(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】SiCシード及びSiC単結晶インゴットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20240402BHJP
C30B 23/06 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/06
(21)【出願番号】P 2019204040
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】周防 裕政
【審査官】富永 泰規
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-143511(JP,A)
【文献】特開2012-041208(JP,A)
【文献】特開2003-176200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158042(US,A1)
【文献】特開2011-006302(JP,A)
【文献】特開2013-237592(JP,A)
【文献】特開2006-117512(JP,A)
【文献】特開平09-268096(JP,A)
【文献】特開2010-013330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00 - 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平行面を有するSiC結晶本体と、
前記SiC結晶本体の前記一対の平行面の間に備えられた1層の埋め込み保護層と、を有し、
前記埋め込み保護層は
炭素からなり、前記一対の平行面の一方側から見たときに隙間がない、SiCシード。
【請求項2】
さらに、前記SiC結晶本体の前記一対の平行面の一方の面を被覆する表面保護層を有する請求項1に記載のSiCシード。
【請求項3】
前記埋め込み保護層が、前記表面保護層よりも厚さが薄い請求項2に記載のSiCシード。
【請求項4】
前記埋め込み保護層が、前記表面保護層を有する面から1μm以上1000μm以下の範囲内の位置に備えられている請求項2又は3に記載のSiCシード。
【請求項5】
一対の平行面を有するSiC結晶本体と、前記SiC結晶本体の前記一対の平行面の間に備えられた1層の埋め込み保護層と、を有するSiCシードを、台座に接着させる工程と、
前記SiCシードの前記台座に接着させた側とは反対側の面に、昇華法によりSiC単結晶を成長させる工程と、を有し、
前記埋め込み保護層は
炭素からなり、前記一対の平行面の一方側から見たときに隙間がない、SiC単結晶インゴットの製造方法。
【請求項6】
前記SiCシードが、さらに、前記台座に接着させた側の面を被覆する表面保護層を有する請求項5に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCの単結晶成長用のSiCシード及び、それを用いたSiC単結晶インゴットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料である炭化珪素(SiC)は、現在広くデバイス用基板として使用されているSi(珪素)に比べてバンドギャップが広く、絶縁破壊電界が大きく、熱伝導性に優れていることが知られている。そのため、炭化珪素は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。
【0003】
炭化珪素を利用した半導体デバイスには、SiCウェハ上にエピタキシャル膜を形成したSiCエピタキシャルウェハが用いられる。SiCウェハ上に化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によって設けられたエピタキシャル膜が、SiC半導体デバイスの活性領域となる。エピタキシャル膜の活性領域は、SiCウェハの結晶欠陥をそのまま引き継いだり、別の結晶欠陥に変換して引き継いだりすることにより、SiCウェハの品質の影響を受ける。そのため、欠陥の少ない、高品質なSiCウェハが求められている。
【0004】
SiCウェハは、SiC単結晶のインゴットを切り出して作製する。SiC単結晶は、一般に昇華法を用いて製造することができる。昇華法は、黒鉛製の坩堝内に配置した台座にSiC単結晶からなるSiCシード(種結晶)を配置し、坩堝を加熱することで坩堝内の原料粉末から昇華した昇華ガスをSiCシードに供給し、SiCシードをより大きなSiC単結晶へ成長させる方法である。SiC単結晶を成長させる過程おいて、SiCシードは、台座に接着剤で固定される。接着剤としては、有機溶媒を含むカーボン接着剤が用いられることが多い(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カーボン接着剤を硬化させて、SiCシードを台座に固定する過程において、加熱されたカーボン接着剤からガスが発生し、台座とSiCシードの間に空孔が形成されることがある。台座とSiCシードの間に空孔が形成された状態で、昇華法により高温環境下でSiC単結晶を成長させると、空孔からSiCシードにマクロ欠陥が生成し、そのマクロ欠陥が伸長して、成長中のSiC単結晶に達する。SiC単結晶にマクロ欠陥が達するまで伸長すると、SiC単結晶とSiCシードは、台座との密着性が低下して剥がれ落ちる場合がある。また、SiC単結晶やSiCシードが剥がれ落ちなかったとしても、成長したSiC単結晶は、マクロ欠陥を含み、品質が低下したものとなる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、接着剤でシードを固定した状態において、台座とSiCシードの間に形成された空孔から生成したマクロ欠陥が伸長しにくいSiC単結晶成長用のSiCシード、及びそれを用いたSiC単結晶インゴットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、埋め込み保護層を有するSiCシードを用いて、昇華法によりSiC単結晶を成長させると、マクロ欠陥が少ないSiC単結晶インゴットを得ることが可能となることを見出した。すなわち、本発明は上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0009】
(1)本発明の一態様に係るSiCシードは、一対の平行面を有するSiC結晶本体と、 前記SiC結晶本体の前記一対の平行面の間に備えられた少なくとも1層の埋め込み保護層と、を有する。
【0010】
(2)上記(1)に記載のSiCシードは、さらに、前記SiC結晶本体の前記一対の平行面の一方の面を被覆する表面保護層を有する構成であってもよい。
【0011】
(3)上記(2)に記載のSiCシードは、前記埋め込み保護層が、前記表面保護層よりも厚さが薄い構成であってもよい。
【0012】
(4)上記(2)又は(3)に記載のSiCシードは、前記埋め込み保護層が、前記表面保護層を有する面から1μm以上1000μm以下の範囲内の位置に備えられている構成であってもよい。
【0013】
(5)上記(2)~(4)のいずれか一つに記載のSiCシードは、前記埋め込み保護層が、前記表面保護層を有する側とは反対側の面から見たときに隙間がない構成としてもよい。
【0014】
(6)上記(5)に記載のSiCシードは、前記埋め込み保護層が、2つ以上の層からなり、前記2つ以上の層は、前記表面保護層を有する側とは反対側の面から見たときに隙間がないように配置されている構成であってもよい。
【0015】
(7)本発明の他の態様に係るSiC単結晶インゴットの製造方法は、一対の平行面を有するSiC結晶本体と、前記SiC結晶本体の前記一対の平行面の間に備えられた少なくとも1層の埋め込み保護層と、を有するSiCシードを、台座に接着させる工程と、前記SiCシードの前記台座に接着させた側とは反対側の面に、昇華法によりSiC単結晶を成長させる工程と、を有する。
【0016】
(8)上記(7)に記載のSiC単結晶インゴットの製造方法は、前記SiCシードが、さらに、前記台座に接着させた側の面を被覆する表面保護層を有する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接着剤でシードを固定した状態において、台座とSiCシードの間に形成された空孔から生成したマクロ欠陥が伸長しにくいSiC単結晶成長用のSiCシード及び、それを用いたSiC単結晶インゴットの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るSiCシードを備えた、SiC単結晶の製造装置の縦断面図である。
【
図2】
図1のSiCシードの構成を説明する図であり、(a)は、SiCシードを台座に接着させた側とは反対側の面から見た平面図であって、(b)は、(a)のII(b)-II(b)線断面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係るSiCシードの構成を説明する図であり、(a)は、SiCシードを、表面保護層を有する側とは反対側の面から見た部分平面図であって、(b)は、(a)のIII(b)-III(b)線断面図である。
【
図4】本発明の第三実施形態に係るSiCシードの構成を説明する図であり、(a)は、SiCシードを、表面保護層を有する側とは反対側の面から見た部分平面図であって、(b)は、(a)のIV(b)-IV(b)線断面図であり、(c)は、(b)のIV(c)-IV(c)線断面図である。
【
図5】本発明の第四実施形態に係るSiCシードの断面図である。
【
図6】本発明の第五実施形態に係るSiCシードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際とは異なっていることがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係るSiCシードを備えた、SiC単結晶の製造装置の断面図である。
図2は、
図1のSiCシードの構成を説明する図であり、(a)は、SiCシードを、台座に接着させた側とは反対側の面から見た平面図であって、(b)は、(a)のII(b)-II(b)線断面図である。
【0021】
図1に示すように、SiC単結晶の製造装置100は、少なくとも、坩堝101と、坩堝101内の一端側(
図1においては、上方側)に配置されたSiC単結晶成長用のSiCシード10を支持する台座103とを備える。坩堝101内の他の一端側(
図1においては、下方側)に、原料104が収容される。SiCシード10と台座103とは接着剤からなる接着剤層102で固定されている。SiC単結晶の製造装置100は、さらに、坩堝101の外壁を囲むコイル、台座103から原料104に向けて拡径するテーパーガイドを備えていてもよい。
【0022】
台座103の材料としては、黒鉛を主原料とするカーボン成形材、ポーラスカーボン、グラッシーカーボン、あるいはその他の炭素系材料からなる部材が用いられる。接着剤としては、例えば有機溶媒を含むカーボン接着剤等が用いられる。
【0023】
台座103にSiCシード10を接着する過程においては、台座103上に塗布された接着剤を加熱して硬化させる必要があり、加熱された接着剤からはガスが発生する。このガスによって台座103とSiCシード10の間に空孔が形成されると、そこからマクロ欠陥(貫通欠陥)が伸長し、成長中のSiC単結晶に達することがある。また、昇華法によるSiC単結晶成長中の高温環境における熱応力により、接着剤が剥がれて台座103とSiCシード10の間に隙間が形成されると、同様にしてマクロ欠陥が伸長し、成長中のSiC単結晶に達することがある。
【0024】
SiCシード10は、
図2に示すように、一対の平行な面11a、11bを有するSiC結晶本体11を有する。SiC結晶本体11は、平行面11a、11bの一方の面11aを台座103に固定し、他方の面11bにSiC単結晶を成長させるように構成されている。SiC結晶本体11の面11a、11bは互いにほぼ平行、すなわち、SiC結晶の成長に影響を与えない程度に平行であればよい。なお、
図2(a)に示すように、SiCシード10は、SiC単結晶を成長させる側の面11bから見て円形状とされているが、SiCシード10の形状はこれに限定されるものではない。SiCシード10を面11bから見たときの形状は、四角形状、六角形状などの多角形状であってもよい。また、SiC結晶本体11は、単結晶体であってもよいし、多結晶体であってもよい。ただし、SiC結晶本体11の埋め込み保護層12からSiC単結晶を成長させる側の面11bの部分は、単結晶体であることが好ましい。
【0025】
SiCシード10は、SiC結晶本体11の一対の平行な面11a、11bの間に備えられた1層の埋め込み保護層12を有する。埋め込み保護層12は、SiC結晶本体11に生成したマクロ欠陥が伸長して、SiC単結晶に達しないように、マクロ欠陥の伸張を抑制する作用がある。
【0026】
SiCシード10は、SiC結晶本体11の台座103に固定する側の面11aを被覆する表面保護層13を有する。表面保護層13は、台座103とSiCシード10の間に形成された空孔からマクロ欠陥がSiC結晶本体11に生成することを抑制する作用がある。表面保護層13は、SiC結晶本体11の面11a全体を被覆するように形成されていることが好ましい。表面保護層13の材料としては、炭素や高温耐性の炭化物、例えばTaC、NbC等を用いることができる。
【0027】
埋め込み保護層12は、表面保護層13を有する側とは反対側の面11bから見たときに隙間がないように形成されていることが好ましい。このように埋め込み保護層12が表面保護層13を有する側とは反対側の面11bから見たときに隙間がないように形成されていることにより、表面保護層13が熱応力等によって剥がれて、表面保護層13とSiC結晶本体11の面11aとの間に空隙が生成した場合でも、その空隙からマクロ欠陥が伸長して、SiC単結晶に達することを確実に抑制することができる。
【0028】
埋め込み保護層12の厚さは、表面保護層13よりも厚さが薄いことが好ましい。これによって、埋め込み保護層12を形成することによるSiC結晶本体11の強度の低下を抑えることができる。また、SiC結晶本体11と埋め込み保護層12の熱膨張係数差により生じる熱応力を低減できるので、埋め込み保護層12の剥離や破断を抑えることができる。埋め込み保護層12の厚さは、0.1μm以上10μm以下の範囲内にあることが好ましい。埋め込み保護層12の厚さが0.1μm以上であると、SiC結晶本体11に生成したマクロ欠陥の伸張を抑制する効果が高くなり、また厚さが10μm以下であると埋め込み保護層12の形成が容易になる。表面保護層13の厚さは、1μm以上50μm以下の範囲内にあることが好ましい。表面保護層13の厚さが1μm以上であると、マクロ欠陥がSiC結晶本体11に生成することを抑制する効果が高くなり、また厚さが50μm以下であると表面保護層13の形成が容易になる。また、表面保護層13の厚さが50μmより大きくなると、表面保護層13の強度の低下により、剥がれが生じやすくなり、マクロ欠陥が発生しやすくなるおそれがある。
【0029】
また、埋め込み保護層12は、表面保護層13を有する面11aから1μm以上1000μm以下の範囲内の位置に備えられていることが好ましい。埋め込み保護層12の形成位置が面11aから1μmより小さい位置及び1000μmより大きい位置であると、埋め込み保護層12の形成が困難になるおそれがある。また、1000μmより大きい位置では生成したマクロ欠陥によりシードが剥がれ落ちやすくなるおそれがある。
【0030】
埋め込み保護層12の形成方法としては、例えば、下記の2つ方法を用いることができる。
(1)SiC単結晶を作製し、得られたSiC単結晶中に、レーザーアブレーション法によりSiCを分解して埋め込み保護層12を形成する方法。この方法では、炭素からなる埋め込み保護層12を形成することができる。
(2)SiC単結晶の表面に保護層を作製し、この保護層の上にSiC単結晶を形成することによって、保護層をSiC単結晶で埋めて、埋め込み保護層12とする方法。保護層の上にSiC単結晶を形成する方法としては、エピタキシャル成長法やポリカルボシランを塗布して加熱する方法を用いることができる。保護層をSiC単結晶で埋めることによって、炭素、TaC、NbCなどの高温耐性の炭化物からなる埋め込み保護層12を形成することができる。
【0031】
表面保護層13の形成方法としては、エピタキシャル成長法やポリカルボシランを塗布して加熱する方法を用いることができる。
【0032】
次に、本実施形態のSiCシード10を用いたSiC単結晶インゴットの製造方法について説明する。
SiC単結晶インゴットの製造方法は、SiCシード10を台座103に接着させる第1工程と、SiCシード10の台座103に接着させた側とは反対側の面11bに、昇華法によりSiC単結晶を成長させる第2工程と、を有する。
【0033】
第1工程では、まず、台座103のSiCシード10を載せる部分に、接着剤を塗布して接着剤層102を形成する。続いて接着剤層102の上にSiCシード10の表面保護層13を貼り付ける。
【0034】
第2工程では、まず、
図1に示すように、SiCシード10を貼り付けた台座103を、SiC結晶本体11の表面保護層13を有する側とは反対側の面11bが坩堝101の内部空間に曝されるように設置する。この状態で、コイルを用いた誘導加熱等の加熱手段を用いて坩堝101を加熱する。これにより、原料104から昇華ガスが発生し、この昇華ガスが台座103に貼り付けられたSiCシード10に供給される。SiCシード10に昇華ガスが供給されることにより、SiC結晶本体11の面11bにSiC単結晶が成長し、 SiC単結晶のインゴットが形成される。
【0035】
以上のように、本実施形態に係るSiCシード10は、一対の平行な面11a、11bを有するSiC結晶本体11と、SiC結晶本体11の一対の平行な面11a、11bの間に備えられた1層の埋め込み保護層12と、を有する。このため、SiC結晶本体11に生成したマクロ欠陥が伸長して、SiC単結晶に達しないように、マクロ欠陥の伸張を抑制することができる。また、本実施形態に係るSiCシード10は、SiC結晶本体11の面11aを被覆する表面保護層13を有する。このため、台座103とSiCシード10の間に形成された空孔からマクロ欠陥がSiC結晶本体11に生成することを抑制することができる。
【0036】
本実施形態に係るSiC単結晶インゴットの製造方法は、上述のSiCシード10を用いる。このため、SiC単結晶インゴットの製造中に、マクロ欠陥によって、SiCシード10と台座103との密着性が低下して、SiCが剥がれ落ちることが起こりにくい。また、得られるSiC単結晶インゴットはマクロ欠陥を含まず、品質が高いものとなる。
【0037】
<第二実施形態>
図3は、本発明の第二実施形態に係るSiCシードの構成を説明する図であり、(a)は、SiCシードを、表面保護層を有する側とは反対側の面から見た部分平面図であって、(b)は、(a)のIII(b)-III(b)線断面図である。本実施形態のSiCシード20は、埋め込み保護層22が、表面保護層13側に配置された第1保護層23と、表面保護層13を有する側とは反対側の面11b側に配置された第2保護層24の2層からなる。その他の構成については、第一実施形態のSiCシード10の構成と同様であり、第一実施形態と対応する箇所については、同じ符号で付して、その説明を省略する。
【0038】
本実施形態において、埋め込み保護層22を構成する第1保護層23と第2保護層24は、それぞれ面11bに対して平行に、かつ所定の間隔を空けた縞状(ラインアンドスペース状)に形成されている。第1保護層23と第2保護層24は、表面保護層13を有する側とは反対側の面11bから見たときに隙間がないように配置されている。このため、本実施形態に係るSiCシード20は、第一実施形態に係るSiCシード10と同様に、SiC結晶本体11に生成したマクロ欠陥が伸長して、SiC単結晶に達しないように、マクロ欠陥の伸張を抑制することができる。
【0039】
<第三実施形態>
図4は、本発明の第三実施形態に係るSiCシードの構成を説明する図であり、(a)は、SiCシードを、表面保護層を有する側とは反対側の面から見た部分平面図であって、(b)は、(a)のIV(b)-IV(b)線断面図であり、(c)は、(b)のIV(c)-IV(c)線断面図である。本実施形態のSiCシード30は、埋め込み保護層32が、表面保護層13側に配置された第1保護層33と、表面保護層13を有する側とは反対側の面11b側に配置された第2保護層34の2層からなる。その他の構成については、第一実施形態のSiCシード10の構成と同様であり、第一実施形態と対応する箇所については、同じ符号で付して、その説明を省略する。
【0040】
本実施形態において、埋め込み保護層32を構成する第1保護層33と第2保護層34は、それぞれ面11bに対して平行に、かつ格子状に形成されていて、第1保護層33は第1空間33aを、第2保護層34は第2空間34aを有する。第1保護層33は、第2保護層34の第2空間34aを閉じ、第2保護層34は、第1保護層33の第1空間33aを閉じることによって、表面保護層13を有する側とは反対側の面11bから見たときに隙間がないようにされている。このため、本実施形態に係るSiCシード30は、第一実施形態に係るSiCシード10と同様に、SiC結晶本体11に生成したマクロ欠陥が伸長して、SiC単結晶に達しないように、マクロ欠陥の伸張を抑制することができる。
【0041】
<第四実施形態>
図5は、本発明の第四実施形態に係るSiCシードの断面図である。本実施形態のSiCシード40は、埋め込み保護層42が、表面保護層13を有する側とは反対側の面11bに対して斜め方向に傾斜した複数の傾斜保護層43からなる。その他の構成については、第一実施形態のSiCシード10の構成と同様であり、第一実施形態と対応する箇所については、同じ符号で付して、その説明を省略する。
【0042】
本実施形態において、埋め込み保護層42を構成する複数個の傾斜保護層43は、それぞれ隣り合う傾斜保護層43の下方端部43aと上方端部43bとが重なり合うことによって、表面保護層13を有する側とは反対側の面11bから見たときに隙間がないように配置されている。このため、本実施形態に係るSiCシード40は、第一実施形態に係るSiCシード10と同様に、SiC結晶本体11に生成したマクロ欠陥が伸長して、SiC単結晶に達しないように、マクロ欠陥の伸張を抑制することができる。
【0043】
<第五実施形態>
図6は、本発明の第五実施形態に係るSiCシードの断面図である。本実施形態のSiCシード50は、埋め込み保護層52が断面がジグザク形状とされている。その他の構成については、第一実施形態のSiCシード10の構成と同様であり、第一実施形態と対応する箇所については、同じ符号で付して、その説明を省略する。
【0044】
本実施形態において、埋め込み保護層52は、表面保護層13を有する側とは反対側の面11bから見たときに隙間がないように配置されている。このため、本実施形態に係るSiCシード50は、第一実施形態に係るSiCシード10と同様に、SiC結晶本体11に生成したマクロ欠陥が伸長して、SiC単結晶に達しないように、マクロ欠陥の伸張を抑制することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態のSiCシード10、20、30、40、50は、いずれも表面保護層13を有しているが、表面保護層13は有していなくてもよい。
【0046】
また、本実施形態のSiCシード10、20、30、40、50では、埋め込み保護層12、22、32、42、52の層数は1層又は2層とされているが、埋め込み保護層の層数は特に制限はなく、3層以上としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10、20、30、40、50 SiCシード
11 SiC結晶本体
11a、11b 面
12、22、32、42、52 埋め込み保護層
13 表面保護層
23、33 第1保護層
33a 第1空間
24、34 第2保護層
34a 第2空間
43 傾斜保護層
43a 下方端部
43b 上方端部
100 SiC単結晶の製造装置
101 坩堝
102 接着剤層
103 台座
104 原料