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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240401BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20240401BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240401BHJP
   H01L 25/10 20060101ALI20240401BHJP
   H01L 25/11 20060101ALI20240401BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01L25/08 E
H01L25/14 Z
H01L23/50 K
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020095751
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021072434
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2019196951
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 太
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 行範
(72)【発明者】
【氏名】澤村 芳行
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-028152(JP,A)
【文献】特開2017-174849(JP,A)
【文献】特開2018-190942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 25/10
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部及び前記第1端部とは反対側の第2端部を有するリードを有するリードフレームと、
前記リードフレームに対向する配線基板と、
前記リードフレーム及び前記配線基板の間に配置される電子部品と、
前記リードフレーム及び前記配線基板を接続する接続部材と、
前記リードフレーム及び前記配線基板の間に充填され、前記電子部品及び前記接続部材を被覆する封止樹脂とを有し、
前記リードは、
前記配線基板に対向し、前記封止樹脂によって被覆される第1の面と、
前記リードの前記第1の面の裏側に位置し、前記封止樹脂から露出する第2の面と、
前記封止樹脂によって被覆される前記第2端部の端面と、
前記封止樹脂の側面から露出する前記第1端部の端面と
を有し、
前記リードの前記第2の面は、
前記第1端部の端面に隣接して形成され、前記封止樹脂によって被覆されていない段差を有し、
前記封止樹脂の、前記リードの前記第2の面が露出している面は、
前記リードの前記第2の面の前記段差に一体に且つ隣接して形成された他の段差を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記リードフレームは、
前記接続部材に接続される前記リードと、
前記第1の面が前記電子部品に対向する放熱板と
を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記リードフレームは、
それぞれ前記接続部材に接続される複数の前記リードを有し、
複数の前記リードは、
前記接続部材に接続される部分の厚さが均等である
ことを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記リードの前記第1の面は、
前記接続部材に接続する位置に形成されためっき層と、
前記めっき層の周囲に形成され、前記封止樹脂に接触する酸化膜と
を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記リードの前記第1の面は、
前記接続部材に接続する位置の周囲に形成され、前記封止樹脂に接触する酸化膜
を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記封止樹脂は、
フィラーを含有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記封止樹脂は、
前記電子部品と前記配線基板との間の空間を含む前記リードフレームと前記配線基板との間の空間に充填されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記リードフレームと前記電子部品との間に挟持され、前記電子部品が発する熱を前記リードフレームへ伝達する熱伝達部材をさらに有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の面は、
前記熱伝達部材に接触する位置に形成されためっき層を有することを特徴とする請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記リードフレームは、
前記第2の面との段差を有し、前記封止樹脂によって被覆される段差面をさらに有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
前記配線基板の側面と、前記封止樹脂の側面と、前記リードの前記第1端部の端面とが、互いに面一である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項12】
第1端部及び前記第1端部とは反対側の第2端部を有するリードを有するリードフレームと当該リードフレームに対向する配線基板との間に電子部品を配置し、
前記リードフレームと前記配線基板を接続部材によって接合し、
前記リードフレームと前記配線基板の間に封止樹脂を充填して、前記電子部品及び前記接続部材を被覆する工程を有し、
前記被覆する工程は、
前記リードの前記配線基板に対向する第1の面を前記封止樹脂によって被覆し、
前記リードの前記第1の面の裏側に位置する第2の面を前記封止樹脂から露出させ、
前記第2端部の端面を前記封止樹脂によって被覆し、
前記第1端部の端面を前記封止樹脂の側面から露出させ、
前記リードの前記第2の面は、
前記第1端部の端面に隣接して形成され、前記封止樹脂によって被覆されていない段差を有し、
前記封止樹脂の、前記リードの前記第2の面が露出している面は、
前記リードの前記第2の面の前記段差に一体に且つ隣接して形成された他の段差を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記配線基板が第1集合体として形成され、
前記リードフレームが第2集合体として形成され、
前記第1端部の端面を前記封止樹脂の側面から露出させる工程は、
前記第2集合体において互いに隣接する前記リードフレームに跨って、前記リードと前記封止樹脂とに溝部を形成し、
前記溝部を通る切断線において前記第1集合体、前記第2集合体及び前記封止樹脂を切断して、個々の半導体装置を得るととともに、前記第1端部の端面を前記封止樹脂の側面から露出させる工程を有することを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度な部品実装を実現するために、例えばIC(Integrated Circuit)チップなどの電子部品を基板の内部に内蔵する半導体装置が注目されている。このような半導体装置は、例えば2枚の有機基板を有し、一方の有機基板にICチップなどの電子部品が実装され、これらの電子部品が他方の有機基板との間に挟まれて構成される。2枚の有機基板の間の空間には、例えば封止樹脂が充填される。
【0003】
このように、2枚の有機基板の間に電子部品を内蔵することにより、有機基板の外側の面にも電子部品を実装する三次元的な部品実装が可能となり、半導体装置の高密度化及び小型化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/069606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電子部品を内蔵する半導体装置においては、電子部品が発する熱を十分に放熱することが困難であるという問題がある。すなわち、内蔵される電子部品の周囲は、熱伝導性が低い封止樹脂によって被覆されているため、電子部品が発する熱は、熱伝導性が高い金属の端子から有機基板を伝って放熱される。しかしながら、電子部品の表面積において端子が占める面積は小さく、放熱の効率はあまり高くない。このため、特に電子部品の発熱量が比較的大きいものである場合は、これらの電子部品の端子から十分な放熱をすることが困難である。
【0006】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、放熱効率を向上することができる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願が開示する半導体装置は、1つの態様において、金属からなるリードフレームと、前記リードフレームに対向する配線基板と、前記リードフレーム及び前記配線基板の間に配置される電子部品と、前記リードフレーム及び前記配線基板を接続する接続部材と、前記リードフレーム及び前記配線基板の間に充填され、前記電子部品及び前記接続部材を被覆する封止樹脂とを有し、前記リードフレームは、前記配線基板に対向し、前記封止樹脂によって被覆される第1の面と、前記第1の面の裏側に位置し、前記封止樹脂から露出する第2の面と、前記第1の面又は前記第2の面に隣接し、少なくとも一部が前記封止樹脂から露出する側面とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本願が開示する半導体装置及び半導体装置の製造方法の1つの態様によれば、放熱効率を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施の形態に係る半導体装置の外観を示す図である。
図2図2は、一実施の形態に係る半導体装置の断面を示す模式図である。
図3図3は、配線基板の製造方法を示すフロー図である。
図4図4は、配線基板の断面を示す模式図である。
図5図5は、部品の実装を説明する図である。
図6図6は、配線基板の構成を示す平面図である。
図7図7は、配線基板の集合体を示す図である。
図8図8は、リードフレームの製造方法を示すフロー図である。
図9図9は、リード及び放熱板形成工程を説明する図である。
図10図10は、めっき層形成工程を説明する図である。
図11図11は、酸化膜形成工程を説明する図である。
図12図12は、接続部材搭載工程を説明する図である。
図13図13は、リードフレームの構成を示す平面図である。
図14図14は、リードフレームの集合体を示す図である。
図15図15は、半導体装置の製造方法を示すフロー図である。
図16図16は、接合工程を説明する図である。
図17図17は、モールド工程を説明する図である。
図18図18は、部品の実装を説明する図である。
図19図19は、モールド工程を説明する図である。
図20図20は、溝部形成工程を説明する図である。
図21図21は、溝部の形成位置の一例を示す図である。
図22図22は、個片化工程を説明する図である。
図23図23は、切断位置の一例を示す図である。
図24図24は、半導体装置の実装を説明する図である。
図25図25は、半導体装置の変形例を示す図である。
図26図26は、半導体装置の他の変形例を示す図である。
図27図27は、半導体装置の他の変形例を示す図である。
図28図28は、半導体装置の他の変形例を示す図である。
図29図29は、他の実施の形態に係るリードフレームの製造方法を説明する図である。
図30図30は、他の実施の形態に係る半導体装置の断面を示す模式図である。
図31図31は、他の実施の形態に係る半導体装置の断面を示す模式図である。
図32図32は、他の実施の形態に係る半導体装置の断面を示す模式図である。
図33図33は、エッチングレジスト形成工程を説明する図である。
図34図34は、エッチング工程を説明する図である。
図35図35は、他の実施の形態に係るリードフレームの構成を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願が開示する半導体装置及び半導体装置の製造方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、一実施の形態に係る半導体装置100の外観を示す図である。図1(a)は、半導体装置100の側面図であり、図1(b)は、半導体装置100の下面図である。なお、以下の説明においては、半導体装置100を実装基板に実装する際に実装基板に近くなる面を「下面」といい、実装基板から遠くなる面を「上面」というとともに、これに準じて上下方向を規定するが、半導体装置100は、例えば上下反転して製造及び使用されても良く、任意の姿勢で製造及び使用されて良い。
【0012】
図1に示す半導体装置100は、配線基板110及びリードフレーム120を有し、配線基板110の上面に実装された電子部品を被覆する封止樹脂101と、配線基板110とリードフレーム120に挟まれて配置される電子部品を被覆する封止樹脂102とを有する。具体的には、配線基板110の上面には、例えばキャパシタ及びインダクタなどの電子部品が実装され、これらの電子部品が封止樹脂101によって被覆されている。また、配線基板110の下面には、例えばICチップなどの電子部品が実装され、これらの電子部品は、配線基板110とリードフレーム120によって挟まれるとともに、封止樹脂102によって被覆されている。
【0013】
封止樹脂101、102は、例えばアルミナ、シリカ、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素などの無機フィラーを含有する熱硬化性のエポキシ系樹脂等の絶縁性樹脂である。なお、封止樹脂102については、無機フィラーの充填率を70wt%(重量パーセント)以上95wt%以下としても良い。このように高い充填率でフィラーを含有することにより、封止樹脂102の熱伝導率を向上することができる。さらに、封止樹脂102に、例えば銀などの金属フィラーを含有させることにより、放熱性を向上しても良い。封止樹脂102に金属フィラーを含有させる場合には、電子部品のショート防止のために、表面に絶縁処理を施した金属フィラーを用いるのが好適である。
【0014】
封止樹脂102によって被覆されるリードフレーム120は、図1(b)に示すように、リード121及び放熱板122を有する。リード121及び放熱板122の下面は、半導体装置100の下面において封止樹脂102から露出する。また、リード121の側方の端部は、半導体装置100の側面において封止樹脂102から露出する。リード121は、配線基板110の配線層と電気的に接続する一方、放熱板122は、配線基板110の下面に実装された電子部品に対向する位置に形成される。このため、電子部品が発する熱は、封止樹脂102から放熱板122へ伝導し、比較的大面積の放熱板122から効率的に放熱される。
【0015】
半導体装置100は、下面視で矩形状を有する。半導体装置100の下面の四辺には、封止樹脂102及びリードフレーム120が切り欠かれて、段差100aが形成されている。そして、段差100aの付近においては、半導体装置100の下面の四辺に沿って、リード121の側方の端部が封止樹脂102から露出する。なお、半導体装置100の下面の四辺ではなく、対向する二辺に沿って、リード121の側方の端部を封止樹脂102から露出させても良い。
【0016】
図2は、一実施の形態に係る半導体装置100の断面を示す模式図である。図2に示すように、半導体装置100は、配線基板110とリードフレーム120が接続部材130によって接続されて構成される。そして、配線基板110の上面には、電子部品103が実装され、これらの電子部品103が封止樹脂101によって封止される。また、配線基板110の下面には、ICチップ140及び電子部品150が実装され、ICチップ140及び電子部品150は封止樹脂102によって封止される。ここでは、ICチップ140と電子部品150を区別しているが、ICチップ140も電子部品の一種である。
【0017】
配線基板110は、基板111、ソルダーレジスト層112、上面パッド113、保護絶縁層114及び下面パッド115を有する。なお、図2においては図示を省略しているが、上面パッド113及び下面パッド115は、基板111中に設けられるビア配線により電気的に接続される。
【0018】
基板111は、絶縁性の板状部材であり、配線基板110の基材である。基板111の材料としては、例えば、補強材であるガラスクロス(ガラス織布)にエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性の絶縁性樹脂を含浸させて硬化させたガラスエポキシ樹脂などを用いることができる。補強材としては、ガラスクロスに限らず、例えば、ガラス不織布、アラミド織布、アラミド不織布、液晶ポリマ(LCP:Liquid Crystal Polymer)織布及びLCP不織布などを用いることができる。また、熱硬化性の絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂の他にも、例えば、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂などを用いることができる。
【0019】
なお、基板111は、単層の絶縁性部材に限定されず、絶縁層及び配線層を積層した多層構造の積層基板であっても良い。基板111が積層基板である場合には、絶縁層を貫通するビアによって、この絶縁層を挟む配線層が電気的に接続される。絶縁層の材料としては、例えば、エポキシ樹脂及びポリイミド樹脂などの絶縁性樹脂、又はこれらの樹脂にシリカやアルミナ等のフィラーを混入した樹脂材を用いることができる。また、配線層の材料としては、例えば銅(Cu)又は銅合金を用いることができる。
【0020】
ソルダーレジスト層112は、基板111の上面を被覆する絶縁層である。ソルダーレジスト層112の一部には開口部が設けられ、開口部から上面パッド113が露出する。ソルダーレジスト層112の材料としては、例えばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。
【0021】
上面パッド113は、基板111の上面の配線層に形成され、電子部品103を実装するために、ソルダーレジスト層112の開口部から露出する。配線基板110の上面に電子部品103が実装される際には、電子部品103の端子103aがはんだ103bによって上面パッド113に接続される。上面パッド113の材料としては、配線層と同様に、例えば銅又は銅合金を用いることができる。
【0022】
保護絶縁層114は、基板111の下面を被覆する絶縁層である。保護絶縁層114の一部には開口部が設けられ、開口部から下面パッド115が露出する。保護絶縁層114の材料としては、例えばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。
【0023】
下面パッド115は、基板111の下面の配線層に形成され、接続部材130との接続及びICチップ140及び電子部品150の実装のために、保護絶縁層114の開口部から露出する。すなわち、一部の下面パッド115には、接続部材130が接合される。また、一部の下面パッド115には、ICチップ140が接続される。具体的には、例えばはんだバンプ141によってICチップ140が下面パッド115にフリップチップ接続される。そして、配線基板110とICチップ140の間にはアンダーフィル材142が充填される。さらに、一部の下面パッド115には、電子部品150の端子150aがはんだ150bによって接続される。下面パッド115の材料としては、配線層と同様に、例えば銅又は銅合金を用いることができる。
【0024】
リードフレーム120は、例えば銅又は銅合金等の金属からなる導電性部材であり、リード121及び放熱板122を有する。リードフレーム120の下面には、めっき層123が形成されており、半導体装置100の下面において封止樹脂102から露出する。めっき層123は、例えば錫(Sn)めっき又ははんだめっきによって形成される。
【0025】
リード121は、配線基板110に実装されるICチップ140や電子部品103、150と接続部材130を介して電気的に接続する。そして、リード121の下面及び側面121aは、封止樹脂102から露出して外部端子として機能する。めっき層123が形成されたリード121の下面の側方端部には、段差が設けられている。段差の側方の側面121aは、半導体装置100の側面において封止樹脂102から露出する。
【0026】
リード121の上面の接続部材130に対応する位置には、めっき層124が形成されている。めっき層124は、例えば銀(Ag)めっきなどの貴金属めっきによって形成される。そして、リード121の上面のめっき層124以外の部分と放熱板122に対向する側面とには、酸化膜125が形成されている。すなわち、封止樹脂102に接触するリード121の上面及び側面には、酸化膜125が形成される。めっき層124の周囲が酸化膜125によって囲まれているため、接続部材130のはんだ132がめっき層124の周囲にまで広がらず、リードフレーム120と接続部材130との位置合わせを正確にすることができる。なお、めっき層124としては、銀めっきの他にも金(Au)めっきを用いても良い。また、リード121の上面に、ニッケル(Ni)めっきと金めっきとをこの順に積層しためっき層や、ニッケルめっきとパラジウム(Pd)めっきと金めっきとをこの順に積層しためっき層を用いても良い。
【0027】
放熱板122は、ICチップ140及び電子部品150に対向する。そして、放熱板122は、封止樹脂102を介してICチップ140及び電子部品150から伝導する熱を下面から放熱する。放熱板122は、熱伝導性が高いリードフレーム120の一部であり、ICチップ140及び電子部品150に対向する比較的大面積の板状部分であるため、封止樹脂102から伝わる熱を効率良く放熱することができる。放熱板122の下面には、めっき層123が形成されており、封止樹脂102に接触する放熱板122の上面及び側面には、酸化膜125が形成されている。
【0028】
リード121及び放熱板122の封止樹脂102に接触する面に酸化膜125が形成されることにより、リードフレーム120と封止樹脂102の密着性を向上することができる。すなわち、酸化膜125が含む水酸化物(例えばCu(OH)2)は、封止樹脂102が硬化して生成する水酸基(-OH)と水素結合をすることにより、強力な接着力を発現する。このため、封止樹脂102に接触する面に酸化膜125が形成されることにより、リードフレーム120と封止樹脂102の剥離を防止することができ、半導体装置100の信頼性を向上することができる。
【0029】
接続部材130は、例えば銅コアを有するはんだボールなどから形成され、配線基板110とリードフレーム120とを接続する。具体的には、接続部材130は、略球状のコア131と、コア131の外周面を被覆するはんだ132とを有する。コア131としては、例えば銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)等の金属からなる金属コアや、樹脂からなる樹脂コア等を用いることができる。はんだ132としては、例えば鉛(Pb)を含む合金、錫(Sn)と銅(Cu)の合金、錫(Sn)とアンチモン(Sb)の合金、錫(Sn)と銀(Ag)の合金、錫(Sn)と銀(Ag)と銅(Cu)の合金等を用いることができる。コア131の直径は、ICチップ140及び電子部品150の配線基板110の下面からの高さを考慮して決定することができる。例えば、コア131の直径を、配線基板110の下面からのICチップ140及び電子部品150の高さ以上にしても良い。また、はんだ132の量は、下面パッド115の露出する面積及びめっき層124の面積などを考慮して決定することができる。
【0030】
次いで、上記のように構成される半導体装置100の製造方法について説明する。以下では、配線基板110の製造方法及びリードフレーム120の製造方法について説明した後、配線基板110及びリードフレーム120を有する半導体装置100の製造方法について説明する。
【0031】
図3は、配線基板110の製造方法を示すフロー図である。
【0032】
まず、基板111の上面及び下面に配線層が形成される(ステップS101)。具体的には、例えばセミアディティブ法により、基板111の上面及び下面の配線層が順次形成される。基板111の上面の配線層には上面パッド113が含まれ、基板下面の配線層には下面パッド115が含まれる。そして、基板111の下面には、下面パッド115の位置に開口部を有する保護絶縁層114が形成され(ステップS102)、基板111の上面には、上面パッド113の位置に開口部を有するソルダーレジスト層112が形成される(ステップS103)。ソルダーレジスト層112及び保護絶縁層114は、例えば基板111の上面及び下面に感光性の樹脂フィルムをラミネートするか、又は液状やペースト状の樹脂を塗布し、ラミネート又は塗布された樹脂をフォトリソグラフィ法により露光・現像して所要の形状にパターニングすることにより得られる。
【0033】
ここまでの工程により、例えば図4に示すように、基板111の上面では、ソルダーレジスト層112の開口部112aから上面パッド113が露出し、基板111の下面では、保護絶縁層114の開口部114aから下面パッド115a、115b、115cが露出する配線基板110が形成される。下面パッド115aは、電子部品150の端子を接続するパッドであり、下面パッド115bは、ICチップ140をフリップチップ接続するパッドであり、下面パッド115cは、接続部材130に接続するパッドである。このため、これらの下面パッド115a、115b、115cが露出する面積は、互いに異なっていても良い。
【0034】
下面パッド115a、115bには、ICチップ140及び電子部品150が搭載されるため、はんだペーストが印刷される(ステップS104)。そして、下面パッド115aの位置には電子部品150が搭載され、下面パッド115bの位置にはICチップ140が搭載される(ステップS105)。ICチップ140及び電子部品150は、リフロー処理を経て(ステップS106)、配線基板110に実装される。また、必要に応じて、ICチップ140と配線基板110の下面との間には、絶縁性樹脂からなるアンダーフィル材142が充填される(ステップS107)。
【0035】
ここまでの工程により、例えば図5に示すように、配線基板110の下面には、はんだバンプ141によって下面パッド115bにフリップチップ接続されたICチップ140と、はんだ150bによって端子150aが下面パッド115aに接続された電子部品150とが実装される。これにより、半導体装置100の上層を形成する配線基板110が得られる。
【0036】
図6は、配線基板110を下方向から見た平面図である。図6に示すように、配線基板110の下面には、ICチップ140及び電子部品150が実装されており、保護絶縁層114の開口部からは接続部材130を接続するための下面パッド115cが露出している。なお、図面を簡略化するため、ICチップ140及び電子部品150の配置は、図5図6では必ずしも一致しない。また、ICチップ140及び電子部品150の配置は、図6に示すものに限定されない。同様に、下面パッド115cが露出する位置も、図6に示すものに限定されない。ただし、ICチップ140の位置は、リードフレーム120の放熱板122の位置に対応し、下面パッド115cの位置は、リードフレーム120のめっき層124の位置に対応する。
【0037】
このような配線基板110は、単体で製造されるのではなく、複数の配線基板110が配列されて同時に製造されるのが好ましい。すなわち、例えば図7に示すように、複数の配線基板110が配列された集合体110aとして製造されるのが好ましい。集合体110aにおいては、枠体110bによって分割された個々の区画で配線基板110が製造される。ただし、図7においては、配線基板110の詳細な構成の図示を省略している。
【0038】
次に、図8は、リードフレーム120の製造方法を示すフロー図である。
【0039】
リードフレーム120の製造には、例えば厚さ50~200μm程度の銅又は銅合金の金属板を用いることができる。金属板のエッチング加工又はプレス加工により、リード121及び放熱板122が形成される(ステップS201)。すなわち、例えば図9に示すように、金属板からリード121及び放熱板122が成形される。リード121は、リードフレーム120が配線基板110と接合される際に下面パッド115cに対向する位置に設けられ、上面視で例えば細長い長方形状を有する。リードフレーム120は、複数のリード121を有するが、これらのリード121の厚さは均等である。また、放熱板122は、リードフレーム120が配線基板110と接合される際にICチップ140に対向する位置に設けられ、上面視で比較的大面積の長方形状を有する。
【0040】
そして、リード121には、めっき層124が形成される(ステップS202)。すなわち、例えば図10に示すように、リード121の上面に例えば銀めっきによりめっき層124が形成される。めっき層124は、リードフレーム120が配線基板110と接合される際に下面パッド115cに対向する位置に形成される。つまり、リードフレーム120が配線基板110と接合される際には、互いに対向する下面パッド115cとめっき層124とが接続部材130によって接続される。上述したように、複数のリード121の厚さは均等であり、特に、各リード121のめっき層124が形成される部分の厚さは均等である。また、めっき層124の幅(又は径)の大きさは、上面視した場合のリード121の短辺方向の幅よりも小さくするのが好ましい。すなわち、めっき層124がリード121の上面からはみ出さないようにするのが好ましい。
【0041】
めっき層124の形成にあたっては、例えば感光性のドライフィルムが熱圧着によりリードフレーム120の上面にラミネートされ、フォトリソグラフィ法によりドライフィルムをパターニングしてレジスト層が形成される。そして、レジスト層をめっきマスクとした電解めっき法又は無電解めっき法により、銀(Ag)などの貴金属のめっき層124が形成される。めっき層124が形成された後、例えばアルカリ性の剥離液により、レジスト層が除去される。
【0042】
めっき層124が形成されると、リードフレーム120の陽極酸化処理により、酸化膜125が形成される(ステップS203)。すなわち、リードフレーム120が陽極酸化され、例えば図11に示すように、リード121及び放熱板122の表面に酸化膜125が形成される。このとき、めっき層124は、例えば銀(Ag)などの貴金属めっき層であるため、陽極酸化されることはない。したがって、酸化膜125は、めっき層124が形成された部分を除くリード121の表面と放熱板122の表面とに形成される。
【0043】
リードフレーム120の陽極酸化処理は、例えば以下のようにして行われる。すなわち、リードフレーム120は、陽極として電解液である陽極酸化処理液中に浸漬され、リードフレーム120と対向配置される白金(Pt)等の電極を陰極とした通電(例えば、パルス電圧の印加)が行われる。リードフレーム120が銅又は銅合金からなる場合には、陽極酸化処理液の組成及び処理条件を以下のように設定することができる。
陽極酸化処理液:
亜塩素酸ナトリウム(NaClO2) 0~100g/L
水酸化ナトリウム(NaOH) 5~60g/L
リン酸三ナトリウム(Na3PO4) 0~200g/L
処理条件:
浴温 約50~80度
処理時間 約1~20秒間
電流密度 約0.2~10A/dm2
【0044】
上記の条件によってリードフレーム120を陽極酸化することにより、例えば0.1~0.2μmの厚さの酸化膜125が形成される。酸化膜125の厚さは、陽極酸化処理液の組成、電圧及び処理時間などの処理条件を変更することにより、調整することができる。酸化膜125は、水酸化物を含む銅酸化膜であり、針状結晶を有する。水酸化物としては、水酸化第二銅(Cu(OH)2)を含む。また、針状結晶は、例えば約0.5μm以下の粒径を有している。
【0045】
リードフレーム120に酸化膜125が形成されると、めっき層124の位置に接続部材130が搭載される(ステップS204)。そして、リフロー処理が行われることにより(ステップS205)、コア131の周囲のはんだ132によって、接続部材130がめっき層124に接合される。このとき、めっき層124の周囲に酸化膜125が形成されているため、はんだ132がめっき層124の周囲にまで広がらず、接続部材130の位置合わせを正確にすることができる。接続部材130の幅(又は径)の大きさは、上面視した場合のリード121の短辺方向の幅よりも小さくするのが好ましい。すなわち、接続部材130がリード121の上面からはみ出さないようにするのが好ましい。これにより、隣接するリード121の上面に接合された接続部材130同士が接触することがなく、短絡を防止することができる。
【0046】
ここで、はんだ132がめっき層124の周囲にまで広がらない理由は、以下のようなものである。すなわち、接続部材130の搭載時には、はんだ132の濡れ性を確保するために、めっき層124にフラックスが塗布される。フラックスは、金属層の表面の自然酸化膜を還元して除去する機能を有するため、めっき層124の周囲の酸化膜125へフラックスが流出すると、酸化膜125が還元されてフラックスの活性力が低下する。この結果、めっき層124の周囲では、はんだ132の濡れ性が得られず、はんだ132の濡れ広がりが抑制される。このように、酸化膜125がフラックスの活性力を低下させるため、はんだ132はめっき層124の周囲にまで広がらず、接続部材130の位置合わせを正確にすることができる。
【0047】
なお、酸化膜125の厚さが薄すぎる場合には、フラックスの活性力をあまり低下させない。一方、酸化膜125の厚さが厚すぎる場合には、酸化膜125の内部で剥離が生じる恐れがある。そこで、上述したように陽極酸化処理の条件を適切に設定することにより、酸化膜125の厚さは、例えば0.1~0.2μmに調整されている。
【0048】
ここまでの工程により、例えば図12に示すように、リード121のめっき層124に接続部材130が接合され、めっき層124以外のリード121の表面には酸化膜125が形成される。また、放熱板122の表面にも酸化膜125が形成される。これにより、半導体装置100の下層を形成するリードフレーム120が得られる。
【0049】
図13は、リードフレーム120を上方向から見た平面図である。図13に示すように、リードフレーム120は、細長い長方形状の複数のリード121と比較的大面積の長方形状の放熱板122とを有する。放熱板122は、支持用リード121’によって周囲の枠体120bに接続し、支持されている。それぞれのリード121には、1つ又は2つの接続部材130が接合されている。リード121に接合される接続部材130の数は、例えば配線基板110の配線層との間で流れる電流の大きさを考慮して決定される。すなわち、例えば比較的大きい電流が流れるリード121については、接続部材130の数を多くして、配線基板110の配線層との間の電気抵抗を低下させても良い。
【0050】
放熱板122は、スリット122aによって2つに分割されている。スリット122aがあることにより、配線基板110とリードフレーム120の間に充填される封止樹脂102とリードフレーム120との密着性を向上することができる。また、例えば配線基板110に2つのICチップ140が並べて搭載される場合、それぞれのICチップ140に対向する位置に放熱板122を設け、独立して放熱することができる。
【0051】
なお、リード121及び放熱板122の配置は、図13に示すものに限定されない。ただし、リード121のめっき層124及び接続部材130の位置は、配線基板110の下面パッド115cの位置に対応し、放熱板122の位置は、配線基板110に実装されるICチップ140の位置に対応する。また、スリット122aの位置も、図13に示すものに限定されず、例えば放熱板122の中央付近が穿孔されてスリットが形成されても良い。
【0052】
このようなリードフレーム120は、単体で製造されるのではなく、複数のリードフレーム120が配列されて同時に製造されるのが好ましい。すなわち、例えば図14に示すように、複数のリードフレーム120が配列された集合体120aとして製造されるのが好ましい。集合体120aにおいては、枠体120bによって分割された個々の区画でリードフレーム120が製造される。ただし、図14においては、リードフレーム120の詳細な構成の図示を省略している。
【0053】
次に、図15は、半導体装置100の製造方法を示すフロー図である。半導体装置100は、上述した配線基板110及びリードフレーム120を用いて製造される。
【0054】
配線基板110とリードフレーム120は、例えばTCB(Thermal Compression Bonding)法により接合される(ステップS301)。具体的には、リードフレーム120のリード121に接合された接続部材130が、熱と圧力によって配線基板110の下面パッド115cに接合される。このとき、複数のリード121の特に接続部材130が設けられる部分の厚さが均等であるため、すべての接続部材130及び下面パッド115cが均一に加圧され、接続部材130と下面パッド115cの接続不良を防止することができる。これにより、例えば図16に示すように、配線基板110とリードフレーム120が一体化される。配線基板110とリードフレーム120の間には、ICチップ140及び電子部品150が配置され、ICチップ140及び電子部品150は、リードフレーム120の放熱板122に対向する。ICチップ140の下面と放熱板122の上面との間は、例えば40~50μm程度離間している。この間隔は、接続部材130のコア131の直径に応じて調整可能である。
【0055】
そして、例えばトランスファーモールドが行われることにより(ステップS302)、配線基板110とリードフレーム120の間の空間に封止樹脂102が充填される。トランスファーモールドでは、接合された配線基板110及びリードフレーム120が金型に収容され、流動化した封止樹脂102が金型内に注入される。そして、封止樹脂102が所定の温度(例えば175度)に加熱され硬化する。これにより、例えば図17に示すように、配線基板110とリードフレーム120の間の空間に封止樹脂102が充填され、接続部材130、ICチップ140及び電子部品150が封止される。ICチップ140及び電子部品150が封止されても、これらの部品が発する熱は、封止樹脂102を介して放熱板122へ伝導する。結果として、半導体装置100の放熱効率を向上することができる。
【0056】
ICチップ140及び電子部品150が封止されると、配線基板110の上面に電子部品103が搭載される(ステップS303)。電子部品103は、リフロー処理を経て(ステップS304)、配線基板110に実装される。すなわち、例えば図18に示すように、電子部品103の端子103aがはんだ103bによって上面パッド113に接続され、配線基板110の上面に電子部品103が実装される。電子部品103としては、例えばキャパシタ、インダクタ及び抵抗素子などの受動部品を用いることができる。また、電子部品103は、例えばICチップなどの能動部品であっても良い。
【0057】
そして、例えばトランスファーモールドが行われることにより(ステップS305)、配線基板110の上面の電子部品103が封止樹脂101によって封止される。封止樹脂101としては、例えばフィラーを含有する熱硬化性のエポキシ系樹脂等の絶縁性樹脂を用いることができる。トランスファーモールドでは、電子部品103が実装された配線基板110及びリードフレーム120からなる構造体が金型に収容され、流動化した封止樹脂101が金型内に注入される。そして、封止樹脂101が所定の温度(例えば175度)に加熱され硬化する。これにより、例えば図19に示すように、配線基板110の上面及び電子部品103が封止樹脂101によって被覆され、電子部品103が封止される。
【0058】
続いて、リードフレーム120の下面に溝部が形成される(ステップS306)。具体的には、例えば図20に示すように、リード121の下面の端部が厚みの一部のみ切断(ハーフカット)されることにより、溝部121bが形成される。このとき、リード121間の封止樹脂102も同時に切断されるため、溝部121bと一体の溝部が封止樹脂102にも形成される。溝部121bの深さは酸化膜125の厚さよりも大きいため、溝部121bが形成される過程で、溝部121bの位置の酸化膜125は除去される。したがって、溝部121bにおいては、リードフレーム120の基材が露出する。溝部121bは、半導体装置100の側面となる位置に形成される。すなわち、図20に示す構造体が溝部121bを通る位置で上下方向に切断されることにより、半導体装置100が得られる。
【0059】
ここで、配線基板110及びリードフレーム120は、それぞれ集合体110a、120aとして形成されており、配線基板110とリードフレーム120の接合や封止樹脂101、102によるトランスファーモールドなどの工程も集合体110a、120aのまま行われている。このため、溝部121bは、集合体120aにおいて互いに隣接するリードフレーム120に跨って形成されても良い。具体的には、例えば図21に示すように、隣接する2つのリードフレーム120の端部と枠体120bとの範囲を切断(ハーフカット)することにより、溝部121bが形成されても良い。溝部121bが形成されることにより、半導体装置100の側面において露出することになるリード121の端部には、段差が形成されることになる。なお、図21においては、図示した2つのリードフレーム120の間に形成される溝部121bのみを図示したが、溝部121bは、すべての隣接するリードフレーム120の間に形成される。したがって、溝部121は、各リードフレーム120の四辺に形成される。
【0060】
溝部121bが形成されると、リードフレーム120の下面の酸化膜125が除去される(ステップS307)。また、酸化膜125の除去とともに、リード121及び放熱板122の下面に生じた封止樹脂102の残渣が除去される。酸化膜125及び封止樹脂102の残渣の除去は、例えば酸処理、アルカリ処理又はウェットブラスト処理によって行われる。酸化膜125が除去されることにより、リード121及び放熱板122の下面においては、リードフレーム120の基材が露出する。一方、封止樹脂102に接触する、リード121及び放熱板122の側面及び上面の酸化膜125は残存する。
【0061】
そして、リード121及び放熱板122の下面にめっき層123が形成される(ステップS308)。すなわち、リードフレーム120の下面に、電解めっき法又は無電解めっき法により、例えば錫(Sn)又ははんだのめっき層123が形成される。このとき、溝部121bの内部にもめっき層123が形成される。
【0062】
ここまでの工程により、例えば図22に示すように、半導体装置100と同等の構造を有する構造体が得られる。この構造体は、複数の配線基板110を含む集合体110aと、複数のリードフレーム120を含む集合体120aとから構成されているため、個々の配線基板110及びリードフレーム120を切り出す個片化が行われる(ステップS309)。具体的には、図22に示す構造体が、溝部121bを通る切断線Aにおいて、例えばダイサー又はスライサーによって切断されることにより、半導体装置100が得られる。切断線Aが溝部121bを通るため、半導体装置100の側面において露出するリード121の端部は、他の部分に比べて薄くなった部分である。
【0063】
なお、溝部121bが互いに隣接するリードフレーム120に跨って形成される場合には、例えば図23に示すように、枠体120bを含む範囲Bを切削可能なダイシングブレードによってダイシング加工することにより、1回の切断で隣接する半導体装置100を分離することができる。この場合でも、範囲Bが溝部121bの内部に含まれるため、半導体装置100の側面において露出するリード121の端部は、他の部分に比べて薄くなった部分である。図23においては、図示した2つのリードフレーム120の間の切削範囲Bのみを図示したが、このような切削範囲は、すべての隣接するリードフレーム120の間に設定される。したがって、各リードフレーム120の四辺が切削範囲Bと同様の切削範囲において、隣接するリードフレーム120と分離される。
【0064】
個片化により得られる半導体装置100は、実装基板に実装することが可能である。具体的には、リードフレーム120のリード121を端子として、半導体装置100を実装基板に実装することができる。図24は、半導体装置100の実装を説明する図である。
【0065】
図24に示すように、実装基板200の上面の配線層には、パッド210が形成されており、パッド210は、ソルダーレジスト層220の開口部から露出している。半導体装置100を実装基板200に実装する際には、半導体装置100のリード121及び放熱板122と実装基板200のパッド210との位置合わせを行い、はんだ230によって、リード121及び放熱板122とパッド210とが接合される。このとき、リード121の下面の端部には、溝部121bによる段差があるため、はんだ230の濡れ広がりが促進され、はんだ230のフィレットがリード121の側面121aを被覆する。結果として、半導体装置100が実装基板200に強固に接合され、接続の信頼性を向上することができる。図24に示す状態では、ICチップ140が発する熱は、封止樹脂102を介して放熱板122へ伝導し、放熱板122からはんだ230及びパッド210を経由して放熱される。すなわち、ICチップ140の表面積の大部分から、効率的に放熱することができる。
【0066】
以上のように、本実施の形態によれば、接続部材で接続される配線基板とリードフレームの間にICチップを実装し、ICチップと対向する位置にリードフレームの放熱板を配置し、配線基板とリードフレームの間の空間に封止樹脂を充填する。そして、リードフレームのリードを封止樹脂から露出させて、外部接続のための端子とする。このため、ICチップで発する熱が、ICチップの周囲の封止樹脂を介して放熱板へ伝導し、放熱板から放熱される。結果として、半導体装置の放熱効率を向上することができる。
【0067】
なお、上記一実施の形態においては、配線基板110の上面に電子部品103を実装するものとしたが、配線基板110の上面への電子部品103の実装は省略されても良い。すなわち、例えば図25に示すように、半導体装置100は、配線基板110の上面には電子部品を有さず、配線基板110とリードフレーム120の間に、封止樹脂102によって封止されたICチップ140及び電子部品150を有するのみであっても良い。また、配線基板110の上面に電子部品103が実装される場合でも、封止樹脂101による封止が省略されても良い。この場合には、半導体装置100は、配線基板110の上面に実装され、露出する電子部品103を有することになる。
【0068】
また、上記一実施の形態においては、接続部材130が例えば銅コアを有するはんだボールであり、コア131が略球状であるものとしたが、接続部材130の形状は任意のもので良い。具体的には、例えば図26に示すように、円柱状又は角柱状の接続部材135が、はんだ136によって配線基板110の下面パッド115及びリードフレーム120のめっき層124に接合されても良い。接続部材135を円柱状又は角柱状にすることにより、接続部材135の上下それぞれの端面が下面パッド115及びめっき層124に接合され、接合面積を大きくして信頼性を向上することができる。
【0069】
さらに、上記一実施の形態においては、配線基板110とリードフレーム120の間の空間に封止樹脂102を充填するものとしたが、例えば、図27に示すように、発熱量が大きいICチップ140と放熱板122の間の空間にTIM(Thermal Interface Material)105を配置し、配線基板110とリードフレーム120の間の空間には通常の封止樹脂106を充填しても良い。TIM105としては、例えばエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の絶縁性樹脂中に、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素等のフィラーや、銀等の金属フィラーを含有させたものを用いることができ、封止樹脂106としては、封止樹脂101と同様の樹脂を用いることができる。
【0070】
また、上記一実施の形態においては、配線基板110の下面にICチップ140を実装するものとしたが、リードフレーム120の上面にICチップ140を実装することも可能である。この場合、例えば図28に示すように、ICチップ140の実装位置には、リード126が形成される。そして、リード126の上面には、めっき層124と同様のめっき層127が形成され、ICチップ140は、はんだバンプ143によってめっき層127にフリップチップ接続される。封止樹脂102に接触するリード126の表面には酸化膜125が形成され、封止樹脂102から露出するリード126の下面にはめっき層123が形成されるのは、リード121と同様である。この構成においては、ICチップ140が発する熱は、はんだバンプ143、めっき層127及びリード126を介して放熱される。また、ICチップ140のみではなく、電子部品150をリードフレーム120の上面に実装することも可能である。
【0071】
(他の実施の形態)
(1)めっき層
上記一実施の形態においては、リードフレーム120にめっき層124を形成し、めっき層124の周囲に酸化膜125を形成することにより、リードフレーム120と接続部材130との位置合わせを正確にするものとした。しかしながら、酸化膜125がフラックスの活性力を低下させるため、めっき層124がなくてもはんだ132の濡れ広がりを制御して、接続部材130の位置合わせを正確にすることが可能である。ここでは、めっき層124を有さないリードフレーム120の製造方法について、図29を参照しながら説明する。
【0072】
上記一実施の形態と同様に、リードフレーム120の製造には、例えば厚さ50~200μm程度の銅又は銅合金の金属板を用いることができる。図29(a)に示すように、金属板のエッチング加工又はプレス加工により、リード121及び放熱板122が形成される。そして、図29(b)に示すように、リードフレーム120の陽極酸化処理により、リード121及び放熱板122の表面に酸化膜125が形成される。すなわち、リード121及び放熱板122の全表面に酸化膜125が形成される。
【0073】
図29(c)に示すように、リード121の接続部材130と接合される位置125aにおいて、酸化膜125が除去される。酸化膜125の除去は、例えばレーザ加工やブラスト加工などによって行うことが可能である。酸化膜125の除去により、位置125aにおいては、リードフレーム120の基材が露出する。そして、図29(d)に示すように、位置125aに接続部材130が搭載されリフロー処理される。このとき、位置125aに塗布されたフラックスが周囲の酸化膜125へ流出すると、酸化膜125が還元してフラックスの活性力が低下する。このため、接続部材130のはんだ132は、位置125aの周囲には濡れ広がらず、接続部材130の位置合わせを正確にすることができる。
【0074】
このように、リード121にめっき層124を形成しない場合でも、酸化膜125を利用することにより、リードフレーム120と接続部材130の位置合わせを正確にすることができる。また、めっき層124の形成工程を省略することができるため、リードフレーム120の製造工程を簡略化することができる。
【0075】
(2)アンダーフィル材
上記一実施の形態においては、配線基板110の下面とICチップ140との間にアンダーフィル材142が充填されるものとしたが、アンダーフィル材142は、必ずしも充填されなくても良い。具体的には、例えば図30に示すように、はんだバンプ141によって配線基板110の下面にフリップチップ接続されたICチップ140と、配線基板110の下面との間には、アンダーフィル材が充填されなくても良い。ICチップ140が実装される配線基板110とリードフレーム120との間の空間には、封止樹脂102が充填されるため、アンダーフィル材の充填が省略されても、ICチップ140と配線基板110との間の空間にも封止樹脂102が充填される。この結果、ICチップ140が配線基板110から脱落することなどはなく、ICチップ140の接続信頼性が低下することはない。
【0076】
アンダーフィル材の充填を省略することにより、半導体装置100の製造工程を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。また、ICチップ140の周囲にアンダーフィル材が広がることがないため、配線基板110の下面においてICチップ140を搭載するための領域の面積を小さくすることができ、配線基板110の面を有効に活用することができる。すなわち、狭い範囲により多くの電子部品を実装することが可能となり、半導体装置100を小型化することができるとともに、設計の自由度を向上させることができる。
【0077】
なお、ここではICチップ140の実装時にアンダーフィル材の充填を省略する場合について説明したが、ICチップ140以外にも例えばフリップチップ接続によって配線基板110に実装される電子部品と配線基板110との間へのアンダーフィル材の充填が省略されても良い。また、配線基板110の上面に実装される電子部品についても、封止樹脂101によって被覆されるため、アンダーフィル材の充填を省略することが可能である。
【0078】
アンダーフィル材の充填が省略される場合も、例えば、図31に示すように、ICチップ140と放熱板122との間に挟持されるTIM105を配置し、配線基板110とリードフレーム120の間の空間には通常の封止樹脂106を充填しても良い。これにより、発熱量が大きいICチップ140が発する熱がTIM105を介して放熱板122へ伝達され、効率的な放熱が可能となる。このとき、放熱板122の上面のTIM105に対応する位置には、めっき層128が形成されても良い。めっき層128は、例えば銀(Ag)めっきなどの貴金属めっきによって形成される。すなわち、めっき層128は、めっき層124と同様のめっきによって形成される。
【0079】
めっき層128の表面は、周囲の酸化膜125の表面と比較して粗化度が低く平坦であるため、TIM105がめっき層128に接触することにより、酸化膜125に接触する場合と比べて、TIM105の厚さを均一にすることができる。この結果、ICチップ140と放熱板122との間に配置されるTIM105の厚さが均一になり、ICチップ140から発する熱を効率良く放熱板122へ伝導させることができる。
【0080】
めっき層128は、リード121の上面にめっき層124が形成される際に、同時に形成されるようにしても良い。すなわち、下面パッド115cに対向する位置にめっき層124が形成されるのと同時に、ICチップ140に対向する位置にめっき層128が形成されるようにしても良い。そして、TIM105は、ディスペンス又は印刷などによりICチップ140の背面に塗布された半硬化状態の高熱伝導樹脂が、配線基板110とリードフレーム120が接合される際に硬化することにより形成される。なお、TIM105の材料となる高熱伝導樹脂は、ICチップ140の背面に塗布される代わりに、めっき層128の表面に塗布されても良い。
【0081】
(3)リードフレーム外縁の段差
上記一実施の形態においては、リードフレーム120の下面の端部に段差が形成されるものとしたが、段差は、端部以外の部分にも形成されて良い。具体的には、例えば図32に示すように、各リード121及び放熱板122の周囲に段差面129が形成されるようにしても良い。こうすることにより、リード121及び放熱板122の段差面129よりも下方に封止樹脂102が充填されて、段差面129が封止樹脂102によって被覆される。この結果、リードフレーム120が半導体装置100に強固に接合されてリードフレーム120の脱落等を防止することができる。ここでは、リード121及び放熱板122の周囲に段差面129が形成されるリードフレーム120の製造方法について説明する。
【0082】
上記一実施の形態と同様に、リードフレーム120の製造には、例えば厚さ50~200μm程度の銅又は銅合金の金属板を用いることができる。図33に示すように、金属板200の上面及び下面にエッチングレジストが形成される。すなわち、金属板200の上面にはエッチングレジスト210が形成され、下面にはエッチングレジスト220が形成される。これらのエッチングレジスト210、220は、リード121及び放熱板122として残す位置に形成される。すなわち、金属板200のリード121又は放熱板122として残らない部分には、エッチングレジストの空隙が形成される。具体的には、金属板200の上面では空隙210aが形成され、下面では空隙220aが形成される。ここで、下面の空隙220aは、上面の空隙210aよりも幅が広い。
【0083】
このようなエッチングレジストが形成された金属板200をエッチング液に浸漬することにより、空隙210a、220aにおいて露出する金属板200が表面から溶解し、例えば図34に示すように、リード121と放熱板122とが分離したリードフレーム120が形成される。そして、上面の空隙210aよりも下面の空隙220aを幅広としたため、下面の空隙220aのうち上面の空隙210aと重複する領域では、金属板200が上面及び下面から溶解され、リード121及び放熱板122とが完全に分離する。一方、下面の空隙220aのうち上面の空隙210aと重複しない領域では、金属板200が下面のみから溶解され、段差面129が形成される。
【0084】
このように、金属板200の上面及び下面に幅が異なるエッチングレジストを形成し、エッチング液に浸漬することにより、リード121及び放熱板122の外縁に段差面129を有するリードフレームを形成することができる。すなわち、例えば図35に示すように、リード121及び放熱板122の斜線で示す外縁部に段差面129を形成することができる。そして、段差面129を有するリードフレーム120が配線基板110に接合され、配線基板110とリードフレーム120との間の空間に封止樹脂102が充填される際、封止樹脂102が段差面129の下方にも充填されてリードフレーム120を支持し、半導体装置100からリードフレーム120が脱落することを防止することができる。
【符号の説明】
【0085】
101、102、106 封止樹脂
103、150 電子部品
110 配線基板
111 基板
112 ソルダーレジスト層
113 上面パッド
114 保護絶縁層
115、115a、115b、115c 下面パッド
120 リードフレーム
121、126 リード
122 放熱板
123、124、127、128 めっき層
125 酸化膜
129 段差面
130、135 接続部材
140 ICチップ
141 はんだバンプ
142 アンダーフィル材
図1
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