(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】粉体供給方法及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 31/00 20060101AFI20240329BHJP
B29B 7/60 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B29C31/00
B29B7/60
(21)【出願番号】P 2021502278
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007512
(87)【国際公開番号】W WO2020175485
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019033378
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】石原 希望
(72)【発明者】
【氏名】福中 唯史
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-097137(JP,A)
【文献】特開2002-321220(JP,A)
【文献】特開2012-076275(JP,A)
【文献】特開平11-048252(JP,A)
【文献】特開平10-180806(JP,A)
【文献】特開平08-244026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00 - 7/94
B29C 31/00 - 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させる粉体の供給方法であって、
前記粉体の供給流量をM[kg/s]、前記筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積をA
S[m
2]としたときに、下式を満たす、方法。
4≦(M/A
S)≦135
【請求項2】
前記筒の軸と水平面とがなす角度が40~90°である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉体は容器に供給され、前記筒の下端の少なくとも一部は、前記容器の上部開口と同じ高さに位置する、又は、前記上部開口よりも下に位置している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂粉を溶融混練装置のホッパに供給する工程と、前記熱可塑性樹脂粉以外の第2粉体を前記ホッパに供給する工程と、前記ホッパに供給された熱可塑性樹脂粉及び第2粉体を溶融及び混練して熱可塑性樹脂組成物を得る工程と、を含み、
前記熱可塑性樹脂粉を前記ホッパに供給する際に、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を用いる、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体原料を、筒内を流下させながらホッパ等の容器へ供給する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1及び2に例示されるように、溶融混練機のホッパ等の対象物に、筒内を流下させながら粉体を供給することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-322473号公報
【文献】特開2012-76275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉体を、筒内を流下させながら対象物に供給する際、粉体が詰まって流れなかったり、供給後の粉体が大きく飛散したりすることがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、粉体を、筒内を流下させながら対象物に供給する際における、粉体のつまりや飛散を抑制する粉体供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる方法は、筒の上端から供給された粉体を、筒内を流下させて筒の下端から排出させる粉体供給方法であって、
前記粉体の供給流量をM[kg/s]、前記筒の下端における前記筒の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに、下式を満たす。
1.5≦(M/AS)≦135
【0007】
本発明によれば、粉体供給時の粉体のつまりや飛散が抑制される。
【0008】
ここで、前記筒の軸と水平面とがなす角度が40~90°であることができる。
【0009】
また、前記粉体は容器に供給され、前記筒の下端の少なくとも一部は、前記容器の上部開口と同じ高さに位置する、又は、前記上部開口よりも下に位置していることができる。
【0010】
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂粉を溶融混練装置のホッパに供給する工程と、前記熱可塑性樹脂粉以外の第2粉体を前記ホッパに供給する工程と、前記ホッパに供給された熱可塑性樹脂粉及び添加剤粉を溶融及び混練して熱可塑性樹脂組成物を得る工程と、を含み、前記熱可塑性樹脂粉を前記ホッパに供給する際に、上記のいずれかの方法を用いる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、舞い上がった粉体が排気口などから排出される不具合や管の閉塞を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態にかかる筒及び溶融混練機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る粉体の供給方法について、具体的に、溶融混練機のホッパに粉体を供給する場合について
図1を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る制御方法が適用される、筒70及び溶融混練機40の断面図である。
【0015】
溶融混練機40は、主として、ホッパ42、シリンダ44、スクリュー46、及び、モータ48を備えている。
【0016】
スクリュー46は、シリンダ44内に設けられており、モータ48はシリンダを回転させる。
【0017】
ホッパ42は、連結管10、コーン部12、及び、胴部14、及び、天板16を有する。天板16はなくてもよい。コーン部12は、下方に行くほど内部断面積が縮小する形状を有する。コーン部12の形状の例は、円錐形状、及び、偏芯円錐形状である。
【0018】
連結管10は、コーン部12の下端開口と、溶融混練機40のシリンダ44とを接続する。連結管10はなくてもよく、コーン部12の下端開口と、溶融混練機40のシリンダ44が直接連結されたものでもよい。
【0019】
胴部14は、上下にわたって内部断面積が一定の管であり、コーン部12の上端開口に接続されている。胴部14の水平断面形状に特に限定は無く、例えば、丸型、四角形などの多角形であることができる。
【0020】
天板16は、胴部14の上端開口を閉じており、天板16には、筒部材17A、17B,17Cにより、それぞれ、第1開口18A、第2開口18B、及び、第3開口18Cが設けられている。第1開口18Aは、筒70を介して第1粉体が供給される開口であり、第2開口18Bは気体を排出できる開口であり、第3開口18Cは必要に応じて第2粉体が供給される開口である。天板16がない場合は、胴部14の上端断面のうち粉体を投入する筒の断面を除いた部分全体が気体出口となる。
【0021】
ホッパの材質に特段の限定はなく、鋼、ステンレスなどを使用することができる。コーン部12の斜面と水平面とがなす角度βは、粉体原料の安息角よりも大きければよく、具体的にはβは40~90°であることが好ましい。
【0022】
筒70は上端70t及び下端70bにそれぞれ開口を有する。下端70bは、ホッパ42の第1開口18Aと接続されている。具体的には、筒70の下端70bの少なくとも一部が第1開口(上部開口)同じ高さか、又は、第1開口(上部開口)18Aよりも下に位置するように配置されている。好ましくは、筒70の下端70bの全部が、第1開口(上部開口)18Aと同じ高さか、又は、第1開口(上部開口)18Aよりも下に位置するように配置されている。最も好ましいのは、筒70の下端70bの全部が、第1開口(上部開口)18Aよりも下に位置するように配置されている、すなわち、下端70bの全体がホッパ42内に挿入されている態様である。一方、筒70の上端70tはホッパ42の外に配置されている。筒70の軸と、水平面とのなす角αは、粉体の安息角よりも大きければよく、例えば、40~90°とすることができる。筒70の材質に限定はなく、材料の例は、鋼、ステンレスなどの金属材料、塩ビなどの樹脂材料である。
通常、筒70と、筒部材17Aとの隙間は、シール材などにより埋められていて、ガスの流通ができないようにされている。
【0023】
(粉体供給方法及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
筒70の上端70tよりも上に、スクリューフィーダなどの公知の粉体搬送装置に配置し、上端70tに第1粉体を供給する。
【0024】
そして、筒70の上端70tから供給された第1粉体を、筒70内を流下させて筒70の下端70bから排出させることにより、ホッパ42に供給する。
【0025】
供給する第1粉体の種類に特段の限定はない。粉体の例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂粉、アルミナ、シリカ、等のセラミック粉、アルミニウム、鉄等の金属粉である。
【0026】
必要に応じて、第3開口18Cを介して、第2粉体を供給することができる。熱可塑性樹脂組成物を製造する際に使用される第2粉体の例は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等の添加剤である。
【0027】
第2粉体の供給流量は、第1粉体の供給流量よりも十分少なくすることができ、例えば、第1粉体の供給流量の1/10以下、あるいは、1/20以下であることができるなお、第2粉体を供給しない場合には、第3開口18Cは閉じておくことができる。
【0028】
第2粉体の供給は、通常、第1粉体の供給と同時におこなうことができる。
【0029】
第1粉体および第2粉体の平均粒子径に特に限定は無いが、1.5mm以下であると効果が高い。平均粒子径は、篩法により測定した重量基準の粒度分布のD50とすることができる。なお、凝集した粒子の場合は、凝集粒径が1.5mm以下の原料に適用した場合に効果が高い。
特に、第1粉体の粒径が小さい場合(例えば、平均粒子径300μm以下)、あるいは、第1粉体の粒径が大きい場合であっても、第2粉体を供給する場合においては第2粉体の粒径が小さい場合(例えば、平均粒子径300μm以下)に、第2開口Bからの粒子の飛び出しが起こりやすく、本実施形態の効果が高い。
【0030】
粉体の粒子密度に特に限定は無いが、0.2g/cm3以上である場合、及び、凝集した粒子の場合はかさ密度が0.2g/cm3以上である場合に、効果が高い。
【0031】
筒70を介してホッパ42内に供給する粉体の供給流量Mが1kg/hr以上の場合に、粉体の飛散が多くなりやすいので効果が高い。
【0032】
本実施形態では、筒70を流下してホッパ42に供給される第1粉体の供給流量をM[kg/s]とし、筒70の下端70bにおける筒70の軸に垂直な断面の断面積をAS[m2]としたときに、下式を満たす。
1.5≦(M/AS)≦135
(M/AS)の好ましい下限は2であってもよく、4であってもよく、10であってもよい。
(M/AS)の好ましい上限は100であり、より好ましい上限は50である。
(M/AS)の例は、1.0、1.1、1.8、2.1、2.7、2.9、4.5、6.8、7.1、16.7、20.4、21.8、52.4、87.1、108.9、130.6、130.6である。
【0033】
作用機序は明らかでないが、この供給方法によれば、筒70内における粉体のつまりを抑制しつつ、粉体の飛散を抑制することができる。筒70の断面の形状は問わず、略円形であってもよく、多角形であってもよい。
【0034】
ホッパ内に、第1粉体のみを供給する場合でも、第1粉体が小さい場合などには第1粉体の飛び出しは起こりうる。また、第3開口18C等から、第1粉体よりも軽い及び/又は粒径の小さい第2粉体を供給する場合には、第2開口18Bからの第2粉体の飛び出しが問題となりやすい。いずれの場合であっても、本実施形態によれば、飛散による粉体のロスを低減でき、複数原料粉を使用する場合には、組成のコントロールされた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。また、筒70における粉体のつまりも抑制され、安定した運転が可能となる。
【0035】
熱可塑性樹脂組成物を製造する際、第2粉体の例は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤、及び、第1粉体とは異なる熱可塑性樹脂粉である。
【0036】
通常、添加剤の供給流量は、第1粉体の供給流量よりも十分少ない、例えば、1kg/hr未満である。しがたって、本実施形態に係る方法を、添加剤の供給に適用する必要性は低いが、ポリマーブレンドの製造時のように第2粉体の供給流量が第1粉体と同程度の場合には、第2粉体の供給に適用することも可能である。
【0037】
なお、熱可塑性樹脂組成物を製造する場合には、粉体の供給中、又は、供給後にスクリュー46を回転させてホッパ42内の粉体混合物を、連結管(粉体出口)10を介してシリンダ44内に供給し、スクリュー46で溶融混練すると、熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
(実施例)
表1に示すように、3つのサイズのホッパを用い、それぞれポリプロピレン粉体の供給流量Mと、筒の下端の断面積ASと、の組み合わせの条件を異ならせて、筒内に粉体を流下させ、溶融混練機のホッパに粉体を供給した。
【0039】
具体的には、
図1に示すアルミ製ホッパー
(β=60°)を用い、第3開口18Cを閉じ、クマエンジニアリング社製のスクリューフィーダを用いて、塩ビ製の筒70の上端70tから第一粉体を一定の供給流量Mで供給し、筒70の下端70bからホッパ42内に供給した。第一粉体には、ポリプロピレンパウダ(平均粒子径750μm、密度950kg/m
3、かさ密度450kg/m
3)、活性アルミナ(平均粒子径3mm、密度1600kg/m
3、かさ密度860kg/m
3)を使用した。第一粉体の供給と並行して、第3開口18Cから第2粉体として透明化剤(凝集粒径270μm、かさ密度200kg/m
3)を供給流量M2でホッパ42内に供給した。
【0040】
続いて、スクリューを回して、ホッパ42内の粉体混合物をシリンダ44内で溶融及び混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0041】
熱可塑性樹脂組成物を分析し、ホッパ42内に供給した全粉体における第2粉体の質量濃度に対する、熱可塑性樹脂組成物における添加剤の質量濃度の比を、添加剤通過率として求めた。また、筒における粉体のつまりの有無(流下性)について評価した。結果を表1に示す。
【0042】
ホッパのサイズが互いに異なる3つの溶融混練機で実験を行うとともに、各溶融混練装置において、筒70の内径、すなわち、断面積ASと、粉体の供給流量Mとの組み合わせを異ならせて実験を行った。実験条件を表1に示す。なお、第1開口18Aにおける筒70と筒部材17Aとの隙間からの気体の流量は、シール部材によりにより実質的にゼロとなるようにした。同様に、第3開口18Cにおける筒部材17Cとの隙間からの気体の出入りは、気密部材によりにより実質的にゼロとなるようにした。
【0043】
【0044】
ここで、第一粉体の供給流量Mの単位を[kg/s]、筒70の下端70bの開口の断面積ASの単位を[m2]とした。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限定されず、様々な変形態様にて実施することができる。
【0046】
ホッパの形態に特に限定はなく、粉体を貯留して外部に供給できる形状であればよい。例えば、胴部がない形態であってもよく、第3開口18Cを有さなくてもよい。
【0047】
筒70で粉体を供給する対象は、溶融混練機のホッパに限定されず、貯蔵用ホッパなどの他の装置のホッパでもよいし、ホッパでなく、フレキシブルコンテナなどの容器でもよい。
【0048】
また、筒70の軸に垂直な断面の断面積は、軸方向にわたって一定であることが好ましいが、断面積が軸方向にわたって一定でない、例えば、テーパー形状であっても実施は可能である。
【符号の説明】
【0049】
42…ホッパ、70…筒、40…溶融混練機。