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特許7463684液体組成物セット、収容容器セット、硬化物形成装置、硬化物形成方法、及び液体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】液体組成物セット、収容容器セット、硬化物形成装置、硬化物形成方法、及び液体組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/54 20140101AFI20240402BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20240402BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240402BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C09D11/54
C09D11/38
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 132
B41M5/00 134
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019182665
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021059620
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】平岡 孝朗
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表昭63-500247(JP,A)
【文献】特開平06-107988(JP,A)
【文献】特開昭56-095966(JP,A)
【文献】特公昭51-025441(JP,B2)
【文献】特開昭56-127609(JP,A)
【文献】特開2006-077181(JP,A)
【文献】特表2022-505181(JP,A)
【文献】特表2019-522073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物と、を有し、
前記第一の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、スルトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物から選ばれる少なくとも1つである液体組成物セット。
【化1】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項2】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物と、を有し、
前記第一の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、重合性官能基を有する液体組成物セット。
【化2】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項3】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物と、を有し、
前記第一の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、メタクリロイル基を有する液体組成物セット。
【化3】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項4】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物と、を有し、
前記第二の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、スルトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物から選ばれる少なくとも1つである液体組成物セット。
【化4】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項5】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物と、を有し、
前記第二の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、重合性官能基を有する液体組成物セット。
【化5】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項6】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物と、を有し、
前記第二の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、メタクリロイル基を有する液体組成物セット。
【化6】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項7】
前記第一の液体組成物及び前記第二の液体組成物が接触すると硬化する請求項1から6のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項8】
前記一般式(1)で表される化合物は、シアノアクリレート化合物である請求項1から7のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項9】
前記第二の液体組成物は、ビニルエーテル化合物、N-ビニル化合物、アクリル酸エステル化合物、及びアクリルアミド化合物から選ばれる少なくとも1つを含有する請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項10】
前記第一の液体組成物を容積110mLの容器に50mL入れ、前記容器中の前記第一の液体組成物が温度25℃かつ湿度50%RHの空気に接触している状態で密閉し、温度25℃の環境下において1日静置したとき、下記式に基づいて算出される前記第一の液体組成物の粘度変化率は、5.0%以下である請求項1から9のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【数1】
【請求項11】
前記第一の液体組成物及び前記第二の液体組成物は、重合開始剤を実質的に含有しない請求項1から10のいずれか一項に記載の液体組成物セット。
【請求項12】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を収容した第一の収容容器と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を収容した第二の収容容器と、を有する収容容器セットであって、
前記第一の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、スルトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物から選ばれる少なくとも1つである収容容器セット。
【化7】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項13】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を収容した第一の収容容器と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を収容した第二の収容容器と、を有する収容容器セットであって、
前記第一の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、重合性官能基を有する収容容器セット。
【化8】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項14】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を収容した第一の収容容器と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を収容した第二の収容容器と、を有する収容容器セットであって、
前記第一の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、メタクリロイル基を有する収容容器セット。
【化9】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項15】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を収容した第一の収容容器と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を収容した第二の収容容器と、を有する収容容器セットであって、
前記第二の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、スルトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物から選ばれる少なくとも1つである収容容器セット。
【化10】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項16】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を収容した第一の収容容器と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を収容した第二の収容容器と、を有する収容容器セットであって、
前記第二の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、重合性官能基を有する収容容器セット。
【化11】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項17】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を収容した第一の収容容器と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を収容した第二の収容容器と、を有する収容容器セットであって、
前記第二の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、
前記酸性物質は、メタクリロイル基を有する収容容器セット。
【化12】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項18】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与手段と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与手段と、を有する硬化物形成装置であって、
前記第一の付与手段は、インクジェット方式で吐出する付与手段であり、
前記酸性物質は、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、スルトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物から選ばれる少なくとも1つである硬化物形成装置。
【化13】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項19】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与手段と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与手段と、を有する硬化物形成装置であって、
前記第一の付与手段は、インクジェット方式で吐出する付与手段であり、
前記酸性物質は、重合性官能基を有する硬化物形成装置。
【化14】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項20】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与手段と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与手段と、を有する硬化物形成装置であって、
前記第一の付与手段は、インクジェット方式で吐出する付与手段であり、
前記酸性物質は、メタクリロイル基を有する硬化物形成装置。
【化15】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項21】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与手段と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与手段と、を有する硬化物形成装置であって、
前記第二の付与手段は、インクジェット方式で吐出する付与手段であり、
前記酸性物質は、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、スルトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物から選ばれる少なくとも1つである硬化物形成装置。
【化16】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項22】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与手段と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与手段と、を有する硬化物形成装置であって、
前記第二の付与手段は、インクジェット方式で吐出する付与手段であり、
前記酸性物質は、重合性官能基を有する硬化物形成装置。
【化17】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項23】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与手段と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与手段と、を有する硬化物形成装置であって、
前記第二の付与手段は、インクジェット方式で吐出する付与手段であり、
前記酸性物質は、メタクリロイル基を有する硬化物形成装置。
【化18】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項24】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与工程と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与工程と、を有する硬化物形成方法であって、
前記第一の付与工程は、インクジェット方式で吐出する付与工程であり、
前記酸性物質は、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、スルトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物から選ばれる少なくとも1つである硬化物形成方法。
【化19】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項25】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与工程と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与工程と、を有する硬化物形成方法であって、
前記第一の付与工程は、インクジェット方式で吐出する付与工程であり、
前記酸性物質は、重合性官能基を有する硬化物形成方法。
【化20】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項26】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与工程と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与工程と、を有する硬化物形成方法であって、
前記第一の付与工程は、インクジェット方式で吐出する付与工程であり、
前記酸性物質は、メタクリロイル基を有する硬化物形成方法。
【化21】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項27】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与工程と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与工程と、を有する硬化物形成方法であって、
前記第二の付与工程は、インクジェット方式で吐出する付与工程であり、
前記酸性物質は、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、スルトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物から選ばれる少なくとも1つである硬化物形成方法。
【化22】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【請求項28】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与工程と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与工程と、を有する硬化物形成方法であって、
前記第二の付与工程は、インクジェット方式で吐出する付与工程であり、
前記酸性物質は、重合性官能基を有する硬化物形成方法。
【化23】
【請求項29】
下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物を付与する第一の付与工程と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物を付与する第二の付与工程と、を有する硬化物形成方法であって、
前記第二の付与工程は、インクジェット方式で吐出する付与工程であり、
前記酸性物質は、メタクリロイル基を有する硬化物形成方法。
【化24】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物セット、収容容器セット、硬化物形成装置、硬化物形成方法、及び液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体組成物を硬化させて硬化物を作製する方法としては種々の方法が知られている。例えば、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで硬化する液体組成物や加熱することで硬化する液体組成物を用いる方法が知られている。
【0003】
しかし、紫外線を照射することで硬化する液体組成物を用いる場合、紫外線を照射する光源として高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどを使用することができるが、これらは水銀を含有しており、廃棄時における環境漏洩リスクがあるため永続的に使用していくことは好ましくない。また、近年では、紫外線を照射する光源としてLEDを使用することも多いが、発光波長が紫外線の中でも一定以上の長波長領域に限られるため、硬化性が不十分となる場合もある。
また、加熱することで硬化する液体組成物を用いる場合、加熱に多大なエネルギーが必要となるため好ましくない。
【0004】
活性エネルギー線の照射や加熱を必要とせずに硬化させることが可能な方法としては、接着剤等に用いられているシアノアクリレートなどを含有する液体組成物を用いる方法が知られている。
【0005】
特許文献1には、シアノアクリレート樹脂を含むシアン・イエロー・マゼンタの3原色の各インクと、水を含む黒色インクと、を有するインクセット用いるインクジェットプリンタの印字方法が開示されている。本方法によれば、紙面上で、シアン・イエロー・マゼンタの3原色の各インクに含まれるシアノアクリレート樹脂が、黒色インクに含まれる水と反応して瞬間的に硬化し、混色を防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬化させるために活性エネルギー線の照射および加熱等の外部エネルギーの付与を必要とせず、硬化性に優れ、並びに硬化前は安定した液体状態を維持可能であることにより取扱性および保存性に優れる液体組成物セットを提供することは困難である課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、下記一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物と、を有し、前記第一の液体組成物は、インクジェット方式で吐出される液体組成物であり、前記酸性物質は、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、スルトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物から選ばれる少なくとも1つである液体組成物セットである。
【化1】
(前記一般式(1)中、X及びYの少なくともいずれか一方は、電子求引性を有する官能基を表し、前記電子求引性を有する官能基は、シアノ基を有する。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体組成物セットは、硬化させるために活性エネルギー線の照射および加熱等の外部エネルギーの付与を必要とせず、硬化性に優れ、並びに硬化前は安定した液体状態を維持可能であることにより取扱性および保存性に優れる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】収容容器の一部を構成する収容袋の一例を示す概略図である。
図2】収容袋をカートリッジケース内に収容している収容容器の一例を示す概略図である。
図3】硬化物形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
【0011】
<<液体組成物セット>>
本実施形態の液体組成物セットは、一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する第一の液体組成物と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する第二の液体組成物と、を有し、必要に応じてその他組成物を有していてもよい。
液体組成物セットは、第一の液体組成物及び第二の液体組成物が接触すると硬化し、硬化物を形成する。ここで、硬化するとは、第一の液体組成物及び第二の液体組成物が接触することで重合物を生じることであるが、固形化する場合に限られず、増粘する場合や、固形化物と増粘物が混在する状態になる場合なども含まれる。また、硬化物とは、第一の液体組成物及び第二の液体組成物が接触することで生じる重合物であるが、固体に限られず、増粘物や、固体と増粘物の混在物なども含まれる。
また、第一の液体組成物及び第二の液体組成物が接触することで硬化物を形成可能である場合とは、第一の液体組成物及び第二の液体組成物の接触のみに基づいて硬化物を形成可能である場合をいう。言い換えると、活性エネルギー線の照射および加熱等の外部エネルギーの付与が行われなくても硬化物が形成可能である場合をいう。なお、硬化物が、第一の液体組成物と第二の液体組成物の接触のみに基づいて形成可能なのであれば、硬化時に追加的に外部エネルギーの付与が行われてもよいが、外部エネルギーの付与が行われないことが好ましい。なお、本願でいう活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線等を表す。
【0012】
<第一の液体組成物>
第一の液体組成物は、一般式(1)で表される化合物及び酸性物質を含有する液体組成物であり、必要に応じてその他物質を含有してもよい。
【0013】
-一般式(1)で表される化合物-
一般式(1)で表される化合物は、重合性化合物であり下記のように表される。一般式(1)で表される化合物は、第一の液体組成物及び第二の液体組成物が接触することで、後述する第二の液体組成物に含有される化合物と重合反応を生じて硬化物を形成する。また、一般式(1)で表される化合物を用いることで硬化性を向上させることができる。
【化2】
【0014】
一般式(1)におけるX及びYは、少なくともいずれか一方が電子求引性を有する官能基を表し、両方が電子求引性を有する官能基を表すことが好ましい。電子求引性を有する官能基とは、その官能基を導入することでπ共役官能基の電子受容性を強めることが可能な官能基のことであり、本明細書に接した当業者であれば、当該官能基を容易に認識できる。電子求引性を有する官能基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボニル基などを有する構造を挙げることができるが、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボニル基などであることが好ましい。また、シアノ基を有する構造であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。電子求引性を有する官能基がシアノ基であることにより、硬化性が向上する。
【0015】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、X及びYがそれぞれ独立してカルボキシル基又はカルボン酸エステル基であるメチレンマロネート化合物、X及びYの一方がシアノ基であり、他方がカルボキシル基又はカルボン酸エステル基であるシアノアクリレート化合物、X及びYがシアノ基であるシアン化ビニリデン、X及びYの一方がニトロ基であるニトロエチレンなどを挙げることができるが、シアノアクリレート化合物であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物がシアノアクリレート化合物であることにより、硬化性が向上する。また、シアノアクリレート化合物は、瞬間接着剤の主成分としても知られ、広範に使用されている材料である。そのため、大量生産される工業品を安価に入手しやすいことに加え、低毒性、低臭気という点でも好ましい。
【0016】
メチレンマロネート化合物としては、例えば、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジエチル、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸ジブチル、メチレンマロン酸ジイソブチル等のメチレンマロン酸ジアルキル;メチレンマロン酸ジ(メトキシエチル)、メチレンマロン酸ジ(エトキシエチル)、メチレンマロン酸ジ(ブトキシエチル)、メチレンマロン酸ジ(メトキシブチル)、メチレンマロン酸ジ(エトキシブチル)、メチレンマロン酸ジ(ブトキシブチル)等のメチレンマロン酸ジアルコキシアルキル;メチレンマロン酸ジ(アセトキシエチル)、メチレンマロン酸ジ(アセトキシブチル)等のメチレンマロン酸ジ(アセトキシアルキル)などが挙げられる。また、これらに加え、多くの工業品が存在するアクリル酸エステル化合物において知られるような構造と同様のカルボン酸エステル構造を有するメチレンマロネート化合物が使用できる。また分子内に重合性二重結合を複数持つ多官能メチレンマロネート化合物も使用できる。
【0017】
シアノアクリレート化合物としては、例えば、シアノアクリル酸、シアノアクリル酸メチル、シアノアクリル酸エチル、シアノアクリル酸プロピル、シアノアクリル酸イソプロピル、シアノアクリル酸ブチル、シアノアクリル酸イソブチル、シアノアクリル酸-t-ブチル、シアノアクリル酸ヘキシル、シアノアクリル酸オクチル、シアノアクリル酸フェニルエチル等の直鎖構造、分岐構造、又は環構造を含むシアノアクリル酸アルキル;シアノアクリル酸メトキシエチル、シアノアクリル酸エトキシエチル、シアノアクリル酸ブトキシエチル、シアノアクリル酸メトキシブチル、シアノアクリル酸エトキシブチル、シアノアクリル酸ブトキシブチル等のシアノアクリル酸アルコキシアルキル;シアノアクリル酸アセトキシエチル、シアノアクリル酸アセトキシブチル等のシアノアクリル酸アセトキシアルキルなどが挙げられる。また、これらに加え、多くの工業品が存在するアクリル酸エステル化合物において知られるような構造と同様のカルボン酸エステル構造を有するシアノアクリレート化合物が使用できる。また分子内に重合性二重結合を複数持つ多官能シアノアクリレート化合物も使用できる。
【0018】
一般式(1)で表される化合物の含有量は、第一の液体組成物の質量に対して、50.0質量%以上であることが好ましく、60.0質量%以上であることがより好ましく、70.0質量%以上であることが更に好ましく、80.0質量%以上であることがより更に好ましく、90.0質量%以上であることが特に好ましい。また、99.99質量%以下であることが好ましい。
【0019】
-酸性物質-
酸性物質とは、水に溶解又は分散させた際に、当該水溶液又は分散液が酸性を示す物質であり、有機酸や無機酸を用いることができる。また、遊離酸に限らず、上記条件で酸性を示す物質であれば酸無水物、酸塩化物、及び固体酸も用いることができる。
酸性物質は、第一の液体組成物中における一般式(1)で表される化合物の硬化を抑制する。一般式(1)で表される化合物には空気に触れるだけで急速に硬化反応が進むものが含まれ、例えば、シアノアクリレート化合物等は瞬間接着剤の主成分としても広く知られている。より具体的には、一般式(1)で表される化合物は、空気中の水等と接触することによりアニオン重合を開始するので、酸性物質により本重合を抑制する。これにより、第一の液体組成物が一般式(1)で表される化合物を含有していたとしても、第一の液体組成物単体では長期間硬化せず、液体状態を維持することができ、本実施形態の液体組成物セットの取扱性が向上し、用途の幅が広がる。例えば、第一の液体組成物が付与された直後に硬化物を形成することが抑制されるため、硬化物が形成されるまでの間に十分に第一の液体組成物が濡れ広がることができ、表面性や膜厚などの観点で均一性に優れた硬化物を得ることができる。また、インクジェット方式などで第一の液体組成物を付与する際に、硬化物により吐出孔が詰まることや装置内の流路が詰まることを抑制することができる。更に、第一の液体組成物の長期間における保存安定性が向上する。
【0020】
酸性物質としては、第一の液体組成物中における一般式(1)で表される化合物の重合反応を抑制することができる限り特に限定されないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、二酸化硫黄、プロパンスルトン等のスルトン化合物、酢酸やプロピオン酸等のカルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物等が挙げられる。なお、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、及びリン酸化合物は、それぞれ、カルボン酸基を有する高分子化合物、スルホン酸基を有する高分子化合物、及びリン酸基を有する高分子化合物を含む。
また、酸性物質は、一般式(1)で表される化合物と混合した際に硬化物を形成しない範囲で重合性官能基を有していてもよい。一般式(1)で表される化合物と混合しても硬化物を形成しない重合性官能基としては、例えば、メタクリロイル基等が挙げられる。なお、重合性官能基を有する酸性物質としては、一般式(1)で表される化合物の一例として列挙したメチレンマロン酸、シアノアクリル酸等であってもよい。
【0021】
酸性物質は、20℃における蒸気圧が0.4Pa以下であることが好ましい。酸性物質には、特有の刺激臭を有する物質があるが、蒸気圧が低い酸性物質は、当該刺激臭が少ない傾向を有する。20℃における蒸気圧が0.4Pa以下である酸性物質としては、例えば、乳酸(0.4Pa)が挙げられる。また、メタクリロイル基を有する酸性物質も蒸気圧が低い傾向にある。液体組成物の用途によっては、臭気の発生を抑制すべき場合もあるため、そのような場合には20℃における蒸気圧が低い酸性物質を使用することが好ましい。
【0022】
酸性物質の含有量は、第一の液体組成物の質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、0.8質量%以上であることが更に好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。また、20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましく、12.0質量%以下であることが更に好ましく、10.0質量%以下であることが特に好ましい。含有量が0.1質量%以上であることで、硬化前に安定した液体状態を維持でき、取扱性および保存性に優れる第一の液体組成物を得ることができる。また、含有量が20.0質量%以下であることで、第一の液体組成物と第二の液体組成物を接触させた際における硬化性が向上する。なお、メタクリロイル基を有する酸性物質を用いた場合、酸性物質の含有量を増加させたとしても、高い硬化性を維持できるため好ましい。
【0023】
-第一の液体組成物の物性-
第一の液体組成物は、空気と接触した場合であっても長期間安定して粘度上昇や硬化が抑制され、ほぼ一定の液体状態を維持できる。これにより、インクジェット方式などで第一の液体組成物を付与する際に、硬化物により吐出孔が詰まることや装置内の流路が詰まることを抑制することができる。更に、第一の液体組成物の長期間における保存安定性が向上する。
このような長期間安定した第一の液体組成物の状態を表す物性の一例としては、例えば、粘度変化率を挙げることができる。第一の液体組成物の粘度変化率は、5.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。粘度変化率は、第一の液体組成物を容積110mLの容器(アズワン社製褐色ガラススクリュー管瓶No.8)に50mL入れ、容器中の第一の液体組成物が温度25℃かつ湿度50%RHの空気に接触している状態で密閉し、温度25℃の環境下で1日(24時間)静置したとき、下記式に基づいて算出される物性である。なお、粘度は、温度25℃において市販の粘度計を用いて測定することができ、例えば、東機産業社製E型粘度計TVE-22Lを用いることができる。また、粘度変化率の測定に用いる第一の液体組成物は、製造直後のものに限定されず、例えば、製造後に容器等に密閉されて市販されたもの等であってもよい。なお、市販されたものを用いて粘度変化率の測定を行う場合、開封直後に本測定を開始することが好ましい。
【数1】
また、上記粘度変化率の測定において、1日(24時間)静置する代わりに、7日(168時間)静置した場合であっても粘度変化率が5.0%以下であることが好ましく、30日(720時間)静置した場合であっても粘度変化率が5.0%以下であることがより好ましい。
【0024】
第一の液体組成物の粘度は、温度25℃において、1mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、2mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。粘度が上記範囲であることにより、例えば、インクジェット方式などで第一の液体組成物を付与する際に、良好な吐出性を得ることができる。
【0025】
<第二の液体組成物>
第二の液体組成物は、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を含有する液体組成物であり、必要に応じてその他物質を含有してもよい。
【0026】
-ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物-
ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物は、第一の液体組成物及び第二の液体組成物が接触することで、上記一般式(1)で表される化合物と重合反応を生じて硬化物を形成する。より具体的には、酸性物質によりアニオン重合が抑制されている一般式(1)で表される化合物と、ビニル基又はアクリロイル基を有する化合物と、がラジカル重合を生じて硬化物を形成する。これにより、本実施形態の液体組成物セットは、活性エネルギー線の照射および加熱等の外部エネルギーの付与を必要とせずに硬化物を形成することができる。また、第一の液体組成物及び第二の液体組成物が重合開始剤を実質的に含有しなくても硬化物を形成することができる。重合開始剤とは、外部エネルギーを付与された場合にそれを吸収してラジカルまたはイオンを生成し、重合性化合物の重合を開始させるものである。重合開始剤は、硬化反応時だけでなく、反応後の硬化物における臭気の原因にもなる。また、重合開始剤は、その分解生成物が毒性を有している場合もある。そのため、本実施形態の液体組成物セットは、重合開始剤を実質的に含有しないことで、臭気や毒性等の課題を回避することができる。なお、本実施形態では、重合開始剤を実質的に含有しないことが好ましいが、重合開始剤を含んでいてもよい。なお、第一の液体組成物及び第二の液体組成物が重合開始剤を実質的に含有しないとは、第一の液体組成物及び第二の液体組成物において重合開始剤の含有量が検出限界以下であることが好ましく、含まれないことがより好ましい。
【0027】
ビニル基を有する化合物としては、上記一般式(1)で表される化合物と重合反応を生じて硬化物を形成することができる限り特に制限されないが、例えば、ビニルエーテル化合物、スチレン化合物、N-ビニル化合物、カルボン酸ビニル化合物、及びジエン化合物などが挙げられるが、ビニルエーテル化合物及びN-ビニル化合物などが好ましい。
【0028】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルビニルエーテル、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどが挙げられる。
【0029】
スチレン化合物としては、例えば、スチレン;アミノスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン等のフェニル基に置換基を有する化合物;ジビニルベンゼン等の分子内に複数の重合性二重結合を有する多官能性化合物などが挙げられる。
【0030】
N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、3-エテニル-5-メチル-2-オキサゾリジノンなどが挙げられる。
【0031】
カルボン酸ビニル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、アジピン酸ジビニルなどが挙げられる。
【0032】
ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0033】
アクリロイル基を有する化合物としては、上記一般式(1)で表される化合物と重合反応を生じて硬化物を形成することができる限り特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル化合物、及びアクリルアミド化合物などが挙げられる。なお、アクリロイル基と同一構造を含むという点でビニルケトン化合物も使用することができる。
【0034】
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソアミルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ホルマール化トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、フェニルアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ-ト、ジシクロペンタニルアクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ-ト、4-t-ブチル-シクロヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、ノニルフェノールアクリレート、2-ヒドロキシ-フェニルフェノールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2-アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等の化合物、これら化合物のエチレングリコール変性品及びこれら化合物のプロピレングリコール変性品等のアルキレングリコール変性品、これら化合物のカプロラクトン変性品などが挙げられる。
また、エチレングリコールアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、プロピレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、などのモノアクリレートに加え、ジオキサングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、オクタンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、デカンジオールジアクリレート、ドデカンジオールジアクリレート、ヘキサデカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、イソシアヌレートジアクリレート、及びヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等の化合物、これら化合物のエチレングリコール変性品及びこれら化合物のプロピレングリコール変性品等のアルキレングリコール変性品、これら化合物のカプロラクトン変性品なども挙げられる。
また、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレートなども挙げられる。
また、イソシアヌレートトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の化合物、これら化合物のエチレングリコール変性品及びこれら化合物のプロピレングリコール変性品等のアルキレングリコール変性品、これら化合物のカプロラクトン変性品なども挙げられる。
以上のように、アクリル酸エステル化合物としては、モノアクリレート、ジアクリレート、多官能アクリレートを適宜使用することができる。また、ハイパーブランチ型アクリレート、デンドリマー型アクリレート、ポリエステル系アクリレート、ポリウレタン系アクリレート、エポキシ系アクリレート、ポリブタジエン系アクリレートなどのアクリレートオリゴマーも使用できる。
【0035】
アクリルアミド化合物としては、例えば、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、及びメチレンビスアクリルアミド等の化合物が挙げられる。
【0036】
第二の液体組成物の粘度は、温度25℃において、1mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、2mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。粘度が上記範囲であることにより、例えば、インクジェット方式などで第二の液体組成物を付与する際に、良好な吐出性を得ることができる。
【0037】
<各液体組成物におけるその他成分>
第一の液体組成物及び第二の液体組成物から選ばれる少なくともいずれか一方をインク等として用いる場合、必要に応じて、色材を含有させてもよい。色材としては、特に制限されず、無機顔料、有機顔料、染料などを用いることができる。
ブラック顔料としては、ファーネス法又はチャネル法で製造されたカーボンブラック等が使用できる。
イエロー顔料としては、Pig.Yellow系の顔料、例えばピグメントイエロー1、ピグメントイエロー2、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー129、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185等が使用できる。
マゼンタ顔料としては、Pig.Red系の顔料、例えばピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメントレッド12、ピグメントレッド48(Ca)、ピグメントレッド48(Mn)、ピグメントレッド57(Ca)、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド168、ピグメントレッド184、ピグメントレッド202、ピグメントバイオレット19等が使用できる。
シアン顔料としては、Pig.Blue系の顔料、例えばピグメントブルー1、ピグメントブルー2、ピグメントブルー3、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー16、ピグメントブルー22、ピグメントブルー60、バットブルー4、バットブルー60等が使用できる。
白色顔料、もしくは物性改質のための無色の充填剤としては、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が使用できる。
【0038】
また、第一の液体組成物及び第二の液体組成物から選ばれる少なくともいずれか一方は、第一の液体組成物がほぼ一定の液体状態を維持することができ、かつ第一の液体組成物及び第二の液体組成物を接触させたときに硬化物を形成可能である限りにおいて、必要に応じて、重合禁止剤や界面活性剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン、メトキノン、2,2′-ジヒドロキシ-3,3′-ジ(α-メチルシクロヘキシル)-5,5′-ジメチルジフェニルメタン、p-ベンゾキノン、ジ-t-ブチルジフェニルアミン、9,10-ジ-n-ブトキシシアントラセン、4,4′-〔1,10-ジオキソ-1,10-デカンジイルビス(オキシ)〕ビス〔2,2,6,6-テトラメチル〕-1-ピペリジニルオキシなどが挙げられる。なお、第一の液体組成物中には、アルカリであるイオン重合禁止剤を添加しないことが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等を有する高級脂肪酸エステル、側鎖又は末端にポリエーテル、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等を有するポリジメチルシロキサン化合物、ポリエーテル、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等を有するフルオロアルキル化合物などが挙げられる。
【0039】
<用途>
液体組成物セットの用途は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
さらに、液体組成物セットは、後述するようにインクセット、又はインクジェット用インクセットとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料セットとしても用いることもできる。この立体造形用材料セットは、積層造形法において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。
【0040】
-インクセット-
液体組成物セットは、第一の液体組成物及び第二の液体組成物から選ばれる少なくともいずれか一方をインクとして用いることでインクセットとすることができる。
【0041】
-インクジェット用インクセット-
液体組成物セットは、第一の液体組成物及び第二の液体組成物から選ばれる少なくともいずれか一方をインクジェット方式で吐出するインクとして用いることでインクジェット用インクセットとすることができる。
【0042】
<<収容容器セット>>
上記の第一の液体組成物を第一の収容容器に収容し上記の第二の液体組成物を第二の収容容器に収容してセットとすることで、収容容器セットを作製することができる。なお、第一の収容容器は第一の液体組成物が収容された状態の容器を意味し、第二の収容容器は第二の液体組成物が収容された状態の容器を意味する。これにより、各液体組成物の搬送や交換等の作業において、これらに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、各液体組成物へのごみ等の異物の混入を防止することができる。
【0043】
収容容器について、図1及び図2を参照して説明する。図1は収容容器の一部を構成する収容袋241の一例を示す概略図であり、図2図1の収容袋241をカートリッジケース244内に収容している収容容器200の一例を示す概略図である。
図1に示すように、注入口242から液体組成物を収容袋241内に充填し、該収容袋中に残った空気を排気した後、該注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなる排出口243に装置本体の針を刺して装置に液体組成物を供給する。収容袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成される。
【0044】
<<硬化物形成装置、硬化物形成方法>>
硬化物形成装置は、第一の液体組成物を付与する第一の付与手段と、第二の液体組成物を付与する第二の付与手段と、を有し、必要に応じて、その他の手段を有してもよい。本装置は、第一の付与手段から付与された第一の液体組成物と第二の付与手段から付与された第二の液体組成物とを接触させて硬化物を形成させる。このとき、先に付与された第一の液体組成物に対して第二の液体組成物を接触させて硬化物を形成する場合、先に付与された第二の液体組成物に対して第一の液体組成物を接触させて硬化物を形成する場合、及び第一の液体組成物及び第二の液体組成物を同時に付与することで接触させて硬化物を形成する場合のいずれであってもよい。また、本装置は、硬化物を形成するときに外部エネルギーを付与する手段を有さないことが好ましい。
【0045】
本方法は、第一の付与工程により付与された第一の液体組成物と第二の付与工程により付与された第二の液体組成物とを接触させて硬化物を形成させる。このとき、先に付与された第一の液体組成物に対して第二の液体組成物を接触させて硬化物を形成する場合、先に付与された第二の液体組成物に対して第一の液体組成物を接触させて硬化物を形成する場合、及び第一の液体組成物及び第二の液体組成物を同時に付与することで接触させて硬化物を形成する場合のいずれであってもよい。また、本方法は、硬化物を形成するときに外部エネルギーを付与する工程を有さないことが好ましい。
【0046】
上記の付与工程、付与手段では、例えば、インクジェット方式、ブレードコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ロールコート方式、ディップコート方式、カーテンコート方式、スライドコート方式、ダイコート方式、及びスプレーコート方式などを用いることができるが、インクジェット方式であることが好ましい。
【0047】
硬化物形成装置、硬化物形成方法について、図3を参照して説明する。図3は硬化物形成装置の一例を示す概略図である。
図3に示す硬化物形成装置は、収納している基材を送り出す送出手段1、送り出された基材を搬送する経路である搬送経路2、基材に対して第一の液体組成物を吐出する第一の吐出手段および第二の液体組成物を吐出する第二の吐出手段が一体化した手段である吐出手段3、基材を収納するために巻き取る巻取手段6を有する。
【0048】
送出手段1は、ロール状に収納しているシート形状の基材を搬送経路2に沿って送り出す。基材としては、特に限定されないが、例えば、紙、ガラス、セラミック、木材、プラスチック、金属等が挙げられる。
【0049】
搬送経路2は、送出手段1から送り出された基材を搬送する経路であって、該経路上に吐出手段3が設けられている。
【0050】
吐出手段3は、第一の付与手段の一例であって基材に対して第一の液体組成物を吐出する第一の吐出手段および第二の付与手段の一例であって基材に対して第二の液体組成物を吐出する第二の吐出手段が一体化した手段を複数有する。なお、第一の吐出手段は第一の付与工程を実行する手段の一例であり、第二の吐出手段は第二の付与工程を実行する手段の一例である。また、複数の吐出手段3a、3b、3c、3dは、それぞれ、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像、ブラック画像を順に形成するインク吐出手段であってもよい。各吐出手段3a、3b、3c、3dは、それぞれ、第一の液体組成物及び第二の液体組成物を吐出し、これらを接触させることにより基材上で硬化物を形成させる。
【0051】
巻取手段6は、硬化物が形成された基材を収納するために巻き取る。
【実施例
【0052】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
<液体組成物セットの作製>
(実施例1~51、比較例1~3)
下記表1~3に示す処方の材料を混合攪拌した後、1μmメンブレンフィルターでろ過し、第一の液体組成物を作製した。同様に、下記表1~3に示す処方の材料を混合攪拌した後、1μmメンブレンフィルターでろ過し、第二の液体組成物を作製した。その後、下記表1~3に示す通り、第一の液体組成物と第二の液体組成物を組み合わせて実施例1~51、比較例1~3の液体組成物セットを作製した。
なお、表1~3に示す各数値の単位は「質量%」である。
また、表1~3における各材料の記号は以下の化合物又は物質を表す。
~第一の液体組成物~
・A:メチレンマロネート化合物
・B:シアノアクリレート化合物
・C:シアン化ビニリデン
・D:ニトロエチレン
・E:酸性物質
~第二の液体組成物~
・F:ビニル基を有する化合物(ビニルエーテル化合物)
・F’:ビニル基とアクリロイル基を有する化合物
・G:ビニル基を有する化合物(スチレン化合物)
・H:アクリロイル基を有する化合物(アクリル酸エステル化合物)
・I:アクリロイル基を有する化合物(アクリルアミド化合物)
・J:ビニル基を有する化合物(N-ビニル化合物)
【0054】
なお、表1~2における各材料の詳細は以下の通りである。
~第一の液体組成物中の一般式(1)で表される化合物~
・A1:メチレンマロン酸ジエチル(X=-COOEt、Y=-COOEt、シグマアルドリッチ社製)
・B1:シアノアクリル酸エチル(X=-CN、Y=-COOEt、田岡化学工業株式会社製)
・B2:シアノアクリル酸イソブチル(X=-CN、Y=-COO(iso-Bu)、東亞合成株式会社製)
・B3:シアノアクリル酸エトキシエチル(X=-CN、Y=-COOC-O-Et、東亞合成株式会社製)
・C1:シアン化ビニリデン(X=-CN、Y=-CN、Zhengzhou JACS Chem Co,Ltd.社製)
・D1:ニトロエチレン(X=-H、Y=-NO、Santa Cruz Biotechnology,Inc.社製)
~第一の液体組成物中の酸性物質~
・E1:酢酸(東京化成工業株式会社製)
・E2:乳酸(東京化成工業株式会社製)
・E3:リン酸メタクリロイルオキシエチル(共栄社化学株式会社製、ライトエステルP-2M)
・E4:カプロラクトン変性リン酸メタクリロイルオキシエチル(日本化薬株式会社製、KAYAMER PM-21)
~第二の液体組成物中のビニル基又はアクリロイル基を有する化合物~
・F1:トリエチレングリコールジビニルエーテル(東京化成工業株式会社製)
・F’2:2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート(株式会社日本触媒製)
・G1:スチレン(東京化成工業株式会社製)
・G2:4-メチルスチレン(東京化成工業株式会社製)
・H1:フェノキシエチルアクリレート(東京化成工業株式会社製)
・H2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD DPHA)
・I1:4-アクリロイルモルホリン(東京化成工業株式会社製)
・I2:N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(東京化成工業株式会社製)
・J1:N-ビニルカプロラクタム(東京化成工業株式会社製)
・J2:N-ビニルピロリドン(株式会社日本触媒製)
【0055】
得られた液体組成物セットを用いて、以下のようにして、「硬化性」、「取扱性」、及び「保存性」を評価した。結果を表1~3に示す
【0056】
[評価1:硬化性および取扱性(実施例1~22、比較例1)]
プラスチック基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡製、商品名:エステルフィルムE5100、厚さ100ミクロン)に対し、第一の液体組成物をワイヤーバーで塗工した。第一の液体組成物の塗布量は、1平方メートル当たり1×10グラムとなるようにした。次に、第一の液体組成物の塗工面の一部に対し、第二の液体組成物をマイクロシリンジで滴下した。第二の液体組成物の滴下量は、1平方メートル当たり1×10グラムとなるようにした。その後、1分後、10分後、60分後の時点で、両液体組成物の混和部を指触して下記評価基準に基づいて硬化性および取扱性を評価した。なお、本評価は、温度23℃以上25℃以下にて行った。
(評価基準)
A:指に何も付着しないない程度に硬化している
B:硬化しているが指にわずかに液体組成物が付着する
C:液状であり硬化が不十分
F:ワイヤーバーで塗工する前から増粘、硬化が始まり、均一な塗膜形成が困難
【0057】
[評価2:硬化性および取扱性(実施例23~42、比較例2)]
プラスチック基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡製、商品名:エステルフィルムE5100、厚さ100ミクロン)に対し、第一の液体組成物をワイヤーバーで塗工した。第一の液体組成物の塗布量は、1平方メートル当たり1×10グラムとなるようにした。次に、第一の液体組成物の塗工面の一部に対し、循環型ヘッド(MH5421MF、リコー社製)を搭載したインクジェット吐出装置を用いて第二の液体組成物(図1に示すアルミ製パウチ袋に気泡が入らないように密封されており、更に図2に示すようなプラスチック製カートリッジに収納されている)をベタ状(3cm×3cm)に吐出した。第二の液体組成物の吐出量は、1平方メートル当たり1×10グラムとなるようにした。その後、1分後、10分後、60分後の時点で、両液体組成物の混和部を指触して下記評価基準に基づいて硬化性および取扱性を評価した。なお、本評価は、温度23℃以上25℃以下にて行い、循環型ヘッドの温調機能は使用しなかった。
(評価基準)
A:指に何も付着しないない程度に硬化している
B:硬化しているが指にわずかに液体組成物が付着する
C:液状であり硬化が不十分
F:ワイヤーバーで塗工する前から増粘、硬化が始まり、均一な塗膜形成が困難
【0058】
[評価3:硬化性および取扱性(実施例43~51、比較例3)]
プラスチック基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡製、商品名:エステルフィルムE5100、厚さ100ミクロン)に対し、循環型ヘッド(MH5421MF、リコー社製)を搭載したインクジェット吐出装置を用いて第一の液体組成物(図1に示すアルミ製パウチ袋に気泡が入らないように密封されており、更に図2に示すようなプラスチック製カートリッジに収納されている)をベタ状(5cm×5cm)に吐出した。第一の液体組成物の吐出量は、1平方メートル当たり1×10グラムとなるようにした。次に、第一の液体組成物の吐出面の一部に対し、循環型ヘッド(MH5421MF、リコー社製)を搭載したインクジェット吐出装置を用いて第二の液体組成物(図1に示すアルミ製パウチ袋に気泡が入らないように密封されており、更に図2に示すようなプラスチック製カートリッジに収納されている)をベタ状(3cm×3cm)に吐出した。第二の液体組成物の吐出量は、1平方メートル当たり1×10グラムとなるようにした。その後、1分後、10分後、60分後の時点で、両液体組成物の混和部を指触して下記評価基準に基づいて硬化性および取扱性(吐出性)を評価した。本評価は、温度23℃以上25℃以下にて行い、循環型ヘッドの温調機能は使用しなかった。
(評価基準)
A:指に何も付着しないない程度に硬化している
B:硬化しているが指にわずかに液体組成物が付着する
C:液状であり硬化が不十分
F:第一の液体組成物を収容するカートリッジから吐出ヘッドまでの経路であるチューブ内にて硬化物が形成されて吐出困難である
【0059】
[評価4:保存性(実施例1~22、比較例1)]
第一の液体組成物を容積110mLの容器(アズワン社製褐色ガラススクリュー管瓶No.8)に50mL入れ、容器中の第一の液体組成物が温度25℃かつ湿度50%RHの空気に接触している状態で密閉し、温度25℃の環境下で1日(24時間)、7日(168時間)、30日(720時間)静置したとき、下記式に基づいて粘度変化率を算出した。次に、下記評価基準に基づいて保存性を評価した。なお、粘度は、温度25℃において東機産業社製E型粘度計TVE-22Lを用いることで測定した。
【数2】
(評価基準)
A:粘度変化率が5.0%以下である
B:粘度変化率が5.0%より大きい
C:粘度計の測定限界を超えて粘度増加した又は瓶内の少なくとも一部で硬化が目視で確認できる
F:第一の液体組成物を容器に入れる際に、容器壁面に飛散して付着した液滴が直ちに硬化する
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
全ての実施例で示すように、第一の液体組成物と第二の液体組成物とが接触することで、硬化物が自然に形成されることが確認できた。この際、通常の室内環境で用いる一般照明以外の特段の照射手段や室温以上に加熱する手段などの外部エネルギー付与手段は使用していない。
【0064】
また、実施例1~7で示すように、種々の一般式(1)で表される化合物を単独で又は混合して用いた場合、良好な硬化性が得られることが分かった。中でも電子求引性を有する官能基としてシアノ基を有する化合物を用いた場合、より良好な硬化性が得られることが分かった。特に、シアノアクリレート化合物は、瞬間接着剤の主成分としても知られており広範に使用される材料であるため、大量生産される工業品を安価に入手しやすく、加えて、低毒性、低臭気という点でも好適である。
【0065】
一方で、比較例1で示すように、第一の液体組成物中に酸性物質を含まない場合、第一の液体組成物が直ちに硬化するので均一な塗膜形成が困難である。この点、全ての実施例で示すように、第一の液体組成物中に酸性物質が含まれる場合、第一の液体組成物単体での硬化が抑制され、均一な塗膜形成が可能となっている。
【0066】
また、実施例8~12で示すように、酸性物質の含有量が増加すると硬化性が減少する傾向が見られたが、実施例13~18で示すように、酸性物質が重合性官能基としてメタクリロイル基を有する場合は含有量が増加しても硬化性の低下が抑制されていた。
【0067】
また、酸性物質には特有の刺激臭を持つものがあり、実施例1~9では実際に刺激臭が確認されたが、実施例10~18では刺激臭がほとんど確認されなかった。これは、酢酸の場合、蒸気圧が2000Pa(25℃、文献値)であるので、室温で徐々に重量減少が観察できるほど蒸発しやすいことに起因する。一方で、乳酸の場合、蒸気圧が0.4Pa(20℃、文献値)であるので、室温で重量減少が観察できるほどは蒸発しないため、刺激臭が確認されない。以上のように、臭気の強弱は酸性物質の揮発性と関連する。用途によっては臭気が懸念される場合も想定されるため、状況に応じて適切な酸性物質を選定することが好ましい。
【0068】
また、実施例18~22で示すように、第二の液体組成物に含まれるビニル基又はアクリロイル基を有する化合物として種々の化合物を単独で又は混合して用いた場合、良好な硬化性が得られることが分かった。
【0069】
また、実施例22~24では、スチレン化合物に由来する強い臭気が確認された。この臭気が好ましくない場合には、スチレン化合物以外のビニル基又はアクリロイル基を有する化合物を使用することが好ましい。
【0070】
また、[評価2:硬化性および取扱性]でも[評価1:硬化性および取扱性]と同様の傾向が観察された。なお、実施例34と実施例12は、第一の液体組成物と第二の液体組成物の処方が同一であるにもかかわらず、実施例34の方が硬化性に優れる。これは、第二の液体組成物の付与方法としてインクジェット吐出方式を採用したことに基づくことが示唆される。
【0071】
また、[評価3:硬化性および取扱性]でも[評価1:硬化性および取扱性]、及び[評価2:硬化性および取扱性]と同様の傾向が観察された。
【符号の説明】
【0072】
1 送出手段
2 搬送経路
3 吐出手段
6 巻取手段
200 収容容器
241 収容袋
242 注入口
243 排出口
244 カートリッジケース
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【文献】特開平6-107988号公報
図1
図2
図3