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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】接合体の製造方法及び接合体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240402BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20240402BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20240402BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240402BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L21/52 D
C04B37/00 B
B23K1/00 310C
B23K1/00 330E
H01L21/60 311Q
H01L25/08 C
B22F7/08 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019179784
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057466
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】川名 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】江尻 芳則
(72)【発明者】
【氏名】中子 偉夫
(72)【発明者】
【氏名】名取 美智子
(72)【発明者】
【氏名】根岸 征央
(72)【発明者】
【氏名】石川 大
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真澄
(72)【発明者】
【氏名】須鎌 千絵
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-004122(JP,A)
【文献】特開2017-101313(JP,A)
【文献】特開2019-070174(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188123(WO,A1)
【文献】特開2015-106654(JP,A)
【文献】国際公開第2020/095411(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/58
C04B 37/00
B23K 1/00
H01L 21/60
H01L 25/07
B22F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粒子と、銅との合金化が可能な金属を含む金属粒子と、を含む接合材を用意し、第1の部材と、前記接合材と、第2の部材とがこの順に積層されている構造を有する積層体を用意する第1の工程と、
前記積層体を、前記金属粒子の液相転移温度未満の第1の温度で加熱した後、前記金属粒子の液相転移温度以上の第2の温度で加熱して、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する前記接合材の焼結体を形成する第2の工程と、
を備え、
前記接合材が、前記金属粒子として、SnBi合金粒子を含む、接合体の製造方法。
【請求項2】
前記接合材が、前記銅粒子として、体積平均粒径が0.12~0.8μmであるサブマイクロ銅粒子を含む、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、ギ酸が含まれる雰囲気下で前記積層体を前記第1の温度で加熱する、請求項1又は2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の部材及び前記第2の部材の少なくとも一方が半導体素子である、請求項1~のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記積層体において、前記第1の部材が第1の電極を有し、前記第2の部材が前記第1の電極と対向する第2の電極を有し、前記接合材が前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方が金属ピラーである、請求項に記載の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記第1の部材及び前記第2の部材がシリコン、窒化ガリウム及び炭化ケイ素からなる群より選択される1種又は2種以上の半導体を含むウェハ又はチップであり、前記第1の電極及び前記第2の電極が貫通電極である、請求項に記載の接合体の製造方法。
【請求項8】
第1の部材、第2の部材、及び、第1の部材と第2の部材とを接合する接合部、を備え、
前記接合部が、銅粒子と、銅との合金化が可能な金属を含む金属粒子と、を含む接合材の焼結体からなり、
前記接合材が、前記金属粒子として、SnBi合金粒子を含み、
前記焼結体が、前記銅粒子が焼結してなる焼結構造と、該焼結構造の表面で銅と合金化した前記金属とを含む、接合体。
【請求項9】
前記接合部は、空孔率が、接合部全体の体積を基準として、20体積%以下である、請求項に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスにおける電気的接合には、一般にはんだ接合が用いられる。例えば、マイクロデバイスのフリップチップ接合では、マイクロデバイスと基板上の電極パッドとの接合に、はんだボール又ははんだペースト等を用いている。近年、フリップチップ接合では端子の狭ピッチ化に伴い、マイクロデバイス上に金属ピラーを形成し、その金属ピラーと基板上の電極パッドをはんだ接合することも行われている。
【0003】
ところで、一般に、部材同士を接合させる際の温度(接合温度)は低ければ低いほど、部材への熱の影響を小さくすることでき、接合体の信頼性を向上させることができる。また、接合温度が低い場合には、接合体の製造にかかるエネルギーの低減が可能となる。そのため、フリップチップ接合等においても接合温度は低ければ低いほど好ましい。
【0004】
接合温度を低減する方法としては、はんだに低融点の合金を用いる方法(特許文献1参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6060199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、はんだの融点とデバイスの使用温度が近い場合には、使用温度ではんだが軟らかくなり、接続信頼性が低下する。また、接合工程以降の工程にはんだの融点以上で加熱する工程が含まれる場合には、加熱によりはんだが再溶融するため不良の原因となる。
【0007】
また、上記以外の課題として、部材同士を接合する接合部は、接合強度、熱伝導率、及び電気伝導率等の観点から、充分な緻密度を有する構造体であることが求められる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接合する部材への熱の影響を小さくしつつ充分な緻密度及び接合強度を有する接合部を形成することができ、後加工において加熱される場合であっても接合部の再溶融に起因する問題が生じにくい接合体を得ることができる接合体の製造方法及び接続信頼性に優れた接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、銅粒子と、銅との合金化が可能な金属を含む金属粒子と、を含む接合材を用意し、第1の部材と、接合材と、第2の部材とがこの順に積層されている構造を有する積層体を用意する第1の工程と、積層体を、金属粒子の液相転移温度未満の第1の温度で加熱した後、金属粒子の液相転移温度以上の第2の温度で加熱して、第1の部材及び第2の部材を接合する接合材の焼結体を形成する第2の工程とを備える接合体の製造方法に関する。
【0010】
上記の接合体の製造方法によれば、接合する部材への熱の影響を小さくしつつ充分な緻密度及び接合強度を有する接合部を形成することができ、後加工において加熱される場合であっても接合部の再溶融に起因する問題が生じにくい接合体を得ることができる。なお、このような効果が得られる理由について本発明者らは以下のとおり考えている。銅粒子と上記特定の金属粒子とを併用した接合材を、金属粒子の液相転移温度未満の温度で加熱することで、先ず銅粒子の焼結構造が形成され、その後に金属粒子の液相転移温度以上の温度で加熱することで、焼結構造の中に金属粒子が溶け込み焼結構造の表面で融点の高い合金が形成され、その結果、緻密で充分な接合強度を有し、再溶融しにくい接合部が得られたものと推察する。そして、液相転移温度が低い金属粒子を用いることで、第1の温度及び第2の温度を低い温度に設定することができ、接合する部材への熱の影響を小さくすることができる。
【0011】
上記接合材は、銅粒子として、体積平均粒径が0.12~0.8μmであるサブマイクロ銅粒子を含んでいてもよい。この場合、銅粒子の低温焼結性が向上することにより、第1の温度をより低い温度に設定することができ、接合する部材への熱の影響をより小さくすることができる。また、無加圧接合しやすくなる。
【0012】
なお、本明細書において無加圧とは、接合材が、接合する部材の重さのみ、又はその重さに加え、0.01MPa以下の微圧力を受けている状態を意味する。
【0013】
上記接合材は、金属粒子として、SnBi合金粒子を含んでいてもよい。この場合、第1の温度と第2の温度とをより低い温度に設定することができ、接合する部材への熱の影響をより小さくすることができる。
【0014】
上記第2の工程において、ギ酸が含まれる雰囲気下で積層体を第1の温度で加熱してもよい。この場合、銅粒子の焼結性が向上することにより、第1の温度をより低い温度に設定することができ、接合する部材への熱の影響をより小さくすることができる。
【0015】
上記の第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方は半導体素子であってよい。この場合、接合体として半導体装置を得ることができる。
【0016】
ところで、半導体装置の中でも、150℃以上の高温で動作させるパワー半導体、LSI等の接合には、接合材として高融点鉛はんだが用いられてきた。近年、半導体素子の高容量化及び省スペース化により動作温度が高融点鉛はんだの融点近くまで上昇しており、接続信頼性を確保することが難しくなってきている。また、半導体素子と支持部材との間の残留熱応力が大きい場合には、半導体素子への熱ひずみによる特性変化、並びに、半導体素子、接合材及び支持部材へのクラック等のダメージが発生しやすくなる。これに対し、本発明に係る接合体の製造方法によれば、残留熱応力を低減することができることから、半導体装置の製造における歩留まりの低下や半導体装置の長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0017】
上記積層体において、第1の部材が第1の電極を有し、第2の部材が第1の電極と対向する第2の電極を有し、接合材が第1の電極と第2の電極との間に設けられていてもよい。この場合、第1の電極と第2の電極とが充分な接合強度で接合された接合体を得ることができる。
【0018】
第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方は金属ピラーであってもよい。この場合、ピラー接合された接合体を得ることができる。
【0019】
第1の部材及び第2の部材がシリコン、窒化ガリウム及び炭化ケイ素からなる群より選択される1種又は2種以上の半導体を含むウェハ又はチップであり、第1の電極及び第2の電極が貫通電極であってもよい。この方法によれば、貫通電極が設けられた複数の半導体ウェハ及び/又は半導体チップの積層体であって層間がマイクロバンプ接合された半導体装置を接合体として得ることができる。
【0020】
本発明の他の側面は、第1の部材、第2の部材、及び、第1の部材と第2の部材とを接合する接合部を備え、接合部が、銅粒子と、銅との合金化が可能な金属を含む金属粒子と、を含む接合材の焼結体からなり、焼結体が、銅粒子が焼結してなる焼結構造と、該焼結構造の表面で銅と合金化した上記金属とを含む、接合体に関する。
【0021】
上記接合体は、上記の接合部を備えることにより接続信頼性に優れたものになり得る。
【0022】
上記接合部は、空孔率が、接合部全体の体積を基準として、20体積%以下であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、接合する部材への熱の影響を小さくしつつ充分な緻密度及び接合強度を有する接合部を形成することができ、後加工において加熱される場合であっても接合部の再溶融に起因する問題が生じにくい接合体を得ることができる接合体の製造方法及び接続信頼性に優れた接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態の接合体の製造方法を示す模式断面図である。
図2】接合体の製造方法における第1の工程を説明するための模式断面図である。
図3】接合体の製造方法における第1の工程を説明するための模式断面図である。
図4】本実施形態の接合体の製造方法により製造される接合体の一例を示す模式断面図である。
図5】本実施形態の接合体の製造方法により製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図6図4に示す接合体の製造方法を説明するための模式断面図である。
図7図5に示す半導体装置の製造方法を説明するための模式断面図である。
図8】本実施形態の接合体の製造方法により製造される接合体の一例を示す模式断面図である。
図9図8に示す接合体の製造方法を説明するための模式断面図である。
図10】本実施形態の接合体の製造方法により製造される接合体の一例を示す模式断面図である。
図11図10に示す接合体の製造方法を説明するための模式断面図である。
図12】TSVのチップ層間がマイクロバンプ接合された接合体及びその製造方法を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
<接合体の製造方法>
本実施形態の接合体の製造方法は、銅粒子と、銅との合金化が可能な金属を含む金属粒子(以下、「合金化用金属粒子」という場合もある)と、を含む接合材を用意し、第1の部材と、接合材と、第2の部材とがこの順に積層されている構造を有する積層体を用意する第1の工程と、積層体を、金属粒子の液相転移温度未満の第1の温度で加熱(以下、「第1の加熱」という場合もある)した後、金属粒子の液相転移温度以上の第2の温度で加熱(以下、「第2加熱」という場合もある)して、第1の部材及び第2の部材を接合する接合材の焼結体を形成する第2の工程とを備える。
【0027】
まず、本実施形態の接合体の製造方法で用いられる接合材について説明する。
【0028】
(接合材)
接合材としては、銅粒子と、合金化用金属粒子と、分散媒とを含有する接合用金属ペーストを用いることができる。なお、本明細書では、便宜上、複数の銅粒子の集合も「銅粒子」と称する。銅粒子以外の金属粒子についても同様である。
【0029】
銅粒子としては、サブマイクロ銅粒子、マイクロ銅粒子、及びこれら以外の銅粒子が挙げられる。
【0030】
[サブマイクロ銅粒子]
サブマイクロ銅粒子は、0.01μm以上1.00μm未満の粒径を有する銅粒子である。サブマイクロ銅粒子は、好ましくは、150℃以上300℃以下の温度範囲で焼結性を有する。サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.01~0.80μmの銅粒子を含むことが好ましい。サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.01~0.80μmの銅粒子を10質量%以上含んでいてよく、20質量%以上含んでいてもよく、30質量%以上含んでいてもよく、100質量%含んでいてもよい。銅粒子の粒径は、例えば、SEM像から算出することができる。銅粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとする。このSEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察する。このSEM像の銅粒子に外接する四角形を画像処理ソフトにより作図し、その一辺をその粒子の粒径とする。
【0031】
サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.01~0.80μmである。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.01μm以上であれば、サブマイクロ銅粒子の合成コストの抑制、良好な分散性、表面処理剤の使用量の抑制といった効果が得られやすくなる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.80μm以下であれば、サブマイクロ銅粒子の焼結性が優れるという効果が得られやすくなる。上記効果がより一層奏される観点から、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、0.02μm以上、0.05μm以上、0.10μm以上、0.11μm以上、0.12μm以上、0.15μm以上、0.2μm以上又は0.3μm以上であってもよい。また、上記効果がより一層奏される観点から、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、0.60μm以下、0.50μm以下、0.45μm以下又は0.40μm以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、例えば、0.01~0.60μm、0.01~0.50μm、0.02~0.80μm、0.05~0.80μm、0.10~0.80μm、0.11~0.80μm、0.12~0.80μm、0.15~0.80μm、0.15~0.60μm、0.20~0.50μm、0.30~0.45μm、又は、0.30~0.40μmであってよい。
【0032】
本明細書において体積平均粒径とは、50%体積平均粒径を意味する。金属粒子(例えば銅粒子)の体積平均粒径は、例えば、以下の方法で測定することができる。まず、原料となる金属粒子、又は、金属ペーストから揮発成分を除去して得られる乾燥金属粒子を、分散剤を用いて分散媒に分散させる。次いで、得られた分散体の体積平均粒径を光散乱法粒度分布測定装置(例えば、島津ナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500nano、株式会社島津製作所製))で測定する。光散乱法粒度分布測定装置を用いる場合、分散媒としては、ヘキサン、トルエン、α-テルピネオール、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン等を用いることができる。
【0033】
サブマイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。サブマイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、柱状、フレーク状、略球状及びこれらの凝集体が挙げられる。分散性及び充填性の観点から、サブマイクロ銅粒子の形状は、球状、略球状又はフレーク状であってよく、燃焼性、分散性、フレーク状のマイクロ粒子(例えば、フレーク状のマイクロ銅粒子)との混合性等の観点から、球状又は略球状であってもよい。本明細書において、「フレーク状」とは、板状、鱗片状等の平板状の形状を包含する。
【0034】
サブマイクロ銅粒子のアスペクト比は、分散性、充填性、及びフレーク状のマイクロ粒子(例えば、フレーク状のマイクロ銅粒子)との混合性の観点から、5.0以下であってよく、3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.0以下であってもよい。本明細書において、「アスペクト比」とは、「粒子の長辺/粒子の厚さ」を示す。粒子の長辺及び粒子の厚さは、例えば、粒子のSEM像から求めることができる。
【0035】
サブマイクロ銅粒子は、サブマイクロ銅粒子の分散性の観点から、表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤は、例えば、サブマイクロ銅粒子の表面に水素結合等によって吸着していてよく、サブマイクロ銅粒子と反応してサブマイクロ銅粒子の表面に結合していてもよい。すなわち、サブマイクロ銅粒子が特定の表面処理剤由来の化合物を有していてもよい。表面処理剤は、接合用金属ペーストに含まれる有機化合物に包含される。
【0036】
表面処理剤としては、例えば、炭素数2~18の有機酸が挙げられる。炭素数2~18の有機酸としては、例えば、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、メチルヘプタン酸、エチルヘキサン酸、プロピルペンタン酸、ペラルゴン酸、メチルオクタン酸、エチルヘプタン酸、プロピルヘキサン酸、カプリン酸、メチルノナン酸、エチルオクタン酸、プロピルヘプタン酸、ブチルヘキサン酸、ウンデカン酸、メチルデカン酸、エチルノナン酸、プロピルオクタン酸、ブチルヘプタン酸、ラウリン酸、メチルウンデカン酸、エチルデカン酸、プロピルノナン酸、ブチルオクタン酸、ペンチルヘプタン酸、トリデカン酸、メチルドデカン酸、エチルウンデカン酸、プロピルデカン酸、ブチルノナン酸、ペンチルオクタン酸、ミリスチン酸、メチルトリデカン酸、エチルドデカン酸、プロピルウンデカン酸、ブチルデカン酸、ペンチルノナン酸、ヘキシルオクタン酸、ペンタデカン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、パルミチン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、エチルシクロヘキサンカルボン酸、プロピルシクロヘキサンカルボン酸、ブチルシクロヘキサンカルボン酸、ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、ヘプチルシクロヘキサンカルボン酸、オクチルシクロヘキサンカルボン酸、ノニルシクロヘキサンカルボン酸等の飽和脂肪酸;オクテン酸、ノネン酸、メチルノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、サビエン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、ペンチル安息香酸、ヘキシル安息香酸、ヘプチル安息香酸、オクチル安息香酸、ノニル安息香酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。有機酸は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。このような有機酸と上記サブマイクロ銅粒子とを組み合わせることで、サブマイクロ銅粒子の分散性と焼結時における有機酸の脱離性を両立できる傾向にある。
【0037】
表面処理剤の処理量は、サブマイクロ銅粒子の分散性の観点から、表面処理後のサブマイクロ銅粒子の全質量を基準として、0.07~2.10質量%、0.10~1.60質量%又は0.20~1.10質量%であってよい。表面処理剤の処理量は、表面処理後のサブマイクロ銅粒子の全質量を基準として、0.07質量%以上、0.10質量%以上又は0.20質量%以上であってよい。表面処理剤の処理量は、表面処理後のサブマイクロ銅粒子の全質量を基準として、2.10質量%以下、1.60質量%以下又は1.10質量%以下であってよい。
【0038】
表面処理剤の処理量は、サブマイクロ銅粒子の表面に一分子層~三分子層付着する量であってもよい。この処理量は、以下の方法により測定される。大気中、700℃で2時間処理したアルミナ製るつぼ(例えば、アズワン製、型番:1-7745-07)に、表面処理されたサブマイクロ銅粒子をW1(g)量り取り、大気中700℃で1時間焼成する。その後、水素中、300℃で1時間処理し、るつぼ内の銅粒子の質量W2(g)を計測する。次いで、下記式に基づき、表面処理剤の処理量を算出する。
表面処理剤の処理量(質量%)=(W1-W2)/W1×100
【0039】
サブマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているサブマイクロ銅粒子を含む材料としては、例えば、CH-0200(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.36μm)、HT-14(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.41μm)、CT-500(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.72μm)、Tn-Cu100(太陽日産株式会社製、体積平均粒径0.12μm)及びCu-C-40(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径0.2μm)が挙げられる。
【0040】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、接合材に含まれる銅粒子の全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上又は100質量%であってよく、70質量%以下又は50質量%以下であってよい。また、サブマイクロ銅粒子の含有量は、接合材に含まれる銅粒子の全質量を基準として、10~100質量%、20~100質量%、30~100質量%又は40~100質量%であってよい。サブマイクロ銅粒子の含有量が上記範囲内であれば、接合材を焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。特に、本実施形態の接合体の製造方法を半導体素子のフリップチップ接合に適用する場合は、半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
【0041】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、接合材に含まれる銅粒子の全質量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上又は40質量%以上であってよく、100質量%以下又は70質量%以下であってよい。また、サブマイクロ銅粒子の含有量は、接合材に含まれる銅粒子の全質量を基準として、10~15質量%、10~30質量%、10~50質量%又は10~100質量%であってよい。サブマイクロ銅粒子の含有量が上記範囲内であれば、接合材を焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。特に、マイクロデバイスの接合に適用する場合は、マイクロデバイスが良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
【0042】
[マイクロ銅粒子]
マイクロ銅粒子は、1μm以上50μm未満の粒径を有する銅粒子である。マイクロ銅粒子は、粒径が2.0~50μmの銅粒子を含むことが好ましい。マイクロ銅粒子は、粒径が2.0~50μmの銅粒子を50質量%以上含んでいてよく、70質量%以上含んでいてもよく、80質量%以上含んでいてもよく、100質量%含んでいてもよい。
【0043】
マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、好ましくは2.0~50μmである。マイクロ銅粒子の体積平均粒径が上記範囲内であれば、接合材を焼結した際の体積収縮、ボイドの発生等を低減でき、接合材を焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合材をマイクロデバイスの接合に用いる場合は、マイクロデバイスが良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。上記効果がより一層奏される観点から、マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、2.0~20μm、2.0~10μm、3.0~20μm又は3.0~10μmであってもよい。マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、2.0μm以上又は3.0μm以上であってよい。マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、50μm以下、20μm以下又は10μm以下であってよい。
【0044】
マイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。マイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状、及びこれらの凝集体が挙げられる。これらの中でも、好ましいマイクロ銅粒子の形状はフレーク状である。マイクロ銅粒子は、フレーク状のマイクロ銅粒子を50質量%以上含んでいてよく、70質量%以上含んでいてもよく、80質量%以上含んでいてもよく、100質量%含んでいてもよい。
【0045】
フレーク状のマイクロ銅粒子を用いることで、接合材内のマイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向することとなり、接合材を焼結させたときの接合面方向の体積収縮を抑制でき、接合材を焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合材をマイクロデバイスの接合に用いる場合は、マイクロデバイスが良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。上記効果がより一層奏される観点から、フレーク状のマイクロ銅粒子のアスペクト比は、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは4.0以上であり、更に好ましくは6.0以上である。
【0046】
フレーク状のマイクロ銅粒子の最大径及び平均最大径は、2.0~50μm、3.0~50μm又は3.0~20μmであってよい。フレーク状のマイクロ銅粒子の最大径及び平均最大径は、例えば、粒子のSEM像から求めることができる。フレーク状のマイクロ銅粒子の最大径及び平均最大径は、例えば、フレーク状のマイクロ銅粒子の長径X及び長径の平均値Xavとして求められる。長径Xは、フレーク状のマイクロ銅粒子の三次元形状において、フレーク状のマイクロ銅粒子に外接する平行二平面のうち、この平行二平面間の距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離である。
【0047】
マイクロ銅粒子において、表面処理剤の処理の有無は特に限定されるものではない。分散安定性及び耐酸化性の観点から、マイクロ銅粒子は表面処理剤で処理されていてもよい。すなわち、マイクロ銅粒子が表面処理剤由来の化合物を有していてもよい。表面処理剤は、マイクロ銅粒子の表面に水素結合等によって吸着していてよく、マイクロ銅粒子と反応してマイクロ銅粒子の表面に結合していてもよい。
【0048】
表面処理剤は、接合時の加熱により除去されるものであってもよい。このような表面処理剤としては、例えば、ドデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、テトラエチレングリコール等の脂肪族アルコール;p-フェニルフェノール等の芳香族アルコール;オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミン;ステアロニトリル、デカンニトリル等の脂肪族ニトリル;アルキルアルコキシシラン等のシランカップリング剤;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーンオリゴマー等の高分子処理材などが挙げられる。表面処理剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
マイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているマイクロ銅粒子を含む材料としては、例えば、1050YF(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径1.7μm)、1110F(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径3.8μm)、MA-C025KFD(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径7.5μm)、1400YM(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径4.2μm、球状)、3L3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径8.0μm)、2L3N(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径9.9μm)及びCu HWQ5.0μm(福田金属箔粉工業株式会社製、、体積平均粒径5.0μm、球状)が挙げられる。
【0050】
マイクロ銅粒子の含有量は、接合材に含まれる銅粒子の全質量を基準として、1質量%以上、5質量%以上又は10質量%以上であってよく、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下又は1質量%以下であってよい。また、マイクロ銅粒子の含有量は、接合材に含まれる銅粒子の全質量を基準として、1~10質量%、1~30質量%、又は1~50質量%であってよい。マイクロ銅粒子の含有量が、上記範囲内であれば、接合部(例えば焼結体)の剥離、ボイド及びクラックの発生を抑制して接合強度を確保することができる。特に、本実施形態の接合体の製造方法をマイクロデバイスの接合に適用する場合は、マイクロデバイスが良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。フレーク状のマイクロ銅粒子の含有量は、上記のマイクロ銅粒子の含有量の範囲と同じであってよい。フレーク状のマイクロ銅粒子の含有量がこのような範囲にある場合、上記効果がより一層奏される傾向がある。
【0051】
[その他の銅粒子]
サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子以外の銅粒子としては、銅ナノ粒子が挙げられる。銅ナノ粒子とは、0.01μm未満の粒径を有する銅粒子を指す。銅ナノ粒子は一般的に表面にカルボン酸やアミンで被覆(表面被覆材という)されている。銅ナノ粒子は銅マイクロ粒子に比べて比表面積が大きく、単位質量当たりに占める表面被覆材の割合が増加する傾向にある。そのため焼結時(加熱時)に脱離する表面被覆材が多くなるため、銅マイクロ粒子に比べて焼結時の体積収縮が増える傾向ある。体積収縮を少なくする観点から、銅ナノ粒子の含有量は、銅粒子の全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、含まないことがさらに好ましい。
【0052】
[合金化用金属粒子]
銅との合金化が可能な金属を含む金属粒子としては、Sn単体、Snを含む合金、In単体、Inを含む合金、Ag単体、Agを含む合金、Zn単体、Znを含む合金、Ga単体、Gaを含む合金が挙げられる。
【0053】
合金化用金属粒子は、液相転移温度が300℃以下、200℃以下、又は150℃以下であってもよい。金属粒子の液相転移温度とは、金属粒子界面の液相への転移が生じる温度を指す。金属粒子の液相転移温度は、DSC(Differential scanning calorimetry、示差走査熱量測定)により、白金製のパンを使用し、50ml/分の窒素気流下にて、10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱する条件で測定することができる。
【0054】
接合材は、合金化用金属粒子として、SnBi合金粒子、SnIn合金粒子、InAg合金粒子、BiSnAg合金粒子、GaIn粒子、及びGaInSn粒子からなる群より選択される少なくとも一種の金属粒子を含んでいてもよい。
【0055】
合金化用金属粒子の体積平均粒径は、1~100μm、1~50μm又は1~30μmであってよい。合金化用金属粒子の体積平均粒径は、1μm以下であってもよい。
【0056】
合金化用金属粒子の含有量は、接合材に含まれる銅粒子の全質量を100質量部としたときに、42~900質量部、100~900質量部、100~700質量部、100~600質量部、100~400質量部、又は100~300質量部であってよい。合金化用金属粒子の含有量が、上記範囲内であれば、緻密で充分な接合強度を有し、再溶融しにくい接合部を形成することが容易となる。接合部の緻密度及び接合強度を向上させる観点から、合金化用金属粒子の含有量は、接合材に含まれる銅粒子の全質量を100質量部としたときに、42~900質量部、100~600質量部、又は100~300質量部であってよい。
【0057】
[その他の金属粒子]
接合材は、銅粒子及び合金化用金属粒子以外の金属粒子(「その他の金属粒子」ともいう。)を含むことができる。
【0058】
その他の金属粒子としては、例えば、ニッケル、金、パラジウム、白金等の粒子が挙げられる。その他の金属粒子の体積平均粒径は、0.01~10μm、0.01~5μm又は0.05~3μmであってよい。その他の金属粒子の形状は、特に限定されるものではない。その他の金属粒子の含有量は、充分な接合性を得る観点から、接合材に含まれる金属粒子の全質量を基準として、20質量%未満であってよく、10質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。
【0059】
[分散媒]
分散媒は、金属粒子を分散する機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、揮発性のものであってもよい。揮発性の分散媒としては、例えば、1価アルコール、多価アルコール等のアルコール類、エーテル類、エステル類、酸アミド、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。具体的には、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、α-ターピネオール(α-テルピネオール)、ジヒドロターピネオール(ジヒドロテルピネーオール)等のアルコール類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の酸アミド;シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0060】
分散媒の含有量は、接合材の全質量を基準として、2質量%以上又は5質量%以上であってよく、50質量%以下、30質量%以下又は20質量%以下であってもよい。例えば、分散媒の含有量は、接合材の全質量を基準として、2~50質量%であってよく、5~30質量%であってもよく、5~20質量%であってもよい。また、分散媒の含有量は接合材に含まれる金属粒子の全質量を100質量部として、5~50質量部であってよく、5~40質量部であってよく、10~30質量部であってよい。分散媒の含有量が上記範囲内であれば、接合材をより適切な粘度に調整でき、また、銅粒子の焼結を阻害しにくい。
【0061】
接合材は、300℃以上の沸点を有する分散媒を含むことができる。300℃以上の沸点を有する分散媒を含むことで、焼結開始直前まで接合材に可塑性と密着性が付与され、無加圧での接合が容易になる。300℃以上の沸点を有する分散媒の沸点は、接合材の焼結時において、焼結及び緻密化を妨げず、接合温度に達した際に速やかに蒸発し除去される観点から、300~450℃であってもよく、305~400℃であってもよく、310~380℃であってもよい。
【0062】
300℃以上の沸点を有する分散媒としては、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH、日本テルペン化学株式会社製)、ステアリン酸ブチル、エキセパールBS(花王株式会社製)、ステアリン酸ステアリル、エキセパールSS(花王株式会社製)、ステアリン酸2-エチルヘキシル、エキセパールEH-S(花王株式会社製)、ステアリン酸イソトリデシル、エキセパールTD-S(花王株式会社製)、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘネイコサン、ドコサン、メチルヘプタデカン、トリデシルシクロヘキサン、テトラデシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、ペンタデシルベンゼン、ヘキサデシルベンゼン、ヘプタデシルベンゼン、ノニルナフタレン、ジフェニルプロパン、オクタン酸オクチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサン酸)、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、メトキシフェネチルアルコール、ベンジルフェノール(C13H12O)、ヘキサデカンニトリル、ヘプタデカンニトリル、安息香酸ベンジル、シンメチリン、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。無加圧での接合が一層容易になる観点から、300℃以上の沸点を有する溶剤成分が、イソボルニルシクロヘキサノール、トリブチリン、ステアリン酸ブチル及びオクタン酸オクチルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0063】
300℃以上の沸点を有する分散媒の含有量は、接合材の全質量を基準として、2質量%以上、2.2質量%以上又は2.4質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、20質量%以下、10質量%以下又は5質量%以下であってもよい。例えば、300℃以上の沸点を有する分散媒の含有量は、接合材の全質量を基準として、2~50質量%であってよい。
【0064】
[その他の成分]
接合材は、添加剤として、活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤;表面張力調整剤;アルキルアミン、アルキルカルボン酸等の分散剤;シリコーン油等の消泡剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤などを含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜調整することができる。
【0065】
活性剤としては、アミノデカン酸、ペンタン-1,5-ジカルボン酸、トリエタノールアミン、ジフェニル酢酸、セバシン酸、フタル酸、安息香酸、ジブロモサリチル酸、アニス酸、ヨードサリチル酸、ピコリン酸等が挙げられ、保存安定性の観点から、トリエタノールアミンを添加することができる。活性剤の含有量は、合金化用金属粒子を基準として、5~30質量%、7.5~20質量%、又は7.5~13.6質量%であってよい。
【0066】
上述した接合材の粘度は特に限定されず、印刷等の手法で塗布する場合には、塗布方法に適した粘度に調整してよい。接合材の25℃におけるCasson粘度は、0.05Pa・s以上又は0.06Pa・s以上であってよく、2.0Pa・s以下又は1.0Pa・s以下であってよい。例えば、接合材の25℃におけるCasson粘度は、0.05~2.0Pa・sであってよく、0.06~1.0Pa・sであってもよい。
【0067】
(接合材の調製)
接合材は、上述の銅粒子と、低融点ポリカルボン酸と、分散媒と、場合により含有されるその他の金属粒子及び添加剤とを混合して調製することができる。各成分の混合後に、撹拌処理を行ってもよい。接合材は、分級操作により分散液の最大粒径を調整してもよい。このとき、分散液の最大粒径は20μm以下とすることができ、10μm以下とすることもできる。上記サブマイクロ銅粒子等の金属粒子は、表面処理剤で処理されたものを用いてよい。
【0068】
分散処理は、分散機又は攪拌機を用いて行うことができる。分散機及び攪拌機としては、例えば、石川式攪拌機、シルバーソン攪拌機、キャビテーション攪拌機、自転公転型攪拌装置、超薄膜高速回転式分散機、超音波分散機、ライカイ機、二軸混練機、ビーズミル、ボールミル、三本ロールミル、ホモミキサー、プラネタリーミキサー、超高圧型分散機及び薄層せん断分散機が挙げられる。
【0069】
分級操作は、例えば、ろ過、自然沈降及び遠心分離により行うことができる。ろ過用のフィルタとしては、例えば、水櫛、金属メッシュ、メタルフィルター及びナイロンメッシュが挙げられる。
【0070】
攪拌処理は、攪拌機を用いて行うことができる。攪拌機としては、例えば、石川式攪拌機、自転公転型攪拌装置、ライカイ機、二軸混練機、三本ロールミル及びプラネタリーミキサーが挙げられる。
【0071】
(接合する部材)
第1の部材及び第2の部材は、例えば、半導体ウェハ、半導体チップ、IGBT、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS-FET、サイリスタ、ロジック、センサー、アナログ集積回路(アナログIC)、パワーIC、LED、半導体レーザー、発信器等の半導体素子;リードフレーム;金属板貼付セラミックス基板(例えばDBC);LEDパッケージ等の半導体素子搭載用基材;銅リボン及び金属フレーム等の金属配線;金属ブロック等のブロック体;端子等の給電用部材;放熱板;水冷板などが挙げられる。
【0072】
第1の部材及び第2の部材の接合材と接する面は金属を含んでいてもよい。金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、鉛、錫、コバルト等が挙げられる。金属は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、焼結体と接する面は、上記金属を含む合金であってもよい。合金に用いられる金属としては、上記金属の他に、亜鉛、マンガン、アルミニウム、ベリリウム、チタン、クロム、鉄、モリブデン等が挙げられる。接合材と接する面に金属を含む部材としては、例えば、各種金属メッキを有する部材(金属メッキを有するチップ、各種金属メッキを有するリードフレーム等)、ワイヤ、ヒートスプレッダ、金属板が貼り付けられたセラミックス基板、各種金属からなるリードフレーム、銅板、銅箔などが挙げられる。
【0073】
(積層体)
積層体は、第1の部材及び/又は第2の部材の接合面に接合材を付着させた後、これらを積層することにより得ることができる。
【0074】
接合材を部材の接合面に付着させる方法としては、スキージ等で薄く均一に引き延ばした接合材に部材の接合面をディッピングする方法、接合材を薄く均一に塗布したローラによって、部材の接合面へ接合材を転写する方法、ニードルディスペンサにより接合材を部材の接合面に印刷する方法等が挙げられる。
【0075】
上記の具体例としては、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ジェット印刷等の印刷による方法、ディスペンサ(例えば、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ)、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコータ、バーコータ、アプリケータ、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ等を用いる方法、ソフトリソグラフィによる方法、粒子堆積法、電着塗装による方法などが挙げられる。
【0076】
第1の部材と第2の部材とを積層する方法としては、例えば、チップマウンター、フリップチップボンダー、カーボン製又はセラミックス製の位置決め冶具等を用いる方法が挙げられる。
【0077】
第1の部材と第2の部材との間に配置された接合材は、焼結時の流動及びボイドの発生を抑制する観点から、乾燥させてもよい。すなわち、本実施形態の製造方法は、第1の工程後、第2の工程の前に、接合材を乾燥させる乾燥工程を更に備えていてもよい。
【0078】
乾燥は、大気中で行ってよく、窒素、希ガス等の無酸素雰囲気中で行ってもよく、水素、ギ酸等の還元雰囲気中で行ってもよい。乾燥方法は、常温(例えば25℃)に放置することによる乾燥であってよく、加熱乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよい。加熱乾燥又は減圧乾燥には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉、熱板プレス装置等を用いることができる。乾燥条件(乾燥の温度及び時間)は、接合材に使用した揮発成分(例えば分散媒等の金属粒子以外の成分)の種類及び量に応じて適宜設定してよい。乾燥条件(乾燥の温度及び時間)としては、例えば、50℃以上150℃未満で1~120分間乾燥させる条件であってよい。
【0079】
(第1の加熱)
積層体を、合金化用金属粒子の液相転移温度未満の第1の温度で加熱するときの加熱処理には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉等の手段を用いることができる。
【0080】
積層体の加熱を行う雰囲気としては、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含む不活性雰囲気であってもよく、水素、ギ酸等の還元性物質を含む還元雰囲気であってもよく、両者が混合した雰囲気であってもよい。なお、不活性ガスは、銅粒子表面の酸化銅の生成を抑制することができ、還元性物質は、銅粒子表面の有機物の脱離を容易にし、銅粒子同士の焼結(融着)を促進することができる。雰囲気の圧力は、特に制限されないが、大気圧下であってもよく、減圧下であってもよい。
【0081】
銅粒子の焼結構造を充分に形成する観点から、ギ酸が含まれる雰囲気下で積層体を加熱してもよく、このときのギ酸の濃度は0.1%以上、1%以上、又は100%とすることができる。ギ酸は窒素中にバブリングさせた混合ガスとして用いることもできる。また、ギ酸を噴霧することもできる。
【0082】
第1の温度(加熱処理時の到達最高温度)は、銅粒子の焼結構造を充分に形成する観点、第1の部材及び第2の部材への熱ダメージを低減する観点、並びに、歩留まりを向上させる観点から、合金化用金属粒子の液相転移温度をT℃としたときに、110℃~(T-100)℃、120℃~(T-50)℃、又は120℃~(T-30)℃であってよい。
【0083】
接合材が、銅粒子として体積平均粒径が0.12~0.8μmであるサブマイクロ銅粒子を含み、積層体をギ酸が含まれる雰囲気下で加熱する場合には、第1の温度を110±30℃に設定することができる。
【0084】
第1の加熱における加熱時間(到達最高温度での保持時間)は、銅粒子の焼結構造を充分に形成する観点から、10分間以上、30分間以上又は60分間以上であってよい。加熱時間は、第1の部材及び第2の部材への熱ダメージを低減する観点、及び歩留まりを向上させる観点から、120分間以下、100分間以下又は60分間以下であってよい。これらの観点から、加熱時間は、10分間~120分間、30分間~120分間、又は、30分間~60分間であってよい。
【0085】
(第2の加熱)
第1の加熱を経た積層体を、合金化用金属粒子の液相転移温度以上の第2の温度で加熱するときの加熱処理には、上述した第1の加熱と同様の手段を用いることができる。積層体の加熱を行う雰囲気についても、上述した第1の加熱と同様にすることができる。
【0086】
第2の温度(加熱処理時の到達最高温度)は、接合材の焼結体を充分に形成する観点、第1の部材及び第2の部材への熱ダメージを低減する観点、並びに、歩留まりを向上させる観点から、合金化用金属粒子の液相転移温度をT℃としたときに、(T+100)℃~(T+120)℃、(T+50)℃~(T+70)℃、又は(T+20)℃~(T+30)℃であってよい。
【0087】
接合材が、合金化用金属粒子としてSnBi合金粒子を含む場合、第2の温度を140~180℃に設定することができる。
【0088】
第2の加熱における加熱時間(到達最高温度での保持時間)は、接合材の焼結体を充分に形成する観点から、1分間以上、10分間以上又は30分間以上であってよい。加熱時間は、第1の部材及び第2の部材への熱ダメージを低減する観点、及び歩留まりを向上させる観点から、60分間以下、30分間以下又は10分間以下であってよい。これらの観点から、加熱時間は、1分間~60分間、1分間~45分間、又は、1分間~30分間であってよい。
【0089】
第1の温度から第2の温度までの昇温速度は、5℃~100℃/分、5℃~50℃/分、又は5℃~30℃/分とすることができる。
【0090】
第2の工程は、加圧下で実施してもよく、無加圧下(接合する部材の重さのみ、又はその重さに加え、0.01MPa以下の微圧力を接合材が受けている状態)で実施してもよい。接合材が0.01MPa以下の微圧力を受ける方法としては、例えば、鉛直方向上側に配置される部材上に重りを載せる方法、ばね冶具により加圧する方法等が挙げられる。
【0091】
こうして、第1の部材及び第2の部材を接合する接合材の焼結体が形成される。
【0092】
更に、図面を参照して本実施形態の接合体の製造方法について説明する。
【0093】
一実施形態に係る接合体の製造方法は、上記積層体として、第1の電極を有する第1の部材と、第2の電極を有し、第1の電極と第2の電極とが互いに対向するように配置された第2の部材と、第1の電極と第2の電極との間に設けられた上記接合材とを備える積層体を用意する。
【0094】
図1は、一実施形態の接合体の製造方法を示す模式断面図である。図2及び図3は第1の工程の一例を示す模式断面図である。ここでは、第1の電極が金属ピラーであり、第2の電極が電極パッドである場合を示す。
【0095】
(第1の工程)
第1の工程では、第1の部材10と、第2の部材20と、接合材(接合部)30と、を備える積層体50を用意する(図1(a)参照。)。
【0096】
第1の部材10は、金属ピラー11と、該金属ピラー11が一方面上に設けられた基板(第1の基板)12と、を備えている。第1の部材10は、例えば、ロジック、アナログIC、及びパワーIC等のマイクロデバイスである。
【0097】
金属ピラー11は、例えば、第1の基板12の一方面上に複数設けられており、第1の部材10と第2の部材20とを対向配置した際に、複数の金属ピラー11のそれぞれが第2の部材20における電極パッド21と対向するように第1の基板12上に配置されている。
【0098】
金属ピラー11の材質は特に限定されない。金属ピラー11の接合面(接合材30が配置される面、第1の基板12とは反対側の表面)に酸化被膜が形成されている場合に、第2の工程において該酸化被膜が除去されやすい観点から、金属ピラー11は、少なくとも接合面が、金、白金、銀、パラジウム、銅、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種の金属で構成されていることが好ましい。また、接合後のカーケンダルボイドの抑制の観点及びインピーダンス不整合の抑制の観点から、金属ピラー11は、少なくとも接合面が、銅を含む材料で構成されていることが好ましく、銅を一定割合以上(例えば90質量%以上)含む材料で構成されていることがより好ましい。
【0099】
金属ピラー11の形状は特に限定されない。金属ピラー11が伸びる方向に垂直な断面の形状は、例えば、円形状、楕円形状、矩形状等であってよい。金属ピラー11の高さは、例えば、10μm以上であってよく、100μm以下であってよい。金属ピラー11のピラー径(上記断面が円形状以外の場合には最大径)は、例えば、10μm以上であってよく、300μm以下であってよい。
【0100】
第2の部材20は、電極パッド21と、該電極パッド21が一方面上に設けられた基板(第2の基板)22と、を備えている。第2の部材20は、例えば、実装基板、リードフレーム、高放熱実装基板、シリコンインターポーザ、エポキシ配線板等の基板である。
【0101】
電極パッド21の形状及び材質は特に限定されない。電極パッド21の接合面(接合材30が配置される面、第2の基板22とは反対側の表面)に酸化被膜が形成されている場合に、第2の工程において該酸化被膜が除去されやすい観点から、電極パッド21は、少なくとも接合面が、金、白金、銀、パラジウム、銅、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種の金属で構成されていることが好ましい。また、接合後のカーケンダルボイドの抑制の観点及びインピーダンス不整合の抑制の観点から、電極パッド21は、少なくとも接合面が、銅を含む材料で構成されていることが好ましく、銅を一定割合以上(例えば90質量%以上)含む材料で構成されていることがより好ましい。金属ピラー11及び電極パッド21を構成する材料(金属)は同一であっても異なっていてもよい。
【0102】
接合材30は、金属ピラー11と電極パッド21との間において、接合部を形成することができる。図1では、接合材30は、金属ピラー11と電極パッド21との間にのみ存在しているが、接合材30の配置箇所はこれに限定されない。すなわち、接合材30は、少なくとも金属ピラー11と電極パッド21との間に存在していればよく、金属ピラー11と電極パッド21との間以外の領域にも存在していてよい。
【0103】
積層体50における接合材の厚さ(金属ピラー11の接合面から電極パッド21の接合面までの距離)は、1~1000μm、5~500μm、10~500μm、15~500μm、20~300μm、50~200μm、10~3000μm、10~250μm又は15~150μmであってよい。接合材の厚さは、1μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上又は50μm以上であってよい。接合材の厚さは、3000μm以下、1000μm以下、500μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下又は150μm以下であってよい。
【0104】
積層体50は、例えば、第1の部材10における金属ピラー11及び第2の部材20における電極パッド21のうちの少なくとも一方の接合面に接合材30を配置した後、接合材30を介して、第1の部材10の金属ピラー11と第2の部材20の電極パッド21とを接続することにより得ることができる。例えば、図2に示すように、第2の部材20における電極パッド21の接合面に接合材30を配置した後(図2(a)参照。)、接合材30を介して金属ピラー11と電極パッド21とが互いに対向するように第2の部材20上に第1の部材10を配置し(図2(b)参照。)、接合材30を介して金属ピラー11と電極パッド21とを接続することにより積層体50を得てよい(図2(c)参照。)。図3に示すように、第1の部材10における金属ピラー11の接合面に接合材30を配置した後(図3(a)参照。)、接合材30を介して金属ピラー11と電極パッド21とが互いに対向するように第1の部材10上に第2の部材20を配置し(図3(b)参照。)、金属ピラー11と電極パッド21とを接続することにより積層体50を得てもよい(図3(c)参照。)。接合材30は、金属ピラー11及び電極パッド21の接合面の少なくとも一部に配置されればよく、接合面全体に配置されてもよい。
【0105】
接合材30を金属ピラー11及び電極パッド21の接合面に配置する方法は、金属ピラー11の接合面(端面)及び電極パッド21の接合面に接合材を付着させることができる方法であればよく、上述した方法を採用することができる。
【0106】
第1の部材(例えばマイクロデバイス)と第2の部材(例えば基板)とを積層する方法としては、例えば、チップマウンター、フリップチップボンダー、カーボン製又はセラミックス製の位置決め冶具等を用いる方法が挙げられる。
【0107】
第1の部材と第2の部材との間(金属ピラー11と電極パッド21との間)に配置された接合材30は、焼結時の流動及びボイドの発生を抑制する観点から、乾燥させてもよい。乾燥は、上述した条件で行うことができる。
【0108】
(第2の工程)
第2の工程では、積層体50に対して、上述した第1の加熱及び第2の加熱が行われる。
【0109】
第2の工程は、加圧下で実施してもよく、無加圧下で実施してもよい。
【0110】
接合体100のシェア強度は、第1の部材及び第2の部材を充分に接合する観点から、1MPa以上であってよく、3MPa以上であってもよく、5MPa以上であってもよく、10MPa以上であってもよい。ダイシェア強度は、ユニバーサルボンドテスタ(Royce 650, Royce Instruments社製)又は万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、DAGE社製)等を用いて測定することができる。
【0111】
この一実施形態の方法は、マイクロデバイスのフリップチップ接合に適用することができる。
【0112】
本実施形態の接合体の製造方法は、上記の一実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。
【0113】
例えば、第1の部材及び第2の部材がシリコン、窒化ガリウム及び炭化ケイ素からなる群より選択される1種又は2種以上の半導体を含むウェハ又はチップであり、第1の電極及び第2の電極が貫通電極であってもよい。この方法によれば、貫通電極が設けられた複数の半導体ウェハ及び/又は半導体チップの積層体であって層間がマイクロバンプ接合された半導体装置を接合体として得ることができる。
【0114】
上記ウェハ又はチップとしては、シリコンウェハ、窒化ガリウムウェハ、炭化ケイ素ウェハ、シリコンチップ、窒化ガリウムチップ及び炭化ケイ素チップが挙げられる。また、2種以上の半導体を含むウェハ又はチップとしては、シリコンウェハ又はチップ上に窒化ガリウムが積層されたものが挙げられる。
【0115】
更に、本実施形態の接合体の製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0116】
図4は、本実施形態の接合体の製造方法によって製造される接合体の一例を示す模式断面図である。
【0117】
図4に示す接合体125は、第1の部材102と、第2の部材103と、第1の部材102と第2の部材103とを接合する接合材の焼結体101と、を備える。
【0118】
第1の部材及び第2の部材は、例えば、IGBT、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS-FET、サイリスタ、ロジック、センサー、アナログ集積回路、LED、半導体レーザー、発信器等の半導体素子;リードフレーム;金属板貼付セラミックス基板(例えばDBC);LEDパッケージ等の半導体素子搭載用基材;銅リボン及び金属フレーム等の金属配線;金属ブロック等のブロック体;端子等の給電用部材;放熱板;水冷板などが挙げられる。
【0119】
第1の部材102及び第2の部材103の接合材の焼結体と接する面102a及び103aは金属を含んでいてもよい。金属としては、上述したものが挙げられる。
【0120】
接合体125のシェア強度は、第1の部材102及び第2の部材103を充分に接合する観点から、1MPa以上であってよく、3MPa以上であってもよく、5MPa以上であってもよく、10MPa以上であってもよい。ダイシェア強度は、ユニバーサルボンドテスタ(Royce 650, Royce Instruments社製)又は万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、DAGE社製)等を用いて測定することができる。
【0121】
上記接合体125において、第1の部材が半導体素子である場合、上記接合体125は半導体装置となる。
【0122】
図5は、本実施形態の接合体の製造方法によって製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。図5に示す半導体装置130は、接合材の焼結体111と、リードフレーム115aと、リードフレーム115bと、ワイヤ116と、焼結体111を介してリードフレーム115a上に接続された半導体素子118と、これらをモールドするモールドレジン117と、を備える。半導体素子118は、ワイヤ116を介してリードフレーム115bに接続されている。
【0123】
半導体装置としては、例えば、ダイオード、整流器、サイリスタ、MOSゲートドライバ、パワースイッチ、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーダイオード、ファーストリカバリダイオード等のパワーモジュール;発信機;増幅器;高輝度LEDモジュール;センサーなどが挙げられる。
【0124】
図6図6(a)及び図6(b))は、接合体125の製造方法を説明するための模式断面図である。本実施形態に係る接合体125の製造方法は、第1の部材102、該第1の部材102の重さが働く方向側に、上記接合材110、及び第2の部材103がこの順に積層された積層体60を用意し(図6(a))、積層体60を、合金化用金属粒子の液相転移温度未満の第1の温度で加熱した後、合金化用金属粒子の液相転移温度以上の第2の温度で加熱して、第1の部材102及び第2の部材103を接合する接合材の焼結体101を形成する工程を備える。これにより接合体125が得られる(図6(b))。なお、第1の部材102の重さが働く方向とは、重力が働く方向ということもできる。
【0125】
上記工程において、接合材110を、第1の部材102の重さを受けた状態、又は第1の部材102の重さ及び0.01MPa以下の微圧力を受けた状態で、焼結してもよい。
【0126】
上記積層体60は、上述した積層体50と同様の方法及び条件で用意することができる。接合材110の乾燥、焼結についても、上述した接合材30と同様に方法及び条件で行うことができる。
【0127】
接合材110の厚さは、1μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上又は50μm以上であってよく、3000μm以下、1000μm以下、500μm以下、300μm以下、250μm以下又は150μm以下であってよい。例えば、接合材10の厚さは、1~1000μmであってよく、10~500μmであってもよく、50~200μmであってもよく、10~3000μmであってもよく、15~500μmであってもよく、20~300μmであってもよく、5~500μmであってもよく、10~250μmであってもよく、15~150μmであってもよい。
【0128】
一方の部材を他方の部材上に配置する方法(例えば、接合材110が設けられた第2の部材103上に第1の部材102を配置する方法)としては、例えば、チップマウンター、フリップチップボンダー、カーボン製又はセラミックス製の位置決め冶具等を用いる方法が挙げられる。
【0129】
接合材110を用いて上述した第1の加熱及び第2の加熱を行うことにより、接合体は充分な接合強度を有し、後加工において加熱される場合であっても接合部の再溶融に起因する問題が生じにくいものにすることができる。また、無加圧での接合を行う場合であっても、接合体は充分な接合強度を有することができる。
【0130】
本実施形態に係る半導体装置130は、上述した接合体125の製造方法と同様にして製造することができる。すなわち、半導体装置の製造方法は、第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方に半導体素子を用い、第1の部材、該第1の部材の重さが働く方向側に、上記接合材、及び第2の部材がこの順に積層された積層体を用意し、積層体を、合金化用金属粒子の液相転移温度未満の第1の温度で加熱した後、合金化用金属粒子の液相転移温度以上の第2の温度で加熱して、第1の部材及び第2の部材を接合する接合材の焼結体を形成する工程を備える。例えば、図7図7(a)~図7(c))に示すように、リードフレーム115a上に接合材120を設け、半導体素子118を配置して積層体70を得た後(図7(a))、この積層体70を加熱し、接合材120を焼結させることにより接合体80を得る(図7(b))。次いで、得られた接合体80におけるリードフレーム115bと半導体素子118とをワイヤ116によって接続し、封止樹脂によりこれらを封止する。以上の工程により半導体装置130が得られる(図7(c))。得られる半導体装置120は、充分なダイシェア強度及び接続信頼性を有することができる。本実施形態の半導体装置は、充分な接合力を有し、熱伝導率及び融点が高い焼結体を備えることにより、充分なダイシェア強度を有し、接続信頼性に優れるとともに、パワーサイクル耐性にも優れたものになり得る。
【0131】
図8に示す接合体140は、第1の部材102と、第2の部材103と、第3の部材104と、第4の部材105と、第1の部材102と第2の部材103とを接合する上記接合材の焼結体101aと、第1の部材102と第3の部材104とを接合する上記接合材の焼結体101bと、第3の部材104と第4の部材105とを接合する上記接合材の焼結体101cと、を備える。
【0132】
このような接合体140は、例えば、図9図9(a)及び図9(b))に示すように、第3の部材104、該第3の部材104の重さが働く方向側に、第2の接合材110b、第1の部材102、第1の接合材110a、及び第2の部材103がこの順に積層された積層部分と、第3の部材104、該第3の部材104の重さが働く方向側に、第3の接合材110c、及び第4の部材105がこの順に積層された積層部分とを有する積層体90を用意し(図9(a))、上記接合体125の製造方法と同様にして、第1の接合材110a、第2の接合材110b及び第3の接合材110cを焼結する工程を備える方法で得ることができる(図9(b))。上記方法において、第1の接合材110a、第2の接合材110b及び第3の接合材110cは上述した接合材と同様に組成を有し、第1の接合材110aが焼結することにより焼結体101aが得られ、第2の接合材110bが焼結することにより焼結体101bが得られ、第3の接合材110cが焼結することにより焼結体101cが得られる。
【0133】
また、接合体140は、例えば、上記接合体125を得た後、第3の部材104、該第3の部材4の重さが働く方向側に、第2の接合材110b、及び第1の部材102がこの順に積層された積層部分と、第3の部材104、該第3の部材104の重さが働く方向側に、第3の接合材110c、及び第4の部材105がこの順に積層された積層部分とを形成し、上記接合体125の製造方法と同様にして、第2の接合材110b及び第3の接合材110cを焼結する工程を備える方法で得ることもできる。
【0134】
図10に示す接合体150は、第1の部材102と、第2の部材103と、第3の部材104と、第4の部材105と、第5の部材106と、第1の部材102と第2の部材103とを接合する上記接合材の焼結体101aと、第3の部材104と第4の部材105とを接合する上記接合材の焼結体101cと、第1の部材102と第5の部材106とを接合する上記接合材の焼結体101dと、第3の部材104と第5の部材106とを接合する上記接合材の焼結体101eと、を備える。
【0135】
このような接合体150は、例えば、図11図11(a)及び図11(b))に示すように、第3の部材104、該第3の部材104の重さが働く方向側に、第5の接合材110e、第5の部材106、第4の接合材110d、第1の部材102、第1の接合材110a、及び第2の部材103がこの順に積層された積層部分と、第3の部材104、該第3の部材104の重さが働く方向側に、第3の接合材110c、及び第4の部材105がこの順に積層された積層部分とを有する積層体95を用意し(図11(a))、上記接合体125の製造方法と同様にして、第1の接合材110a、第3の接合材110c、第4の接合材110d及び第5の接合材110eを焼結する工程を備える方法で得ることができる(図11(b))。上記方法において、第1の接合材110a、第3の接合材110c、第4の接合材110d及び第5の接合材110eは上述した接合材と同様に組成を有し、第1の接合材110aが焼結することにより焼結体101aが得られ、第3の接合材110cが焼結することにより焼結体101cが得られ、第4の接合材110dが焼結することにより焼結体101dが得られ、第5の接合材110eが焼結することにより焼結体101eが得られる。
【0136】
また、接合体150は、第3の部材104、該第3の部材104の重さが働く方向側に、第5の接合材110e、第5の部材106、第4の接合材110d、第1の部材102、第1の接合材110a、及び第2の部材103がこの順に積層された積層体を用意し、上記接合体125の製造方法と同様にして、第1の接合材110a、第4の接合材110d及び第5の接合材110eを焼結した後、第3の部材104、該第3の部材104の重さが働く方向側に、第3の接合材110c、及び第4の部材105がこの順に積層された積層部分を形成し、上記接合体125の製造方法と同様にして、第3の接合材110cを焼結する工程を備える方法で得ることもできる。
【0137】
また、接合体150は、上記接合体125を得た後、第3の部材104、該第3の部材104の重さが働く方向側に、第5の接合材110e、第5の部材106、第4の接合材110d、及び第1の部材102がこの順に積層された積層部分と、第3の部材104、該第3の部材104の重さが働く方向側に、第3の接合材110c、及び第4の部材105がこの順に積層された積層部分とを形成し、上記接合体125の製造方法と同様にして、第3の接合材110c、第4の接合材110d及び第5の接合材110eを焼結する工程を備える方法で得ることもできる。
【0138】
上記変形例において、第3の部材104、第4の部材105及び第5の部材106の例としては、第2の部材103の例と同様であり、例えば、第3の部材104は銅リボン及び金属フレーム等の金属配線であってもよく、第4の部材105は端子又はリードフレームであってもよく、第5の部材106は金属ブロック等のブロック体であってもよい。また、第3の部材104、第4の部材105及び第5の部材106の接合材の焼結体と接する面は金属を含んでいていてもよい。含みうる金属の例は、第1の部材102及び第2の部材103が接合材の焼結体と接する面に含みうる金属の例と同様である。また、上記変形例において用いる第1の接合材110a、第2の接合材110b、第3の接合材110c、第4の接合材110d、第5の接合材110eは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0139】
<接合体>
本実施形態の接合体は、第1の部材、第2の部材、及び、第1の部材と第2の部材とを接合する接合部を備え、接合部が、銅粒子と、銅との合金化が可能な金属を含む金属粒子と、を含む接合材の焼結体からなり、焼結体が、銅粒子が焼結してなる焼結構造と、該焼結構造の表面で銅と合金化した上記金属とを含む。本実施形態の接合体は、上述した本実施形態の接合体の製造方法によって得ることができる。
【0140】
上記接合部は、熱伝導率及び電気伝導率の観点から、空孔率が、接合部全体の体積を基準として、20体積%以下であってもよく、10体積%以下であってもよく、5体積%以下であってもよい。
【0141】
なお、接合部の空孔率は、以下の手順により算出される。
(i)接合部(接合材の焼結体)の断面を露出させる。
(ii)露出させた断面を走査型電子顕微鏡により断面画像を撮影する。
(iii)金属部分と空孔部分とが分かれるように、得られた断面画像を画像処理ソフトにより2値化処理する。
(iv)2値化処理された断面画像から、接合部断面の全面積に対する空孔部分の面積の比率を求め、これを接合部の空孔率とする。
【0142】
上記(iii)及び(iv)で用いることができる画像処理ソフトとしては、Adobe Photoshop シリーズ(アドビシステムズ株式会社製)、ペイントツールSAIシリーズ(株式会社SYSTEMAX)、GIMP(the GIMP development team.製)、Corel PrintShop Proシリーズ(コーレル・コーポレーション製)、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)等が挙げられる。
【0143】
上記の第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方は半導体素子であってよい。すなわち、接合体は半導体装置であってよい。
【0144】
本実施形態の接合体は、上記第1の部材が第1の電極を有し、上記第2の部材が第1の電極と対向する第2の電極を有し、焼結体が第1の電極と第2の電極とを接合していてもよい。
【0145】
第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方が金属ピラーであってもよい。
【0146】
第1の部材及び第2の部材がシリコン、窒化ガリウム及び炭化ケイ素からなる群より選択される1種又は2種以上の半導体を含むウェハ又はチップであり、第1の電極及び第2の電極が半導体ウェハ及び/又は半導体チップに設けれた貫通電極であってもよい。この接合体は、TSV(Through Silicon Via)で接続する構造を有するLSIへの応用が可能である。
【0147】
図12は、TSVのチップ層間がマイクロバンプ接合された接合体及びその製造方法を説明するための模式断面図である。図12の(a)に示される接合体52は、貫通電極14が設けられた複数の半導体チップ13が、マイクロバンプ15及び焼結体16を介して接合された構造を有する。焼結体16は、本実施形態の接合用金属ペーストの焼結体である。
【0148】
接合体52は、上述した接合体の製造方法と同様にして製造することができる。例えば、図12の(b)に示すように、一方の半導体チップ13におけるマイクロバンプ15上に接合用銅ペースト17を配置した後、接合用金属ペースト17を介してマイクロバンプ15と他方の半導体チップ13’におけるマイクロバンプ15’とが互いに対向するように一方の半導体チップ13上に他方の半導体チップ13’を配置し、焼結した接合用金属ペースト17を介してマイクロバンプ15とマイクロバンプ15’とを接続することにより接合体を得ることができる。この工程を繰り返す又は同時に行うことにより、接合体52が得られる。
【実施例
【0149】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0150】
<接合材の調製>
(実施例1)
銅粒子としてCH-0200(三井金属鉱業株式会社製、製品名、50%体積平均粒径:0.36μm)0.264g、トリエタノールアミン0.180g、及び、ターピネオール(日本テルペン化学(株)製、製品名「ターピネオールC」、異性体混合物)0.180gを、2000rpm、1分間の条件で株式会社シンキー製攪拌機(商品名:「あわとり練太郎 ARE-310」、以下同様。)にて混合した。その後、3本ロールミルで10回分散処理を行い、混合物を得た。
【0151】
分散処理により得た混合物をポリエチレン製の容器に移した後、合金化用金属粒子としてSnBi58(10~25μm)(三井金属鉱業株式会社製、製品名、SnBiはんだ粒子)2.376gを秤量して容器に加え、2000rpm、1分間の条件で株式会社シンキー製攪拌機にて混合した。その後、3本ロールミルで5回分散処理を行い、接合材として接合用金属ペーストを得た。
【0152】
(実施例2~12、及び比較例1~4)
接合用金属ペーストの組成を表1~3に示す組成(数値の単位はg)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接合用金属ペーストを調製した。
【0153】
上記で得られた接合用金属ペーストを用いて、下記の方法に従って、接合部の緻密度(空孔率)、接合強度(シェア強度)及び再溶融性の評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0154】
(緻密度)
緻密度は空孔率の測定により評価した。まず、まず、銅板上に、厚さ100μmのステンレス板に直径200μmの円柱状の開口を有するメタルマスクを載せ、メタルスキージを用いてステンシル印刷により接合用金属ペーストを塗布した。塗布した接合用金属ペースト上に、チタン、ニッケルがこの順で形成され、被着面がニッケルであるシリコンチップ(チップ厚:600μm)を載せ、ピンセットで軽く押さえた。これをチューブ炉(株式会社エイブイシー製)にセットし、下記の加熱条件1で加熱し、その後、下記の加熱条件2で加熱することにより、銅板とシリコンチップを焼結体で接合した接合体を得た。
加熱条件1:ギ酸を飽和させた窒素ガス雰囲気、加熱温度110℃、加熱時間60分
加熱条件2:ギ酸を飽和させた窒素ガス雰囲気、加熱温度140℃、加熱時間60分
【0155】
接合体をカップ内にサンプルクリップ(Samplklip I、Buehler社製)で固定し、周囲にエポキシ注形樹脂(エポマウント、リファインテック株式会社製)をサンプル全体が埋まるまで流し込み、真空デシケータ内に静置し、1分間減圧して脱泡した。その後、室温(25℃)下10時間放置してエポキシ注形樹脂を硬化した。次に、ダイヤモンド切断ホイール(11-304、リファインテック株式会社製)をつけたリファインソー・ロー(RCA-005、リファインテック株式会社製)を用い、注形した接合体の観察したい接合部付近で切断した。耐水研磨紙(カーボマックペーパー、リファインテック株式会社製)をつけた研磨装置(Refine Polisher Hv、リファインテック株式会社製)で断面を削り、シリコンチップにクラックの無い断面を出し、さらに余分な注形樹脂を削りCP(クロスセクションポリッシャ)加工機にかけられるサイズに仕上げた。切削加工したサンプルをCP加工機(IM4000、株式会社日立製作所製)で加速電圧6kV、アルゴンガス流量0.07~0.1cm3/min、処理時間2時間の条件でクロスセクションポリッシングを行って断面加工を行った。加工された断面にスパッタ装置(ION SPUTTER、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて白金を10nmの厚みでスパッタしてSEM観察用のサンプルとした。
【0156】
SEM観察用サンプルを、SEM装置(SU5000、日立ハイテクノロジーズ製)により印加電圧20kVで観察し、接合部の断面のSEM画像(30,000倍)を得た。
【0157】
得られたSEM画像を画像処理ソフトImage J(アメリカ国立衛生研究所製)により、コントラストの自動調整(バイアス:中間、強さ:標準、表示:ボールド)、2階調化(しきい値:100)の順で画像処理して、金属(緻密部)が白で表され、ボイド(空孔部)が黒で表された白黒の画像を得て、断面部に占める空孔部の面積比として(黒のドット数)/{(白のドット数)+(黒のドット数)}×100を求め、これを接合部の空孔率(体積%)とした。空孔率(体積%)から、下記の判定基準で緻密度を評価した。
[判定基準]
A:空孔率が90体積%以上
B:空孔率が80体積%以上90体積%未満
C:空孔率が80体積%未満
【0158】
(接合強度)
接合強度はシェア強度により評価した。まず、無酸素銅板(19mm×25mm×厚さ3mm)に、厚さ100μmのステンシルマスクを用いて接合用銅ペーストをステンシル印刷し、下記の加熱条件1で加熱し、その後、下記の加熱条件2で加熱することにより、銅板上にバンプ径200μmのバンプが10本形成された測定用サンプルを作製した。
加熱条件1:ギ酸を飽和させた窒素ガス雰囲気、加熱温度110℃、加熱時間60分
加熱条件2:ギ酸を飽和させた窒素ガス雰囲気、加熱温度140℃、加熱時間60分
【0159】
上記で得られた測定用サンプルのバンプを、ロードセル(BS-5KG、ノードソン・アドバンスト・テクノロジー(株)社製)を装着した万能型ボンドテスタDage4000(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー(株)製、製品名)を用い、温度25℃、シェア速度100μm/秒、シェア高さ10μmの条件で水平方向に押し、シェア試験を行った。次いで、試験後のバンプの破断部をデジタルマイクロスコープVHX-5000((株)キーエンス製、製品名)で観察して破断面の総面積を算出した。得られたシェア強度を総面積で除した単位面積あたりのシェア強度から、下記の判定基準で接合強度を評価した。
[判定基準]
A:シェア強度が10MPa以上
B:シェア強度が5MPa以上10MPa未満
C:シェア強度が1MPa以上5MPa未満
D:シェア強度が測定限界値未満又は測定不能
【0160】
(再溶融性)
上記接合強度の評価と同様にして測定用サンプルを作製した。測定用サンプルを窒素雰囲気下、140℃で30分間再加熱した。このときのバンプの再溶融の有無を肉眼で観察し、下記の判定基準で再溶融性を評価した。
[判定基準]
A:バンプが溶融しなかった。
B:バンプの一部が溶融した。
C:バンプのすべてが溶融した。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
【表3】
【0164】
表中の銅粒子及び合金化用金属粒子の詳細は下記のとおりである。
(銅粒子)
サブマイクロ銅粒子A:CH-0200(三井金属鉱業株式会社製、製品名、50%体積平均粒径:0.36μm、三井金属鉱業株式会社製)
(合金化用金属粒子)
SnBiはんだ粒子A:SnBi58(10-25μm)(三井金属鉱業株式会社製、製品名)
SnBiはんだ粒子B:SnBi58(ST-3)(三井金属鉱業株式会社製、製品名)
SnBiはんだ粒子C:SnBi58(STC-3)(三井金属鉱業株式会社製、製品名)
(分散媒)
ターピネオール:ターピネオールC(日本テルペン化学(株)製、製品名、異性体混合物)
【符号の説明】
【0165】
10…第1の部材、11…金属ピラー、12…第1の基板、20…第2の部材、21…電極パッド、22…第2の基板、30…接合材、31…焼結体(接合部)、50,60,70,90,95…積層体、80,100…接合体、101,1a,1b,1c,1d,1e,11…接合材の焼結体、102…第1の部材、103…第2の部材、110,110a,110b,110c,110d,110e,120…接合材、115a,115b…リードフレーム、116…ワイヤ、117…モールドレジン、118…半導体素子、125,140,150…接合体、130…半導体装置。
図1
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図12