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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】注射デバイスのための電気的連結
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240401BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20240401BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61M5/315 510
A61M5/315 550J
A61M5/315 550Z
A61M5/20
A61M5/24
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022145725
(22)【出願日】2022-09-14
(62)【分割の表示】P 2019560377の分割
【原出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2022174226
(43)【公開日】2022-11-22
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】17305518.7
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・キューン
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510241(JP,A)
【文献】特表2004-520884(JP,A)
【文献】米国特許第05304128(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/20
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイス(102)であって:
少なくとも1つの電子構成要素(105)を含むストッパ(107)と;
ストッパ(107)に対して動くように構成されたエネルギー源(104)と;
プランジャロッド(108)のプランジャヘッド(109)であって、エネルギー源(104)を、注射デバイスのプライミング中に、該エネルギー源(104)が少なくとも1つの電子構成要素(105)から電気的にデカップリングされる第1の位置から、エネルギー源(104)が少なくとも1つの電子構成要素(105)に電気的に連結される第2の位置へ動かすためにエネルギー源(104)と係合するように構成されたプランジャヘッド(109)と
を含む、注射デバイス(102)。
【請求項2】
エネルギー源(104)は、ピン(126a、126b)を含み、少なくとも1つの電子構成要素(105)は、接触板(128a、128b)を含む、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項3】
ストッパ(107)は、電気絶縁材料を含み、ピン(126a、126b)は、電気絶縁材料を穿孔し、エネルギー源(104)を少なくとも1つの電子構成要素(105)に電気的に連結するように構成される、請求項2に記載の注射デバイス(102)。
【請求項4】
プランジャヘッド(109)は、エネルギー源(104)のピン(126a、126b)が接触板(128a、128b)から電気的にデカップリングされる第1の位置から、ピン(126a、126b)が接触板(128a、128b)に電気的に連結される第2の位置へエネルギー源(104)を動かすように構成されている、請求項2または請求項3に記載の注射デバイス(102)。
【請求項5】
エネルギー源(104)は、第1の位置および第2の位置において、ストッパ(107)の凹部内に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項6】
プランジャヘッド(109)は、ストッパ(107)の凹部に入るように構成された突出部を含む、請求項5に記載の注射デバイス(102)。
【請求項7】
少なくとも1つの電子構成要素(105)は、接触板(128a、128b)、アンテナ(128c)、センサ(128d)、プロセッサ(128e)、およびモータの少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項8】
エネルギー源(104)は、電池を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項9】
薬剤を含む薬剤容器をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項10】
少なくとも1つの電子構成要素(105)は、エネルギー源(104)が少なくとも1つの電子構成要素(105)に電気的に連結されたときに、注射デバイス(102)に関連するデータを生成するように構成されたプロセッサ(128e)を含む、請求項1~6、8または9のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項11】
エネルギー源(104)の遊休排出を防止するための、注射デバイス(102)の少なくとも1つの電子構成要素(105)へのエネルギー源(104)の制御された連結方法であって、
注射デバイス(102)のプランジャロッド(108)をエネルギー源(104)に向かって動かすこと、
プランジャロッド(108)のプランジャヘッド(109)をエネルギー源(104)に係合させること、および
エネルギー源(104)を少なくとも1つの電子構成要素(105)に向かって動かすこと
によって、注射デバイス(102)のプライミング中に、注射デバイス(102)のエネルギー源(104)を、注射デバイス(102)の少なくとも1つの電子構成要素(105)に電気的に連結させることを含む、方法。
【請求項12】
エネルギー源(104)を少なくとも1つの電子構成要素(105)に向かって動かすことは、注射デバイス(102)のストッパ(107)を穿孔することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ストッパー(107)が、少なくとも1つの電子構成要素(105)を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
エネルギー源(104)を少なくとも1つの電子構成要素(105)に向かって動かすことは、エネルギー源(104)のピン(126a、126b)が少なくとも1つの電子構成要素(105)から連結されていない第1の位置から、ピン(126a、126b)が少なくとも1つの電子構成要素(105)と電気的に連結される第2の位置へエネルギー源(104)を動かすことを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
エネルギー源(104)を少なくとも1つの電子構成要素(105)に向かって動かすことは、エネルギー源(104)を注射デバイス(102)のストッパ(107)の凹部内の第1の位置からストッパ(107)の凹部内の第2の位置に動かすことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
プランジャロッド(108)のプランジャヘッド(109)をエネルギー源(104)
と係合させることは、プランジャロッド(108)の突出部を注射デバイス(102)のストッパ(107)の凹部中に動かすことを含む、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注射デバイスに関し、より詳細には、投与予定の薬剤の投与量を感知する注射デバイスのカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子的に有効にされる注射デバイスは、医療従事者による定期的な監督を必要とすることなく、患者が薬剤を安全に投与することを可能にしながら、医療従事者への治療データの送信を有効にする。電子的に有効にされる注射デバイスは、カートリッジまたはシリンジのような薬剤リザーバと、機械構成要素と、電子構成要素と、エネルギー供給とを含むことができる。エネルギー供給は電池とすることができ、電気構成要素へ電力を供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電子的に有効にされる注射デバイスの寿命は、そのエネルギー供給の寿命によって左右される可能性がある。いくつかの電子的に有効にされる注射デバイスは、使用される前に何年も保管されたままである可能性がある。電子的に有効にされる注射デバイスの現在の構成は、エネルギー供給の遊休排出を招き、したがって、電子的に有効にされる注射デバイスが使用されていない場合でも、保管寿命が長くなることで、エネルギー供給の寿命を消耗する可能性がある。低電池状態は、デバイスの機能不全もしくは動作不良、不正確な投与量、誤った投与量を招く可能性があり、またはさらには、電子構成要素の動作を停止させることによって、電子的に有効にされる注射デバイスを使用できなくする可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態は、エネルギー源の遊休排出を防止することによって、電子的に有効にされる注射デバイスの寿命を延ばすように構成された連結機構およびシステムを含む。本発明の一態様によれば、電子的に有効にされる注射デバイスは、エネルギー源と、エネルギー源から電気的にデカップリングされるように構成された電子構成要素と、トリガを生成するように構成されたプライミング構成要素と、プライミング構成要素に取り付けられ、トリガを受け取ったことに応答して、エネルギー源を電子構成要素に電気的に連結することを含む動作を実行するように構成された機構とを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、この機構は、エネルギー源を電子構成要素に電気的に連結するために起動されるように構成されたスイッチを含む。いくつかの実施形態では、エネルギー源は、2つの位置間で可動である。いくつかの実施形態では、この機構は、エネルギー源が電子構成要素から電気的にデカップリングされる第1の位置から、エネルギー源が電子構成要素に電気的に連結される第2の位置へ、エネルギー源を動かすことによって、エネルギー源を電子構成要素に連結するように構成される。いくつかの実施形態では、電子構成要素は、2つの接触板を含む。いくつかの実施形態では、エネルギー源は、2つの接触板に連結するように構成された2つのピンを含む。いくつかの実施形態では、電子構成要素は、プランジャストッパ内に含まれる。いくつかの実施形態では、エネルギー源は、支承部、プランジャロッド、およびプランジャヘッド内の空洞のうちの少なくとも1つに取り付けられる。いくつかの実施形態では、ピンは、電子構成要素に電気的に連結するためにプランジャストッパの少なくとも一部分を穿孔するように構成される。いくつかの実施形態では、エネルギー源は、電気絶縁膜によって支承部から分離されたプランジャロッドに取り付けられ、プライミングおよび投薬中に遠位方向に動くように構成される。い
くつかの実施形態では、ピンは、電子構成要素に電気的に連結するために電気絶縁膜を穿孔するように構成される。いくつかの実施形態では、プライミング構成要素は、注射デバイスによって排出予定の薬剤の用量を使用者がダイヤル設定することを有効にするように構成される。いくつかの実施形態では、電子構成要素は、薬剤を投薬した後にエネルギー源からデカップリングされる。
【0006】
本発明の別の態様によれば、薬剤注射システムが:エネルギー源、エネルギー源から電気的にデカップリングされるように構成された電子構成要素、トリガを生成するように構成されたプライミング構成要素、およびプライミング構成要素に取り付けられ、トリガを受け取ったことに応答して、エネルギー源を電子構成要素に電気的に連結することを含む動作を実行するように構成された機構を含む注射デバイスと;電子構成要素と通信するように構成された外部プロセッサとを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、電子構成要素は、外部プロセッサへ電気信号を送信するように構成されたアンテナを含む。いくつかの実施形態では、外部プロセッサは、薬剤が注射デバイスによって排出予定であることを示す使用者入力を受け取ることと、トリガを生成するための信号を注射デバイスのプライミング構成要素へ送信することとを含む動作を実行するように構成される。いくつかの実施形態では、アンテナは、排出予定の薬剤の量を送信するように構成される。いくつかの実施形態では、薬剤注射システムは、注射デバイスの構成要素にエネルギー源を取り付けるように構成された支持体を含むことができる。いくつかの実施形態では、支持体は、プライミング構成要素からの投薬力を伝達してエネルギー源を電子構成要素に電気的に連結するように構成された形状を含む。いくつかの実施形態では、支持体は、ケージおよびクラウン形状のうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
本発明のさらに別の態様によれば、注射デバイスを電気的に起動する方法が:トリガを生成することと、トリガを生成したことに応答して、注射デバイスの電子構成要素にエネルギー源を電気的に連結することと、電気的に連結したことに応答して、電子構成要素によって、注射デバイスによって排出予定の薬剤に関連する電気信号を生成することとを含む。
【0009】
本開示によるシステムは、本明細書に記載する態様および構成の任意の組合せを含むことができることが理解される。すなわち、本開示による方法は、本明細書に具体的に記載する態様および構成の組合せに限定されるものではなく、提供される態様および構成の任意の組合せも含む。
【0010】
本開示の1つまたはそれ以上の実施形態の詳細が、添付の図面および以下の説明に示されている。本開示の他の構成および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図1B】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図1C】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図1D】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図1E】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図1F】本開示によるデバイスの構成要素の例を示す。
図1G】本開示によるデバイスの構成要素の例を示す。
図1H】本開示によるデバイスの構成要素の例を示す。
図2】本開示の実施形態を実行することができる例示的なシステムアーキテクチャのブロック図である。
図3】本開示の動作を実施するために実行することができる例示的なプロセスを示す流れ図である。
図4】本開示の実施形態を実行するために使用することができる例示的なコンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な図面における同様の参照記号は、同様の要素を示す。
【0013】
本開示の実施形態は、一般に、エネルギー源の遊休排出を防止するための注射デバイスの電子構成要素へのエネルギー源の制御された連結を対象とする。より詳細には、本開示の実施形態は、トリガ信号を受け取り、トリガ信号を受け取ったことに応答して、注射デバイスのエネルギー源を電子構成要素に電気的に連結するように構成された機構を対象とする。
【0014】
本明細書に記載する主題について、主として注射デバイスなどの薬物送達デバイス(たとえば、インスリン注射デバイス)を参照して説明する。しかし、本明細書に記載するシステムおよび技法は、そのような応用例に限定されるものではなく、他の薬剤を放出する注射デバイス、または他のタイプの医療デバイス(たとえば、ポンプ)にも、等しく適当に導入することができる。
【0015】
「薬物送達デバイス」という用語は、薬物の体積を人間または動物の体内へ投薬するように構成された任意のタイプのデバイスまたはシステムを包含するものとする。体積は、典型的には、約0.5ml~約10mlの範囲とすることができる。限定されるものではないが、薬物送達デバイスは、薬物の皮下、筋肉内、または血管内の送達のために構成されたシリンジ、針安全システム、ペン注射器、自動注射器、大容量デバイス(LVD)、ポンプ、潅流システム、または他のデバイスを含むことができる。そのようなデバイスは、針を含むことが多く、針は、小ゲージ針(たとえば、約24ゲージより大きく、27、29、または31ゲージを含む)を含むことができる。
【0016】
特有の薬物と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要とされるパラメータの範囲内で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、特定の時間期間(たとえば、注射器に対して約3~約20秒、およびLVDに対して約5分~約60分)の範囲内で、低レベルまたは最小レベルの不快さ、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件の範囲内とすることができる。そのような変動は、たとえば薬物の粘性が約3cP~約50cPの範囲に及ぶことなどの様々な要因によって生じることがある。
【0017】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば、短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、いくつかの場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば、1日から少なくとも30日まで)の間、薬物を保存するように設計することができる。いくつかの場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間、薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。いくつかの場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば、薬物および希釈、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された2重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、2重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、人間または動物の体内へ投薬する前、および/または投薬中に、薬物ま
たは薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば、2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、投薬前に使用者によって所望されるときに2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分が人間または動物の体内へ投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0018】
いくつかの注射デバイスでは、注射デバイスの使用前にエネルギー源を電子構成要素に電気的に連結すると、エネルギー源の遊休排出を招く可能性がある。したがって、そのようなエネルギー源の遊休排出によって、電子注射デバイスの使用が邪魔される可能性がある。本明細書にさらに詳細に説明するように、本開示の実施形態はこの難題に対処する。たとえば、実施形態によれば、電子注射デバイスの電子構成要素は、エネルギー源の遊休排出を防止するために、トリガ信号が開始されるまで(たとえば、薬剤投与のプライミング工程中)、エネルギー源からデカップリングされるように構成することができる。
【0019】
図1A図1Fは、例示的な流体送達システム100の分解図を示す。例示的な流体送達システム100は、使用者が流体(たとえば、薬剤)を注射するのを支援し、医療データの共有を容易にするように構成することができる。例示的な流体送達システム100は、注射デバイス102および外部デバイス130を含むことができる。注射デバイス102は、エネルギー源104の遊休排出を防止するように構成することができる。注射デバイス102は、充填済みの使い捨て注射ペンとすることができ、または注射デバイス102は、再利用可能な注射ペンとすることができる。注射デバイス102は、外部デバイス130と通信するように構成することができる。注射デバイス102は、動作データ(たとえば、注射デバイス102のデータおよび使用開始時間、使用および収納中の注射デバイス102の温度)、および対応する治療データ(たとえば、注射デバイス102によって投薬された薬剤の量および時間)を、外部デバイス130へ送信することができる。いくつかの実施形態では、注射デバイス102は、注射デバイス102を固有に識別するために外部デバイス130によって使用される識別子に関連付けることができる。
【0020】
注射デバイス102は、ハウジング110およびニードルアセンブリ115を含むことができる。ハウジング110は、エネルギー源104と、少なくとも1つの電子構成要素105を含む電子システムと、薬剤リザーバ106と、ストッパ107と、プランジャロッド108と、プランジャヘッド109と、支承部111と、投与量ノブ112と、投与量窓114と、注射ボタン120とを収容することができる。ハウジング110は、液晶ポリマーなどの医療グレードのプラスチック材料から成形することができる。エネルギー源104は、1.5V~5Vの酸化銀もしくはリチウム電池(たとえば、SR626、SR516、SR416)などの使い捨てもしくは充電可能な電池、またはスーパーキャパシタとすることができる。いくつかの実施形態では、エネルギー源104は、複数の電池(たとえば、2つの1.5V電池)を含むことができる。エネルギー源104は、プライミング工程が実行された後などの特定の条件下で、電子構成要素105にエネルギーを供給するように構成することができる。たとえば、エネルギー源104は、1対のピン126a、126bを含むことができる。ピン126a、126bは、電子構成要素105の接触板128a、128bに電気的に連結するように構成することができる。
【0021】
電子システムは、エネルギー源104に連結したとき、注射デバイス102の1つまたはそれ以上の機能(たとえば、薬剤の放出)を実行および/または支援するように構成された1つまたはそれ以上の電子構成要素105を含むことができる。たとえば、電子構成要素105は、1対の接触板128a、128b、アンテナ128c、センサ128d(たとえば、フィードバックセンサ、温度センサ)、1つまたはそれ以上のプロセッサ128e、およびモータのうちの少なくとも1つを含むことができる。モータは、マイクロス
テップ増分で前進して特定の量の薬剤を投薬するように構成することができる。フィードバックセンサは、1つまたはそれ以上のプロセッサに、投薬された薬剤の量に比例する信号(たとえば、電圧)を提供することができる。1つまたはそれ以上のプロセッサ128eは、マイクロプロセッサを含むことができる。いくつかの実施形態では、マイクロプロセッサは、マイクロコントローラであり、たとえば単一のパッケージ内に形成されたマイクロプロセッサ構成要素および他の構成要素の組合せである。マイクロプロセッサは、算術および/または論理ユニットアレイとすることができる。1つまたはそれ以上のプロセッサ128eは、電子システムの他の電子構成要素105から受け取った1つまたはそれ以上の信号を処理し、アンテナ128cへ信号を送信することができる。たとえば、1つまたはそれ以上のプロセッサ128eは、図3を参照して詳細に説明するように、受け取ったデータ上で動作を実行して、出力データを生成するように構成することができる。1つまたはそれ以上のプロセッサ128eは、電気信号に少なくとも一部基づいて、注射デバイス102内の流体の量を判定し、流体の量を含むデータをアンテナ128cへ送信するように構成することができ、アンテナ128cは、そのデータを外部デバイス130へ送信することができる。
【0022】
アンテナ128cは、Bluetoothまたは近距離通信(NFC)アンテナとすることができる。アンテナ128cは、1つまたはそれ以上のプロセッサ128eおよび外部デバイス130へ信号を送信するように構成することができる。アンテナ128cによって送信される信号は、薬剤リザーバ106内の流体の量、センサ128dによって測定される値、および注射デバイス102の識別子を含むことができる。通信フィールド134は、外部デバイス130によって生成されるBluetoothフィールドまたはNFCフィールドとすることができる。外部デバイス130は、BluetoothまたはRFモジュール、送信器、受信器、および外部プロセッサ132を含むことができる。外部プロセッサ132は、注射デバイス102によって送信されるデータを処理するように構成することができる。外部デバイス130は、注射デバイス102から受け取って外部プロセッサ132によって処理したデータを表示する(たとえば、グラフィカルユーザインターフェースを介して)ように構成することができる。
【0023】
薬剤リザーバ106は、流体薬剤を収容するように構成することができる。薬剤リザーバ106は、準備済みの流体などの薬剤、麻酔薬などを包装するために使用されるカートリッジまたはシリンジのような従来の略円筒形の使い捨て容器とすることができる。薬剤リザーバ106は、1対の端部を備えることができ、一方の端部は、封止係合で針113の内端を受け取る穿孔可能な膜を有する。収容されている薬剤の用量は、投与量ノブ112を回すことによって、注射デバイス102から発することができ、次いで選択用量は、たとえばいわゆる国際単位(IU)の倍数で、投与量窓114を介して表示され、1IUは、約45.5マイクログラムの純結晶薬剤(1/22mg)と生物学的に同等である。投与量窓114内に表示される選択用量の一例は、図1Aに示すように、たとえば30IUとすることができる。いくつかの実施形態では、選択用量は、異なる形で、たとえば電子ディスプレイによって表示することができる(たとえば、投与量窓114は、電子ディスプレイの形態をとることができる)。
【0024】
投与量ノブ112を回すことで、機械的クリック音を引き起こし、音響フィードバックを使用者に提供することができる。投与量窓114内に表示される数字は、ハウジング110内に収容されるスリーブ上に印刷することができ、スリーブは、プランジャロッド108の端部に固定されたプランジャヘッド109と機械的に相互作用し、薬剤リザーバ106のストッパ107を押す。支承部111は、プランジャロッド108の一方または両方の端部に対する堅固な取付けを提供することができる。
【0025】
プランジャヘッド109(たとえば、プランジャの後端)は、薬剤リザーバ106内に
収容されているストッパ107を変位させることによって、流体の一部分を排出するように構成することができ、したがってストッパ107の位置が、注射デバイス102内の流体の量に関連付けられる。ストッパ107は、1対のピン126a、126bによって穿孔可能になるように構成されたゴムストッパなどの可撓性のストッパとすることができる。ストッパ107は、エネルギー源104の幾何形状および寸法に整合している外方に突出するリムを有することができる。ストッパ107は、プランジャヘッド109によって係合されているときにストッパ107が裂けたり捩れたりしないように十分な長さとすることができる。
【0026】
ニードルアセンブリ115は、ハウジング110に取り付けることができる針113を含む。針113は、内側ニードルキャップ116および外側ニードルキャップ117によって覆うことができ、外側ニードルキャップ117は、キャップ118によって覆うことができる。針113が患者の皮膚部分に突き刺されて、次いで注射ボタン120が押されたとき、ディスプレイ窓114内に表示される薬剤用量を、注射デバイス102から放出することができる。注射ボタン120が押された後、注射デバイス102の針113が特定の時間にわたって皮膚部分内に留まると、用量の大部分は実際に患者の体内へ注射される。薬剤用量の放出は、機械的クリック音を生成することができ、この音は、投与量ノブ112を使用したときに生じる音とは異なることができる。
【0027】
注射デバイス102は、薬剤リザーバ106が空になるまで、または注射デバイス102の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に到達するまで、数回の注射プロセスに使用することができる。注射デバイス102を最初に使用する前、エネルギー源104を電気構成要素に連結するため、および/または薬剤リザーバ106および針113から空気を除去するために、プライミング動作を実行することが必要な可能性がある。たとえば、プライミング動作は、薬剤の2単位を選択し、針113を上向きにして注射デバイス102を保持しながら注射ボタン120を押下することを含むことができる。薬剤の2単位を選択することまたは注射ボタン120を押下することによって生成されるインパルスは、電子構成要素105に対するエネルギー源104の電気的連結をトリガすることができる。たとえば、図1A図1Dに示すように、薬剤の2単位を選択することまたは注射ボタン120を押下することによって生成されるインパルスは、プランジャロッド108によって伝達することができ、それによって、エネルギー源104のピン126a、126bが電子構成要素105の接触板128a、128bから切断される第1の位置から、エネルギー源104のピン126a、126bが電子構成要素105の接触板128a、128bに電気的に連結される第2の位置へ、エネルギー源104の移動をもたらす。
【0028】
いくつかの実施形態では、電子システムの電子構成要素105は、ハウジング110内で単一の場所または複数の場所に一体化することができる(たとえば、プランジャロッド108およびプランジャヘッド109内の空洞内に位置し、またはプランジャロッド108およびプランジャヘッド109内の空洞に取り付けられる)。1対の接触板128a、128bなどの電子システムの1つもしくはそれ以上の電子構成要素105の場所、および/またはエネルギー源104の場所は、注射デバイス102の使用前(たとえば、プライミング動作前)に、電子構成要素105、したがって電子システム全体をエネルギー源104からデカップリングされた状態で維持するように選択することができる。いくつかの実施形態では、図1A図1B図1E、および図1Fに示すように、接触板128a、128bを含む電子システムの1つまたはそれ以上の構成要素105は、接触板が電気絶縁材料によって取り囲まれる(たとえば、接触板128a、128bの端部がストッパ107の最も近い外面から少なくとも0.1mm離れる)ように、ストッパ107内に収容することができる。いくつかの実施形態では、図1Cおよび図1Dに示すように、接触板128a、128bを含む電子システムの1つまたはそれ以上の電子構成要素105は、プランジャヘッド109内に収容することができ、電気絶縁膜122によってピン12
6a、126bから分離される。
【0029】
いくつかの実施形態では、エネルギー源104の場所および/または電子システムの1つもしくはそれ以上の電子構成要素105の場所は、電子構成要素105とエネルギー源104との間の連結から独立して選択することができる。いくつかの実施形態では、電子システムの1つもしくはそれ以上の電子構成要素105の1つもしくはそれ以上の特徴、および/またはエネルギー源104の1つもしくはそれ以上の特徴は、エネルギー源104に対して電子構成要素105を連結および/または切断するように選択することができる。図1A図1C、および図1Eに示すように、接触板128a、128bの構成は、電子構成要素105の周辺部から外方へ延びるように設定することができる。図1Bおよび図1Dに示すように、接触板128a、128bの構成は、電子構成要素105の周辺部から内方へ延びるように設定することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、注射デバイス102のハウジング110は、使用者が、エネルギー源104を注射デバイス102の構成要素(たとえば、ストッパ107、プランジャロッド108、もしくはプランジャヘッド109)に取り付けること、および/または少なくとも電子構成要素105の構成要素を注射デバイス102の構成要素(たとえば、ストッパ107もしくはプランジャヘッド109)に取り付けることを有効にするために、複数の区分に分離されるように構成することができる。図1A図1B、および図1E図1Hに示す例は、プランジャヘッド109に取り付けられたエネルギー源104を含む。図1Cおよび図1Dに示す例は、プランジャヘッド109内に含まれるエネルギー源104を含む。図示しないが、エネルギー源104は、プランジャロッド108内に取り付けまたは配置することができ、プランジャロッド108の幾何形状に嵌るようにカスタマイズすることができる。プランジャロッド108に取り付けられたエネルギー源104の例の範囲内で、電子構成要素105への連結は、プランジャヘッド109と交差するように構成される。
【0031】
いくつかの実施形態では、図1E図1Hに示すように、注射デバイス102は、エネルギー源104を注射デバイス102の構成要素(たとえば、プランジャストッパの後端)に取り付けるように構成された追加の構成要素を含む。追加の構成要素は、支持体124および/または電池接点(カソード126aおよびアノード126b)を含むことができる。支持体124および/または電池接点126aは、プライミング構成要素から(たとえば、投与量ボタン112からプランジャロッド108およびプランジャヘッド109を介して)印加された投薬力をストッパ107に良好に伝達することを有効にする形状を含むことができる。たとえば、支持体124および/または電池接点126aは、「クラウン」または「ケージ」のような形状とすることができる。支持体124および/または電池接点126aは、電池セルを特定の位置で保持するように構成することができ、プランジャヘッド109および/またはプランジャストッパ107の成形工程中に電子構成要素105の厳密な位置決めを有効にすることができる。
【0032】
支持体124、カソード接点126a(-)、およびアノード接点126b(+)の例は、図1F図1G、および図1Hに示されている。たとえば、図1Fは、ケージ状の電池セル空洞を示し、カソード126a(-)はリング状であり、アノード126b(+)は中心ピンである。エネルギー源104は、支持体124によって定位置に保持することができ、支持体124は、周囲の可撓性(たとえば、ゴム)材料のスナップ嵌めを含む。図1Gは、クラウン状のカソード126a(-)を示し、カソード126a(-)は、エネルギー源104を中心に位置合わせするための可撓性アームを有し、エネルギー源104のハウジングとの良好な横方向の接触を提供するように構成される。図1Hは、ケージ状のカソード126a(-)を示し、カソード126a(-)は、エネルギー源104を中心に位置合わせし、エネルギー源104のハウジングとの良好な横方向の接触を提供す
るように構成される。図1Gおよび図1Hは、4つのアームを含む電池接点を示すが、電池接点は、任意の複数のアームを含むことができ、これらのアームは、支持体124の円周に対称に分散させることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、注射デバイス102のハウジング110は、エネルギー源104への使用者アクセスを提供して、エネルギー源104の別個の処分を有効にするために、複数の区分に分離または分解されるように構成することができる。いくつかの実施形態では、注射デバイス102と組立て予定の薬剤リザーバ106は、挿入されたストッパ107とともに製造され、流体薬剤で充填され、圧着封止によって閉鎖される。注射デバイス102との組立て前の薬剤リザーバ106の製造および収納中、エネルギー源104は薬剤リザーバ106に取り付けられていない。エネルギー源104が電子構成要素から取り外されたまま保つことによって、薬剤リザーバ106の製造および場合により長期収納中にエネルギーの遊休排出が生じる可能性がなくなる。エネルギー源104を電子構成要素105から切断されたまま保つことによって、デバイスの後の組立て工程で、エネルギー源104は注射デバイス102に取り付けられる。いくつかの実施形態では、注射デバイス102の機能の制御を有効にするために、デバイスのこの組立て工程でエネルギー源104を電子構成要素105に連結することができる。製造工程としてエネルギー源104に連結することで、電子構成要素105を起動し、適切なシステム機能を確認するフィードバック信号を生成することが可能になる。そのようなプロセス中制御を実行した後、エネルギー源104を再び切断することができ、または電子構成要素105および/もしくは電子システムを起動するためにプライミング工程が実行されるまでエネルギー消費を低減させる適当なソフトウェア機能によって、電子構成要素105もしくは電子システム全体をスリープモードに設定することができる。
【0034】
図2は、本開示の実施形態を実行することができる例示的なシステム200のブロック図である。システム200は、n個のエンティティ(その例として、エンティティ214、216、218、220が挙げられる)が、ネットワーク202によって、中央データベース212および中央サーバ210を含む中央コンピュータ206へ転送およびアクセスすることを有効にする。
【0035】
図2の例では、エンティティ(たとえば、エンティティ214、216、218、220)は、医療連続体222内に位置する薬剤供給者、医療施設(たとえば、医療提供者)、または患者とすることができる。たとえば、エンティティ214は、医療連続体222内でエンティティ216の前に位置する。エンティティ218は、医療連続体222内でエンティティ220の前に位置する。医療連続体222は、注射デバイス204を製造、収納、輸送、および使用することができる。注射デバイス204は、追加の構成要素(たとえば、エネルギー源224および電気構成要素226)とともに、治療プロセス中に医療連続体(healthcare continuum)222内の複数のエンティティ間で(たとえば、薬剤供給者から、医療施設内で働く医療提供者および患者へ)移送することができる。
【0036】
注射デバイス204(たとえば、図1Aおよび図1Bを参照して説明した流体送達システム100)は、初期状態(たとえば、プライミング工程前)で電気構成要素226から切断されたエネルギー源224(たとえば、図1Aおよび図1Bを参照して説明したエネルギー源104)を含むことができる。医療連続体222に沿った各エンティティは、エネルギー源224を無益に消耗することなく、注射デバイス204を保持および伝達することができる。医療連続体222内のエンティティのうちの1つは、注射デバイス204上でプライミング工程を実行することができ、それに応答して、エネルギー源224は電子構成要素226に連結される。エネルギー源224を電子構成要素226に連結したことに応答して、電子構成要素226は、物品レベルデータを生成することができる。物品
レベルデータは、中央データベース212内に記憶するために注射デバイス204の固有の識別番号に関連付けることができる。物品レベルデータは、BluetoothまたはNFC通信を使用することによって、別のデバイス(たとえば、中央コンピュータ206の中央データベース212)へ送信することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、中央コンピュータ206は、外部サービス提供者に位置する。医療連続体222内のエンティティ間の共有データは、中央データベース212内に記憶することができる。医療連続体内の各エンティティ(医療連続体222内のn個のエンティティ)は、共有データを外部サービス提供者へアウトソーシングすることができる。加えて、外部サービス提供者は、記憶されている共有データへのアクセスを管理することができる。たとえば、中央データベース212は、クラウドストレージとすることができ、中央コンピュータ206は、第3者またはサービス提供者がホストとして働くクラウド計算システムとすることができる。クラウドストレージサービス提供者は、中央データベース212を管理および維持することができ、エンティティ214、216、218、220は、エンティティ214、216、218、220間で共有および交換できるように、物品レベルデータを記憶することができる。
【0038】
各エンティティ(たとえば、エンティティ214、216、218、220)は、医療連続体222内で使用される注射デバイス204のための物品レベルデータ(たとえば、薬剤の注射に関連する)を、中央データベース212内に暗号化および記憶することができる。中央データベース212に対するセキュリティ要件は、中央データベース212の観察者が、許可なく注射デバイス204から受け取ったデータにアクセスすることを防止することができる。中央データベース212内に含まれるデータを所有するエンティティ(たとえば、注射デバイス204の使用者)は、その注射デバイスのための物品レベルデータへの様々なレベルのアクセス制御を実施することができる。たとえば、注射デバイス204に関して、データ所有者(たとえば、患者)は、別のエンティティとの関連付けに基づいて(たとえば、対応する医療施設を介して)、注射デバイス204のための物品レベルデータへのアクセス制御をその別のエンティティ(たとえば、医療提供者)へ提供することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、患者は、中央データベース212内に注射デバイス204に対して記憶されている各物品レベルデータに対して、個々のアクセスを医師に提供することができる。データアクセス制御により、患者が物品レベルデータの個々の各タプルにアクセスレベルを設定することが可能になる。いくつかの実施形態では、医療管理者は、医療施設が一度は保有した物品のための物品レベルデータのすべてのタプルへの医療提供者アクセスを提供することができる。たとえば、医療管理者は、物品レベル追跡のためにアクセス制御を使用することができる。医療管理者は、その物品を一度は保有したまたはその物品に関連付けられた可能性のある他のエンティティへの物品の可視性を、物品ごとに許可または制限することができる(たとえば、対応する患者へ送達される特定のタイプの医療処置に関連付けられた医療提供者のみに、データへのアクセスが与えられるはずである)。これにより、1つのエンティティ(たとえば、医療管理者)は、個々の各エンティティへの物品レベルデータの各タプルのアクセス制御を個々に設定する必要なく、物品レベルデータアクセスを他のエンティティへ提供することが可能になる。たとえば、医療管理者を含むエンティティは次いで、個々の各物品またはエンティティに関する微妙なまたは機密の情報を直接または推測によって開示するリスクを伴うことなく、互いに物品のための公正なデータ共有合意に関与することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、医療管理者または患者は、すべての物品レベルデータへのエンティティのアクセスを提供することができる。たとえば、エンティティは、物品レベルデータのすべてのタプルへの完全なアクセスを有する信頼できる第3者(たとえば、患者
、医療提供者、薬剤供給者、または他の第3者)とすることができる。中央データベース212を、クラウドストレージとすることができ、中央コンピュータ206を、第3者またはサービス提供者がホストとして働くクラウド計算システムとすることができる場合、このアクセスレベルは、エネルギー源224を電子構成要素226に連結した後に生成されるデータに基づいて、サービス提供者が中央データベース212を管理および維持し、自動補充を提供することができるように、医療管理者または患者とサービス提供者との間で使用することができる。
【0041】
医療エンティティによる注射デバイス204の使用を追跡することで、医療エンティティが治療からの逸脱を識別することを可能にし、医療エンティティが注射デバイスの使用者に治療を行う際の案内を提供することを有効にすることができる。たとえば、物品レベルデータは、注射デバイス204に対する固有の識別子、カートリッジおよび/または注射デバイス内の流体の量、エネルギー源224を電子構成要素226に連結したときのタイムスタンプ、場所、ならびに注射デバイスに対する状況特有データを含むことができる。医療エンティティは、医療提供者に対するデータリポジトリ内の物品レベルデータとして、これらの要素を「タプル」内に記録または記憶することができる。いくつかの実施形態では、データリポジトリは、医療施設内に位置することができる。いくつかの実施形態では、データリポジトリは、医療施設の外に位置することができる。たとえば、データは、クラウドサービス提供者によって提供されるデータリポジトリ内に記憶することができる。データを共有する医療連続体内のエンティティは、複数の医療提供者によって提供されるデータへのアクセスを得ることが必要になることがある。
【0042】
したがって、いくつかの実施形態では、医療連続体内の医療提供者は、物品レベルデータのための中央リポジトリとして使用するための共通のデータベースを共有することができる。サービス提供者または第3者は、共有される中央リポジトリの資源を管理することができる。エネルギー源224を電子構成要素226に連結した後に注射デバイスによって生成されるデータを医療連続体内の医療施設間で共有および交換することで、データの分析のために様々な応用例の使用を有効にすることができる。たとえば、偽造防止の応用例、医療連続体ベンチマーキングの応用例、ならびに医療規定および規則に対する準拠を識別する応用例では、注射デバイスのデータを使用して、医療連続体内の医療提供者および/またはエンティティへ情報を提供することができる。
【0043】
図3は、図1および図2を参照して説明したデバイスおよびシステムによって実行することができる例示的なプロセス300を示す流れ図である。プロセス300は、エネルギー源が電子構成要素から切断された注射デバイス上でプライミング動作を実行すること(302)によって始まる。プライミング動作は、注射デバイスの使用者によって開始することができる。注射デバイスによって実行されるプライミング動作の一例は、薬剤の特定の数(たとえば、1または2)の単位を選択し、針を上向きにして注射デバイスを保持しながら注射ボタンを押下することを含むことができる。注射デバイスによって実行されるプライミング動作の別の例は、電気スイッチとして構成された注射デバイスのプライミングボタンを押下することを含むことができる。注射デバイスによって実行されるプライミング動作の別の例は、注射デバイスのプライミングボタンを押下する前に、注射デバイスの構成要素(たとえば、プランジャヘッド)にエネルギー源を取り付けること、および/または少なくとも電子システムの構成要素を注射デバイスの構成要素(たとえば、プランジャヘッドもしくはストッパ)に取り付けることを含むことができる。いくつかの実施形態では、プライミング動作は、トリガ信号を生成することを含むことができる。トリガ信号は、機械信号および電気信号のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0044】
プライミング動作(たとえば、トリガ信号を受け取ったこと)に応答して、エネルギー源は、機構(たとえば、ギヤ機構)によって、電子構成要素に連結される(304)。い
くつかの実施形態では、この機構は、エネルギー源が電子構成要素から電気的にデカップリングされる1つの位置から、エネルギー源が電子構成要素に電気的に連結される第2の位置へ、エネルギー源を移動させるように構成された1つまたはそれ以上の構成要素(たとえば、図1A図1Fを参照して説明したように、プランジャロッド108、プランジャヘッド109)を含むことができる。エネルギー源を電子構成要素に連結することは、エネルギー源の両方のピンが電子構成要素の接触板に接触するように、エネルギー源の少なくとも1つのピンを1つの位置から第2の位置へ移動させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、エネルギー源を1つの位置から第2の位置へ移動させることは、電気絶縁材料(たとえば、図1Aおよび図1Bを参照して説明したように、ストッパの一部分、または図1Cおよび図1Dを参照して説明したように、絶縁膜)を穿孔することを含む。いくつかの実施形態では、この機構は、エネルギー源を電子構成要素に電気的に連結するために起動されるように構成されたスイッチを含むことができる。スイッチを使用してエネルギー源を電子構成要素に連結することは、エネルギー源の一方または両方のピンを電子構成要素の接触板に電気的に接触させることを含むことができる。
【0045】
エネルギー源を電子構成要素に連結したことに応答して、電気信号が生成される(306)。電気信号は、注射デバイスの動作(たとえば、薬剤の投与の制御)を支援および/もしくは実行するため、ならびに/または注射デバイスに関連付けられた1つもしくはそれ以上のパラメータ(たとえば、薬剤の量、温度など)を測定するために生成することができる。電気信号は、注射デバイスデータの生成を含むことができる。注射デバイスデータは、注射デバイスに対する固有の識別子、投与された薬剤の量、カートリッジおよび/もしくは注射デバイス内の薬剤の量、薬剤の温度、エネルギー源を電子構成要素に連結したときのタイムスタンプ、場所、ならびに/または注射デバイスに対する状況特有データを含むことができる。
【0046】
注射デバイスデータは、薬剤の投与に関連付けられた1つまたはそれ以上のパラメータおよび注射デバイスの動作状態を分析するために、プロセッサへ送信される(308)。たとえば、注射デバイスは、薬剤投与の自動補正を実行するために注射デバイスの内部プロセッサへ、または図2を参照して説明した中央データベース212などのデータベース内のデータの記憶を調整することができる外部プロセッサへ、データを送信するように構成することができる。いくつかの実施形態では、データ送信の成功に応答して、注射デバイスは、エネルギー源のエネルギーを節約するために、エネルギー源を電子構成要素から切断することができ、プロセス300は、カートリッジが空になるまで複数回繰り返すことができる。カートリッジが空であることを検出したことに応答して、エネルギー源(たとえば、電池)をカートリッジから別個に処分するために、注射デバイスを複数の区分に分離することができる。
【0047】
図4は、例示的な計算システム400の概略図を示す。システム400は、本明細書に記載する実施形態に関連して説明した動作のために使用することができる。たとえば、システム400は、本明細書に論じるサーバ構成要素のいずれかまたはすべてに含むことができる。システム400は、プロセッサ410、メモリ420、記憶デバイス430、および入出力デバイス440を含む。構成要素410、420、430、および440は各々、システムバス450を使用して相互接続される。プロセッサ410は、システム400内で実行するための命令を処理することが可能である。1つの実装では、プロセッサ410はシングルスレッドプロセッサである。別の実装では、プロセッサ410はマルチスレッドプロセッサである。プロセッサ410は、入出力デバイス440上のユーザインターフェースのためのグラフィカル情報を表示するために、メモリ420内または記憶デバイス430上に記憶されている命令を処理することが可能である。
【0048】
メモリ420は、システム400内に情報を記憶する。1つの実装では、メモリ420
はコンピュータ可読媒体である。1つの実装では、メモリ420は揮発性メモリユニットである。別の実装では、メモリ420は不揮発性メモリユニットである。記憶デバイス430は、システム400のための大容量記憶を提供することが可能である。1つの実装では、記憶デバイス430はコンピュータ可読媒体である。様々な異なる実施形態では、記憶デバイス430は、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、またはテープデバイスとすることができる。入出力デバイス440は、システム400のための入出力動作を提供する。1つの実装では、入出力デバイス440は、キーボードおよび/またはポインティングデバイスを含む。別の実装では、入出力デバイス440は、図1図3を参照して説明したように、使用者が収集、記憶、および問合せされる物品に関係するデータにアクセスすることを有効にするグラフィカルユーザインターフェースを表示する表示ユニットを含む。
【0049】
記載した構成は、デジタル電子回路内、もしくはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア内、またはこれらの組合せで実施することができる。この装置は、プログラム可能プロセッサによる実行のために、情報キャリア内で有形に実施されるコンピュータプログラム製品内、たとえば機械可読記憶デバイス内で実施することができ、方法工程は、プログラム可能プロセッサが、入力データ上の動作および出力の生成によって、記載した実施形態の機能を実行するための命令のプログラムを実行することによって、実行することができる。記載した構成は、有利には、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスとの間でデータおよび命令を受け取り、データおよび命令を送信するように連結された少なくとも1つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能システム上で実行可能な1つまたはそれ以上のコンピュータプログラム内で実施することができる。コンピュータプログラムは、特定の動作を実行しまたは特定の結果をもたらすために、コンピュータ内で直接または間接的に使用することができる1組の命令である。コンピュータプログラムは、コンパイルまたは解釈された言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書き込むことができ、計算環境での使用に好適な独立プログラムまたはモジュール、構成要素、サブルーチン、もしくは他のユニットを含む任意の形態で導入することができる。
【0050】
命令のプログラムの実行に好適なプロセッサには、例として、汎用および特殊目的の両方のマイクロプロセッサ、ならびに任意の種類のコンピュータの単独のプロセッサまたは複数のプロセッサのうちの1つが含まれる。概して、プロセッサは、読取り専用メモリもしくはランダムアクセスメモリ、または両方から、命令およびデータを受け取る。コンピュータの不可欠な要素は、命令を実行するプロセッサ、ならびに命令およびデータを記憶する1つまたはそれ以上のメモリである。概して、コンピュータはまた、データファイルを記憶する1つもしくはそれ以上の大容量記憶デバイスを含み、またはそのような大容量記憶デバイスと通信するように動作可能に連結され;そのようなデバイスには、内部ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;磁石光学ディスク;ならびに光ディスクが含まれる。コンピュータプログラム命令およびデータを有形に実施するのに好適な記憶デバイスには、例としてEPROM、EEPROM、およびフラッシュ記憶デバイスなどの半導体記憶デバイス;内部ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;磁石光学ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む、すべての形態の不揮発性メモリが含まれる。プロセッサおよびメモリは、ASIC(特定用途向け集積回路)によって補足することができ、またはその中に一体化することができる。
【0051】
使用者との対話を提供するために、これらの構成は、使用者に情報を表示するCRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどの表示デバイス、ならびに使用者がコンピュータに入力を提供することができるキーボードおよびマウスまたはトラックボールなどのポインティングデバイスを有するコンピュータ上で実施することができる。
【0052】
これらの構成は、データサーバなどのバックエンド構成要素、アプリケーションサーバもしくはインターネットサーバなどのミドルウェア構成要素、グラフィカルユーザインターフェースもしくはインターネットブラウザを有するクライアントコンピュータなどのフロントエンド構成要素、またはこれらの任意の組合せを含むコンピュータシステム内で実施することができる。システムの構成要素は、通信ネットワークなどの任意の形態または媒体のデジタルデータ通信によって接続することができる。通信ネットワークの例には、たとえばLAN、WAN、ならびにインターネットを形成するコンピュータおよびネットワークが含まれる。
【0053】
コンピュータシステムは、クライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは概して互いから遠隔に位置し、典型的には記載したようなネットワークを介して相互作用する。クライアントおよびサーバの関係は、コンピュータプログラムがそれぞれのコンピュータ上で実行され、互いに対してクライアントとサーバの関係を有することによって生じる。
【0054】
加えて、図に示した論理フローは、望ましい結果を実現するために、図示の特定の順序または順番を必要としない。加えて、他の工程を提供することができ、または記載したフローから工程を削除することができ、他の構成要素を記載したシステムに追加することができ、または記載したシステムから除去することもできる。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0055】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組合せを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0056】
「薬物送達デバイス」という用語は、薬物の体積を人間または動物の体内へ投薬するように構成された任意のタイプのデバイスまたはシステムを包含するものとする。体積は、典型的には、約0.5ml~約10mlの範囲とすることができる。限定されるものではないが、薬物送達デバイスは、薬物の皮下、筋肉内、または血管内の送達のために構成されたシリンジ、針安全システム、ペン注射器、自動注射器、大容量デバイス(LVD)、ポンプ、潅流システム、または他のデバイスを含むことができる。そのようなデバイスは、針を含むことが多く、針は、小ゲージ針(たとえば、約24ゲージより大きく、27、29、または31ゲージを含む)を含むことができる。
【0057】
特有の薬物と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要とされるパラメータの範囲内で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、特定の時間期間(たとえば、注射器に対して約3~約20秒、およびLVDに対して約5分~約60分)の範囲内で、低レベルまたは最小レベルの不快さ、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件の範囲内とすることができる。そのような変動は、たとえば薬物の粘性が約3cP~約50cPの範囲に及ぶことなどの様々な要因によって生じることがある。
【0058】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0059】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0060】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0061】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0062】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミト
イル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0063】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0064】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0065】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0066】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0067】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえば
マウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0068】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本開示に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0069】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0070】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0071】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0072】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択
されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0073】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0074】
本実施形態の複数の実装について記載した。それにもかかわらず、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることができることが理解されよう。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【符号の説明】
【0075】
102 注射デバイス
104 エネルギー源
105 電子構成要素
106 薬剤リザーバ
107 プランジャストッパ
108 プランジャロッド
109 プランジャヘッド
110 ハウジング
111 支承部
112 投与量ノブ
113 針
114 投与量窓
115 ニードルアセンブリ
116 ニードルキャップ
117 外側ニードルキャップ
118 キャップ
120 注射ボタン
122 電気絶縁膜
124 支持体
126a、126b ピン
126a カソード
126b アノード
128a、128b 接触板
130 外部デバイス
132 外部プロセッサ
200 例示的なシステム
202 ネットワーク
204 注射デバイス
206 中央コンピュータ
210 中央サーバ
212 中央データベース
214 エンティティ
216 エンティティ
218 エンティティ
220 エンティティ
222 医療連続体
224 エネルギー源
226 電気構成要素
300 例示的なプロセス
400 計算システム
410 プロセッサ
420 メモリ
430 記憶デバイス
440 入出力デバイス
450 システムバス
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2
図3
図4