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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20240401BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/42 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022079795
(22)【出願日】2022-05-13
(65)【公開番号】P2023168134
(43)【公開日】2023-11-24
【審査請求日】2023-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】森下 雄太
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-000714(JP,A)
【文献】特開2022-043481(JP,A)
【文献】特開2020-000715(JP,A)
【文献】特開2020-000716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態において、長手方向、幅方向、及び、厚さ方向を有し、
漂白処理が施されていない無漂白資材を含む吸収体を有する吸収性物品であって、
前記吸収体よりも前記厚さ方向の肌側に肌側シートが配されており、
前記吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に非肌側シートが配されており、
展開かつ伸長状態において、
前記吸収体が備える吸収性コアの設けられた領域を、前記吸収性物品の肌面側から平面視したときも、前記吸収性物品の非肌面側から平面視したときにも、前記無漂白資材の色が視認可能であり、
前記領域を、前記吸収性物品の肌面側から平面視したときの方が、前記吸収性物品の非肌面側から平面視したときに比べて、視認される前記無漂白資材の色の、最小明度が低く、かつ、最大彩度が高いこと、
を特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記肌側シート、及び、前記非肌側シートは、前記吸収性コアの平面全域を覆うシートであって、
前記非肌側シートの方が、前記肌側シートに比べて、前記厚さ方向に積層されるシートの数が多いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記肌側シート、及び、前記非肌側シートは、前記吸収性コアの平面全域を覆うシートであって、
前記非肌側シートの方が、前記肌側シートに比べて、坪量が高いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記非肌側シートは、フィルムと、前記フィルムよりも非肌側に設けられた不織布と、を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収体は、
前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の肌側に配された肌側コアラップシート部と、 前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に配された非肌側コアラップシート部と、を有し、
前記肌側コアラップシート部、及び、前記非肌側コアラップシート部は、前記無漂白資材を含むことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項5に記載の吸収性物品であって、
前記肌側コアラップシート部、及び、前記非肌側コアラップシート部は、同じコアラップシートの一部であり、
前記コアラップシートの前記幅方向の両側部は、前記吸収性コアの前記厚さ方向の一方側から他方側に向かって、前記幅方向の内側に折り返されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性物品であって、
前記非肌側シートは、排泄物との接触により変色するインジケーター部を備え、
前記コアラップシートの前記幅方向の両側部が前記厚さ方向に重なった重なり部が、前記吸収性コアの非肌面側に設けられており、
展開かつ伸長状態において、前記吸収性物品を非肌面側から平面視したときに、
前記インジケーター部の少なくとも一部は、前記重なり部以外の非重なり部と重なっていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項6に記載の吸収性物品であって、
前記非肌側シートは、排泄物との接触により変色するインジケーター部を備え、
前記コアラップシートの前記幅方向の両側部が前記厚さ方向に重なった重なり部が、前記吸収性コアの非肌面側に設けられており、
展開かつ伸長状態において、前記吸収性物品を非肌面側から平面視したときに、
前記インジケーター部の全てが、前記重なり部と重なっていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、前記無漂白資材を含むことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品として、吸収性コアと吸収性コアを被覆するカバーシートを含む吸収体が、表面シートと裏面シートの間に位置するものが知られている。
特許文献1には、未漂白パルプ繊維を他の構成繊維よりも多く含む第1コアカバーシートが吸収性コアの肌対向面側に位置する吸収性物品が開示されている。未漂白パルプ繊維によって、化学物質を減少させた吸収性物品を提供でき、安全な物を使用したいというユーザーの志向を満たすことができる。
一方、尿の色に似ている未漂白のティッシュ等を用いると、介護を行う第三者が排尿を間違うおそれがあるとして、特許文献1では、吸収性コアの非肌対向面側に、漂白パルプ繊維を他の構成繊維よりも多く含む第2コアカバーシートが設けられている。具体的には、第2コアカバーシートとして、漂白パルプ繊維のみによって形成されている白色のシートや、吸収性コアとコアカバーシートと防漏シートと裏面シートを積層して裏面シート側から視認したときに、白色に視認されるシート(パルプ繊維のカッパ価が5.8以下のシート)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6838013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品は、肌対向面が内側に折られている状態で流通し、ユーザーは、吸収性物品の使用前に、吸収性物品の非肌対向面を主に視認する。そのため、特許文献1のように、吸収性コアの肌対向面側にのみ、無漂白資材(未漂白パルプ繊維等)を含むコアカバーシートを設けた場合、吸収性コアを介して、吸収性物品の外側から無漂白資材の色を確認することは難しい。そのため、吸収性物品の使用前に、無漂白資材を使用した安全な製品であることをユーザーに認識してもらえないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、吸収性物品の使用前に、無漂白資材を使用した安全な製品であることを認識してもらうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、展開状態において、長手方向、幅方向、及び、厚さ方向を有し、漂白処理が施されていない無漂白資材を含む吸収体を有する吸収性物品であって、前記吸収体よりも前記厚さ方向の肌側に肌側シートが配されており、前記吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に非肌側シートが配されており、展開かつ伸長状態において、前記吸収体が備える吸収性コアの設けられた領域を、前記吸収性物品の肌面側から平面視したときも、前記吸収性物品の非肌面側から平面視したときにも、前記無漂白資材の色が視認可能であり、前記領域を、前記吸収性物品の肌面側から平面視したときの方が、前記吸収性物品の非肌面側から平面視したときに比べて、視認される前記無漂白資材の色の、最小明度が低く、かつ、最大彩度が高いこと、を特徴とする吸収性物品。
である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収性物品の使用前に、無漂白資材を使用した安全な製品であることを認識してもらうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】展開かつ伸長状態のテープ型使い捨ておむつ1の肌面側平面図である。
図2図1のおむつ1を長手方向に二等分する中心線CLにおける断面模式図である。
図3】展開かつ伸張状態のおむつ1の肌面側の概略平面図である。
図4】展開かつ伸長状態のおむつ1の非肌面側の概略平面図である。
図5】第1実施形態のおむつ1の変形例を説明する断面模式図である。
図6】変色後のインジケーター部31,32の説明図である。
図7】変形例のインジケーター部33の説明図である。
図8図8A及び図8Bは、第2実施形態のおむつ1の説明図である。
図9図9Aから図9Cは、インジケーター部31,32の視認性を評価した結果を示す図である。
図10】おむつ1の肌面側から視認される無漂白資材の色を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1は、展開状態において、長手方向、幅方向、及び、厚さ方向を有し、漂白処理が施されていない無漂白資材を含む吸収体を有する吸収性物品であって、前記吸収体よりも前記厚さ方向の肌側に肌側シートが配されており、前記吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に非肌側シートが配されており、展開かつ伸長状態において、前記吸収体が備える吸収性コアの設けられた領域を、前記吸収性物品の肌面側から平面視したときも、前記吸収性物品の非肌面側から平面視したときにも、前記無漂白資材の色が視認可能であり、前記領域を、前記吸収性物品の肌面側から平面視したときの方が、前記吸収性物品の非肌面側から平面視したときに比べて、視認される前記無漂白資材の色の、最小明度が低く、かつ、最大彩度が高いこと、を特徴とする吸収性物品である。
【0010】
態様1の吸収性物品によれば、吸収性物品の使用前に、無漂白資材を使用した安全な製品であることをユーザーに認識してもらうことができる。また、ユーザーが、吸収性物品の肌側面を視認したときに、無漂白資材が肌の近くに配されていることを確認でき、より安全な製品であることを認識してもらうことができる。一方、吸収性物品の非肌面側から視認したときの無漂白資材の色が抑えられているため、ユーザーが無漂白資材の色を排泄物の色と間違ってしまうことを抑制できる。
【0011】
態様2は、前記肌側シート、及び、前記非肌側シートは、前記吸収性コアの平面全域を覆うシートであって、前記非肌側シートの方が、前記肌側シートに比べて、前記厚さ方向に積層されるシートの数が多いことを特徴とする、態様1に記載の吸収性物品である。
【0012】
態様2によれば、吸収性物品の肌面側から平面視したときの方が非肌面側から平面視したときに比べて、視認される無漂白資材の色の濃度を高くすることができる(最小明度を低く、かつ、最大彩度を高くすることができる)。
【0013】
態様3は、前記肌側シート、及び、前記非肌側シートは、前記吸収性コアの平面全域を覆うシートであって、前記非肌側シートの方が、前記肌側シートに比べて、坪量が高いことを特徴とする、態様1又は態様2に記載の吸収性物品である。
【0014】
態様3によれば、吸収性物品の肌面側から平面視したときの方が非肌面側から平面視したときに比べて、視認される無漂白資材の色の濃度を高くすることができる。
【0015】
態様4は、前記非肌側シートは、フィルムと、前記フィルムよりも非肌側に設けられた不織布と、を有することを特徴とする、態様1から態様3の何れかに記載の吸収性物品である。
【0016】
態様4によれば、フィルムによって、吸収性物品の非肌面側から視認される無漂白資材の色を抑えることができる。不織布によって、吸収性物品に対する柔らかい印象をユーザーに付与できる。
【0017】
態様5は、前記吸収体は、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の肌側に配された肌側コアラップシート部と、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に配された非肌側コアラップシート部と、を有し、前記肌側コアラップシート部、及び、前記非肌側コアラップシート部は、前記無漂白資材を含むことを特徴とする、態様1から態様4の何れかに記載の吸収性物品である。
【0018】
態様5によれば、吸収性物品を、肌面側から平面視したときも、非肌面側から平面視したときにも、無漂白資材の色が視認可能となる。
【0019】
態様6は、前記肌側コアラップシート部、及び、前記非肌側コアラップシート部は、同じコアラップシートの一部であり、前記コアラップシートの前記幅方向の両側部は、前記吸収性コアの前記厚さ方向の一方側から他方側に向かって、前記幅方向の内側に折り返されていることを特徴とする、態様5に記載の吸収性物品である。
【0020】
態様6によれば、吸収性コアの肌面側と非肌面側に同じ資材が設けられる場合にも(肌面側と非肌面側とで無漂白資材の含有率を異ならせなくとも)、吸収性物品の肌面側から平面視したときと非肌面側から平面視したときとで、視認される無漂白資材の色の濃度を異ならせることができる。
【0021】
態様7は、前記非肌側シートは、排泄物との接触により変色するインジケーター部を備え、前記コアラップシートの前記幅方向の両側部が前記厚さ方向に重なった重なり部が、前記吸収性コアの非肌面側に設けられており、展開かつ伸長状態において、前記吸収性物品を非肌面側から平面視したときに、前記インジケーター部の少なくとも一部は、前記重なり部以外の非重なり部と重なっていることを特徴とする、態様6に記載の吸収性物品である。
【0022】
態様7に、コアラップシートの非重なり部では、重なり部に比べて、視認される無漂白資材の色が薄くなるので、インジケーター部の少なくとも一部の視認性が高まる。よって、ユーザーが、インジケーター部の存在や色の変化に気付きやすくなる。
【0023】
態様8は、前記非肌側シートは、排泄物との接触により変色するインジケーター部を備え、前記コアラップシートの前記幅方向の両側部が前記厚さ方向に重なった重なり部が、前記吸収性コアの非肌面側に設けられており、展開かつ伸長状態において、前記吸収性物品を非肌面側から平面視したときに、前記インジケーター部の全てが、前記重なり部と重なっていることを特徴とする、態様6に記載の吸収性物品である。
【0024】
態様8によれば、インジケーター部を形成する指示薬がコアラップシートの重なり部を透過して吸収性コアに滲み出し難く、吸収性コアの吸収性能への影響を抑制できる。
【0025】
態様9は、前記吸収性コアは、前記無漂白資材を含むことを特徴とする、態様1から態様8の何れかに記載の吸収性物品である。
【0026】
態様9によれば、吸収性物品を肌面側から平面視したときも、非肌面側から平面視したときにも、無漂白資材の色が視認可能となる。
【0027】
態様10は、前記非肌側シートは、排泄物との接触により変色し、変色前の色が黄色系の色であるインジケーター部を備え、展開かつ伸長状態において、前記吸収性物品の前記領域を非肌面側から平面視したときに、変色前の前記インジケーター部と、前記インジケーター部以外の部位であって、印刷が施されていない部位との、Lab色空間における色差が5.91以上であることを特徴とする、態様1から態様9の何れかに記載の吸収性物品である。
【0028】
態様10によれば、前記色差が5.91未満である場合に比べて、変色前のインジケーター部が目立ちやすくなる。よって、吸収性物品の使用前に、インジケーター部の存在をユーザーに認識してもらうことができる。
【0029】
態様11は、前記非肌側シートは、排泄物との接触により変色し、変色前の色が黄色系の色であり、変色後の色が青緑系の色であるインジケーター部を備え、展開かつ伸長状態において、前記吸収性物品の前記領域を非肌面側から平面視したときに、変色後の前記インジケーター部と、前記インジケーター部以外の部位であって、印刷が施されていない部位との、Lab色空間における色差が8.91以上であることを特徴とする、態様1から態様10の何れかに記載の吸収性物品である。
【0030】
態様11によれば、前記色差が8.91未満である場合に比べて、変色後のインジケーター部が目立ちやすくなる。よって、ユーザーが変色後のインジケーター部(排泄)に気付きやすくなる。
【0031】
態様12は、前記非肌側シートは、排泄物との接触により変色し、変色前の色が黄色系の色であり、変色後の色が青緑系の色であるインジケーター部を備え、展開かつ伸長状態において、前記吸収性物品の前記領域を非肌面側から平面視したときに、変色前の前記インジケーター部と、変色後の前記インジケーター部との、Lab色空間における色差が8.67以上であることを特徴とする、態様1から態様11の何れかに記載の吸収性物品である。
【0032】
態様12によれば、前記色差が8.67未満である場合に比べて、インジケーター部の色の変化が大きくなる。よって、ユーザーがインジケーターの部の色の変化(排泄)に気付きやすくなる。
【0033】
態様13は、展開かつ伸長状態において、前記吸収性物品の前記領域を肌面側から平面視したときに、視認される前記無漂白資材の色の最大彩度が9.16以下であることを特徴とする、態様1から態様12の何れかに記載の吸収性物品である。
【0034】
態様13によれば、前記最大彩度が9.16よりも大きい場合に比べて、吸収性物品の肌面側から視認される無漂白資材の色が適度に抑えられる。そのため、ユーザーが吸収性物品の肌側面を視認したときに、吸収性物品に対して、オーガニック製品である印象を抱きつつ、清潔な印象が損なわれ難い。また、排泄液(尿)の色を確認でき、着用者の健康状態を確認できる。
【0035】
===実施形態===
以下、吸収性物品の一例として、乳幼児用のテープ型使い捨ておむつを例に挙げて説明する。ただし、吸収性物品は、上記に限定されることなく、例えば、パンツ型使い捨ておむつ、大人用の使い捨ておむつ、吸収性パッド、生理用ナプキン、パンティーライナー等であってもよい。
【0036】
===テープ型使い捨ておむつ1の基本構成===
図1は、展開かつ伸長状態のテープ型使い捨ておむつ1(以下「おむつ」とも称す)の肌面側平面図である。
おむつ1の展開状態とは、おむつ1全体を平面的に展開した状態をいう。なお、本実施形態とは異なるパンツ型使い捨ておむつの場合には、前側胴回り部と後側胴回り部を接合する一対のサイド接合部を分離して展開した状態である。
おむつ1の伸長状態とは、おむつ1に生じていた皺が実質的に視認されなくなる程に伸長させた状態であり、おむつ1を構成する各部材(例えば後述する表面シート2等)の寸法が、その部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまでおむつ1が伸長した状態である。
【0037】
おむつ1は、展開状態において、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。長手方向において、着用者の腹側部に当てられる側を腹側とし、その反対側を背側とする。また、厚さ方向において、着用者に接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
【0038】
おむつ1は、尿等の排泄液を吸収する吸収体10と、吸収体10よりも厚さ方向の肌側に配された表面シート2と、吸収体10よりも厚さ方向の非肌側に配された防漏シート3及び外装シート4と、一対のサイドシート5と、一対のファスニングテープ20を有する。
【0039】
吸収体10は、平面視において長手方向に長い長方形状を成し、吸収性コア11と、吸収性コア11の外周面を被覆するコアラップシート12を有する。吸収性コア11としては、SAP(高吸収性ポリマー)を含む吸水性繊維(例えばパルプ繊維等)が所定の形状に成形されたもの等を例示できる。図1に例示する吸収性コア11は平面視において長手方向の中央部が括れた砂時計形状を成す。ただし、吸収体10や吸収性コア11の平面形状は特に限定されるものではない。また、吸収性コア11は、液体吸収性繊維を、接着剤等を用いてシート状に成形したエアレイド不織布や、親水性のシートにSAP層を付着させたSAPシート等であってもよい。コアラップシート12は、液透過性のシートであり、ティッシュや不織布等を例示できる。
【0040】
表面シート2は、液透過性のシートであり、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の合成繊維からなる不織布(例えばエアスルー不織布やスパンボンド不織布)や、貫通孔を有する樹脂フィルム、綿からなる不織布等、柔軟なシートを例示できる。
【0041】
防漏シート3は、液不透過性のシートであり、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等を例示できる。外装シート4は、防漏シート3よりも非肌側に設けられ、おむつ1の外形を成す。外装シート4としては、SMS不織布(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド不織布)等の柔軟なシートを例示できる。
【0042】
サイドシート5は、表面シート2の幅方向の両側部上から幅方向の外側に延出するシートである。サイドシート5としては、表面シート2と同じ柔軟な液透過性の不織布や、疎水性の不織布等を例示できる。
【0043】
また、おむつ1の幅方向の両側部には、長手方向に伸縮する脚回り弾性部材6が設けられており、おむつ1は着用者の脚回りにフィットする。脚回り弾性部材6は、図1に例示するように糸ゴムであってもよいし、伸縮性シートであってもよい。また、後述の図2に示すように、サイドシート5の幅方向の内側端部が非肌側に折り返された部位に、長手方向に伸縮する防漏壁弾性部材7(例えば糸ゴム)が設けられている。防漏壁弾性部材7の収縮によって、サイドシート5の一部が肌側に起立し、排泄物が堰き止められる。
【0044】
ファスニングテープ20は、おむつ1の背側部から幅方向の外側に延出し、テープ基材21と、フック材22(例えば面ファスナーの雄部材)を有する。おむつ1の着用時に、おむつ1は長手方向の略中央で2つ折りされ、ファスニングテープ20のフック材22が、おむつ1の腹側部の非肌側面に係止される。後述の図4に示すように、フック材22が係止しやすいように、おむつ1の非肌側面にファスニングテープ23(例えば不織布や面ファスナーの雌部材)を設けてもよい。また、後述の図4に示すように、おむつ1の非肌面側から視認可能な図柄40が、例えば、防漏シート3の非肌側面に印刷されていてもよい。
【0045】
以上、テープ型のおむつ1の基本構成を説明したが、おむつ1の構成は上記に限定されるものではない。
【0046】
===第1実施形態:吸収体10===
図2は、図1のおむつ1を長手方向に二等分する中心線CLにおける断面模式図である。図3は、展開かつ伸張状態のおむつ1の肌面側の概略平面図である。図4は、展開かつ伸長状態のおむつ1の非肌面側の概略平面図である。
【0047】
第1実施形態のおむつ1が有する吸収体10は、漂白処理が施されていない無漂白資材を含む。具体的には、吸収体10が有するコアラップシート12が無漂白資材を含む。コアラップシート12を構成する繊維の一部又は全部を、漂白処理が施されていない繊維とする。
【0048】
吸収体10が有する吸収性コア11とコアラップシート12は、一般に、天然素材を原料として得られる吸水性繊維、例えば、パルプ繊維や、レーヨン繊維(再生セルロース繊維)や、アセテート繊維(半合成セルロース繊維)等から構成される。これらの原料となる天然素材としては、針葉樹又は広葉樹を原料とする木材パルプ繊維や、竹、リンター、マニラ、麻、ケナフ、藁、バナナ等を原料とする非木材パルプ繊維を例示できる。
【0049】
天然素材は、茶色、薄茶色、淡黄等の色を有する。そのため、一般の吸収体には漂白処理が施された繊維が使用される。例えば、パルプ繊維は、原料チップ処理工程を経た後に、原料チップに薬品を加えて高温・高圧下で煮沸してリグニンを蒸解する蒸解工程、パルプ中の異物を除去するスクリーン工程、蒸解工程において残存したリグニンを酵素で分解する酵素晒し工程の、一連の漂白工程を経ることで、漂白された白色のパルプ繊維となる。
【0050】
漂白処理が施されていない無漂白資材とは、上記の処理の一部(例えば蒸解工程とスクリーン工程)しか施されていない資材や、上記の処理の全てが施されていない資材である。そのため、無漂白資材には、天然素材が含有するリグニン(茶色の色素を有する成分)が残存する。ゆえに、無漂白資材を含む吸収体10、第1実施形態ではコアラップシート12は、天然素材由来の色(茶色、薄茶色、淡黄等)を呈する。以下の説明では、コアラップシート12の色を薄茶色とする。
【0051】
なお、おむつ1が有する他の資材、例えば、吸収体10と厚さ方向に重なる表面シート2、防漏シート3、外装シート4、サイドシート5は、漂白処理が施された繊維からなる白色のシートである。
【0052】
また、図2に示すように、吸収体10は、吸収性コア11よりも厚さ方向の肌側に配された肌側コアラップシート部121と、吸収性コア11よりも厚さ方向の非肌側に配された非肌側コアラップシート部122と、を有する。第1実施形態では、肌側コアラップシート部121、及び、非肌側コアラップシート部122が、無漂白資材を含む。つまり、吸収性コア11の肌側面が薄茶色のコアラップシート12で覆われ、吸収性コア11の非肌側面も薄茶色のコアラップシート12で覆われる。
【0053】
したがって、おむつ1を展開かつ伸長させた状態において、吸収性コア11の設けられた領域を、おむつ1の肌面側から平面視したときも(図3)、おむつ1の非肌面側から平面視したときにも(図4)、無漂白資材の色(ここでは薄茶色)が視認可能となる。
【0054】
つまり、おむつ1のユーザー(保護者や保育者等)は、表面シート2を介して肌側コアラップシート部121の薄茶色を視認でき、防漏シート3及び外装シート4を介して非肌側コアラップシート122の薄茶色を視認できる。おむつ1の中でも吸収性コア11が設けられた領域は、吸収性コア11の剛性により平坦に保たれやすく、ユーザーの目に留まりやすい領域である。そのため、ユーザーがコアラップシート12の薄茶色に気付きやすい。
【0055】
その結果、ユーザーは、おむつ1に対して、漂白処理に伴う化学物質が軽減された安全な製品であるという印象や、天然素材を使用したオーガニック製品であるという印象を抱きやすくなる。そのため、ユーザーは安心しておむつ1を使用できる。本実施形態のように、おむつ1の着用対象者が肌の弱い乳幼児である場合、おむつ1が肌トラブルの原因になるのではないかというユーザーの不安を軽減できる。
【0056】
特に、おむつ1は、肌側面を内側にして折られている状態で流通するので、ユーザーは、おむつ1の使用前に、おむつ1の非肌側面を主に視認する。そのため、おむつ1の非肌面側から無漂白資材の色が視認可能であることで、おむつ1は無漂白資材が使用された安全な製品であることを、おむつ1の使用前に、より確実に、ユーザーに認識してもらうことができる。
【0057】
ただし、おむつ1を展開かつ伸長させた状態において、吸収性コア11の設けられた領域を、おむつ1の肌面側から平面視したとき(図3)の方が、おむつ1の非肌面側から平面視したとき(図4)に比べて、視認される無漂白資材の色の最大濃度が高くなっている。つまり、おむつ1の肌面側から視認される無彩色資材の色の方が、最小明度が低く(より暗い領域があり)、かつ、最大彩度が高くなっている(より色が目立つ領域がある)。
【0058】
このようなおむつ1によれば、ユーザーは、おむつ1の無漂白資材の色を段階的に視認することになる。例えば、ユーザーは、パッケージからおむつ1を取り出した時に、最初に、おむつ1の非肌面側から比較的に薄い無漂白資材の色を視認する。この段階で、ユーザーは、おむつ1に無漂白資材が使用されていることを認識できる。
【0059】
その後、ユーザーは、おむつ1を着用者に装着するために、おむつ1を展開した時に、おむつ1の肌面側から比較的に濃い無漂白資材の色を視認する。そのため、ユーザーは、安全な無漂白資材がより肌に近い位置に配置されていることを確認でき、より安全なおむつ1であることを認識できる。実際に、おむつ1では、表面シート2の直下に無漂白資材のコアラップシート12が位置するため、肌に優しいおむつ1であるといえる。
【0060】
また、本実施形態とは異なり、例えば、吸収性コアの非肌側面を覆うコアラップシートの色が白色である場合、ユーザーは、おむつの装着時等において、おむつの肌側面を見た時に、初めて無漂白資材の色を視認することになりやすい。無漂白資材の色は薄茶色等、排泄物の色に近い色である。そのため、ユーザーは、おむつの肌面側から初めて無漂白資材の色を視認した時に、瞬間的に使用済みのおむつと見間違うおそれがある。
【0061】
これに対して、本実施形態のおむつ1のように、ユーザーがおむつ1の非肌面側から段階的に無漂白資材の色を視認することで、無漂白資材の色を排泄物の色と間違い難い。よって、おむつ1に対する清潔な印象が軽減してしまうことを抑制できる。また、一般的なおむつの色とは異なる無漂白資材の色に対する違和感も軽減できる。
【0062】
また、おむつ1の非肌面側から視認される無漂白資材の色が抑えられることで、おむつ1の着用中に、おむつ1の非肌面側を見たユーザーが、無漂白資材の色を排泄物の色と間違えてしまうことも防止できる。
【0063】
なお、吸収性コア11が設けられた領域を、おむつ1の肌面側から平面視したときと、非肌面側から平面視したときの、視認される無漂白資材の色の濃度(最小明度、最大彩度)の比較は、周知の方法で行うとよい。
例えば、水平な試験台の上に、おむつ1の肌側面又は非肌側面を上にして、おむつ1を展開かつ伸長させた状態で固定する。そして、吸収性コア11が設けられた領域の色を、目視で比較してもよいし、市販の測色器(例えば、コニカミノルタ社製の色彩色差計CR-400又はそれと同等のもの)を用いて、実際に明度と彩度を測定して比較してもよい。測色器を用いる場合、複数の測定箇所を測定することが望ましい。また、無漂白資材の色の最大濃度(最小明度同士、最大彩度同士)を比較するため、無漂白資材の色が濃く視認される箇所を測定箇所とする。例えば、サイドシート5やファスニングテープ23と重なる領域や、インジケーター部31,32、おむつ1に印刷された図柄40が配置された領域は、測定箇所から除外する。
【0064】
また、おむつ1は、吸収体10よりも厚さ方向の肌側に配され、少なくとも吸収性コア11の平面全域を覆う肌側シートとして、表面シート2を有する。また、おむつ1は、吸収体10よりも厚さ方向の非肌側に配され、少なくとも吸収性コア11の平面全域を覆う非肌側シートとして、防漏シート3、及び、外装シート4を有する。
【0065】
上記のように、非肌側シート(3,4)の方が、肌側シート(2)に比べて、厚さ方向に積層されるシートの数が多いことが好ましい。そうすることで、肌側シート(2)を介して視認されるコアラップシート12の色(無漂白資材の色)を、非肌側シート(3,4)を介して視認されるコアラップシート12の色よりも濃くすることができる。つまり、吸収性コア11が設けられた領域を、おむつ1の肌面側から平面視したときの方が、おむつ1の非肌面側から平面視したときに比べて、視認される無漂白資材の色の最大濃度を高くすることができる。
【0066】
また、非肌側シート(3,4)の方が、肌側シート(2)に比べて、坪量(単位面積当たりの重量)が高いことが好ましい。本実施形態の場合、防漏シート3、及び、外装シート4の合計坪量が、表面シート2の坪量よりも高くなっている。坪量が高いということは、シートを構成する資材の密度が高かったり、シートの厚みが厚かったりすることになる。そのため、上記によれば、吸収性コア11が設けられた領域を、おむつ1の肌面側から平面視したときの方が、おむつ1の非肌面側から平面視したときに比べて、視認される無漂白資材の色の最大濃度を高くすることができる。
【0067】
また、非肌側シートは、フィルムである防漏シート3と、不織布である外装シート4と、を有することが好ましい。フィルムは不織布に比べて空隙が少ない。そのため、防漏シート3として、例えば疎水性不織布を使用する場合に比べて、フィルムを使用することで、非肌側シート(3,4)を介して視認されるコアラップシート12の色(無漂白資材の色)を抑えることができる。また、不織布である外装シート4によって、おむつ1の肌触りを良くしたり、柔らかいおむつ1である印象をユーザーに付与したりできる。
【0068】
ただし、肌側シート及び非肌側シートの数、坪量、構成する資材の種類は、上記に限定されることなく、おむつ1の肌面側から平面視したときの方が、おむつ1の非肌面側から平面視したときに比べて、視認される無漂白資材の色の最大濃度が高くなればよい。
【0069】
また、図2に示すように、肌側コアラップシート部121、及び、非肌側コアラップシート部122は、同じコアラップシート12の一部である。そして、コアラップシート12の幅方向の両側部は、吸収性コア11の厚さ方向の一方側から他方側(ここでは肌側から非肌側)に向かって、幅方向の内側に折り返されている。
【0070】
つまり、吸収性コア11は1枚のコアラップシート12で覆われている。そのため、吸収性コア11の肌側面を覆う肌側コアラップシート部121と、吸収性コア11の非肌側面を覆う非肌側コアラップシート部122において、無漂白資材の含有率が同じとなる。この場合も、上記のように、肌側シート(2)と非肌側シート(3,4)の構成を工夫することで、おむつ1の肌面側から平面視したときの方が、おむつ1の非肌面側から平面視したときに比べて、視認される無漂白資材の色の最大濃度を高くすることができる。
【0071】
逆に言えば、おむつ1の肌面側からと非肌面側からとで、視認される無漂白資材の色の濃度を異ならせるために、無漂白資材の含有率(無漂白資材の色)が異なる2種類のコアラップシート(肌側コアラップシート部121と非肌側コアラップシート部122)を製造する必要がなくなる。そのため、おむつ1の製造を簡素化できる。
【0072】
図5は、第1実施形態のおむつ1の変形例を説明する断面模式図である。図5に示すように、肌側コアラップシート部121と、非肌側コアラップシート部122は、別の2枚のシートであってもよい。2枚のシートにおいて、無漂白資材の含有率が同じであっても、異なっていてもよい。また、図示しないが、コアラップシート12の幅方向の両側部が非肌側から肌側に向かって幅方向の内側に折り返され、コアラップシート12の側部の重なり部(123)が吸収性コア11の肌面側に設けられていてもよい。
【0073】
図6及び図7は、展開かつ伸長状態のおむつ1の非肌面側の概略平面図である。図6は、変色後のインジケーター部31,32の説明図である。図7は、変形例のインジケーター部33の説明図である。
【0074】
防漏シート3(非肌側シート)は、図4図6に示すように、排泄物と接触することにより色が変化するインジケーター部31,32を有する。具体的には、防漏シート3の非肌側面に、インジケーター部31,32を形成する指示薬(例えば、PH指示薬)が塗布されている。本実施形態のインジケーター部31,32は、変色前の色が黄色系の色であり、変色後の色が青緑系の色である。黄色系の色としては、例えば、オストワルト色相環上の黄色の色相に含まれる色等を例示でき、青緑系の色としては、オストワルト色相環上の緑から青の色相に含まれる色等を例示できる。
【0075】
図6では、おむつ1の長手方向に長く延びた長方形状(線形状)のインジケーター部31が、おむつ1の幅方向の中心線C上に1つと、その両隣に幅方向に間隔をあけて1つずつ設けられている。また、図6には、長方形状のインジケーター部31よりも長手方向の腹側に、ダイヤ型の図柄であるインジケーター部32が設けられている。ただし、インジケーター部31,32の形状、数、配置等は、特に限定されるものではない。
【0076】
また、前述したように、コアラップシート12は、幅方向の両側部が吸収性コア11の厚さ方向の肌側から非肌側に向かって、幅方向の内側に折り返されている。そして、コアラップシート12の幅方向の両側部が厚さ方向に重なった重なり部123が、吸収性コア11の非肌面側に設けられている。この場合、おむつ1を展開かつ伸長させた状態において、おむつ1を非肌面側から平面視したときに、図6に示すように、インジケーター部31,32の少なくとも一部は、コアラップシート12の重なり部123以外の非重なり部124と重なっているとよい。
【0077】
薄茶色であるコアラップシート12が2層である重なり部123に比べて、1層である非重なり部124の方が、おむつ1を非肌面側から視認したときに、コアラップシート12の色が淡く視認される。そのため、非重なり部124に位置するインジケーター部31,32は、おむつ1の非肌面側から視認されやすくなる。よって、ユーザーは、インジケーター部31,32を利用して、排泄を確認しやすくなる。
【0078】
特に、変色前のインジケーター部31,32の色は、黄色系の色であり、目立ち難く、コアラップシート12の薄茶色(無漂白資材の色)に近い色でもある。そのため、インジケーター部31,32の少なくとも一部が非重なり部124に位置することで、ユーザーが、おむつ1の使用前に、変色前のインジケーター部31,32の存在を認識しやすくなる。なお、図面の煩雑さを防ぐため、図面では重なり部123と非重なり部124を同じ色で示している。
【0079】
しかし、上記に限定されず、おむつ1を展開かつ伸長させた状態において、おむつ1を非肌面側から平面視したときに、図7に示すように、インジケーター部33の全てが、コアラップシート12の重なり部123と重なっていてもよい。
【0080】
図4及び図6では、3本の長方形状のインジケーター部31の幅方向に並ぶ間隔が広く、また、ダイヤ型の図柄であるインジケーター部32の幅方向の長さが長い。そのため、インジケーター部31,32が、コアラップシート12の重なり部123よりも幅方向の外側にまで延出している。これに対して、図7では、2本の長方形状のインジケーター部33が幅方向に比較的に狭い間隔で並んでいる。そのため、幅方向において、インジケーター部33が、コアラップシート12の重なり部123の内側に収まっている。
【0081】
図7の場合、インジケーター部33の全てがコアラップシート12の2層部に位置する。そのため、インジケーター部33を形成する指示薬が、コアラップシート12の内側に滲み出し難い。よって、指示薬による吸収性コア11への影響を抑制できる。
【0082】
また、図3に示すように、吸収性コア11は、所定方向に長さを有し、周囲に比べて坪量が低い低坪量部13を有することが好ましい。低坪量部13は、実質的に吸収性コア11の構成繊維を有さないスリットであってもよい。
【0083】
図3では、おむつ1の長手方向の中央部、すなわち、着用者の股下部が当接する部位に、長手方向に沿って延び、長手方向に長さを有する低坪量部13が、幅方向に間隔を空けて2つ設けられている。そのため、低坪量部13が吸収性コア11の折れ基点となり、着用者の股下部を包むように、吸収性コア11の幅方向の側部が立ち上がりやすくなる。ただし、低坪量部13は、図3に例示する形状、数、配置位置に限定されない。
【0084】
例えば、図示しないが、おむつ1の幅方向に沿って延び、幅方向に長さを有する低坪量部であってもよい。この低坪量部の場合、吸収性コア11は長手方向に折れ曲がりやすくなる。そのため、着用者の腹側部から背側部に亘る曲線形状に沿って、吸収性コア11が折れ曲がりやすくなる。このように吸収性コア11に低坪量部13が設けられていることで、吸収性コア11の着用者へのフィット性が向上する。ただし、吸収性コア11が低坪量部13を備えていなくてもよい。
【0085】
====第2実施形態:吸収体10===
図8A及び図8Bは、第2実施形態のおむつ1の説明図である。図8Aは、展開かつ伸張状態のおむつ1の肌面側の概略平面図であり、図8Bは、展開かつ伸長状態のおむつ1の非肌面側の概略平面図である。
【0086】
第2実施形態のおむつ1が有する吸収体10は、吸収体10が有する吸収性コア11が無漂白資材を含む。つまり、吸収性コア11を構成する繊維の一部又は全部を、漂白処理が施されていない繊維とする。
【0087】
図8A及び図8Bでは、コアラップシート12は無漂白資材を含まない吸収体10を例示する。そのため、吸収体10のうち、吸収性コア11が設けられた領域は、おむつ1の肌面側及び非肌面側から無漂白資材の色が視認可能となるが、コアラップシート12のみの領域は、無漂白資材の色が視認されない。ただし、これに限定されず、例えば、吸収性コア11とコアラップシート12の両方が、無漂白資材を含んでいてもよいし、吸収性コア11と肌側コアラップシート部121が無漂白資材を含み、非肌側コアラップシート部122は無漂白資材を含んでいなくてもよい。
【0088】
例えば、吸収性コア11のみが無漂白資材を含む場合、吸収体10の肌面側から視認される無漂白資材の色と、吸収体10の非肌面側から視認される無漂白資材の色とが同等となりやすい。この場合も、第1実施形態にて説明したように、肌側シートや非肌側シートの構成を工夫することで、おむつ1の肌面側から平面視したときの方が、おむつ1の非肌面側から平面視したときに比べて、視認される無漂白資材の色の最大濃度を高くすることができる。
【0089】
===実施例===
図9Aから図9Cは、インジケーター部31,32の視認性を評価した結果を示す図である。図10は、おむつ1の肌面側から視認される無漂白資材の色を評価した結果を示す図である。実際に、無漂白資材を含む吸収体10を備えたおむつ1を製造し、評価を行った。
【0090】
実施例1は、コアラップシート12(ティッシュ、坪量20g/m)を構成する木材パルプのうち、30%を無漂白パルプとし、70%を漂白処理が施された漂白パルプとした。そして、無漂白資材を含まない吸収性コア11(木材パルプ+SAP、坪量350g/m)を、図2に示すようにコアラップシート12で被覆して、吸収体10を製造した。表面シート2は、肌側面に凹凸を有する不織布(エアースルー不織布、坪量30g/m)とした。防漏シート3は、樹脂フィルム(坪量15g/m)とし、外装シート4は、非肌側面に凹凸を有する不織布(エアースルー不織布、坪量25g/m)とした。防漏シート3の肌面側に、排泄物との接触により色が変化する指示薬(黄色系から青緑系に変化)を塗布して、インジケーター部31,32を形成した。
【0091】
実施例2,3、及び、比較例1は、吸収体10以外の構成は、実施例1と同じである。実施例2では、コアラップシート12のうち50%を無漂白パルプとし、50%を漂白パルプとした。実施例3では、100%無漂白パルプであるコアラップシート12を採用した。比較例1では、100%漂白パルプであるコアラップシート12を採用した。
【0092】
<<インジケーター部31,32の視認性について>>
上記のサンプル(実施例1~3、比較例1)毎に、サンプルを展開かつ伸長状態にし、非肌側面を上にして、図4図6に示す測定箇所P1~P4について、Lab値を測定した。測定箇所P1~P4は、吸収性コア11の設けられている領域に位置する。また、非インジケーター部である測定箇所P2,P4は、吸収体10の平面の主な領域となるコアラップシート12の非重なり部124に位置する。図4は、排泄前を想定した乾燥状態のおむつ1(サンプル)であり、インジケーター部31,32は変色前の色(黄色系の色)を呈す。図6は、排泄後を想定し、おむつ1の肌面側から人工尿を滴下したおむつ1(サンプル)であり、インジケーター部31,32は変色後の色(青系の色)を呈す。
【0093】
人工尿としては、pH標準溶液(堀場製作所製、pH標準液、pH6.86)を使用した。また、測定箇所P3に位置するインジケーター部31,32の色がしっかりと変化する量の人工尿(ここでは20ml)を滴下した。人工尿の滴下位置は、測定箇所P3(インジケーター部31,32)に対応する部位である。
【0094】
Lab値は、国際照明委員会(CIE)のLab色空間(L色空間)に基づく、明度に関するL値(L値)、彩度に関するa値,b値(a値,b値)である。測色器は、コニカミノルタ社製の色彩色差計CR-400(測定直径8mm)を使用した。一般の屋内照明下(ここでは、蛍光灯:直径11mm)で測定及び評価を行った。
【0095】
そして、2つの測定箇所の測定結果の差(L値の差ΔL、a値の差Δa、b値の差Δb)に基づく色差ΔEを取得し、図9A図9Cにまとめた。色差ΔEは、次の式により算出される。なお、測定箇所P1~P4毎に、色差ΔEを3回取得し、その平均値を図9A図9Cに示す
ΔE=[(ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2
【0096】
図9Aは、測定箇所P1と測定箇所P2(図4)の測定結果を示す。測定箇所P1は、変色前のインジケーター部31,32が位置する部位である。測定箇所P2は、インジケーター部31,32以外の部位であって、印刷が施されていない部位(図柄40が設けられていない部位)である。
【0097】
比較例1は無漂白資材を有さず、測定箇所P2の色が白色であるため、色差ΔEが最も大きい値(9.64)となった。実施例1は、他の実施例2,3に比べて、無漂白資材の含有率が低く、おむつ1の非肌面側から視認される無漂白資材の色(測定箇所P2の色)が薄い。そのため、無漂白資材を含む実施例の中で実施例1の色差ΔEが最も大きい値(7.02)となり、次に実施例2の色差ΔEが大きく(5.91)、実施例3の色差ΔEが最も小さい値(4.03)となった。
【0098】
さらに、サンプル毎に、被験者(成人:3名)が、変色前のインジケーター部31,32の視認性について評価した。サンプルを展開かつ伸長させた状態(図4)で、おむつ1の非肌面側からインジケーター部31,32を観察した。
【0099】
その結果、比較例1と実施例1については、変色前のインジケーター部31,32の存在に気付きやすいという評価「〇」が得られた。実施例2については、変色前のインジケーター部31,32の存在に気付くことができるという評価「△」が得られた。実施例3については、変色前のインジケーター部31,32の存在に気付き難いという評価「×」が得られた。
【0100】
上記の結果から、展開かつ伸長状態のおむつ1において、吸収性コア11が設けられている領域を非肌面側から平面視したときに、変色前のインジケーター部31,32(測定箇所P1)と、インジケーター部31,32以外の部位であって、印刷が施されていない部位(測定箇所P2)との、Lab色空間における色差ΔEは5.91以上であることが好ましい。
【0101】
そうすることで、上記の色差ΔEが5.91未満である場合に比べて、変色前のインジケーター部31,32が目立ちやすくなる。よって、変色前のインジケーター部31,32は、淡い色であり、無漂白資材の色(薄茶色等)に近い色でもあるが、おむつ1の使用前に、ユーザーがインジケーター部31,32の存在を認識しやすく、インジケーター部31,32を利用してもらいやすくなる。
【0102】
図9Bは、測定箇所P3と測定箇所P4(図6)の測定結果を示す。測定箇所P3は、変色後のインジケーター部31が位置する部位である。測定箇所P4は、インジケーター部31,32以外の部位であって、印刷が施されていない部位である。図9Aの測定結果と同様に、図9Bにおいても、無漂白資材の含有率が大きくなるほど、色差ΔEが小さくなる結果が得られた。比較例1、実施例1、実施例2、実施例3の順に、色差ΔEが、11.36、11.12、8.91、6.57と小さい値が得られた。
【0103】
さらに、サンプル毎に、被験者(成人:3名)が、変色後のインジケーター部31,32の視認性について評価した。サンプルを展開かつ伸長させた状態(図6)で、おむつ1の非肌面側からインジケーター部31,32を観察した。ただし、図9B(変色後のインジケーター部31,32)の評価時は、おむつ1の着用中にインジケーター部31,32を確認することを考慮して、図9A(変色前のインジケーター部31,32)の評価時よりも厳しく視認性を評価してもらった。つまり、おむつ1の通常使用時と同じ感覚で評価してもらった。
【0104】
その結果、比較例1と実施例1については、変色後のインジケーター部31,32の存在に気付きやすいという評価「〇」が得られた。実施例2については、変色後のインジケーター部31,32の存在に気付くことができるという評価「△」が得られた。実施例3については、変色後のインジケーター部31,32の存在に気付き難いという評価「×」が得られた。
【0105】
上記の結果から、展開かつ伸長状態のおむつ1において、吸収性コア11が設けられている領域を非肌面側から平面視したときに、変色後のインジケーター部31,32と、インジケーター部31,32以外の部位であって、印刷が施されていない部位との、Lab色空間における色差が8.91以上であることが好ましい。
【0106】
そうすることで、上記の色差ΔEが8.91未満である場合に比べて、変色後のインジケーター部31,32が目立ちやすくなる。よって、インジケーター部31,32の周囲の領域が白色でなく、無漂白資材の色であっても、ユーザーは、変色後のインジケーター部31,32に気付きやすく、排泄の有無を確認しやすくなる。
【0107】
図9Cは、おむつ1の同じ位置での測定結果、つまり、変色前のインジケーター部31,32(図4の測定箇所P1)と、変色後のインジケーター部31,32(図6の測定箇所P3)の測定結果を示す。図9Aの測定結果と同様に、図9Cにおいても、無漂白資材の含有率が大きくなるほど、色差ΔEが小さくなる結果が得られた。比較例1、実施例1、実施例2、実施例3の順に、色差ΔEが、11.73、11.46、8.67、5.88と小さい値が得られた。
【0108】
さらに、サンプル毎に、被験者(成人:3名)が、変色前のインジケーター部31,32(図4)と、変色後のインジケーター部31,32(図6)との、色の違いの視認性について評価した。無漂白資材の含有率が同じである2つのサンプルであって、人工尿を滴下していないサンプル(図4)と、人工尿を滴下した後のサンプル(図6)を準備した。2つサンプルを展開かつ伸張させた状態で、おむつ1の非肌面側からインジケーター部31,32を観察した。
【0109】
その結果、比較例1と実施例1については、インジケーター部31,32の色の変化が分かりやすいという評価「〇」が得られた。実施例2については、インジケーター部31,32の色の変化が分かるという評価「△」が得られた。実施例3については、インジケーター部31,32の色の変化が分かり難いという評価「×」が得られた。
【0110】
上記の結果から、展開かつ伸長状態のおむつ1において、吸収性コア11が設けられた領域を非肌面側から平面視したときに、変色前のインジケーター部31,32と、変色後のインジケーター部31,32との、Lab色空間における色差ΔEが8.67以上であることが好ましい。
【0111】
そうすることで、上記の色差ΔEが8.67未満である場合に比べて、インジケーター部31,32の色の変化が大きくなる。よって、ユーザーは、排泄によってインジケーター部31,32の色が変化したことに気付きやすく、排泄の有無を確認しやすくなる。
【0112】
<<清潔感、尿の視認性について>>
前述の測色器を用いて、各サンプル(実施例1~3、比較例1)の肌面側から測定した彩度(=[a+b1/2)を図10にまとめた。図3に示すように、展開かつ伸張状態のサンプルを、肌側面を上にした状態で固定し、吸収性コア11が設けられている領域であり、サイドシート5が位置しない領域(すなわち無漂白資材の色の濃度(彩度)が最大となる領域)を測定箇所とした。サンプル毎に、1つの測定箇所を3回ずつ測定し、その最大値を図10に示す。なお、サンプルの吸収体10には低坪量部13が形成されていない。
【0113】
図10に示すように、無漂白資材の含有率が大きくなるにしたがって、彩度が大きくなる結果が得られた。比較例1、実施例1、実施例2、実施例3の順に、彩度が、2.94、7.41、9.16、11.41と順に大きい値が得られ、おむつ1の肌面側から視認される無漂白資材の色が濃くなる。
【0114】
そして、サンプル(実施例1~3、比較例1)毎に、被験者(成人:5名)が、おむつ1に対する清潔感と、オーガニック感について評価した。乾燥状態(使用前の)サンプルを展開かつ伸張状態で、肌側面を上にして固定した状態で評価した。
【0115】
図10の結果から、無漂白資材を含まない比較例1では、清潔感については良い評価「〇」であったが、オーガニック製品である印象が得られない評価「×」となった。無漂白資材を含む実施例1~実施例3では、おむつ1に対してオーガニック製品である印象が得られる評価「〇」となった。また、彩度が最も低い実施例1では、清潔な製品である印象がしっかりと得られるという評価「〇」であった。中間の彩度である実施例2では、清潔な印象が得られるという評価「△」であった。彩度が最も高い実施例3では、清潔な印象が得られ難いという評価「×」であった。
【0116】
以上の結果から、おむつ1(使用前の乾燥状態のおむつ1)を展開かつ伸長させた状態において、吸収性コア11が設けられた領域を肌面側から平面視したときに、視認される無漂白資材の色の最大彩度が9.16以下であることが好ましい。
【0117】
そうすることで、上記の最大彩度が9.16よりも大きい場合に比べて、おむつ1の肌面側から視認される無漂白資材の色を適度に抑えることができる。そのため、ユーザーがおむつ1の肌側面を視認したときに、おむつ1に対して、オーガニック製品である印象を抱きつつ、清潔な印象が損なわれてしまうことを抑制できる。また、尿の色と無漂白資材の色は近い色であるが、上記のように、おむつ1の肌面側から視認される無漂白資材の色を適度に抑えることで、おむつ1に排泄された尿の色を確認できる。よって、尿の色に基づき着用者の健康状態を確認できる。
【0118】
なお、上記に説明した色差ΔEや彩度となるように、吸収体10に含有される無漂白資材の含有率を調整したり、肌側シートや非肌側シートの構成を調整したりするとよい。ただし、色差ΔEや彩度は上記に限定されるものではない。
【0119】
また、上記に説明した色差ΔEや彩度の測定方法は、今回測定した方法と同じ方法とする。使用する色彩色差計や人工尿は、上記のもの、又は上記のものと同等のものを使用して測定する。
【0120】
以上、本特許の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本特許の理解を容易にするためのものであり、本特許を限定して解釈するためのものではない。また、本特許は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本特許にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0121】
1 テープ型使い捨ておむつ(吸収性物品)、
2 表面シート(肌側シート)、
3 防漏シート(非肌側シート)、
4 外装シート(非肌側シート)、
5 サイドシート、
6 脚回り弾性部材、7 防漏壁弾性部材、
10 吸収体、11 吸収性コア、
12 コアラップシート、
121 肌側コアラップシート部、
122 非肌側コアラップシート部、
123 重なり部、124 非重なり部、
13 低坪量部、
20 ファスニングテープ
21 基材、22 フック材、23 ターゲットテープ、
31~33 インジケーター部、
40 図柄
図1
図2
図3
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図8
図9
図10