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特許7463718硬化性樹脂組成物、硬化物及び立体造形物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物及び立体造形物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240402BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240402BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240402BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20240402BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240402BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240402BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/314
B29C64/106
B29C64/268
B33Y70/00
B33Y80/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019233732
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102676
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】ティムトン ナルモン
(72)【発明者】
【氏名】出口 義信
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-111226(JP,A)
【文献】特開平11-011986(JP,A)
【文献】国際公開第2019/070587(WO,A1)
【文献】特開2009-185222(JP,A)
【文献】特開2004-051665(JP,A)
【文献】特開2020-183463(JP,A)
【文献】特表2020-536142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
B33Y 80/00
B33Y 70/00
B29C 64/268
B29C 64/106
B29C 64/314
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A)と、単官能(メタ)アクリレート化合物(B1)及び/または2官能(メタ)アクリレート化合物(B2)とを含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記ウレタン樹脂(A)の含有率が、前記硬化性樹脂組成物の固形分中に3~50質量%の範囲であり、
前記単官能(メタ)アクリレート化合物(B1)及び/または前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B2)の重合体のガラス転移温度が、50℃以上であり、
前記ウレタン樹脂(A)が、ポリエーテルポリオール(a1)としてポリテトラメチレングリコールと、ポリイソシアネート(a2)としてイソホロンジイソシアネートと、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a3)としてヒドロキシエチルアクリレートとを必須の反応原料とするものであり、
前記ポリエーテルポリオール(a1)の数平均分子量(Mn)が、1,000~3,500であり、
前記単官能(メタ)アクリレート化合物(B1)が、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B2)が、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及びビスフェノールAのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であり、
デジタルライトプロセッシング方式の光造形システムに用いられる硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項記載の硬化性樹脂組成物の硬化反応物であることを特徴とする硬化物。
【請求項3】
活性エネルギー線の照射を硬化条件とする請求項記載の硬化物。
【請求項4】
請求項または記載の硬化物からなることを特徴とする立体造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化物及び立体造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂成型品の製造方法として、3次元CAD等の立体デザインシステムにより設計した立体形状データをもとに、硬化性樹脂組成物を紫外線レーザー等の活性エネルギー線によって選択的に重合硬化させることにより、立体造形物を作製する光学的立体造形法(光造形法)が用いられている。この光学的立体造形法は、切削加工では困難な複雑な形状にも対応が可能であり、製造時間も短く、取扱いも容易であることから、樹脂成型品の他、工業製品の試作モデルの製造に幅広く用いられるようになってきている。
【0003】
光学的立体造形法の代表的な例としては、容器に入れた液状光硬化性樹脂にコンピューターで制御されたスポット状の紫外線レーザーを上から照射して所定厚みの1層を硬化させ、その造形物を1層分だけ下げることで層上に液状樹脂を供給し、同様に紫外線レーザー光で前記と同様に照射硬化させ積層する、この操作の繰り返しにより立体造形物を得る方法が挙げられる。また、最近では、スポット状の紫外線レーザーを用いる上記の点描方式に加えて、LED等のレーザー以外の光源を用い、複数のデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置したDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)と呼ばれる面状描画マスクを介して、光硬化性樹脂を入れた透明容器を通して紫外光を下から照射して所定の断面形状パターンの1層を硬化させ、その造形物を1層分だけ上に引き上げて、前記と同様に次の1層を照射硬化させ、順次積層して立体造形物を得る面露光方式が増加している。
【0004】
前記光学立体造形法に用いられる光硬化性樹脂に対する要求特性としては、粘度が低く、平滑な液面を形成することができること、優れた硬化性を有することなど様々なものが挙げられる。このような光硬化性樹脂としては、ラジカル重合性化合物を主体とする樹脂組成物が知られているが(例えば、特許文献1及び2参照。)、弾性率、伸び、及び耐衝撃性について昨今ますます高まる要求性能を満足するものではなかった。
【0005】
そこで、低粘度であり、かつ機械的物性に優れた硬化物を形成可能な材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-228644号公報
【文献】特開2008-189782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、低粘度であり、硬化物における機械的物性に優れた硬化性樹脂組成物、硬化物及び立体造形物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のウレタン樹脂と、特定のアクリレート化合物とを含有する硬化性樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A)と、単官能(メタ)アクリレート化合物(B1)及び/または2官能(メタ)アクリレート化合物(B2)とを含有する硬化性樹脂組成物であって、前記ウレタン樹脂(A)が、ポリエーテルポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a3)とを必須の反応原料とするものであり、前記ポリエーテルポリオール(a1)が、ポリテトラメチレングリコールを含むものであることを特徴とする硬化性樹脂組成物、硬化物及び立体造形物に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低粘度であり、かつ優れた機械的物性を有する硬化物を形成可能なことから、光学的立体造形用樹脂組成物として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A)と、単官能(メタ)アクリレート化合物(B1)及び/または2官能(メタ)アクリレート化合物(B2)とを含有することを特徴とする。
【0012】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/またはメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/またはメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/またはメタクリルを意味する。
【0013】
前記ウレタン樹脂(A)としては、(メタ)アクリロイル基を必須として有するものである。
【0014】
前記ウレタン樹脂(A)としては、ポリエーテルポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a3)を必須の反応原料とするものである。
【0015】
前記ポリエーテルポリオール(a1)としては、ポリテトラメチレングリコールを必須として用いる。
【0016】
前記ポリエーテルポリオール(a1)としては、必要に応じて、前記ポリテトラメチレングリコールのほかに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等を用いることもできる。これらのポリエーテルポリオールは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0017】
前記ポリエーテルポリオール(a1)の数平均分子量(Mn)は、低粘度であり、優れた機械的物性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、700~3,500の範囲が好ましく、1,000~3,000の範囲がより好ましい。なお。本発明において「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
【0018】
前記ポリイソシアネート(a2)としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記構造式(1)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0019】
【化1】
[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基の何れかである。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、または構造式(1)で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかである。lは0または1~3の整数であり、mは1~15の整数である。]
【0020】
前記水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a3)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記各種の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、前記各種の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等も用いることができる。これらの水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0021】
前記ウレタン樹脂(A)の含有量は、低粘度であり、優れた機械的物性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、本発明の硬化性樹脂組成物の固形分中に3~50質量%の範囲であることが好ましく、20~40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0022】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、前記ポリエーテルポリオール(a1)と、前記ポリイソシアネート(a2)と、前記水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a3)とを含有する反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。なお、低粘度であり、優れた機械的物性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、前記ポリエーテルポリオール(a1)及び前記水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a3)が有する水酸基(OH)の合計と、ポリイソシアネート(a2)が有するイソシアネート基(NCO)との当量比(OH/NCO)が0.9/1~1/0.9の範囲となることが好ましく、1/1であることがより好ましい。
【0023】
前記ウレタン樹脂(A)の製造においては、触媒として、例えば、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫アセテート等を用いることができ、通常行われるウレタン化反応の条件で製造することができる。また、必要に応じて、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の溶媒、あるいは、イソシアネートと反応する部位を含有しないラジカル重合性単量体のうち水酸基またはアミノ基を含有しないもの等を溶媒として用いることもできる。
【0024】
前記単官能(メタ)アクリレート化合物(B1)としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルメトキシ(メタ)アクリレート、2-エチルエトキシ(メタ)アクリレート、2-エチルブトキシ(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、(2ーメチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、低粘度であり、優れた機械的物性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、単官能(メタ)アクリレート化合物の重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」と略記する。)が、50℃以上である化合物が好ましい。なかでも、縮合多環構造、複素環構造等の環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、さらに、アクリロイルモルホリン(Tg:145℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:94℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:180℃)、ジシクロペンテニルアクリレート(Tg:120℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(Tg:56℃)が好ましく、アクリロイルモルホリンが特に好ましい。
【0025】
なお、前記単官能(メタ)アクリレート化合物(B1)を2種以上併用する場合は、2種以上の単官能(メタ)アクリレート化合物の共重合体のTgが50℃以上であることが好ましい。
【0026】
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B2)としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンのプロピレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート3-メチル-1,5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、2,5-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、2,6-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、1,3-アダマンチルジ(メタ)アクリレート、1,3-ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]アダマンタン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。これらの2官能(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、低粘度であり、優れた機械的物性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、2官能(メタ)アクリレート化合物の重合体のTgが、50℃以上である化合物が好ましい。なかでも、ジプロピレングリコールジアクリレート(Tg:102℃)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Tg:110℃)がより好ましい。
【0027】
なお、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B2)を2種以上併用する場合は、2種以上の2官能(メタ)アクリレート化合物の共重合体のTgが50℃以上であることが好ましい。
【0028】
また、前記単官能(メタ)アクリレート化合物(B1)と、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B2)とを併用することもできる。この場合、併用する(メタ)アクリレート化合物の共重合体のTgが50℃以上であることが好ましい。
【0029】
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、前記単官能(メタ)アクリレート化合物(B1)及び/または前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B2)と、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を併用することもできる。この場合においても、併用する(メタ)アクリレート化合物の共重合体のTgが50℃以上であることが好ましい。
【0030】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、EO変性グリセロールアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、(EO)或いは(PO)変性トリメチロールプロパントリアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート;
【0031】
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;
【0032】
ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の5官能(メタ)アクリレート;
【0033】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの3官能以上の(メタ)アクリレートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤を含有するものである。前記光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル、ポリメリックTPO-L等が挙げられる。
【0035】
前記その他の光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」「Omnirad TPO-L」、「Omnipol TP」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)等が挙げられる。
【0036】
前記光重合開始剤の添加量は、例えば、前記硬化性樹脂組成物中に、1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0037】
また、前記硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、さらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。
【0038】
前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、o-トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0039】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、シランカップリング剤、リン酸エステル化合物、有機ビーズ、無機微粒子、有機フィラー、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、着色剤等の各種添加剤を含有することもできる。
【0040】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0041】
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0042】
前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン、P-メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等が挙げられる。
【0043】
前記シリコン系添加剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体等のアルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらのシリコン系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0044】
前記フッ素系添加剤としては、例えば、DIC株式会社製「メガフェース」シリーズ等が挙げられる。これらのフッ素系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0045】
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル系のシランカップリング剤;
【0046】
ジエトキシ(グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、2-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系のシランカップリング剤;
【0047】
p-スチリルトリメトキシシラン等のスチレン系のシランカップリング剤;
【0048】
3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ系のシランカップリング剤;
【0049】
N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系のシランカップリング剤;
【0050】
3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系のシランカップリング剤;
【0051】
3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル系のシランカップリング剤;
【0052】
3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキンシラン等のメルカプト系のシランカップリング剤;
【0053】
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファイド等のスルフィド系のシランカップリング剤;
【0054】
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系のシランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0055】
前記リン酸エステル化合物としては、例えば、分子構造中に(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられ、市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製「カヤマーPM-2」、「カヤマーPM-21」、共栄社化学株式会社製「ライトエステルP-1M」「ライトエステルP-2M」、「ライトアクリレートP-1A(N)」、SOLVAY社製「SIPOMER PAM 100」、「SIPOMER PAM 200」、「SIPOMER PAM 300」、「SIPOMER PAM 4000」、大阪有機化学工業社製「ビスコート#3PA」、「ビスコート#3PMA」、第一工業製薬社製「ニューフロンティア S-23A」;分子構造中にアリルエーテル基を有するリン酸エステル化合物であるSOLVAY社製「SIPOMER PAM 5000」等が挙げられる。
【0056】
前記有機ビーズとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルスチレンビーズ、シリコーンビ-ズ、ガラスビーズ、アクリルビーズ、ベンゾグアナミン系樹脂ビーズ、メラミン系樹脂ビーズ、ポリオレフィン系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリアミド樹脂ビーズ、ポリイミド系樹脂ビーズ、ポリフッ化エチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ等が挙げられる。これらの有機ビーズは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら有機ビーズの平均粒径は、1~10μmの範囲であることが好ましい。
【0057】
前記無機微粒子は、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、三酸化アンチモン等の微粒子が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら無機微粒子の平均粒径は、95~250nmの範囲であることが好ましく、特に100~180nmの範囲であることがより好ましい。
【0058】
前記無機微粒子を含有する場合には、分散補助剤を用いることができる。前記分散補助剤としては、例えば、イソプロピルアシッドホスフェート、トリイソデシルホスファイト、エチレンオキサイド変性リン酸ジメタクリレート等のリン酸エステル化合物等が挙げられる。これらの分散補助剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記分散補助剤の市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製「カヤマーPM-21」、「カヤマーPM-2」、共栄社化学株式会社製「ライトエステルP-2M」等が挙げられる。
【0059】
前記有機フィラーとしては、例えば、セルロース、リグニン、及びセルロースナノファイバー等の植物由来の溶剤不溶性物質等が挙げられる。
【0060】
前記無機フィラーとしては、例えば、ガラス(粒子)、シリカ(粒子)、アルミナシリケート、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0061】
前記レオロジーコントロール剤としては、例えば、楠本化成株式会社製「ディスパロン6900」等のアマイド・ワックス類;ビッグ・ケミー社製「BYK410」等の尿素系レオロジーコントロール剤類;楠本化成株式会社製「ディスパロン4200」等のポリエチレン・ワックス;イーストマン・ケミカル・プロダクツ社製「CAB-381-2」、「CAB 32101」等のセルロース・アセテート・ブチレートなどが挙げられる。
【0062】
前記脱泡剤としては、例えば、フッ素或いは、硅素原子を含んだオリゴマー、または高級脂肪酸、アクリル重合体等のオリゴマー等が挙げられる。
【0063】
前記着色剤としては、例えば、顔料、染料等が挙げられる。
【0064】
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0065】
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。
【0066】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0067】
前記染料としては、例えば、モノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系染料等が挙げられる。これらの染料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0068】
本発明の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することで得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0069】
紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
【0070】
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、50~5,000mJ/cmであることが好ましく、300~1,000mJ/cmであることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止または抑制ができることから好ましい。
【0071】
本発明の立体造形物は、公知の光学的立体造形法により作製することができる。
【0072】
前記光学的立体造形法としては、例えば、ステレオリソグラフィー(SLA)方式、デジタルライトプロセッシング(DLP)方式、インクジェット方式が挙げられる。
【0073】
前記ステレオリソグラフィー(SLA)方式とは、液状の硬化性樹脂組成物の槽にレーザー光線等の活性エネルギー線を点で照射し、造形ステージを移動させながら一層ずつ硬化して立体造形を行う方式である。
【0074】
前記デジタルライトプロセッシング(DLP)方式とは、液状の硬化性樹脂組成物の槽にLED等の活性エネルギー線を面で照射し、造形ステージを移動させながら一層ずつ硬化して立体造形を行う方式である。
【0075】
前記インクジェット光造形法とは、光造形用硬化性樹脂組成物の微小液滴を、ノズルから所定の形状パターンを描画するよう吐出してから、紫外線を照射して硬化薄膜を形成する方法である。
【0076】
これらの光学的立体造形法のなかでも、面による高速造形が可能なことからDLP方式が好ましい。
【0077】
前記DLP方式の立体造形方法としては、DLP方式の光造形システムを用いた方法であれば特に制限されないが、その造形条件としては、立体造形物の造形精度が良好となることから、光造形の積層ピッチが0.01~0.2mmの範囲であり、照射波長が350~410nmの範囲であり、光強度が0.5~50mW/cmの範囲であり、1層当たりの積算光量が1~100mJ/cmの範囲であることを要し、なかでも、より一層立体造形物の造形精度が良好となることから、光造形の積層ピッチが、0.02~0.1mmの範囲であり、照射波長が、380~410nmの範囲であり、光強度が、5~15mW/cmの範囲であり、1層当たりの積算光量が、5~15mJ/cmの範囲であることが好ましい。
【0078】
本発明の立体造形物は、高い弾性率を有し、耐衝撃性に優れることから、例えば、自動車部品、航空・宇宙関連部品、電気電子部品、家電、建材、インテリア、宝飾、医療材料等に好適に用いることができる。
【実施例
【0079】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
【0080】
なお、本実施例において、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
【0081】
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC-8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムHXL-H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC-8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0082】
(合成例1:ポリエステルポリオール(1)の合成)
攪拌機、コンデンサー、温度計が備えられた反応容器にエチレングリコール262質量部、アジピン酸571質量部を投入した。窒素気流下で撹拌しながら200~250℃で18時間反応させて、ポリエステルポリオール(1)を得た。このポリエステルポリオール(1)は、数平均分子量(Mn)が2,300であり、重量平均分子量(Mw)が4,800であり、酸価が2.0mgKOH/gであり、水酸基価が49mgKOH/gであった。
【0083】
(合成例2:アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-1)の合成)
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、イソホロンジイソシアネート267質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン1.6質量部、メトキシハイドロキノン0.2質量部、ジブチル錫ジアセテート0.2質量部を加え、70℃に昇温し、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量650)391質量部を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、ヒドロキシエチルアクリレート140質量部を1時間にわたって滴下した。滴下後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-1)を得た。
【0084】
(合成例3:アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-2)の合成)
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、イソホロンジイソシアネート132質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン1.6質量部、メトキシハイドロキノン0.2質量部、ジブチル錫ジアセテート0.2質量部を加え、70℃に昇温し、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)596質量部を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、ヒドロキシエチルアクリレート69質量部を1時間にわたって滴下した。滴下後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-2)を得た。
【0085】
(合成例4:アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-3)の合成)
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、イソホロンジイソシアネート76質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン1.6質量部、メトキシハイドロキノン0.2質量部、ジブチル錫ジアセテート0.2質量部を加え、70℃に昇温し、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量4000)683質量部を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、ヒドロキシエチルアクリレート40質量部を1時間にわたって滴下した。滴下後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-3)を得た。
【0086】
(合成例5:アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-4)の合成)
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、イソホロンジイソシアネート132質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン1.6質量部、メトキシハイドロキノン0.2質量部、ジブチル錫ジアセテート0.2質量部を加え、70℃に昇温し、ポリプロピレングリコール(数平均分子量2000)596質量部を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、ヒドロキシエチルアクリレート69質量部を1時間にわたって滴下した。滴下後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-4)を得た。
【0087】
(合成例6:アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-5)の合成)
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、イソホロンジイソシアネート118質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン1.6質量部、メトキシハイドロキノン0.2質量部、ジブチル錫ジアセテート0.2質量部を加え、70℃に昇温し、合成例1で得たポリエステルポリオール(1)620質量部を1時間にわたって滴下した。滴下後、70℃で3時間反応させた後、ヒドロキシエチルアクリレート62質量部を1時間にわたって滴下した。滴下後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-5)を得た。
【0088】
(実施例1:硬化性樹脂組成物(1)の調製)
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた4つ口のフラスコに、合成例1で得たアクリロイル基を有するウレタン樹脂(A-1)30質量部、アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ社製「ACMO」)70質量部を仕込んだ後、60℃以下で、均一溶解するまで攪拌し、硬化性樹脂組成物(1)を得た。
【0089】
(実施例2~9:硬化性樹脂組成物(2)~(9)の調製)
アクリロイル基を有するウレタン樹脂、及び(メタ)アクリレート化合物を表1に示した組成及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて硬化性樹脂組成物(2)~(9)を得た。
【0090】
(比較例1~5:硬化性樹脂組成物(C1)~(C5)の調製)
実施例1で用いたアクリロイル基を有するポリウレタン樹脂、及び(メタ)アクリレート化合物を表1に示した組成及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて硬化性樹脂組成物(C1)~(C5)を得た。
【0091】
上記の実施例1~9、及び比較例1~5で得られた硬化性樹脂組成物を用いて、下記の評価を行った。
【0092】
[粘度の測定]
E型粘度計(東機産業株式会社製「TV-22」)を用いて、各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物の25℃における粘度を測定した。
【0093】
[試験片の作製]
光造形3Dプリンター(株式会社ディーメック社製「ACCULAS BA-30S」)を用いて、引っ張り試験用ダンベル(ASTM D638 TYPE1準拠)、及びアイゾット衝撃試験用テストピース(ASTM D256準拠)を作製した。次いで、光造形により得られた前記引っ張り試験用ダンベル、及び前記アイゾット衝撃試験用テストピースをイソプロピルアルコールで洗浄し、常温で1時間乾燥後、後硬化として高圧水銀ランプにて、両面をそれぞれUV照射(各10000mJ/cm)して、試験片1(引っ張り試験用ダンベル)及び試験片2(アイゾット衝撃試験用テストピース)を得た。
【0094】
[弾性率及び伸度の測定方法]
ASTM D638に準拠し、前記試験片1を用いて、島津製作所製オートグラフ「AG-Xplus 100kN」(ロードセル100kN、ヘッドスピード5mm/min、試験片幅10mm)により、引っ張り試験を行い、弾性率及び伸度を測定した。
【0095】
[アイゾット衝撃強度(耐衝撃性)の測定方法]
ASTM D256に準拠し、前記試験片2を用いて、株式会社東洋精機製作所製「ユニバーサルインパクトテスター」により、アイゾット衝撃強度を測定した。
【0096】
実施例1~9、及び比較例1~5で得られた硬化性樹脂組成物の組成及び評価結果を表1に示す。
【0097】
【表1】