(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】スチームコンベクションオーブン調理用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 29/10 20160101AFI20240401BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240401BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240401BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20240401BHJP
【FI】
A23L29/10
A23D9/00 506
A23L5/00 L
A23L19/00 A
(21)【出願番号】P 2022089783
(22)【出願日】2022-06-01
(62)【分割の表示】P 2017086508の分割
【原出願日】2017-04-25
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理樹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 尚志
(72)【発明者】
【氏名】葉桐 宏厚
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2004/016090(JP,A1)
【文献】特開2015-029500(JP,A)
【文献】特開平09-163929(JP,A)
【文献】特開平07-016052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチームコンベクションオーブンによる加熱調理で得られる食品
(衣材で衣付けされたフライ様食品を除く)のシャキシャキ食感を向上する方法であって、
加熱前の食材に、
食用油脂と、グリセリン重合度が3以上のポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の乳化剤とを含む油脂組成物を添加し、前記加熱調理をおこなう
ことを特徴とし、
前記乳化剤のHLBが1~7.3であり、
前記油脂組成物中における前記乳化剤の含有量が0.01質量%以上5質量%以下である、前記食品のシャキシャキ食感を向上する方法。
【請求項2】
前記乳化剤の脂肪酸がオレイン酸である、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
前記加熱前の食材が野菜類、キノコ類、および根菜類から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の前記方法。
【請求項4】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが3~7.3であり、前記ソルビタン脂肪酸エステルのHLBが3~6.5である、請求項1~3に記載の前記方法。
【請求項5】
スチームコンベクションオーブンによる加熱調理において、
加熱前の食材に、
食用油脂と、グリセリン重合度が3以上のポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の乳化剤とを含む油脂組成物を添加する
ことを特徴とし、
前記乳化剤のHLBが1~7.3であり、
前記油脂組成物中における前記乳化剤の含有量が0.01質量%以上5質量%以下である、前記加熱調理の時間を短縮する方法。
【請求項6】
前記乳化剤の脂肪酸がオレイン酸である、請求項
5に記載の前記方法。
【請求項7】
食用油脂と、グリセリン重合度が3以上のポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の乳化剤
とを含む油脂組成物を有効成分とする、スチームコンベクションオーブンによる加熱調理で得られる食品
(衣材で衣付けされたフライ様食品を除く)のシャキシャキ食感向上剤
であって、
前記乳化剤のHLBが1~7.3であり、
前記油脂組成物中における前記乳化剤の含有量が0.01質量%以上5質量%以下である、前記シャキシャキ食感向上剤。
【請求項8】
前記乳化剤の脂肪酸がオレイン酸である、請求項
7に記載の前記シャキシャキ食感向上剤。
【請求項9】
食用油脂と、グリセリン重合度が3以上のポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の乳化剤
とを含む油脂組成物を有効成分とする、スチームコンベクションオーブンによる加熱調理の調理時間短縮剤
であって、
前記乳化剤のHLBが1~7.3であり、
前記油脂組成物中における前記乳化剤の含有量が0.01質量%以上5質量%以下である、前記調理時間短縮剤。
【請求項10】
前記乳化剤の脂肪酸がオレイン酸である、請求項
9に記載の前記調理時間短縮剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームコンベクションオーブン調理用油脂組成物およびスチームコンベクションオーブン調理による食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一度に大量の加熱調理食品を製造する場合には、通常、鍋を使って加熱調理が行われている。その場合、離型油として乳化剤等を含む油脂組成物が使われることがある(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかし、鍋を使った加熱調理は、調理作業者や作業日によって温度等の調理条件が変わり、そのため、調理された食品の品質にばらつきが生じる場合がある。このような問題点を解決すべく、大量の加熱調理用機器として、近年、スチームコンベクションオーブンが開発され、使用されるようになった。
【0004】
スチームコンベクションオーブンは、加熱時間や品温の管理が容易であり、また、密閉容器内で加熱を行うため、衛生的で安全であるという利点がある。一方、スチームコンベクションオーブンには、密閉容器内に蒸気を充満させることから、調味液が希釈されるという問題や野菜炒め等のように食品のシャキシャキ感を要求される調理には不向きであるという問題があった。
【0005】
このような状況において、特許文献3には、スチームコンベクションオーブン調理用調味料が開示されている。このように、調味料においては、スチームコンベクションオーブン調理に適したものの開発が進められている。
【0006】
一方、食材の食感を向上する点については、未だ改善の余地があり、後述の比較例で示したように、特許文献2に開示された油脂組成物は、フライパンでの調理において「火通りが良い」との評価(段落0017)にも関わらず、スチームコンベクションオーブン調理においては、その調理時間を短縮することはできず、また、食品のシャキシャキ感の点で十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-39021号公報
【文献】特開平8-131071号公報
【文献】特開2007-151408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、スチームコンベクションオーブン調理において、食品の食感を向上することができ、また、さらに調理時間を短縮することができる油脂組成物を提供することにある。また、スチームコンベクションオーブン調理による食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の界面張力を有する油脂組成物が、スチームコンベクションオーブン調理において、食品の食感を向上することができ、また、調理時間を短縮することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、界面張力(mN/m)が0.1以上16以下である、スチームコンベクションオーブン調理用油脂組成物である。
【0011】
前記油脂組成物は乳化剤を含むことが好ましい。
【0012】
さらに、前記乳化剤はモノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、グリセリン重合度が3以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルから選ばれる一種または二種以上であることが好ましい。
【0013】
さらに、前記乳化剤のHLBは1~7.3であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記乳化剤を0.01質量%以上5質量%以下含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明は、食用油脂に乳化剤を添加する工程を含む、界面張力(mN/m)が0.1以上16以下であるスチームコンベクションオーブン調理用油脂組成物の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、食材に界面張力(mN/m)が0.1以上16以下である油脂組成物を添加し、スチームコンベクションオーブンで加熱調理をおこなう、食品の製造方法である。
【0017】
さらに、前記食材100質量部に対し、前記油脂組成物を1質量部以上20質量部以下添加することが好ましい。
【0018】
また、本発明は、スチームコンベクションオーブンによる加熱調理で得られる食品において、加熱前の食材に、界面張力(mN/m)が0.1以上16以下である油脂組成物を添加し、前記加熱調理をおこなう、前記食品の食感を向上する方法である。前記食感は、シャキシャキ感であることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、スチームコンベクションオーブンによる加熱調理において、加熱前の食材に、界面張力(mN/m)が0.1以上16以下である油脂組成物を添加することを特徴とする、前記加熱調理の時間を短縮する方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスチームコンベクションオーブン調理用油脂組成物は、スチームコンベクションオーブン調理において、食品の食感を向上することができ、またさらに、調理の時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
本発明のスチームコンベクションオーブン調理用油脂組成物(以下、本発明の油脂組成物ともいう)は界面張力(mN/m)が0.1以上16以下である。前記界面張力は、好ましくは0.1以上14以下であり、より好ましくは0.2以上8以下であり、さらに好ましくは0.2以上6以下であり、さらにより好ましくは0.2以上5以下であり、特に好ましくは0.2以上2.5以下である。所定の界面張力の油脂組成物を使用することで、スチームコンベクションオーブンでの調理時間を短縮し、得られた食品の食感を向上することができる。
【0023】
前記油脂組成物の界面張力(mN/m)は、25℃において、油脂組成物をニードル内径0.8mmで滴下した際の水との相互の界面張力を意味する。例えば、滴下容量法表面張力測定装置TVT2(LAUDA社製)等を使用し、測定することができる。
【0024】
本発明の油脂組成物は、乳化剤を含むことが好ましい。乳化剤を含むことで油脂組成物の界面張力を所定の範囲とすることが容易となる。乳化剤の含有量は0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.03質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
また、前記乳化剤は特に限定されないが、好ましくはモノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、グリセリン重合度が3以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルから選ばれる一種または二種以上であり、より好ましくは、グリセリン重合度が3以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる一種または二種である。
また、前記乳化剤の脂肪酸は、好ましくは不飽和脂肪酸であり、より好ましくはオレイン酸である。
【0026】
また、前記乳化剤のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)は、特に限定されないが、好ましくは1~7.3であり、より好ましくは3~7.3であり、さらに好ましくは4~7.2であり、さらにより好ましくは4.5~7.1であり、特に好ましくは4.5~7.0である。
【0027】
また、本発明の油脂組成物は、HLBが1~7.3である乳化剤を0.01質量%以上5質量%以下含むことが好ましく、0.03質量%以上3質量%以下含むことがより好ましく、0.03質量%以上2質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0028】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、特に限定されないが、グリセリン重合度は3以上であり、好ましくは3以上12以下であり、より好ましくは3以上8以下であり、さらに好ましくは4以上6以下である。
また、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸は、好ましくは不飽和脂肪酸であり、より好ましくはオレイン酸である。
また、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、特に限定されないが、好ましくは5~8であり、より好ましくは6~7.3であり、さらに好ましくは6.5~7.3である。
【0029】
また、本発明の油脂組成物は、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.01質量%以上2質量%以下含むことが好ましく、0.03質量%以上1質量%以下含むことがより好ましい。
【0030】
前記ソルビタン脂肪酸エステルは、特に限定されないが、前記ソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸は、好ましくは不飽和脂肪酸であり、より好ましくはオレイン酸である。
また、前記ソルビタン脂肪酸エステルのHLBは、特に限定されないが、好ましくは3~6.5であり、より好ましくは4~6.5であり、さらに好ましくは4.5~6である。
【0031】
また、本発明の油脂組成物は、前記ソルビタン脂肪酸エステルを0.01質量%以上5質量%以下含むことが好ましく、0.03質量%以上3質量%以下含むことがより好ましく、0.05質量%以上2質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0032】
本発明において食材とは、食品の原材料となるものであり、好ましくは、加熱調理後のシャキシャキした食感を必要とされるものである。例えば、キャベツ、もやし、白菜、ピーマン、玉ネギ等の野菜類、エノキタケ、シイタケ等のキノコ類、ごぼう等の根菜類等を挙げることができる。
【0033】
また、本発明の食品としては、例えば、もやし炒め、野菜炒め、八宝菜、中華あんかけ、ホットサラダ、きんぴらごぼう等が挙げられる。
【0034】
本発明の油脂組成物は、食材100質量部に対し、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは2質量部以上15質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上12質量部以下添加する。添加後、好ましくは絡める等の作業をおこなった後、スチームコンベクションオーブンにて加熱調理する。
【0035】
本発明のスチームコンベクションオーブンによる調理は、水蒸気を含む加熱調理である。スチームコンベクションオーブンの加熱温度は、食材等により適宜選択すればよく、例えば、120℃以上240℃以下であり、好ましくは120℃以上200℃以下である。
【0036】
本発明の油脂組成物の油脂としては、特に限定されず、食用油脂として使用できるものを用いることができる。例えば、パーム核油、パーム油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂等の植物油脂、ラード等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。また、これらの分別油(パーム油の中融点部、パーム油の分別軟質油、パーム油の分別硬質油等)、エステル交換油、水素添加油等の加工した油脂を使用できる。また、これらの食用油脂は、一種又は二種以上を使用することができ、大豆油、菜種油、コーン油、及びパーム油の分別軟質油のいずれか一種または二種以上を含むことが好ましい。
また、前記油脂の上昇融点は、好ましくは5℃以下であり、より好ましくは0℃以下である。所定の上昇融点とすることで、食材への広がりが良好となり、調理時間を短縮することが可能となる。なお、上昇融点は、基準油脂分析試験法2.2.4.2-1996に準じ、測定することができる。
【0037】
本発明の油脂組成物の油脂含量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは97質量%以上である。特に上限はないが、例えば、油脂と乳化剤の合計が100質量%以下となる含量である。また、本発明の油脂組成物の水の含量は、例えば、1質量%未満である。
【0038】
本発明の油脂組成物には、本発明の効果を阻害しない限り、通常油脂に添加できる助剤等を使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
【0040】
実施に際しては、以下のものを使用した。
【0041】
菜種油(上昇融点は0℃以下):AJINOMOTO さらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ社製
【0042】
<乳化剤>
使用した乳化剤を表1にまとめた。
【0043】
【0044】
<界面張力の測定方法>
25℃において、試験油脂組成物と水との界面張力(mN/m)を測定した。測定には、滴下容量法表面張力測定装置TVT2(LAUDA社製)を使用し、ニードル内径0.8mmで測定した。
【0045】
<スチームコンベクションオーブンでの調理時間の評価方法>
以下のように、食材が85℃に達するまでに要した時間を調理時間として、評価をおこなった。
【0046】
(1)事前準備
1.もやしを水で洗った後、サラダスピナー(200g/回)を用いて15秒間水切りをおこなった。
2.上記もやし 200gをボウルに入れ、塩 2g、試験油脂組成物 14gを1分間絡め、「調理用もやし」とした。
【0047】
(2)調理条件
1.スチームコンベクションオーブン(Panasonic社製healsio AX-X1;ウォーターオーブン;下段)を150℃に予熱した。
2.容器に調理用もやし 200gを入れ、さらに、ボタン式温度計(注1)を設置した後、スチームコンベクションオーブンに入れて、15分間、150℃に設定し、加熱調理をした。
注1:ボタン式温度計
使用機器:ThermoManager ハイパーサーモクロン(#1922E)
測定条件:温度計に防水カバーを付けてもやしの間に挟むように3点置き、調理開始から1分間隔で温度を測定した。
【0048】
(3)達温に要した時間の算出と補正
上記加熱中の温度履歴を1分間隔で測定し、約15分間加熱し、加熱終了後に下記式により、85℃に達温するまでに要した時間(分)(以下、「達温時間(分)」という)を算出し、3つのボタン式温度計の結果の平均値を使用した。試験日の異なる場合には、誤差を極力排除するため、対照として菜種油を使用し、対照の達温時間(分)を12.2分となるように補正をおこない、達温時間(分)とした。
達温時間(分)=A+1÷((C-B)×(85-B))
A:85℃に達する直前の時間(分)
B:85℃に達する直前の温度(℃)
C:85℃経過直後の温度(℃)
【0049】
(試験例1) 界面張力と達温時間の関係
試験油脂組成物として、表2に記載の油脂組成物(いずれも水の含量は1質量%未満)を使用した。「界面張力の測定方法」に従い、界面張力を測定し、「スチームコンベクションオーブンでの調理時間の評価方法」に従って、達温時間(分)を算出した。その結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
実施例2-1~4に示したように、界面張力(mN/m)が0.46~13.82である油脂組成物では、スチームコンベクションオーブンでの達温時間が10.4~11.4分であり、比較例2-1~2に比べて、達温時間が85~93%であり、調理時間を10%程度短縮できることがわかる。特に、界面張力(mN/m)が0.46~4.59において、その調理時間の短縮の効果が高く、0.46~0.94において、その効果が顕著であった。
一方、界面張力が24.13である比較例2-1や界面張力が測定できない比較例2-2では、達温時間が12.2分と時間がかかり、フライパンでの調理において、「火通りが良い」と報告されている比較例2-2の油脂組成物であっても、スチームコンベクションオーブンでの調理において、調理時間の短縮はできないことが確認された。
【0052】
(試験例2) 調理品(食品)の食感の評価
(1)事前準備
1.もやしを水で洗った後、サラダスピナー(200g/回)を用いて15秒間水切りをおこなった。
2.上記もやし 200gをボウルに入れ、塩 2g、表3に記載の油脂組成物 14g(もやし100質量部に対し、7質量部)を1分間絡め、「調理用もやし」とした。
【0053】
(2)調理条件と評価:
1.スチームコンベクションオーブン(Panasonic社製healsio AX-X1;ウォーターオーブン;下段)を150℃に予熱した。
2.調理用もやしに温度計のデーターロガーの先端を挿し、スチームコンベクションオーブン(150℃に設定)に入れ、85℃に達温した時を調理終了とした。
3.調理されたもやしを3名で食し、合議の上、下記基準で食感を評価した。その結果を表3に示す。なお、「シャキシャキ」とは、「ものをかんだり切り刻んだりするときの、歯ざわりや切れ味がよいさま」(大辞泉)のことをいう。
<食感の評価>
◎ シャキシャキ感が対照よりかなりある
○ シャキシャキ感が対照よりある
△ シャキシャキ感が対照よりややある
× シャキシャキ感が対照と同じ、もしくは、ない
【0054】
【0055】
表3に示したように、油脂組成物の界面張力(mN/m)が0.46~13.82において、調理されたもやしの食感が良好であり、0.46~0.94において、その食感がさらに良好であった。一方、界面張力(mN/m)が24.13や測定できない場合には、調理されたもやしの食感は十分ではなかった。また、フライパンでの調理には、良好であると報告されている比較例3-2の油脂組成物であっても、スチームコンベクションオーブンでの調理においては、食感の良好な食品を得ることができなかった。
【0056】
キャベツを適当な大きさにカットして、実施例3-2の油脂組成物を用いて、スチームコンベクションオーブンで調理したところ、シャキシャキした食感の良好なキャベツ炒めを得ることができた。