらに有する、請求項1に記載の円偏光板。
【請求項3】
前記偏光子は、ホウ素含有量が0.5質量%以上5.5質量%以下である、請求項1又は2に記載の円偏光板。
【請求項4】
前記保護フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである、請求項1~3のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項5】
前記液晶硬化層は、第1液晶硬化層及び第2液晶硬化層を含み、
前記偏光子、前記保護フィルム、前記第1液晶硬化層及び前記第2液晶硬化層がこの順に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項6】
前記偏光子、前記保護フィルム、前記液晶硬化層及び粘着剤層をこの順に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の円偏光板と、
前面板又はタッチセンサパネルと、
を備えるフレキシブル画像表示装置用光学積層体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の円偏光板又は請求項7に記載の光学積層体を含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光板、光学積層体及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に代表される表示装置では、可撓性を有する材料を用いて表示装置の屈曲等を可能にしたフレキシブルディスプレイが知られている。有機EL表示装置では、外光の反射による視認性の低下を抑制するために、円偏光板等を用いて反射防止性能を向上させることが知られている〔例えば、特開2020-134934号公報(特許文献1)〕。円偏光板は、直線偏光板及び位相差層を積層して得ることができ、位相差層として重合性液晶化合物の硬化物層を用いることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新たな構成を有する円偏光板、並びにそれを含む光学積層体及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の円偏光板、光学積層体及び画像表示装置を提供する。
[1] 直線偏光板と液晶硬化層とを含む円偏光板であって、
前記直線偏光板は、偏光子と前記偏光子の片面にのみ積層される保護フィルムとを含み、
前記偏光子、前記保護フィルム及び前記液晶硬化層がこの順に配置される、円偏光板。
[2] 前記保護フィルムと前記液晶硬化層との間にハードコート層をさらに有する、[1]に記載の円偏光板。
[3] 前記偏光子は、ホウ素含有量が0.5質量%以上5.5質量%以下である、[1]又は[2]に記載の円偏光板。
[4] 前記保護フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである、[1]~[3]のいずれかに記載の円偏光板。
[5] 前記液晶硬化層は、第1液晶硬化層及び第2液晶硬化層を含み、
前記偏光子、前記保護フィルム、前記第1液晶硬化層及び前記第2液晶硬化層がこの順に配置される、[1]~[4]のいずれかに記載の円偏光板。
[6] 前記偏光子を除くいずれかの層が、光選択吸収性を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の円偏光板。
[7] 前記偏光子、前記保護フィルム、前記液晶硬化層及び粘着剤層をこの順に含む、[1]~[6]のいずれかに記載の円偏光板。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の円偏光板と、
前面板又はタッチセンサパネルと、
を備えるフレキシブル画像表示装置用光学積層体。
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の円偏光板又は[8]に記載の光学積層体を含む、画像表示装置。
【発明の効果】
【0006】
新たな構成を有する円偏光板、並びにそれを含む光学積層体及び画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る円偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る円偏光板の層構成の他の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明に係る円偏光板の層構成のさらに他の一例を示す概略断面図である。
【
図4】本発明に係る光学積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図5】本発明に係る光学積層体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。
【
図6】本発明に係る偏光板を対象とした顕微ラマン分光分析について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下のすべての図面は、本発明の理解を助けるために示すものであり、図面に示される各構成要素のサイズや形状は、実際の構成要素のサイズや形状とは必ずしも一致しない。
【0009】
<円偏光板>
(1)円偏光板の構成
図1は、本発明に係る円偏光板(以下、単に「円偏光板」ともいう。)の層構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示される円偏光板1は、直線偏光板10と、位相差層を含む構造体である位相差層構造体20とを含む。円偏光板1において、直線偏光板10と位相差層構造体20とは、第1貼合層30aを介して互いに貼合されている。位相差層は、液晶硬化層(重合性液晶化合物が重合硬化した硬化物層)である。用語「円偏光板」は、楕円偏光板を含む。
なお、フレキシブル画像表示装置に適用される円偏光板は屈曲可能であることが好ましい。屈曲可能であるとは、円偏光板を構成する層にクラックを生じさせることなく屈曲させ得ることを意味する。かかる円偏光板は、良好な屈曲耐性(フレキシブル性)のために、より薄膜であることが求められる。そのため、当該円偏光板に含まれる直線偏光板は、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する、いわゆる「片保護偏光板」が有効である。
【0010】
図2は、円偏光板の層構成の他の一例を示す概略断面図であり、直線偏光板10及び位相差層構造体20が有する層構成の具体例を示したものである。
図2に示される円偏光板2においても、直線偏光板10と位相差層構造体20とは、第1貼合層30aを介して互いに貼合されている。
図2に示されるように、直線偏光板10は、偏光子(直線偏光子)101と、偏光子101の片面にのみ積層される保護フィルム102とを含む、片保護偏光板である。保護フィルム102は、偏光子101における位相差層構造体20側の面に積層される。図示されていないが、保護フィルム102は、接着剤層を介して偏光子101に貼合されている。円偏光板2において、直線偏光板10側の最表面は、偏光子101の表面である。
【0011】
円偏光板2において、偏光子101、保護フィルム102及び位相差層構造体20はこの順に配置されており、すなわち、偏光子101、保護フィルム102及び位相差層である液晶硬化層はこの順に配置されている。円偏光板2において位相差層構造体20は、直線偏光板10側から順に、第1液晶硬化層201、第2貼合層30b及び第2液晶硬化層202を備える。円偏光板2を例えば、表示パネルに貼合するために、第2液晶硬化層202の第2貼合層30bとは反対側には、第3貼合層30c及びセパレートフィルム203を備えることができる。
【0012】
円偏光板の層構成は、
図2に示される構成に限定されるものではない。例えば、
a)円偏光板は、第1液晶硬化層201又は第2液晶硬化層202のいずれか一方を有していなくてもよく、位相差層構造体20は少なくとも1層の液晶硬化層(位相差層)を有していればよい。
b)1層以上の配向層を含んでいてもよい。
c)第2貼合層30bを有していなくてもよい。
d)保護フィルム102と第1液晶硬化層201(位相差層構造体20)との間にハードコート層が配置されていてもよい。
【0013】
図3は、円偏光板の層構成のさらに他の一例を示す概略断面図であり、直線偏光板11及び位相差層構造体20が有する層構成の具体例を示したものである。
図3に示される円偏光板3においても、直線偏光板11と位相差層構造体20とは、第1貼合層30aを介して互いに貼合されている。
図3に示される円偏光板3は上記d)に相当する構成を有しており、直線偏光板11は、偏光子(直線偏光子)101と、偏光子101の片面にのみ積層される保護フィルム102と、保護フィルム102の位相差層構造体20側表面に積層されるハードコート層103とを含む。保護フィルム102は、偏光子101における位相差層構造体20側の面に積層される。図示されていないが、保護フィルム102は、接着剤層を介して偏光子101に貼合されている。円偏光板3においても、直線偏光板11側の最表面は、偏光子101の表面である。また、
図2に示される円偏光板2と同様に、
図3に示される円偏光板3においても、第3貼合層30c及びセパレートフィルム203を備えることもある。
【0014】
円偏光板1,2,3が有機EL画像表示装置等の画像表示装置に適用される場合、円偏光板1,2,3は、直線偏光板10,11側が視認側となるように配置される。この際、上記のとおり、円偏光板1,2,3を画像表示素子に貼合するために第3貼合層30cを用いることができる(セパレートフィルム203は剥離・除去する)。すなわち、円偏光板1,2,3が有機EL画像表示装置等の画像表示装置に適用される場合、円偏光板1,2,3は、位相差層構造体20側が画像表示素子側となるように配置される。
【0015】
本発明に係る円偏光板は、以下の点で有利である。
A)直線偏光板10の保護フィルム102と第1貼合層30aとの密着性又は直線偏光板11のハードコート層103と第1貼合層30aとの密着性が高く、その結果、円偏光板の耐久性が高い。とりわけ、
図3に示される円偏光板3のようにハードコート層103と第1貼合層30aとが接する構成においては、これらの貼合面にコロナ処理を施さなくても又はコロナ処理の強度が小さくても、これら層間の良好な密着性を得ることができる。
【0016】
コロナ処理を長期にわたって行うと、被コロナ処理物に結晶状異物(シュウ酸等)が付着して歩留まりが低下するという問題があり、また、コロナ放電によってオゾン及び窒素酸化物(NOx)が生成することが知られている。コロナ処理を省略できること又はコロナ処理の強度を小さくできることにより、上記問題を解消又は低減させることができる。
【0017】
B)偏光子101が、ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムである場合、偏光子101と画像表示素子との間に保護フィルム102、さらにはハードコート層103が存在していることで、例えば、湿熱環境下に本発明の円偏光板を保持したとしても、偏光子101から画像表示素子へヨウ素が移行することを抑制又は防止することができる。これにより、位相差層構造体20の劣化や、本発明の円偏光板にタッチセンサパネル等の入力装置を貼り合わせる場合、当該タッチセンサパネル等の劣化を抑制又は防止することができる。
【0018】
以下、円偏光板を構成する又は構成し得る要素について詳細に説明する。
(2)直線偏光板
直線偏光板は、偏光子(直線偏光子)101と、偏光子101の片面にのみ積層される保護フィルム102とを含む。偏光子101の片面とは、偏光子101における位相差層構造体20側の面である。直線偏光板は、好ましくは、偏光子101と、偏光子101の片面にのみ積層される保護フィルム102と、保護フィルム102の位相差層構造体20側表面に積層されるハードコート層103とを含む。
【0019】
(2-1)偏光子
偏光子101は、無偏光の光を入射させたとき、吸収軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過させる性質を有する光学フィルムである。偏光子101は、好ましくは、ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系フィルム」ともいう。)である。以下、好ましい偏光子101である、ヨウ素が吸着配向しているPVA系フィルムについて説明する。
【0020】
偏光子101は、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等のPVA系フィルムに、ヨウ素による染色処理、及び一軸延伸処理が施されたもの等が挙げられる。好ましくは、染色処理によりヨウ素が吸着配向したPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理し、その後に、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程が実施される。各工程には公知の方法を採用できる。
【0021】
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」ともいう。)は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより製造できる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体との共重合体であることもできる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルのいずれでもよいことを意味する。(メタ)アクリレート等の「(メタ)」も同様の意味である。
【0022】
PVA系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。PVA系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等も使用可能である。PVA系樹脂の平均重合度は、通常1000~10000程度であり、好ましくは1500~5000程度である。PVA系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が1000未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超ではフィルム加工性に劣ることがある。
【0023】
本発明の円偏光板は特に、フレキシブル画像表示装置に適用するうえで好適である。かかるフレキシブル画像表示装置に適用するための円偏光板を構成する各部材の厚みは薄い方が好ましい。偏光子101の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは13μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。偏光子101の厚みは、通常2μm以上であり、3μm以上であることが好ましく、例えば5μm以上であってよい。
【0024】
好ましい厚みの偏光子101を得るには、厚み15~40μm程度のPVA系フィルム(薄膜PVA系フィルム)を出発原料として用い、この薄膜PVAフィルムに染色処理、一軸延伸処理を行って、偏光子101を得る製造方法が挙げられる。予め、薄膜のPVA系フィルムを用いることで、得られる偏光子101の厚みを薄くすることができる(第1製法)。
【0025】
出発原料として好ましい薄膜PVA系フィルムは、適当な基材フィルム上に、PVA系樹脂からなる樹脂層を形成することでも、極めて厚みの薄い薄膜PVA系フィルムを実現できる(第2製法)。この場合の薄膜PVAフィルムの製造方法は、基材フィルムを用意し、基材フィルム上にPVA系樹脂等の樹脂の溶液(PVA系樹脂溶液等)を塗布し、溶媒を除去する乾燥等を行って基材フィルム上に樹脂層を形成する工程を含むものであってもよい。基材フィルムの樹脂層が形成される面には、予めプライマー層を形成することができる。基材フィルムとしては、後述する保護フィルム102に用いることができる熱可塑性樹脂を用いたフィルムを使用できる。
【0026】
第1製法又は第2製法における出発原料である薄膜PVA系フィルムは、上述のとおり、染色処理及び一軸延伸処理を行うことで、偏光子101へと誘導できる。第2製法においては、基材フィルム上にPVA系樹脂溶液を塗布し、次いで、必要に応じて樹脂層の水分等の溶媒量を調整し、その後、基材フィルム及び樹脂層を一軸延伸し、続いて、樹脂層をヨウ素で染色してヨウ素を樹脂層に吸着配向させる。
【0027】
染色処理(ヨウ素の吸着配向)及び一軸延伸処理を行ったPVA系フィルムは、次いで、ホウ酸による架橋処理を行うことが好ましい。第1製法においては例えば、薄膜PVA系フィルムに、染色処理及び一軸延伸処理を行った後に、そのフィルムを、ホウ酸を含有する溶液(ホウ酸含有溶液)に接触させればよい。このような架橋処理の後のフィルムの表面に付着しているホウ酸含有溶液を洗い落とすための洗浄処理を行うこともできる。
【0028】
第2製法で得られる偏光子101においても、第1製法と同様である。すなわち、染色処理及び一軸延伸処理を行った樹脂層が備えられた基材フィルムは例えば、そのまま(基材フィルムを剥離することなく)の形で、ホウ酸含有溶液と接触させることで、架橋処理を行うことができる。架橋処理後の樹脂層が備えられた基材フィルムは必要に応じて、洗浄処理を行うことができる。
【0029】
ヨウ素が吸着配向したPVA系フィルム又は樹脂層を架橋処理するためのホウ酸含有溶液は、ホウ酸含有水溶液が好ましく、ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、通常、水100質量部あたり2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。このホウ酸含有水溶液は、好ましくは、ヨウ化カリウムを含有する。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、通常、水100質量部あたり0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部程度である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60~1200秒程度であり、好ましくは150~600秒程度であり、より好ましくは200~400秒程度である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃であり、より好ましくは60~80℃である。
【0030】
PVA系フィルム、並びに、基材フィルム及び樹脂層の一軸延伸は、染色の前に行ってもよいし、染色中に行ってもよいし、染色後のホウ酸処理中に行ってもよく、これら複数の段階においてそれぞれ一軸延伸を行ってもよい。総延伸倍率は、通常3倍以上であり、好ましくは3.5倍以上であり、さらに好ましくは4倍以上である。延伸倍率の上限は特にないが、破断等を抑制する観点から8倍以下が好ましく、6倍以下がさらに好ましい。
【0031】
偏光子101は、ホウ素含有量が好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2.5質量%以上であり、3.5質量%以上であってもよい。ホウ素含有量が0.5質量%以上であることにより、ヨウ素を安定的に保持することができ、偏光子101の偏光度低下抑制効果、ひいては円偏光板の耐久性向上効果を期待できる。偏光子101のホウ素含有量は、好ましくは5.5質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは4.5質量%以下である。ホウ素含有量が4.5質量%以下であることにより、加熱により生じる偏光子101の収縮を抑制することができる。
【0032】
偏光子101におけるホウ素含有量は、例えば、所定質量の偏光子101を例えば、マンニトール水溶液に溶解し、NaOH水溶液で滴定することで求めることができる。かかる偏光子101のホウ素含有量の測定手段は、本願の実施例において詳述する。
【0033】
偏光子101のホウ素含有量は、上記ホウ酸処理に用いるホウ酸水溶液のホウ酸濃度を調整することや、上記洗浄工程におけるホウ酸水溶液の洗い落としの程度等によって制御できる。
【0034】
偏光子101の「ホウ酸架橋度指数」は、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.8以上であり、さらに好ましくは1.0以上である。本明細書において「ホウ酸架橋度指数」とは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムなどからなる偏光子において、ポリビニルアルコール分子鎖同士がどの程度、ホウ酸で架橋されているのかを表す指数を意味する。ホウ酸架橋度指数の値が高いほど、ポリビニルアルコール分子鎖同士のホウ酸架橋が進行した偏光子であるといえ、偏光子101のホウ酸架橋度指数がこのような範囲であることにより、ヨウ素を安定的に保持することができる。その結果、偏光子101の偏光度が低下するのを防止しやすくなり、ひいては円偏光板の耐久性が向上しやすくなる。
【0035】
偏光子101のホウ酸架橋度指数は、顕微ラマン分光分析を行うことにより求めることができる。顕微ラマン分光分析において、レーザーラマン分光光度計(商品名:「NRS-5100」、日本分光株式会社製)を用いることにより、偏光子の波数780cm-1におけるラマン散乱光強度、及び波数850cm-1におけるラマン散乱光強度をそれぞれ求め、次いでこれらの波数のラマン散乱光強度を除算(波数780cm-1におけるラマン散乱光強度/波数850cm-1におけるラマン散乱光強度)することにより、ホウ酸架橋度指数を算出することができる。
【0036】
ここで
図6は、本実施形態に係る偏光板を対象とした顕微ラマン分光分析について説明する説明図である。
図6に示すようにレーザーラマン分光光度計においては、レーザー光Xの進行方向と偏光子101の吸収軸方向とが直交するように、偏光子101の端面へレーザー光を入射させる。なお、ここでレーザー光Xは、偏光子101の厚み方向に偏光している。またレーザー光の測定位置を、偏光子101の厚み方向中央の位置とする。なお、ラマン分光測定の前にミクロトームを用いて偏光板の断面加工を実施することが好ましい。波数780cm
-1におけるラマン散乱光強度とは、ポリビニルアルコールとホウ素との結合に帰属するラマン散乱光強度を意味し、波数850cm
-1におけるラマン散乱光強度とは、ポリビニルアルコールに帰属するラマン散乱光強度を意味する。
【0037】
また上記の顕微ラマン分光分析に用いる各種の条件は、以下のとおりである。
励起波長 :532nm
グレーチング:600 l/mm
スリット幅 :100×1000μm
アパーチャ :φ40μm
対物レンズ :100倍
対物レンズ :100倍
【0038】
偏光子101の視感度補正偏光度Pyは、通常95%以上であり、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは98.7%以上、なおさらに好ましくは99.0%以上、特に好ましくは99.4%以上であり、99.9%以上であってもよい。偏光子101の視感度補正偏光度Pyは、99.99%以下であってもよい。視感度補正偏光度Pyは、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製の「V7100」)を用いて、得られた偏光度に対して「JIS Z 8701」の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで算出することができる。
【0039】
偏光子101の視感度補正偏光度Pyを高くすることは、円偏光板の反射防止膜としての機能及び円偏光板の耐久性を高めるうえで有利である。偏光子101の視感度補正偏光度Pyが95%未満であると、反射防止膜としての機能を果たせないことがある。
【0040】
偏光子101の視感度補正単体透過率Tyは、通常41%以上であり、好ましくは41.1%以上、より好ましくは41.2%以上であり、42%以上であってもよく、42.5%以上であってもよい。偏光子101の視感度補正単体透過率Tyは、通常50%以下であり、48%以下であってもよく、46%以下であってもよく、44%以下であってもよく、43%以下であってもよい。視感度補正単体透過率Tyが過度に高いと視感度補正偏光度Pyが低くなりすぎて、円偏光板が反射防止膜としての機能を達成できなくなることがある。視感度補正単体透過率Tyは、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製の「V7100」)を用いて、得られた透過率に対して「JIS Z 8701」の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで算出することができる。
【0041】
(2-2)保護フィルム
偏光子101の片面に積層される保護フィルム102は、偏光子保護用のフィルムであり、例えば、熱可塑性樹脂から形成される透光性(好ましくは光学的に透明な)フィルムを用いることができる。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
保護フィルム102は、好ましくは、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルムであり、より好ましくは環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである。
【0044】
保護フィルム102は、位相差特性を有しないか、位相差値が小さいフィルムであることが好ましい。具体的には、保護フィルム102の波長550nmにおける面内位相差値は、0nm~10nmであることが好ましく、波長550nmにおける厚み方向の位相差値は、-10nm~+10nmであることが好ましい。本発明の円偏光板において、円偏光板3のようにハードコート層103を有する場合は、保護フィルム102とハードコート層103の積層体が、上記のような位相差値が小さいフィルムであると好ましい。
【0045】
保護フィルム102の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、10μm以上であってもよい。保護フィルム102の厚みは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。
【0046】
保護フィルム102の可視光線に対する光線透過率は、偏光板の技術分野で通常のものが求められる。例えば、可視光線に対する光線透過率は、85%以上であると好ましく、90%以上であるとさらに好ましい。本発明の円偏光板が、円偏光板3のようにハードコート層103を有する場合は、保護フィルム102とハードコート層103の積層体として、上記のような光線透過率であると好ましい。
【0047】
保護フィルム102又は保護フィルム102及びハードコート層103の積層体が、位相差値が小さく、光線透過率が高いものである場合、偏光子101の視感度補正偏光度Pyや視感度補正単体透過率Tyのそれぞれは、当該偏光子101と、保護フィルム102とが積層された偏光板10、あるいは、当該偏光子101と、保護フィルム102と、ハードコート層103とが積層された偏光板11の視感度補正偏光度Pyや視感度補正単体透過率Tyに置き換えてみることができる。
【0048】
偏光子101の位相差層構造体20側表面から位相差層構造体20の直線偏光板10,11側表面までの距離は、ヨウ素の移行を抑制する観点から、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは4μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上であり、なおさらに好ましくは10μm以上である。該距離は、円偏光板の薄型化及び屈曲耐性(フレキシブル性)の観点から、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。
【0049】
本発明の円偏光板において、好ましくは、偏光子を除くいずれかの層は、光選択吸収性を有する。1又は2以上の層が光選択吸収性を有することができる。本発明の円偏光板において、より好ましくは、偏光子101と位相差層構造体20との間、典型的には、偏光子101と液晶硬化層201との間の層(保護フィルム102、ハードコート層103又は第1貼合層30a)は、光選択吸収性を有する。1又は2以上の層が光選択吸収性を有することができる。本明細書において「光選択吸収性を有する」とは、好ましくは波長350nm等の紫外線に対する吸収性を有することをいい、より好ましくは波長350nm等の紫外線及び波長410nm付近の短波長の可視光に対する吸収性を有することをいう。
【0050】
保護フィルム102が光選択吸収性を有すること、好ましくは波長350nm等の紫外線対する吸収性を有すること、より好ましくは波長350nm等の紫外線及び波長410nm付近の短波長の可視光に対する吸収性を有することは、以下の点で有利である。
I)円偏光板を画像表示装置に適用した際、画像表示素子を紫外線や短波長の可視光から保護することができる。
II)紫外線や短波長の可視光による位相差層構造体20の位相差値の変化を抑制することができる。
III)短波長の可視光吸収により円偏光板の反射色相を調整することができる。
IV)有機EL表示素子等の画像表示素子で反射した光によって偏光子101が劣化することを防ぐことができる。
【0051】
保護フィルム102への光選択吸収性の付与は、保護フィルム102を構成する熱可塑性樹脂として光選択吸収性を有するものを用いることによって行われてもよいし、光選択吸収性を有する添加剤(光吸収剤)を保護フィルム102に含有させることによって行われてもよいし、両者によって行われてもよい。保護フィルム102への光選択吸収性の付与は、少なくとも、光吸収剤を保護フィルム102に含有させることによって行われることが好ましい。
【0052】
以下、好ましい光吸収剤の具体例を挙げる。光吸収剤の中でも、上述した、好ましい光選択吸収性の観点から、波長350nmの光(紫外線)に対する光吸収剤や、波長410nmの光に対する光吸収剤が、本発明には好ましく用いられる。
【0053】
波長350nmの光に対する光吸収剤として、市場から種々の紫外線吸収剤を容易に入手できる。このような紫外線吸収剤としては例えば、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。より具体的には、5-クロロ-2-(3,5-ジ-sec-ブチル-2-ヒドロキシルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、(2-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖及び側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4-ベンジルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0054】
紫外線吸収剤は、市販品をそのまま用いてもよい。このような市販品としては例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として、ケミプロ化成株式会社製の「Kemisorb 102」、株式会社ADEKA製の「アデカスタブ LA46」、「アデカスタブ LAF70」、BASFジャパン社製の「チヌビン109」、「チヌビン171」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」、「チヌビン928」、「チヌビン400」、「チヌビン460」、「チヌビン405」、「チヌビン477」(いずれも商品名)等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、株式会社ADEKA製の「アデカスタブ LA31」及び「アデカスタブ LA36」(いずれも商品名)、住化ケムテックス株式会社製の「スミソーブ 200」、「スミソーブ 250」、「スミソーブ 300」、「スミソーブ 340」及び「スミソーブ 350」(いずれも商品名)、ケミプロ化成株式会社製の「Kemisorb 74」、「Kemisorb 79」及び「Kemisorb 279」(いずれも商品名)、BASF社製の「TINUVIN 99-2」、「TINUVIN 900」及び「TINUVIN 928」(いずれも商品名)などが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、2種以上併用して、本発明の円偏光板に用いてもよく、本発明の円偏光板を構成する複数の層に、異なる光吸収剤を用いてもよい。
【0055】
紫外線吸収剤は無機系紫外線吸収剤であってもよい。無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン系複合酸化物、酸化亜鉛系複合酸化物、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)等が挙げられる。酸化チタン系複合酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナをドープした酸化亜鉛等が挙げられる。これらの無機系紫外線吸収剤も、2種類以上併用してもよく、上記に例示した、例えば、市販の光吸収剤(有機系紫外線吸収剤)と併用してもかまわない。
【0056】
波長410nmの光に対する光吸収剤としては、360~430nmの波長帯域に極大吸収波長を有する化合物を公知の方法で合成し、本発明に用いることができる。このような光吸収剤は、例えば、特開2017-120430号公報に記載の光選択吸収性化合物として知られている化合物を用いることができる。波長360nm~420nmに少なくとも1つの吸収極大を有する化合物を含むことが好ましく、380nm~410nmに吸収極大を有する化合物を含むことがより好ましい。
【0057】
光吸収剤の使用量は、当該光吸収剤を含有する層の可視光線に対する光線透過性を著しく損なわないようにして選ばれるが例えば、当該層の質量を100質量部としたとき、当該層に含まれる光吸収剤が通常0.01~20質量部であり、好ましくは0.05~15質量部であり、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0058】
本発明の円偏光板においては、前記偏光子との前記液晶硬化層間の積層体(保護フィルム102、ハードコート層103及び第1貼合層30a)において、波長350nmにおける吸光度が好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1.0以上であり、波長410nmにおける吸光度が好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.5以上である。
【0059】
別の実施形態では、本発明の円偏光板において、偏光子を除く層の積層体(例えば保護フィルム102、ハードコート層103、第1貼合層30a、第1液晶硬化層201、第2貼合層30b、第2液晶硬化層202、及び第3貼合層30cからなる積層体)、すなわち、偏光子を基準にしたときに保護フィルム側に存在する層の積層体は、波長350nmにおける吸光度が好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1.0以上であり、さらに好ましくは2.0以上であり、特に好ましくは、3.0以上である。波長410nmにおける吸光度は、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上であり、通常2.0以下であり、1.5以下であってもよい。
【0060】
保護フィルム102は、接着剤層を介して偏光子101に積層することができる。該接着剤層を形成する接着剤としては、水系接着剤又は後述する活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることができる。水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解、又は分散させた接着剤が挙げられる。なお、保護フィルム102と、偏光子101との間の接着層の厚みは、接着性を確保し易い点で通常0.01μm以上であり、通常は10μm以下である。上述のとおり、本発明の円偏光板をフレキシブル画像表示装置に適用する場合、当該円偏光板を構成する各部材の厚みは薄ければ薄いほど好ましいが、接着層の厚みが極端に薄くなると、所望の接着性が損なわれる虞がある。そのため、接着層の厚みは、本発明の円偏光板をフレキシブル画像表示装置に適用する場合の屈曲性と、偏光子101と保護フィルム102との接着性を考慮して、最適化する。
【0061】
(2-3)ハードコート層
円偏光板は、保護フィルム102と液晶硬化層(位相差層構造体20)との間にハードコート層103をさらに有することができる。ハードコート層103は、保護フィルム102の位相差層構造体20側表面に積層されることが好ましく、該表面に直接積層されることがより好ましい。
【0062】
ハードコート層103は、活性エネルギー線又は熱エネルギーを照射して架橋構造を形成する反応性材料を含むハードコート組成物の硬化により形成することができる。ハードコート組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化するものであることが好ましい。本明細書において「活性エネルギー線」としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられ、好ましくは紫外線である。
【0063】
ハードコート組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、炭素-炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられる。具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0064】
ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートから選択された1種以上を含むことが好ましい。
【0065】
カチオン重合性化合物とは、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等のカチオン重合性基を有する化合物である。カチオン重合性化合物としては、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましい。
【0066】
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマー等の脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等であり、ビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0067】
ハードコート組成物は、重合開始剤をさらに含むことができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤及びそれらの組み合わせが挙げられる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカル又はカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
【0068】
活性エネルギー線ラジカル重合開始剤としては、分子の分解でラジカルが生成されるType1型ラジカル重合開始剤と、3級アミンと共存して水素引き抜き型反応でラジカルを生成するType2型ラジカル重合開始剤があり、それぞれ単独で又は併用して使用することができる。熱ラジカル重合開始剤としては、過酸化水素、過安息香酸等の有機過酸化物、アゾビスブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、シクロペンタジエニル鉄(II)錯体等が挙げられる。
【0069】
重合開始剤の含有量は、ハードコート組成物の全体(100質量%)に対して、例えば0.1~10質量%である。重合開始剤の含量が0.1質量%未満であると、硬化を十分に進行させることができず、最終的に得られたハードコート層103の機械的物性や密着力が不十分となる可能性がある。
【0070】
ハードコート組成物は、溶剤、添加剤等をさらに含むことができる。添加剤としては、無機粒子、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、防汚剤等が挙げられる。
【0071】
ハードコート層103の厚みは、本発明の円偏光板を搬送する際や、当該円偏光板の加工の際に生じ得るキズを抑制する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、5μm以上であってもよい。ハードコート層103の厚みは、屈曲耐性(フレキシブル性)や生産効率の観点から、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
【0072】
ハードコート層103は、光選択吸収性を有していてもよい。保護フィルム102及びハードコート層103の少なくともいずれか一方は、光選択吸収性を有することが好ましく、両者が光選択吸収性を有していてもよい。ハードコート層103が光選択吸収性を有することの有利性は、保護フィルム102が光選択吸収性を有する場合と同様である。ハードコート層103への光選択吸収性の付与は、上述の光吸収剤をハードコート層103に含有させることによって行うことができる。
【0073】
光吸収剤を含むハードコート層103を備えた保護フィルム102(ハードコート層付保護フィルム)を市場から購入し、当該ハードコート層付保護フィルムをそのまま、本発明の円偏光板の部材として用いることもできる。同様に、ハードコート層103を備えていないが、光吸収剤を含む保護フィルム102も入手できる。このような保護フィルムやハードコート層付保護フィルムに含まれる光吸収剤の含有量は不明であることもあるが、その場合は、保護フィルムやハードコート層付保護フィルムの可視光に対する光線透過性を考慮して、最適なものを選択することができる。
【0074】
(3)位相差層構造体
位相差層構造体20は、少なくとも1層の液晶硬化層(重合性液晶化合物が重合硬化した硬化物層)を含む構造体である。
図2、
図3に示されるように、位相差層構造体20は、好ましくは、第1液晶硬化層201及び第2液晶硬化層202を含み、円偏光板は、好ましくは、視認側から偏光子101、保護フィルム102、第1液晶硬化層201及び第2液晶硬化層202をこの順に含む。
【0075】
液晶硬化層は、位相差特性を有する層(位相差層)であり、重合性液晶化合物が配向状態で重合硬化し、位相差特性を発現する硬化物層である。位相差層構造体20は、少なくとも1層の液晶硬化層を含み、2層以上の液晶硬化層を含んでいてもよい。2層以上の液晶硬化層を含む場合、位相差層構造体20は、これらの液晶硬化層を互いに貼合するための貼合層(第2貼合層30b)を含んでいてもよい。
【0076】
液晶硬化層は、1/2波長位相差層、1/4波長位相差層、又はポジティブCプレートであることができる。1/4波長位相差層は逆波長分散性であってもよい。位相差層構造体20が2以上の液晶硬化層を含む場合、液晶硬化層は互いに同じ位相差特性を有していてもよく、互いに異なる位相差特性を有していてもよい。
【0077】
位相差層構造体20は、上述のとおり、好ましくは、第1液晶硬化層201及び第2液晶硬化層202を含む。第1液晶硬化層201及び第2液晶硬化層202は、例えば、それぞれ1/2波長位相差層、1/4波長位相差層である。あるいは、第1液晶硬化層201及び第2液晶硬化層202のうちの一方が逆波長分散性の1/4波長位相差層であり、他方がポジティブCプレートである。例えば、第1液晶硬化層201及び第2液晶硬化層202は、それぞれ逆波長分散性の1/4波長位相差層、ポジティブCプレートである。
【0078】
重合性液晶化合物としては、棒状の重合性液晶化合物及び円盤状の重合性液晶化合物が挙げられ、これらのうちの一方を用いてもよく、これらの両方を含む混合物を用いてもよい。棒状の重合性液晶化合物が基材層に対して水平配向又は垂直配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の長軸方向と一致する。円盤状の重合性液晶化合物が配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の円盤面に対して直交する方向に存在する。棒状の重合性液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報(請求項1等)に記載のものを好適に用いることができる。円盤状の重合性液晶化合物としては、特開2007-108732号公報(段落[0020]~[0067]等)、特開2010-244038号公報(段落[0013]~[0108]等)に記載のものを好適に用いることができる。
【0079】
重合性液晶化合物を重合することによって形成される液晶硬化層が面内位相差を発現するためには、重合性液晶化合物を適した方向に配向させればよい。重合性液晶化合物が棒状の場合は、該重合性液晶化合物の光軸を基材層平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現し、この場合、光軸方向と遅相軸方向とは一致する。重合性液晶化合物が円盤状の場合は、該重合性液晶化合物の光軸を基材層平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現し、この場合、光軸と遅相軸とは直交する。重合性液晶化合物の配向状態は、配向層と重合性液晶化合物との組み合わせによって調整することができる。
【0080】
重合性液晶化合物は、少なくとも1つの重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性液晶化合物を2種類以上を併用する場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有することが好ましい。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、スチリル基、アリル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0081】
位相差層構造体20は配向層を含んでいてもよい。配向層は、重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる配向規制力を有する。配向層は、重合性液晶化合物の分子軸を基材層に対して垂直配向した垂直配向層であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を基材層に対して水平配向した水平配向層であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を基材層に対して傾斜配向させる傾斜配向層であってもよい。位相差層構造体20が2以上の配向層を含む場合、配向層は互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0082】
配向層としては、重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物の塗工等により溶解しない溶媒耐性を有し、溶媒の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理に対する耐熱性を有するものが好ましい。配向層としては、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層、光配向ポリマーで形成された光配向性ポリマー層、層表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向層を挙げることができる。
【0083】
液晶硬化層(第1、第2液晶硬化層)の厚みは、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよく、また、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0084】
液晶硬化層は、基材層上に、重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物を塗布、乾燥し、重合性液晶化合物を重合させることによって形成することができる。液晶層形成用組成物は、基材層上に形成された配向層上に塗布してもよい。
【0085】
基材層としては、樹脂材料で形成されたフィルムを用いることができ、例えば上記した保護フィルム102を形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明した樹脂材料を用いたフィルムを挙げることができる。基材層の厚みは特に限定されないが、一般には強度や取扱い性等の作業性の点から1~300μmであることが好ましく、20~200μmであることがより好ましい。基材層は、液晶硬化層とともに円偏光板に組み込まれてもよく、基材層を剥離して、液晶硬化層のみ、又は、当該液晶硬化層及び配向層が円偏光板に組み込まれてもよい。
【0086】
第2貼合層30bは、粘着剤層又は接着剤層である。第2貼合層30bは、接着剤層であることが好ましく、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化した接着剤層であることがより好ましく、紫外線硬化型接着剤を硬化した接着剤層であることがさらに好ましい。第2貼合層30bを接着剤層とすることにより、円偏光板の折り曲げ又は折り畳みを行ったときに液晶硬化層にシワが発生することを抑制することができるため、好ましい。粘着剤層としては、後述するものを用いることができる。
【0087】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含む無溶剤型の活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0088】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、良好な接着性を示すことから、カチオン重合性の硬化性化合物、ラジカル重合性の硬化性化合物のいずれか一方又は両方を含むことが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤は、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるための光カチオン重合開始剤等のカチオン重合開始剤、又はラジカル重合開始剤をさらに含むことができる。
【0089】
カチオン重合性の硬化性化合物としては、例えば、脂環式環に結合したエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物、2個以上のエポキシ基を有し芳香環を有さない多官能脂肪族エポキシ化合物、エポキシ基を1つ有する単官能エポキシ基(但し、脂環式エポキシ化合物に含まれるものを除く)、2個以上のエポキシ基を有し芳香環を有する多官能芳香族エポキシ化合物等のエポキシ系化合物;分子内に1個又は2個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物;これらの組み合わせを挙げることができる。
【0090】
ラジカル重合性の硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)、ラジカル重合性の二重結合を有するその他のビニル系化合物、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0091】
第2貼合層30bの厚みは特に限定されない。例えば2μm以上30μm以下であってよく、好ましくは3μm以上20μm以下である。例えば10μm以上であってもよいが、更なる薄型化の点では15μm以下、好ましくは10μm以下、とりわけ7μm以下が好ましい。第2貼合層30bが接着剤層である場合の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であってもよく、また10μm以下であることが好ましく、5μm以下であってもよい。
【0092】
(4)第1貼合層及び第3貼合層
第1貼合層30aは、粘着剤層又は接着剤層であり、好ましくは粘着剤層である。第1貼合層30aは、直線偏光板10,11と位相差層構造体20とを接合する。第3貼合層30cは通常、粘着剤層である。第3貼合層30cは、円偏光板を画像表示素子に貼合するために用いることができる。円偏光板は、偏光子101、保護フィルム102、液晶硬化層(第1液晶硬化層、さらには第2液晶硬化層)及び粘着剤層(第3貼合層30c)をこの順に含むことが好ましく、偏光子101、保護フィルム102、ハードコート層103、液晶硬化層(第1液晶硬化層、さらには第2液晶硬化層)及び粘着剤層(第3貼合層30c)をこの順に含むことがより好ましい。
【0093】
第1貼合層30aである粘着剤層の厚みは、例えば2μm以上30μm以下であってよく、好ましくは3μm以上20μm以下である。例えば10μm以上であってもよいが、更なる薄型化の点では15μm以下、好ましくは10μm以下、とりわけ7μm以下が好ましい。第1貼合層30aが接着剤層である場合の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であってもよく、また10μm以下であることが好ましく、5μm以下であってもよい。
【0094】
第1貼合層30aは、光選択吸収性を有していてもよい。保護フィルム102、ハードコート層103及び第1貼合層30aの少なくとも1層が、光選択吸収性を有することが好ましく、これらのうちの複数の層が光選択吸収性を有していてもよい。第1貼合層3aaが光選択吸収性を有することの有利な点は、保護フィルム102が光選択吸収性を有する場合と同様である。第1貼合層30aへの光選択吸収性の付与は、上述の光吸収剤を第1貼合層30aに含有させることによって行うことができる。
【0095】
第3貼合層30cである粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではなく、その用途に応じて適宜設定することができるが、例えば250μm以下であってよく、薄型化の観点から好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、より特に好ましくは20μm以下である。該粘着剤層の厚みの下限値は、特に限定されるものではないが、耐久性の観点からは、例えば1μm以上であってよく、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは14μm以上である。
【0096】
粘着剤としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等のベースポリマーを有する粘着剤を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化型粘着剤、熱硬化型粘着剤等であってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性(以下、リワーク性ともいう。)、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤が好適である。粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂、架橋剤、シラン化合物を含む粘着剤の反応生成物から構成されることが好ましく、その他の成分を含んでいてもよい。
【0097】
粘着剤層は、活性エネルギー線硬化型粘着剤を用いて形成してもよい。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、上記した粘着剤に、多官能性(メタ)アクリレート等の紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させることにより、より硬い粘着剤層を形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、紫外線や電子線等のエネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線照射前においても粘着性を有しているため、被着体に密着し、エネルギー線の照射により硬化して密着力を調整することができる性質を有する粘着剤である。
【0098】
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、一般には(メタ)アクリル系粘着剤と、エネルギー線重合性化合物とを主成分として含む。通常はさらに架橋剤が配合されており、また必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を配合することもできる。
【0099】
(5)セパレートフィルム
円偏光板は、第3貼合層30cの外表面を保護するためのセパレートフィルム203を備えることができる。セパレートフィルム203としては、基材フィルムの第3貼合層30c側の表面にシリコーン処理等の離型処理が施されたフィルムを挙げることができる。基材フィルムは、例えば、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等からなるフィルムである。
【0100】
<光学積層体>
本発明に係る光学積層体(以下、単に「光学積層体」ともいう。)は、上記本発明に係る円偏光板と他の構成要素とを備えるものである。他の構成要素としては、例えば、円偏光板における液晶硬化層側、すなわち、円偏光板の視認側とは反対側に配置される画像表示素子40(
図4、5参照);円偏光板における偏光子101側、より具体的には、円偏光板の最表面である偏光子101の表面上に配置される前面板50(
図5参照);偏光子101の表面を仮保護するためのプロテクトフィルム(「表面保護フィルム」とも呼ばれる。)等が挙げられる。
光学積層体は、上記他の構成要素として、前面板50及び画像表示素子40からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0101】
<画像表示装置>
円偏光板1,2,3は、画像表示素子の前面(視認側)に配置されて、画像表示装置の構成要素として用いることができる。円偏光板は、画像表示装置において反射防止機能を付与する反射防止用偏光板として用いることもできる。画像表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等の画像表示装置が挙げられる。以下、本発明の円偏光板(円偏光板1、2、3)を画像表示装置、特に、フレキシブル画像表示装置に適用する態様の要部について簡単に説明する。
【0102】
画像表示装置は、フレキシブル画像表示装置であってもよい。フレキシブル画像表示装置は、後述するフレキシブル画像表示装置用光学積層体と、有機EL表示素子とからなり、有機EL表示素子に対して視認側にフレキシブル画像表示装置用光学積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。
【0103】
<フレキシブル画像表示装置用光学積層体>
フレキシブル画像表示装置用光学積層体は、本発明の円偏光板と、屈曲耐性のある画像表示素子である有機EL表示素子とからなる。また、フレキシブル画像表示装置用光学積層体は、屈曲耐性のある前面板を有する。さらに、タッチセンサパネルを入力手段として備えることがある。この場合の円偏光板、前面板及びタッチセンサパネルの積層順は、例えば視認側から前面板、円偏光板、タッチセンサパネルの順であってもよい。積層順は、前面板、タッチセンサパネル、円偏光板の順であることが好ましい。タッチセンサパネルよりも視認側に円偏光板が存在すると、タッチセンサパネルの配線パターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、フレキシブル画像表示装置用光学積層体は、前面板、偏光板、タッチセンサのパネルいずれかの層の少なくとも一面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【0104】
<前面板>
画像表示装置において、円偏光板の視認側には、前面板を配置することができる。前面板は通常、粘着剤層又は接着剤層を介して、本発明の円偏光板の偏光子101に積層することができる。
【0105】
前面板としては、ガラス又は樹脂フィルムからなるものが挙げられ、これらの少なくとも一面にハードコート層を含んでいてもよい。ガラスとしては、例えば、高透過ガラスや、強化ガラスを用いることができる。特に薄い透明面材を使用する場合には、化学強化を施したガラスが好ましい。ガラスの厚みは、例えば100μm~5mmとすることができる。
【0106】
本発明の円偏光板をフレキシブル画像表示装置に適用する場合、用いられる前面板は可撓性(フレキシブルな特性)が求められる。この点から、当該前面板は樹脂フィルムからなるものが好ましく、上述のとおり、その少なくとも一面にハードコート層を含んでいてもよい。ハードコート層を含み、樹脂フィルムからなる前面板は、既存のガラスのように硬直ではなく、フレキシブルな特性を有することができる。この場合のハードコート層の厚さはフレキシブルな特性を損なわない範囲であれば特に限定されず、例えば、5~100μmであってもよい。
【0107】
前面板として用いられる樹脂フィルムの材質としては、前記保護フィルム102の材質として例示したものと同じものが挙げられる。もちろん、2種以上の材質であっても、実用的な光線透過率のフィルムであればよい。かかる材質の樹脂フィルムから、光線透過率、フレキシブルな特性や耐久性等を考慮して、厚み等を最適化できる。前面板としては、位相差特性を有さないもの(未延伸フィルム)が好ましいが、許容できる位相差値であれば、1軸又は2軸延伸フィルムであってもよい。中でも、前面板に用いる樹脂フィルムとしては、透明性及び耐熱性に優れたポリアミドイミドフィルム又はポリイミドフィルム、1軸又は2軸延伸ポリエステルフィルム、透明性及び耐熱性に優れるとともに、フィルムの大型化に対応できるシクロオレフィン系誘導体フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム及び透明性と光学的に異方性のないトリアセチルセルロース及びイソブチルエステルセルロースフィルムが好ましい。この場合の樹脂フィルムの厚さは5~200μm、好ましくは、20~100μmであってもよい。
【0108】
<遮光パターン>
遮光パターンは、ベゼルと呼ばれる画像表示装置の画像表示面の周囲の一部に、例えば、画像表示面側から視認者が画像をみたとき、配線が視認されないため等の理由で配設される。かかる遮光パターンは、画像表示装置用光学積層体を構成する前面板、円偏光板のいずれかの少なくとも一面に形成される。当該画像表示装置用光学積層体に入力手段としてタッチセンサパネルを取り付ける場合には、当該タッチセンサパネルに遮光パターンを設けることもある。遮光パターンは上述のように、表示装置の各配線を隠し使用者に視認されないようにすることができる。遮光パターンの色や材質は特に制限されることはなく、黒色、白色、金色等の多様な色を有する樹脂物質で形成することができる。一実施形態において、遮光パターンの厚さは2μm~50μmであってもよく、好ましくは4μm~30μmであってもよく、より好ましくは6μm~15μmの範囲であってもよい。また、遮光パターンと表示部の間の段差による気泡混入及び境界部の視認を抑制するために、遮光パターンに形状を付与することができる。
【0109】
<タッチセンサパネル>
本発明の円偏光板を備えた画像表示装置は、さらにタッチセンサを入力手段として備えることができ、この場合は通常、タッチセンサパネルを組み込むことで実現できる。タッチセンサの方式としては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等様々な様式が提案されており、いずれの方式でも構わない。中でも静電容量方式が好ましい。静電容量方式タッチセンサは、活性領域及び前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域(表示部)に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域(非表示部)に対応する領域である。タッチセンサパネルは、フレキシブルな特性を有する基板と;前記基板の活性領域に形成された感知パターンと;前記基板の非活性領域に形成され、前記感知パターンとパッド部を介して外部の駆動回路と接続するための各センシングラインを含むことができる。フレキシブルな特性を有する基板としては、前記前面板50の透明基板と同様の材料が使用できる。タッチセンサパネルの基板は、靱性が2,000MPa%以上のものがタッチセンサパネルに生じ得るクラックを抑制する観点から好ましい。より好ましくは靱性が2,000MPa%~30,000MPa%である。ここで、靭性は、高分子材料の引張試験を通じて得られる応力(MPa)-ひずみ(%)曲線(Stress-Strain Curve)において、破壊点までの曲線の下部面積として定義される。
【0110】
図5に示される第4粘着剤層30dは、前面板50と円偏光板の最上層である偏光子101とを貼合するための貼合層である。第4粘着剤層30dについては、上述の粘着剤層の記載が引用される。
【0111】
光学積層体(フレキシブル画像表示装置用光学積層体である場合を含む。)は、偏光子101の表面を仮着保護するためのプロテクトフィルムを含むことができる。プロテクトフィルムは、基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成される。粘着剤層については上述の記述が引用される。基材フィルムを構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂であることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂である。
【0112】
本発明に係る光学積層体(フレキシブル画像表示装置用光学積層体である場合を含む。)及び円偏光板は、画像表示装置、とりわけ有機EL画像表示装置に好適に適用することができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0114】
<測定方法及び評価方法>
(1)偏光子のホウ素含有量の測定
偏光子0.2gを1.9質量%マンニトール水溶液200gに溶解した。得られた水溶液を1mol/L NaOH水溶液で滴定し、中和に要したNaOH液の量と検量線の比較により、偏光子のホウ素含有量(質量%)を算出した。結果を表1に示す。
【0115】
(2)ホウ酸架橋度指数の算出
ウルトラミクロトーム(LEICA社製 商品名「LEICA ウルトラミクロトーム EM UC7i」)を用いて偏光板の断面加工を実施した。得られた偏光板断面の偏光子の厚み方向中央の位置について、レーザーラマン分光光度計(商品名:「NRS-5100」、日本分光株式会社製)を用いて、下記の条件で、波数780cm-1におけるラマン散乱光強度、および波数850cm-1におけるラマン散乱光強度をそれぞれ求め、次いでこれらの波数のラマン散乱光強度を除算(波数780cm-1におけるラマン散乱光強度/波数850cm-1におけるラマン散乱光強度)し、ホウ酸架橋度指数を算出した。結果を表1に示す。
励起波長 :532nm
グレーチング:600 l/mm
スリット幅 :100×1000μm
アパーチャ :φ40μm
対物レンズ :100倍
対物レンズ :100倍
【0116】
(3)剥離性フィルムの透湿度の測定
JIS Z 0208に基づき透湿度を測定した。温湿度条件は、温度40℃、相対湿度90%RHとした。
【0117】
(4)単体透過率、視感度補正偏光度の測定
円偏光板の単体透過率、視感度補正偏光度は円偏光板の偏光子側へ、プリズムからの直線偏光を入射させて、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製、V7100)にて測定した。波長380nm~780nmの範囲においてMD透過率とTD透過率を求め、式(A)、式(B)に基づいて各波長における単体透過率、偏光度を算出した。さらにJISZ8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正偏光度(Py)を求めた。なお、「MD透過率」とは、グラントムソンプリズム(Glan-Thompson prism)から出る偏光の向きと偏光板サンプルの透過軸を平行にしたときの透過率である。式(A)、式(B)においては「MD透過率」を「MD」と表す。また、「TD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと偏光板サンプルの透過軸を直交にしたときの透過率であり、式(A)、式(B)においては「TD透過率」を「TD」と表す。
単体透過率(%)=(MD+TD)/2 式(A)
偏光度(%)={(MD-TD)/(MD+TD)}×100 式(B)
【0118】
(5)円偏光板の耐熱試験
実施例で得られた円偏光板を140mm×70mmの大きさの長方形に裁断した。この際、偏光子の吸収軸と長方形の短辺とが平行になるように裁断した。裁断した円偏光板を、粘着剤層(2)を介して、厚みが0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、品番:EAGLE XG(登録商標))に貼合して評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを温度85℃の乾燥条件下で500時間保管する耐熱試験を行い、試験後の評価用サンプルを目視で観察した。結果を以下の基準で分類し、表1にまとめた。
【0119】
[耐熱試験の評価基準]
A:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がみられない。
B:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
C:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。
【0120】
(6)円偏光板の湿熱耐久性試験
実施例で得られた円偏光板を30mm×30mmの大きさの正方形に裁断した。この際、偏光子の吸収軸と正方形の辺とが平行になるように裁断した。裁断した円偏光板を、粘着剤層(2)を介して、40mm×40mmの無アルカリガラス(コーニング社製、品番:EAGLE XG(登録商標))に貼合し、さらに偏光子面の上に粘着剤層を介して、40mm×40mmの無アルカリガラス(コーニング社製、品番:EAGLE XG(登録商標))に貼合して評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルについて、視感度補正偏光度Pyの測定を行った。
【0121】
次に、評価用サンプルを温度60℃、相対湿度95%RHの条件下で500時間保管する湿熱耐久性試験を行い、試験後の評価用サンプルについて、視感度補正偏光度Pyの測定を行った。試験前後における視感度補正偏光度Pyの測定値、及びこれらの差の絶対値ΔPyを表1に記載した。
【0122】
(7)円偏光板の耐候性試験
実施例で得られた円偏光板を30mm×30mmの大きさの正方形に裁断した。この際、偏光子の吸収軸と正方形の辺とが平行になるように裁断した。裁断した円偏光板を、粘着剤層(2)を介して、40mm×40mmの無アルカリガラス(コーニング社製、品番:EAGLE XG(登録商標))に貼合して評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルについて、450nm単体透過率の測定を行った。
【0123】
次に、アルミニウム板(反射板)の上に評価用サンプルを、偏光子101側から紫外線照射されるように設置し、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件でサンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)に120時間投入し、耐候性試験を実施した。試験後の評価用サンプルについて、450nm単体透過率の測定を行った。試験前後における450nm単体透過率の測定値差の絶対値を表1に記載した。
【0124】
(8)積層体の吸光度測定
偏光子101を除く、保護フィルム102、ハードコート層103、第1貼合層30a、第1液晶硬化層201、第2貼合層30b、第2液晶硬化層202、及び第3貼合層30cを積層して積層体を作製した。なお、ハードコート層を有さない層構成においては、ハードコート層103の積層を行わない。第3貼合層30cを介して、積層体をガラスに貼合した。シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製ZF-14)に粘着剤層を貼合した後、この粘着剤層を介して、COPフィルムを、保護フィルム102へ貼り合わせた。このようにして、評価用積層体を作製した。
【0125】
評価用積層体を分光光度計UV-2450(株式会社島津製作所製)にセットし、ダブルビーム法により1nmステップ300~800nmの波長範囲で吸光度を測定した。作製した積層体の波長350nmおよび410nmにおける吸光度を表1に示す。なお、波長350nmおよび410nmにおける、ガラス及び粘着剤付きCOPフィルムを合わせた吸光度は0.06以下であるから無視することができる。
【0126】
<円偏光板の構成要素の準備>
(1)偏光子1の作製
厚み20μm、重合度2400、ケン化度99%以上のポリビニルアルコールフィルムを、熱ロール上で延伸倍率4.1倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったまま、水100質量部あたりヨウ素0.05質量部及びヨウ化カリウム5質量部を含有する染色浴に28℃で60秒間浸漬した。
【0127】
次いで、水100質量部あたりホウ酸5.5質量部及びヨウ化カリウム15質量部を含有するホウ酸水溶液1に、64℃で110秒間浸漬した。次いで、水100質量部あたりホウ酸5.5質量部及びヨウ化カリウム15質量部を含有するホウ酸水溶液2に、67℃で30秒間浸漬した。その後、10℃の純水を用いて水洗し、乾燥して、偏光子1を得た。偏光子1の厚みは8μmであり、ホウ素含有量は4.3質量%あった。
【0128】
(2)偏光子2の作製
厚み20μm、重合度2400、ケン化度99%以上のポリビニルアルコールフィルムを、熱ロール上で延伸倍率4.1倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったまま、水100質量部あたりヨウ素0.05質量部及びヨウ化カリウム5質量部を含有する染色浴に28℃で60秒間浸漬した。
【0129】
次いで、水100質量部あたりホウ酸5.5質量部及びヨウ化カリウム15質量部を含有するホウ酸水溶液1に、64℃で110秒間浸漬した。次いで、水100質量部あたりホウ酸2.3質量部及びヨウ化カリウム15質量部を含有するホウ酸水溶液2に、67℃で30秒間浸漬した。その後、10℃の純水を用いて水洗し、乾燥して、偏光子2を得た。偏光子2の厚みは8μmであり、ホウ素含有量は3.2質量%あった。
【0130】
(3)保護フィルムA、B、C、D、E及び剥離性フィルムFの準備
以下の5種類の保護フィルム及び1種類の剥離性フィルムを準備した。
・保護フィルムA:厚み27μmのハードコート層付シクロオレフィンフィルム(COP-HC)。ハードコート層の厚みは2μmで、透湿度は10g/m2・24hrであった。紫外線吸収性を有する。
・保護フィルムB:厚み25μmのシクロオレフィンフィルム(COP)。透湿度は12g/m2・24hrであった。紫外線吸収性を有する。
・保護フィルムC:厚み23μmのCOP。紫外線吸収性を有さない。
・保護フィルムD:厚み13μmのCOP。紫外線吸収性を有する。
・保護フィルムE:厚み27μmのCOP-HC。紫外線吸収性を有するとともに、波長410nm付近の短波長の可視光に対する吸収性も有する。
・剥離性フィルムF:TD80UL。富士フイルム株式会社製のトリアセチルセルロースフィルム。厚みは80μmであり、透湿度は502g/m2・24hrであった。
【0131】
(4)直線偏光板1の作製
作製した偏光子1の片面に水系接着剤を介して保護フィルムAを、保護フィルムAと反対面に純水を介して剥離性フィルムFを、ロール貼合機を用いて貼合した後に80℃で3分間乾燥処理を行った。その後、偏光子から剥離性フィルムFを剥離して、偏光子1の片面にのみ保護フィルムが積層された直線偏光板1を得た。直線偏光板1は、偏光子1、接着剤層及び保護フィルムAがこの順に積層されたものであった。
【0132】
(5)直線偏光板2の作製
ロール貼合機を用いて貼合した後の乾燥処理の温度を100℃に変更したこと以外は偏直線光板1と同様にして直線偏光板2を作製した。
【0133】
(6)直線偏光板3の作製
偏光子1を偏光子2に変更したこと以外は直線偏光板1と同様にして直線偏光板3を作製した。
【0134】
(7)直線偏光板4の作製
偏光子1を偏光子2に変更したこと以外は直線偏光板2と同様にして直線偏光板4を作製した。
【0135】
(8)直線偏光板5の作製
保護フィルムAを保護フィルムBに変更したこと以外は直線偏光板1と同様にして直線偏光板5を作製した。
【0136】
(9)直線偏光板6の作製
保護フィルムAを保護フィルムCに変更したこと以外は直線偏光板1と同様にして直線偏光板6を作製した。
【0137】
(10)直線偏光板7の作製
保護フィルムAを保護フィルムDに変更したこと以外は直線偏光板1と同様にして直線偏光板7を作製した。
【0138】
(11)直線偏光板8の作製
保護フィルムAを保護フィルムEに変更したこと以外は直線偏光板1と同様にして直線偏光板8を作製した。
【0139】
(12)第1液晶硬化層A(1/2波長位相差層の作製)
透明樹脂で形成された基材層上に、配向層形成用組成物を塗布し乾燥することにより、λ/2配向処理を行った。次いで、配向層上に、ディスコチック重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物を塗布し、加熱及びUV照射をして重合性液晶化合物の配向を固定化することにより、基材層の配向層上に、厚み2μmの液晶硬化層としての1/2波長位相差層を形成した。
【0140】
(13)第2液晶硬化層A(1/4波長位相差層の作製)
透明樹脂で形成された基材層上のラビング処理された配向層に、棒状のネマチック重合性液晶化合物(液晶モノマー)を含む液晶層形成用組成物を塗布し、屈折率異方性を保持した状態で固化することにより、基材層の配向層上に、厚み1μmの液晶硬化層としての1/4波長位相差層を形成した。
【0141】
(14)活性エネルギー線硬化型接着剤Aの調製
下記成分を配合して混合した後、脱泡して、活性エネルギー線硬化型接着剤Aを調製した。
[カチオン重合性化合物]
・ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名:EX-211L、ナガセケムテックス(株)製):30質量部
・3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名:OXT-221、東亞合成(株)製):13質量部
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:EP-4100E、(株)ADEKA、粘度13Pa・s(温度25℃)):12質量部
・芳香族含有オキセタン化合物(商品名:TCM-104、TRONLY製):45質量部
[光カチオン重合開始剤]
・CPI-100P、サンアプロ(株)製、50%プロピレンカーボネート溶液:2.25質量部(固形分量)
[光増感助剤]
・1,4-ジエトキシナフタレン:1質量部
【0142】
(15)基材層付き位相差層構造体Aの作製
基材層上の第1液晶硬化層A(1/2波長位相差層)の表面、及び、基材層上の第2液晶硬化層A(1/4波長位相差層)の表面のそれぞれにコロナ処理を施した。これら2つの位相差層の遅相軸のなす角度が60°となるように、それぞれのコロナ処理面どうしを、上記で調製した活性エネルギー線硬化型接着剤Aを用いて貼合した。その後、1/4波長位相差層側から、紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムズ(株)製〕を用い、積算光量400mJ/cm2(UV-B)で紫外線照射を行って活性エネルギー線硬化型接着剤Aを硬化させ、接着剤層を形成した。貼合は、ラミネータを用いて行い、活性エネルギー線硬化型接着剤Aは、硬化後の接着剤層の厚みが3μmとなるように塗布した。これにより、基材層、配向層、1/2波長位相差層(第1液晶硬化層)、接着剤層(第2貼合層)、1/4波長位相差層(第2液晶硬化層)、配向層、及び基材層がこの順に積層された基材層付き位相差層構造体Aを得た。1/2波長位相差層(第1液晶硬化層)、接着剤層(第2貼合層)、及び1/4波長位相差層(第2液晶硬化層)の合計厚みは6μmであった。
【0143】
(16)第1液晶硬化層B(1/4波長位相差層)の作製
透明樹脂で形成された基材層上に配向層を形成し、棒状のネマチック重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物を塗布し、第1液晶硬化層Bを作製した。第1液晶硬化層Bは、1/4波長位相差特性を有していた。第1液晶硬化層Bの厚みは2μmであった。
【0144】
(17)第2液晶硬化層B(ポジティブC層)の作製
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート10.0質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート10.0質量部と、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート10.0質量部と、光重合開始剤としてイルガキュア907を1.50質量部とを、溶媒であるメチルエチルケトン70.0質量部中で溶解させ、配向層形成用組成物を調製した。続いて、光重合性ネマチック液晶化合物20.0質量部と、光重合開始剤としてイルガキュア907を1.0質量部とを、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80.0質量部中に溶解させ、液晶層形成用組成物を調製した。
【0145】
基材層の片面にコロナ処理を施した。コロナ処理面に、上記で調製した配向層形成用組成物をバーコーターにて塗布した。塗布層に対し温度80℃で60秒間の熱処理を施した後、紫外線を照射して、配向層形成用組成物を重合及び硬化させた。このようにして基材層上に厚み2.2μmの配向層を形成した。配向層上に、上記で調製した液晶層形成用組成物を塗布した。塗布層に対し温度80℃で60秒間の熱処理を施した後、紫外線を照射して、液晶層形成用組成物を重合及び硬化させた。このようにして配向層上に厚み0.7μmの第2液晶硬化層Bを形成した。第2液晶硬化層Bは、ポジティブC層であった。
【0146】
(18)活性エネルギー線硬化型接着剤Bの調製
以下に示す成分を混合し、活性エネルギー線硬化型接着剤Bを調製した。
3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:CEL2021P、株式会社ダイセル製):70質量部
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名:EX-211、ナガセケムテックス株式会社製):20質量部
2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(商品名:EX-121、ナガセケムテックス株式会社製):10質量部
カチオン重合開始剤(商品名:CPI-100、50%溶液、サンアプロ株式会社製):4.5質量部(実質固形分2.25質量部)
1,4-ジエトキシナフタレン:2.0質量部
【0147】
(19)基材層付き位相差層構造体Bの作製
第1液晶硬化層Bと第2液晶硬化層Bとを、活性エネルギー線硬化型接着剤B(厚み1μm)により、それぞれの液晶硬化層面(基材フィルムとは反対側の面)が貼合面となるように貼り合わせた。紫外線を照射して活性エネルギー線硬化型接着剤Bを硬化させて、基材層、配向層、第1液晶硬化層B、接着剤層(第2貼合層)、第2液晶硬化層B、配向層、及び基材層がこの順に積層された基材層付き位相差層構造体Bを得た。第1液晶硬化層Bと、接着剤層(第2貼合層)と、第2液晶硬化層Bとを含む位相差積層体の厚みは6μmであった。基材層付き位相差層構造体Bは、紫外線吸収性を有する。
【0148】
(20)粘着剤層の準備
以下の粘着剤層を準備した。
粘着剤層(1A):厚み5μmのアクリル系粘着剤層
粘着剤層(1B):厚み5μmのアクリル系粘着剤層。波長410nm付近の短波長の可視光に対する吸収性を有する。
粘着剤層(2):厚み15μmの粘着剤層
【0149】
<円偏光板の作製>
〔実施例1〕
上記で作製した基材層付き位相差層構造体Aの1/2波長位相差層側の基材層及び配向層を剥離して露出した1/2波長位相差層と、上記で作製した直線偏光板1の保護フィルムA側(ハードコート層の表面)とを、第1貼合層である粘着剤層(1A)を用いて貼合した。1/2波長位相差層と直線偏光板1との貼合は、1/2波長位相差層の遅相軸と偏光子1の透過軸とのなす角度が15°となるように行った。次いで、1/4波長位相差層側の配向層及び基材層を剥離して露出した1/4波長位相差層に、粘着剤層(2)を貼合して円偏光板(1)を得た。各貼合面には、コロナ処理を実施した。
【0150】
〔実施例2〕
直線偏光板1の保護フィルムAの貼合面(ハードコート層の表面)及び粘着剤層(1A)の貼合面に、コロナ処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板(2)を得た。
【0151】
〔実施例3〕
直線偏光板1に代えて、直線偏光板2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板(3)を得た。
【0152】
〔実施例4〕
直線偏光板1に代えて、直線偏光板3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板(4)を得た。
【0153】
〔実施例5〕
直線偏光板1に代えて、直線偏光板4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板(5)を得た。
【0154】
〔実施例6〕
直線偏光板1に代えて、直線偏光板5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板(6)を得た。
【0155】
〔実施例7〕
直線偏光板1に代えて、直線偏光板6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板(7)を得た。
【0156】
〔実施例8〕
直線偏光板1に代えて、直線偏光板6を用い、第1貼合層として粘着剤層(1B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板(8)を得た。
【0157】
〔実施例9〕
直線偏光板1に代えて、直線偏光板7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板(9)を得た。
【0158】
〔実施例10〕
直線偏光板1に代えて、直線偏光板8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして円偏光板(10)を得た。
【0159】
〔実施例11〕
上記で作製した基材層付き位相差層構造体Bの第1液晶硬化層B側の基材層を剥離して露出した第1液晶硬化層Bと、上記で作製した直線偏光板6の保護フィルムC側とを、第1貼合層である粘着剤層(1A)を用いて貼合した。第1液晶硬化層Bと直線偏光板6との貼合は、第1液晶硬化層Bの遅相軸と偏光子1の透過軸とのなす角度が45°となるように行った。次いで、第2液晶硬化層B側の基材層を剥離して露出した第2液晶硬化層Bと、粘着剤層(2)を貼合して円偏光板(11)を得た。各貼合面には、コロナ処理を実施した。
【0160】
得られた円偏光板について、上述の耐熱試験、湿熱耐久性試験、及び耐候性試験を実施した。結果を表1に示す。
【0161】
【符号の説明】
【0162】
1,2,3 円偏光板、4,5 光学積層体、10,11 直線偏光板、20 位相差層構造体、30a 第1貼合層、30b 第2貼合層、30c 第3貼合層、30d 第4貼合層、40 画像表示素子、50 前面板、101 偏光子、102 保護フィルム、103 ハードコート層、201 第1液晶硬化層、202 第2液晶硬化層、203 セパレートフィルム。