(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】口腔内装着器具洗浄剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240401BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240401BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240401BHJP
A61Q 11/02 20060101ALI20240401BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20240401BHJP
C11D 1/12 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/46
A61K8/19
A61Q11/02
C11D3/22
C11D1/12
(21)【出願番号】P 2023142549
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】勢力 沙也加
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-231607(JP,A)
【文献】特開2002-209995(JP,A)
【文献】特開2005-154323(JP,A)
【文献】特開2009-138124(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107375123(CN,A)
【文献】特開2003-095905(JP,A)
【文献】特開昭61-197509(JP,A)
【文献】特開2003-093488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
A61K 6/00- 6/90
A61C 1/00- 5/00
A61C 5/40- 5/68
A61C 5/90- 7/36
A61C 19/00-19/10
A61G 15/14-15/18
A61C 5/08- 5/12
A61C 8/00-13/38
A61C 5/20- 5/35
A61C 5/70- 5/88
C08B 1/00-37/18
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シクロデキストリンと、(B)炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含む、口腔内装着器具洗浄剤(ただし、
マンゴスチン果実から抽出した抽出物を含有するもの、キンマの生葉又は乾燥葉から抽出したエキスを含有するもの、ザクロの生果実又はその乾燥物から抽出した抽出物を含有するもの、及び二酸化チタンと炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを含有するものを除く)。
【請求項2】
前記アルキル硫酸塩が、ラウリル硫酸塩である、請求項1に記載の口腔内装着器具洗浄剤。
【請求項3】
前記炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウムである、請求項1に記載の口腔内装着器具洗浄剤。
【請求項4】
口腔内装着器具洗浄剤が、義歯洗浄剤である、請求項1~3のいずれかに記載の口腔内装着器具洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消臭効果に優れる口腔内装着器具洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯等の口腔内装着器具は、細菌、バイオフィルム、その他沈着物等が付着しやすく、洗浄せずに放置しておくと、口臭の原因になるだけでなく、歯周病等の口腔内疾患を誘発する一因になることがある。そのため、口腔ケアの一環として、口腔内装着器具を洗浄し清潔に保つことが不可欠である。口腔内装着器具に付着した細菌や汚れは、ブラシによる清掃では十分に除去できないため、洗浄剤による洗浄が重要である。
【0003】
洗浄剤による口腔内装着器具の洗浄は、一般に、洗浄剤を水に投入して調製された洗浄水に口腔内装着器具を浸漬放置する方法で行われている。従来、口腔内装着器具洗浄剤には界面活性剤及び発泡剤(炭酸化合物と酸)が配合されており、水に投入した際に界面活性化作用による化学的洗浄力と発泡作用による物理的洗浄力を発揮させ、洗浄効果が高まるように設計されている。
【0004】
また、口腔内装着器具洗浄剤では、漂白作用を付与し、洗浄力及び消臭力を向上させるために、一般的に漂白剤が配合されている。例えば、特許文献1では、酸素系漂白剤を含有する義歯洗浄剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、口腔内装着器具洗浄剤に、界面活性剤及び発泡剤(炭酸化合物と酸)を配合する製剤技術、又は漂白剤を配合する製剤技術では、口腔内装着器具洗浄剤の消臭力を向上させるには限界がある。また、口腔内装着器具洗浄剤のバリエーションの拡大の観点から、口腔内装着器具洗浄剤の消臭力を向上させるための新しい製剤技術の開発が求められていた。
【0007】
本開示の目的は、新しい製剤技術により、消臭効果に優れる口腔内装着器具洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、口腔内装着器具洗浄剤に、シクロデキストリンと共に、炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することにより、意外にも、消臭効果に優れる口腔内装着器具洗浄剤が得られることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本開示は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
項1.(A)シクロデキストリンと、(B)炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含む、口腔内装着器具洗浄剤。
項2.前記アルキル硫酸塩が、ラウリル硫酸塩である、項1に記載の口腔内装着器具洗浄剤。
項3.前記炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウムである、項1に記載の口腔内装着器具洗浄剤。
項4.口腔内装着器具洗浄剤が、義歯洗浄剤である、項1~3のいずれかに記載の口腔内装着器具洗浄剤。
項5.(A)シクロデキストリンと、(B)炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含む組成物の、口腔内装着器具洗浄のための使用。
項6.(A)シクロデキストリンと、(B)炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含む組成物の、口腔内装着器具洗浄剤としての使用。
項7.(A)シクロデキストリンと、(B)炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含む口腔内装着器具洗浄剤を投入した水に、口腔内装着器具を浸漬させる、口腔内装着器具洗浄方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、シクロデキストリンと、炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせて含有することにより、優れた消臭効果を発揮するものである。また、本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、シクロデキストリンと、炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせて配合するという新しい製剤技術を採用したことによって、優れた消臭効果が付与されたものであり、消臭効果を有する口腔内装着器具洗浄剤のバリエーションを拡大させることができるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、数値範囲に関する表記X~Yは、X以上Y以下であることを指す。
【0012】
本明細書において「口腔内装着器具」とは、総義歯(総入れ歯)、部分床義歯(部分入れ歯)、歯列矯正器具、リテーナー、及びマウスピース等の口腔内にて着脱を要する歯科用装着器具を意味する。
【0013】
1.口腔内装着器具洗浄剤
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、(A)シクロデキストリン(以下、(A)成分と表記することがある)と、(B)炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、(B)成分と表記することがある)とを含むことを特徴とする。以下、本開示の口腔内装着器具洗浄剤について詳述する。
【0014】
[シクロデキストリン]
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、(A)成分として、シクロデキストリンを含有する。本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、シクロデキストリンは、(B)成分と組み合わせて口腔内装着器具洗浄剤に配合することにより、口腔内装着器具洗浄剤に優れた消臭力を付与するための成分である。
【0015】
シクロデキストリンとしては、特に制限されず、例えば、グルコースが5個以上結合したものが挙げられ、具体的には、グルコースが6個結合したα-シクロデキストリン、グルコースが7個結合したβ-シクロデキストリン、及びグルコースが8個結合したγ-シクロデキストリンなどが挙げられる。前記例示のシクロデキストリンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤の一実施態様として、シクロデキストリンとしては、消臭力をより向上させる観点から、α-、β-、又はγ-シクロデキストリンを用いることが好ましい。また、本開示の口腔内装着器具洗浄剤の別の一実施態様として、シクロデキストリンとしては、消臭力をさらに向上させる観点から、α-、β-、及びγ-シクロデキストリンからなる群より選択されるいずれか2種を用いることが好ましい。また、本開示の口腔内装着器具洗浄剤の別の一実施態様として、シクロデキストリンとしては、消臭力を一層向上させる観点から、α-、β-、及びγ-シクロデキストリンの3種を用いることが好ましい。α-、β-、及びγ-シクロデキストリンを用いる場合、α-、β-、及びγ-シクロデキストリンの重量比率は特に制限されないが、消臭力をより一層向上させる観点から、α-、β-、及びγ-シクロデキストリンの合計量を100重量部としたとき、α-シクロデキストリンの含有量は、好ましくは20~40重量部、より好ましくは25~35重量部であり、β-シクロデキストリンの含有量は、好ましくは35~70重量部、より好ましくは45~60重量部であり、γ-シクロデキストリンの含有量は、好ましくは10~25重量部、より好ましくは15~20重量部である。
【0017】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、(A)成分の含有量については、所望の消臭効果が得られる範囲で適宜設定すればよいが、例えば0.01~20重量%であり、消臭力をより向上させる観点から、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、更に好ましくは0.5~3重量%が挙げられる。
【0018】
[炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩]
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、(B)成分として、炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。(B)成分は、シクロデキストリンと組み合わせて口腔内装着器具洗浄剤に含有させることにより、口腔内装着器具洗浄剤の消臭力を格段に向上させることができる成分である。また、前記アルキル硫酸塩は、陰イオン性界面活性剤として、化学的洗浄作用を発揮させる成分としての役割も果たす。また、炭酸水素塩は、口腔内装着器具洗浄剤が後述する酸を含む場合には、発泡剤の構成成分となり、口腔内装着器具の洗浄時に酸と反応して炭酸ガスを発生させる役割を果たす。
【0019】
前記アルキル硫酸塩を構成するアルキル基の炭素数は、口腔内装着器具洗浄剤の消臭力を格段に向上させる観点から、8~20であることが必要であり、好ましくは10~18、更に好ましくは12~18である。また、前記アルキル硫酸塩を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状である。また、前記アルキル硫酸塩を構成する塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。前記アルキル硫酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
前記アルキル硫酸塩の中でも、口腔内装着器具洗浄剤の消臭力を格段に向上させる観点から、好ましくはラウリル硫酸塩、より好ましくはラウリル硫酸アルカリ金属塩、更に好ましくはラウリル硫酸ナトリウムである。
【0021】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、前記アルキル硫酸塩の含有量については、所望の消臭効果が得られる範囲で適宜設定すればよいが、例えば0.01~20重量%であり、口腔内装着器具洗浄剤の消臭力を格段に向上させる観点から、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、更に好ましくは0.5~3重量%が挙げられる。
【0022】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、(A)成分に対する前記アルキル硫酸塩の含有比率については、特に制限されず、(A)成分1重量部当たり、前記アルキル硫酸塩の含有量は、例えば、0.1~15重量部であり、口腔内装着器具洗浄剤の消臭力を格段に向上させる観点から、好ましくは0.3~10重量部、より好ましくは0.5~8重量部、さらに好ましくは1~5重量部が挙げられる。
【0023】
炭酸水素塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素のアルカリ金属塩が挙げられ、好ましくは炭酸水素ナトリウムである。炭酸水素塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、炭酸水素塩の含有量については、所望の消臭効果が得られる範囲で適宜設定すればよいが、例えば0.1~30重量%であり、口腔内装着器具洗浄剤の消臭力を格段に向上させる観点から、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは1~18重量%、更に好ましくは3~15重量%が挙げられる。
【0025】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、(A)成分に対する炭酸水素塩の含有比率については、特に制限されず、(A)成分1重量部当たり、炭酸水素塩の含有量は、例えば、0.1~50重量部であり、口腔内装着器具洗浄剤の消臭力を格段に向上させる観点から、好ましくは0.5~45重量部、より好ましくは1~40重量部、さらに好ましくは3~30重量部が挙げられる。
【0026】
[その他の成分]
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、前述する成分に加えて、本開示の効果を妨げないことを限度として、必要に応じて他の成分を含んでよい。
【0027】
(発泡剤)
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、発泡剤を含有してもよい。本開示の口腔内装着器具洗浄剤が発泡剤を含有する場合、洗浄水中に二酸化炭素の気泡を発生させることができ、発泡作用による物理的洗浄力を発揮させることができる。
【0028】
発泡剤の種類については、無毒性で生理学上許容されるものであれば特に制限はされず、口腔内装着器具洗浄剤で通常使用されるもの(即ち、水中で二酸化炭素を発生できるもの)を広く用いることができる。
【0029】
発泡剤としては、例えば、炭酸塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩の少なくとも1種(以下、炭酸化合物と表記することもある)と、酸との組み合わせが例示される。炭酸塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩が挙げられる。炭酸塩と炭酸水素塩の複塩としては、特に制限されないが、例えば、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。前記炭酸化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、酸としては、特に制限されないが、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸等の有機酸;リン酸、スルファミン酸等の無機酸等が挙げられる。酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
発泡剤を構成する炭酸化合物として、好ましくは炭酸のアルカリ金属塩、より好ましくは炭酸ナトリウムが挙げられる。また、発泡剤を構成する酸として、好ましくは有機酸、より好ましくはクエン酸及びリンゴ酸が挙げられる。
【0031】
発泡剤において、炭酸化合物と酸の比率については、水中で両者が反応して二酸化炭素を発生できることを限度として特に制限されないが、炭酸化合物100重量部当たり、酸の含有量は、例えば10~200重量部、好ましくは15~150重量部、更に好ましくは20~100重量部が挙げられる。
【0032】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤が発泡剤を含有する場合、、発泡剤の含有量(炭酸化合物と酸の合計量)については、口腔内装着器具の洗浄時に十分な二酸化炭素の気泡を発生させ得る限り特に制限されないが、例えば10~75重量%、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~65重量%が挙げられる。
【0033】
(漂白剤)
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、漂白剤を含有してもよい。漂白剤を含むことにより、洗浄力を向上させることができる。
【0034】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤に使用される漂白剤の種類については、無毒性で生理学上許容されるものであれば特に制限されず、口腔内装着器具洗浄剤で通常使用されるものを広く用いることができる。
【0035】
漂白剤としては、例えば、モノ過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、及び過硫酸塩等の酸素系漂白剤が挙げられる。
【0036】
モノ過硫酸水素塩としては、具体的には、モノ過硫酸水素ナトリウム、モノ過硫酸水素カリウム(ビス(ペルオキシ一硫酸)・ビス(硫酸)・五カリウム等)等のモノ過硫酸水素のアルカリ金属塩、モノ過硫酸水素アンモニウム、これらの水和物等が挙げられる。過ホウ酸塩としては、具体的には、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム等の過ホウ酸のアルカリ金属塩、過ホウ酸アンモニウム、これらの水和物等が挙げられる。過炭酸塩としては、具体的には、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等の過炭酸のアルカリ金属塩、過炭酸アンモニウム、これらの水和物等が挙げられる。過硫酸塩としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸のアルカリ金属塩、過硫酸アンモニウム、これらの水和物等が挙げられる。前記例示の漂白剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記例示の漂白剤の中でも、好ましくはモノ過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、及び過炭酸塩、より好ましくはモノ過硫酸水素のアルカリ金属塩、過ホウ酸のアルカリ金属塩、及び過炭酸のアルカリ金属塩、更に好ましくはモノ過硫酸水素カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0037】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、漂白剤の含有量については、所望の漂白作用を発揮できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば、1~40重量%、好ましくは5~35重量%、より好ましくは10~30重量%が挙げられる。
【0038】
(漂白活性化剤)
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、酸素系漂白剤を含有する場合、漂白活性化剤を含有してもよい。漂白活性化剤は、水中で酸素系漂白剤から発生したHO2
-と反応し、より漂白効果の高い有機過酸を発生させる成分である。
【0039】
漂白活性化剤としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、テトラアセチルエチレンジアミン;炭素数1~18、好ましくは炭素数8~12のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸又はその塩;炭素数1~18、好ましくは炭素数8~12のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシ安息香酸又はその塩などが挙げられる。前記塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。前記例示の漂白活性化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記例示の漂白活性化剤のうち、有機過酸を生成する効率に優れる観点から、好ましくはテトラアセチルエチレンジアミンである。
【0040】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、漂白活性化剤の含有量については、酸素系漂白剤の含有量に応じて適宜調整すればよく、例えば、0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.5~2重量%が挙げられる。
【0041】
(界面活性剤)
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、前記アルキル硫酸塩以外の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、化学的洗浄作用を発揮させる成分等としての役割を果たす。
【0042】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤に配合される界面活性剤の種類については、洗浄剤の成分として使用可能なものであることを限度として特に制限されず、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれを使用してもよい。これらの界面活性剤の中でも、好ましくは陰イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0043】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルカンスルホン酸塩等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、及び塩酸塩等の酸付加塩等が挙げられる。
【0044】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、1種の界面活性剤を単独で配合してもよく、また2種以上の界面活性剤を組み合わせて配合してもよい。
【0045】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、界面活性剤の含有量(前記アルキル硫酸塩の含有量を含む)については、口腔内装着器具の洗浄時に発泡作用を発揮させ得ることを限度として特に制限されず、使用する界面活性剤の種類、備えさせるべき洗浄力等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、界面活性剤の総量で0.1~10重量%、好ましくは0.5~7重量%、より好ましくは1~5重量%が挙げられる。
【0046】
(糖アルコール)
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、糖アルコールを含有してもよい。糖アルコールは、結合剤としての役割を果たす成分である。
【0047】
糖アルコールの種類については、特に制限されないが、例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。前記例示の糖アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記例示の糖アルコールの中でも、好ましくはソルビトールが挙げられる。
【0048】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、糖アルコールの含有量としては、例えば、糖アルコールの総量で、1~30重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは4~15重量%が挙げられる。
【0049】
(ポリアルキレングリコール)
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、ポリアルキレングリコールを含有してもよい。ポリアルキレングリコールは、結合剤としての役割を果たす成分である。
【0050】
ポリアルキレングリコールとして、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0051】
ポリアルキレングリコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記例示のポリアルキレングリコールの中でも、好ましくは、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0052】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、ポリアルキレングリコールの含有量としては、例えば、0.1~5重量%、好ましくは0.5~2重量%、より好ましくは0.5~1.5重量%が挙げられる。
【0053】
(滑沢剤)
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、錠剤状への成型工程を容易に行うために、滑沢剤が含まれていてもよい。
【0054】
滑沢剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0055】
滑沢剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を与わせて使用してもよい。前記例示の滑沢剤の中でも、好ましくはステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0056】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤において、滑沢剤の含有量としては、例えば、0.01~1重量%、好ましくは0.015~0.5重量%、より好ましくは0.02~0.3重量%が挙げられる。
【0057】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤に配合可能な他の添加剤としては、基材(硫酸ナトリウム等)、酸化マグネシウム、香料、色素、消臭剤、歯石防止剤、防錆剤、キレート剤、pH調整剤、酵素(プロテアーゼ等)、甘味料、清涼剤、発泡安定化剤、保存剤、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、増量剤、賦形剤、崩壊剤、流動化剤等が挙げられる。前記例示のその他の成分は、1種単独で配合してもよく、2種以上を任意に組み合わせて配合してもよい。
【0058】
2.口腔内装着器具洗浄剤の製剤形態
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、固形状であり、具体的には、粉末状、顆粒状又は錠剤状に成型され、好ましくは顆粒状又は錠剤状に成型され、最も好ましくは錠剤状に成型される。錠剤状に成型される場合、錠剤1個当たりの重量は、特に制限されず、使用簡便性を踏まえて適宜設定すればよいが、錠剤1個当たりの重量を1回の口腔内装着器具洗浄に必要な量に設定しておくことが望ましい。具体的には、錠剤1個当たりの重量として、1~4g、好ましくは2~3gが挙げられる。
【0059】
錠剤状の口腔内装着器具洗浄剤の製造は、公知の方法に従って行えばよい。例えば、(A)成分及び(B)成分、及び必要に応じて添加される他の成分の混合物を、造粒等の顆粒の成型工程、又は打錠等の錠剤の成型工程に供することによって、本開示の口腔内装着器具洗浄剤が製造される。
【0060】
3.口腔内装着器具洗浄剤の用途
本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、各種の口腔内装着器具の洗浄剤として用いられるが、特に義歯洗浄剤として好適に用いられる。
【0061】
4.口腔内装着器具洗浄剤の使用方法
本開示の口腔内装着器具洗浄剤を水に投入し、必要により加熱し、そして水中に洗浄対象となる口腔内装着器具(好ましくは義歯)を入れると、本開示の口腔内装着器具洗浄剤が溶解して口腔内装着器具が洗浄される。また、本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、(A)成分と(B)成分とを含有するため、洗浄液に、口腔内装着器具を浸漬させることによって、洗浄後の口腔内装着器具の臭いを効果的に軽減することができる。
【0062】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤を用いて口腔内装着器具を洗浄する際に使用される水としては、特に制限されないが、水道水、精製水、蒸留水、生理食塩水等が挙げられる。
【0063】
本開示の口腔内装着器具洗浄剤を用いて口腔内装着器具を洗浄する際には、水に口腔内装着器具を浸漬した後に本開示の口腔内装着器具洗浄剤を加えてもよく、また水に本開示の口腔内装着器具洗浄剤を加えた後に口腔内装着器具を浸漬させてもよい。
【0064】
また、口腔内装着器具の洗浄において、本開示の口腔内装着器具洗浄剤と水との比率は、本開示の口腔内装着器具洗浄剤の組成、洗浄対象となる口腔内装着器具の汚れの程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、水100重量部に対して、口腔内装着器具洗浄剤を通常1~10重量部程度、好ましくは1~5重量部程度とすればよい。より具体的には、1回の口腔内装着器具の洗浄において、水100~200mLを準備し、これに本開示の口腔内装着器具洗浄剤1~20g、好ましくは1~10g、より好ましくは1~5gを加えればよい。
【0065】
口腔内装着器具洗浄時の温度は、室温程度とすればよい。また、前記口腔内装着器具洗浄液に口腔内装着器具を浸積する時間は、通常5分~24時間程度、好ましくは10分~12時間程度、より好ましくは30分~8時間程度である。
【0066】
また、口腔内装着器具の洗浄中に、口腔内装着器具洗浄剤を添加した水を攪拌等する必要はないが、口腔内装着器具の汚れ及び臭い等をより効果的に除去するために、必要に応じて攪拌してもよく、またブラシ等の洗浄具で口腔内装着器具を擦り洗いしてもよい。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を示して本開示の発明をより具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0068】
以下の試験例及び処方例で使用したシクロデキストリンの詳細は、以下の通りである。
・シクロデキストリン:α-シクロデキストリン13重量部、β-シクロデキストリン20重量部、γ-シクロデキストリン7重量部、及び粉飴60重量部の混合物
・α-オレフィンスルホン酸ナトリウム:1分子中に平均14~16個の炭素原子を有するもの
【0069】
試験例
表1に示す組成の錠剤状の口腔内装着器具洗浄剤を調製した。具体的には、表1に示す成分を混合した組成物を、径22φの金型と打錠装置(理研機器株式会社製、小型電動油圧ポンプSMP-3012SK)を用いて40MPaで打錠成型することにより、1個当たり2gの錠剤状の口腔内装着器具洗浄剤を調製した。表1において、シクロデキストリンの欄の配合量は、α-、β-、及びγ-シクロデキストリンの合計配合量を示す。
【0070】
調製した口腔内装着器具洗浄剤について、以下の方法で、消臭試験を行った。
【0071】
<消臭試験A>
メチルメルカプタンを含む悪臭水溶液(メチルメルカプタンの濃度:3000ppm)200μlをガラス容器内に入れた。また、実施例1~6、及び比較例1~7で調製した各口腔内装着器具洗浄剤1錠を25℃の水180ml中に投入して洗浄液を調製した。そして、前記ガラス容器内に、調製した各洗浄液400μlを加え、前記ガラス容器の口をパラフィンフィルムで塞いだ。そして、前記ガラス容器を25℃で30分間静置した。その後、検知管式気体測定器及び検知管71H・71(ガステック社製)を用いて、前記ガラス容器内の気体中に含まれるメチルメルカプタンの濃度(ppm)を測定した。結果を表1に示す。ガラス容器内の気体中に含まれるメチルメルカプタンの濃度が低いほど、口腔内装着器具洗浄剤に含まれる成分は、メチルメルカプタンを保持(包摂)する能力がより高いと考えられる。
【0072】
<消臭試験B>
義歯素材のレジンチップ(20mm×20mm×1.5mm)を消臭試験Aで用いた悪臭水溶液中に浸漬した。そして、25℃の水180mlを含むガラス容器内に、悪臭水溶液中から取り出したレジンチップを浸漬し、さらに実施例1~6、及び比較例1~7で調製した各口腔内装着器具洗浄剤1錠を加えて溶解させた。そして、25℃で3時間静置して前記レジンチップを洗浄した。洗浄後、前記レジンチップを取り出して10L容量のエアバッグ内に入れ、前記レジンチップ5枚あたり無臭空気1.5Lで満たした。25℃にて10分静置した後、エアバッグ内のガスについて消臭性の官能評価を行った。消臭性の官能評価としては、6段階臭気強度法を採用した。
【0073】
〔6段階臭気強度法〕
エアバッグ内のガスの臭気強度を、6段階臭気強度法(0点:無臭、1点:やっと感知できるにおい、2点:何のにおいであるがわかる弱い臭い、3点:楽に感知できるにおい、4点:強いにおい、5点:強烈なにおい)で採点した。臭気強度の採点は、嗅盲テストに合格した訓練された官能評価モニター8名で行い、最高点を出した1名及び最低点を出した1名を除き、6名の採点の平均値を採用した。結果を表1に示す。臭気強度の平均値が低いほど、口腔内装着器具洗浄剤の消臭効果がより優れていることを示す。
【0074】
【0075】
表1に示すように、シクロデキストリンとラウリル硫酸ナトリウムとを両方含む口腔内装着器具洗浄剤(実施例1~3)、及びシクロデキストリンと炭酸水素ナトリウムとを両方含む口腔内装着器具洗浄剤(実施例4~6)は、シクロデキストリンと、ラウリル硫酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムとを両方含んでいない口腔内装着器具洗浄剤(比較例1~7)に比べて、メチルメルカプタン濃度が非常に低く、また、臭気強度の平均値が低く、消臭効果が非常に優れていることが確認された。
【0076】
処方例
表2及び3に示す組成からなる錠剤状の口腔内装着器具洗浄剤を前記試験例と同様の方法で調製し、前記試験例と同様の方法で消臭試験を行った。また、表2及び3において、シクロデキストリンの欄の配合量は、α-、β-、及びγ-シクロデキストリンの合計配合量を示す。消臭試験の結果、いずれの口腔内装着器具洗浄剤も、消臭効果が非常に優れていることが確認された。
【0077】
【0078】
【要約】
【課題】本開示の目的は、新しい製剤技術により、消臭効果に優れる口腔内装着器具洗浄剤を提供することである。
【解決手段】本開示の口腔内装着器具洗浄剤は、(A)シクロデキストリンと、(B)炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし