(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】蒸着前駆体化合物及び使用のプロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20240401BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240401BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240401BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01L21/318 C
C23C16/455
C23C16/42
C07F7/18 S
(21)【出願番号】P 2022575943
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 US2021036856
(87)【国際公開番号】W WO2021252788
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-17
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン, フィリップ エス. エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】コンド, エリック
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ブライアン シー.
(72)【発明者】
【氏名】バウム, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】カイパー, デーヴィッド
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0186603(US,A1)
【文献】米国特許第7022864(US,B2)
【文献】特表2011-511881(JP,A)
【文献】特開2017-92475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
C23C 16/455
C23C 16/42
C07F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応領域内のマイクロ電子デバイス表面上にシリコンオキシ炭窒化物膜を蒸着するための方法であって、(i)少なくとも1つのシリルアミン、(ii)少なくとも1つのオキシラニルシラン(ここで、(i)及び(ii)はいずれかの順序で導入される)、及び(iii)プラズマ形態の還元ガス、から選択される反応物を前記反応領域内に順次導入することを含み、膜を次の反応物に曝露する前に各反応物をパージする、方法。
【請求項2】
シリルアミンが、
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オキシラニルシランが、
(式中、各Rは独立してC
1~C
4アルキルから選択され、xは0又は1である。)の化合物;
(式中、各R
1は、C
1~C
4アルキル基又は式
(式中、各R
3は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)
の基から選択される。)の化合物;及び
(式中、各R
2は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
原子層堆積条件下で反応領域内のマイクロ電子デバイス表面上にシリコンオキシ炭窒化物膜を堆積させるための方法であって:
a.以下から選択されるシリルアミン:
を前記反応領域内に順次導入すること
b.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;
c.次に、前記反応領域内に以下から選択されるオキシラニルシラン
(式中、各Rは独立してC
1~C
4アルキルから選択され、xは0又は1である。)の化合物;及び
(式中、各R
1は、独立してC
1~C
4アルキル基又は式
(式中、各R
3は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)の基から選択される。)の化合物;及び
(式中、各R
2は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)を導入すること、
d.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;
e.次に、前記反応領域内にプラズマ形態の還元ガスを導入すること;
f.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;及び、所望の厚さの膜が堆積されるまで、工程a.~f.を繰り返すこと、を含む方法。
【請求項5】
原子層堆積条件下で反応領域内のマイクロ電子デバイス表面上にシリコンオキシ炭窒化物膜を堆積させるための方法であって:
a.以下から選択されるオキシラニルシラン
(式中、各Rは独立してC
1~C
4アルキルから選択され、xは0又は1である。)の化合物;及び
(式中、各R
1は、独立してC
1~C
4アルキル基又は式
(式中、各R
3は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)の基から選択される)の化合物;及び
(式中、各R
2は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)を前記反応領域内に順次導入すること;
b.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;
c.次に、前記反応領域内に以下から選択されるシリルアミン:
を導入すること;
d.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;
e.次に、前記反応領域内にプラズマ形態の還元ガスを導入すること;
f.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;及び、所望の厚さの膜が堆積されるまで、工程a.~f.を繰り返すこと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、シリコンオキシ炭窒化物の薄膜をマイクロ電子デバイス表面上に堆積させるための材料及び方法に関する。これらの膜は、耐ウェットエッチング性及び耐ドライエッチング性に優れた低誘電率絶縁体として機能する。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素(SiN)は、その高い耐ウェットエッチング性と耐O2アッシング性により、FinFET及び全周ゲート型(GAA)構造のソース及びドレインスペーサ(S/Dスペーサ)に使用されてきた。しかしながら、SiNは誘電率(k)が約7.5と高い。誘電率を低減し、優れた耐エッチング性及び耐アッシング性を維持するために、炭素及び窒素ドープSiO2(SiCON)スペーサが開発されている。現在、最も優れた耐エッチング性及び耐アッシング性を有するSiCON誘電体は、約4.0のk値を有する。次世代デバイスには、3.5未満のk値を有する耐エッチング性及び耐アッシング性誘電体が必要である。
【0003】
さらに、マイクロ電子デバイスの製造において、特に、シリコンオキシ炭窒化物(SiOCN)膜の形成に用いられる低温蒸着技術を用いる方法において、ケイ素含有膜を形成するための改善された有機ケイ素前駆体が依然として必要とされている。特に、良好な熱安定性、高い揮発性、及び基板表面との反応性を有する液体ケイ素前駆体が必要とされている。
【0004】
デバイス性能の向上には、トランジスタ及び相互接続回路の両方を分離する能力を高めるための新しい材料が必要である。これらの膜は、多くの場合、低い誘電率特性(すなわち、4未満)を必要とする一方で、耐ウェットエッチング性及び耐ドライエッチング性などのデバイス製造中の後続処理工程に耐えることも必要である。さらに、堆積した絶縁体は、堆積後の処理に曝露されたときに変化してはならない。これらの膜が基板工程で堆積される際、膜は、FinFETデバイスに見られるように、3D構造を共形的にコーティングし、構造全体にわたって均一な誘電特性を示すことが求められる。デバイス内に膜が残っているため、堆積後の処理で電気的性能を変化させることはできない。プラズマベースの堆積法は、不均一な電気特性を有する膜をもたらすことが多く、膜の上部はプラズマ衝撃の増強によって変化する。同時に、同じ膜でコーティングされた3D構造の側壁は、堆積中の電子衝撃の減少の結果、異なる特性を示し得る。それにもかかわらず、膜は、酸化又は還元環境でのウェットエッチング及び/又はプラズマ後処理に耐えなければならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、耐エッチング性SiOCN膜を堆積するためのプラズマ励起原子層堆積(PEALD)法を提供する。これらの膜は、改善された成長速度、改善されたステップカバレッジ、並びにO2及びNH3共反応剤を含有するウェットエッチング剤及び堆積後プラズマ処理に対する優れた耐エッチング性を備えている。このPEALD法は、プラズマ曝露と並行して反応してエッチング耐性SiOCN薄膜を堆積させる1つ以上の前駆体に依存する。膜は、堆積後及び堆積後プラズマ処理後の両方において、希釈HF水溶液によるウェットエッチングに対する優れた耐性を示す。したがって、これらの膜は、デバイスの製造及び構築中に用いられる堆積後の製造工程に対して優れた安定性を示すことが期待される。
【0006】
本開示は、添付の図面に関連して様々な例示的な実施形態の以下の説明を考慮してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】HEADS及びTMORSからのSiCON膜の堆積におけるALD成長速度を示す図である。
【
図2】HEADS及びDMDORS並びに熱酸化物(Tox)基準から堆積されたSiOCNの膜のウェットエッチング速度の測定値を示す図である。膜を室温で時間の関数として100:1希釈HF水でエッチングした。
【
図3】HEADS及びDMDORSから堆積されたSiOCNの膜における耐アッシング性、及び窒化ケイ素(SiN)基準を示す図である。耐アッシング性は、100W、250W、及び400Wで60秒間のO
2プラズマ曝露前後で測定されたウェットエッチング速度(100:1希釈HFで60秒間)の差であった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、様々な修正及び代替形態を受け入れることができるが、その詳細は、例として図面に示されており、詳細に説明される。しかしながら、本開示の態様を記載された特定の例示的な実施形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。それどころか、本開示の趣旨及び範囲内に入るすべての修正、等価物、及び代替物を網羅することを意図する。
【0009】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、その内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0010】
用語「約」は、一般に、列挙された値(例えば、同じ機能又は結果を有する)と等価であると考えられる数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含むことができる。
【0011】
端点を使用して表される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5を含む)。
【0012】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、図面において、異なる図面における同様の要素には同じ番号が付されている。詳細な説明及び図面は、必ずしも縮尺通りではなく、例示的な実施形態を示しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。図示された例示的な実施形態は、例示としてのみ意図されている。例示的な実施形態の選択された特徴は、明確に反対のことが述べられない限り、追加の実施形態に組み込まれてもよい。
【0013】
第1の態様では、本発明は、反応領域内のマイクロ電子デバイス表面上にシリコンオキシ炭窒化物膜を蒸着するための方法を提供し、この方法は、(i)少なくとも1つのシリルアミン、(ii)少なくとも1つのオキシラニルシラン(ここで、(i)及び(ii)はいずれかの順序で導入される)、及び(iii)プラズマ形態の還元ガスから選択される反応物を前記反応領域内に順次導入することを含み、膜を次の反応物に曝露する前に各反応物をパージする。この態様では、このような反応物のパルス順序は、
a.シリルアミン;パージ;オキシラニルシラン;パージ;プラズマ形態の還元ガス;パージ;又は
b.オキシラニルシラン;パージ;シリルアミン;パージ;プラズマ形態の還元ガス;パージ;のいずれかであってもよい。1つの実施形態では、反応物はハロゲン原子を含まない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「シリコンオキシ炭窒化物」膜という用語は、様々な割合でケイ素、酸素、炭素、及び窒素を含有する膜を指す。1つの実施形態では、本発明は、
(i)約30~50原子百分率のケイ素;
(ii)約5~30原子百分率の窒素;
(iii)約2~25原子百分率の炭素;及び
(iv)約20~40原子百分率の酸素、を有する膜を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、
(i)約25~45原子百分率のケイ素;
(ii)約10~25原子百分率の窒素;
(iii)約5~20原子百分率の炭素;及び
(iv)約25~35原子百分率の酸素、を有する膜を提供する。
【0016】
特定の実施形態では、本発明のシリコンオキシ炭窒化物(SiCON)膜は、約15~約25原子百分率の窒素を有し、他の実施形態では、約8~約12原子百分率の炭素を有する。
【0017】
1つの実施形態では、「シリルアミン」という用語は、1つ又は2つのシリル基及び少なくとも1つの第2級アミン部分を有する化合物を指す。そのようなシリルアミンの例としては、
が挙げられる。
【0018】
1つの実施形態では、「オキシラニルシラン」という用語は、少なくとも1つのエポキシ環が直接又はアルキル若しくはアルキルオキシ連結基を介して結合しているケイ素化合物を指す。このような化合物の例としては、以下
(式中、各Rは独立してC
1~C
4アルキルから選択され、xは0又は1である。)の化合物;及び
(式中、各R
1は、C
1~C
4アルキル基又は式
(式中、各R
3は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)の基から選択される。)の化合物;及び
(式中、各R
2は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)、が挙げられる。
【0019】
上記式(VIII)及び(X)において、xが0である場合、この構造は、二価の酸素原子が存在しないオキシラニルシラン化合物を示すと理解され、換言すれば、xが0である場合、構造はケイ素-ケイ素共有結合を示す。
【0020】
さらに、C1~C4アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルが挙げられる。1つの実施形態では、C1~C4アルキルはメチルである。
【0021】
1つの実施形態では、上記式(VIII)において、各R
1はメチルであり、別の実施形態では、各R
1は、式
の基である。
【0022】
第2の態様では、本発明は、原子層堆積条件下で反応領域内のマイクロ電子デバイス表面上にシリコンオキシ炭窒化物膜を堆積させるための方法を提供し、この方法は:
a.以下から選択されるシリルアミン:
b.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;
c.次に、前記反応領域内に以下から選択されるオキシラニルシラン
(式中、各Rは独立してC
1~C
4アルキルから選択され、xは0又は1である。)の化合物;及び
(式中、各R
1は、独立してC
1~C
4アルキル基又は式
(式中、各R
3は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)の基から選択される。)の化合物;及び
(式中、各R
2は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)、を導入すること、
d.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;
e.次に、前記反応領域内にプラズマ形態の還元ガスを導入すること;
f.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;及び、所望の厚さの膜が堆積されるまで、工程a.~f.を繰り返すこと、を前記反応領域内に順次導入することを含む。
【0023】
第3の態様では、本発明は、原子層堆積条件下で反応領域内のマイクロ電子デバイス表面上にシリコンオキシ炭窒化物膜を堆積させるための方法を提供し、この方法は、以下:
a.以下から選択されるオキシラニルシラン:
(式中、各Rは独立してC
1~C
4アルキルから選択され、xは0又は1である。)の化合物;及び
(式中、各R
1は、独立してC
1~C
4アルキル基又は式
(式中、各R
3は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される。)の基から選択される。)の化合物;及び
(式中、各R
2は、水素又はC
1~C
4アルキルから独立して選択される);
b.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;
c.次に、前記反応領域内に以下から選択されるシリルアミン:
d.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;
e.次に、前記反応領域内にプラズマ形態の還元ガスを導入すること;
f.次に、前記反応領域を不活性ガスでパージすること;及び、所望の厚さの膜が堆積されるまで、工程a.~f.を繰り返すこと、を前記反応領域内に順次導入すること含む。
【0024】
第4の態様では、本発明は、式
の化合物を提供し、
式中、各Rはメチルである。
【0025】
第5の態様では、本発明は、式
の化合物を提供し、
式中、
(i)各R
2は、式
の基であるか、又は
(ii)一方のR
2は水素であり、他方のR
2は式
の基である。
【0026】
第4及び第5の態様の化合物は、ケイ素含有膜を形成するためのケイ素の蒸着における前駆体として有用である。
【0027】
一般に、本発明のシリルアミンは、対応するハロゲン化シリル化合物及び適切なアミンから調製することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,022,864号を参照されたい。
【0028】
一般に、式(VIII)及び(X)の化合物は、式(VIII)の化合物の合成について示される以下の反応スキームに従って調製することができる:
【0029】
一般に、xが0である式(VIII)の化合物は、クロロシランをトリエチルアミンの存在下で1,2-エポキシ-3-プロパノールと反応させて、対応するシリルエーテルを得ることによって調製することができる。
【0030】
式IV、V、及びVIの化合物の合成は、Borovikらによる「Ethyleneoxide-Silane and Bridged Silane Precursors for Forming Low K Films(Borovik,A.;Xu,C.;Baum,T.;Bilodeau,S.;Roeder,J.;Ebbing,A.;Vestyck,D.)」に記載されている手順に従って調製できる。(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,022,864号も参照されたい。)式VIの化合物及び式VIIIの他のグリシドキシシリルエステルの合成は、Martin,R.W.による「Epoxy-Substituted Esters of Silicon Acids and Their Preparation」に詳述されているように行うことができる。(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,730,532号も参照されたい。)式(I)、(II)及び(III)の合成シリルアミン及びアミノジシランは、Wang,Z;Xu,C.;Hendrix,B.;Roeder,J.;Chen,T.;Baum,T.H.によって「Composition and Method for Low Temperature Chemical Vapor Deposition of Silicon-Containing Films including Silicon Carbonitride and Silicon Oxycarbonitride Films」、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,102,693号に記載される方法によって調製することができる。
【0031】
式(XI)の化合物は、以下のスキームに従って調製することができる:
【0032】
1つの実施形態では、蒸着条件には、約250℃~約400℃の温度、及び約1~約20トール、又は約1~10トールの圧力が含まれる。別の実施形態では、蒸着条件には、約300°~約350℃の温度が含まれる。
【0033】
上記の化合物は、任意の好適なALD技術及びパルスプラズマ法によって高純度の薄いケイ素含有膜を形成するために使用することができる。そのような蒸着法を利用して、約350°~約550℃の堆積温度を用いてマイクロ電子デバイス上にケイ素含有膜を形成し、約20オングストローム~約200オングストロームの厚さを有する膜を形成することができる。
【0034】
本発明の方法では、上記の化合物は、任意の好適な様式で、例えば、単一のウェハチャンバ内で、又は複数のウェハを含む炉内で、所望のマイクロ電子デバイス基板と反応させることができる。
【0035】
あるいは、本発明の方法は、ALD様法として行うことができる。本明細書で使用される場合、「ALD又はALD様」という用語は、各反応物を単一ウェハALD反応器、セミバッチALD反応器、又はバッチ炉ALD反応器などの反応器に順次導入するか、又は各反応物を反応器の異なるセクションに基板を移動又は回転させることによって基板又はマイクロ電子デバイス表面に露出させ、各セクションを不活性ガスカーテン、すなわち空間ALD反応器又はロールツーロールALD反応器によって分離する方法を指す。
【0036】
1つの実施形態では、本発明は、プラズマ形態の還元ガスと共に、本明細書に記載のシリルアミン及びオキシラニルシランを使用してシリコンオキシ炭窒化物膜を堆積させるためのプラズマ励起原子層堆積法(PEALD)に関する。窒素プラズマは、本明細書で教示されるように、シリルアミン及びオキシラニルシラン、並びにプラズマ形態の還元ガスを用いながら、より高い窒素原子百分率を有する膜を形成するのに有用であり得る。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「プラズマ形態の還元ガス」は、プラズマ形態の還元ガスが、水素(H2)、ヒドラジン(N2H4);メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン及び1,2-ジメチルヒドラジンなどのC1~C4アルキルヒドラジンから選択されるガスで構成から構成され、N2、He又はArなどの不活性ガス単体又はH2と組み合わせて形成されるプラズマと組み合わせて用いられることを意味する。例えば、アルゴンなどの不活性ガスの連続流を用いながら、Rf磁場を開始し、その後水素を開始してプラズマH2を提供する。典型的には、用いられるプラズマ電力は、13.6Hzで約50~500ワットの範囲である。
【0038】
特定の実施形態では、上記の反応物(すなわち、シリルアミン、オキシラニルシラン、及びプラズマ形態の還元ガス)のパルス時間(すなわち、基板への曝露の期間)は、約1~10秒の範囲である。パージ工程を用いる場合、持続時間は約1~10秒又は2~5秒である。他の実施形態では、各反応物のパルス時間は、約2~約5秒の範囲である。
【0039】
本明細書に開示される方法は、1つ以上のパージガスを含む。パージガスは、未消費の反応物及び/又は反応副生成物を除去するために使用され、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスには、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、水素、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Arなどのパージガスは、約10~約2000sccmの範囲の流量で約0.1~1000秒間反応器に供給され、それによって反応器内に残留し得る未反応材料及び任意の副生成物がパージされる。
【0040】
シリルアミン及びオキシラニルシラン化合物、プラズマ形態の還元ガス、及び/又は他の前駆体、ソースガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、それらを供給するための順序を変更すること、及び/又は得られる誘電体膜の化学量論的組成を変更することによって実行され得る。
【0041】
本発明の方法では、様々な反応物にエネルギーを印加して反応を誘発し、マイクロ電子デバイス基板上にシリコンオキシ炭窒化物膜を形成する。そのようなエネルギーは、熱、パルス熱、プラズマ、パルスプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、リモートプラズマ法、及びそれらの組み合わせによって提供され得るが、これらに限定されない。特定の実施形態では、二次RF周波数源を使用して、基板表面のプラズマ特性を変更することができる。堆積がプラズマを伴う実施形態では、プラズマ生成法は、プラズマが反応器内で直接生成される直接プラズマ生成法、あるいは、プラズマが反応領域及び基板の「遠隔」で生成され、反応器内に供給される遠隔プラズマ生成法を含み得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「マイクロ電子デバイス」という用語は、マイクロ電子、集積回路、又はコンピュータチップ用途で使用するために製造された、3D NAND構造、フラットパネルディスプレイ、及び微小電気機械システム(MEMS)などの半導体基板に対応する。「マイクロ電子デバイス」という用語は、いかなる意味でも限定するものではなく、負チャネル金属酸化膜半導体(nMOS)及び/又は正チャネル金属酸化膜半導体(pMOS)トランジスタを含み、最終的にマイクロ電子デバイス又はマイクロ電子アセンブリとなる任意の基板を含むことを理解されたい。そのようなマイクロ電子デバイスは、例えば、ケイ素、SiO2、Si3N4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有、ホウ素含有、Ga/As、可撓性基板、多孔質無機材料、銅及びアルミニウムなどの金属、並びにTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、又はWNなどであるがこれらに限定されない拡散バリア層から選択することができる少なくとも1つの基板を含む。膜は、例えば、化学機械平坦化(CMP)及び異方性エッチング法などの様々な後続の処理工程に適合する。
【0043】
これらの膜は、ウェットエッチング剤及びO
2プラズマに対して低い耐エッチング性を提供する。O
2プラズマアッシング法は、340℃及び3トールの圧力で1分間、500sccmのO
2流量及び100、250及び400Wのプラズマ出力で行った。これに関して、
図3を参照すると、本発明は別の態様において、100ワットで60秒間酸素プラズマに曝露された際に窒化ケイ素基準試料に対してわずか約4オングストロームのアッシング損傷差を示すシリコンオキシ炭窒化物膜を提供する。別の実施形態では、本発明は、100ワットで60秒間酸素プラズマに曝露された際に、窒化ケイ素基準試料に対してわずか約4オングストロームのアッシング損傷差を示すシリコンオキシ炭窒化物膜を堆積させたマイクロ電子デバイスを提供する。
【0044】
上記のように、特定の実施形態では、本発明のシリコンオキシ炭窒化物(SiCON)膜は、約15~約25原子百分率の窒素及び約12原子百分率の炭素を有する。本発明の方法を用いて、約3.5未満の誘電率(k)を有するそのようなSiCON膜を調製することができる。他の実施形態では、そのようなSiCON膜の誘電率は、約2.5~約4.0である。
【0045】
一般に、このようにして調製されたSiCON膜の所望の厚さは、約20Å~約200Åである。
【0046】
シリルアミンとオキシラニルシラン前駆体との間の相互作用、及びその後のH2プラズマとの反応を介した窒素による低kSiCO膜のドーピングは、得られるSiCON膜の耐ウェットエッチング性及び耐O2プラズマアッシング性を劇的に改善する。
【0047】
本発明の方法において、オキシラニルシランの供給速度は、PEALDサイクル当たり約10~100mgであり、シリルアミンについてはPEALDサイクル当たり約5~50mgであり得る。
【0048】
本発明は、その特定の実施形態の以下の実施例によってさらに説明することができるが、これらの実施例は単に例示の目的で含まれ、特に明記しない限り本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。
【実施例】
【0049】
実施例1
ビス(グリシドキシ)テトラメチルジシラン(VIII、式中、x=0及びR=CH3)の合成
100mLの丸底フラスコに、トリエチルアミン(3.21g、31.8mmol)及び(オキシラン-2-イル)メタノール(1.62g、21.7mmol)を投入し、次いで、ヘキサン(20mL)で希釈した。容器にゴム隔壁を取り付け、グローブボックスから移した。PTFEコーティングされた熱電対を隔壁を通して挿入し、濁った溶液をブライン浴で-11℃に冷却した。1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン(2.00g、10.6mmol)の10mL無水ヘキサンの溶液を、シリンジを介して12分かけて滴下した。わずかな発熱が認められ、濃厚な白色沈殿物が形成された。反応混合物を0℃で2.5時間撹拌し、次いで常温まで加温した。反応混合物を10マイクロメートルのフィルターで濾過し、得られた溶液を40トール及び常温で溶媒を除去した。沈殿物を含む濃厚な無色の油状物が得られた。反応混合物を減圧下で3時間維持して、トリエチルアミンを完全に除去した。次いで、残留物を最小量のペンタン中に取り、0.4マイクロメートルのシリンジフィルターで濾過した。次いで、ペンタンを減圧下(40トール)で除去した。濁った無色の油状物を減圧下(0.100~0.200トール)で蒸留して、合計収率が44%である2つの画分を得た(1H NMRによるジアステレオマーの純度95%の混合物)。1H NMR(C6D6):δ3.87-3.71(ddd,2H)、3.61-3.45(ddd,2H)、3.02-2.96(m,2H)、2.67-2.64(dd,2H)、2.54-2.49(dd,2H)、0.15(s,12H)、0.06(s,12H)。
【0050】
PEALD SiCON堆積は、改良されたASM(登録商標)PEALDシステムを使用して、サセプタ温度400℃、シャワーヘッド温度170℃、チャンバ圧力3トール、及び周囲不活性ガス流量500sccmで行われた。堆積中のクーポン温度は約340℃であった。
【0051】
シャワーヘッドとサセプタ/ウェハとの間にプラズマを生成する直接プラズマシステムを使用して、水素プラズマ生成した。プラズマ出力は、150~500Wの範囲であった。プラズマパルス時間は、5~45秒の範囲であった。
【0052】
SiCONのPEALDにおけるパルススキームは、以下からなる:
1.シリルアミンパルス(1~5秒)
2.不活性ガスパージ(10秒)
3.オキシラニルシラン又はビニルシランパルス(1~10秒)
4.不活性ガスパージ(10秒)
5.H2プラズマパルス(5~45秒)
6.不活性ガスパージ(5~10秒)
【0053】
以下のデータからわかるように、窒素をドープすることにより、SiCON膜の耐エッチング性及び耐アッシング性が飛躍的に向上し、SiCON膜の誘電率を3.5未満とすることが可能となった。
【0054】
*原子百分率
注:HEADS前駆体は、約15~25原子百分率の窒素ドーピングをSiCON膜に提供する。
【0055】
説明:
HEADS=ヘキサ(エチルアミノ)ジシラン
DMDORS=ジメチルジオキシラニルシラン
TMORS=トリメチルオキシラニルシラン
DEOMORS=ジエトキシメチルオキシラニルシラン
【0056】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内でさらに他の実施形態を作成及び使用することができることを容易に理解するであろう。本文書が対象とする開示の数多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲を超えることなく、変更を詳細に行うことができる。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。