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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/44 20060101AFI20240329BHJP
   C08F 4/54 20060101ALI20240329BHJP
   C08F 4/606 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C08C19/44
C08F4/54
C08F4/606
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022508540
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 KR2020012661
(87)【国際公開番号】W WO2021054785
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0115575
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ペ、ヒョ-チン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス-ファ
(72)【発明者】
【氏名】オ、キョン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ、テ-チョル
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270175(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072650(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/046020(WO,A1)
【文献】特開2009-263587(JP,A)
【文献】特開2005-336303(JP,A)
【文献】特開2004-238619(JP,A)
【文献】国際公開第2008/041631(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/083173(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/112450(WO,A1)
【文献】特開2008-163338(JP,A)
【文献】特開2014-098154(JP,A)
【文献】特開2014-145077(JP,A)
【文献】特表2018-509494(JP,A)
【文献】特開2007-186696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00- 19/44
C08F 4/00- 4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素溶媒中で、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、およびハロゲン化物またはハロゲン元素を含む触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造するステップと、
前記活性重合体を変性剤と反応またはカップリングさせるステップと、を含み、
前記ネオジム化合物と前記第2アルキル化剤のモル比が1:20~1:35であり、
前記第1アルキル化剤は、アルミノキサンであり、
前記第2アルキル化剤は、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリドまたはヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドであり、
前記変性剤は、エチル1-(トリメチルシリル)ピペリジン-4-カルボキシレートであり、
前記重合は30℃以上40℃以下の温度で行う、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記活性重合体を製造するステップの前に、
前記ネオジム化合物、前記第1アルキル化剤、前記第2アルキル化剤、および前記ハロゲン化物またはハロゲン元素を-30~-20℃で混合し、-30~-20℃で24~36時間静置させて前記触媒組成物を製造するステップをさらに含む、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記触媒組成物に含まれている前記ネオジム化合物、前記第1アルキル化剤、前記第2アルキル化剤、および前記ハロゲン化物またはハロゲン元素のモル比が1:(50~200):(20~35):(2~5)である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記ネオジム化合物は、前記共役ジエン系単量体100gを基準として0.01~0.50mmolである、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記ネオジム化合物が下記化学式1で表される化合物である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化6】

(前記化学式1中、
a~Rcは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~12のアルキル基であり、但し、Ra~Rcの全てが同時に水素であることはない。)
【請求項6】
前記Raは、炭素数4~12のアルキル基であり、
前記RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキル基である、請求項5に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ネオジム化合物は、Nd(ネオデカノエート)3、Nd(2-エチルヘキサノエート)3、Nd(2,2-ジメチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記第1アルキル化剤は、前記ネオジム化合物1モルを基準として60~150モルである、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記第1アルキル化剤は、メチルアルミノキサン、下記化学式3で表される変性メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、および2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化7】

(前記化学式3中、Rは、炭素数2~20の炭化水素基であり、
mおよびnは、それぞれ独立して、2以上の整数である。)
【請求項10】
前記第1アルキル化剤は、メチルアルミノキサン、変性メチルアルミノキサン、またはこれらの混合物である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記第2アルキル化剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、およびn-オクチルアルミニウムジヒドリドからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記第2アルキル化剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、およびジイソブチルアルミニウムヒドリドからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記ハロゲン化物またはハロゲン元素は、前記ネオジム化合物1モルを基準として2.1~3.0モルである、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項14】
前記ハロゲン化物は、ハロゲン間化合物、ハロゲン化水素、有機ハライド、非金属ハライド、金属ハライド、および有機金属ハライドからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化物は、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、およびイソブチルアルミニウムセスキクロリドからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月19日付の韓国特許出願第2019-0115575号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、引張特性および粘弾性特性などに優れる物性を有する変性共役ジエン系重合体を高い変性率で製造可能な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、省エネルギーおよび環境問題に対する関心が高まっており、これに伴い、自動車の低燃費化が求められている。これを実現するための方法の一つとして、タイヤ形成用ゴム組成物にシリカやカーボンブラックなどの無機充填剤を用いることで、タイヤの発熱性を低める方法が提案されている。しかし、ゴム組成物中における前記無機充填剤の分散が容易ではないため、耐磨耗性、耐クラック性または加工性などを始めとするゴム組成物の物性が却って全体的に低下するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、ゴム組成物中におけるシリカやカーボンブラックなどの無機充填剤の分散性を高めるための方法として、有機リチウムを用いたアニオン重合により得られる共役ジエン系重合体の重合活性部位を、無機充填剤と相互作用が可能な官能基で変性する方法が開発された。具体的には、共役ジエン系重合体の重合活性末端をスズ系化合物で変性したり、アミノ基を導入する方法、またはアルコキシシラン誘導体で変性する方法などが提案されている。
【0005】
また、他の方法として、ランタン系希土類元素化合物を含む触媒を用いた配位重合により得られるリビング重合体において、リビング活性末端を特定のカップリング剤や変性剤によって変性することで、加工性、物性を改善する方法が開発されている。
【0006】
一例として、ネオジムカルボキシル基塩化合物、アルキルアルミニウム化合物、ハロゲンを含有する化合物の組み合わせからなる触媒を用いて、非極性溶媒下で1,4-シスポリブタジエンを製造した後、反応停止剤と酸化防止剤で反応を停止させてから塩化硫黄を添加して分岐構造を取り入れる方法などが開示されている。
【0007】
しかし、前述の方法により変性共役ジエン系重合体を製造してゴム組成物に適用する場合、耐磨耗性、加工性などのゴム組成物の物性改善の効果が微小である。そこで、変性共役ジエン系重合体の製造時における変性率を改善することで変性剤由来の官能基を多く導入し、引張特性や粘弾性特性などのゴム組成物における配合物性を向上させるための方法が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許公開第2017-0077614号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、引張特性および粘弾性特性に優れた変性共役ジエン系重合体を高い変性率で製造可能な変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、炭化水素溶媒中で、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、およびハロゲン化物を含む触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造するステップと、前記活性重合体を変性剤と反応またはカップリングさせるステップと、を含み、前記ネオジム化合物と第2アルキル化剤のモル比が1:20~1:35であり、前記重合は30~65℃の温度で行う、変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法を利用することで、高い変性率で共役ジエン系重合体を変性させることができ、それから製造された変性共役ジエン系重合体は、ゴム組成物に適用した際に、優れた加工性、引張特性、および粘弾性特性を示すという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
本発明の説明および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、炭化水素溶媒中で、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、およびハロゲン化物を含む触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造するステップ(ステップ1)と、前記活性重合体を変性剤と反応またはカップリングさせるステップ(ステップ2)と、を含み、前記ネオジム化合物と第2アルキル化剤のモル比が1:20~1:35であり、前記重合は30~65℃の温度で行うことを特徴とする。
【0016】
ステップ1
前記ステップ1は、炭化水素溶媒中で、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、およびハロゲン化物を含む触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造するステップであり、ここで、活性重合体は、有機金属部位を含む共役ジエン系重合体を意味し得る。
【0017】
前記有機金属部位は、共役ジエン系重合体の末端の活性化された有機金属部位(分子鎖末端の活性化された有機金属部位)、主鎖中の活性化された有機金属部位、または側鎖中の活性化された有機金属部位であり得る。中でも、アニオン重合または配位アニオン重合により重合体の活性化された有機金属部位を得る場合、前記有機金属部位は、末端の活性化された有機金属部位を指し得る。
【0018】
前記触媒組成物に含有されているネオジム化合物と第2アルキル化剤のモル比は、1:20~1:35である。具体的に、前記ネオジム化合物1モルを基準として、第2アルキル化剤は20モル以上、35モル以下、30モル以下であってもよい。
【0019】
本発明では、ネオジム化合物および第2アルキル化剤を上記のモル比で含んで用いることで、変性ステップで、共役ジエン系重合体の末端に変性剤由来の官能基を効率的に結合させ、変性率を高めることができる。また、このように製造された変性共役ジエン系重合体は、ゴム組成物に適用した際に、加工性に優れるとともに、引張特性、粘弾性特性などの配合物性に優れる。
【0020】
ネオジム化合物1モルを基準として第2アルキル化剤が20モル未満である場合、共役ジエン系重合体の分子量が過度に高くなり、これを調節するために過量の触媒組成物を用いなければならないという問題があり得る。また、触媒組成物の製造効率が減少し、製造された触媒組成物の品質低下が発生する恐れがあり、これは、結果として、変性率の減少およびゴム組成物の品質低下をもたらす。また、ネオジム化合物1モルを基準として第2アルキル化剤が35モルを超える場合、共役ジエン系重合体の分子量が過度に低くなり、これを調節するために触媒組成物の量を減少させる必要があるが、この場合、重合反応自体が十分に進行されず、重合転換率が著しく低下するという問題が発生する恐れがある。また、活性重合体のリビング特性が減少することになるため、変性率が低くなる恐れがあり、同様に、これによりゴム組成物の配合物性などの品質低下が発生する恐れがある。
【0021】
また、ネオジム化合物と第2アルキル化剤のモル比が上記の範囲を外れる場合、触媒組成物の製造効率が減少し、製造された触媒組成物の品質低下が発生して、変性共役ジエン系およびそれを用いたゴム組成物において物性低下をもたらす恐れがある。
【0022】
このように、本発明では、第2アルキル化剤の含量を、ネオジム化合物1モルを基準として20~35モルで用いることで、活性重合体のリビング特性を向上させており、変性ステップで、変性剤由来の官能基を重合体の末端に効率的に結合させて変性率を高めることができ、優れた物性を有する変性共役ジエン系重合体を製造したのである。
【0023】
前記触媒組成物において、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、およびハロゲン化物のモル比は、1:(50~200):(20~35):(2~5)であってもよい。
【0024】
より具体的に、ネオジム化合物1モルを基準として、第1アルキル化剤は50モル以上、60モル以上、80モル以上、90モル以上、200モル以下、150モル以下、120モル以下、110モル以下であってもよい。また、ネオジム化合物1モルを基準として、第2アルキル化剤は、20モル以上、35モル以下であってもよい。また、ネオジム化合物1モルを基準として、ハロゲン化物は、2.0モル以上、2.1モル以上、2.2モル以上、2.3モル以上、5.0モル以下、3.0モル以下、2.5モル以下であってもよい。
【0025】
ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、およびハロゲン化物のモル比が上記の範囲を外れる場合、触媒組成物の製造効率が減少し、製造された触媒組成物の品質低下が発生する恐れがある。これは、結果として、変性共役ジエン系およびそれを用いたゴム組成物において物性低下をもたらす。
【0026】
前記ネオジム化合物は、重合に用いられる共役ジエン系単量体100gを基準として、0.01~0.50mmol、具体的に、0.01mmol以上、0.02mmol以上、0.04mmol以上、0.05mmol以上、0.07mmol以上、0.08mmol以上、0.50mmol以下、0.30mmol以下、0.20mmol未満、0.19mmol以下、0.18mmol以下、0.16mmol以下であってもよい。例えば、共役ジエン系単量体100gを基準として、0.04mmol超過0.20mmol未満、0.05~0.19mmol、0.07~0.18mmol、0.08~0.16mmolであってもよい。
【0027】
ネオジム化合物が上記の含量で用いられ、かつ適正な濃度を有することで、優れた触媒活性を発揮しながらも経済性を確保することができ、別の脱灰工程を経る必要がないという効果がある。
【0028】
また、本発明の触媒組成物は、前述の共役ジエン系単量体100gを基準としたネオジム化合物の含量範囲と、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、およびハロゲン化物とのモル比を同時に満たすことができる。
【0029】
また、本発明の製造方法は、前記活性重合体を製造するステップの前に、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、およびハロゲン化物を-30~-20℃で混合し、-30~-20℃で24~36時間静置させて触媒組成物を製造するステップをさらに含んでもよい。
【0030】
すなわち、前記触媒組成物は、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、選択的に共役ジエン系単量体を順に投入して混合することで製造されることができる。具体的に、前記触媒組成物は、炭化水素系溶媒中で、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、そして選択的に共役ジエン系単量体を順に投入して混合することで製造されることができる。この際、前記炭化水素系溶媒は、上記の触媒組成物の構成成分と反応性を有しない非極性溶媒であってもよい。具体的に、前記炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどのような脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのようなシクロ脂肪族炭化水素系溶媒;またはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどのような芳香族炭化水素系溶媒などからなる群から選択される1種以上が使用できる。具体的な例として、前記炭化水素系溶媒は、ヘキサンなどのような脂肪族炭化水素系溶媒であってもよい。
【0031】
この際、触媒活性種の生成を促進させるために、前記混合工程は、-30~-20℃で行うことができ、混合後、24~36時間静置させることができる。
【0032】
前記触媒組成物は、前述の組成を有し、前述の方法により製造されることで、本発明の製造方法に適用された際に優れた物性を示す変性共役ジエン系重合体を効率的に製造することができる。
【0033】
本発明において、前記活性重合体を製造するための共役ジエン系単量体は、共役ジエン系重合体の製造に通常用いられるものであれば特に制限されずに使用可能である。前記共役ジエン系単量体は、具体的に、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、または2,4-ヘキサジエンなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。より具体的に、前記共役ジエン系単量体は1,3-ブタジエンであってもよい。
【0034】
また、前記重合反応時に最終的に製造される活性重合体の物性的特性を考慮して、前記共役ジエン系単量体と共重合可能なその他の単量体をさらに用いてもよく、前記その他の単量体は、具体的に、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどのような芳香族ビニル単量体などであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。前記その他の単量体は、重合反応で用いられる単量体の総重量に対して20重量%以下の含量で用いられてもよい。
【0035】
この際、前記共役ジエン系単量体は、共役ジエン系重合体の製造のために用いられる量の全体が非極性溶媒に溶解されて用いられるのではなく、全使用量の一部が重合溶媒に溶解されて重合された後、重合転換率によって、1回以上、具体的には、2回以上、より具体的には2回~4回に分けて投入されてもよい。
【0036】
前記ステップ1で用いられる炭化水素溶媒は非極性溶媒であってもよい。具体的に、前記炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどのような脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのようなシクロ脂肪族炭化水素溶媒;またはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどのような芳香族炭化水素溶媒などからなる群から選択される1種以上が使用可能である。具体的な例として、前記炭化水素溶媒は、ヘキサンなどのような脂肪族炭化水素溶媒であってもよい。
【0037】
前記重合溶媒の使用時における単量体の濃度は特に限定されないが、3~80重量%、より具体的には10~30重量%であってもよい。
【0038】
前記ステップ1における重合はラジカル重合により行ってもよく、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、または乳化重合などの様々な重合方法により行ってもよい。また、回分(batch)法、連続法、または半連続法により行ってもよい。
【0039】
具体的に、溶液重合により製造する場合、本発明の一実施形態に係る活性重合体は、重合溶媒中で、前記触媒組成物に対して共役ジエン系単量体を投入して反応させることで行ってもよい。
【0040】
また、前記重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。
【0041】
ここで、定温重合は、触媒組成物を投入した後に任意に熱を加えず、その自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、触媒組成物を投入した後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、触媒組成物を投入した後に熱を加えて熱を増加させたり、熱を奪うことで、重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味する。
【0042】
前記ステップ1における重合は、30~65℃の温度で行い、具体的には、30℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、65℃以下、60℃以下、55℃以下の温度で行ってもよい。
【0043】
本発明では、上記のように重合反応の温度を70℃未満の低温で行うため、穏やかな条件でも効率的に共役ジエン系重合体を製造することができ、重合反応を十分に制御しながらも、重合反応の速度および効率が低下しないようにして共役ジエン系重合体を製造したことを特徴とする。
【0044】
特に、重合温度を上記のように30~65℃に下げて行うことで、活性重合体のリビング特性を向上させることができ、これにより、後続の変性ステップで、変性剤由来の官能基を活性重合体の末端に効率的に結合させて変性率を高めた。また、重合温度を上記の範囲内に調節することで、より高い重合温度で行った場合に比べて優れたリニアリティを有する変性共役ジエン系重合体が製造されるようにした。
【0045】
このような温度調節により、同一の触媒組成物および共役ジエン系単量体を反応物質として使用しても、引張特性、粘弾性特性などにさらに優れ、充填剤との親和性に優れた変性共役ジエン系重合体を製造したのである。
【0046】
重合温度が65℃を超える場合、活性重合体のリビング特性が減少し、変性率が低くなるだけでなく、リニアリティが低下した変性共役ジエン系重合体が製造される恐れがある。結果として、変性共役ジエン系重合体の充填剤との親和性の向上効果を改善させることが困難であり、これは、ゴム組成物の配合物性が低下するという結果をもたらす恐れがある。また、重合温度が30℃未満である場合、重合反応速度や効率が著しく低下するため、共役ジエン系重合体の製造において困難をきたすことになる。
【0047】
前述のとおり、ネオジム化合物と第2アルキル化剤が1:20~1:35のモル比で混合されているため、第2アルキル化剤を少量で使用した触媒組成物を用いても、活性重合体のリビング特性を向上させて変性率を高めることができるとともに、重合温度を上記の範囲に調節することで、かかる効果を極大化させることができる。
【0048】
また、前記重合は、重合転換率が95%以上、99%以上、最大100%の転換率に達するまで、上記の温度範囲内で、15分以上、30分以上、3時間以下、2時間以下、例えば、1時間行ってもよい。
【0049】
前述のとおり、本発明の触媒組成物は、(a)ネオジム化合物、(b)第1アルキル化剤、(c)第2アルキル化剤、および(d)ハロゲン化物を含んでもよく、(e)共役ジエン系単量体をさらに含んでもよい。
【0050】
(a)ネオジム化合物
前記ネオジム化合物は、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤により活性化された後、共役ジエン系単量体の重合のための触媒活性種を形成する。
【0051】
前記ネオジム化合物としては、そのカルボン酸塩(例えば、ネオジム酢酸塩、ネオジムアクリル酸塩、ネオジムメタクリル酸塩、ネオジムグルコン酸塩、ネオジムクエン酸塩、ネオジムフマル酸塩、ネオジム乳酸塩、ネオジムマレイン酸塩、ネオジムシュウ酸塩、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(ベルサテート)など);有機リン酸塩(例えば、ネオジムジブチルリン酸塩、ネオジムジペンチルリン酸塩、ネオジムジヘキシルリン酸塩、ネオジムジヘプチルリン酸塩、ネオジムジオクチルリン酸塩、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)リン酸塩、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)リン酸塩、またはネオジムジデシルリン酸塩など);有機ホスホン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムジシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルホスホン酸塩、またはネオジムオクタデシルホスホン酸塩など);有機ホスフィン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスフィン酸塩、ネオジムペンチルホスフィン酸塩、ネオジムヘキシルホスフィン酸塩、ネオジムヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムオクチルホスフィン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、またはネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩など);カルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルカルバミン酸塩、ネオジムジエチルカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルカルバミン酸塩、ネオジムジブチルカルバミン酸塩、またはネオジムジベンジルカルバミン酸塩など);ジチオカルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジエチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルジチオカルバミン酸塩、またはネオジムジブチルジチオカルバミン酸塩など);キサントゲン酸塩(例えば、ネオジムメチルキサントゲン酸塩、ネオジムエチルキサントゲン酸塩、ネオジムイソプロピルキサントゲン酸塩、ネオジムブチルキサントゲン酸塩、またはネオジムベンジルキサントゲン酸塩など);β-ジケトネート(例えば、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、またはネオジムベンゾイルアセトネートなど);アルコキシドまたはアリルオキシド(例えば、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジムフェノキシド、またはネオジムノニルフェノキシドなど);ハロゲン化物または擬似ハロゲン化物(ネオジムフッ化物、ネオジム塩化物、ネオジム臭化物、ネオジムヨウ化物、ネオジムシアン化物、ネオジムシアン酸塩、ネオジムチオシアン酸塩、またはネオジムアジドなど);オキシハライド(例えば、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド、またはネオジムオキシブロミドなど);または1以上のネオジム元素-炭素結合を含む有機ネオジム含有化合物(例えば、Cp3Nd、Cp2NdR、Cp2NdCl、CpNdCl2、CpNd(シクロオクタテトラエン)、(C5Me52NdR、NdR3、Nd(アリル)3、またはNd(アリル)2Clなど、前記Rはヒドロカルビル基である)などが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0052】
具体的に、前記ネオジム化合物は、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0053】
【化1】
【0054】
前記化学式1中、
a~Rcは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~12のアルキル基であり、但し、Ra~Rcの全てが同時に水素であることはない。
【0055】
また、オリゴマー化に対する懸念なく、溶媒に対する優れた溶解度、触媒活性種への転換率、およびそれによる触媒活性の改善効果の優秀性を考慮すると、前記化学式1中、Raが炭素数4~12のアルキル基であり、RbおよびRcが、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキル基であってもよい。
【0056】
より具体的な例として、前記化学式1中、前記Raは、炭素数6~10のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~4のアルキル基であってもよい。
【0057】
さらに具体的に、前記化学式1中、前記Raは、炭素数8~10のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~3のアルキル基であってもよい。
【0058】
このように、前記化学式1で表されるネオジム化合物は、α(アルファ)位に、炭素数2以上の様々な長さのアルキル基を置換基として含むカルボキシレートリガンドを含むことで、ネオジムの中心金属の周りに立体的な変化を誘導し、化合物同士の絡み合い現象を遮断することができ、これにより、オリゴマー化を抑えることができる効果がある。また、かかるネオジム化合物は、溶媒に対する溶解度が高く、触媒活性種への転換が困難な中心部分に位置するネオジムの割合が減少するため、触媒活性種への転換率が高いという効果がある。
【0059】
より具体的に、前記ネオジム化合物は、Nd(ネオデカノエート)3、Nd(2-エチルヘキサノエート)3、Nd(2,2-ジメチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0060】
また、前記ネオジム化合物の溶解度は、常温(23±5℃)で、非極性溶媒6g当たり約4g以上であってもよい。前記ネオジム化合物の溶解度は、濁っている現象なしにきれいに溶解される程度を意味する。このように高い溶解度を有することで、優れた触媒活性を示すことができる。
【0061】
また、前記ネオジム化合物は、ルイス塩基との反応物の形態で用いられてもよい。この反応物は、ルイス塩基により、ネオジム化合物の溶媒に対する溶解性を向上させ、長期間にわたって安定した状態で保存できる効果がある。前記ルイス塩基は、一例として、ネオジム元素1モル当たり30モル以下、または1~10モルの割合で用いられてもよい。前記ルイス塩基は、一例として、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、または1価もしくは2価のアルコールなどであってもよい。
【0062】
(b)第1アルキル化剤
前記第1アルキル化剤はアルミノキサンであり、例えば、下記化学式、前記アルミノキサンは、トリヒドロカルビルアルミニウム系化合物に水を反応させることで製造されたものであってもよい。具体的に、前記アルミノキサンは、下記化学式2aの直鎖状アルミノキサンまたは化学式2bの環状アルミノキサンであってもよい。
【0063】
【化2】
【0064】
【化3】
【0065】
前記化学式2aおよび2b中、Rは、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する1価の有機基であって、ヒドロカルビル基であってもよく、xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数、具体的には1~100、より具体的には2~50の整数であってもよい。
【0066】
さらに具体的には、前記アルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、n-ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、または2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンなどであってもよい。
【0067】
また、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基を修飾基(R)、具体的には、炭素数2~20の炭化水素基で置換したものであって、具体的には下記化学式3で表される化合物であってもよい。
【0068】
【化4】
【0069】
前記化学式3中、Rは上述の定義のとおりであり、mおよびnは、それぞれ独立して、2以上の整数であってもよい。また、前記化学式3中、Meはメチル基(methyl group)を表す。
【0070】
具体的に、前記化学式3中、前記Rは、炭素数2~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数7~20のアルキルアリール基、アリル基、または炭素数2~20のアルキニル基であってもよく、より具体的には、エチル基、イソブチル基、ヘキシル基、またはオクチル基などのような炭素数2~10のアルキル基であり、さらに具体的には、イソブチル基であってもよい。
【0071】
より具体的に、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基の約50モル%~90モル%を、上記の炭化水素基で置換したものであってもよい。変性メチルアルミノキサン中の置換された炭化水素基の含量が前記範囲内である場合、アルキル化を促進させて触媒活性を増加させることができる。
【0072】
このような変性メチルアルミノキサンは、通常の方法により製造されることができ、具体的には、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて製造されることができる。この際、前記アルキルアルミニウムは、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、またはトリオクチルアルミニウムなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0073】
また、本発明の一実施形態によると、製造される変性共役ジエン系重合体の分子量分布を狭く形成することができ、これによる重合体の物性改善の点から、前記第1アルキル化剤はメチルアルミノキサンであることが好ましい。
【0074】
(c)第2アルキル化剤
本発明の一実施形態に係る前記第2アルキル化剤は、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリドまたはヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドであってもよく、具体的に、前記第2アルキル化剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、またはベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドなどのジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、n-オクチルアルミニウムジヒドリドなどのヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド;またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに制限されない。
【0075】
一方、本発明の一実施形態に係る前記触媒組成物において、アルキル化剤は、ヒドロカルビル基を他の金属に伝達できる有機金属化合物であって、助触媒の役割を果たすことができる。
【0076】
また、本発明の一実施形態に係る前記触媒組成物は、必要に応じて、上記の第1および第2アルキル化剤以外に、共役ジエン系重合体の製造時にアルキル化剤として用いられる通常のアルキル化剤をさらに含んでもよい。かかるアルキル化剤としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、またはジベンジルマグネシウムなどのようなアルキルマグネシウム化合物などが挙げられ、有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウムなどのようなアルキルリチウム化合物などが挙げられる。
【0077】
(d)ハロゲン化物
また、前記ハロゲン化物としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン元素(elemental halogen)、ハロゲン間化合物(interhalogen compound)、ハロゲン化水素、有機ハライド、非金属ハライド、金属ハライド、または有機金属ハライドなどが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。中でも、触媒活性の向上、およびそれによる反応性の優れた改善効果を考慮すると、前記ハロゲン化物としては、有機ハライド、金属ハライド、および有機金属ハライドからなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0078】
前記ハロゲン単体としては、フッ素(F2)、塩素(Cl2)、臭素(Br2)、またはヨウ素(I2)のような二原子分子化合物が挙げられる。
【0079】
また、前記ハロゲン間化合物としては、ヨウ素モノクロリド、ヨウ素モノブロミド、ヨウ素トリクロリド、ヨウ素ペンタフルオリド、ヨウ素モノフルオリド、またはヨウ素トリフルオリドなどが挙げられる。
【0080】
また、前記ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、またはヨウ化水素が挙げられる。
【0081】
また、前記有機ハライドとしては、t-ブチルクロリド(t-BuCl)、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン(TMSCl)、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、メチルブロモホルメート、ヨードメタン、ジヨードメタン、トリヨードメタン(「ヨードホルム」とも呼ばれる)、テトラヨードメタン、1-ヨードプロパン、2-ヨードプロパン、1,3-ジヨードプロパン、t-ブチルヨージド、2,2-ジメチル-1-ヨードプロパン(「ネオペンチルヨージド」とも呼ばれる)、アリルヨージド、ヨードベンゼン、ベンジルヨージド、ジフェニルメチルヨージド、トリフェニルメチルヨージド、ベンジリデンヨージド(「ベンザルヨージド」とも呼ばれる)、トリメチルシリルヨージド、トリエチルシリルヨージド、トリフェニルシリルヨージド、ジメチルジヨードシラン、ジエチルジヨードシラン、ジフェニルジヨードシラン、メチルトリヨードシラン、エチルトリヨードシラン、フェニルトリヨードシラン、ベンゾイルヨージド、プロピオニルヨージド、またはメチルヨードホルメートなどが挙げられる。
【0082】
また、前記非金属ハライドとしては、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素(SiCl4)、四臭化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル、四ヨウ化ケイ素、三ヨウ化ヒ素、四ヨウ化テルル、三ヨウ化ホウ素、三ヨウ化リン、オキシヨウ化リン、または四ヨウ化セレンなどが挙げられる。
【0083】
また、前記金属ハライドとしては、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二フッ化亜鉛、三ヨウ化アルミニウム、三ヨウ化ガリウム、三ヨウ化インジウム、四ヨウ化チタン、二ヨウ化亜鉛、四ヨウ化ゲルマニウム、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、三ヨウ化アンチモン、または二ヨウ化マグネシウムが挙げられる。
【0084】
また、前記有機金属ハライドとしては、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジ-n-ブチルスズジクロリド、ジ-n-ブチルスズジブロミド、トリ-n-ブチルスズクロリド、トリ-n-ブチルスズブロミド、メチルマグネシウムヨージド、ジメチルアルミニウムヨージド、ジエチルアルミニウムヨージド、ジ-n-ブチルアルミニウムヨージド、ジイソブチルアルミニウムヨージド、ジ-n-オクチルアルミニウムヨージド、メチルアルミニウムジヨージド、エチルアルミニウムジヨージド、n-ブチルアルミニウムジヨージド、イソブチルアルミニウムジヨージド、メチルアルミニウムセスキヨージド、エチルアルミニウムセスキヨージド、イソブチルアルミニウムセスキヨージド、エチルマグネシウムヨージド、n-ブチルマグネシウムヨージド、イソブチルマグネシウムヨージド、フェニルマグネシウムヨージド、ベンジルマグネシウムヨージド、トリメチルスズヨージド、トリエチルスズヨージド、トリ-n-ブチルスズヨージド、ジ-n-ブチルスズジヨージド、またはジ-t-ブチルスズジヨージドなどが挙げられる。
【0085】
また、本発明の一実施形態に係る触媒組成物は、前記ハロゲン化物の代わりに、または前記ハロゲン化物とともに、非配位性アニオン含有化合物、または非配位性アニオン前駆体化合物を含んでもよい。
【0086】
具体的に、前記非配位性アニオンを含む化合物において、非配位性アニオンは、立体障害によって触媒系の活性中心と配位結合を形成しない、立体的に体積が大きいアニオンであって、テトラアリールボレートアニオンまたはフッ化テトラアリールボレートアニオンなどであってもよい。また、前記非配位性アニオンを含む化合物は、上記の非配位性アニオンとともに、トリアリールカルボニウムカチオンなどのようなカルボニウムカチオン;N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンなどのようなアンモニウムカチオン、またはホスホニウムカチオンなどの対カチオンを含むものであってもよい。
【0087】
より具体的に、前記非配位性アニオンを含む化合物は、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、またはN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートなどであってもよい。
【0088】
また、前記非配位性アニオン前駆体としては、反応条件下で非配位性アニオンが形成可能な化合物であって、トリアリールホウ素化合物(BE3、この際、Eは、ペンタフルオロフェニル基または3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのような、強い電子吸引性のアリール基である)が挙げられる。
【0089】
(e)共役ジエン系単量体
また、前記触媒組成物は、共役ジエン系単量体をさらに含んでもよい。重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の一部を重合用触媒組成物と予め混合して前(pre)重合した予備重合(preforming)、または予備混合(premix)触媒組成物の形態で用いることで、触媒組成物の活性を向上させるとともに、製造される活性重合体を安定化させることができる。
【0090】
本発明において、前記「予備重合(preforming)」とは、ネオジム化合物、アルキル化剤、およびハロゲン化物を含む触媒組成物、すなわち、触媒系においてジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)などを含む場合、これとともに様々な触媒組成物活性種の生成可能性を低減するために、1,3-ブタジエンなどの共役ジエン系単量体を少量添加することとなるが、1,3-ブタジエンの添加とともに触媒組成物系中で前(pre)重合がなされることを意味する。また、「予備混合(premix)」とは、触媒組成物系で重合がなされず、各化合物が均一に混合されている状態を意味する。
【0091】
この際、前記触媒組成物の製造に用いられる共役ジエン系単量体は、前記重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の総使用量の範囲内で一部の量が用いられ、例えば、前記ネオジム化合物1モルに対して1モル~100モル、具体的には10モル~50モル、または20モル~50モルで用いられてもよい。
【0092】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前記活性重合体を製造した後、ポリオキシエチレングリコールホスフェートなどのような重合反応を完了させるための反応停止剤、または2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾールなどのような酸化防止剤などの添加剤をさらに用いて重合を終了させるステップを含んでもよい。その他にも、反応停止剤とともに、溶液重合を容易にする添加剤、例えば、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、または酸素捕捉剤(oxygen scavenger)などのような添加剤が選択的にさらに用いられてもよい。
【0093】
上記のような重合反応の結果として、前記ネオジム化合物を含む触媒に由来の活性有機金属部位を含む共役ジエン系重合体、より具体的には、1,3-ブタジエン単量体単位を含むネオジム触媒化ブタジエン系重合体が生成される。前記製造された共役ジエン系重合体は、リビング性(living property)または擬似リビング性(pseudo living property)を有することができる。
【0094】
ステップ2
前記ステップ2は、前記活性重合体を変性剤と反応またはカップリングさせるステップであり、活性重合体の有機金属部位に変性剤を反応させて変性を行うことである。
【0095】
前記変性反応は、溶液反応または固相反応により行われてもよく、具体的な例として、溶液反応により行われてもよい。さらに他の例として、前記変性反応は、回分(batch)式反応器を用いて行われてもよく、多段連続式反応器やインラインミキサーなどの装置を用いて連続式で行われてもよい。
【0096】
さらに他の例として、前記変性反応は、通常、重合反応と同一の温度および圧力条件で行われ、具体的に、本発明では、30~65℃の温度、具体的には30℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、65℃以下、60℃以下、55℃以下の温度で行われてもよい。
【0097】
前記変性剤としては、活性重合体の少なくとも一末端に官能基を付与するか、またはカップリングにより分子量を上昇させることができる化合物であれば、その種類を問わず本発明で使用可能である。例えば、アザシクロプロパン基、ケトン基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、炭酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸金属塩、酸ハロゲン化物、尿素基、チオ尿素基、アミド基、チオアミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ハロゲン化イソシアノ基、エポキシ基、チオエポキシ基、イミン基、およびM-Z結合(但し、ここで、Mは、Sn、Si、Ge、およびPから選択され、Zはハロゲン原子である)から選択される1種以上の官能基を含み、活性プロトンおよびオニウム塩を含まない化合物であってもよい。
【0098】
前記変性剤は、触媒組成物中のネオジム化合物1モルに対して0.5モル~20モルで用いてもよい。具体的には、前記変性剤は、触媒組成物中のネオジム化合物1モルに対して1モル~10モルで用いてもよい。
【0099】
上記の変性反応の終了後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液などを重合反応系に添加して重合反応を停止させてもよい。その後、水蒸気を供給することで溶剤の分圧を低めるスチームストリッピングなどの脱溶媒処理や真空乾燥処理を経て変性共役ジエン系重合体が得られる。また、上記の変性反応の結果として得られる反応生成物中には、上記の変性共役ジエン系重合体とともに、変性されていない活性重合体が含まれていることがある。
【0100】
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、製造された変性共役ジエン系重合体に対する沈殿および分離工程をさらに含んでもよい。前記沈殿された変性共役ジエン系重合体に対する濾過、分離、および乾燥工程は、通常の方法により行われることができる。
【0101】
上記のように、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体によると、狭い分子量分布を始めとする優れた物性的特性を有する変性共役ジエン系重合体、具体的な例として、ネオジム触媒化ブタジエン系重合体が製造されることができる。
【0102】
また、本発明は、前記製造方法により製造された変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0103】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、前述の特徴の触媒組成物および重合温度の条件下で製造されることで、それを含むゴム組成物の粘弾性、引張特性、および加工性などの物性バランスが改善されるように最適化された分子量分布などの特性、高いリニアリティを有することができる。
【0104】
前記変性共役ジエン系重合体の変性率(modification rate)は5~80モル%であり、具体的には、10~80モル%、または20~80モル%であってもよい。この範囲内である場合に、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れる効果がある。前記変性率は、前記ステップ1で製造された活性重合体中において、ステップ2で変性剤と反応またはカップリングした変性共役ジエン系重合体の割合を意味し得る。
【0105】
前記変性共役ジエン系重合体は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により測定した共役ジエン部のシス-1,4(cis-1,4)結合の含量が95%以上、96%以上、96.5%以上であってもよい。これにより、ゴム組成物に適用した際に、ゴム組成物の耐磨耗性、耐クラック性、および耐オゾン性が向上することができる。
【0106】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、フーリエ変換赤外分光法により測定した共役ジエン部のビニル(vinyl)結合の含量が5%以下、3%以下、1%以下、0.7%以下であってもよい。重合体中のビニルの含量が5%を超える場合、それを含むゴム組成物の耐磨耗性、耐クラック性、耐オゾン性が劣化する恐れがある。
【0107】
ここで、前記FT-IRによる重合体中のシス-1,4結合の含量およびビニルの含量は、同一セルの二硫化炭素をブランクとし、5mg/mLの濃度で調製した共役ジエン系重合体の二硫化炭素溶液のFT-IR透過率スペクトルを測定した後、測定スペクトルの1130cm-1付近の最大ピーク値(a、ベースライン)、トランス-1,4結合を示す967cm-1付近の最小ピーク値(b)、ビニルを示す911cm-1付近の最小ピーク値(c)、およびシス-1,4結合を示す736cm-1付近の最小ピーク値(d)を用いて、それぞれの含量を求めたものである。
【0108】
前記共役ジエン系重合体は、1.5~3.5の分子量分布(Mw/Mn)を有し、具体的には、前記共役ジエン系重合体の分子量分布は、2.0以上、3.0以下、2.8以下であってもよい。前記狭い分子量分布を有する場合、ゴム組成物に適用した際に引張特性および粘弾性に優れる効果がある。
【0109】
前記分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算されることができる。この際、前記数平均分子量(Mn)は、n個の重合体分子の分子量を測定し、それらの分子量の総和を求め、nで除して計算した個別重合体分子量の共通平均(common average)であり、前記重量平均分子量(Mw)は、高分子組成物の分子量分布を示す。分子量の平均は何れもモル当たりグラム(g/mol)で表されることができる。また、前記重量平均分子量および数平均分子量はそれぞれ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析されるポリスチレン換算分子量を意味する。
【0110】
本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、上記の分子量分布条件を満たすとともに、重量平均分子量(Mw)が4×105~1.0×106g/molであり、具体的に、4.00×105g/mol以上、4.50×105g/mol以上、5.00×105g/mol以上、6.00×105g/mol以上、7.00×105g/mol以上、1.00×106g/mol以下、9.00×105g/mol以下であってもよい。
【0111】
また、数平均分子量(Mn)は、2.0×105~5.0×105g/molであり、2.00×105g/mol以上、2.50×105g/mol以上、2.70×105g/mol以上、5.00×105g/mol以下、4.00×105g/mol以下、3.50×105g/mol以下であってもよい。
【0112】
上記の範囲内である場合、ゴム組成物に適用した際に、優れた引張特性を有するとともに、加工性に優れてゴム組成物の作業性が改善されるため混捏が容易となり、ゴム組成物の機械的物性および物性バランスに優れる効果がある。
【0113】
より具体的に、前記共役ジエン系重合体は、前述の分子量分布とともに、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の条件を同時に満たす場合、ゴム組成物に適用した際に、優れたゴム組成物の引張特性、粘弾性、および加工性を有し、これらの間の物性バランスに優れる効果がある。
【0114】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、100℃でのムーニー粘度(mooney viscosity、MV)が20~100であり、具体的には、20以上、30以上、35以上、40以上、50以上、100以下、80以下、75以下、70以下であってもよい。本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、前述の範囲のムーニー粘度を有することで、優れた加工性を有することができる。
【0115】
前記ムーニー粘度は、ムーニー粘度計、例えば、Monsanto社のMV2000Eにて、Large Rotorを用い、100℃、Rotor Speed 2±0.02rpmの条件で測定することができる。この際、用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(platen)を作動させて測定することができる。
【0116】
前記変性共役ジエン系重合体は、β値(β-value)が0.190以上、具体的に、0.195以上、0.200以上、0.210以上であってもよい。上記のように高いβ値を有することで、ゴム組成物に適用した際に、優れた抵抗特性および燃費特性を有することができる。
【0117】
ここで、前記β値は、同量の変形(strain)に対するfrequencyの変化による、粘弾性係数の変化を示すものであって、重合体のリニアリティを示す指標である。通常、β値が低いほど、重合体のリニアリティが低いことを意味し、リニアリティが低いほど、ゴム組成物に適用した際における転がり抵抗または回転抵抗が増加することになる。
【0118】
前記β値は、Rubber Process Analyzer(RPA2000、AlphaTechnologies社)を用いて、100℃の条件でStrain 7%で周波数掃引(Frequency sweep)を行い、Log(1/tan delta) vs Log(Freq.)のslopeを得て、それから計算して得ることができる。この際、Frequencyは、2、5、10、20、50、100、200、500、1,000、2,000cpmに設定する。
【0119】
さらに、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物、および前記ゴム組成物から製造された成形品を提供する。
【0120】
前記ゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体を0.1~100重量%、具体的には10~100重量%、または20~90重量%で含んでもよい。前記変性共役ジエン系重合体の含量が0.1重量%未満である場合には、結果的に、前記ゴム組成物を用いて製造された成形品、例えば、タイヤの耐磨耗性および耐クラック性などの改善効果が微小であり得る。
【0121】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体の他に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよく、この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的には、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して1~900重量部で含まれてもよい。
【0122】
前記ゴム成分は、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、例えば、前記ゴム成分は、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱蛋白天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。
【0123】
また、前記ゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~150重量部の充填剤を含んでもよく、前記充填剤は、シリカ系、カーボンブラック、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的には、前記充填剤はカーボンブラックであってもよい。
【0124】
前記カーボンブラック系充填剤は、特に制限されるものではないが、例えば、窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217-2:2001に準じて測定)が20m2/g~250m2/gであってもよい。また、前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80cc/100g~200cc/100gであってもよい。前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が250m2/gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあり、20m2/g未満であると、カーボンブラックによる補強性能が微小であり得る。また、前記カーボンブラックのDBP吸油量が200cc/100gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあり、80cc/100g未満であると、カーボンブラックによる補強性能が微小であり得る。
【0125】
また、前記シリカは、特に制限されるものではないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよい。具体的には、前記シリカは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も顕著な湿式シリカであってもよい。また、前記シリカは、窒素吸着比表面積(nitrogen surface area per gram、N2SA)が120m2/g~180m2/gであり、CTAB(cetyl trimethyl ammonium bromide)吸着比表面積が100m2/g~200m2/gであってもよい。前記シリカの窒素吸着比表面積が120m2/g未満であると、シリカによる補強性能が低下する恐れがあり、180m2/gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがある。また、前記シリカのCTAB吸着比表面積が100m2/g未満であると、充填剤であるシリカによる補強性能が低下する恐れがあり、200m2/gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがある。
【0126】
一方、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性を改善するために、シランカップリング剤がともに用いられてもよい。
【0127】
前記シランカップリング剤としては、具体的に、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。より具体的には、補強性の改善効果を考慮すると、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0128】
また、本発明のゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、そのため、加硫剤をさらに含んでもよい。
【0129】
前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1~10重量部で含まれてもよい。上記の含量範囲で含まれる場合、加硫ゴム組成物が必要とする弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性を得ることができる。
【0130】
また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、上記の成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0131】
前記加硫促進剤としては、特に限定されないが、具体的には、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が使用可能である。前記加硫促進剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1~5重量部で含まれてもよい。
【0132】
また、前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、具体的には、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、より具体的には、引張強度および耐磨耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が使用できる。前記プロセス油は、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよく、前記含量で含まれる場合、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止することができる。
【0133】
また、前記老化防止剤としては、具体的に、N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などが挙げられる。前記老化防止剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1~6重量部で用いられてもよい。
【0134】
本発明のゴム組成物は、前記配合処方によって、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得られ、また、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐磨耗性に優れたゴム組成物が得られる。
【0135】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0136】
前記ゴム組成物を用いて製造された成形品は、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0137】
実施例
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0138】
[変性剤の製造]
ジクロロメタン(CH2Cl2)中にエチルピペリジン-4-カルボキシレート(ethyl piperidine-4-carboxylate)2gが溶解された溶液に、トリエチルアミン(Et3N)1.77mLおよび塩化トリメチルシリル(TMSCl)1.62mLを0℃で添加し、この混合物を0℃で5時間撹拌した。次いで、生成された溶液中の溶媒を減圧下で蒸発させ、ヘキサンに再溶解させた後、残留物をヘキサンで2回繰り返して濾過した。濾過された原材料は減圧蒸留により精製し、下記構造の化合物、エチル1-(トリメチルシリル)ピペリジン-4-カルボキシレート(ethyl 1-(trimethylsilyl)piperidine-4-carboxylate)を得て、1H核磁気共鳴分光学的スペクトルを観察した。
【0139】
【化5】
【0140】
1H NMR(500 MHz, CDCl3): δ 4.11-4.08(m, 2H), δ 3.13-3.11(m, 2H), δ 2.61-2.54(m, 2H), δ 2.34-2.32(m, 1H), δ 1.74(m, 2H), δ 1.42(m, 2H), δ 1.23-1.22(m, 3H), δ 0.05-0.00(m, 9H).
【0141】
[触媒組成物の製造]
実施製造例1
窒素条件下、ヘキサン溶媒中に、ネオジムベルサテート(NdV、neodymium versatate、0.80mmol)を添加し、メチルアルミノキサン(MAO、80.0mmol)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH、16.0mmol)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC、1.92mmol)、および1,3-ブタジエン(16.0mmol)を順に投入した後、-20℃で12時間混合して触媒組成物を製造した(NdV:DIBAH=1:20)。製造された触媒組成物は、-30~-20℃で窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0142】
実施製造例2
窒素条件下、ヘキサン溶媒中に、ネオジムベルサテート(NdV、neodymium versatate、0.60mmol)を添加し、メチルアルミノキサン(MAO、60.0mmol)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH、18.0mmol)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC、1.44mmol)、および1,3-ブタジエン(12.0mmol)を順に投入した後、-20℃で12時間混合して触媒組成物を製造した(NdV:DIBAH=1:30)。製造された触媒組成物は、-30~-20℃で窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0143】
実施製造例3
窒素条件下、ヘキサン溶媒中に、ネオジムベルサテート(NdV、neodymium versatate、0.40mmol)を添加し、メチルアルミノキサン(MAO、40.0mmol)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH、14.0mmol)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC、0.96mmol)、および1,3-ブタジエン(8.0mmol)を順に投入した後、-20℃で12時間混合して触媒組成物を製造した(NdV:DIBAH=1:35)。製造された触媒組成物は、-30~-20℃で窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0144】
比較製造例1
窒素条件下、ヘキサン溶媒中に、ネオジムベルサテート(NdV、neodymium versatate、1.00mmol)を添加し、メチルアルミノキサン(MAO、40.0mmol)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH、10.0mmol)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC、2.40mmol)、および1,3-ブタジエン(30.0mmol)を順に投入した後、-20℃で12時間混合して触媒組成物を製造した(NdV:DIBAH=1:10)。製造された触媒組成物は、-30~-20℃で窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0145】
比較製造例2
窒素条件下、ヘキサン溶媒中に、ネオジムベルサテート(NdV、neodymium versatate、0.20mmol)を添加し、メチルアルミノキサン(MAO、20.0mmol)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH、10.0mmol)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC、0.48mmol)、および1,3-ブタジエン(4.0mmol)を順に投入した後、-20℃で12時間混合して触媒組成物を製造した(NdV:DIBAH=1:50)。製造された触媒組成物は、-30~-20℃で窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0146】
[変性または未変性共役ジエン系重合体の製造]
実施例1
完全に乾燥させた反応器に真空と窒素を交互に加えた後、真空状態の15Lの反応器に、4.2kgのヘキサンと500gの1,3-ブタジエンを投入し、40℃に昇温した。これに、前記実施製造例1の触媒組成物を添加した後、重合を60分間進行し、活性重合体を製造した。
【0147】
活性重合体に、上記で製造した変性剤化合物2.5gが含まれたヘキサン溶液を添加した後、重合条件と同様の温度条件で変性反応を60分間進行した。
【0148】
その後、重合停止剤1.0gが含まれたヘキサン溶液と、酸化防止剤2.0gが含まれたヘキサン溶液を添加し、反応を終了させて変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0149】
実施例2
反応器を50℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0150】
実施例3
反応器を60℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0151】
実施例4
実施製造例1の代わりに実施製造例2の触媒組成物を使用し、反応器を50℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0152】
実施例5
実施製造例1の代わりに実施製造例3の触媒組成物を使用し、反応器を50℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0153】
比較例1
未変性Nd-BRとして、BR1208(LG化学社製)を使用した。
【0154】
比較例2
未変性Nd-BRとして、CB24(Lanxess社製)を使用した。
【0155】
比較例3
実施製造例1の代わりに比較製造例1の触媒組成物を使用し、反応器を50℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0156】
比較例4
実施製造例1の代わりに比較製造例1の触媒組成物を使用し、反応器を70℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0157】
比較例5
実施製造例1の代わりに比較製造例2の触媒組成物を使用し、反応器を50℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0158】
比較例6
反応器を70℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0159】
比較例7
実施製造例1の代わりに実施製造例2の触媒組成物を使用し、反応器を70℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0160】
比較例8
実施製造例1の代わりに実施製造例3の触媒組成物を使用し、反応器を70℃に昇温したことを除き、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0161】
【表1】
【0162】
[変性共役ジエン系重合体の物性分析]
実験例1
前記実施例および比較例で製造された各重合体に対して、下記の方法により物性を分析し、その結果を表1に示した。
【0163】
(1)微細構造の分析
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により、共役ジエン部のシス-1,4結合の含量、トランス-1,4結合の含量、およびビニルの含量を測定した。
【0164】
具体的に、同一セルの二硫化炭素をブランクとし、5mg/mLの濃度で調製した共役ジエン系重合体の二硫化炭素溶液のFT-IR透過率スペクトルを測定した後、測定スペクトルの1130cm-1付近の最大ピーク値(a、ベースライン)、トランス-1,4結合を示す967cm-1付近の最小ピーク値(b)、ビニル結合を示す911cm-1付近の最小ピーク値(c)、およびシス-1,4結合を示す736cm-1付近の最小ピーク値(d)を用いて、それぞれの含量を求めた。
【0165】
(2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(MWD)
各重合体を、40℃の条件下でテトラヒドロフラン(THF)に30分間溶かした後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)に載せて流した。この際、カラムとしては、ポリマー・ラボラトリー社(Polymer Laboratories)の商品名PLgel Olexisカラム2本とPLgel mixed-Cカラム1本を組み合わせて使用した。また、新たに交替したカラムは、何れも混床(mixed bed)タイプのカラムを使用し、ゲル浸透クロマトグラフィーの標準物質(GPC Standard material)としてはポリスチレン(Polystyrene)を使用した。
【0166】
(3)ムーニー粘度(MV、ML1+4、@100℃)
各重合体に対して、Monsanto社のMV2000Eにより、Large Rotorを用いて、100℃、Rotor Speed 2±0.02rpmの条件でムーニー粘度(ML1+4、@100℃)(MU)を測定した。この際、使用された試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させてトルクを印加しながらムーニー粘度を測定した。
【0167】
(4)β値(β-value)
Rubber Process Analyzer(RPA2000、AlphaTechnologies社)を用いて、各重合体のβ値を測定した。
【0168】
具体的に、各重合体を、100℃の条件で、Strain 7%で周波数掃引(Frequency sweep)を行った。この際、Frequencyは、2、5、10、20、50、100、200、500、1,000、2,000cpmに設定し、Log(1/tan delta) vs Log(Freq.)のslopeを計算してβ値を得た。
【0169】
(5)変性率(%)
変性率は、クロマトグラフィー測定から得られたクロマトグラムを用いて計算した。具体的に、各重合体を、40℃の条件下でテトラヒドロフラン(THF)に溶かして試料を準備し、各試料をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)に注入し、溶離剤(Eluent)としてテトラヒドロフランを流してクロマトグラムを得、得られたクロマトグラムから下記数学式により変性率を計算した。
【0170】
【数1】
【0171】
【表2】
【0172】
本発明の製造方法に従って、NdV(ネオジム化合物)と第2アルキル化剤(DIBAH)のモル比が1:20~1:35である触媒組成物を使用し、30~65℃に属する温度で重合して製造した実施例1~5では、活性重合体のリビング特性に優れて高い変性率を示し、リニアリティに優れた変性共役ジエン系重合体が製造された。
【0173】
一方、第2アルキル化剤(DIBAH)が少なすぎる比較製造例1の触媒組成物を使用した比較例3および4、第2アルキル化剤(DIBAH)が過量である比較製造例2の触媒組成物を使用した比較例5、また、実施製造例1~3の触媒組成物を使用したが、重合温度が70℃と高すぎる比較例6~8では、何れも実施例に比べて変性率が低いことを確認した。
【0174】
[ゴム組成物の製造および物性分析]
実験例2
前記実施例で製造したブタジエン重合体および比較例で製造したブタジエン重合体を用いてゴム組成物およびゴム試験片を製造した後、下記のような方法により、引張強度、300%モジュラス、伸び、および粘弾性特性をそれぞれ測定した。その結果を下記表3に示した。
【0175】
具体的に、前記ゴム組成物は、前記各重合体100重量部に、カーボンブラック70重量部、プロセス油(process oil)22.5重量部、老化防止剤(TMDQ)2重量部、酸化亜鉛(ZnO)3重量部、およびステアリン酸(stearic acid)2重量部を配合してそれぞれのゴム組成物を製造した。その後、前記各ゴム組成物に、硫黄2重量部、加硫促進剤(CZ)2重量部、および加硫促進剤(DPG)0.5重量部を添加し、50℃で1.5分間、50rpmで弱く混合した後、50℃のロールを用いてシート状の加硫配合物を得た。得られた加硫配合物を160℃で25分間加硫してゴム試験片を製造した。
【0176】
(1)引張特性
前記各ゴム組成物を150℃でt90分加硫した後、ASTM D412に準じて、引張強度(tensile strength、kg・f/cm2)、300%伸び時のモジュラス(300% modulus、M-300%、kg・f/cm2)、および破断時の加硫物の伸び(elongation)を測定した。
【0177】
(2)粘弾性特性(Tanδ @60℃)
低燃費特性において最も重要なTanδ物性は、ドイツGabo社のDMTS 500Nを用いて、周波数10Hz、Prestrain 3%、Dynamic Strain 3%下で、60℃での粘弾性系数(Tanδ)を測定した。この際、60℃でのTanδ値が優れるほど、ヒステリシス損が少なく、回転抵抗性特性に優れることを意味し、すなわち、燃費性に優れることを意味する。
【0178】
【表3】
【0179】
引張特性のインデックス(Index)値は、比較例1の値を100として下記数学式1により計算し、粘弾性特性のインデックス値は、比較例1の値を100として下記数学式2により計算した。
【0180】
【数2】
【0181】
【数3】
【0182】
前記表3に示したように、本発明の製造方法で製造した変性共役ジエン系重合体は、ゴム試験片として加工した時に、優れた引張特性および粘弾性特性を示すことを確認した。
【0183】
具体的に、重合温度は50℃と同様にしたが、実施例2、4、および5はそれぞれ実施製造例1~3の触媒組成物を使用し、比較例3は比較製造例1の触媒組成物を使用し、比較例5は比較製造例2の触媒組成物を使用した。その結果、実施例2、4、および5は何れも、比較例3または5に比べて引張特性および粘弾性特性が改善されていた。このことから、重合温度が本発明の範囲内であるとしても、触媒組成物のネオジム化合物と第2アルキル化剤のモル比が本発明の範囲を外れた場合には、変性共役ジエン系重合体の配合物性が低下することが分かる。
【0184】
また、実施例1~3と比較例6は実施製造例1の触媒組成物を使用し、実施例4と比較例7は実施製造例2の触媒組成物を使用し、実施例5と比較例8は実施製造例3の触媒組成物を使用した。但し、重合温度において、実施例1~5は、本発明の範囲(30~65℃)に含まれる40℃、50℃、または60℃の温度で重合し、比較例6~8はそれよりも高い70℃で重合した。この場合にも、実施例1~5は何れも、比較例6~8に比べて引張特性および粘弾性特性が大きく向上していた。特に、同一の触媒組成物を使用した実施例および比較例を対応付けて比較すると、本発明で定義したネオジム化合物と第2アルキル化剤のモル比を満たす触媒組成物を使用しても、重合温度が30~65℃を外れると物性の低下が生じることを明確に確認した。
【0185】
このように、本発明の製造方法に従って、ネオジム化合物と第2アルキル化剤のモル比が1:20~1:35である触媒組成物を使用するとともに、30~65℃の温度で重合を行う際に、変性率が高く、優れた配合物性を有する変性共役ジエン系重合体を製造することができる。