(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ドライアイス噴射装置
(51)【国際特許分類】
B24C 5/04 20060101AFI20240329BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20240329BHJP
B08B 7/00 20060101ALI20240329BHJP
B01J 2/02 20060101ALI20240329BHJP
B24C 1/00 20060101ALI20240329BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B24C5/04 A
B05B7/04
B08B7/00
B01J2/02 A
B24C1/00 A
B24C11/00 E
(21)【出願番号】P 2021180478
(22)【出願日】2021-11-04
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591107034
【氏名又は名称】日本液炭株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 翔世
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-063972(JP,A)
【文献】特開平08-309663(JP,A)
【文献】特開2002-177828(JP,A)
【文献】特開2005-111575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C1/00-11/00
B01J2/00-2/30
B05B1/00-3/18
B05B7/00-9/08
B08B1/00-1/04
B08B5/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給経路と、
圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給経路と、
前記液化炭酸ガス供給経路に位置し、液化炭酸ガスの流路を規制するオリフィスと、
前記オリフィスの二次側に位置し、前記液化炭酸ガスが断熱膨張してドライアイスを生成する造粒部と、
前記ドライアイスを噴射する噴射ノズルと、を備え、
前記噴射ノズルの内側の空間は、基端に位置する大径部と、先端に位置し、前記大径部と連通するとともに、前記噴射ノズルの軸方向と垂直な方向の断面積が前記大径部よりも小さい小径部と、を有し、
前記小径部の先端が、前記ドライアイスの噴射口であり、
前記造粒部の先端が、前記小径部に開口し、
前記圧縮ガス供給経路が、前記大径部と連通するように前記噴射ノズルと接続され、前記圧縮ガスとともに、前記ドライアイスが前記噴射口から噴射される
ものであり、
前記大径部と前記小径部との間に、断面積が前記大径部から前記小径部に向かって連続して小さくなる連結部が位置し、
前記噴射ノズルの軸方向における前記小径部の長さをLとし、
前記造粒部の先端から前記小径部の先端までの長さをLgとした場合、下式(1)の関係を満たす、
ドライアイス噴射装置。
1/2・L≦Lg≦7/8・L ・・・(1)
【請求項2】
前記造粒部が、前記噴射ノズルの軸方向に延在する配管であり、
前記オリフィスの流路面積よりも、前記噴射ノズルの軸方向と垂直な方向における前記造粒部の断面積が大きく、
前記造粒部の断面積よりも、前記小径部の断面積が大きい、
請求項1に記載のドライアイス噴射装置。
【請求項3】
前記圧縮ガスとともに、前記噴射ノズルの内側の空間に薬剤が供給される、
請求項1又は2に記載のドライアイス噴射装置。
【請求項4】
前記オリフィスとして、ニードル弁を用いる、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のドライアイス噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイス噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドライアイススノーを噴射するための洗浄ノズルを含むドライアイス噴射装置が開示されている。
また、特許文献2には、ドライアイススノーの噴射ノズルからパルス的に噴射可能なドライアイス噴射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4578644号公報
【文献】特許第5065078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示された従来のドライアイス噴射装置において、長時間連続して運転する場合、液化炭酸ガスが断熱膨張してドライアイスを生成する造粒配管(以下、「造粒部」ともいう)が閉塞するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、液化炭酸ガスが断熱膨張してドライアイスを生成する造粒部の閉塞を抑制し、長時間の連続運転が可能なドライアイス噴射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給経路と、
圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給経路と、
前記液化炭酸ガス供給経路に位置し、液化炭酸ガスの流路を規制するオリフィスと、
前記オリフィスの二次側に位置し、前記液化炭酸ガスが断熱膨張してドライアイスを生成する造粒部と、
前記ドライアイスを噴射する噴射ノズルと、を備え、
前記噴射ノズルの内側の空間は、基端に位置する大径部と、先端に位置し、前記大径部と連通するとともに、前記噴射ノズルの軸方向と垂直な方向の断面積が前記大径部よりも小さい小径部と、を有し、
前記小径部の先端が、前記ドライアイスの噴射口であり、
前記造粒部の先端が、前記小径部に開口し、
前記圧縮ガス供給経路が、前記大径部と連通するように前記噴射ノズルと接続され、前記圧縮ガスとともに、前記ドライアイスが前記噴射口から噴射されるものであり、
前記大径部と前記小径部との間に、断面積が前記大径部から前記小径部に向かって連続して小さくなる連結部が位置し、
前記噴射ノズルの軸方向における前記小径部の長さをLとし、
前記造粒部の先端から前記小径部の先端までの長さをLgとした場合、下式(1)の関係を満たす、ドライアイス噴射装置。
1/2・L≦Lg≦7/8・L ・・・(1)
[2] 前記造粒部が、前記噴射ノズルの軸方向に延在する配管であり、
前記オリフィスの流路面積よりも、前記噴射ノズルの軸方向と垂直な方向における前記造粒部の断面積が大きく、
前記造粒部の断面積よりも、前記小径部の断面積が大きい、請求項1に記載のドライアイス噴射装置。
[3] 前記圧縮ガスとともに、前記噴射ノズルの内側の空間に薬剤が供給される、請求項1又は2に記載のドライアイス噴射装置。
[4] 前記オリフィスとして、ニードル弁を用いる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のドライアイス噴射装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のドライアイス噴射装置は、液化炭酸ガスが断熱膨張してドライアイスを生成する造粒部の閉塞を抑制し、長時間の連続運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を適用した一実施形態であるドライアイス噴射装置の構成を示す系統図である。
【
図2】本発明を適用した一実施形態であるドライアイス噴射装置のニードル弁周辺の拡大断面図である。
【
図3】本発明を適用した一実施形態であるドライアイス噴射装置の、他の構成を示す模式図である。
【
図4】本発明に適用可能な噴射ノズルの変形例を示す断面図である。
【
図5】本発明に適用可能な噴射ノズルの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した一実施形態であるドライアイス噴射装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
先ず、本発明を適用した一実施形態であるドライアイス噴射装置の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態のドライアイス噴射装置1を示す系統図である。
図2は、
図1に示すドライアイス噴射装置のニードル弁周辺の拡大断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のドライアイス噴射装置1は、液化炭酸ガス供給経路L1と、圧縮ガス供給経路L2と、噴射ノズル2と、造粒部3と、ニードル弁4と、電磁弁5と、液化炭酸ガス供給源6と、圧縮ガス供給源9と、を備えて概略構成されている。
【0012】
液化炭酸ガス供給経路L1は、液化炭酸ガス供給源6とニードル弁4との間に位置し、液化炭酸ガス供給源6から導出された液化炭酸ガスを、後述するニードル弁4まで供給するための送液経路である。具体的には、液化炭酸ガス供給経路L1は、一端が液化炭酸ガス供給源6と接続され、他端が後述するニードル弁4の第2流路4bと接続される。液化炭酸ガス供給経路L1としては、ガス透過性が低く、耐圧性に優れた材質からなる配管を適用できる。
【0013】
図2に示すように、液化炭酸ガス供給経路L1は、内側の空間が液化炭酸ガスの送液経路となっている。ここで、本実施形態において、液化炭酸ガス供給経路L1における液化炭酸ガスの送液経路の流路面積は、液化炭酸ガスの送液経路の、送液方向に対して垂直方向の断面積をいう。
【0014】
本実施形態では、液化炭酸ガス供給経路L1における液化炭酸ガスの送液経路の流路面積は、ニードル弁4との接続部まで一定となっている。したがって、炭酸ガスの送液経路を構成する液化炭酸ガス供給経路L1では、液化炭酸ガスが断熱膨張することがなく、ドライアイスが生成されないため、流路の閉塞を抑制できる。
【0015】
図1に示すように、液化炭酸ガス供給経路L1には、ニードル弁4の一次側に電磁弁5が位置する。本実施形態のドライアイス噴射装置1によれば、電磁弁5により、液化炭酸ガス供給経路L1の開閉状態を選択できる。
【0016】
ニードル弁4は、
図1及び
図2に示すように、電磁弁5の二次側の、液化炭酸ガス供給経路L1に位置する。ニードル弁4は、液化炭酸ガスを断熱膨張させてドライアイススノーを生成するためのオリフィス(流路の絞り部、以下、単に「絞り部」ともいう)として、さらに、液化炭酸ガスの流量を調整するための流量調節弁として機能する。本実施形態では、ニードル弁4は、上記機能のうち、オリフィス(絞り部)としての機能を奏するものであれば、特に限定されない。ニードル弁4としては、液化ガスに使用される公知のものを適用できる。以下、ニードル弁4の構成の一例を説明する。
【0017】
ニードル弁4は、
図2に示すように、一方向に延在する筒状の内部空間4Aと、内部空間4Aを介して連通する第1流路4a及び第2流路4bと、内部空間4Aに位置し、内部空間4Aの軸方向(一方向)に摺動可能な軸部4Bと、軸部4Bの先端に位置し、内部空間4A側から第1流路4aの内側に挿入することで、第1流路4aの開口面積を規制する先端部4Cとを有する。
【0018】
ニードル弁4によれば、軸部4Bを内部空間4Aの軸方向に移動させて、先端部4Cを第1流路4aの内側から離間させることで、内部空間4Aと連通する第1流路4aの開口面積を大きくすることができる。すなわち、液化炭酸ガスの流量を大きくすることができる。
【0019】
これに対して、軸部4Bを内部空間4Aの軸方向に移動させて、先端部4Cを第1流路4aの内側に挿入することで、内部空間4Aと連通する第1流路4aの開口面積を小さくすることができる。すなわち、液化炭酸ガスの流量を小さくすることができる。
【0020】
本実施形態のドライアイス噴射装置1では、ニードル弁4の第2流路4bが液化炭酸ガス供給経路L1と接続され、ニードル弁4の第1流路4aが造粒部3と接続されることが好ましい。これにより、液化炭酸ガス供給経路L1から電磁弁5を介してニードル弁4に供給される液化炭酸ガスは、第2流路4bから内部空間4A、内部空間4Aから第1流路4aへと移送された後、造粒部3に導出される。
【0021】
本実施形態では、ニードル弁4の内側に位置する第2流路4b、内部空間4A、及び第1流路4aが、液化炭酸ガスの送液経路を構成している。本実施形態において、ニードル弁4における液化炭酸ガスの送液経路の流路面積は、液化炭酸ガスの送液経路の、送液方向に対して垂直方向の断面積である。
【0022】
本実施形態では、ニードル弁4における液化炭酸ガスの送液経路の流路面積が、一次側から二次側に向かって同一であるか、減少することが好ましい。具体的には、ニードル弁4における液化炭酸ガスの送液経路は、一次側に位置する第2流路4bの流路面積が最も大きい。次いで、第2流路4bと第1流路4aとの間に位置する内部空間4Aの流路面積は、第2流路4bの流路面積と同一であるか、第2流路4bの流路面積よりも小さい。そして、これらの中で最も二次側に位置する第1流路4aの流路面積は、内部空間4Aの流路面積よりも小さい。したがって、ニードル弁4における液化炭酸ガスの送液経路では、液化炭酸ガスが断熱膨張することがなく、ドライアイスが生成されないため、流路の閉塞を抑制できる。
【0023】
本実施形態では、ニードル弁4の内側の送液経路のうち、最も後段に位置する第1流路4aまでが、液化炭酸ガスの送液経路となっている。すなわち、先端部4Cによって開口面積が規制される第1流路4aが、液化炭酸ガスの送液経路におけるオリフィス(絞り部)を構成する。そして、第1流路4aの流路面積Doが、オリフィス(絞り部)の流路面積となる。
【0024】
噴射ノズル2は、
図2に示すように、噴射ノズル本体2Aを有する。噴射ノズル2は、噴射ノズル本体2Aの噴射口2Bから後述する造粒部3で生成されたドライアイススノー(ドライアイス)を噴射する。
【0025】
噴射ノズル本体2Aは、両端が開口する筒状の部材である。噴射ノズル本体2Aには、ニードル弁4と対向する基端側から造粒部3が挿入されている。そして、噴射ノズル本体2Aの基端の開口は、造粒部3によって閉塞されている。一方、噴射ノズル本体2Aの先端側、すなわち、先端の開口は、ドライアイススノーの噴射口2Bとなっている。
【0026】
噴射ノズル本体2Aが延在する方向を軸方向とした場合、軸方向と垂直方向の噴射口2Bの断面形状(つまり後述の小径部2bの断面形状)は、ドライアイススノーが噴射可能な形状であれば特に限定されない。このような断面形状としては、円形、楕円形、長円形、角形、長方形等が挙げられる。
【0027】
噴射ノズル2の内側の空間(すなわち、噴射ノズル本体2Aの内側の空間)は、基端に位置する大径部2aと、先端に位置する小径部2bと、大径部2aと小径部2bとの間に位置する連結部2cとを有する。
【0028】
大径部2aは、噴射ノズル本体2Aの基端から先端側に向かって延在する筒状の空間である。大径部2aには、造粒部3が貫通する。また、大径部2aには、開口部2Cが位置する。開口部2Cにおいて、圧縮ガス供給経路L2は、噴射ノズル本体2A(噴射ノズル2)と接続される。
【0029】
小径部2bは、噴射ノズル本体2Aの先端から基端側に向かって延在する筒状の空間である。小径部2bには、造粒部3の先端3Aが開口する。また、小径部2bの先端は、噴射口2Bである。
【0030】
連結部2cは、噴射ノズル本体2Aの基端側から先端側に向かって漸次縮径された筒状の空間である。連結部2cを介して、大径部2aと小径部2bとが連通する。
【0031】
噴射ノズル本体2Aが延在する方向(換言すると、噴射ノズル2が延在する方向)を軸方向とした場合、軸方向と垂直方向の断面積は、大径部2aの断面積DLよりも小径部2bの断面積Dsが小さい。また、連結部2cの断面積は、軸方向と垂直方向の断面積が大径部2a側から小径部2b側に向かって連続して小さくなる。
【0032】
換言すると、噴射ノズル本体2Aの内側の空間の中心軸を含む、軸方向と並行な平面で断面視した際、筒状空間の直径は、大径部2aよりも小径部2bが小さい。また、大径部2a及び小径部2bと同様に連結部2cを断面視した際、連結部2cの直径は、大径部2a側から小径部2b側に向かって連続して小さくなる。
【0033】
造粒部3は、オリフィス(絞り部)として用いるニードル弁4の二次側に位置し、噴射ノズル2が延在する方向と同一の方向に延在する配管である。造粒部3は、ニードル弁(オリフィス)4を介して液化炭酸ガス供給経路L1と連通する。ここで、造粒部3を構成する配管の、延在方向に垂直方向の断面積Dcは、ニードル弁4を構成する第1流路4aの流路面積Doよりも大きい。すなわち、造粒部3では、ニードル弁4を介して供給された液化炭酸ガスが断熱膨張してドライアイスが生成される。
【0034】
本実施形態のドライアイス噴射装置1は、造粒部3が延在する方向と、噴射ノズル本体2Aの中心軸とが一致する(同軸である)。すなわち、噴射ノズル2と造粒部3とは、噴射ノズル本体2Aを外管とし、造粒部3を内管とする、二重管構造を構成する。
【0035】
造粒部3は、基端3Bがニードル弁4の第1流路4aと接続されている。造粒部3の先端3Aは、噴射ノズル本体2Aの基端側から挿入されて、噴射ノズル本体2Aの内側の空間に位置する。すなわち、造粒部3は、先端3Aが噴射ノズル本体2Aの小径部2bに開口する。これにより、造粒部3では、ニードル弁4の第1流路4aから造粒部3に供給された液化炭酸ガスが断熱膨張してドライアイスを生成する。生成したドライアイスは、造粒部3の先端3Aから噴射ノズル本体2Aの小径部2bへ連続して排出される。
【0036】
ここで、本実施形態では、
図2に示すように、噴射ノズル2(すなわち、噴射ノズル本体2A)の軸方向における小径部2bの長さ(「加速部」ともいう)をLとし、造粒部3の先端3Aから小径部2bの先端(すなわち、噴射口2B)までの長さをLgとした場合、下式(1)の関係を満たすことが好ましく、下式(2)の関係を満たすことがより好ましい。
1/8・L≦Lg<L ・・・(1)
1/2・L≦Lg≦7/8・L ・・・(2)
【0037】
上述した式(1)の関係を満たすことにより、造粒部3の内側の空間を、ベンチュリ効果によって陰圧に維持することができ、ドライアイス生成時の造粒部3の閉塞を抑制できる。
【0038】
なお、本実施形態のドライアイス噴射装置1は、造粒部3で生成したドライアイスを噴射ノズル2の噴射口2Bから噴射する構成であるため、造粒部3の断面積Dcは、小径部2bの断面積Dsよりも小さい。
【0039】
すなわち、本実施形態のドライアイス噴射装置1によれば、生成したドライアイスの供給経路において、オリフィス(第1流路4a)の流路面積Do、造粒部3の断面積Dc、及び小径部2bの断面積Dsが、Do<Dc<Dsの関係を満たすように構成されている。これにより、生成したドライアイスの供給経路の閉塞を抑制できる。
【0040】
圧縮ガス供給経路L2は、圧縮ガス供給源9と噴射ノズル2との間に位置し、圧縮ガス供給源9から導出された圧縮ガスを噴射ノズル2に供給するための経路である。圧縮ガス供給経路L2としては、ガス透過性が低く、耐圧性に優れた材質からなる配管を適用できる。
【0041】
具体的には、圧縮ガス供給経路L2は、一端が圧縮ガス供給源9と接続され、他端が噴射ノズル本体2Aの大径部2aに設けられた開口部2Cと接続される。これにより、本実施形態のドライアイス噴射装置1によれば、噴射ノズル2の基端側から内側の空間(すなわち、噴射ノズル本体2Aと造粒部3との間の空間)に圧縮ガスを供給し、噴射ノズル2の先端に位置する噴射口2Bから圧縮ガスとともにドライアイスを噴射できる。
【0042】
圧縮ガスは、特に限定されない。圧縮ガスとしては、窒素ガスや炭酸ガスなどの不活性ガスや、エアードライヤー等で得られた乾燥空気などを用いることができる。
【0043】
圧縮ガス供給経路L2には、電磁弁7及び調整弁8が位置する。本実施形態のドライアイス噴射装置1によれば、電磁弁7により、圧縮ガス供給経路L2の開閉状態を選択し、調整弁8により圧縮ガスの供給量を調整できる。
【0044】
本実施形態のドライアイス噴射装置1の用途は、ドライアイス(ドライアイススノー)の噴射によって達成できるものであれば、特に限定されない。例えば、本実施形態のドライアイス噴射装置1は、ドライアイススノーを噴射して被対象物を冷却する冷却装置として、冷却用途に用いることができる。また、本実施形態のドライアイス噴射装置1は、ドライアイスの粒径、及び圧縮ガスの供給量を調整し、被対象物をブラスト洗浄する洗浄装置として、洗浄用途に用いることができる。
【0045】
次に、本実施形態のドライアイス噴射装置1の運転方法として、洗浄装置として用いる場合について、
図1~
図2を参照しながら説明する。
本実施形態のドライアイス噴射装置1の運転方法は、先ず、電磁弁5を操作し、液化炭酸ガス供給経路L1を開放状態とする。これにより、液化炭酸ガス供給源6から導出された液化炭酸ガスが、液化炭酸ガス供給経路L1を介してニードル弁4に供給される。
【0046】
次に、ニードル弁4の軸部4Bを内部空間4Aの軸方向に移動させて、先端部4Cを第1流路4aの内側から離間させることで、内部空間4Aと第1流路4aとを連通させる。この際、軸部4Bの位置を調整し、第1流路4aの開口面積を調整することで、液化炭酸ガスの流量を調整できる。
【0047】
これにより、液化炭酸ガス供給経路L1からニードル弁4に供給された液化炭酸ガスは、第2流路4b、内部空間4A、及び第1流路4aを介して、造粒部3へ導出される。
【0048】
ここで、ニードル弁4の内側では、先端部4Cによって開口面積が規制される第1流路4aと内部空間4Aとの境界を含む領域から第1流路4aがオリフィス(絞り部)となるため、ニードル弁4の内側の液化炭酸ガスの流路のうち、先端部4C以降の第1流路4aで液化炭酸ガスが断熱膨張してドライアイスが生成されやすくなる。
【0049】
なお、オリフィス(絞り部)として用いるニードル弁4へ送液される液化炭酸ガスの温度は、送液される液化炭酸ガスの圧力における飽和温度以下に調整されることが好ましい。また、ニードル弁4に送液される液化炭酸ガスは、気液混合状態でないことが好ましい。
【0050】
次に、造粒部3において、さらに液化炭酸ガスが断熱膨張することでドライアイスが生成される。これにより、造粒部3では、ドライアイス(ドライアイススノー)の粒径が調整される。次いで、粒径が調整されたドライアイスは、造粒部3の先端3Aから、噴射ノズル本体2Aの内側の空間である小径部2bへ導出される。
【0051】
造粒部3の先端3Aから小径部2bへ導出するドライアイス(ドライアイススノー)の流量は、噴射ノズル2の噴射口2Bの出口面積(開口面積)に応じて適宜調整することができる。具体的には、ドライアイス(ドライアイススノー)の流量としては、10~500g/minが好ましい。
【0052】
次に、噴射ノズル2に補助ガス(アシストガス)として導入する圧縮ガスの供給量を調整する。具体的には、電磁弁7を操作して圧縮ガス供給経路L2を開放状態とし、調整弁8により圧縮ガスの供給圧力を調整する。圧縮ガスの供給圧力は、0.2MPaG以上で調整することが好ましい。これにより、圧縮ガス供給源9から導出された圧縮ガスが、圧縮ガス供給経路L2を介して、噴射ノズル本体2Aの内側の空間である大径部2aに所要の圧力で供給される。
【0053】
次に、噴射ノズル本体2Aの大径部2aに導入された圧縮ガスは、噴射ノズル2の基端から先端へ向かって移送される。すなわち、圧縮ガスは、噴射ノズル本体2Aの内側で、大径部2aから連結部2cへ、連結部2cから小径部2bへ、順次移送される。
【0054】
ここで、噴射ノズル本体2Aの内側の空間において、噴射ノズル本体2Aの軸方向と垂直方向の断面積は、大径部2aよりも小径部2bが小さく、連結部2cでは大径部2a側から小径部2b側に向かって連続して小さくなる。これにより、噴射ノズル本体2Aの大径部2aに導入された圧縮ガスは、小径部2bに向かって流速が増加する。
【0055】
具体的には、圧縮ガスの供給圧を0.2MPaG以上とすることで、噴射ノズル本体2Aの小径部2bに開口する造粒部3の内側の空間の圧力は、0.05~0.09MPa・absに調整される。これにより、ドライアイス生成時の造粒部3の閉塞が効果的に抑制される。
【0056】
次に、噴射ノズル2では、噴射ノズル本体2Aの内側の小径部2bにおいて、造粒部3の先端3Aから導出されたドライアイス(ドライアイススノー)と、アシストガスとして用いる圧縮ガスとが合流する。これにより、ドライアイスは、圧縮ガスによって加速され、所要の流速で噴射ノズル2の噴射口2Bから噴射される。
【0057】
ドライアイス(ドライアイススノー)の流速は、補助ガスの供給圧力と流量によって流速に調整され、概ね120m/sec以上とすることが好ましい。
また、圧縮ガスは、ドライアイスと合流する小径部2bまでに、外気温(ドライアイス噴射装置1の設置環境の温度)以上に調温することが好ましい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のドライアイス噴射装置1によれば、噴射ノズル2の内側の空間が、基端に位置する大径部2aと、先端に位置し、大径部2aと連通するとともに、噴射ノズル2の軸方向と垂直な方向の断面積Dsが大径部2aよりも小さい小径部2bと、を有し、小径部2bの先端が、ドライアイスの噴射口2Bであり、造粒部3の先端3Aが、小径部2bに開口し、圧縮ガス供給経路L2が、大径部2aと連通するように噴射ノズル2と接続され、圧縮ガスとともにドライアイスが噴射口2Bから噴射される構成となっている。これにより、造粒部3の内側の空間を、ベンチュリ効果によって陰圧に維持することができ、ドライアイス生成時の造粒部3の閉塞を抑制できる。
したがって、本実施形態のドライアイス噴射装置1によれば、液化炭酸ガスが断熱膨張してドライアイスを生成する造粒部3の閉塞を抑制し、長時間の連続運転が可能となる。
【0059】
すなわち、本実施形態のドライアイス噴射装置1によれば、噴射ノズル2を構成する噴射ノズル本体2Aの軸方向と垂直方向の断面積が、基端側から先端側に向かって連続して小さくなるように構成されている。また、造粒部3の先端3Aが小径部2bに開口するように構成されている。これにより、噴射ノズル本体2Aに導入された圧縮ガスは、大径部2aから小径部2bに向かって流速が増加するため、ベンチュリ効果によって造粒部3の先端3Aからドライアイススノーが噴出しやすくなる。したがって、本実施形態のドライアイス噴射装置1によれば、造粒部3がドライアイスによって閉塞することを防ぐことができる。
【0060】
特に、噴射ノズル2(すなわち、噴射ノズル本体2A)の軸方向における小径部2bの長さをLとし、造粒部3の先端3Aから小径部2bの先端(すなわち、噴射口2B)までの長さをLgとした場合、下式(1)の関係を満たすことにより、ベンチュリ効果によって造粒部3の内側の空間を陰圧に維持することができ、ドライアイス生成時の造粒部3の閉塞をより効果的に抑制できる。
1/8・L≦Lg<L ・・・(1)
【0061】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述した実施形態のドライアイス噴射装置1において、圧縮ガスとともに、噴射ノズル2の内側の空間に薬剤が供給されるように構成してもよい。具体的には、噴射ノズル本体2Aの内側の空間(大径部2a)に、圧縮ガスとともに薬剤を供給する。
【0062】
薬剤としては、特に限定されないが、凍結温度が-78℃以上である水、抗菌剤、消毒剤、界面活性剤のいずれか1つ以上を用いることができる。
薬剤は、液体の状態として圧縮ガスに添加され、ドライアイススノーに付着して凍結することが好ましい。また、薬剤としては、液体やそれに近い粘度や流動性を有するものが好ましい。
【0063】
上述した実施形態のドライアイス噴射装置1によれば、圧縮ガスを駆動流体とするベンチュリ効果によって、ドライアイススノーの加速と同時に、薬剤をドライアイススノー表面に塗布(添加)することができる。すなわち、圧縮ガスとともに、噴射ノズル2の内側の空間に薬剤を供給することにより、ドライアイススノーの表面に薬剤を付着させて噴射させることができる。
【0064】
また、上述した実施形態のドライアイス噴射装置1では、二重管構造を有する噴射ノズル2を用いる構成を一例として説明したが、多重管構造を有する噴射ノズルを用いる構成としてもよい。例えば、噴射ノズル本体の外側にノズルカバーを備える噴射ノズルを用い、噴射ノズル本体とノズルカバーとの間の空間に、アシストガスとして用いる圧縮ガスを流通させることで、ドライアイスで冷却されて生じる噴射ノズルの結露を防止できる。
【0065】
また、上述した実施形態のドライアイス噴射装置1では、オリフィス(絞り部)としてニードル弁4を用いる構成を一例として説明したが、これに限定されない。
図3に示すように、ニードル弁4に代えて、オリフィス(絞り部)24aを有するオリフィス部材24を用いる構成としてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態のドライアイス噴射装置1では、大径部2aと小径部2bとの間に位置する連結部2cが、噴射ノズル本体2Aを軸方向に断面視した際、内径が直線的に傾斜する噴射ノズル2を備える構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、
図4に示すように、大径部22aと小径部22bとの間に位置する連結部22cが、噴射ノズル本体22Aを軸方向に断面視した際、内径が曲線(放物線)的に傾斜する噴射ノズル22を備える構成としてもよい。また、
図5に示すように、大径部32aと小径部32bとの間に連結部を有さない噴射ノズル32を備える構成としてもよい。いずれの噴射ノズル22,32を用いた場合であっても、噴射ノズル本体22A,32Aに導入された圧縮ガスは、大径部22a,32aから小径部22b,32bに向かって流速が増加し、ベンチュリ効果によって造粒部3の先端3Aからドライアイススノーが噴出しやすくなるため、造粒部3のドライアイスによる閉塞を防ぐことができる。
【0067】
また、上述した実施形態のドライアイス噴射装置1では、液化炭酸ガス供給経路L1に電磁弁5を設け、圧縮ガス供給経路L2に電磁弁7を設ける構成を一例として説明したが、流路の開閉状態を選択できる手段であれば、特に限定されない。例えば、電磁弁に代えて、手動弁を用いる構成としてもよい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の効果を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の検証試験によって限定されるものではない。
【0069】
<検証試験>
図1及び
図2に示すドライアイス噴射装置1を用い、以下の運転条件でドライアイスを噴射した。各条件において、造粒部内の圧力を測定した。結果を
図6に示す。
【0070】
(装置条件)
・オリフィス径:0.8mm
・造粒部の内径:1.5mm
・噴射ノズルの大径部の内径:20.0mm
・噴射ノズルの小径部の内径:5.0mm
・噴射ノズルの小径部の長さL:60.0mm
・造粒部の先端から小径部の先端(噴射口)までの長さLg:1/8L、2/8L、3/8L、1/2L、6/8L、7/8L、Lの7条件
【0071】
(運転条件)
・液化炭酸ガスの供給圧力:6.0(MPaG)
・圧縮ガス:圧縮空気
・圧縮ガスの供給圧力:0.20、0.50(MPaG)の2条件
【0072】
(圧力測定)
圧縮ガスの供給圧力と造粒部の先端から小径部の先端(噴射口)までの長さLgをそれぞれ変化させ、造粒部内の圧力Pを測定した。圧力の測定はニードル弁の一次側に接続した連成計を用いた。
【0073】
図6は、圧縮ガスの各供給圧力における、長さLgと圧力Pとの関係を示す図である。
図6に示すように、造粒部の先端が噴射ノズルの小径部内に開口することで、造粒部内の圧力Pは、大気圧(0.1013MPa)以下となることが確認できた。
すなわち、長さLと長さLgとが、以下の式(1)の関係を満たすことで、造粒部内の圧力Pは、大気圧(0.1013MPa)以下となることが確認できた。
1/8・L≦Lg<L ・・・(1)
【0074】
さらに、長さLと長さLgとが、以下の式(2)の関係を満たすことで、造粒部内の圧力Pは、より減圧されることが確認できた。
1/2・L≦Lg≦7/8・L ・・・(2)
【0075】
圧縮ガスの各供給圧力において、造粒部内の圧力Pが大気圧(0.1013MPa)以下となる条件では、8時間連続運転した際、造粒部がドライアイスによって閉塞しないことが確認できた。
【符号の説明】
【0076】
1 ドライアイス噴射装置
2 噴射ノズル
2A 噴射ノズル本体
2B 噴射口
2a 大径部
2b 小径部
2c 連結部
3 造粒部
3A 先端
3B 基端
4 ニードル弁
4a 第1流路(オリフィス)
4A 内部空間
4b 第2流路
4B 軸部
4C 先端部
5 電磁弁
24 オリフィス部材
24a オリフィス(絞り部)
L1 液化炭酸ガス供給経路
L2 圧縮ガス供給経路