(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】樹脂組成物、その硬化物、繊維強化プラスチック及び繊維強化プラスチックの難燃化方法
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240401BHJP
C08L 79/04 20060101ALI20240401BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20240401BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20240401BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08L79/04
C08K5/5313
C08G59/50
C08J5/24 CFC
(21)【出願番号】P 2020528830
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2019025651
(87)【国際公開番号】W WO2020009001
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018127672
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲留 将人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直博
(72)【発明者】
【氏名】森野 一英
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 千裕
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038603(WO,A1)
【文献】特開2018-044069(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121750(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152839(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/025904(WO,A1)
【文献】特開2006-291098(JP,A)
【文献】特開2011-052165(JP,A)
【文献】特開2000-080251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物と強化繊維を含有する繊維強化プラスチック用組成物であって、
前記樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)シアネート樹脂、(C)25℃で液状の芳香族アミン系硬化剤、及び(D)下記式(1)で表される含リン化合物を含有し、
エポキシ樹脂は下記の式(I)で表される化合物又はグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物を含有し、
シアネート樹脂100質量部に対し、式(1)で表される含リン化合物を20~100質量部含有する、繊維強化プラスチック用組成物。
【化1】
式(1)中、mは2の整数を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、
R
3は下記式(2-1)
で表される基を表し、
Xは酸素原子を表し、
Yは、酸素原子を表す。
【化2】
式(2-1)中、R
7は水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基を表し、
*は結合手を表す
。
【化3】
式(I)中、a及びbは、それぞれ独立に2~10の整数を表し、
cは0~3の整数を表し、
R
11
及びR
12
は、それぞれ独立に、炭素数が2~5の2価の炭化水素基を表し、
R
13
は単結合、メチレン基又は-C(CH
3
)
2
-を表す。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジグリシジルエーテルを20~80質量%含む、請求項1に記載の繊維強化プラスチック用組成物。
【請求項3】
(D)式(1)で表される含リン化合物の含有量が、(A)エポキシ樹脂、(B)シアネート樹脂、(C)25℃で液状の芳香族アミン系硬化剤及び(D)上記式(1)で表される含リン化合物の総固形分中、該含リン化合物に起因するリン含有量が0.1~5質量%となる量である、請求項1又は2に記載の繊維強化プラスチック用組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の繊維強化プラスチック用組成物を硬化させてなる、繊維強化プラスチック。
【請求項5】
請求項1~3の何れか一項に記載の繊維強化プラスチック用組成物を硬化させる、繊維強化プラスチックの難燃化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として好適に使用される樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、該樹脂組成物を用いて製造した繊維強化プラスチック、及び該樹脂組成物を用いた繊維強化プラスチックの難燃化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂を含有する樹脂組成物を用いることが知られている。例えば、本出願人は、先に、特定の構造を有するエポキシ樹脂と、シアネート樹脂と、25℃で液状の芳香族アミン系硬化剤を含有する繊維強化プラスチック用樹脂組成物を提案した(特許文献1参照)。この繊維強化プラスチック用樹脂組成物によれば、耐熱性に優れ、伸び変位が高く、かつ可撓性が良好な硬化物が得られる。
【0003】
一方、繊維強化プラスチック用樹脂組成物に用いられる難燃剤として、臭素系難燃剤及び塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を用いることが知られている(特許文献2参照)。また、本出願人は、先に、エポキシ樹脂と、特定の構造を有する含リン化合物とを含有するエポキシ樹脂組成物を提案した(特許文献3参照)。このエポキシ樹脂組成物によれば、良好な難燃性を有する硬化物が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/038603号
【文献】特開2009-74019号公報
【文献】国際公開第2016/121750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の樹脂組成物の硬化物は難燃性に関し改善の余地があった。
【0006】
特許文献2に記載の技術に関しては、ハロゲン系難燃剤を含有する繊維強化プラスチックは燃焼時に有害なハロゲン化水素ガスを発生するために環境負荷が大きく、環境面に問題があった。また、本技術分野で従来使用されているリン系難燃剤では、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂を含有する樹脂組成物に対して十分な難燃性を付与することができなかった。
【0007】
特許文献3に記載の技術によれば、良好な難燃性を有する硬化物が得られる。しかし同文献には、特定の構造を有する含リン化合物を、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂を含有する樹脂組成物に対して使用することは記載されていない。また該含リン化合物を使用することによって硬化物に良好な難燃性を付与することは同文献に記載されていない。
【0008】
したがって、本発明の課題は、環境適性に優れ、高強度であり、かつ難燃性が良好な硬化物が得られ、繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として好適に使用される樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上述の課題を解決するために鋭意検討した。その結果、エポキシ樹脂と、シアネート樹脂と、液状の芳香族アミン系硬化剤と、特定の含リン化合物を組合わせることにより上記課題を解決することができることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)シアネート樹脂、(C)25℃で液状の芳香族アミン系硬化剤、及び(D)下記式(1)で表される含リン化合物を含有する樹脂組成物に関する。
【0011】
【0012】
(式(1)中、mは1~10の整数を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は-NR4R5を表し、
R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R1及びR2が共に-NR4R5である場合、R4同士は同一であるか又は異なっており、R5同士は同一であるか又は異なっており、
R3は炭化水素基を表し、該炭化水素基は、酸素、硫黄、リン及び窒素からなる群から選ばれる原子を含んでいてもよく、
Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、
Yは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR6-を表し、
R6は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、環境適性に優れ、高強度であり、かつ難燃性が良好な硬化物が得られる、繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として好適な樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の樹脂組成物について説明する。発明の樹脂組成物はエポキシ樹脂を含有する。本発明の樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2つ以上有する公知のエポキシ樹脂を特に制限なく使用することができ、その分子構造及び分子量等に特に制限はない。樹脂組成物の用途に応じ、公知のエポキシ樹脂の中から適宜選択することが好ましい。
【0015】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂及びテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノールや水添ビスフェノールA等から得られる脂環式エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物であるエポキシ化物、及びビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)-2-メチルアニリン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン及びN,N,N’,N’-テトラ(2,3-エポキシプロピル)-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;並びにビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート及びビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物等が挙げられる。上記したエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の樹脂組成物においては、エポキシ樹脂が下記の式(I)で表される化合物を含有することが好ましい。式(I)で表される化合物を含有するエポキシ樹脂を用いることで、伸び変位が大きく柔軟性に富んだ物性の硬化物が得られ、本発明の樹脂組成物と繊維材料と組合わせた場合に、繊維の伸びに追従することができ、これによって、強度が高い繊維強化プラスチックを得ることができる。
【0017】
【0018】
式(I)中、a及びbは、それぞれ独立に2~10の整数を表し、
cは0~3の整数を表し、
R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素数が2~5の2価の炭化水素基を表し、
R3は単結合、メチレン基又は-C(CH3)2-を表す。
【0019】
R11及びR12で表される炭素数が2~5の2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン基、1,2-プロピレン基及び1,3-プロピレン基等のプロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基及び1,4-ブチレン基等のブチレン基並びに1,5-ペンチレン基等のペンチレン基等を含む炭素数が2~5のアルキレン基等が挙げられる。
【0020】
本発明の樹脂組成物においては、式(I)中のa及びbが、硬化物の架橋密度の観点から、それぞれ独立に3~7の数であることが好ましく、4~6の数であることがより好ましい。a及びbが上述の範囲であると、柔軟性及び強度が良好な硬化物が得られる。エポキシ樹脂が、a及び/又はbが異なる2種以上の式(I)で表される化合物を含む場合、a及びbは、2種以上の式(I)で表される化合物における平均値とする。
【0021】
本発明の樹脂組成物においては、式(I)中のcが0~2の数であることが好ましく、0~1の数であることがより好ましい。cが上述の範囲であると、樹脂の粘度の上昇が抑制され、その結果、樹脂組成物の作業性が良好になる。cの値が異なる2種以上の式(I)で表される化合物をエポキシ樹脂が含む場合、cは、2種以上の式(I)で表される化合物における平均値とする。式(I)で表される化合物におけるcは、上述した、a及びbを決定する方法と同じ方法で決定することができる。
【0022】
本発明の樹脂組成物においては、式(I)中のR11及びR12は、原料の入手が容易である観点から、それぞれ独立に、炭素数が2~4の2価の炭化水素基であることが好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物におけるエポキシ樹脂は、式(I)中のR13が-C(CH3)2-である化合物を含有すること、すなわち、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジグリシジルエーテルを含有することが好ましい。ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジグリシジルエーテルを含有することで、伸び変位が大きく、耐熱性、可撓性が良好な硬化物を得ることができる。エポキシ樹脂における該ジグリシジルエーテルの含有量は、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~60質量%が特に好ましい。前記ジグリシジルエーテルの含有量を上述の範囲とすることで、硬化性に優れ、耐熱性、可撓性のバランスが良好な硬化物を得ることができる。
【0024】
式(I)で表される化合物の製造方法は公知の方法で製造することができる。例えば、国際公開第2017/038603号に記載の方法により製造することができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物はシアネート樹脂を含有する。シアネート樹脂は、その分子構造及び分子量等に特に制限はなく、公知のシアネート樹脂を使用することができる。具体的には、ノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂が挙げられる。
【0026】
本発明においては、シアネート樹脂が、分子中にシアネート基(OCN)を少なくとも2個有することが好ましい。具体的には、下記式(4-1)又は(4-2)で表される化合物、及びこれらのプレポリマーを用いることが好ましい。
【0027】
【0028】
式(4-1)中のRaは2価の炭化水素基を表し、
Rb及びRcは、それぞれ独立に、フェニレン基を表し、該フェニレン基は1~4個のアルキル基で置換されていてもよい。
【0029】
【0030】
式(4-2)中、n1は1~10の整数を表し、
Rdは水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基を表す。
【0031】
式(4-1)中のRaで表される2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、エタンジイル基、オクタンジイル基等のアルカンジイル基;及び下記の式(5-1)~(5-8)で表される基が挙げられる。
【0032】
式(4-1)中のRb及びRcで表されるフェニレン基を置換する場合があるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基及びデシル基等の炭素数1~10のアルキルが挙げられる。
【0033】
式(4-2)中のRdで表される炭素数が1~4のアルキル基としては、上述の炭素数1~10のアルキルとして例示した基のうちの炭素数が1~4のものが挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂組成物においては、シアネート樹脂が式(4-1)で表される化合物を含有することが、作業性の観点からより好ましく、式(4-1)で表される化合物が下記の式(4-3)であることが更に好ましい。
【0035】
【0036】
式(4-3)中、Reは単結合、メチレン基、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-及び下記式(5-1)~(5-8)からなる群から選択される基を表し、
Rf、Rg、Rh及びRiは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基を表す。
【0037】
【0038】
式(5-3)中、m1は4~12の整数を表し、
式(5-1)~(5-8)中、*は結合手を表す。
【0039】
本発明の樹脂組成物においては、シアネート樹脂として、上述のシアネート化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明の樹脂組成物におけるシアネート樹脂の含有量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対し、10~200質量部であることが好ましく、30~150質量部であることがより好ましく、50~120質量部であることが特に好ましい。シアネート樹脂の含有量が上述の範囲である樹脂組成物によれば、強度及び基材に対する密着性が良好な硬化物が得られる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、25℃で液状の芳香族アミン系硬化剤を含有する。該芳香族アミン系硬化剤を含有することによって、本発明の樹脂組成物の硬化物が高強度なものとなる。該芳香族アミン系硬化剤としては、25℃で液状であり、かつ芳香環に直接アミノ基が備わっている化合物であれば特に制限なく用いることができる。前記芳香族アミン系硬化剤の具体例としては、芳香族ジアミン化合物等が挙げられる。芳香族ジアミン化合物としては、例えば、ジアミノジメチルジフェニルメタン及びジアミノジエチルジフェニルメタンなどのジフェニルメタン類;ジアミノジエチルトルエン、1-メチル-3、5-ビス(メチルチオ)-2、4-ベンゼンジアミン及び1-メチル-3、5-ビス(メチルチオ)-2、6-ベンゼンジアミンなどのジアミノベンゼン類等が挙げられる。本発明の樹脂組成物においては、上述の芳香族アミン系硬化剤の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0042】
特に本発明の樹脂組成物においては、入手が容易であり、また硬化物の諸物性に優れるという観点から、前記芳香族ジアミン化合物としてジフェニルメタン類を用いることが好ましく、ジアミノジエチルジフェニルメタンを用いることが一層好ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物における25℃で液状の芳香族アミン系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、40~90質量部であることが好ましい。該芳香族アミン系硬化剤の含有量を上述の範囲とすることで、樹脂組成物を効率よく硬化させることができ、優れた物性を有する硬化物を得ることができる。
【0044】
本発明の樹脂組成物は下記式(1)で表される含リン化合物を含有する。式(1)で表される含リン化合物は、エポキシ基との反応性を有し、難燃剤として用いられるものである。式(1)で表される含リン化合物を含有する本発明の樹脂組成物によれば、高強度であり、かつ難燃性が良好な硬化物を得ることができる。
【0045】
【0046】
式(1)中、mは1~10の整数を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は-NR4R5を表し、
R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R1及びR2が共に-NR4R5である場合、R4同士は同一であるか又は異なっており、R5同士は同一であるか又は異なっており、
R3は炭化水素基を表し、該炭化水素基は、酸素、硫黄、リン及び窒素からなる群から選ばれる原子を含んでいてもよく、
Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、
Yは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR6-を表し、
R6は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
【0047】
式(1)中のR1、R2、R4、R5及びR6で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基及びデシル基等の炭素数1~10のアルキルが挙げられる。本発明の樹脂組成物においては、エポキシ樹脂との反応性の観点から、R1、R2、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数が2~5のアルキル基であることがより好ましく、エチル基又はプロピル基であることが特に好ましい。
【0048】
式(1)中のR1、R2、R4、R5及びR6で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の炭素数6~12のアリール基等が挙げられる。
【0049】
式(1)中のR1、R2、R4、R5及びR6で表されるアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、水酸基、メルカプト基、ニトリル基、カルボキシル基及びハロゲン原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。
【0050】
前記式(1)中のR3で表される炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メチレン基、エチレン基、プロピレン基、エタンジイル基、オクタンジイル基等のアルカンジイル基;メチレントリイル、1,1,3-エチレントリイル基等のアルカントリイル基;1,1,2,2-エチレントリイル等のアルカンテトライル基;及び、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホニルビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の、多核多価フェノール化合物の芳香族基が挙げられる。
【0051】
式(1)中のR3で表される炭化水素基は、酸素、硫黄、リン及び窒素からなる群から選ばれる原子を含んでいてもよい。本発明において「酸素、硫黄、リン及び窒素からなる群から選ばれる原子を含んでいてもよい」とは、炭化水素基中の水素原子が、酸素、硫黄、リン及び/又は窒素を含む置換基で置換されているか、或いは、炭化水素基中のメチレン基が酸素、硫黄、リン及び/又は窒素を有する基で置換されていることを意味する。
【0052】
炭化水素基中の水素原子を置換する酸素、硫黄、リン及び/又は窒素を含む基としては、例えば、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基を挙げることができる。
【0053】
炭化水素基中のメチレン基を置換する酸素、硫黄、リン及び/又は窒素を有する基としては、例えば、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-COS-、-OCS-、-SO2-、-SO3-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-SO2NH-、-NH-SO2-、-N=CH-等が挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物においては、式(1)中のmが1~7であることが好ましく、2~5であることがより好ましく、mが2であることが特に好ましい。mが上述の範囲であると、ガラス転移温度や強度等の物性が良好な硬化物が得られ、かつ式(1)で表される含リン化合物の製造が容易となるからである。
【0055】
本発明の樹脂組成物においては、エポキシ樹脂との反応性及び硬化物の難燃性の観点から、式(1)中のR1がアルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。また、同様の観点から、R2がアルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0056】
本発明の樹脂組成物においては、入手及び製造の容易性の観点から、式(1)中のX及びYが酸素原子であることが好ましい。
【0057】
本発明の樹脂組成物においては、エポキシ樹脂との反応性の観点から、式(1)中のR3で表される炭化水素基が芳香環を少なくとも1個有することが好ましい。
【0058】
本発明の樹脂組成物においては、エポキシ樹脂との反応性、硬化物の難燃性及び物性の観点から、式(1)中のmが2であり、R3で表される炭化水素基が下記式(2-1)、(2-2)及び(2-4)~(2-6)からなる群から選択される基であることが好ましい。
【0059】
【0060】
式(2-1)中、R7は水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基を表し、
*は結合手を表す。
【0061】
【0062】
式(2-2)中、nは0~3の整数を表し、
oは0~50の整数を表し、
R8は水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基を表し、
R9は炭化水素基を表し、該炭化水素基は酸素原子又は硫黄原子を含んでいてもよく、
Zは水酸基又は下記式(2-3)で表される基を表し、
*は結合手を表す。
【0063】
【0064】
式(2-3)中のR1’及びR2’は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は-NR4’R5’を表し、
R4’及びR5’は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R1’及びR2’が共に-NR4’R5’である場合、R4’同士は同一であるか又は異なっており、R5’同士は同一であるか又は異なっており、
R3’は炭化水素基を表し、該炭化水素基は、酸素、硫黄、リン及び窒素からなる群から選ばれる原子を含んでいてもよく、
X’は酸素原子又は硫黄原子を表し、
Y’は、酸素原子、硫黄原子、又は-NR6’-を表し、
R6’は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、
*は結合手を表す。
【0065】
【0066】
式(2-4)中の*は結合手を表す。
【0067】
【0068】
式(2-5)中の*は結合手を表す。
【0069】
【0070】
式(2-6)中の*は結合手を表す。
【0071】
式(2-1)中のR7で表される炭素数1~4のアルキル基としては、R1等で表されるアルキル基として例示した基のうちの炭素数が1~4のものが挙げられる。
【0072】
式(2-2)中のR8で表される炭素数1~4のアルキル基としては、R1等で表される炭素数が1~4のアルキル基として例示した基のうちの炭素数が1~4のものが挙げられる。
式(2-2)中のR9で表される炭化水素基としては、R3で表される2価の炭化水素基として例示したものが挙げられる。
【0073】
式(2-3)中のR1’、R2’、R4’、R5’及びR6’で表されるアルキル基としては、R1等で表されるアルキル基として例示した基が挙げられる。
式(2-3)中のR1’、R2’、R4’、R5’及びR6’で表されるアリール基としては、R1等で表されるアリール基として例示したものが挙げられる。
【0074】
本発明の樹脂組成物においては、式(1)中のR
3で表される炭化水素基が、硬化物の難燃性の観点から、式(2-1)で表される基であることが特に好ましい。R
3で表される炭化水素基が式(2-1)で表される基である場合、式(2-1)中のR
7は水素原子又はメチル基であることが好ましい。また、式(1)中のR
1及びR
2が、それぞれ独立に、エチル基又はプロピル基であることが好ましい。具体的には、本発明の樹脂組成物に好適に使用される式(1)で表される化合物として、例えば下記の式(3-1)で表される含リン化合物が挙げられる。
【化14】
【0075】
また、本発明の樹脂組成物においては、式(1)中のR3で表される炭化水素基が、硬化物の難燃性の観点から、式(2-2)で表される基であることも特に好ましい。R3で表される炭化水素基が式(2-2)で表される基である場合、式(2-2)中のnは0又は1であることが好ましい。式(2-2)中のoは0~5の整数、特に0であることが好ましい。式(2-2)中のR8は水素原子又はメチル基であることが好ましい。式(2-2)中のR9が下記の式(a)で表される基であることが好ましい。式(a)で表される基の具体例としては、例えば、メチレン基、エタンジイル基又はプロパンジイル基等が挙げられる。R9は結合手に対してpara位に位置することが好ましい。また、式(1)中のR1及びR2が、それぞれ独立に、エチル基又はプロピル基であることが好ましい。具体的には、本発明の樹脂組成物に好適に使用される式(1)で表される化合物として、例えば下記の式(3-2)~(3-4)で表される含リン化合物が挙げられる。
【0076】
【0077】
式(a)中、Aは炭素原子数1~3の直鎖のアルキレン基を表し、
Ra及びRbは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
*は結合手を表す。
【0078】
Aで表される炭素原子数1~3の直鎖のアルキレン基としては、-(CH2)n1-(n1は1~3の整数を表す)が挙げられる。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
式(3-4)中のpは1~5の整数を表す。
【0083】
式(1)で表される含リン化合物は公知の方法、例えば、国際公開第2016/121750号に記載の方法で製造することができる。
【0084】
本発明のエポキシ樹脂組成物における式(1)で表される含リン化合物の含有量は、特に限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、25℃で液状の芳香族アミン系硬化剤及び式(1)で表される含リン化合物の総固形分における、前記含リン化合物に起因するリン含有量が0.1~5質量%となる量であることが好ましく、0.5~5質量%となる量であることがより好ましく、1.5~5質量%となる量であることが更に好ましく、1.5~4.5質量%となる量であることが特に好ましく、1.5~2.5質量%となる量であることが最も好ましい。式(1)で表される含リン化合物の含有量が上述の範囲とすることによって、得られる硬化物の難燃性及び耐水性が良好となる。
【0085】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂100質量部に対する式(1)で表される含リン化合物の配合割合が、難燃性、物性のバランスの観点から、1~300質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましく、20~100質量部であることが特に好ましい。また、シアネート化合物100質量部に対する式(1)で表される含リン化合物の配合割合が、1~300質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましく、20~100質量部であることが特に好ましい。
【0086】
本発明の樹脂組成物は、式(1)で表される含リン化合物以外の難燃剤を含有していてもよい。そのような難燃剤としては、例えば、式(1)で表される含リン化合物以外の含リン化合物、含窒素化合物及び含ホウ素化合物などが挙げられる。
【0087】
式(1)で表される含リン化合物以外の含リン化合物としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート及びトリブトキシエチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート及びオクチルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル;レゾルシノールポリフェニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(2,6-ジメチルフェニルホスフェート)、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェート及びこれらの縮合物等の縮合リン酸エステル;リン酸アンモニウム及びリン酸メラミン等のリン酸塩;ポリリン酸アンモニウム及びポリリン酸メラミン等の縮合リン酸塩;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、トリホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、トリホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン及びテトラホスフィン酸チタニル等のホスフィン酸の金属塩;ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル及び9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキシド(以下HCAと表記する)等のホスフィン酸エステル;HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、及びHCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物;ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド系化合物;ヘキサフェニルシクロトリフォスファゼン等のフォスファゼン誘導体;並びに赤リン等が挙げられる。これらの含リン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0088】
上記(D)成分以外の含リン化合物としては、市販品を用いることもできる。例えばリン含有フェノキシ樹脂(例えば、新日鐵化学(株)製のフェノトートERF-001M30及びTX-0924K30等)、水酸基含有リン酸エステル(例えば、大八化学工業(株)製のDAIGUARD-580及びDAIGUARD-610等)、HCA誘導体(例えば、三光(株)製のHCA-HQ、M-Ester及びME-P8等)、Exolit OP930、Exolit OP935並びにExolit OP1230(何れもクラリアントジャパン(株)製)等が既に上市されている。
【0089】
上記含窒素化合物としては、窒化珪素、窒化アルミ、トリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸の塩を形成する化合物が挙げられる。トリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸の塩とは、トリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸との付加物であり、通常は1対1(モル比)、場合により2対1(モル比)の組成を有する付加物である。トリアジン系化合物のうち、シアヌール酸又はイソシアヌール酸と塩を形成しないものは除外される。これらの含窒素化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0090】
上記トリアジン系化合物の例としては、メラミン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン及び2-アミド-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0091】
上記含ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸(オルトホウ酸及びメタホウ酸等)、ホウ酸塩(四ホウ酸ナトリウム等のアルカリ金属ホウ酸塩、メタホウ酸バリウム等のアルカリ土類金属塩及びホウ酸亜鉛などの遷移金属塩等)、縮合ホウ酸(塩)(ピロホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸又はこれらの金属塩など)並びに窒化ホウ素等が挙げられる。これらの含ホウ素化合物は、含水物(例えば、含水四ホウ酸ナトリウムであるホウ砂など)であってもよい。これらの含ホウ素化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0092】
ところで、一般的な難燃剤としては、上記に挙げた難燃剤以外のものとして、ハロゲン系難燃剤が知られている。ハロゲン系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2-ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロム化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物等のテトラブロモビスフェノールA誘導体;デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、2,3-ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル、1,2-ビス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、ペンタブロモベンジルアクリレート(モノマー)等の臭素系芳香族化合物;塩素化パラフィン;塩素化ナフタレン;トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステルなどが挙げられる。
【0093】
上記ハロゲン系難燃剤は、難燃性においては、式(I)で表される含リン化合物の代替として、エポキシ樹脂組成物の難燃性を向上させるためには十分な材料であると考えられる。しかし、これらのハロゲン系難燃剤を使用した繊維強化プラスチックは、硬化時にブリードしてしまうという問題があり、更には、火災若しくは使用後の廃棄処理などで、有毒なガスを発生させることが知られている。したがって、硬化時のブリード防止の観点及び環境適性の観点から、本発明の樹脂組成物は上記ハロゲン系難燃剤を含有しないことが好ましい。
同様の理由により、本発明の樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤と併用される三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を含有しないことが好ましい。
【0094】
本発明の樹脂組成物は、更に、活性エネルギー線吸収性成分を含有することが好ましい。本発明において活性エネルギー線吸収性成分とは、活性エネルギー線を吸収し、熱エネルギーを放出することができる成分を意味する。活性エネルギー線吸収性成分から放出された熱エネルギーにより樹脂組成物を硬化させることができる。活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線等)、マイクロ波、高周波等が挙げられる。
【0095】
本発明の樹脂組成物は、加熱により硬化させることができる。本発明の樹脂組成物が更に活性エネルギー線吸収性成分を含有する場合には、活性エネルギー線を照射することによっても硬化させることができる。それによって、樹脂組成物の硬化時間をより短くすることができる。硬化時間が短くなることにより、作業時間が短くなる。また、加熱硬化する場合と比べて少ないエネルギーで硬化するため経済的であり、かつ環境の面でも有利である。
【0096】
活性エネルギー線吸収性成分としては、繊維と繊維の間に樹脂組成物を浸透させる観点から、25℃で液状のもの、又は、他の材料と混合したときに相溶化して液状となるものが好ましい。そのような化合物としては、例えばアニリンブラック、金属錯体、スクエア酸誘導体、インモニウム染料、ポリメチン、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ペリレン系化合物、クオテリレン系化合物及びニグロシン系化合物等が挙げられる。本発明の樹脂組成物においては、容易に入手が可能であるという点から、活性エネルギー線吸収性成分として、ニグロシン系化合物を用いることが好ましい。
【0097】
上記ニグロシン系化合物としては、例えば、ニグロシン塩及びニグロシン誘導体等のニグロシン化合物が挙げられる。ニグロシン系化合物として市販品を用いることができる。市販されているニグロシン系化合物としては、オリエント化学工業(株)製の、BONASORBシリーズ、eBIND ACWシリーズ、eBIND LTWシリーズ、eBIND LAWシリーズ、ORIENT NIGROSINEシリーズ、NUBIAN BLACKシリーズ等が挙げられる。本発明においては、これらのニグロシン系化合物の中でも、安価で入手が容易であるという点で、NUBIAN BLACKシリーズを使用することが好ましい。これらのニグロシン系化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0098】
本発明の樹脂組成物における活性エネルギー線吸収性成分の含有量は、樹脂組成物中、0.001~1質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましく、0.05~0.2質量%が更に好ましい。活性エネルギー線吸収性成分の含有量を上述の範囲とすることで、樹脂組成物の硬化速度と発熱(組成物の焦げ付き)とのバランスが良好になり、結果、樹脂組成物の硬化性が良好になる。
【0099】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、本発明が属する技術分野で公知の添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、例えば、国際公開第2017/038603号に記載のものが挙げられる。
【0100】
次に、本発明の繊維強化プラスチック用組成物について説明する。本発明の繊維強化プラスチック用組成物は、本発明の樹脂組成物と強化繊維とを含有する。本発明の樹脂組成物は繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として好適に使用される。
【0101】
本発明の繊維強化プラスチック用組成物に含まれる強化繊維は、その種類に特に限定はなく、公知の強化繊維を使用することができる。強化繊維の具体例としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維及びシリコーンカーバイド繊維等が挙げられる。本発明の繊維強化プラスチック用組成物においては、上記強化繊維の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0102】
本発明の繊維強化プラスチック用組成物に含まれる強化繊維の形態としては、高強度・高弾性率繊維を一方向に配列させたいわゆるトウシートや、前記繊維を一方向又は二方向に配列させた一方向性織物や二方向性織物、三方向に配列させた三軸織物、多方向に配列させた多軸織物等が挙げられる。トウシートにおいては、基材への樹脂含浸性を向上させるために、ストランド間に適度の隙間を確保するように上記繊維を配列することが好ましい。
【0103】
本発明の繊維強化プラスチック用組成物における強化繊維と樹脂組成物との配合割合は、強化繊維100質量部に対し、樹脂組成物を5~150質量部とすることが好ましく、15~75質量部とすることがより好ましい。配合割合を上述の範囲とすることで、優れた物性を有する繊維強化プラスチックを得ることができる。
【0104】
次に、本発明の硬化物について説明する。本発明の硬化物は、本発明の樹脂組成物を硬化させてなるものである。本発明の樹脂組成物は、上述したとおり、加熱によって硬化させることができる。加熱の条件としては、特に制限はなく、樹脂組成物の組成等によって適宜決定することができる。例えば、40~250℃、好ましくは100~200℃の加熱温度で、10分~8時間、好ましくは30分~5時間加熱する。
【0105】
本発明の樹脂組成物が活性エネルギー線吸収性成分を含有する場合には、活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。樹脂組成物の硬化に使用される活性エネルギー線には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線等)、マイクロ波、高周波等が挙げられる。本発明では、上記活性エネルギー線の中でも、樹脂組成物の硬化速度をより向上させられる観点から、レーザー光線及び/又は赤外線を使用することが好ましく、赤外線を使用することがより好ましい。
【0106】
上記レーザー光線としては、ルビー、ガラス、YAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネットに微量のレアアースが添加された結晶体)を媒体とした固体レーザー;色素を、水やアルコールなどの溶媒に溶解させたものを媒体とした液体レーザー;CO2、アルゴン、又は、He-Ne混合気体などを媒体とした気体レーザー;半導体の再結合発光を利用した半導体レーザーが挙げられる。本発明においては、安価である上、出力のコントロールが容易な半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0107】
本発明で使用するレーザー光線の波長には特に制限はなく、例えば、近赤外線領域(波長がおよそ0.7~2.5μm)であれば、樹脂組成物を硬化させることができる。レーザー光線の出力も特に制限されず、例えば、1W~4kWの範囲で、樹脂組成物を硬化させることができる。レーザーを照射させる時間も特に制限されることはなく、照射面積や出力により適宜決定することができるが、例えば、0.2W/mm2~10W/mm2の範囲で樹脂組成物を硬化させることができる。
【0108】
本発明で使用する赤外線の波長は、特に制限されることはなく、樹脂組成物に含まれる活性エネルギー線吸収性成分の吸収領域により適宜決定することができ、例えば、近赤外線領域(波長がおよそ0.7~2.5μm)、中赤外線領域(波長がおよそ2.5~4μm)、及び遠赤外線領域(波長がおよそ4~1000μm)等の波長領域で樹脂組成物を硬化させることができる。活性エネルギー線吸収性成分がニグロシン系化合物である場合、近赤外線領域(波長がおよそ0.7~2.5μm)において、短時間で樹脂硬化物を硬化させることができる。
【0109】
樹脂組成物に赤外線を照射する方法としては、赤外線ヒーターを用いて照射する方法が挙げられる。赤外線ヒーターとしては、例えば、ハロゲンヒーター、石英ヒーター、シーズヒーター、及びセラミックヒーターなどが挙げられる。ハロゲンヒーターは、近赤外線領域から中赤外線領域までの波長をもつ赤外線を照射することができ、石英ヒーター、シーズヒーター、及びセラミックヒーターは、中赤外線領域から遠赤外線領域の波長をもつ赤外線を照射することもできる。これらの中のうち、電源を入れてから熱源が加熱されるまでの時間が短く、迅速に加熱できるという理由で、ハロゲンヒーターを使用することが好ましい。
【0110】
次に、本発明の繊維強化プラスチックについて説明する。本発明の繊維強化プラスチックは、本発明の繊維強化プラスチック用組成物を硬化させてなるものである。本発明の繊維強化プラスチック用組成物は、上述した、本発明の樹脂組成物と同じ方法で硬化させることができる。
【0111】
本発明の繊維強化プラスチックは公知の方法、例えば、押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法、RTM(Resin Transfer Molding)成形、VaRTM(Vacuum assist Resin Transfer Molding)成形、積層成形、ハンドレイアップ成形、フィラメントワインディング成形法等で成形することができる。
【0112】
本発明の繊維強化プラスチックは、各種の用途に利用することができる。例えば、自動車、船舶及び鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラー、屋根材、ケーブル、及び補修補強材料等の一般産業用途;胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席、内装材、モーターケース、アンテナ等の航空宇宙用途;ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバドミントンのラケット用途、ホッケー等のスティック用途、及びスキーポール用途等のスポーツ用途が挙げられる。
【0113】
次に、本発明の繊維強化プラスチックの難燃化方法について説明する。本発明の繊維強化プラスチックの難燃化方法は、本発明の樹脂組成物と強化繊維とを混合して繊維強化プラスチック用組成物を得る工程、及び該繊維強化プラスチック用組成物を硬化させる工程を具備する。本発明の樹脂組成物と強化繊維とを混合する方法に特に制限はなく、樹脂組成物や強化繊維の物性等に応じ、公知の方法から適宜選択することができる。繊維強化プラスチック用組成物を硬化させる方法は上述したとおりである。
【実施例】
【0114】
以下本発明を、実施例及び比較例に基づいて更に具体的に説明する。尚、以下の実施例等における「%」は、特に記載がない限り「質量%」である。
【0115】
[製造例1:含リン化合物(3-1)の合成]
撹拌羽根、還流管、温度計、滴下漏斗及びセプタムを備えた500mLの五口フラスコを、十分に乾燥・窒素置換し、該五口フラスコに4,4’-ビフェノールを29.8g(0.16mol)、トリエチルアミンを34.4g(0.34mol)、及び超脱水テトラヒドロフランを300mL仕込んだ。滴下漏斗にジエチルホスフィン酸クロリドを47.8g(0.34mol)仕込み、反応温度が50℃を超えないように滴下し、滴下終了後一晩撹拌して反応溶液を得た。得られた反応溶液を分液漏斗に移し、クロロホルムを500mL及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を300mL加えてよく撹拌し、油水分離した後、水層を除去し、有機層を得た。得られた有機層を蒸留水200mLで2回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を除去し、含リン化合物(3-1)を60.6g(収率96.1%)得た。含リン化合物(3-1)の理論リン含有量は15.7質量%である。
【0116】
[製造例2:含リン化合物(3―3)の合成]
撹拌羽根、還流管、温度計、滴下漏斗及びセプタムを備えた500mLの五口フラスコを、十分に乾燥・窒素置換し、該五口フラスコにビスフェノールAを45.7g(0.20mol)、トリエチルアミンを42.5g(0.42mol)、及び超脱水テトラヒドロフランを300mL仕込んだ。滴下漏斗にジエチルホスフィン酸クロリドを59.0g(0.42mol)仕込み、反応温度が50℃を超えないように滴下し、滴下終了後一晩撹拌して反応溶液を得た。得られた反応溶液を分液漏斗に移し、クロロホルム500mL及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mLを加えてよく撹拌し、油水分離した後、水層を除去し、有機層を得た。得られた有機層を蒸留水200mLで2回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を除去し、含リン化合物(3-3)を78.1g(収率89.4%)得た。含リン化合物(3-3)の理論リン含有量は14.2質量%である。
【0117】
下記の材料を用いて実施例及び比較例の樹脂組成物を製造した。
EP-4901E:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製、エポキシ当量:170g/eq.
EP-4005:ビスフェノールAプロピレンオキシド平均5当量付加物のエポキシ化物、(株)ADEKA製、エポキシ当量:510g/eq.
SE-300P:グリシジルアミン型エポキシ樹脂、SHINA T&C製、エポキシ当量:100g/eq.
LECy:1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ロンザ社製
カヤハードAA:ジアミノジエチルジフェニルメタン、日本化薬(株)製
DOPO-HQ:10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキシド、三光(株)製
FP-600:縮合リン酸エステル系難燃剤、(株)ADEKA製
EPICRON 152:臭素型エポキシ樹脂、DIC(株)製、エポキシ当量:360g/eq.
EPICRON 153:臭素型エポキシ樹脂、DIC(株)製、エポキシ当量:400g/eq.
【0118】
[実施例1]
500mLディスポカップに、(A)エポキシ樹脂として、アデカレジンEP-4100Eを100g、(B)シアネート樹脂として、LECyを100g、(C)25℃で液状の芳香族アミン系硬化剤として、カヤハードAAを70g、(D)成分として含リン化合物(3-1)を18.5g加え、25℃にて5分間スパチュラで撹拌した。その後、遊星式攪拌機を使用して更に撹拌し、樹脂組成物を得た。
炭素繊維(UT70-20G、東レ(株)製)100gに対し、得られた樹脂組成物を33g、ローラーを用いて含浸させて繊維強化プラスチック用組成物を得た。得られた繊維強化プラスチック用組成物を150℃の恒温槽に3時間静置し、繊維強化プラスチック用組成物を硬化させ繊維強化プラスチックを得た。
得られた繊維強化プラスチックを長さ127mm及び幅12.7mmに加工し、試験片を得た。得られた試験片に対し、UL(アンダーライターズ ラボラトリース)の「プラスチック材料の燃焼性テストUL 94」に準じて試験を行い、難燃性を評価した。
【0119】
<難燃性の評価方法>
試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後バーナーの火を取り除き、試験片に着火した火が消える迄の時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行い、1回目と同様にして、着火した火が消える迄の時間を測定した。この操作を5本の試験片に対して行い、1回目の火が消える迄の時間の5本の試験片の平均値(以下、T1とする)、2回目の火が消える迄の時間の5本の試験片の平均値(以下、T2とする)を算出した。結果を表1に示す。また、5本の試験片の合計燃焼時間を計算し、計算した合計燃焼時間に基づき、UL-94V規格にしたがって燃焼ランクを評価した。燃焼ランクはV-0が最高であり、V-1、V-2となるにしたがって難燃性は低下する。V-0~V-2のランクの何れにも該当しないものは不合格とした。上記操作後の試験片の燃焼状態を目視で確認し、試験片が100%燃焼しているものについても、T1、T2の値を問わず、規格外とし不合格とした。結果を表1に示す。
【0120】
[実施例2~6、比較例1~4及び参考例1~2]
表1に示す材料を表1に示す割合で配合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~6、比較例1~4及び参考例1~2の繊維強化プラスチックの試験片及び硬化物を得た。得られた試験片及び硬化物について、実施例1と同様の方法によって、試験片の難燃性及び硬化物の硬度を評価した。結果を表1に示す。
【0121】
【0122】
表1に示す結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物を用いて製造した実施例1~6の繊維強化プラスチックは、ハロゲン系難燃剤を含まないにもかかわらず、難燃性が良好なものであった。
これに対し、難燃剤を含有しない樹脂組成物を用いて製造した比較例1の繊維強化プラスチックは、実施例1~5の繊維強化プラスチックに比べて難燃性が劣るものであった。また、難燃剤を含有しない樹脂組成物を用いて製造した比較例4の繊維強化プラスチックは、実施例6の繊維強化プラスチックに比べて難燃性が劣るものであった。
更に、比較例2及び3の繊維強化プラスチックは公知の難燃剤を含有する樹脂組成物を用いて製造したものであるところ、実施例1~5の繊維強化プラスチックに比べて難燃性が劣るものであった。このことは、エポキシ樹脂とシアネート樹脂とを含有する樹脂組成物に難燃性に良好な難燃性を付与するためには、式(1)で表される含リン化合物を用いることが有効であることを示している。
【0123】
<層間せん断強度>
炭素繊維と、実施例2で得られた樹脂組成物を用いて、VaRTM法によって炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を成形した。具体的には、下記の手順によってCFRPを成形した。
真空パックに100gの炭素繊維(UT70-20G、東レ(株)製)を設置し、次いで、真空パックを真空吸引した。その後、真空ポンプを通じて実施例2で得られた樹脂組成物50gを真空パックに注入し、該樹脂組成物を炭素繊維に含浸させて繊維強化プラスチック用組成物を得た。得られた繊維強化プラスチック用組成物を25℃で2時間静置後、150℃の恒温槽に2時間静置することによって硬化させ、繊維強化プラスチックを得た。
得られた繊維強化プラスチックを長さ15mm及び幅10mmに加工し、試験片を得た。得られた試験片に対して、JIS K 7078に準拠した方法で試験を行い、層間せん断強度(MPa)を測定した。結果を表1に示す。
実施例6、比較例1及び比較例6で得られた樹脂組成物についても、実施例2で得られた樹脂組成物と同様にして、層間せん断強度を評価した。結果を表2に示す。
【0124】
【0125】
表2に示す結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物を用いて製造した実施例2及び6の炭素繊維強化プラスチックは、比較例1及び4の炭素繊維強化プラスチックに比べて層間せん断強度が高いものであった。このことは、本発明の樹脂組成物がCFRP用マトリックス樹脂材料として好適であることを示している。