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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】受光装置及び距離計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4863 20200101AFI20240402BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20240402BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G01S7/4863
G01S17/89
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020035067
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021139647
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】櫻野 勝之
(72)【発明者】
【氏名】山中 俊輝
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-047486(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008737(WO,A1)
【文献】特開2020-34304(JP,A)
【文献】特開2019-186598(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086181(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48ー 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ光電変換素子をもつ複数の光電変換部を備えた受光装置であって、
各前記光電変換部は、
前記光電変換素子で受光された光量に応じたパルス信号を整形出力する整形部と、
前記パルス信号をカウントするビットカウンタ部と、を備え、
前記ビットカウンタ部は、各前記光電変換部に分散されて設けられ
各前記光電変換部に設けられた前記ビットカウンタ部は、下位ビットのカウント値を出力するビットカウンタ部から上位ビットのカウント値を出力するビットカウンタ部まで、順番に、隣接する光電変換部に設けられること
を特徴とする受光装置。
【請求項2】
各前記光電変換部の各前記ビットカウンタ部からのカウント値をまとめてカウントすることで、一まとまりの受光信号を形成するカウンタ回路を、さらに備えること
を特徴とする請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
各前記ビットカウンタ部からのカウント値を、所定数ずつまとめる複数の初段論理回路と、
各前記光電変換部の各前記初段論理回路からの出力をまとめる一段又は複数段の後段論理回路と、をさらに備えること
を特徴とする請求項に記載の受光装置。
【請求項4】
各前記光電変換部は、前記ビットカウンタ部、前記初段論理回路及び前記後段論理回路のうち、前記ビットカウンタ部のみが設けられた光電変換部、前記初段論理回路のみが設けられた光電変換部、又は、前記初段論理回路及び前記後段論理回路が設けられた光電変換部を備えること
を特徴とする請求項に記載の受光装置。
【請求項5】
前記後段論理回路からの出力の上位ビットをカウントする上位ビット用カウンタ回路、及び、前記後段論理回路からの出力の下位ビットをカウントする下位ビット用カウンタ回路と、
前記上位ビット用カウンタ回路及び前記下位ビット用カウンタ回路のうち、両方を前記後段論理回路からの出力のカウントに用いる第1のモード、及び、いずれか一方を前記後段論理回路からの出力のカウントに用いる第2のモードを切り替え制御する制御回路と
を有することを特徴とする請求項又は請求項に記載の受光装置。
【請求項6】
対象物に光を照射する光源部と、
請求項5に記載の受光装置と、
前記第1のモードにおける、前記上位ビット用カウンタ回路からの出力信号と、前記下位ビット用カウンタ回路からの出力信号との信号量の差分が「0」であった場合に、前記光源部から前記対象物に光を照射した投光時間の1/2の時間を、前記対象物に照射した光の反射光を受光するまでの時間として算出する制御回路と、
を有することを特徴とする距離計測装置。
【請求項7】
前記受光装置の各光電変換部は、
光電変換素子で受光された光量に応じたパルス信号を生成するパルス生成部と、
前記パルス信号をカウントするビットカウンタ部と、を備え、
前記ビットカウンタ部は、各前記光電変換部に分散されて設けられていること
を特徴とする請求項に記載の距離計測装置。
【請求項8】
各前記光電変換部に設けられた前記ビットカウンタ部は、下位ビットのカウント値を出力するビットカウンタ部から上位ビットのカウント値を出力するビットカウンタ部まで、順番に、隣接する光電変換部に設けられること
を特徴とする請求項に記載の距離計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光装置及び距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、単光子検出素子であるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)センサが知られている。このSPADセンサは、PN接合部分に降伏電圧を超えた逆電圧を印加して駆動するガイガーモードを有している。このため、SPADセンサの場合、APD(Avalanche Photo Diode)よりも格段に高い増幅率となり、光子一個という非常に微小な信号単位で対応可能となっている。なお、増幅率は、APDが100~200程度に対して、SPADセンサの場合、1E6程度である。
【0003】
SPADセンサは、光子に対して反応した後にクエンチ動作を行ってガイガーモードによる電流を抑制する必要がある。また、クエンチ制御でガイガーモードによる電流を抑制した後、SPADセンサが定常モードに戻るまで、電荷を供給するためのリチャージ制御が必要となる。このようなクエンチ制御及びリチャージ制御は、いずれも、SPADセンサと直列に接続された抵抗(MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)のオン抵抗を利用)を用いて行われる。また、出力信号はデジタルパルスとなるため、SPADセンサに対しては、画素毎の信号を保持するためにカウンタ回路等が用いられる。
【0004】
また、特許文献1(特開2019-158806号公報)には、SPADセンサ等において、リチャージ動作のための抵抗器(MOSFETのオン抵抗)の制御信号を、センサ出力からフィードバックする「リチャージ信号生成回路」を、複数の画素間で共有する構成とすることで、1画素当たりの回路面積の縮小化を図る受光装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているSPADセンサも含め、通常、SPADセンサの各画素には、カウンタ回路等のロジック回路が含まれる。このため、一般的なCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサと比べると、SPADセンサの場合、受光領域の開口率が小さくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、各光電変換部の受光領域の開口率を大きくできるような受光装置及び距離計測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、それぞれ光電変換素子を備えた複数の光電変換部を備えた受光装置であって、各光電変換部は、光電変換素子で受光された光量に応じたパルス信号を整形出力する整形部と、パルス信号をカウントするビットカウンタ部と、を備え、ビットカウンタ部は、各光電変換部に分散されて設けられていることを特徴とする。各光電変換部に設けられたビットカウンタ部は、下位ビットのカウント値を出力するビットカウンタ部から上位ビットのカウント値を出力するビットカウンタ部まで、順番に、隣接する光電変換部に設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各光電変換部の受光領域の開口率を大きくできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施の形態のLIDAR装置の主要構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施の形態のLIDAR装置に設けられているSPADセンサ(受光素子)の外観構成を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態のLIDAR装置のSPADセンサの各画素に分散して設けられるTFFの配置例を示す図である。
図4図4は、第1の実施の形態のLIDAR装置に設けられているSPADセンサ(受光素子)の回路構成を示す図である。
図5図5は、第2の実施の形態のLIDAR装置における、SPADセンサ(受光素子)の外観構成を示す図である。
図6図6は、第2の実施の形態のLIDAR装置のSPADセンサの各画素に分散して設けられるTFFの配置例を示す図である。
図7図7は、第3の実施の形態のLIDAR装置において、各画素にカラーフィルタを設けたSPADセンサの外観構成を示す図である。
図8図8は、第4の実施の形態のLIDAR装置に設けられているSPADセンサ(受光素子)の外観構成を示す図である。
図9図9は、第4の実施の形態のLIDAR装置に設けられているSPADセンサ(受光素子)の回路構成を示す図である。
図10図10は、第4の実施の形態のLIDAR装置のSPADセンサを、間接型ToFセンサとして用いる場合における演算動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施の形態のLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)装置の説明をする。LIDAR装置は、パルス状にレーザ照射を行うことで得られる散乱光を測定し、対象物までの距離又は対象物の性質を分析する装置である。換言すると、LIDAR装置は、発光部を備えたアクティブ型の距離測定装置である。
【0011】
[第1の実施の形態]
(全体構成)
図1は、第1の実施の形態のLIDAR装置100の主要構成を示すブロック図である。この図1において、第1の実施の形態のLIDAR装置100は、光源11からの光を投光する投光部1と、対象物40からの反射光を受光する受光部2と、投光部1の制御及び反射信号に基づく距離計測を行う制御回路3を有する。
【0012】
投光部1と受光部2は、一般的には、例えば車両、飛行体、船舶等の移動体の前方の検出方向(撮像方向)に存在する所定の物体を検出するように設けられる。なお、投光部1と受光部2は、移動体の側方又は後方等の前方以外の方向の物体を検出するように設けてもよい。
【0013】
投光部1は、光源11、カプリングレンズ13、光スキャナ14、光源駆動回路16、光スキャナ駆動回路17及び走査角モニタ18を有する。
【0014】
光源11は、複数の発光素子群が光走査の方向に離間して配置されている。各発光素子群は、複数の面発光レーザ(VCSEL)で形成されている。光源11は、光源駆動回路16を介して制御回路3に接続されている。制御回路3は、光源11の発光素子群の発光タイミングを、それぞれ個別に制御する。
【0015】
カプリングレンズ13は、光源11から出射されるレーザ光を、光スキャナ14に結合する。光スキャナ14は、光源11の複数の発光素子群から入射されるレーザ光を、同一の検出領域に向けてXZ面内で走査する。光スキャナ14のビーム偏向により、所定の角度範囲に存在する物体が検出され、検出された物体までの距離の測定が可能となる。
【0016】
光スキャナ14によるレーザ光の走査角は、走査角モニタ18で検出して制御回路3に供給してもよい。この場合、制御回路3は、モニタ結果に基づいて、光スキャナ駆動信号を調整し、走査角度及び走査周波数等を制御する。
【0017】
受光部2は、受光素子21(受光装置の一例)と受光レンズ22を有する。受光レンズ22は、ビーム走査方向に存在する物体から反射されたレーザ光を、受光素子21に結合させる。受光素子21は、以下に詳述するSPAD(Single Photon Avalanche Diode)センサである。受光レンズ22と受光素子21の間に、ミラー等のその他の光学素子を設けてもよい。
【0018】
投光部1と受光部2は近接して配置される。また、投光部1と受光部2から数メートル以上離れた位置からは、投光部1及び受光部2の各光軸を、同軸とみなすことが可能となる。対象物40に照射されたレーザ光は乱反射すれるが、この反射光のうち、LiDAR装置100から出射されたレーザ光と同じ光路を介して戻る反射光の光成分が、受光レンズ22を介して受光素子21で受光される。受光素子21は、受光した反射光の強度を示す反射信号を形成し、制御回路3に供給する。
【0019】
制御回路3は、光源の駆動タイミング信号が出力されてから反射信号が供給されるまでの時間、すなわち、レーザ光を出射した時刻と反射光を受光した時刻の差分に基づいて、検出された対象物40までの距離を算出する。
【0020】
この構成では、各発光素子群から出力されるレーザ光の品質は保証され、かつ角度分解能が高く維持される。また、同一検出エリアに複数のレーザ光を異なるタイミングで照射することでトータル的な強度の向上を図ることができ、測定距離を伸ばすことができる。また、受光素子21として用いているSPADセンサは高感度であり、高いS(Signal)/N(Noise)比の反射信号を得ることができる。このため、高精度の距離計測を可能とすることができる。
【0021】
なお、制御回路3は、LSIチップ、マイクロプロセッサ等の集積回路チップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のロジックデバイス、集積回路チップとロジックデバイスの組み合わせ等で実現してもよい。
【0022】
(SPADセンサの外観構成)
第1の実施の形態のLIDAR装置100に設けられている上述の受光素子21であるSPADセンサは、単光子の検出が可能な高感度なイメージセンサであり、投光した光が対象物40で反射して戻るまでの時間(Time of Flight)を測定することで、測距センサとして使用される。
【0023】
図2は、SPADセンサ(受光素子21)の外観構成を示す図である。この図2の例の場合、SPADセンサは、計16画素の画素アレイとなっている。なお、16画素以上又は16画素未満の画素アレイとしてもよい。光電変換部の一例である各画素は、光電変換素子の一例である受光領域(R0~R15)、画素選択部51、パルス整形部52、フロントエンド(Front End)53及びTフリップフロップ(TFF)54を有している。Tフリップフロップ54は、ビットカウンタ部の一例である。
【0024】
第0~第15のTFF0~15は、図3に示すように、いわゆる九十九折状(蛇行状)に連続的に並べられて、各画素に分散配置されている。具体的には、右下の画素から上方向に第0のTFF0~第3のTFF3が順番に並べて設けられ、第3のTFF3の左に隣接させて第4のTFF4が設けられている。また、第4のTFF4から下方向に、第5のTFF5~第7のTFF7が順番に並べて設けられている。また、第7のTFF7の左に隣接させて第8のTFF8が設けられ、第8のTFF8から上方向に、第9のTFF9~第11のTFF11が順番に並べて設けられている。さらに、第11のTFF11の左に隣接させて第12のTFF12が設けられ、第12のTFF12から下方向に、第13のTFF13~第15のTFF15が順番に並べて設けられている。
【0025】
図2に示すSPADセンサの場合、光子をカウントする第0~第15のTFF0~15を各画素に一つずつ設けている。このため、図2に示すSPADセンサは、16ビットカウンタとなっている。このようなSPADセンサ全体のビット数で、SPADセンサが対応可能となる光量のダイナミックレンジが決定される。このため、SPADセンサ全体のビット数は、できるだけ大きい方が好ましい(対応ダイナミックレンジ大)。
【0026】
このように、第0~第15のTFF0~15が隣接して連続するように配置することで、TFF同士の配線を短く抑えることができ、配線面積を削減できる。このため、配線面積を削減できる分、各画素の開口率を向上させることができる。
【0027】
また、後述するが、第1の実施の形態のLiDAR装置100の場合、SPADセンサの各画素の出力信号を、まとめて一つのカウンタ回路(図4の24ビットカウンタ回路60)で検出している。また、LiDAR装置100の外光除去手法として、各画素に対して同時に入射する光子を信号とみなし、ランダムに入射する光子を外光として除去する外光除去手法が知られている。この外光除去手法を用いる場合、SPADセンサの各画素の出力をまとめて24ビットカウンタ回路60でカウントする構成は有用である。
【0028】
(SPADセンサの回路構成)
図4は、SPADセンサ(受光素子21)の回路構成を示す図である。この図4の例では、図2に示した「第0のTFF0~第3のTFF3をそれぞれ備える計4つの画素SPADPIX0~SPADPIX3」、「第4のTFF4~第7のTFF7をそれぞれ備える計4つの画素SPADPIX4~SPADPIX7」、「第8のTFF8~第11のTFF11をそれぞれ備える計4つの画素SPADPIX8~SPADPIX11」、及び、「第12のTFF12~第15のTFF15をそれぞれ備える計4つの画素SPADPIX12~SPADPIX15」の、計16個の画素信号を、TFF0~TFF23を備えた24ビットカウンタ回路60(カウンタ回路の一例)に、まとめて供給するようになっている。
【0029】
各画素のSPADは、VH端子に印加される降伏電圧以上の電圧(逆バイアス電圧)によりガイガーモードで動作する。また、SPADのアノード側にドレインが接続されたフロントエンド53のMOSFETが、クエンチ抵抗器として機能する。QNCH端子に印加するゲート電圧により、MOSFETのゲートバイアスを制御し、クエンチ抵抗値を外部から変えられるようになっている。
【0030】
24ビットカウンタ60は、各画素が光子1個に反応して出力するパルス信号をそれぞれカントする。また、SELECT端子からの選択信号により、各画素を選択的にアクティブにすることが可能となっている。このSELECT端子を介して選択信号により選択されている画素のみがアクティブ状態となり、光子数のカウント出力パルスを出力する。これにより、16画素のうちの任意の画素のみのカウント値を得ることができる。
【0031】
24ビットカウンタ60のカウント値は、リセット端子(RESET)を介して供給されるリセットパルスにより「0」にリセットされる。また、24ビットカウンタ60のカウント値は、リード端子(READ)を介して供給されるリードパルスにより、出力端子(OUT[0:23])を介して外部に出力される。
【0032】
(第1の実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、第1の実施の形態のLIDAR装置100は、SPADセンサの複数の画素で一つの24ビットカウンタ回路60を共有し、SPADセンサの各画素に分散して設けられた第0~第15のTFF0~15からの出力を切り替えながら、一つの24ビットカウンタ回路60へ入力して順次読み出す。これにより、各画素のロジック回路面積を小さくすることができ、各画素の受光領域の開口率を大きくすることができる。
【0033】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態のLIDAR装置の説明をする。上述の第1の実施の形態のLIDAR装置は、SPADセンサの各画素のTFFを、九十九折状(蛇行状)に連続的に並べられて配置した例であった。これに対して、第2の実施の形態のLIDAR装置は、SPADセンサの各画素のTFFを、渦巻き状に連続的に並べられて配置した例である。上述の第1の実施の形態及び第2の実施の形態は、SPADセンサの各画素のTFFの配置のみが異なる。このため、以下、両者の差異の説明のみ行い、重複説明を省略する。
【0034】
図5は、第2の実施の形態のLIDAR装置における、SPADセンサ(受光素子21)の外観構成を示す図である。第2の実施の形態も上述の第1の実施の形態と同様に、SPADセンサは、計16画素の画素アレイを有している。また、各画素も、上述したように、受光領域(R0~R15)、画素選択部51、パルス整形部52、フロントエンド(Front End)53及びTフリップフロップ(TFF)54を有している。
【0035】
第0~第15のTFF0~15は、図6に示すように、いわゆる渦巻き状に連続的に並べられて配置されている。具体的には、右下の画素から上方向に第0のTFF0~第3のTFF3が順番に並べて設けられる。また、SPADセンサの最上段の右から左にかけて、第3のTFF3~第6のTFF6が順番に並べて設けられる。これにより、第3のTFF3の左に隣接して第4のTFF4が設けられることとなる。
【0036】
また、左上の画素から下方向に第6のTFF6~第9のTFF9が順番に並べて設けられる。また、SPADセンサの最下段の左下の第9のTFF9に対して、右に隣接して第10のTFF10及び第11のTFF11が順番に並べて設けられる。
【0037】
また、SPADセンサの最下段の第11のTFF11に対して、上方向に隣接して第12のTFF12及び第13のTFF13が順番に並べて設けられる。また、第13のTFF13の左に隣接して、第14のTFF14が設けられる。また、第14のTFF14の下側に隣接して、第15のTFF15が設けられる。これにより、第0のTFF0~第15のTFF15が、図6に示すように、渦巻き状に配置される。
【0038】
このように第0のTFF0~第15のTFF15を、隣接して連続するように渦巻き状に配置することにより、各TFF間の配線をより短くすることができ、配線面積を削減して各画素の開口率を向上させることができる等、上述の第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態のLIDAR装置の説明をする。この第3の実施の形態のLIDAR装置は、上述の第1の実施の形態で説明したように、九十九折状(蛇行状)に連続させて配置した第0~第15のTFFを備えたSPADセンサの各画素にカラーフィルタを設けた例である。
【0040】
図7は、各画素にカラーフィルタを設けたSPADセンサの一例を示す図である。この図7の例は、例えば全16画素を縦2画素×横2画素の計4画素ずつに分割し、4つの各画素に対して設けるカラーフィルタを、緑色(Green):赤色(Red):青色(Blue)=2:1:1の割合で設けた例である(ベイヤー配列)。
【0041】
このように、4つの画素に対してベイヤー配列でカラーフィルタを設けることで、4画素でRGBの各色の信号を取得できる。第1の実施の形態で説明したように、LIDAR装置のSPADセンサは、4画素分の出力信号を一つにまとめて出力する。このため、RGBの各カラーフィルタの配置による出力信号の遅延を小さく抑えることができる他、上述の各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態のLIDAR装置の説明をする。この第4の実施の形態のLIDAR装置は、SPADセンサの24ビットカウンタ回路を、上述のようにTFF0~23の24ビットのカウンタとして用いる「第1のモード」と、TFF0~11の下位12ビットと、TFF12~23の上位12ビットとを別々にカウントするカウンタとして用いる「第2のモード」を切り替え可能とした例である。
【0043】
なお、一例として24ビットのカウンタ回路を12ビットのカウンタに2分割して用いる例を説明するが、36ビットのカウンタ回路を12ビットのカウンタに3分割して用い、又は、36ビットのカウンタ回路を24ビットのカウンタ及び12ビットのカウンタに2分割して用いてもよい。カウンタ回路のビット数、分割する数、及び、分割したカウンタの各ビット数は、設計等に応じて任意に設定可能である。
【0044】
(第4の実施の形態で用いられるSPADセンサの外観構成)
図8は、第4の実施の形態のLIDAR装置に設けられているSPADセンサ(受光素子21)の外観構成を示す図である。この図8に示すように、第4の実施の形態で用いられるSPADセンサは、画素選択部51、パルス整形部52及びフロントエンド(Front End)部53が各画素に設けられている。また、第4の実施の形態で用いられるSPADセンサの場合、第1~第23のTFF0~TFF23、OR回路、2入力OR回路、2入力AND回路、マルチプレクサ回路が、各画素に分散して設けられている。
【0045】
具体的には、第1~第23のTFF0~TFF23は、右列の下から2番目の画素に第0及び第1のTFF0、TFF1が設けられ、右上の画素に第2及び第3のTFF2、TFF3が設けられている。また、右上の画素に隣接する画素に対して第4及び第5のTFF4、TFF5が設けられ、この第4及び第5のTFF4、TFF5が設けられた画素から下方向に連続する3つの画素に対して、第6及び第7のTFF6、TFF7、第8及び第9のTFF8、TFF9、第10及び第11のTFF10、TFF11がそれぞれ設けられている。
【0046】
また、左から2列目で下から2番目の画素には、第12及び第13のTFF12、TFF13が設けられ、左から2列目で最上段の画素には、第14及び第15のTFF14、TFF15が設けられている。また、左の列の上から下の4つの画素に対しては、第16及び第17のTFF16、TFF17、第18及び第19のTFF18、TFF19、第20及び第21のTFF20、TFF21、第22及び第23のTFF22、TFF23、がそれぞれ設けられている。
【0047】
すなわち、第1~第23のTFF0~TFF23は、右列の下から2番目の画素から順番にTFF0、TFF1、TFF2、・・・TFF23とのように隣接する画素に配置する。これにより、TFF同士の配線を短縮化でき、配線面積を削減して各画素の開口率の向上を図ることができる。
【0048】
次に、第4の実施の形態で用いられるSPADセンサの場合、右下の画素に対してOR回路A[3]、OR回路B[2:3]、及び2つの2入力AND回路2ANDが設けられている。また、左の列の上から2番目の画素には、リセット回路(RESET)及びリード回路(READ)が設けられている。また、左から2列目の下の画素には、OR回路A[2]、OR回路B[0:1]、及び2入力OR回路2OR及びマルチプレクサ(MUX)が設けられている。また、左から2列目の上から2番目の画素には、OR回路A[0]が設けられている。
【0049】
第4の実施の形態の場合、共通化されている24ビットカウンタ回路(図9の符号70)に、16画素の出力をまとめて供給するために、まず、左上4画素の出力を一つのOR回路A[0]でまとめる。同様に、右上4画素の出力を一つのOR回路A[1]でまとめ、左下4画素の出力を一つのOR回路A[2]でまとめ、右下4画素の出力を一つのOR回路A[3]でまとめる。また、左上4画素及び右上4画素の出力を一つのOR回路B[0:1]でまとめ、左下4画素及び右下4画素の出力を一つのOR回路B[2:3]でまとめる。そして、OR回路B[0:1]及びOR回路B[2:3]の出力を、2入力OR回路(2OR)でまとめる。これにより、16個数の画素の出力が、4個→8個→16個の順にまとめられて24ビットカウンタ回路に供給される。
【0050】
図8に示すSPADセンサのように、TFFだけを含む画素をまとめて配置し、OR回路等の論理回路等を含む画素をまとめて配置することで、余分な配線を省略することができ、配線による受光領域の開口率低下、及び、出力信号の遅延を防止できる。
【0051】
すなわち、第4の実施の形態の場合、左上(受光領域R0,R1,R4,R5)、右上(受光領域R2,R3,R6,R7)、左下(受光領域R8,R9,R12,R13)、右下(受光領域R10,R11,R14,R15)の4領域毎にそれぞれA[0]、A[1]、A[2]、A[3]のOR回路によって出力信号がまとめられる。これにより、配線の寄生容量を低減でき、出力信号の遅延を最小限に抑えることができる。
【0052】
(TFFの分割切り替え動作)
次に、第4の実施の形態の場合、SPADセンサの24ビットカウンタ回路を、上述のようにTFF0~23の24ビットのカウンタとして用いる「第1のモード」と、TFF0~11の下位12ビットと、TFF12~23の上位12ビットとを別々にカウントするカウンタとして用いる「第2のモード」が切り替え可能となっている。「第2のモード」は、SPADセンサを間接型ToF(Time Of Flight)センサとして使う場合に適している。詳しくは、後述する。
【0053】
図9は、上述の第1のモード及び第2のモードの切り替え構成を説明するための回路図である。各画素の構成は、上述の第1の実施の形態と同じであり、VH端子に接続されているSPADセンサがガイガーモードで動作し、SPADセンサのアノード側にドレインが接続されるMOSFETがクエンチ抵抗器として機能する。QNCH端子を介してMOSFETのゲートバイアスを制御することで、クエンチ抵抗値を外部から変更可能となっている。
【0054】
上述の左上の4画素(SPADPIX0~3)、右上の4画素、左下の4画素及び右下の4画素の出力は、それぞれ4入力OR回路81(初段論理回路の一例)に入力され、各SPADセンサが反応したときの出力信号A[0]~[3]を、まとめて出力可能となっている。出力信号A[0]~[3]のうち、出力信号A[0]及び出力信号A[1]は、2入力OR回路82(B[0:1])に供給される。また、出力信号A[0]~[3]のうち、出力信号A[2]及び出力信号A[3]は、2入力OR回路83(B[2:3])に供給される。また、2入力OR回路82(B[0:1])及び2入力OR回路83(B[2:3])の各出力信号は、2入力OR回路84でまとめられ、第1のAND回路91及び第2のAND回路92に供給される。
【0055】
ここで、第4の実施の形態の場合、24ビットカウンタ回路70が、第0~第11のTFF0~TFF11の各出力をカウントする第1の12ビットカウンタ回路71(下位ビット用カウンタ回路の一例)、及び、第12~第23のTFF12~TFF23の各出力をカウントする第2の12ビットカウンタ回路72(上位ビット用カウンタ回路の一例)に分割されている。
【0056】
2入力OR回路84でまとめられた出力信号が供給される第1のAND回路91は、第1の12ビットカウンタ回路71に接続され、2入力OR回路84でまとめられた出力信号が供給される第2のAND回路92は、マルチプレクサ95に接続されている。2入力OR回路82~2入力OR回路84、第1のAND回路91及び第2のAND回路92は、後段論理回路の一例である。
【0057】
マルチプレクサ95には、第1の12ビットカウンタ回路71も接続されている。マルチプレクサ95は、第2のAND回路92から各出力信号又は第1の12ビットカウンタ回路71でカウントされた出力信号のうち、いずれか一方を選択して第2の12ビットカウンタ回路72に供給する。
【0058】
このような回路構成とすることで、各画素が光子1個に反応して出力するパルス信号を24ビットカウンタ回路70でカウントすることができる。各画素のうち、SELECT端子を介して選択された画素がアクティブ状態となり、光子数のカウント値を出力する。これにより、16画素のうち、任意の画素のみのカウント値を得ることができる。
【0059】
このカウント値は、リセット端子(RESET)を介して供給されるリセットパルスにより「0」にリセットされる。また、カウント値は、リード端子(READ)を介して供給されるリードパルスに基づいて、出力端子(OUT[0:23])を介して出力される。
【0060】
また、この第4の実施の形態の場合、切り替え制御端子(CNTDIVIDE[0:1])から第1のAND回路91及び第2のAND回路92に、ハイレベル「1」又はローレベル「0」の切り替え信号を供給する。これにより、第1の12ビットカウンタ回路71及び第2の12ビットカウンタ回路72を、一つの24ビットカウンタとして用いることができ(第1のモード)、又は、第1の12ビットカウンタ回路71及び第2の12ビットカウンタ回路72を、それぞれ下位12ビットのカウンタ(TFF0~TFF11)、及び、上位12ビットのカウンタ(TFF12~TFF23)として用いることができる(第2のモード)。
【0061】
ここで、SPADセンサを間接型ToFセンサとして用いる場合、出力信号の位相差を検出する必要がある。このため、アップカウンタ及びダウンカウンタを用意して差分を検出する回路構成とする。このことからも、上位12ビット及び下位12ビットの2つのカウンタに分割してカウント値を検出する構成は、好ましい構成と言える。
【0062】
図10は、上述のように24ビット/12ビットのカウンタ回路の切り替え機能を備えたSPADセンサを間接型ToFセンサとして用いる場合のタイミングチャートである。間接型ToFセンサとして用いる場合、上述のように出力信号の位相差を検出する必要があるため、アップカウンタ及びダウンカウンタを用意して差分を取れる回路構成とする。
【0063】
すなわち、第4の実施の形態の場合、図9を用いて説明したように、第1の12ビットカウンタ回路(TFF0~TFF11)71と、第2の12ビットカウンタ回路(TFF12~TFF23)72とに、カウンタ回路を2分割することで、間接型ToFセンサとして用いることができる。
【0064】
すなわち、図10のタイミングチャートにおいて、投光のパルス幅は第0のTFF0~第11のTFF11をアクティブにするタイミングと同期させておき、第12のTFF12~第23のTFF23のアクティブ期間は、第0のTFF0~第11のTFF11のアクティブ期間が終わると同時に開始させ、期間の長さは同じにする。
【0065】
反射光信号は投光信号からToFだけ遅れて発生する。このため、制御回路3は、第1の12ビットカウンタ回路(第0のTFF0~第11のTFF11)71と、第2の12ビットカウンタ回路(第12のTFF12~第23のTFF23)72の信号量の差分からToF(対象物に照射した光の反射光を受光するまでの時間)を算出する。例えば、第1の12ビットカウンタ回路71及び第2の12ビットカウンタ回路72の信号量の差分が0であれば、第0のTFF0~第11のTFF11と、第12のTFF12~第23のTFF23の信号量は同じである、この場合、制御回路3は、投光パルス幅(投光時間)の1/2の時間を、対象物に照射した光の反射光を受光するまでの時間(ToF)として算出する。
【0066】
(第4の実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、第4の実施の形態のLIDAR装置は、下位ビット用カウンタ回路(第1の12ビットカウンタ回路71)及び上位ビット用カウンタ回路(第2の12ビットカウンタ回路72)を設け、各カウンタ回路の出力信号の位相差を計算することで、対象物に照射した光の反射光を受光するまでの時間(ToF)を算出することができる。このため、SPADセンサを間接型ToFセンサとして用いることを可能とすることができる他、上述の各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
最後に、上述の各実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な各実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、各実施の形態及び各実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 投光部
2 受光部
3 制御回路
11 光源
13 カプリングレンズ
14 光スキャナ
21 受光素子(SPADセンサ)
22 受光レンズ
51 画素選択部
52 パルス整形部
53 フロントエンド
54 Tフリップフロップ(TFF)
100 LiDAR装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【文献】特開2019-158806号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10