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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】タイヤ成型用離型剤組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/64 20060101AFI20240329BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20240329BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240329BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
B29C33/64
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023052877
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2019077319の分割
【原出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2023073389
(43)【公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】濱嶋 優太
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伸明
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-114970(JP,A)
【文献】特開2011-006661(JP,A)
【文献】特開昭57-162771(JP,A)
【文献】特開2010-180347(JP,A)
【文献】特開2014-224164(JP,A)
【文献】特開2005-320401(JP,A)
【文献】特開2019-018153(JP,A)
【文献】特開平09-095613(JP,A)
【文献】特開昭62-003908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00- 33/76
B29C 35/00- 35/18
B29D 30/00- 30/72
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ成型用離型剤組成物の製造方法であって、
(1)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合するヒドロキシ基を含有し、25℃における粘度が10,000mPa・s以上であるオルガノポリシロキサン((A)成分)、界面活性剤((E)成分)、水((C)成分)を混練機又は乳化機により撹拌し、その後、水((C)成分)を加え、混練機又は乳化機により撹拌し、乳化物(A-1)を得る工程と、
(2)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン((B)成分)、界面活性剤((E)成分)を、乳化機を用いて混合し、水((C)成分)中に乳化分散させ、その後、水((C)成分)を加えて希釈し、乳化物(B-1)を得る工程と、
(3)ポリビニルアルコール((D)成分)を水((C)成分)に溶解させ、組成物(D-1)を得る工程と、
(4)縮合反応触媒((F)成分)を水((C)成分)に溶解させ、組成物(F-1)を得る工程と、
を含み、前記乳化物(A-1)、前記乳化物(B-1)、前記組成物(D-1)、及び前記組成物(F-1)を前記(A)成分100質量部に対し、
(B):10~100質量部、
(C):10~10,000質量部、
(D):2~70質量部、
(E):5~50質量部、
(F):0.1~10質量部、
となるように混合してタイヤ成型用離型剤組成物とすることを特徴とするタイヤ成型用離型剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成型用離型剤組成物および、その離型剤を塗布したタイヤ成型用ブラダーに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの成型加硫時には、ブラダー又はエアバッグと称するゴム製の袋(以下、ブラダーと称する。)を成型加硫前のタイヤ(以下、グリーンタイヤと称する場合がある。)の内側に挿入し、ブラダーの内部に高温高圧の気体(例えば、約180℃の蒸気など)又は液体を導入することによって、グリーンタイヤを金型に押し付けて加熱加圧し、成型加硫を行っている。この場合、ブラダーとグリーンタイヤ内面は、いずれもゴムを素材としているために、両者の間には離型剤が必要である。
【0003】
従来、行われてきた方法としては、(1)インサイドペイントと称する水系又は溶剤系の離型剤を、成型加硫するすべてのグリーンタイヤの内面に塗布する方法と、(2)グリーンタイヤとブラダーの間の剥離を良くするために、ブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布し、一度ブラダー表面に離型剤を塗布した後は、改めて離型剤をブラダーに塗布することなく、連続してタイヤを成型加硫する方法の2種類が知られている。
【0004】
上記(1)の方法のインサイドペイントとしては、例えば、特許文献1、2で提案されているものが挙げられる。即ち、特許文献1には、表面が有機珪素化合物との反応により疎水化された無機珪酸塩が分散されている水性ジオルガノポリシロキサン乳濁液が提案されている。また、特許文献2には、ジアルキルポリシロキサンとポリアルキレングリコールとの共重合体及び雲母又はタルクからなる粉末離型剤組成物が提案されている。
【0005】
また、上記(2)の方法のブラダー表面に塗布する離型剤としては、例えば、下記の特許文献3~6で提案されている方法が挙げられる。即ち、特許文献3には、官能基含有オルガノポリシロキサンラテックスを用いる潤滑剤組成物が提案されている。また、特許文献4には、アミノアルキル基変性オルガノポリシロキサンと界面活性剤を含有する炭酸ガスにより自己架橋する潤滑剤組成物が提案されている。また、特許文献5には、水分又は熱の作用下に重合するシリコーンゴムとシリコーン離型剤の混合物をブラダーに施し、水分を含有する空気又は熱にさらすことにより、ブラダー上に離型剤フィルムを構成する方法が提案されている。また、特許文献6には、異なる3種の特定のポリシロキサンを含有した潤滑剤組成物が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献7には、最内層にブラダーゴムとの接着性を有する室温硬化型シリコーン層が施され、最外層に縮合型のシリコーン樹脂層が形成されてなる2層以上の離型潤滑層を有するブラダーが提案されている。また、特許文献8には、オルガノポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリカ及び金属の有機酸塩を含有するシリコーン組成物により表面処理された加硫用ブラダーを用いる方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献9には、粉体からなる無機成分と、シリコーン成分と、界面活性剤と、多価アルコールと、水とを含むタイヤ成型用離型剤を利用する方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、上記(1)成型加硫するすべてのグリーンタイヤの内面に離型剤を塗布する方法は、工程が煩雑になるとともに、塗布時に機器周辺の汚れが発生するという問題がある。また、それ以上に深刻な問題として、インサイドペイントがタイヤのインナーライナーの接合部に入り込み、インナーライナー接合部の剥離を起こしてタイヤ不良が発生するといった問題、インサイドペイント塗布後のタイヤを成型工程に投入するまで保管するためのストックポイントに膨大なスペースを要するという問題等がある。
【0009】
特許文献10には、アルキルシリコーンと、特定のシリコーン系非イオン界面活性剤と、粉体とからなる無機成分と、水とを含む、タイヤ内面用離型剤を用いる方法が提案されており、一度離型剤を塗布することで、繰り返しタイヤの加硫・離型が可能となっている。しかしながら、特許文献10に提案された技術は、繰り返しの離型回数が最大で4回であり、効率よくタイヤを製造するためには、一度の離型剤の塗布での繰り返しタイヤの加硫・離型回数を大幅に増やす必要がある。
【0010】
また、上記(2)ブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法においては、シリコーン系の水系離型剤を使用する技術では、離型剤皮膜とブラダーとの接着性が充分なものはなく、タイヤブラダーの離型効果の持続性が不十分であり、また離型剤のブラダーゴムへの濡れ性も不十分なため、ブラダーに均一に離型剤を塗布できないという問題がある。溶剤系の離型剤を用いる技術においては、ブラダーへの濡れ性は向上できるが、溶剤を使用する為、環境対策が必要であり、また離型剤皮膜とブラダーとの密着効果は不十分であり、使用中に離型剤皮膜の剥離が起きるという問題がある。
【0011】
特許文献7に提案された技術は、上記の剥離を抑制するために2層以上の塗布を行い、使用初期にタイヤ内面に接触する最外層を、シリコーン樹脂層として滑り性を確保しているが、2回以上コーティングする必要がある上に、離型性もなお不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開昭53-42243号公報
【文献】特開昭52-86477号公報
【文献】特開昭60-179211号公報
【文献】特開昭60-229719号公報
【文献】特開昭59-106948号公報
【文献】特開平11-198150号公報
【文献】特開平6-339927号公報
【文献】特開昭62-275711号公報
【文献】特許第5762810号
【文献】特許第5802525号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、一度離型剤を塗布した後、再度離型剤を塗布することなく、従来よりも大幅に多く繰り返し連続してタイヤの成型加硫が可能となる、離型性に優れたタイヤ成型用離型剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を解決するために、本発明は、
(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合するヒドロキシ基を含有し、25℃における粘度が10,000mPa・s以上であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分100質量部に対し10~100質量部、
(C)水:(A)成分100質量部に対し10~10,000質量部、
(D)ポリビニルアルコール:(A)成分100質量部に対し2~70質量部、
を含有するものであることを特徴とするタイヤ成型用離型剤組成物を提供する。
【0015】
本発明のタイヤ成型用離型剤組成物であれば、タイヤブラダーに塗布することで、自転車、自動車、その他車両用及び航空機用のタイヤの成型加硫時において、常に良好な離型性が得られる。また、一度離型剤を塗布した後、再度離型剤を塗布することなく、繰り返し連続して10本以上、タイヤの成型加硫が可能となる。
【0016】
このとき、(E)界面活性剤:(A)成分100質量部に対し5~50質量部、を更に含有するものであることが好ましい。
【0017】
このようなものであれば、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物の塗布性が向上し、より好適に用いることができる。
【0018】
また、(F)縮合反応触媒:(A)成分100質量部に対し0.1~10質量部、を更に含有するものであることが好ましい。
【0019】
このようなものであれば、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物の縮合反応が促進され、より好適に用いることができる。
【0020】
また、本発明は、上記記載のタイヤ成型用離型剤組成物でコーティングされたものであることを特徴とするタイヤ成型用ブラダーを提供する。
【0021】
本発明のタイヤ成型用ブラダーであれば、自転車、自動車、その他車両用及び航空機用等のタイヤの成型加硫時において、常に良好な離型性が得られる。また、再度離型剤を塗布することなく、繰り返し連続して10本以上タイヤの成型加硫が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のタイヤ成型用離型剤組成物であれば、ブラダーに塗布することで、自転車、自動車、その他車両用及び航空機用等のタイヤの成型加硫時において、常に良好な離型性が得られる。また、一度離型剤を塗布した後、再度離型剤を塗布することなく、繰り返し連続して10本以上、内観に問題のないタイヤの成型加硫が可能となる。従って、タイヤの生産性の向上、コストの低減を計ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ケイ素原子に結合するヒドロキシル基を含有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及びポリビニルアルコールからなる離型剤が、タイヤ成型時の離型性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
即ち、本発明は、
(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合するヒドロキシ基を含有し、25℃における粘度が10,000mPa・s以上であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分100質量部に対し10~100質量部、
(C)水:(A)成分100質量部に対し10~10,000質量部、
(D)ポリビニルアルコール:(A)成分100質量部に対し2~70質量部、
を含有するものであることを特徴とするタイヤ成型用離型剤組成物である。
【0026】
[タイヤ成型用離型剤組成物]
本発明のタイヤ成型用離型剤組成物は、下記(A)~(D)成分を含有するものである。
【0027】
〈(A)成分〉
(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合するヒドロキシ基を含有し、25℃における粘度が10,000mPa・s以上であるオルガノポリシロキサンである。また、(A)成分の含有量を、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物中100質量部含まれるものとする。
【0028】
該オルガノポリシロキサンは従来公知のものを使用することができる。ヒドロキシ基以外のケイ素原子に結合する基は特に制限されないが、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の、置換又は非置換の一価炭化水素基又はアルコキシ基であることが好ましい。上記一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、及びトリル基等のアリール基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基又はメトキシ基、エトキシ基が好ましく、特にはメチル基が好ましい。中でも特には、ケイ素原子に結合する水酸基以外の基のうち80モル%以上がメチル基であることが好ましい。オルガノポリシロキサンの分子構造は特に限定されるものではなく、直鎖状、分岐状、環状、及び三次元架橋構造のいずれでもよい。中でも、直鎖状オルガノポリシロキサンが工業的には好ましい。オルガノポリシロキサンは1種単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0029】
(A)成分としては、例えば、下記式(1)で表される、直鎖状又は分岐状のオルガノポリシロキサンが挙げられる。

(R SiO1/2(R (HO)SiO1/2
(R SiO2/2(R(HO)SiO2/2
(RSiO3/2((HO)SiO3/2(SiO4/2
・・・(1)
【0030】
上記式(1)において、Rは、互いに独立に、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の、置換又は非置換の一価炭化水素基である。一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、ビニル基、プロペニル基などのアルケニル基など、上述した一価炭化水素基と同じものが挙げられる。
【0031】
上記式(1)において、b+d+fは2以上であり、好ましくはb+dが2以上である。
また、上記式(1)において、a+b+c+d+e+f+gは、上記オルガノポリシロキサンの25℃における絶対粘度が10,000mPa・s以上となる数である。また、好ましくは、a、bは2~100の数であり、cは1,000以上の数であり、dは0~100の数であり、e、f、gは0~300の数である。
【0032】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における絶対粘度が10,000mPa・s以上であるが、好ましくは25℃における絶対粘度が500,000mPa・s以上であり、さらに好ましくは25℃における絶対粘度が1,000,000mPa・s以上である。尚、本発明において絶対粘度は、BM型回転粘度計で測定した25℃における値である。
【0033】
(A)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
(A)成分としては、より具体的には、例えば、下記式(1-1)又は式(1-2)で表される、直鎖状又は分岐状のオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【化1】
【0035】
上記式(1-1)及び式(1-2)において、Rは互いに独立に、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の、置換又は非置換の一価炭化水素基である。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、ビニル基、プロペニル基などのアルケニル基など、上記した一価炭化水素基と同じものが挙げられる。中でもメチル基が好ましい。Rは、互いに独立に、ヒドロキシ基、メトキシ、エトキシ等の加水分解性基、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の、置換又は非置換の一価炭化水素基、又は下記式(2-1)または下記式(2-2)で表される基である。但し、上記式(1-2)で表される化合物は分子中に少なくとも2つのヒドロキシ基を有する。一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、ビニル基、プロペニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
【化2】
【0036】
上記式(2-1)及び式(2-2)において、Rは酸素原子または炭素数2~10、好ましくは炭素数2~6のアルキレン基である。また、Rは上記の通りであり、R’はRと同様の基である。
【0037】
h、i、j、kは(A)成分の25℃における絶対粘度が10,000mP・s以上となる数であればよい。
【0038】
〈(B)成分〉
(B)成分は、ケイ素原子に直接結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは従来公知のものを使用できる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状のいずれであってもよい。
【0039】
25℃における絶対粘度は特に限定されないが、数mPa・s~数万mPa・sの範囲であることが好ましく、作業性の観点から5mPa・s~10,000mPa・sを有するのがより好ましい。特に好ましくは、25℃における絶対粘度が10mPa・s~8,000mPa・sを有するものであり、さらに好ましくは10~5,000mPa・sを有するものである。
【0040】
上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下記式(2)で表す化合物が挙げられる。

(R1’ SiO1/2(R1’ HSiO1/2
(R1’ SiO2/2(RHSiO2/2
(RSiO3/2(HSiO3/2(SiO4/2
・・・(2)
【0041】
上記式(2)において、R1’は互いに独立に、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の、置換又は非置換の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、及びトリル基等のアリール基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基が好ましく、特にはメチル基が好ましい。
【0042】
上記式(2)において、m+o+qは2以上であり、l+m+n+o+p+q+rは特に限定されないが、上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における絶対粘度が数mPa・s~数万mPa・sの範囲となるような数が好ましい。より好ましくは、l、mは互いに独立に2~100の数であり、nは0~500の数であり、oは3~500の数であり、p、q、rは互いに独立に0~100の数である。
【0043】
(B)成分としては、より具体的には、例えば下記式(3-1)~(3-3)のようなものが挙げられる。
【化3】
【0044】
上記式において、Rは互いに独立に、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の、置換又は非置換の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、及びトリル基等のアリール基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基が好ましく、特にはメチル基が好ましい。
【0045】
また、上記式(3-3)において、Xは下記式(4-1)、(4-2)で表される基である。
【化4】
【0046】
上記式において、Rは互いに独立に、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の、置換又は非置換の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、及びトリル基等のアリール基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基が好ましく、特にはメチル基が好ましい。
【0047】
上記式において、s、及びxは2~500の整数であり、uは1~500の整数であり、t、s’、t’、v、w、yは0~500の整数であり、1分子中に少なくとも2個以上のケイ素原子に結合する水素原子を含有するように選択することができる。
【0048】
(B)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して10~100質量部であり、好ましくは10~60質量部である。
【0049】
(B)成分は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0050】
〈(C)成分〉
本発明のタイヤ成型用離型剤には、(C)成分として水を配合する。水の配合量は(A)成分100質量部に対して10~10,000質量部であり、好ましくは200~5,000質量部である。
【0051】
〈(D)ポリビニルアルコール〉
(D)成分はポリビニルアルコールである。(D)成分は、ゴム表面に対するタイヤ成型用離型剤組成物の粘度を向上させ、ゴム表面に離型剤を塗布した際の液ダレを防止し、作業性を向上させることができる。
【0052】
(D)成分のポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルのケン化により得られるポリビニルアルコールが一般的に使用されるが、これに限定されず、例えばトリフルオロ酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、t-ブチル安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル等の酢酸ビニル以外のビニルエステルの単独重合体やこれらビニルエステル及び酢酸ビニルの少なくとも2種からなる共重合体をケン化して得られたものも使用することができる。
【0053】
これらのポリビニルアルコールの平均重合度は特に限定されないが、300~3000の範囲が工業上一般的であり、この範囲から選択するのが経済的に有利である。好ましくは平均重合度500~2500であり、特に好ましくは平均重合度700~2000である。
【0054】
また、ポリビニルアルコールのケン化度は、特に限定されず80モル%以上の範囲が工業上一般的であり、この範囲から選択するのが経済的に有利である。使用するポリビニルアルコールのケン化度は、好ましくは85モル%以上である。
【0055】
また、ポリビニルアルコールの粘度は特に限定されないが、ポリビニルアルコールの4%水溶液粘度が3.0~60.0のものが好ましく、特に好ましくは5.0~40.0のものである。
【0056】
また、上記ポリビニルアルコールと他のモノマーとの共重合体である変性ポリビニルアルコールも使用することができる。このような他のモノマーとしては、例えば不飽和多価カルボン酸又はその塩、アルキルエステル、完全アルキルエステル、無水物、アミド、イミド、ニトリル;不飽和スルホン酸又はその塩;ビニルエーテル;エチレン;塩化ビニル;炭素原子数3~30のαオレフィン等の少なくとも1種を使用することができる。かかる変性ポリビニルアルコールは、例えば酢酸ビニル及び/又は前述した酢酸ビニル以外のビニルエステルと、上記の他のモノマーとの共重合体をケン化して得ることができる。
【0057】
(D)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0058】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して2~70質量部であり、好ましくは5~50質量部である。
【0059】
〈(E)成分〉
本発明のタイヤ成型用離型剤組成物には、上記(A)~(D)成分に加え、さらに(E)界面活性剤を含有することができる。(E)成分を配合することにより、組成物の塗布性を向上させることができる。(E)成分の界面活性剤としては特に制限は無く、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等を挙げることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0060】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、N-アシルタウリン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、ジアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0061】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、トリポリオキシエチレンアルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、モノアルキルアミン塩、モノアルキルアミドアミン塩等が挙げられる。
【0062】
両イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルカルボキシベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルカルボキシベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0063】
中でもノニオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が特に好ましい。
【0064】
これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(E)成分を配合する場合、(E)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して5~50質量部であることが好ましく、より好ましくは10~40質量部である。
【0065】
〈(F)成分〉
本発明のタイヤ成型用離型剤組成物には、さらに(F)縮合反応触媒を含有することができる。(F)成分である縮合反応触媒は、縮合反応が進行すれば特に制限はないが、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機鉄化合物、有機チタン化合物、有機ビスマス化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機セリウム化合物、有機インジウム化合物、有機イットリウム化合物等の有機金属化合物が挙げられる。具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジブチルスズビスオレイルマレート、オクチル酸スズ、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、酢酸亜鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸チタン、オクチル酸ビスマス、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸セリウム、オクチル酸インジウム、オクチル酸イットリウム等の有機酸金属塩等が挙げられる。なお、これら縮合反応触媒は水溶性である場合を除き、予め界面活性剤を用いて水中に乳化分散したエマルジョンの形態にして使用することが望ましい。(F)成分を配合する場合、(F)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部である。
【0066】
(F)成分の具体例としては、マツモトファインケミカル社製の、オルガチックスTA-8、オルガチックスTA-21、オルガチックスTA-23、オルガチックスTA-30、オルガチックスTC-100、オルガチックスTC-401、オルガチックスTC-710、オルガチックスTC-810、オルガチックスTC-300,オルガチックスTC-310、オルガチックスTC-400等が挙げられる。
【0067】
〈無機粉体又は有機粉体〉
さらに、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物には、無機粉体又は有機粉体を配合することができる。使用する無機粉体としては、例えば、シリカ、マイカ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、グラファイト、カーボンブラック、弗化カーボン粉体、酸化チタン、ボロンナイトライドなどを挙げることができる。また、使用する有機粉体としては、例えば、テフロン(登録商標)パウダーなどのフッ素樹脂パウダー、微粒子シリコーン樹脂パウダー、ナイロンパウダー、ポリスチレンパウダー、パラフィンワックス、脂肪酸アマイド、脂肪酸石鹸、脂肪酸アミン塩などを挙げることができる。有機粉体及び無機粉体のおのおのは、1種を単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0068】
[タイヤ成型用ブラダー]
本発明のタイヤ成型用ブラダーは、上記記載のタイヤ成型用離型剤組成物でコーティングされたものである。本発明のタイヤ成型用ブラダーは、タイヤの成型加硫に一般的に用いられるタイヤブラダーを、上記タイヤ成型用離型剤組成物でコーティングしたものとすることができる。
【0069】
タイヤブラダーにタイヤ成型用離型剤組成物を塗布(コーティング)するタイミング及び方法に特に制限はない。例えば、下記のような方法で、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物からなる被膜をタイヤブラダー表面に形成することができる。すなわち、タイヤブラダーの表面をブラッシングしたのち、溶剤、エアブローなどにより、表面を洗浄し、室温又は加温条件下で乾燥する。次いで、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物を刷毛塗り、スプレー塗布、浸漬塗布などの公知の方法によりタイヤブラダー表面に塗布する。本発明のタイヤ成型用離型剤組成物をタイヤブラダーに塗布した後は、風乾のみで乾燥してもよいが、好ましくは80℃から250℃程度、より好ましくは120℃から200℃で加熱乾燥すると離型剤とタイヤブラダーとが強固に密着する。乾燥時間も特に限定されないが、3分程度から2時間程度でよく、より好ましくは5分から1時間程度である。
【0070】
本発明のタイヤ成型用ブラダーにおいては、タイヤブラダーと離型剤が強固に密着しているため離型剤からなる被膜がタイヤブラダーから剥離しにくく、表面の滑り性が向上しており、タイヤ成型加硫時の離型性が改善している。その結果、タイヤブラダーに一度離型剤を塗布しただけで繰り返しタイヤの加硫・離型が可能となり、効率的なタイヤ生産を行うことができる。
【0071】
本発明のタイヤ成型用ブラダーは自転車、モーターサイクル、乗用車、トラック、バス、トレーラー、フォークリフト、農耕車等のあらゆる車両用タイヤ及び航空機用タイヤに適用可能であり、バイヤスタイヤ、ラジアルタイヤ、スタッドレスタイヤ等のタイヤの種類に関係なく使用可能である。
【0072】
本発明のタイヤ成型用離型剤組成物をタイヤ成型用離型剤として使用する際は、ノニオン系、アニオン系界面活性剤もしくはカチオン系界面活性剤等の界面活性剤、又は乳化作用を有する水溶性高分子により乳化させて使用することができる。
本発明のタイヤ成型用離型剤組成物を乳化するには、本発明における(A)、(B)成分のオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと界面活性剤及び/又は乳化作用を有する水溶性高分子を混合し、これをホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー等の乳化機で乳化すればよい。
【0073】
本発明者らは、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物の作用機構について以下のように考えている。本発明のタイヤ成型用離型剤組成物において、(A)成分と(B)成分は互いに反応可能な官能基を有しており、タイヤ成型時に高温条件下に晒されることにより反応し、皮膜を形成する。この皮膜が離型効果を有しており、タイヤブラダーに密着することにより繰り返しのタイヤ成型加硫が可能となる。
また、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物には、(D)成分としてポリビニルアルコールが含まれている。ポリビニルアルコールは、単独でも皮膜を形成する。このため、(A)成分と(B)成分が形成する皮膜がより強固なものとなり、タイヤブラダーへの密着性が向上する。このように、皮膜の密着性が向上するため、繰り返しタイヤを成型加硫した場合にも、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物からなる離型層の皮膜がタイヤブラダーから剥れ落ちることを抑制することが可能となる。
このため、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物を使用することで、連続してタイヤを成型加硫できる回数が10本以上と飛躍的に向上させることができると考える。
【実施例
【0074】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
[調製例1]:
((CH(OH)SiO1/2((CHSiO2/2(nは3000)で示され、25℃における絶対粘度が10,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン65質量部((A)成分)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C12~14、分岐型、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)14.5)13質量部((E)成分)、水12質量部((C)成分)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20~30rpmで60分撹拌した。その後、水10質量部((C)成分)を加え、ハイビスミックスにより20~30rpmで30分撹拌し、乳化物(A-1)を得た。
【0076】
[調製例2]:
((CHHSiO1/2((CH)HSiO2/240で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン38質量部((B)成分)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB9.2)3.4質量部((E)成分)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB17.3)0.6質量部((E)成分)を、ホモミキサーを用いて2000rpmで30分間混合し、水14質量部((C)成分)中に乳化分散させた。その後、水44質量部((C)成分)を加えて希釈し、乳化物(B-1)を得た。
【0077】
[調製例3]:
ポリビニルアルコール(ケン化度86.5~89.5mol%、4%水溶液粘度16.0~20.0mPa・s)18質量部((D)成分)を水82質量部((C)成分)に溶解させ、組成物(D-1)を得た。
【0078】
[調製例4]:
酢酸亜鉛2水和物24質量部((F)成分)を水76質量部((C)成分)に溶解させ、組成物(F-1)を得た。
【0079】
[調製例5]:
((CH(OH)SiO1/2((CHSiO2/2(nは3000)で示され、25℃における絶対粘度が10,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン13質量部((A)成分)、((CHHSiO1/2((CH)HSiO2/240で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン2質量部((B)成分)、調製例3にて調製したポリビニルアルコール水溶液組成物(D-1)10質量部をハイビスミックスにより20~30rpmで60分撹拌した。その後、調製例3にて調製したポリビニルアルコール水溶液組成物(D-1)17質量部、水58質量部((C)成分)を加え、ホモミキサーを用いて2000rpmで30分間混合し、乳化物(G-1)を得た。
【0080】
[実施例1]
調整例1で得た乳化物(A-1)21.85wt%、調整例2で得た乳化物(B-1)4.96wt%、調整例3で得た組成物(D-1)30.14wt%、調整例4で得た組成物(F-1)1.22wt%、水41.84wt%の配合で、実施例1のタイヤ成型用離型剤組成物を調製した。実施例1のタイヤ成型用離型剤組成物中の各成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分13.26質量部、(C)成分529.13質量部、(D)成分38.19質量部、(E)成分21.40質量部、(F)成分2.06質量部であった。
【0081】
[実施例2]
調整例1で得た乳化物(A-1)18.50wt%、調整例2で得た乳化物(B-1)14.50wt%、調整例3で得た組成物(D-1)12.50wt%、調整例4で得た組成物(F-1)1.50wt%、水53.00wt%の配合で、実施例2のタイヤ成型用離型剤組成物を調製した。実施例2のタイヤ成型用離型剤組成物中の各成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分45.28質量部、(C)成分639.25質量部、(D)成分18.71質量部、(E)成分24.82質量部、(F)成分2.99質量部であった。
【0082】
[実施例3]
調整例5で得た乳化物(G-1)98.5wt%、調整例4で得た組成物(F-1)1.50wt%の配合で、実施例3のタイヤ成型用離型剤組成物を調製した。実施例3のタイヤ成型用離型剤組成物中の各成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分15.38質量部、(C)成分616.46質量部、(D)成分37.38質量部、(F)成分2.81質量部であった。
【0083】
[比較例1]
調整例1で得た乳化物(A-1)21.00wt%、調整例2で得た乳化物(B-1)15.00wt%、調整例4で得た組成物(F-1)1.50wt%、水62.50wt%の配合で、比較例1の組成物を調製した。比較例1においては、ポリビニルアルコールを添加しなかった。比較例1の組成物中の各成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分41.76質量部、(C)成分563.81質量部、(E)成分24.40質量部、(F)成分2.64質量部であった。
【0084】
[比較例2]
調整例1で得た乳化物(A-1)20.71wt%、調整例2で得た乳化物(B-1)14.79wt%、調整例3で得た組成物(D-1)1.38wt%、調整例4で得た組成物(F-1)1.48wt%、水61.64wt%の配合で、比較例2の組成物を調製した。比較例2の組成物中の各成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分41.76質量部、(C)成分572.22質量部、(D)成分1.85質量部、(E)成分24.40質量部、(F)成分2.64質量部であった。
【0085】
[評価方法・結果]
タイヤブラダーに実施例1~3のタイヤ成型用離型剤組成物及び比較例1、2の組成物を塗布し、120℃で5分乾燥させ、再塗付なしのタイヤブラダーを用いてタイヤの成型加硫を行い、連続離型性および加硫されたタイヤの内観を評価した。タイヤ内観の評価は以下の通り行った。

内観○:まだら・エアだまり等が全くないもの
(ここで、まだらはタイヤゴムとブラダーの癒着や、離型不良をいう。)
内観△:一部まだら・エアだまりが確認されるもの
内観×:タイヤゴムとブラダーの癒着や、離型不良が生じたもの
【0086】
表1に実施例1~3及び比較例1、2の配合(wt%)、含有量、及び、実施例1~3のタイヤ成型用離型剤組成物及び比較例1、2の組成物をタイヤブラダーに用いてタイヤの成型加硫を行った際の連続離型本数、内観の評価を示す。
【0087】
【表1】
【0088】
上記表1に示すように、実施例1~3のタイヤ成型用離型剤組成物をタイヤブラダーに塗布してタイヤの成型加硫を行った際の連続離型本数は、それぞれ、35、40、35本、比較例1、2の組成物を用いた際の連続離型本数は、それぞれ、25、30であり、実施例のタイヤ成型用離型剤組成物を用いた場合の方が、比較例の組成物を用いた場合よりも連続離型本数が多い結果となった。
【0089】
また、実施例1~3のタイヤ成型用離型剤組成物を用いた際の成型加硫後のタイヤは、いずれも、まだら・エアだまり等が全くないものであり、内観が良好であった。一方で、ポリビニルアルコールを添加していない比較例1の組成物を用いた際には、タイヤゴムとブラダーの癒着や、離型不良(まだら)が生じており、また、ポリビニルアルコールを(A)成分100質量部に対して2質量部より少ない割合でしか添加していない比較例2の組成物を用いた際には、まだらは解消したものの、タイヤ内面にエアだまりが形成されてしまう結果となった。
【0090】
このように、本発明のタイヤ成型用離型剤組成物及びタイヤ成型用ブラダーであれば、タイヤの成型加硫を行う際の離型性を向上させることができ、また、連続離型本数を、従来よりも飛躍的に向上させることができることが確認された。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。