(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】検査用基板及び検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240401BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240401BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01L21/78 F
H01L21/78 Z
B24B27/06 M
B24B49/12
(21)【出願番号】P 2020142767
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】添島 義勝
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-26008(JP,A)
【文献】特開2017-164857(JP,A)
【文献】特開2019-21677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を切削ブレードで切削するときに切削装置の構成要素によって該被加工物の表面に傷が形成されるか否かを検査するために使用される検査用基板であって、
該検査用基板の該表面側に設けられ、切削ブレードが通過可能な幅を有する模擬切削用の溝部と、
該検査用基板の該表面側に設けられ、該表面側に形成される傷の視認性を向上させるための塗料層と、を備えることを特徴とする検査用基板。
【請求項2】
該塗料層の顔料は、炭素、酸化シリコン、又は、酸化チタンを有することを特徴とする請求項1記載の検査用基板。
【請求項3】
被加工物を切削ブレードで切削するときに切削装置の構成要素によって該被加工物の表面に傷が形成されるか否かを、検査用基板を用いて検査する検査方法であって、
該検査用基板は、
該検査用基板の該表面側に設けられ、該切削ブレードが通過可能な幅を有する模擬切削用の溝部と、
該検査用基板の該表面側に設けられ、該表面側に形成される傷の視認性を向上させるための塗料層と、を備え、
該検査用基板の該表面を上にして、該検査用基板の裏面側を、該検査用基板を着脱する着脱領域に配置されたチャックテーブルで保持する保持ステップと、
該保持ステップの後、該着脱領域から該検査用基板を模擬切削する切削領域に、該チャックテーブルを移動する移動ステップと、
該溝部の底よりも高い所定の高さに該切削ブレードの下端を位置付けて、該溝部の中において該切削ブレードの一部を通過させることで、模擬切削を行う模擬切削ステップと、
該検査用基板の該表面側の画像を取得する画像取得ステップと、
を備えることを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削ブレードで切削するときに切削装置の構成要素によって被加工物の表面に傷が形成されるか否かを検査するために使用される検査用基板、及び、当該検査用基板を用いて被加工物の表面に傷が形成されるか否かを検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを有するデバイスチップが搭載されている。デバイスチップは、半導体ウェーハの表面側に複数のデバイスが形成されたウェーハ(被加工物)を、切削装置等を用いて個々のデバイスに分割することで製造される。
【0003】
切削装置は、先端部に切削ブレードが装着されるスピンドルを有する。スピンドルの一部は、スピンドルハウジング中に回転可能に収容されており、スピンドルハウジングには、切削ブレードを部分的に覆うブレードカバーが連結されている。
【0004】
ブレードカバーには、被加工物の切削時に、切削ブレードと被加工物とが接触する加工点へ、切削水を供給するための切削水供給ノズルが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
スピンドルハウジングの下方には、被加工物を吸引保持するためのチャックテーブルが配置されている。チャックテーブルの下方には、ボールネジ式の加工送りユニットが連結されており、加工送りユニットは、被加工物を着脱する着脱領域と、被加工物を切削する切削領域と、の間で、チャックテーブルを移動させる。
【0006】
着脱領域及び切削領域の間には、切削中に生じた切削屑やミストが、切削領域から着脱領域へ流出することを低減するために、上下方向に移動可能な仕切板が設けられている(例えば、特許文献2参照)。仕切板の下端は、チャックテーブルで保持された被加工物が着脱領域及び切削領域の間を移動するときに、被加工物に接触しない高さに設定される。
【0007】
しかし、仕切板の交換作業において、誤って、仕切板が規定位置よりも低い位置で取り付けられることがある。また、切削ブレードの交換作業、又は、切削水供給ノズルの位置調整作業において、誤って、切削水供給ノズルの先端部が規定位置よりも低い位置で取り付けられることもある。
【0008】
この様な場合、仕切板や切削水供給ノズルが、被加工物の上面に接触して傷(接触痕)をつけることで、不良品が発生するという問題がある。仮に、仕切板、切削水供給ノズル等の不具合を早期に発見できない場合、連続して不良品が発生することとなる。
【0009】
そこで、仕切板、切削水供給ノズル等の切削装置の構成要素が、正常に取り付けられているか否かを検査するために、切削後の被加工物の外観を検査することが考えられる。例えば、被加工物の表面を検査するために、自動光学検査装置(AOI:Automated Optical Inspection)を使用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-34039号公報
【文献】特開2012-178511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、自動光学検査装置は非常に高価であるので、検査に要するコストが高くなる。また、自動光学検査装置は非常に狭い範囲を逐次的に検査するので、被加工物の表面全体の検査には時間を要する。一方で、検査範囲・検査箇所を制限すると、被加工物に生じた傷を見逃す可能性があるので、不良品の発生を早期に発見できない。
【0012】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、被加工物を自動光学検査装置で検査することに代えて、切削装置の構成要素が正常に取り付けられているか否かを比較的安価に検査することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、被加工物を切削ブレードで切削するときに切削装置の構成要素によって該被加工物の表面に傷が形成されるか否かを検査するために使用される検査用基板であって、該検査用基板の該表面側に設けられ、切削ブレードが通過可能な幅を有する模擬切削用の溝部と、該検査用基板の該表面側に設けられ、該表面側に形成される傷の視認性を向上させるための塗料層と、を備える検査用基板が提供される。
【0014】
好ましくは、該塗料層の顔料は、炭素、酸化シリコン、又は、酸化チタンを有する。
【0015】
本発明の他の態様によれば、被加工物を切削ブレードで切削するときに切削装置の構成要素によって該被加工物の表面に傷が形成されるか否かを、検査用基板を用いて検査する検査方法であって、該検査用基板は、該検査用基板の該表面側に設けられ、該切削ブレードが通過可能な幅を有する模擬切削用の溝部と、該検査用基板の該表面側に設けられ、該表面側に形成される傷の視認性を向上させるための塗料層と、を備え、該検査用基板の該表面を上にして、該検査用基板の裏面側を、該検査用基板を着脱する着脱領域に配置されたチャックテーブルで保持する保持ステップと、該保持ステップの後、該着脱領域から該検査用基板を模擬切削する切削領域に、該チャックテーブルを移動する移動ステップと、該溝部の底よりも高い所定の高さに該切削ブレードの下端を位置付けて、該溝部の中において該切削ブレードの一部を通過させることで、模擬切削を行う模擬切削ステップと、該検査用基板の該表面側の画像を取得する画像取得ステップと、を備える検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る検査用基板は、検査用基板の表面側に形成される傷の視認性を向上させるための塗料層を、検査用基板の表面側に備える。検査用基板の裏面側を吸引保持したチャックテーブルを、着脱領域から切削領域に移動させる場合、例えば、仕切板の下端が検査用基板の表面側に接触すると、接触した領域の塗料層が剥がれる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る検査用基板は、切削ブレードが通過可能な幅を有する模擬切削用の溝部を、検査用基板の表面側に備える。切削ブレードと、検査用基板の裏面側を吸引保持したチャックテーブルとを、切削ブレードの一部が溝部を通過する様に相対的に移動させる場合、例えば、切削水供給ノズルの先端部が、検査用基板の表面側に接触すると、接触した領域の塗料層が剥がれる。
【0018】
塗料層の剥がれの有無は、切削装置に通常搭載されている撮像ユニットを用いて検知できるので、自動光学検査装置で被加工物を検査する場合に比べて、仕切板、切削水供給ノズル等の構成要素が正常に取り付けられているか否かを比較的安価に検査できる。加えて、仮に、塗料層の剥がれが生じない場合は、再度、同一の検査用基板を使用できるので、検査用基板の再使用により検査コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図7】
図7(A)は検査用基板の全体を示す画像であり、
図7(B)は傷が形成された表面側の一部の拡大画像である。
【
図8】
図8(A)は検査用基板の全体を示す画像であり、
図8(B)は傷が形成された表面側の一部の拡大画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、検査用基板11について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る検査用基板11の斜視図であり、
図2は、検査用基板11の一部の拡大断面図である。
【0021】
検査用基板11は、切削ブレード32で被加工物21を切削するときに(
図3参照)、切削装置2の構成要素によって被加工物21の表面21aに傷(接触痕)が形成されるか否かを検査するために使用される。
【0022】
検査用基板11は、被加工物21と略同じ直径を有する。但し、検査用基板11は、切削ブレード32で切削されないこと前提としているので、検査用基板11の厚さは、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)等の規格で規定されるシリコン製のウェーハの直径に対応する厚さとは異なる。
【0023】
本実施形態の検査用基板11は、例えば、約300mmの直径と、約2mmの厚さと、を有する樹脂製の円盤状のウェーハ13を有する。樹脂としては、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate)等が使用される。
【0024】
ウェーハ13を樹脂で形成することで、シリコンで形成する場合に比べて、ウェーハ13を安価に製造できる。なお、ウェーハ13の材料は、必ずしも樹脂に限定されない。ウェーハ13は、シリコン等の半導体や、その他の材料で形成されてもよい。
【0025】
ウェーハ13の表面13a側(検査用基板11の表面11a側)全体には、塗料層15が設けられている。本実施形態では、塗料層15の最表面を検査用基板11の表面11aとする。また、検査用基板11の裏面11bは、ウェーハ13の裏面に対応する。
【0026】
塗料層15の厚さは、例えば、10μmから数十μmであり、後述する溝部17の幅17aや深さ17bに比べて十分に小さい。塗料層15は、溝部17の側部及び底部を含む表面11a側全体に設けられている。
【0027】
塗料層15は、例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等の炭素を有する顔料を含む。カーボンブラックが有機溶剤に分散された塗料を、複数の溝部17が形成されたウェーハ13の表面13a側に塗布し、その後、乾燥させることで、略一様な黒色を呈する塗料層15が形成される。
【0028】
塗料層15は、検査用基板11の表面11aに形成される傷の視認性を向上するために使用される。例えば、表面11a側に傷が形成されると、傷に対応する領域の塗料層15が剥がれ、ウェーハ13の表面13aが露出する。
【0029】
ウェーハ13の色は、塗料層15の色と異なるので、高性能な自動光学検査装置を使用しなくても、例えば、切削装置2に通常搭載される撮像ユニット24a(
図3参照)で表面11a側を撮像すれば、塗料層15の剥がれを検知できる。
【0030】
塗料層15を構成する顔料は、炭素に限定されず、シリカ(酸化シリコン)を有してもよい。シリカを含む顔料は、例えば、シリカの粉末、又は、シリコン製のウェーハの切削、研削等に伴い発生する屑で構成されるスラッジ(sludge)により構成される。
【0031】
スラッジは、シリカに加えて、ボロン(B)、リン(P)等がドープされたシリコンの酸化物、シリコンの金属酸化物等を含む。スラッジを含む顔料を使用する場合、塗料層15は、略一様な灰色を呈する。
【0032】
なお、塗料層15を構成する顔料は、チタニア(酸化チタン)を有してもよく、炭酸カルシウムを有してもよい。酸化チタン又は炭酸カルシウムを有する顔料を使用する場合、塗料層15は、略一様な白色を呈する。
【0033】
ところで、ウェーハ13と塗料層15との間には、ウェーハ13に対する塗料層15の密着性を制御するための下地層(不図示)が設けられてもよい。例えば、下地層として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を形成することで、塗料層15の密着性が低減され、塗料層15が剥がれやすくなる(即ち、傷の視認性が向上する)。
【0034】
ウェーハ13の表面13a側には、溝部17の位置や、ウェーハ13の向き等を特定する際に利用される所定のパターン(不図示)が形成されている。この所定のパターンは、キーパターン、アライメントマーク等と呼ばれる。
【0035】
所定のパターンは、表面13aよりも所定の深さだけ凹んでいる、又は、所定の高さだけ突出しているので、表面13a上に塗料層15が形成されていたとしても、切削装置2に通常搭載される撮像ユニット24aにより、当該所定のパターンを特定できる。
【0036】
ウェーハ13の表面13a側には、格子状に複数の溝部17が設けられている。各溝部17には、後述する模擬切削において、切削ブレード32が通過する。隣接する2つの溝部17の間隔は、例えば、10mm以上20mm以下の所定値である。この様に、溝部17の間隔を、比較的大きく設定することで、模擬切削に要する時間を短縮でき、効率的な模擬切削が可能となる。
【0037】
溝部17は、通常100μm程度の刃厚を有する切削ブレード32が通過可能な十分な大きさの幅17aを有する(
図2参照)。幅17aは、表面11aにおいて、溝部17の長手方向に直交する方向の長さであり、例えば、5mmである。
【0038】
この様に、溝部17の幅17aを比較的大きくすることにより、幅17aが切削ブレード32の厚さと同等である場合に比べて、模擬切削で、溝部17の内側側面へ切削ブレード32が接触することを、比較的容易に抑制できる。
【0039】
溝部17の深さ17bは、表面11aから溝部17の底17cまでの長さであり、切削ブレード32の最大の刃先出し量と同じか、それよりも大きい。深さ17bは、例えば、1.5mmである。
【0040】
深さ17bを比較的大きくすることにより、深さ17bが切削ブレード32の刃先出し量よりも小さい場合に比べて、溝部17の底17cが模擬切削で切削されることを比較的容易に抑制できる。次に、検査用基板11が使用される切削装置2について説明する。
【0041】
図3は、切削装置2の斜視図である。なお、
図3では、切削装置2の構成要素の一部を機能ブロックで示している。また、以下において、X軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)及びZ軸方向(高さ方向、上下方向、切り込み送り方向)は、互いに直交する方向である。
【0042】
切削装置2の前面には、操作パネル4が設けられている。オペレーターは、例えば、操作パネル4を介して所定の入力を行うことにより、切削装置2に対して加工条件等を設定できる。切削装置2の前面側の側面には、モニター(表示装置)6が設けられている。
【0043】
モニター6には、オペレーターに対して操作を案内する案内画面、撮像ユニット24a(後述)によって撮像された画像等が表示される。なお、モニター6は、操作パネル4としても機能するタッチパネルであってもよい。この場合、操作パネル4は省略される。
【0044】
切削装置2では、通常、被加工物21が切削される。被加工物21の表面21a側には、格子状に複数の分割予定ライン(ストリート)(不図示)が設定されている。複数の分割予定ラインによって区画される各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス(不図示)が形成されている。
【0045】
被加工物21の裏面21b側には、樹脂で形成された円形のダイシングテープ23が貼り付けられる。ダイシングテープ23の直径は、被加工物21の径よりも大きい。ダイシングテープ23の中央部には被加工物21が貼り付けられ、ダイシングテープ23の外周部には金属で形成された環状のフレーム25の一面が貼り付けられる。
【0046】
被加工物21は、ダイシングテープ23を介してフレーム25で支持されたフレームユニット27の形態で、カセット8に収容される。検査用基板11を切削装置2へ投入する場合には、検査用基板11が、ダイシングテープ23を介してフレーム25で支持されたフレームユニット(不図示)の形態で、カセット8に収容される。
【0047】
カセット8は、カセットテーブル10上に配置される。カセットテーブル10の下方には、カセットテーブル10を上下に移動させるカセットエレベータ12が連結されている。カセットテーブル10の後方には、プッシュプルアーム14が設けられている。
【0048】
プッシュプルアーム14は、フレームユニットの形態の被加工物21又は検査用基板11を、カセット8から搬出、及び、カセット8へ搬入する。プッシュプルアーム14の移動経路の両脇には、フレームユニットのX軸方向の位置を調整する一対の位置決め部材(ガイドレール)16が設けられている。
【0049】
一対の位置決め部材16の近傍には、一対の位置決め部材16からフレームユニットを搬送する第1の搬送ユニット18が設けられている。第1の搬送ユニット18は、アームと、アームの一端側に設けられた旋回機構と、アームの他端側に設けられた吸着機構と、を有する。
【0050】
吸着機構は、例えば、フレーム25を吸着する真空パッドを有する。第1の搬送ユニット18は、フレーム25を吸着機構で吸着した状態で、旋回機構によりアームを所定角度回転させることで、フレームユニットを搬送する。
【0051】
第1の搬送ユニット18は、X軸方向においてカセットテーブル10の近くに位置する着脱領域RAに配置されたチャックテーブル20へ、フレームユニットを搬送する。チャックテーブル20の上面側には、円盤状の多孔質プレートが固定されている。
【0052】
多孔質プレートの下面側には、チャックテーブル20の内部に形成されている流路(不図示)の一端が接続されており、この流路の他端には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源を動作させることで、多孔質プレートの上面に負圧を伝達できる。
【0053】
それゆえ、チャックテーブル20の上面は、フレームユニットを吸引して保持する保持面20aとして機能する。なお、チャックテーブル20の外周部には、フレーム25を固定するための複数のクランプユニット20bが設けられている。
【0054】
チャックテーブル20の下方には、チャックテーブル20を所定の回転軸の周りに回転させるθテーブル(不図示)が連結されている。θテーブルの更に下方には、ボールネジ式の加工送りユニット(不図示)が連結されている。
【0055】
加工送りユニットは、θテーブルと共にチャックテーブル20を、X軸方向に沿って移動させる。具体的には、チャックテーブル20は、被加工物21や検査用基板11を保持面20aに対して着脱する着脱領域RAと、被加工物21を実際に切削したり検査用基板11を模擬切削したりする切削領域RBと、の間を移動する。
【0056】
θテーブルと、チャックテーブル20との間には、矩形状のカバー部材22aが設けられている。カバー部材22aのX軸方向の両側には、X軸方向に伸縮可能な蛇腹22bが配置されている。チャックテーブル20の上方には、支持部材24が配置されている。
【0057】
支持部材24には、保持面20aに対面可能な態様で、撮像ユニット24aが設けられている。撮像ユニット24aは、例えば、所定の光学系と、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ等の撮像素子と、を含む光学顕微鏡カメラである。
【0058】
撮像ユニット24aは、被加工物21の表面21a側や、検査用基板11の表面11a側を撮像して画像を取得する。撮像ユニット24aにより取得された画像は、切削装置2に搭載された記憶装置に記憶され、更に、モニター6に表示される。
【0059】
撮像ユニット24aは、アライメントのために切削装置2に通常搭載されている、切削装置2の構成要素である。撮像ユニット24aに対してX軸方向の一方側には、切削ユニット26が設けられている。
【0060】
切削ユニット26には、切削ユニット26をZ軸方向に沿って移動させるためのボールネジ式の切り込み送りユニット(不図示)が連結されている。また、切り込み送りユニットには、この切り込み送りユニットをY軸方向に沿って移動させるためのボールネジ式の割り出し送りユニットが連結されている。
【0061】
ここで、
図4を参照して、切削ユニット26について説明する。
図4は、切削ユニット26の分解斜視図である。切削ユニット26は、円筒状のスピンドルハウジング28を有する。
【0062】
スピンドルハウジング28中には、円柱状のスピンドル30の一部が回転可能な態様で収容されている。スピンドル30の一端部には、サーボモータ(不図示)が連結されている。スピンドル30の他端部には、切削ブレード32が装着されている。
【0063】
切削ブレード32は、例えば、円盤状のアルミニウム製のハブ基台を有するハブ型ブレードである。ハブ基台の側面には、ダイヤモンド等で形成された砥粒が電鋳ボンド中に分散した状態で固定された円環状の切り刃32aが、固定されている。
【0064】
この切削ブレード32の上方を覆う様に、スピンドルハウジング28にはブレードカバー34が固定される。ブレードカバー34には、切削ブレード32の一の側面に隣接する様に、切削水供給ノズル36が取り付けられている。
【0065】
切削水は、例えば、純水であり、ブレードカバー34の上部に設けられたパイプ38を通って、切削水供給ノズル36に供給される。ブレードカバー34の側部には、着脱カバー44が装着される。
【0066】
着脱カバー44は、切削水供給ノズル46を有する。切削水供給ノズル46は、着脱カバー44がブレードカバー34の側部に装着されたとき、切削ブレード32の他の側面に隣接する様に配置される。
【0067】
切削水は、着脱カバー44の上部に設けられたパイプ48を通って、切削水供給ノズル46に供給される。ブレードカバー34の上部には、光学式のブレード破損検出ユニット50が装着される。
【0068】
切削ブレード32の交換作業時には、まず、着脱カバー44をブレードカバー34から取り外し、次に、切削ブレード32をスピンドル30から取り外す。そして、新たな切削ブレード32をスピンドル30に装着した後、着脱カバー44をブレードカバー34に取り付ける。
【0069】
また、切削水供給ノズル36,46の位置調整作業時には、ブレードカバー34及び着脱カバー44の取り付け位置を調整することで、切削水供給ノズル36,46の長手部が切削ブレード32を間に挟み、且つ、X軸方向と略平行になる様に位置を調整する。
【0070】
次に、
図5を参照して、着脱領域R
A及び切削領域R
Bの境界に配置される仕切板52等について説明する。チャックテーブル20の上方には、金属製の筐体54が配置されている。着脱領域R
Aにおいて筐体54の前面側(
図3に示す切削装置2のモニター6側)には、透明な樹脂で形成され、水平面内で回転することで開閉可能な扉部56が設けられている。
【0071】
また、切削領域RBにおいて筐体54の前面側には、透明な樹脂で形成され、X軸方向にスライドすることで開閉可能な扉部58が設けられている。着脱領域RA及び切削領域RBの間には、仕切壁60が設けられており、仕切壁60の下部には開口部60aが形成されている。
【0072】
仕切壁60の着脱領域R
A側には、仕切板52が配置されている。
図5は、仕切板52等を示す図である。仕切板52の上部は、X軸方向に折れ曲がっており、この折れ曲がり部は、エアシリンダ62のピストンロッドで支持されている。
【0073】
エアシリンダ62自体は、筐体54に固定された支持部材64で支持されている。エアシリンダ62のピストンロッドを上昇させると、
図5に示す様に開口部60aは開放され、ピストンロッドを下降させると、開口部60aは閉鎖される。
【0074】
例えば、チャックテーブル20を着脱領域R
A及び切削領域R
Bの間で移動させるとき、開口部60aは開放され、被加工物21を切削するとき、チャックテーブル20を切削領域R
Bへ移動させた後、開口部60aは閉鎖される。ここで、
図3に戻り、切削装置2の他の構成要素について説明する。
【0075】
切削装置2は、切削後に、着脱領域RAへ配置されたチャックテーブル20から被加工物21等を搬出する第2の搬送ユニット66を有する。第2の搬送ユニット66は、Y軸方向に移動可能なアームを有する。アームの先端部には、フレーム25を吸着するための吸着機構が設けられている。
【0076】
着脱領域RAの後方には、洗浄ユニット68が設けられている。洗浄ユニット68は、被加工物21等を吸引して保持するスピンナテーブル(不図示)と、スピンナテーブルの上方に配置される洗浄ノズル(不図示)と、を備える。
【0077】
第2の搬送ユニット66により、洗浄ユニット68へ搬送された被加工物21は、洗浄され、次いで、第1の搬送ユニット18、一対の位置決め部材16及びプッシュプルアーム14によりカセット8へ搬入される。
【0078】
上述したカセットエレベータ12、プッシュプルアーム14、一対の位置決め部材16、第1の搬送ユニット18、チャックテーブル20、撮像ユニット24a、切削ユニット26、エアシリンダ62、第2の搬送ユニット66、加工送りユニット、切り込み送りユニット、割り出し送りユニット等の動作は、制御部70により制御される。
【0079】
制御部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0080】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部70の機能が実現される。制御部70は、チャックテーブル20で保持された被加工物21が着脱領域R
A及び切削領域R
Bの間を移動するときに、開口部60aを開放状態にする(
図5参照)。
【0081】
しかし、仕切板52の交換作業等において、誤って、仕切板52が規定位置よりも低い位置で取り付けられることがある。また、切削ブレード32の交換作業、及び、切削水供給ノズル36,46の位置調整作業において、誤って、切削水供給ノズル36,46の先端部が規定位置よりも低い位置で取り付けられることもある。
【0082】
そこで、検査用基板11を用いて、仕切板52、切削水供給ノズル36,46等の切削装置2の構成要素が、正常に取り付けられているか否かを検査する。
図6は、検査用基板11を用いた検査方法を示すフロー図である。
【0083】
まず、フレームユニットの形態の検査用基板11の裏面11b側を、着脱領域RAに配置されたチャックテーブル20で吸引して保持する(保持ステップS10)。このとき、検査用基板11の表面11aを上にすることで、塗料層15が上方に露出する。
【0084】
保持ステップS10の後、開口部60aを開放状態とした上で、チャックテーブル20を着脱領域RAから切削領域RBへ移動させる(移動ステップS20)。これにより、もし、仕切板52が規定位置よりも低い位置で取り付けられている場合、検査用基板11の表面11a側には傷が形成され、傷に対応する領域の塗料層15が剥がれる。
【0085】
移動ステップS20の後、表面11a側の画像における離間した2つのキーパターンの位置等を利用して、溝部17の長手方向がX軸方向と略平行になる様に、θテーブルでチャックテーブル20の向きを調整する。
【0086】
そして、高速で回転させた切削ブレード32を溝部17の延長線上に配置し、更に、切削ブレード32の下端を溝部17中において底17cよりも高い所定の高さに位置付ける。この状態で、切削水供給ノズル36,46から切削水を供給すること無く、切削ブレード32に対してチャックテーブル20を相対的にX軸方向に移動させる。
【0087】
この様に、溝部17の中において切削ブレード32の一部を通過させることで、検査用基板11の模擬切削を行う(模擬切削ステップS30)。1つの溝部17の一端から他端まで模擬切削を行った後、切削ユニット26を所定のインデックス量だけ割り出し送りする。
【0088】
そして、模擬切削を行った1つの溝部17に対してY軸方向に隣接する他の溝部17の延長線上に、切削ブレード32の下端を位置付けて、同様に模擬切削を行う。一の方向に平行な全ての溝部17に対して模擬切削を行った後、チャックテーブル20を90度回転させる。
【0089】
そして、同様に、残りの全ての溝部17に対して模擬切削を行う。模擬切削ステップS30において、例えば、切削水供給ノズル36,46の先端部が表面11a側に接触する場合、表面11a側には傷が形成され、傷に対応する領域の塗料層15が剥がれる。
【0090】
模擬切削ステップS30の後、チャックテーブル20を切削領域RBから着脱領域RAへ移動させ、第2の搬送ユニット66でチャックテーブル20から洗浄ユニット68へ検査用基板11を移動させる。
【0091】
そして、スピンナテーブル(不図示)で検査用基板11の裏面11b側を吸引保持した状態で、洗浄ノズルから洗浄水等を噴射すること無く、スピンナテーブルを所定時間だけ回転させる(模擬洗浄ステップS40)。
【0092】
模擬洗浄ステップS40においても、洗浄ユニット68の構成要素が表面11a側に接触する場合、表面11a側には傷が形成され、傷に対応する領域の塗料層15が剥がれる。
【0093】
模擬洗浄ステップS40の後、第1の搬送ユニット18、一対の位置決め部材16、プッシュプルアーム14等を用いて、検査用基板11をカセット8へ搬入する。一連の動作の後、カセット8へ搬入された検査用基板11を、再度、カセット8から取り出す。
【0094】
そして、表面11aが上を向く態様で、検査用基板11をチャックテーブル20で吸引保持する。この状態で、検査用基板11の表面11a側の画像を取得する(画像取得ステップS50)。取得された画像は、制御部70の補助記憶装置に記憶される。
【0095】
図7(A)は、顔料としてカーボンブラックを有する塗料層15が表面11a側に形成された検査用基板11の全体を示す画像であり、
図7(B)は、傷が形成された表面11a側の一部の拡大画像である。
【0096】
また、
図8(A)は、顔料として酸化チタンを有する塗料層15が表面11a側に形成された検査用基板11の全体を示す画像であり、
図8(B)は、傷が形成された表面11a側の一部の拡大画像である。
【0097】
取得された画像は、制御部70にインストールされている所定の画像処理ソフトにより処理され、傷及び塗料層15の剥がれが検出される。検出動作では、例えば、画像を構成する複数の画素の各々について、明暗又は濃淡の情報が利用される。
【0098】
具体的には、画像処理ソフトが、1つの画素と、当該1つの画素を囲む複数の画素と、の明暗の差(コントラスト)を算出する。算出されたコントラストが所定値よりも大きい場合、画像処理ソフトは、当該画素領域に傷があると判定する。
【0099】
本実施形態では、検査用基板11に形成された傷及び塗料層15の剥がれを撮像ユニット24aで検知できる。それゆえ、自動光学検査装置で被加工物21を検査する場合に比べて、切削水供給ノズル36,46、仕切板52等の構成要素が正常に取り付けられているか否かを比較的安価に検査できる。
【0100】
加えて、仮に、塗料層15の剥がれが生じない場合は、再度、同一の検査用基板11を使用できるので、検査用基板11を再使用できる。これにより、検査コストを抑制できる。
【0101】
なお、画像処理ソフトは、所定サイズの範囲における複数(例えば、10個)の画素の明暗の平均値を算出して、隣接する所定サイズの範囲同士の明暗の平均値を比較することで、複数の画素毎に、傷があるか否かを判定してもよい。これにより、1画素毎にコントラストを算出する場合に比べて、処理速度を向上できる。
【0102】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、矩形状の検査用基板11がダイシングテープ23を介してフレーム25で支持されたフレームユニット(不図示)を用いて、上述の検査を行うこともできる。
【0103】
具体的には、200mm角、厚さ2mmのポリエチレンテレフタラート製のウェーハ13に、顔料としてシリカ又はスラッジを有する塗料層15が形成された検査用基板11を用いてもよい。
【0104】
顔料としてシリカ又はスラッジを用いることで、仮に、塗料層15が切削装置2内に付着しても、他の材料が付着する場合に比べて汚染等の問題が比較的生じ難いというメリットがある。
【0105】
ところで、画像取得ステップS50は、必ずしも最後にのみ行うのではなく、移動ステップS20の前後、模擬切削ステップS30の前後、及び、模擬洗浄ステップS40の前後の任意のタイミングで、行ってもよい。
【0106】
例えば、移動ステップS20の前後での表面11a側の画像を比較することで、切削水供給ノズル36,46の影響を除外して、仕切板52が正常に取り付けられているか否かを検査することもできる。
【0107】
また、例えば、模擬切削ステップS30の前後の画像を比較することで、仕切板52の影響を除外して、切削水供給ノズル36,46が正常に取り付けられているか否かを検査することもできる。
【0108】
画像の比較は、必ずしも画像処理ソフトで行わなくてもよい。例えば、取得された画像をモニター6に表示させて、オペレーターが、傷及び塗料層15の剥がれを検査してもよい。
【0109】
検査用基板11に関して、上述の説明では、複数の溝部17が形成されたウェーハ13上に塗料層15が形成された例を説明した。しかし、塗料層15が表面13a上に形成されたウェーハ13の表面13a側を切削することで、複数の溝部17を形成してもよい。この場合、溝部17の側面及び底17cに、塗料層15は残らないが、上述の検査を行うのに支障は無い。
【符号の説明】
【0110】
2:切削装置、4:操作パネル、6:モニター、8:カセット
10:カセットテーブル
11:検査用基板、11a:表面、11b:裏面
12:カセットエレベータ
13:ウェーハ、13a:表面、15:塗料層
17:溝部、17a:幅、17b:深さ、17c:底
14:プッシュプルアーム、16:位置決め部材、18:第1の搬送ユニット
20:チャックテーブル、20a:保持面、20b:クランプユニット
21:被加工物、21a:表面、21b:裏面
22a:カバー部材、22b:蛇腹
23:ダイシングテープ、25:フレーム、27:フレームユニット
24:支持部材、24a:撮像ユニット
26:切削ユニット、28:スピンドルハウジング、30:スピンドル
32:切削ブレード、32a:切り刃
34:ブレードカバー、36:切削水供給ノズル、38:パイプ
44:着脱カバー、46:切削水供給ノズル、48:パイプ
50:ブレード破損検出ユニット
52:仕切板、54:筐体、56:扉部、58:扉部
60:仕切壁、60a:開口部
62:エアシリンダ、64:支持部材
66:第2の搬送ユニット
68:洗浄ユニット、70:制御部
RA:着脱領域、RB:切削領域