IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KOKUSAI ELECTRICの特許一覧

特許7462704基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム
<>
  • 特許-基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム 図1
  • 特許-基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム 図2
  • 特許-基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム 図3
  • 特許-基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム 図4
  • 特許-基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム 図5
  • 特許-基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム 図6
  • 特許-基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム 図7
  • 特許-基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム 図8
  • 特許-基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240329BHJP
   H01L 21/302 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 201A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022100993
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2020054333の分割
【原出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2022118209
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
(72)【発明者】
【氏名】早坂 省吾
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0035493(US,A1)
【文献】特表2020-501373(JP,A)
【文献】特開2018-142691(JP,A)
【文献】特開2015-190020(JP,A)
【文献】特開2017-022327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された膜に対して、
(a)ホウ素含有ガスを供給する工程と、
(b)ハロゲン化物ガスを供給する工程と、
(c)水素基を有するガスを供給する工程と、
を所定回数実行することにより、前記膜をエッチングする工程を有し、
前記エッチングする工程では、(a)及び(b)を当該順に実行し、
前記エッチングする工程の前に、
(d)前記水素基を有するガスと反応ガスを供給するサイクルを所定回数実行して前記膜を形成する工程、
をさらに有する基板処理方法。
【請求項2】
基板上に形成された膜に対して、
(a)ホウ素含有ガスを供給する工程と、
(b)ハロゲン化物ガスを供給する工程と、
(c)炭化水素基を有するガスを供給する工程と、
を所定回数実行することにより、前記膜をエッチングする工程を有し、
前記エッチングする工程では、(a)及び(b)を当該順に実行する基板処理方法。
【請求項3】
前記エッチングする工程では、
(a)、(b)及び(c)を当該順に実行する、請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記エッチングする工程の前に、
(d)原料ガスと反応ガスを供給するサイクルを所定回数実行して前記膜を形成する工程、
を実行する請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
(d)及び前記エッチングする工程は、同一チャンバ内で連続的に実行される、請求項1又はに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記炭化水素基を有するガスと前記原料ガスは同じガスである、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記ホウ素含有ガスは、ハロゲン化物ガスである、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記ホウ素含有ガスはハロゲン元素を含み、
当該ハロゲン元素は、(b)において前記基板に対して供給される前記ハロゲン化物ガスに含まれるハロゲン元素とは異なるハロゲン元素である、
請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記水素基を有するガスは、炭化水素基を有するガスである、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記炭化水素基は、アルキル基である、請求項2又はに記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記膜は、酸化膜又は窒化膜の少なくとも何れかである、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記膜は、金属酸化膜又は金属窒化膜の少なくとも何れかである、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
基板に対してホウ素含有ガスを供給するホウ素含有ガス供給系と、
前記基板に対してハロゲン化物ガスを供給するハロゲン化物ガス供給系と、
前記基板に対して水素基を有するガスを供給する水素基含有ガス供給系と、
前記基板に対して反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記ホウ素含有ガス供給系と前記ハロゲン化物ガス供給系と前記水素基含有ガス供給系と前記反応ガス供給系とを制御して、前記基板上に形成された膜に対して、(a)前記ホウ素含有ガスを供給する処理と、(b)前記ハロゲン化物ガスを供給する処理と、(c)前記水素基を有するガスを供給する処理と、を所定回数実行することにより、前記膜をエッチングする処理と、(d)前記エッチングする処理の前に、前記水素基を有するガスと前記反応ガスを供給するサイクルを所定回数実行して前記膜を形成する処理と、を含み、前記エッチングする処理では、(a)及び(b)を当該順に実行する処理を行わせることが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項14】
基板に対してホウ素含有ガスを供給するホウ素含有ガス供給系と、
前記基板に対してハロゲン化物ガスを供給するハロゲン化物ガス供給系と、
前記基板に対して炭化水素基を有するガスを供給する炭化水素基含有ガス供給系と、
前記ホウ素含有ガス供給系と前記ハロゲン化物ガス供給系と前記炭化水素基含有ガス供給系とを制御して、前記基板上に形成された膜に対して、(a)前記ホウ素含有ガスを供給する処理と、(b)前記ハロゲン化物ガスを供給する処理と、(c)前記炭化水素基を有するガスを供給する処理と、を所定回数実行することにより、前記膜をエッチングする処理を行わせ、前記エッチングする処理では、(a)及び(b)を当該順に実行する処理を行わせることが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項15】
前記エッチングする処理では、
(a)、(b)及び(c)を当該順に実行する処理を行わせる、請求項13又は14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
基板上に形成された膜に対して、
(a)ホウ素含有ガスを供給する工程と、
(b)ハロゲン化物ガスを供給する工程と、
(c)水素基を有するガスを供給する工程と、
を所定回数実行することにより、前記膜をエッチングする工程を有し、
前記エッチングする工程では、(a)及び(b)を当該順に実行し、
前記エッチングする工程の前に、
(d)前記水素基を有するガスと反応ガスを供給するサイクルを所定回数実行して前記膜を形成する工程、
をさらに有する半導体装置の製造方法。
【請求項17】
基板上に形成された膜に対して、
(a)ホウ素含有ガスを供給する工程と、
(b)ハロゲン化物ガスを供給する工程と、
(c)炭化水素基を有するガスを供給する工程と、
を所定回数実行することにより、前記膜をエッチングする工程を有し、
前記エッチングする工程では、(a)及び(b)を当該順に実行する、
半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記エッチングする工程では、
(a)、(b)及び(c)を当該順に実行する、請求項16又は17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
基板上に形成された膜に対して、
(a)ホウ素含有ガスを供給する手順と、
(b)ハロゲン化物ガスを供給する手順と、
(c)水素基を有するガスを供給する手順と、
を所定回数実行することにより、前記膜をエッチングする手順を有し、
前記エッチングする手順では、(a)及び(b)を当該順に実行する手順と、
前記エッチングする手順の前に、
(d)前記水素基を有するガスと反応ガスを供給するサイクルを所定回数実行して前記膜を形成する手順、
をさらに有する手順をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
基板上に形成された膜に対して、
(a)ホウ素含有ガスを供給する手順と、
(b)ハロゲン化物ガスを供給する手順と、
(c)炭化水素基を有するガスを供給する手順と、
を所定回数実行することにより、前記膜をエッチングする手順を有し、前記エッチングする手順では、(a)及び(b)を当該順に実行する手順を、コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項21】
前記エッチングする手順では、
(a)、(b)及び(c)を当該順に実行する、請求項19又は20に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元構造を持つNAND型の3DNANDフラッシュメモリのブロック層として、例えば結晶化した酸化アルミニウム(Al)膜(以下、AlO膜と表示する。)などの結晶状膜が用いられることがある。また、コントロールゲートの低抵抗化の観点から、この結晶状膜を薄膜化することが求められる場合がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-14704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結晶状膜をエッチングにより薄膜化する場合、非結晶状膜(非晶質膜)をエッチングする場合に比べてエッチングレートが低く、エッチングが困難となることがある。
【0005】
本開示は、基板上に形成された膜に対してエッチングレートを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板上に形成された膜に対して、
(a)ホウ素含有ガスを供給する工程と、
(b)ハロゲン化物ガスを供給する工程と、
(c)水素基を有するガスを供給する工程と、
を非同時に所定回数実行することにより、前記膜をエッチングするエッチング工程を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板上に形成された膜に対してエッチングレートを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態が適用され得る基板の断面の一部を示す図である。
図2】本開示の一実施形態の基板処理工程を示す図である。
図3】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図4】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図3のA-A線断面図で示す図である。
図5】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図6】本開示の一実施形態のエッチング工程を示す図である。
図7】本開示の一実施形態のエッチング工程の変形例を示す図である。
図8】比較例に係るエッチング工程によって非晶質AlO膜と結晶状AlO膜に対してそれぞれエッチング処理を行った場合の処理温度とエッチングレートとの関係を示した図である。
図9】結晶状AlO膜に対して本実施例と比較例に係るエッチング工程をそれぞれ行った場合のBClガスの供給時間とエッチング量との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一実施形態>
以下、本開示の一実施形態について説明する。
図1に一例として示すように、3DNANDのブロック層として結晶化したAlO膜(以下、結晶状AlO膜とも称する)を用いる場合、W膜を埋め込む領域を大きくするために、この結晶状AlO膜を薄膜化することが求められる。また、3DNANDの性能向上のため、ブロック層としての結晶状AlO膜は、3DNANDのような高アスペクト比を有する構造の表面に対して、良好なステップカバレッジで形成されることが求められる。本実施形態では、半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、2nm以下の厚さの結晶状AlO膜を形成する工程の一例について説明する。
【0010】
図2に示すように、非晶質AlO膜を形成する非晶質AlO膜形成工程(ステップS10)と、非晶質AlO膜を結晶化する結晶化処理工程(ステップS11)と、結晶化により得られた結晶状AlO膜をエッチングする結晶状AlO膜エッチング工程(ステップS12)と、を行って、ウエハ200上に2nm以下の厚さの結晶状AlO膜を形成する。
【0011】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0012】
[非晶質AlO膜形成工程、ステップS10]
ウエハ200に対して原料ガスとしてのトリメチルアルミニウム(TMA、(CHAl)ガスと、反応ガスとしての酸化ガスであるオゾン(O)ガスをウエハ200に対して非同時に供給するサイクルを所定回数実行することにより、ウエハ200上に第1膜厚として9nm以上の厚さの非晶質のAlO膜を形成する。
【0013】
[結晶化処理工程、ステップS11]
次に、ウエハ200上に形成された9nm以上の厚さの非晶質AlO膜を、所定の結晶化処理温度である900℃未満の温度、例えば800℃に加熱する。すなわち、非晶質AlO膜に対して900℃未満で熱処理を行う。これにより、ウエハ200上に形成された9nm以上の厚さの非晶質AlO膜が結晶化され、結晶状AlO膜が形成される。
【0014】
ここで、非晶質AlO膜を結晶化させるのに必要な結晶化処理温度は、膜厚が小さいほど高く、一方で、膜厚が大きいほど低い。本実施形態では、結晶化処理温度を、第1膜厚としての9nmよりも小さい第2膜厚の非結晶状膜を結晶化させるために必要な温度よりも低い温度とする。例えば9nmよりも小さい2nm以下の厚さの非晶質のAlO膜を結晶化させるためには、ウエハ200上に形成された他の膜への熱影響やセル倒れが懸念される1000℃以上で熱処理を行わなければならない。本ステップでは、9nm以上の厚さの非晶質AlO膜を、結晶化処理温度を900℃未満の範囲で熱処理することで結晶化させる。熱処理により結晶化させる非晶質AlO膜の厚さを9nm以上とすることで、900℃未満の熱処理で結晶化させることができる。すなわち、900℃未満で処理を行うことにより、熱影響を抑制しながら非晶質のAlO膜を結晶化させることができる。
【0015】
なお、9nm以上の厚さの非晶質のAlO膜の場合、結晶化処理温度を、400℃以上900℃未満、好ましくは800℃以上900℃未満とする。結晶化処理温度を400℃以上とすることにより非晶質AlO膜の結晶化を促進することができる。また、結晶化処理温度を800℃以上とすることにより、9nm以上の非晶質AlO膜を確実に結晶化することが可能となる。
【0016】
[結晶状AlO膜エッチング工程、ステップS12]
次に、ウエハ200上に形成された第1膜厚(9nm以上)の厚さの結晶状AlO膜に対して、ALE(Atomic Layer Etching、原子層エッチング)により、第1膜厚よりも小さい第2膜厚(例えば2nm以下)の厚さとなるまでエッチングを行うエッチング処理を実行する。先ず、このエッチング処理を実行する基板処理装置の処理炉202について、図3図5を用いて説明する。
【0017】
(1)基板処理装置の構成
図3に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0018】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には、処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0019】
処理室201内には、ノズル249a,249bが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。
【0020】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232cが接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232d,232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232d,232eには、ガス流の上流側から順に、MFC241c,241d,241eおよびバルブ243c,243d,243eがそれぞれ設けられている。
【0021】
図4に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0022】
ガス供給管232aからは、ホウ素含有ガスとして、ホウ素含有ハロゲン化物ガスである、例えば、三塩化ホウ素(BCl)ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0023】
ガス供給管232bからは、ハロゲン化物ガスとして、例えば、フッ化水素(HF)ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0024】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスとしての窒素(N)ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。Nガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0025】
ガス供給管232eからは、水素基を有するガスとして、炭化水素基を有するガスであって、アルキル基を有するガスであって、例えばメチル基を有するトリメチルアルミニウム(TMA、(CHAl)ガスが、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0026】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、ホウ素含有ガスを供給するホウ素含有ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、ハロゲン化物ガスを供給するハロゲン化物ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガスを供給する不活性ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、水素基を有するガスを供給する水素基含有ガス供給系が構成される。
【0027】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243eやMFC241a~241e等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232eのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232e内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243eの開閉動作やMFC241a~241eによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232e等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0028】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、さらに、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ244により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0029】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0030】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。
【0031】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0032】
図5に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0033】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0034】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241e、バルブ243a~243e、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0035】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241eによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243eの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0036】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0037】
(2)結晶状AlO膜エッチング工程(ステップS11)
次に、上述した基板処理装置の処理炉202を用いた結晶状AlO膜エッチング工程の詳細について図6を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0038】
(ウエハチャージおよびボートロード)
9nm以上の厚さの結晶状AlO膜が形成された複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0039】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の処理圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。なお、所望の処理温度とは、上述した結晶化処理温度以下、好ましくは結晶化処理温度よりも低い温度である。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0040】
その後、ウエハ200上に形成された結晶状AlO膜に対して、以下のステップS1~S4を順次実施する。
【0041】
(BClガス供給、ステップS1)
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対してホウ素含有ガスであるBClガスを供給する。具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へBClガスを流す。BClガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このときバルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232d内へNガスを流す。
【0042】
本ステップにおける処理条件としては、
BClガス供給流量:0.1~10slm
ガス供給流量(各ガス供給管):0~10slm
各ガス供給時間:5~300秒、好ましくは100~200秒
処理温度:200℃以上900℃未満、好ましくは300~800℃、より好ましくは300~450℃
処理圧力:150~400Pa、好ましくは200~300Pa
が例示される。
【0043】
処理温度は、非晶質AlO膜を結晶化させる際の処理温度である結晶化処理温度以下とすることが望ましい。本ステップにおける処理温度を結晶化処理温度以下とすることで、結晶化処理工程(ステップS11)から引き続いて、ウエハ200上に形成された他の膜等への熱影響を抑制しながら処理を行うことができる。
【0044】
なお、本明細書における「0.1~10slm」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、「0.1~10slm」とは「0.1slm以上10slm以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0045】
上述の条件下でウエハ200に対してBClガスを供給することにより、ウエハ200の表面の、AlがBClと反応して、AlからOが脱離し、Clに置換される。すなわち、ウエハ200上に形成された結晶状AlO膜の表面に露出したAlの分子層はAlClへと改質される。また、Alから脱離したOは、Bと結合してBが生成される。具体的には、BClガスの供給により、ウエハ200の表面のAlとの間では下記反応が起こる。
【0046】
Al+2BCl→2AlCl+B
【0047】
不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0048】
(パージ、ステップS2)
バルブ243aを閉じ、BClガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応のBClガスや反応副生成物であるBを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243dを開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応のBClガスや反応副生成物であるBを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0049】
(HFガス供給、ステップS3)
次に、処理室201内のウエハ200に対して、ハロゲン化物ガスであるHFガスを供給する。具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へHFガスを流す。HFガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このときバルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232d内へNガスを流す。
【0050】
本ステップにおける処理条件としては、
HFガス供給流量:0.1~10slm
ガス供給流量(各ガス供給管):0~10slm
各ガス供給時間:5~200秒、好ましくは60~150秒
処理温度:200℃以上900℃未満、好ましくは300~800℃、より好ましくは300~450℃
処理圧力:150~400Pa、好ましくは200~300Pa
が例示される。
【0051】
上述の条件下でウエハ200に対してHFガスを供給することにより、ウエハ200の表面のAlClがHFと反応して、AlClからClの一部が脱離し、Fに置換される。これにより、ウエハ200の表面に形成されたAlClの分子層が揮発性のAlClへと変換されてウエハ200の表面から脱離する。また、AlClから脱離したClは、Hと結合して塩化水素(HCl)が生成される。そして、ウエハ200の表面からAlClとHClが脱離して処理室201内から排出されることによって、結晶状AlO膜の表面がエッチングされる。具体的には、HFガスの供給により、ウエハ200の表面のAlClとの間には下記反応が起こる。これによって、ウエハ200上に形成された結晶状AlO膜の表面に露出したAlの分子層が均一に(良好なステップカバレッジで)エッチングされる。
【0052】
AlCl+2HF→AlClF+2HCl
AlCl+HF→AlClF+HCl
AlCl+3HF→AlF+3HCl
【0053】
(パージ、ステップS4)
バルブ243bを閉じ、HFガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応のHFガスや、反応副生成物であるAlClとHClを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243dを開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応のHFガスや反応副生成物であるAlClとHClを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0054】
[所定回数実施]
上記したステップS1~S4を非同時に、すなわち、同期させることなく非同時にこの順に行うサイクルを所定回数であるn回(nは1以上の整数)実行することにより、ウエハ200上の9nm以上の厚さの結晶状AlO膜をエッチングして所定膜厚の、例えば2nm以下の厚さの結晶状AlO膜にすることができる。なお、上述のサイクルは複数回繰り返すのが好ましい。
【0055】
本工程においては、ウエハ200表面にBClガスを供給して、露出したAlの分子層をAlClに変換してからAlClの状態にすることにより、結晶状AlO膜であっても、効率的に(すなわち高いエッチングレートで)エッチングすることが可能となる。したがって、本実施形態のように結晶状AlO膜をエッチングする場合、高いエッチングレートを得るためには、このようにホウ素含有ガスであるBClガスを供給するステップを、ハロゲン化物ガスであるHFガスを供給するステップよりも先行して実施することが望ましい。
【0056】
また、本実施形態では、上述したステップS10の非晶質AlO膜形成工程により9nm以上の厚さの非晶質AlO膜を形成し、上述したステップS11の結晶化処理工程により900℃未満の熱処理で9nm以上の厚さの非晶質AlO膜を結晶化させた後、上述したステップS12の結晶状AlO膜エッチング工程を結晶化処理温度以下の温度で行って2nm以下までエッチングする。これにより、3DNANDのような高アスペクト比を有する構造の表面であっても、ステップカバレッジが良好な(例えばステップカバレッジが80%以上である)2nm以下の結晶状AlO膜を形成することができる。すなわち、ウエハ200上に形成された他の膜へ悪影響を及ぼすことやセル倒れを抑制しながら、コントロールゲートであるWの埋め込み領域を大きくして、コントロールゲートの低抵抗化を達成できる。
【0057】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
上述のエッチング処理が終了した後、ガス供給管232c,232dのそれぞれからNガスを処理室201内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0058】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、反応管203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、反応管203の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0059】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す一つ又は複数の効果が得られる。
【0060】
(a)基板上に形成された結晶状膜(結晶状態の膜)をエッチングする場合において、エッチングレートを向上させることが可能となる。
【0061】
(b)高アスペクト比を有する構造の表面に形成された結晶状膜であっても、良好なステップカバレッジでエッチングすることが可能となる。
【0062】
(c)本実施形態によれば、9nm以上の非晶質AlO膜を形成し、その非晶質AlO膜に対して900℃未満の熱処理により結晶状AlO膜を形成する。さらに、900℃未満の処理温度で、9nm以上の結晶状AlO膜を2nm以下の厚さまでエッチングする。これにより、1000℃以上の熱処理を施すことなく、2nm以下の厚さの結晶状AlO膜を形成することができる。
【0063】
(d)上述の効果は、AlO膜以外の酸化膜や窒化膜の結晶状膜や、BClガス以外のホウ素含有ガスを用いる場合や、HFガス以外のハロゲン化物ガスを用いる場合や、Nガス以外の不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0064】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0065】
(変形例)
上記実施形態では、上述したステップS1~S4を所定回数実行することにより、結晶状のAlO膜をエッチングする例について説明したが、これに限らず、異なるガスを用いる場合にも適用できる。例えば、図7に示すように、上述したステップS1~S4の後に、後述する水素基を有するガスを供給するステップS5と、処理室201内をパージするステップS6をこの順に実行して、ステップS1~S6をこの順に非同時に行うサイクルを所定回数実行する。この場合であっても、図6に示すシーケンスと同様の効果が得られる。
【0066】
(TMAガス供給、ステップS5)
上述したステップS1~S4をこの順に実行した後に、処理室201内のウエハ200に対して、水素基を有するガスであるトリメチルアルミニウム(TMA、(CHAl)ガスを供給する。具体的には、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へTMAガスを流す。TMAガスは、MFC241eにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このときバルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232d内へNガスを流す。なお、TMAガスを供給するノズルをノズル249bとは別に設けて、TMAガスを、HFガスと別のノズルから供給するようにしてもよい。
【0067】
本ステップにおける処理条件としては、
TMAガス供給流量:0.1~10slm
ガス供給流量(各ガス供給管):1~10slm
各ガス供給時間:5~200秒、好ましくは60~150秒
処理温度:200℃以上900℃未満、好ましくは300~800℃、より好ましくは300~450℃
処理圧力:150~400Pa、好ましくは200~300Pa
が例示される。
なお、ここにおけるTMAガス供給流量は、液体原料を気化させるために用いるNガス等の希釈ガスを含む流量である。
【0068】
上述の条件下でウエハ200に対してTMAガスを供給することにより、ステップS3においてAlClとHFとの反応により生成されたAlFがTMAと反応して、(CHAlFと(CH)Alへと変換される。ステップS3において生成されたAlFは蒸気圧が低いために揮発しにくく、ウエハ200の表面や処理室201内に残留しやすい傾向があるが、揮発性である(CHAlFに変換されることで、ウエハ200の表面や処理室201内から排出されることが促進される。具体的には、TMAガスの供給により下記反応が起こり、処理室201内のAlFの排出が促進される。
【0069】
AlF+3(CHAl→3(CHAlF+(CH)Al
【0070】
ここで、本ステップにおいて供給される水素基を有するガスは、炭化水素基を有するガスであって、ステップS4において生成されたAlFのF分子と反応しやすい物質であって、分子量の低い物質が好ましい。
【0071】
(パージ、ステップS6)
バルブ243eを閉じ、TMAガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応のTMAガスや反応副生成物である(CHAlFを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243dを開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応のTMAガスや反応副生成物である(CHAlFを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0072】
[所定回数実施]
上記したステップS1~S6を非同時に、すなわち、同期させることなくこの順に行うサイクルを所定回数であるn回(nは1以上の整数)実行することにより、ウエハ200上の9nm以上の厚さの結晶状AlO膜をエッチングして所定膜厚の、例えば2nm以下の厚さの結晶状AlO膜にすることができる。
【0073】
なお、上記したステップS5において、ウエハ表面に残留する(CH)Alは、続けて上述のステップS1~S6を所定回数行うことにより、
(CH)AlO→(CH)AlCl→(CHAlF
と反応し、揮発性のガス状物質となってウエハ200の表面から脱離し、排気管231より排気されて、結晶状AlO膜の表面のエッチングが促進される。したがって、ステップS1~S6は複数回実行されることがより望ましい。
【0074】
このように、非晶質AlO膜を形成する際に用いたTMAガスを用いて、結晶状AlO膜をエッチングすることが可能となる。上述したステップS10における非晶質AlO膜形成工程と、ステップS12における結晶状AlO膜形成工程と、を同一の装置で行う場合、TMAガスを供給するためのガス供給系を共通して用いることができるため、ガス供給系を簡略化することができる。
【0075】
なお、上記実施形態及び変形例では、結晶状膜として酸化膜であり、金属酸化膜であるAlO膜を用いて説明したが、これに限らず、金属酸化膜として酸化モリブデン(MoO)膜、酸化ジルコニウム(ZrO)膜、酸化ハフニウム(HfO)膜、ZrHfO膜等のHigh-k酸化膜や、酸化膜としてシリコン酸化(SiO)膜等をエッチングする場合にも適用することができる。
【0076】
また、上記実施形態及び変形例では、結晶状膜として酸化膜であり、金属酸化膜であるAlO膜をエッチングする例を用いて説明したが、これに限らず、結晶状膜として窒化膜であり、金属窒化膜である窒化アルミニウム(AlN)膜、窒化チタン(TiN)膜、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)膜等や、窒化膜として窒化ケイ素(Si)膜等をエッチングする場合にも適用することができる。
【0077】
また、上記実施形態及び変形例では、ホウ素含有ガスとしてホウ素含有ハロゲン化物ガスであるBClガスを用いる例を用いて説明したが、これに限らず、他のホウ素含有ハロゲン化物ガスを用いることができる。
【0078】
また、上記実施形態及び変形例では、ホウ素含有ガスとしてホウ素含有ハロゲン化物ガスであるBClガスを用いる例を用いて説明したが、これに限らず、ホウ素含有ガスとしてジボラン(B)ガス、モノボラン(BH)ガス、トリスジメチルアミノボロン(TDMAB、B(N(CH)ガス、トリエチルボラン(TEB、(CB)ガス等を用いることができる。
【0079】
また、上記実施形態及び変形例では、ホウ素含有ガスを用いる例を用いて説明したが、これに限らず、六フッ化タングステン(WF)ガス等のタングステン含有ハロゲン化物ガスをホウ素含有ガスに替えて用いることもできる。
【0080】
また、上記実施形態及び変形例では、ハロゲン化物ガスとしてHFガスを用いる例を用いて説明したが、これに限らず、ハロゲン化物ガスとして三フッ化塩素(ClF)ガス、塩素(Cl)ガス、三フッ化窒素(NF)ガス、フッ素(F)ガス、Fガスと一酸化窒素(NO)ガスの混合ガス等を用いることができる。
【0081】
また、上記変形例では、水素基を有するガスとして、炭化水素基を有するガスであり、アルキル基を有するガスであって、メチル基を有するガスであるTMAガスを用いる例を用いて説明したが、これに限らず、メチル基を有するガスであるテトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT、Ti(N(CH)ガス、トリジメチルアミノシラン(TDMAS、((CHN)SiH)ガス等を用いることができる。
【0082】
また、上記変形例では、水素基を有するガスとして、炭化水素基を有するガスであり、アルキル基を有するガスであって、メチル基を有するガスであるTMAガスを用いる例を用いて説明したが、これに限らず、アルキル基を有するガスであって、エチル基を有するガスである例えばトリエチルアミン(TEA、(CHCHN)ガス等を用いることができる。
【0083】
また、上記変形例では、炭化水素基を有するガスとしてTMAガスを用いる例を用いて説明したが、これに限らず、炭化水素基を有するガスとして、Al,Si,Nの少なくともいずれかに水素基が結合したガスである例えばアンモニア(NH)ガス等を用いることができる。また、上述の酸化膜を構成する元素と、水素基とを含むガスであっても良い。また、上述の酸化膜を構成する元素と、炭化水素基を含むガスであっても良い。ここで、酸化膜を構成する元素とは、酸素以外の元素であって、酸化アルミニウム膜であれば、Alを意味する。酸化シリコン膜であれば、Siを意味する。酸化ジルコニウム膜であれば、Zrを意味する。
【0084】
また、上記実施形態及び変形例では、結晶化処理工程(S11)と、結晶状AlO膜エッチング工程(S12)と、を異なるチャンバ内で順次実行する場合を用いて説明したが、これに限らず、結晶化処理工程(S11)と、結晶状AlO膜エッチング工程(S12)と、を同一チャンバ内で連続的に(インサイチュで)実行してもよい。
【0085】
なお、基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することが可能となる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0086】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0087】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を処理する例について説明した。本開示は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を処理する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を処理する例について説明した。本開示は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を処理する場合にも、好適に適用できる。
【0088】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様な処理手順、処理条件にて成膜処理を行うことができ、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【0089】
また、上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の実施形態の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例1】
【0090】
図8は、比較例に係るエッチング工程によって非晶質AlO膜と結晶状AlO膜に対してそれぞれエッチング処理を行った場合の処理温度とエッチングレートとの関係を示した図である。比較例に係るエッチング工程として、ウエハ上の非晶質AlO膜と結晶状AlO膜に対して、それぞれHFガス供給と、TMAガス供給と、を当該順に非同時に行うサイクルを所定回数実行することにより、エッチング処理を行った。
【0091】
図8に示すように、比較例にかかるエッチング工程によれば、非晶質AlO膜に対しては、エッチングレートが良好で、エッチング工程における処理温度が高くなるにつれてエッチングレートも高くなることが確認された。一方、結晶状AlO膜に対しては、処理温度を高くしてもほとんどエッチングできないことが確認された。すなわち、BClガス供給を行わない比較例においては、結晶状AlO膜をエッチングすることが実質的に困難であることが確認された。
【実施例2】
【0092】
図9は、ウエハ上の結晶状AlO膜に対して、本実施例1,2と比較例1,2に係るエッチング工程をそれぞれ行った場合のBClガスの供給時間とエッチング量との関係を示した図である。本実施例1では、図3に示す基板処理装置を用い、図6に示すシーケンスによりウエハ上の結晶状AlO膜に対してエッチングを行った。本実施例2では、図3に示す基板処理装置を用い、図7に示すシーケンスによりウエハ上の結晶状AlO膜に対してエッチングを行った。比較例1では、図3に示す基板処理装置を用い、ウエハ上の結晶状AlO膜に対してBClガス供給のみを行った。比較例2では、図3に示す基板処理装置を用い、ウエハ上の結晶状AlO膜に対してHFガス供給のみを行った。なお、本実施例1,2、及び比較例2におけるHFガス供給の時間は同一としている。また、本実施例1,2、及び比較例1,2におけるガス供給サイクルの実行回数は同一としている。
【0093】
図9に示すように、BClガスとHFガスの両方のガスを用いた本実施例1,2の方が、BClガスのみを用いた比較例1、HFガスのみを用いた比較例2と比較して、結晶状AlO膜に対するエッチングレートが向上することが確認された。また、BClガスの供給時間が長いほど結晶状AlO膜に対するエッチング量が増加することが確認された。
【0094】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0095】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
基板上に形成された結晶状膜に対して、
(1)ホウ素含有ガスを供給する工程と、
(2)ハロゲン化物ガスを供給する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数実行することにより、前記結晶状膜をエッチングするエッチング工程を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0096】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
(1)工程及び(2)工程の順に実行する。
【0097】
(付記3)
付記1又は付記2に記載の方法であって、好ましくは、
前記エッチング工程は、
(3)水素基を有するガスを供給する工程を更に有し、
(1)~(3)工程を非同時に行うサイクルを所定回数実行する。
【0098】
(付記4)
付記1~付記3のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
(4)前記基板上に形成された非晶質膜を、所定の結晶化処理温度に加熱することで結晶化させ、前記結晶状膜を形成する工程を更に有する。
【0099】
(付記5)
付記4に記載の方法であって、好ましくは、
(4)工程では、第1膜厚の前記非晶質膜に対して熱処理を行うことで前記結晶状膜を形成し、
前記エッチング工程では、前記結晶状膜に対して、前記第1膜厚よりも小さい第2膜厚となるまでエッチングを行う。
【0100】
(付記6)
付記5に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1膜厚の前記非晶質膜を結晶化させる前記結晶化処理温度は、前記第2膜厚の前記非晶質膜を結晶化させるために必要な温度よりも低い温度である。
【0101】
(付記7)
付記6に記載の方法であって、好ましくは、
前記エッチング工程は、前記結晶化処理温度以下の温度で行う。
【0102】
(付記8)
付記4に記載の方法であって、好ましくは、
前記非晶質膜は、原料ガスと反応ガスを前記基板に対して非同時に供給するサイクルを所定回数実行することにより形成する。
【0103】
(付記9)
本開示の他の態様によれば、
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の前記基板に対して、ホウ素含有ガスを供給するホウ素含有ガス供給系と、
前記処理室内の前記基板に対して、ハロゲン化物ガスを供給するハロゲン化物ガス供給系と、
前記ホウ素含有ガス供給系と前記ハロゲン化物ガス供給系を制御して、前記処理室内の前記基板上に形成された結晶状膜に対して、(1)ホウ素含有ガスを供給する処理と、(2)ハロゲン化物ガスを供給する処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数実行することにより、前記結晶状膜をエッチングする処理を行わせるよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0104】
(付記10)
本開示のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内の基板上に形成された結晶状膜に対して、
(1)ホウ素含有ガスを供給する手順と、
(2)ハロゲン化物ガスを供給する手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数実行することにより、前記結晶状膜をエッチングする手順をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム、又は当該プログラムが記録されたコンピュータにより読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0105】
(付記11)
本開示のさらに他の態様によれば、
基板上に形成された膜に対して、
(1)ホウ素含有ガスを供給する工程と、
(2)ハロゲン化物ガスを供給する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数実行することにより、前記膜をエッチングするエッチング工程を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。上述の様に、エッチングレートは、非晶質の膜>結晶状の膜の関係にある。それ故、結晶状でない膜に対して、本開示の技術を適用することにより、エッチングレートを更に向上させることが可能となる。
【0106】
(付記12)
付記11に記載の方法であって、好ましくは、
(1)工程及び(2)工程の順に実行する。
【0107】
(付記13)
付記11または付記12に記載の方法であって、好ましくは、
前記エッチング工程は、
(3)水素基を有するガスを供給する工程を更に有し、
(1)~(3)工程を非同時に行うサイクルを所定回数実行する。
【0108】
(付記14)
付記13に記載の方法であって、好ましくは、
前記水素基は、炭化水素基である。
【0109】
(付記15)
付記11~14のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記膜は、酸化膜である。
【符号の説明】
【0110】
121 コントローラ(制御部)
200 ウエハ(基板)
202 処理炉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9