(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】シート貼着方法及びシート貼着装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 N
(21)【出願番号】P 2020139869
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小田 敦
(72)【発明者】
【氏名】右山 芳国
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220550(JP,A)
【文献】特開2019-140387(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139126(WO,A1)
【文献】特開2005-317634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域の外側を囲む環状の外周余剰領域と、を表面側に有する板状の被加工物の該表面側に、熱可塑性のシートを貼着するシート貼着方法であって、
該被加工物の該表面側の全体を覆うことが可能な大きさを有する該シートを準備するシート準備工程と、
テーブル上に配置された該被加工物又は該シートを加熱する第1加熱工程と、
該第1加熱工程で加熱された状態の該被加工物の該表面側全体に該シートを押し付けて貼着する、又は、該第1加熱工程で加熱された状態の該シートに該被加工物の該表面側全体を押し付けて貼着する、シート貼着工程と、
該被加工物の該外周余剰領域に対応する該シートの外周部分を、該第1加熱工程で該被加工物又は該シートを加熱した温度より高い温度に加熱する第2加熱工程と、を備えることを特徴とするシート貼着方法。
【請求項2】
該第2加熱工程では、温風ヒーターを用いて該温風ヒーターから該シートの外周部分へ温風を当てることにより、該シートの外周部分を加熱することを特徴とする請求項1記載のシート貼着方法。
【請求項3】
複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域の外側を囲む環状の外周余剰領域と、を表面側に有する板状の被加工物の該表面側に、熱可塑性のシートを貼着するシート貼着装置であって、
テーブルと、該テーブルに設けられた第1の発熱体とを有し、該第1の発熱体からの熱で該被加工物又は該シートを加熱する第1加熱ユニットと、
押圧体を有し、該第1加熱ユニットで加熱された該被加工物の該表面側全体に該シートを押し付けて貼着する、又は、該第1加熱ユニットで加熱された該シートに該被加工物の該表面側全体を押し付けて貼着するシート貼着機構と、
第2の発熱体を有し、該被加工物の該外周余剰領域に対応する該シートの外周部分が、該第1加熱ユニットで該被加工物又は該シートを加熱した温度より高い温度になる様に該外周部分を加熱する第2加熱ユニットと、を備えることを特徴とするシート貼着装置。
【請求項4】
該第2加熱ユニットは、温風ヒーターを有することを特徴とする請求項3記載のシート貼着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被加工物の表面側に熱可塑性のシートを貼着するシート貼着方法、及び、板状の被加工物の表面側に熱可塑性のシートを貼着するシート貼着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に使用されるデバイスチップは、半導体ウェーハ等の円盤状の被加工物の表面側に複数のデバイスを形成した後、当該被加工物に対して研削、切削等の加工を施すことで製造される。
【0003】
例えば、被加工物の表面側を樹脂製のシート(保護部材)で保護した状態で、被加工物の裏面側を研削装置で研削することにより、被加工物を薄化する。次いで、切削装置を用いて被加工物をデバイス単位に分割することで、被加工物から複数のデバイスチップを製造する。
【0004】
被加工物の表面側にシートを貼着する場合には、例えば、被加工物の裏面側をチャックテーブルで吸引保持した状態で、被加工物の表面の径よりも大きな径を有する円形のシートを表面側に圧着する。その後、シートを被加工物の径に対応する大きさに切り取る。
【0005】
被加工物にシートを貼着する手法としては、シートを単に押圧して圧着する手法の他に、チャックテーブルを加熱したり、ローラー等の押圧体を加熱した状態で、シートを被加工物に熱圧着する手法がある(例えば、特許文献1参照)。熱圧着により、シートを単に押圧する場合に比べて、シートと表面側との密着性を向上できる。
【0006】
ところで、被加工物の表面側に形成されているデバイスは凹凸を有する。更に、表面側のデバイス領域は、デバイス領域の外周に位置し且つデバイスが形成されていない外周余剰領域に比べて広いので、表面積が大きい。それゆえ、表面側にシートを貼着する場合、シートとデバイス領域との密着性の方が、シートと外周余剰領域との密着性に比べて高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
デバイス領域に対してシートを適切に貼着するための貼着条件(温度、押圧力等)の下で、シートを表面側全体に貼着する場合、シートと外周余剰領域との密着性は、シートとデバイス領域との密着性に比べて低くなる。従って、例えば、研削工程で使用される研削水が、表面の外周余剰領域と、シートと、の界面に入り込み、シートが剥がれるという不良が生じ得る。
【0009】
逆に、外周余剰領域に対してシートを適切に貼着するための貼着条件の下で、シートを表面側全体に貼着する場合、シートとデバイス領域との密着性が、シートと外周余剰領域との密着性に比べて高い状態となる。従って、例えば、研削工程後に、シートをデバイス領域から剥離できない、又は、剥離するとシートの一部がデバイス領域に残るという不良が生じ得る。
【0010】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、デバイス領域及び外周余剰領域の各々に適した密着性となる様に、被加工物にシートを貼着することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域の外側を囲む環状の外周余剰領域と、を表面側に有する板状の被加工物の該表面側に、熱可塑性のシートを貼着するシート貼着方法であって、該被加工物の該表面側の全体を覆うことが可能な大きさを有する該シートを準備するシート準備工程と、テーブル上に配置された該被加工物又は該シートを加熱する第1加熱工程と、該第1加熱工程で加熱された状態の該被加工物の該表面側全体に該シートを押し付けて貼着する、又は、該第1加熱工程で加熱された状態の該シートに該被加工物の該表面側全体を押し付けて貼着する、シート貼着工程と、該被加工物の該外周余剰領域に対応する該シートの外周部分を、該第1加熱工程で該被加工物又は該シートを加熱した温度より高い温度に加熱する第2加熱工程と、を備えるシート貼着方法が提供される。
【0012】
好ましくは、該第2加熱工程では、温風ヒーターを用いて該温風ヒーターから該シートの外周部分へ温風を当てることにより、該シートの外周部分を加熱する。
【0013】
本発明の他の態様によれば、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域の外側を囲む環状の外周余剰領域と、を表面側に有する板状の被加工物の該表面側に、熱可塑性のシートを貼着するシート貼着装置であって、テーブルと、該テーブルに設けられた第1の発熱体とを有し、該第1の発熱体からの熱で該被加工物又は該シートを加熱する第1加熱ユニットと、押圧体を有し、該第1加熱ユニットで加熱された該被加工物の該表面側全体に該シートを押し付けて貼着する、又は、該第1加熱ユニットで加熱された該シートに該被加工物の該表面側全体を押し付けて貼着するシート貼着機構と、第2の発熱体を有し、該被加工物の該外周余剰領域に対応する該シートの外周部分が、該第1加熱ユニットで該被加工物又は該シートを加熱した温度より高い温度になる様に該外周部分を加熱する第2加熱ユニットと、を備えるシート貼着装置が提供される。
【0014】
好ましくは、該第2加熱ユニットは、温風ヒーターを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係るシート貼着方法では、第1加熱工程を経て、シート貼着工程で表面側全体にシートを貼着した後、第2加熱工程で、被加工物の外周余剰領域に対応するシートの外周部分を、第1加熱工程より高い温度に加熱する。これにより、シートの外周部分が、シートの中央部分に比べて、柔軟になり、外周余剰領域との密着性が向上する。
【0016】
それゆえ、第2加熱工程では、外周余剰領域と、シートの外周部分との密着性を、追加的に向上できるので、被加工物の外周端部でシートが剥がれる不良を抑制できる。更に、シートをデバイス領域から剥離できない、又は、剥離するとシートの一部がデバイス領域に残るという不良を抑制できる。この様に、デバイス領域及び外周余剰領域と、シートとの密着性を最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(A)はウェーハの斜視図であり、
図1(B)は
図1(A)のA-A断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る第1加熱工程を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係るシート貼着工程を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係るシート切断工程を示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る第2加熱工程を示す図である。
【
図11】第3の実施形態に係る切断機構の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、加工対象となる円盤状(板状)のウェーハ(被加工物)について説明する。
図1(A)は、ウェーハ11の斜視図であり、
図1(B)は、
図1(A)のA-A断面図である。
【0019】
ウェーハ11は、円盤形状であり、例えば、Si(シリコン)、SiC(炭化シリコン)、GaN(窒化ガリウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)等の半導体材料で形成されている。なお、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。
【0020】
例えば、ウェーハ11は、他の半導体、LiNbO3、LiTaO3等の複酸化物、サファイア、ガラス、セラミックス等の材料で形成されてもよい。ウェーハ11の表面11aには、複数の分割予定ライン13が格子状に設定されている。
【0021】
複数の分割予定ライン13で区画された表面11a側の各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。これら複数のデバイス15は、表面11a側の中央領域に配置されている。
【0022】
本明細書では、複数のデバイス15が配置されている表面11aの中央領域を、デバイス領域17aと称する。また、デバイス15が形成されておらず、且つ、デバイス領域17aの外側を囲む、表面11aの略環状の領域を、外周余剰領域17bと称する。
【0023】
図1(B)に示す様に、デバイス15の上端部は、表面11aから僅かに突出している。デバイス15の上端部には、バンプ(不図示)が更に設けられる場合もある。バンプは、金(Au)等の金属で形成され、例えば、100μmから200μm程度の高さを有する。
【0024】
それゆえ、デバイス領域17aは、外周余剰領域17bに比べて凹凸が大きい。また、デバイス領域17aは、表面11a側の大部分を占める。それゆえ、デバイス領域17aの表面積は、外周余剰領域17bの表面積に比べて大きい。
【0025】
ウェーハ11を研削する際には、デバイス15へのダメージを防ぐために、まず、樹脂で形成された円形又は矩形の保護部材(即ち、シート19(
図2等参照))を表面11a側に貼着する。ここで、シート19について説明する。
【0026】
シート19は、例えば、50μmから250μm程度の厚さと、ウェーハ11の表面11a側の全体を覆うことが可能な大きさと、を有する、ポリオレフィン系又はポリエステル系の薄膜である。
【0027】
ポリオレフィン系の材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等を使用できる。また、ポリエステル系の材料としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等を使用できる。
【0028】
ところで、従来の一般的な粘着テープは、粘着層(糊層)と基材層との積層構造を有する。粘着層は、水、溶剤、熱等を使用せずに、被着体と粘着層とが接した状態で、常温で短時間、圧力を印加するだけで被着体と接着する。
【0029】
これに対して、シート19は、粘着層を有さず、基材層に対応する樹脂層のみを有する。シート19は、熱可塑性であり、所定の温度で軟化又は溶融する。但し、軟化又は溶融する温度は、材料により異なる。
【0030】
シート19の材料に応じて、下記の例示的な温度範囲内でシート19を加熱することで、シート19を軟化又は溶融させることができる。
【0031】
ポリエチレン製のシート :120℃以上140℃以下
ポリプロピレン製のシート :160℃以上180℃以下
ポリスチレン製のシート :220℃以上240℃以下
ポリエチレンテレフタラート製のシート:250℃以上270℃以下
ポリエチレンナフタレート製のシート :160℃以上180℃以下
【0032】
次に、第1の実施形態に係るシート貼着方法で用いられるシート貼着装置2について説明する。シート貼着装置2は、円盤状のチャックテーブル(テーブル)4を有する(
図2参照)。チャックテーブル4は、金属で形成された円盤状の枠体6を有する。
【0033】
枠体6の上面側には、枠体6を貫通しない程度の所定の深さを有する円環状の溝6aが形成されている。溝6aは、後述するシート切断機構18の切り刃20(
図4参照)の逃げ溝として機能する。
【0034】
図2に示す様に、枠体6の上部において溝6aよりも内側には、円盤状の凹部6bが形成されている。凹部6bの底面には、エジェクタ等の吸引源(不図示)に一端が接続された流路(不図示)の他端が、接続されている。
【0035】
凹部6bには、多孔質セラミックスで形成された円盤状のポーラス板8が固定されている。吸引源で負圧を発生させると、流路を介して、ポーラス板8の上面に負圧を伝達可能である。ポーラス板8の上面に配置されたウェーハ11等は、この負圧で吸引される。
【0036】
ポーラス板8の上面は、溝6aよりも内側の枠体6の上面と、略面一になっている。この枠体6の上面と、ポーラス板8の上面とは、略平坦な保持面4aを構成する。なお、保持面4aは、ウェーハ11の径と略同じ径を有する。
【0037】
チャックテーブル4の下面側には、発熱体(第1の発熱体)10が設けられている。発熱体10は、例えば、金属又はセラミックスで形成された抵抗加熱式の発熱体であり、配線(不図示)を介して電源(不図示)に接続されている。
【0038】
発熱体10、配線、電源等は、第1加熱ユニット12を構成する。但し、発熱体10は、抵抗加熱式に限定されるものではなく、誘導加熱、誘電加熱等の任意の方式で熱を発してもよい。本明細書で記載される他の発熱体についても同様である。
【0039】
図3に示す様に、保持面4aの上方には、ローラー14が設けられている。ローラー14は、保持面4aに対して略平行に配置される円柱状の回転軸14aを有する。回転軸14aには、ベアリング(不図示)が連結されている。
【0040】
ベアリングの外周部には、円筒状の筐体(押圧体)14bが連結されており、筐体14bは、回転軸14aの周りで回転可能である。なお、筐体14bの長さ(円筒の高さに対応する長さ)は、ウェーハ11の径と略同等か、当該径よりも大きい。
【0041】
回転軸14aには、上方に延伸する接続部(不図示)が固定されている。接続部の上部には、押圧機構(不図示)が接続されている。押圧機構でローラー14を下方へ押すことにより、保持面4aに向かって筐体14bを押すことができる。
【0042】
また、押圧機構には、第1の移動機構(不図示)が接続されている。第1の移動機構は、保持面4aと略平行な所定の直線方向に沿って押圧機構及び接続部を移動させることで、当該直線方向に沿ってローラー14を移動させる。
【0043】
第1の移動機構、押圧機構、ローラー14等は、シート19をウェーハ11へ押圧して貼着するためのシート貼着機構16を構成する。シート貼着機構16に加えて、保持面4aの上方には、シート切断機構18が設けられている(
図4参照)。
【0044】
図4に示す様に、シート切断機構18は、切り刃20を有する。切り刃20の内側の平坦な側面20aは、バネ等の付勢部材(不図示)により、保持面4aの外周から中央に向かう方向に付勢されている。
【0045】
切り刃20は、通常、保持面4aに対して略垂直に配置されているが、
図4に示す様に、切り刃20の先端部が保持面4aの中央から外周へ押し出されると、付勢部材により、保持面4aの外周から中央に向かう方向へ押される。
【0046】
切り刃20の上部には、切り刃20をチャックテーブル4の周方向に沿って移動させるための第2の移動機構(不図示)が連結されている。第2の移動機構で切り刃20を移動させれば、表面11a側に貼着されたシート19をウェーハ11の外周端部に沿って切断できる。
【0047】
シート切断機構18に加えて、保持面4aの上方には、温風22aを送風可能な温風ヒーター22が設けられている(
図5参照)。
図5に示す様に、温風ヒーター22は、発熱体(第2の発熱体)22bを含む。
【0048】
発熱体22bは、例えば、細長い円筒状の筐体22c内に収容されている。筐体22cの上部には、ファン等の送風機構(不図示)が設けられており、筐体22cの下部には、直径が1mmから2mm程度の径を有する開口部22dが形成されている。
【0049】
筐体22cの上部には、第3の移動機構(不図示)が連結されている。第3の移動機構は、チャックテーブル4の周方向に沿って温風ヒーター22を移動させる。温風ヒーター22、第3の移動機構等は、第2加熱ユニット24を構成する。
【0050】
次に、
図2から
図6を用いて、シート貼着方法の各工程について説明する。
図6は、第1の実施形態に係るシート貼着方法のフロー図である。まず、上述のシート19(
図2参照)を準備する(シート準備工程S10)。
【0051】
例えば、ポリエチレン製のシート19を準備する。シート準備工程S10の後、表面11aが上を向く様に、ウェーハ11の裏面11b側を保持面4aで吸引保持する。次いで、ウェーハ11を予備的に加熱する(第1加熱工程S20)。
【0052】
図2は、第1加熱工程S20を示す図である。第1加熱工程S20では、発熱体10を例えば90℃に加熱することで、発熱体10からの熱でウェーハ11を約90℃に加熱する。第1加熱工程S20の後、シート貼着工程S30を行う。
【0053】
図3は、シート貼着工程S30を示す図である。シート貼着工程S30では、第1加熱工程S20での発熱体10及びウェーハ11の温度を維持したまま、加熱された状態のウェーハ11の表面11a側全体に、ローラー14でシート19を押し付ける。
【0054】
これにより、シート19を表面11a側に貼着する。シート貼着工程S30では、表面11aの中心を通りデバイス領域17aを横断する様に所定の方向へローラー14を移動させる。これにより、表面11a側の全体にシート19を押し付ける。
【0055】
シート貼着工程S30では、デバイス領域17aに対してシート19が適切に貼着されるので、仮にシート19を剥離しようとしても、シート19をデバイス領域17aから剥離できない、又は、剥離するとシート19の一部がデバイス領域17aに残るということはない。
【0056】
なお、本実施形態では、ローラー14を押圧する際に、押圧機構でローラー14を押圧する。但し、押圧機構を使用せずに、ローラー14の自重だけでシート19を押圧してもよい。
【0057】
シート貼着工程S30の後、ローラー14を保持面4aの外側に移動させ、次いで、シート切断工程S40を行う。
図4は、シート切断工程S40を示す図である。シート切断工程S40では、まず、切り刃20をシート19に切り込む。このとき、切り刃20の下端は、シート19を貫通し、溝6a内の所定深さに到達する。
【0058】
切り刃20を切り込む際には、ウェーハ11の外周端部よりも僅かに内側の位置からシート19に切り刃20を切り込む。これにより、切り刃20の側面20aは、垂直方向Zからやや傾いた状態で、ウェーハ11の外周端部に接する。
【0059】
このとき、側面20aと、ウェーハ11とは、上述の付勢部材により、互いに接した状態で維持される。この状態で、第2の移動機構によりウェーハ11の外周に沿って切り刃20を少なくとも一周移動させると、シート19はウェーハ11の外周端部に沿って切断される。
【0060】
なお、シート切断工程S40では、側面20aをウェーハ11の外周端部に接触させなくてもよい。例えば、側面20aをウェーハ11の外周端部から離間させ、且つ、側面20aの下端部を溝6aの内側の側面に押し当てた状態で、シート19を切断することもできる。
【0061】
シート切断工程S40の後、開口部22dをシート19の外周部分19bの直上に位置付けた状態で、第3の移動機構により温風ヒーター22を外周部分19bに沿って少なくとも一周移動させる(第2加熱工程S50)。
図5は、第2加熱工程S50を示す図である。
【0062】
なお、
図5に示す様に、シート19の外周部分19bとは、シート19のうち外周余剰領域17bに対応する領域であり、シート19の中央部分19aとは、シート19のうちデバイス領域17aに対応する領域である。
【0063】
第2加熱工程S50では、温風ヒーター22から外周部分19bに温風22aを当てることにより、第1加熱工程S20でウェーハ11を加熱した温度よりも高い温度となる様に、外周部分19bを加熱して押圧する。
【0064】
具体的には、外周部分19bが、第1加熱工程S20でウェーハ11を加熱した温度よりも、20℃から30℃だけ高い温度となる様に、外周部分19bに温風22aを当てる。これにより、外周部分19bが、中央部分19aに比べて、柔軟になり、外周余剰領域17bとの密着性が向上する。
【0065】
例えば、開口部22dの温度を300℃程度とすると、外周部分19bの温度を100℃程度にできる。本実施形態では、開口部22dの温度を約360℃にすることで、外周部分19bの温度を約120℃とする。
【0066】
この様に、第2加熱工程S50では、外周余剰領域17bと外周部分19bとの密着性を、追加的に向上できる。従って、ウェーハ11の外周端部でシート19が表面11a側から剥がれる不良を抑制できる。
【0067】
更に、第2加熱工程S50では、デバイス領域17aと中央部分19aとの密着性を変化させないので、シート19をデバイス領域17aから剥離できない、又は、剥離するとシート19の一部がデバイス領域17aに残るという不良を抑制できる。それゆえ、デバイス領域17a及び外周余剰領域17bと、シート19との密着性を最適化できる。
【0068】
なお、第2加熱工程S50では、温風22aを当てることによりシート19の外周部分19bを加熱し且つ押圧したが、外周部分19bを加熱するだけでもよい。出願人は、シート19の温度に応じて、ウェーハ11との密着力が向上することを実験により確認している。
【0069】
具体的には、デバイス15が形成されていないシリコン製のベアウェーハを所定温度に加熱して、ポリエチレン製シートを、この加熱されたベアウェーハに貼着し、その後、ポリエチレン製シートに切れ目を形成して、1つの短冊を形成した。
【0070】
なお、短冊の幅(短辺方向の長さ)は、25mmとした。その後、万能試験機を用いて、短冊を長辺方向に沿って180度折り曲げて引き剥がす際の強さ(即ち、剥離接着強さ)を測定した。
【0071】
所定温度を90℃、110℃、130℃及び150℃として各々の剥離接着強さを測定すると、ポリエチレン製シートを貼着する際のベアウェーハの温度が高いほど、短冊の剥離接着強さが強いという下記表1の結果が得られた。
【0072】
【0073】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、ウェーハ11ではなく、シート19をチャックテーブル4で吸引保持し、保持されたシート19にウェーハ11を押圧することで、シート19にウェーハ11を貼着する。係る点が、主として第1の実施形態と異なる。
【0074】
第2の実施形態でも、まず、シート準備工程S10を行う。次いで、保持面4aでシート19を吸引保持した状態で、発熱体10を加熱して、発熱体10からの熱でシート19を加熱する(第1加熱工程S20)。
図7は、第2の実施形態に係る第1加熱工程S20を示す図である。
【0075】
第1加熱工程S20の後、シート19と表面11a側とが接する様に、シート19上にウェーハ11を配置し、発熱体10及びシート19の温度を維持したまま、ローラー14でウェーハ11の裏面11b側を押し付ける。これにより、加熱された状態のシート19に、ウェーハ11の表面11a側全体を貼着する(シート貼着工程S30)。
図8は、第2の実施形態に係るシート貼着工程S30を示す図である。
【0076】
シート貼着工程S30の後、切り刃20をシート19に切り込み、ウェーハ11の外周に沿って切り刃20を移動させる。これにより、シート19をウェーハ11の外周端部に沿って切断する(シート切断工程S40)。
図9は、第2の実施形態に係るシート切断工程S40を示す図である。
【0077】
シート切断工程S40の後、第2加熱工程S50を行う。第2加熱工程S50では、外周余剰領域17bに対応する裏面11b側の領域に、温風ヒーター22から温風22aを当てることで、外周部分19bを加熱して押圧する。
【0078】
これにより、シート19の外周部分19bを第1加熱工程S20でウェーハ11を加熱した温度よりも高い温度とする。
図10は、第2の実施形態に係る第2加熱工程S50を示す図である。
【0079】
第1の実施形態と同様に、第2加熱工程S50では、外周部分19bが、中央部分19aに比べて柔軟になり、外周余剰領域17bとの密着性が向上する。それゆえ、第2加熱工程S50では、外周余剰領域17bと外周部分19bとの密着性を、追加的に向上できる。従って、ウェーハ11の外周端部でシート19が表面11a側から剥がれる不良を抑制できる。
【0080】
更に、第2加熱工程S50では、デバイス領域17aと中央部分19aとの密着性を変化させないので、シート19をデバイス領域17aから剥離できない、又は、剥離するとシート19の一部がデバイス領域17aに残るという不良を抑制できる。それゆえ、デバイス領域17a及び外周余剰領域17bと、シート19との密着性を最適化できる。
【0081】
なお、上述した第1及び第2の実施形態では、シート切断工程S40の後に、第2加熱工程S50を行ったが、逆に、第2加熱工程S50の後に、シート切断工程S40を行ってもよい。また、シート切断工程S40及び第2加熱工程S50を同時に行ってもよい。
【0082】
図11は、シート切断工程S40及び第2加熱工程S50を同時に行う、第3の実施形態に係る切断機構28の部分拡大図である。切断機構28は、腕部30を有する。腕部30の上部には、上述の第2の移動機構(不図示)が連結されている。
【0083】
腕部30の下部には、直方体状の切り刃固定部32が固定されている。切り刃固定部32の下部には、上述の切り刃20の基端部が固定されている。なお、切り刃固定部32は、切り刃20を、例えば5mm程度、上下方向に移動させることもできる。
【0084】
切り刃固定部32とは別に、腕部30には、温風ヒーター34が固定されている。温風ヒーター34は、切り刃20の進行方向の前方に配置されている。温風ヒーター34は、略円筒形状のノズルヒーター36を有する。ノズルヒーター36は、環状の発熱体(第2の発熱体)を含む。
【0085】
ノズルヒーター36の貫通孔の上部には、エアブローノズル38が配置されている。ノズルヒーター36を加熱した状態で、エアブローノズル38からエアを噴射すれば、ノズルヒーター36の下部から温風34aを噴射できる。
【0086】
第3の実施形態では、温風34aを噴出しながら、切り刃20でシート19を切断することで、シート切断工程S40及び第2加熱工程S50を同時に行うことができる。なお、温風ヒーター34は、切り刃20の進行方向の前方に配置されているので、温風34aにより加熱及び押圧された外周部分19bの外側を切り刃20で切断できる。
【0087】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、上述の実施形態では、被加工物の一例として、円盤状のウェーハ11を挙げたが、被加工物は、矩形板状の樹脂パッケージ基板であってもよい。
【0088】
また、シート19の形状は、被加工物よりも大きいサイズであれば、円形であっても、矩形であってもよい。なお、被加工物と同じ形状及びサイズである場合には、シート切断工程S40を省略することもできる。
【0089】
上述の実施形態では、ウェーハ11又はシート19に対してローラー14を押圧するが、この押圧に加えて、ローラー14に内蔵された発熱体(不図示)を加熱してもよい。また、ローラー14に代えて、ウェーハ11や樹脂パッケージ基板よりも大きなサイズを有する押圧板(不図示)を用いてもよい。
【0090】
ところで、上述の実施形態におけるシート貼着装置2は、1つのチャックテーブル4を有するが、シート貼着装置2は、チャックテーブル4に加えて、発熱体10を有さず且つ溝6aを有する追加のチャックテーブル(不図示)を有してもよい。
【0091】
追加のチャックテーブルを用いる場合、第1加熱工程S20及びシート貼着工程S30をチャックテーブル4で行った後、加熱されていない追加のチャックテーブルを用いて、シート切断工程S40を行う。
【0092】
これにより、発熱体10でウェーハ11等を加熱した状態のままシート19を切断する場合に比べて、シート19を冷やすことができる。シート19の温度が低い方が、シート19が切り刃20にくっつき難くなるので、シート切断工程S40において、シート19をスムーズに切断できる。
【符号の説明】
【0093】
2:シート貼着装置、4:チャックテーブル、4a:保持面
6:枠体、6a:溝、6b:凹部、8:ポーラス板、10:発熱体
11:ウェーハ、11a:表面、11b:裏面、13:分割予定ライン、15:デバイス
12:第1加熱ユニット
14:ローラー、14a:回転軸、14b:筐体、16:シート貼着機構
17a:デバイス領域、17b:外周余剰領域
18:シート切断機構、20:切り刃、20a:側面
19:シート、19a:中央部分、19b:外周部分
22:温風ヒーター、22a:温風、22b:発熱体、22c:筐体、22d:開口部
24:第2加熱ユニット、28:切断機構、30:腕部、32:切り刃固定部
34:温風ヒーター、34a:温風、36:ノズルヒーター、38:エアブローノズル
Z:垂直方向